(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850785
(24)【登録日】2021年3月10日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】間接インクジェット印刷システム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/17 20060101AFI20210322BHJP
【FI】
B41J2/17 103
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-500326(P2018-500326)
(86)(22)【出願日】2016年5月25日
(65)【公表番号】特表2018-524212(P2018-524212A)
(43)【公表日】2018年8月30日
(86)【国際出願番号】IB2016053049
(87)【国際公開番号】WO2017009722
(87)【国際公開日】20170119
【審査請求日】2019年5月8日
(31)【優先権主張番号】1512145.2
(32)【優先日】2015年7月10日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514210005
【氏名又は名称】ランダ コーポレイション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】カルリンスキ,ハガイ
(72)【発明者】
【氏名】シマン‐トブ,アーロン
(72)【発明者】
【氏名】シェインマン,イエホシュア
(72)【発明者】
【氏名】アルクハナティ,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ピュール バクレイ,エラッド
【審査官】
小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0244180(US,A1)
【文献】
特開2010−195034(JP,A)
【文献】
特開昭53−134434(JP,A)
【文献】
特開2002−337339(JP,A)
【文献】
米国特許第08465130(US,B1)
【文献】
特開2010−195008(JP,A)
【文献】
特開平3−374154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間接インクジェット印刷システムの印字ヘッドと中間転写部材(ITM)との間の隙間にガスを導入するためのマニホールドであって、前記間接インクジェット印刷システムは、前記ITMの移動の方向を画成し、前記印字ヘッドと前記ITMとの間の隙間は、隙間厚み方向を画成し、前記マニホールドは、
a.液滴が前記隙間内にある間に、前記液滴を前記ITMの移動の方向に担送するべく、前記印字ヘッドと前記ITMとの間の隙間を通じて連続低速ガス流を分配するために第1の放出口で終端する第1のガス流路と、
b.高速ガス流を前記隙間に断続的に分配するために第2の放出口で終端する第2のガス流路であって、前記第2の放出口は、前記隙間厚み方向に沿って、前記第1の放出口から離間されている、第2のガス流路と、
を有する、マニホールド。
【請求項2】
高速ガスを導通するガス流路は、複数の別々の分岐に分けられ、前記高速ガスは、異なる時間に前記分岐のすべての中を流れるようにされる、請求項1に記載のマニホールド。
【請求項3】
前記第1の放出口の全体は、第1の圧力でガスのソースに使用の間常に連結される、前記マニホールドの共通の単一の第1のプレナムチャンバに連結され、前記第2の放出口は、前記第1の圧力よりも高い第2の圧力でガスを断続的に受け入れるべく、前記マニホールドの異なるそれぞれの流路分岐に各々連結される領域に分けられる、請求項2に記載のマニホールド。
【請求項4】
前記マニホールドは、使用中、前記印字ヘッドを担持する印字バーに直接固着されるブロックを備える、請求項2または3に記載のマニホールド。
【請求項5】
高速ガスを導通する分岐の各々は、高圧でガスのサプライに連結されるプレナムチャンバ、およびそれぞれの弁を経由して後のプレナムチャンバに断続的に連結されるバッファチャンバを備え、前記バッファチャンバの各々は、前記マニホールドの第2の放出口のそれぞれの領域に連結される、請求項4に記載のマニホールド。
【請求項6】
前記マニホールドの2つの放出口は、前記ブロックの下端に固着される上部プレート、下部プレート、および介在スペーサにより画成され、前記第1の放出口は、低速ガスのために、前記上部プレートと前記下部プレートとの間に画成され、前記第2の放出口は、前記高速ガスのために、前記上部プレートの上面および前記ブロックの下側の中にある溝により画成される、請求項4または5に記載のマニホールド。
【請求項7】
前記スペーサは、前記第1の流路の単一のプレナムチャンバに連通する、前記ブロック内のそれぞれの穴から前記第1の放出口に各々通じる分岐チャネルを画成するように成形される、請求項6に記載のマニホールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、間接インクジェット印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷システム、例えば国際公開第2013/132418号が、本出願人により以前に提案された。そこにおいて、画像形成ステーションで、水性インクは、中間転写部材(ITM)として機能する無限ベルトまたはドラム上に噴射される。結果として生じるインク画像は、ITMによって印刷ステーションへ運搬されて、その運搬の間に、それは粘着性のインク残留物を残すために乾燥される。印刷ステーションで、インク残留物は基板に転写されて、それから、ITM面は画像形成ステーションに戻って、新しい印刷サイクルを始める。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
いくつかの問題がこの種の印刷システムの動作の間に発生した。その解決策は、印字バーに載置する印字ヘッドの噴射ノズルからITMの表面にインク液滴により横断される隙間を通るガス(空気)流を吹きつけることであるとわかった。これらの問題は、以下で簡単に説明される。
【0004】
最初に、ITMは高い温度で作動されて、インク液滴が蒸発し始めて、ITMに影響を与える。放出された水蒸気は、それから、より冷たい印字ヘッドに凝結して、液滴を形成し、それはITM上に最終的にしたたって、印刷画像に損傷を与える。この種の凝結を防止することは、速いガス流を必要として、それが引き起こす乱気流のため、この種の流れは、インクの噴射が、例えばページの間にまたは印刷部数の間に、起こっていない期間の間に断続的に適用されることができるだけである。
【0005】
第2に、液滴が印字ノズルにより噴射されるときに、その後に、それが印字ノズルと分離した後の短時間、サテライトと呼ばれる非常により小さい液滴がしばしば続く。順次放出されて、液滴およびそれらのサテライトは、ITMの同じ位置に落ちず、したがって、それらのサテライトによって生じるかすかな陰影を有する基板上の若干の画像点が生じる。この問題を解決するために、ITMと印字ヘッドとの間の隙間を通る恒常的な安定した薄層状の流れを吹きつけることが提案された。この流れの効果は、ITMの移動の方向にすべての液滴を担送することである。しかしながら、それらのサイズのため、より小さいサテライトは、より大きい液滴よりガス流により強く影響を受ける。そして流速が慎重に選択される場合、大きい液滴およびサテライトは互いに結合して、基板表面に到達する。
【0006】
以下の説明では、サテライトを回避するための薄層状の流れは、低速流と呼ばれ、そして凝結を噴射ヘッドから除去するための乱流は、高速流と呼ばれる。さらにまた、これらの2つのガス流を供給するためのソースは、高圧および低圧サプライと呼ばれるが、用語「低」および「高」は、流れおよびサプライを互いに区別するためにだけ用いる。
【0007】
本開示は、印字ヘッドとITMの間の画像形成ステーションで小さい隙間に両方のタイプのガス流を分配できるマニホールドを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示によれば、間接インクジェット印刷システムの印字ヘッドと中間転写部材(ITM)との間の隙間にガスを導入するためのマニホールドが提供され、マニホールドは、連続低速ガス流を分配するために第1の放出口で終端する第1のガス流路、および高速ガス流を隙間に断続的に分配するために、第1の放出口から間隔を置いて垂直に配置される、第2の放出口で終端する第2の別のガス流路を有する。
【0009】
本発明は、印字ヘッドとITMとの間の隙間が非常に小さい、概して1mm〜2mmであるにもかかわらず、2つのガス流のための2つの別の放出口を使用する必要があり、そして2つのガス流路が異なる基準を満たさなければならないので、異なるガス流路を2つのガス流を導通するために用いなければならないことを実現するのに基づいている。
【0010】
低速安定ガス流を供給するガス流路の場合、異なる印字ヘッドを担持する印字バーの全幅にもわたる流線形の流れを生じるように、それが設計されていることが重要である。
【0011】
高速ガス流の場合、他方では、流れは流線形であってはならない。さらにまた、印字バーの幅全体の等しい分配は不要であるだけでなくて、それは望ましくない。高速ガス流は圧力の低下を引き起こし、そして圧力が同時に印字バーの幅全体にわたって低下する場合、それはITMを支持面を離れて上がらせることができる。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態において、従って、高速ガスを導通するガス流路は、複数の別々の分岐に分けられて、高速ガスは、同時にすべての分岐の中を流れるようにされない。
【0013】
このように、低速ガスを分配する全口が、比較的低い圧力でガスのソースに使用の間常に連結されるマニホールドの共通単一プレナムチャンバに連結できるのに対して、高速ガスを分配する口は、比較的高圧のガスサプライに断続的に連結するだけである異なるそれぞれのプレナムチャンバに各々連結する領域に分けることができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、マニホールドは、使用中、印字ヘッドを担持する印字バーに直接固着するブロックを備えることができる。
【0015】
高速ガスを導通する分岐の各々は、高圧ガスのサプライに連結するプレナムチャンバ、およびそれぞれの弁を経由して後のプレナムチャンバに断続的に連結するバッファチャンバを備えることができる。バッファチャンバの各々は、マニホールドの第2の放出口の個別領域に連結する。
【0016】
実施形態において、マニホールドの2つの口は、ブロックの下側に固着する上部プレート、下部プレート、および介在スペーサにより画成される。低速ガスのための第1の放出口は、上部プレートと下部プレートの間に画成されて、高速ガスのための第2の放出口は、上部プレートの上面およびブロックの下側のグローヴにより画成される。
【0017】
スペーサは、第1の流路の単一プレナムチャンバに連結する、ブロックのそれぞれの穴から第1の放出口に各々通じる分岐チャネルを画成するように成形できる。
【0018】
本発明は、次に、添付図面を参照して、例証として更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】印字バーに固着する組み立てられたマニホールドの斜視図である。
【
図2】印字バーにまだ固着する
図1のマニホールドの分解図である。
【
図3】下から見た、マニホールドの断面およびマニホールドの一部を示す。
【
図4】低速および高速のガス流の放出のための口を画成するためにその下側に固着するマニホールドおよびプレートのブロックを示す分解図である。
【
図5】
図4のそれに類似の分解図であるが、印字バーに面する側からのマニホールドを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、使用中、常に循環している無限ベルトの形を有するITMの表面の直ぐ上に配置される印字バー10を示す。国際公開第2013/132418号で説明したように、水性インクは、印字バー10に載置する印字ヘッド(図示せず)によってITMの表面に噴射される。結果として生じるインク画像は、ITMによって印刷ステーションへ運搬されて、その運搬の間に、それは粘着性のインク残留物を残すために乾燥される。印刷ステーションで、インク残留物は基板に転写されて、ITM面は、それから、印字バー10に戻って、新しい印刷サイクルを始める。
【0021】
印字バー10は、構台からのローラー12で支えられて、印字バーがそれがITMの上に横たわる展開位置と印字ヘッドのサービスが行われることができるITMから離れた停止位置の間でITMの移動の方向に対して横方向に移動できる可動台部(図示せず)の一部をなす。
【0022】
一組の個々の印字ヘッド(図示せず)は印字バー10の片側に固着する。その一方で、本開示のマニホールド14はその反対側に固着する。マニホールド14の目的は、印字ヘッドの噴射ノズルとITMの表面との間の狭い隙間に2つの異なるガス流を分配することである。第1は、主液滴およびそれらのサテライトをITMの表面で結合させるために、ITMで幅にわたって均一である安定した低速薄層状ガス流である。第2は、印字ヘッドのノズルプレートに集まることがありえるいかなる凝結も除去するために、断続的な高速ガス乱流である。第2のガス流は、画像歪曲を回避するように、乱流であり、インク画像がITMの上に形成されないときにそれが生じることができるだけであるので、断続的である。さらにまた、高速ガス流によって生じる圧力の低下は、ITMの全ての幅全体に同時に適用される場合、ITMをその支持面から持ち上げることができて、それは、従って、例示の実施形態において、順次、または一度に2つ分配されることができる4つの別々に制御可能な分岐に分けられる。
【0023】
図2を参照すると、マニホールド14は、その両側に機械加工された様々なチャネルを有する矩形ブロック16から形成される。低速および高速の流れの分配のために2つの異なる圧力の下で、ガス、通常空気のためのいろいろなプレナムチャンバを形成するために、一方のチャネルはカバーにより封止されて、他方で閉鎖プレート18により封止される。図はまた、カバー面上の凝結を防止するための保護カバー・プレート20およびスポンジ層22を示す。上部プレート24、下部プレート26、およびスペーサ28(
図4および5の分解図に最もよく見られる)は、ブロック16の下側に固着して、2つの異なるガス流が放出されるマニホールドの口を画成する。
【0024】
低速ガス流を分配するために用いる低圧ガスのための単一プレナムチャンバ30は、マニホールド14の全幅にわたって広がる(
図2および4において、そして
図3において断面で示す)単一のチャネルにより形成される。プレナムチャンバ30は、コネクタ32によって低圧(例えば0.5バール)の下でガスのサプライに連結している。マニホールドブロック16および上部プレート24の小さい垂直穴34(ブロックに示されないが上部プレート24に見える)によって、プレナムチャンバ30からのガスが、スペーサ28(
図4に示す)により分離される上部プレート24と下部プレート26の間に画成される、マニホールドの低速放出口に移ることができる。スペーサ28は、下部プレート26の上面に形成されるへこみと共に、マニホールドブロックの上述の垂直穴から共通の放出口に通じる分岐チャネルを画成する鋸歯形の端を備えている。分岐チャネルは、ガスが放出口の全幅にわたって均一である薄層状ガス流として去ることを確実にするために放出口へ流れるガスを導く。
【0025】
高圧、例えば3〜6バールの圧力のガスは、それぞれのコネクタ42を通って、ブロック16とカバープレート18により画成される4つの別々の第2のプレナムチャンバ40に供給される。第2のプレナムチャンバ40の各々は、それぞれの弁44およびブロック16内の垂直穴(図示せず)によってプレナムチャンバ40からブロック16の反対側に配置されるそれぞれのバッファチャンバ46に連結される。バッファチャンバ46は、カバーにより閉鎖されて、
図3および5に示すことができる。バッファチャンバ46からの加圧ガスは、
図4に最も良く示されているように、上部プレート24の溝に通じているブロック16の更なる垂直穴を通過する。ブロック16の底面と共に上部プレート24の上面は、マニホールド14の第2の放出口を形成し、そこから高速ガスは、印刷ノズルとITMとの間の隙間に断続的に分配される。
【0026】
高速ガスが放出される放出口を画成するプレートは、バックリングなしで高いガス圧力に耐えることが可能なことを必要とする。
【0027】
本発明の例示の実施形態において、この問題は、ブロック16自体が高速ガス放出口の一方として作用して、上部プレート24に作用する圧力は上部プレートだけでなく、上部プレート24、下部プレート26、およびそれらの間のスペーサ28から成るサンドイッチにより抵抗されるという点で解決される。ブロック16の下側にネジでとめる、このサンドイッチは、4mmに近い合わせた厚みを有することができて、従ってバッファチャンバ46内の高圧に容易に耐えることができる。低速ガスは、上部プレート24と下部プレート26の間から放出されるが、後者は、バックリングなしで低圧に容易に耐えることができる。
【0028】
使用中、低速ガスは、上部プレート24と下部プレート26の間に形成された口から常に放出されて、プレナムチャンバ30は、常に低圧ガスサプライの圧力にある。プレナムチャンバ40は、他方では高圧ガスサプライに永久に連結しているが、バッファチャンバ46から分離される。断続的に、そして個別に、第2のプレナムチャンバ40は、関連する弁44を短時間開くことによってそれらのそれぞれのバッファチャンバ46に連結している。これは、バッファチャンバ46に転送されて高圧で一時的にそこに格納されるガス量に結果としてなる。この量は、それから、マニホールドの第2の放出口を通して放出して、高速で流れるガスの乱流バーストを印刷ノズルとITMの間を通過させる。
【0029】
弁44は、ITMをその支持面から持ち上げることを回避するために、同時にすべて開かれるわけではない。それらは、その代わりに順次、または一度に2つ操作される。後者の場合、隣接するバッファチャンバ46の弁を同時に開かないことが好ましい。
【0030】
本発明が一実施形態だけを参照して説明されたが、さまざまな変更態様が添付の請求の範囲に述べられるように本発明の範囲内においてマニホールドの設計になされることができることは当業者に明らかである。