【文献】
Journal of Pharmaceutical Sciences,2005年,Vol.94,No.5,pp.1024−1038
【文献】
Letters in Drug Design & Discovery,2007年,Vol.4,pp.426−433
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書は、安定性を強化した硫酸ビンクリスチンリポソーム注射のための即時使用可能な製剤に関する組成物および方法について開示する。いくつかの実施形態は、現在のVSLI製剤にて使用されるクエン酸緩衝液を硫酸アンモニウム緩衝液(AS)と置き換えること、および安定した硫酸ビンクリスチン種の濃度を増加させる多重のリポソーム膜pH平衡を作成することによって、達成された(
図1を参照されたい)。相補的な外部pH緩衝液と組み合わさった硫酸アンモニウムはN−デスホルミルビンクリスチンに対するビンクリスチンの分解を緩和し得る一方で、スフィンゴミエリンコレステロールリポソームの構造的および力学的な統合性を維持することができる。これにより、膜貫通式の方法によってビンクリスチンを効率的に装填および保持することが可能となり得る。いくつかの実施形態は、様々な種類のリンパ腫を治療する方法(非ホジキンリンパ腫の再発形態を治療する方法など)に関する。典型的に、本開示に基づく薬剤を安定化するための即時使用可能な組成物は、連続した水相、連続した水相中にて分散したリポソーム相、およびリポソーム相内にてカーゴとして被包された安定化水溶液を含み得る。
【0015】
連続した水相は第1水性緩衝液を含み得る。第1緩衝液はビンクリスチンを安定化することができ、ビンクリスチンの被包促進に役立てることができる。例えば、中性または高いpH値である連続した水相(
図1に図示される外部リン酸緩衝液など)は、ビンクリスチンがリポソーム膜を主に遊離塩基形態で通過することを可能にすることができる。対照的に、リポソーム中に被包された安定化水溶液は、リポソーム内の中性ビンクリスチンの量が無視できる程度であるように、ビンクリスチンの酸塩基平衡を操作する(drive)ため充分に低いpH値を有する。例えばこれは、
図1の内部リポソーム溶液に図示される、ビンクリスチン遊離塩基、硫酸ビンクリスチン、アンモニア、および硫酸アンモニウムの間の平衡によって表される。これは、より高いビンクリスチン遊離塩基濃度を有し得る連続した水相間のビンクリスチン遊離塩基の濃度勾配、および無視できる程度のビンクリスチン遊離塩基濃度を有し得るリポソーム内にて被包された安定化水溶液を提供することができる。この濃度勾配は高濃度のビンクリスチン遊離塩基を有する連続した水相からリポソーム内の安定化水溶液への遊離ビンクリスチンの遊走を操作することができ、無視できる濃度の中性ビンクリスチンを有する。ビンクリスチンの塩形態は典型的にリポソーム障壁から連続した水相へと通過しないが、中性のビンクリスチンはリポソーム障壁からリポソーム内の安定化水溶液へと通過することができるために、ビンクリスチン装填もまた操作することができると考えられている。
【0016】
いくつかの実施形態において、第1水性緩衝液には主に中性ビンクリスチンを提供するpH値まで連続した水相を緩衝することができるあらゆる緩衝液、例えば、酸または塩基の抱合体(一価陰イオンの共役塩基、二価陰イオンの共役塩基、三価陰イオンの共役塩基、共役塩基、共役酸、またはこれらのあらゆる混合物もしくは組合せなど)と組合せられた塩、酸、または塩基などが含まれるが、これらに限定されることはない。いくつかの実施形態において、あらゆる上述の組合せが用量設定された混合物中に存在し得る。いくつかの実施形態において、緩衝液とは硫酸塩緩衝液である。いくつかの実施形態において、緩衝液とは、リン酸塩緩衝液(例えば、リン酸ナトリウム緩衝液)、重炭酸塩緩衝液、ホウ酸塩緩衝液などである。いくつかの実施形態において、第1水性緩衝液は主に担体溶媒であり得るか、またはリポソーム相の液体担体であり得る。
【0017】
第1水性緩衝液は、あらゆる好適な濃度で存在し得る。例えば第1水性緩衝液は、ほぼ等張性(約150mM〜約400mMまたは約250mM〜約350mMの濃度など)で緩衝液を作る濃度で存在し得る。
【0018】
リポソームは当業者によって理解される少なくとも広範な意味を包含し、またラメラ相二重層(脂質二重層など)を含む小胞またはナノ粒子も包含する。いくつかの実施形態において、リポソームまたはリポソームの層は、リポソームナノ粒子を形成するとして当業者に周知である、あらゆる物質を含む第1水性緩衝液中において実質的に不溶性である、あらゆる物質によって形成される。いくつかの実施形態において、リポソームはラメラ相脂質二重層を含む小胞を形成し得るあらゆる物質を含む。リポソームは、リン脂質(例えば、ホスファチジルコリン)、スフィンゴ脂質(例えば、スフィンゴミエリン)、糖脂質、ホスホグリセリド、ポリエチレングリコール、コレステロールなどといった、脂質を含み得る。いくつかの実施形態において、リポソームは、ペグ化および/または非ペグ化されたホスファチジルコリン脂質および/またはリン脂質を含む。いくつかの実施形態において、いくつかのリポソームからなる脂質成分は、リポソームの脂質二重層に対する有用な特性(例えば、弾性改善、薬剤装填改善など)をもたらし得るあらゆる脂肪酸尾部を含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子またはリポソームは溶媒障壁を作成するために使用されるか、または化学勾配もしくは浸透勾配を作成するために使用される。リポソームまたはナノ粒子は、実質的に異なるpH値である2つの水溶液を分離するために使用することができる。ナノ粒子はまた、実質的に同じpH値である2つの水溶液を分離するために使用することもできる。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は実質的に異なる緩衝液を含む2つの溶液を分離するために使用することができる。リポソームまたはナノ粒子はまた、実質的に同様の緩衝液を含む2つの溶液を分離するために使用することもできる。いくつかの実施形態において、リポソームは、どちらも実質的に異なるpH値であり、実質的に異なる緩衝液を含む2つの水溶液を分離するために使用される。いくつかの実施形態において、2つの水溶液の分離によって形成された勾配は、リポソームまたはナノ粒子の装填効率を増加させることができる。いくつかの実施形態において、リポソームによって形成された層は、リポソーム相(liposome phase)、リポソームの相(liposomal phase)、または内部ナノ粒子相と記載する。
【0020】
被包されたカーゴは、当業者によって理解される少なくとも広範な意味を包含し、リポソームの脂質二重層による周囲の水相から分離される水相を包含するべきである。
【0021】
いくつかの実施形態において、リポソームは、第2水性緩衝液、およびそこに溶解した安定化ビンクリスチンを含み得る安定化水溶液を被包する。
【0022】
いくつかの実施形態において、第2水性緩衝液は、アンモニウム塩(例えば、硫酸アンモニウム緩衝液、クエン酸アンモニウム緩衝液、リン酸アンモニウム緩衝液、炭酸水素アンモニウム塩緩衝液、炭酸アンモニウム緩衝液、ホウ酸アンモニウム緩衝液など)を含む安定化水溶液のpHを緩衝することができる、あらゆる緩衝液を含む。アンモニウム緩衝液は、最初は同様のpH値を提供するその他の緩衝液と比較して低いpH値にて経時的に安定化水溶液を維持することによって、ビンクリスチンを安定化するのに役立ち得ると考えられている。非アンモニウム緩衝液は経時的にそれらの緩衝能力を失い得ると考えられている。一度薬剤がリポソーム中に被包されると、リポソーム中で錯イオン遊走平衡を作り出す高濃度となり得、これは平衡していない場合ビンクリスチンの分解に寄与し得る。意外にもアンモニウム緩衝液は、最初は同様のpH値であったその他の緩衝液よりもさらに安定したpHを維持することができる。これは、
図1に図示したようなシステムのため、遊離アンモニアはリポソーム障壁を通じて逃げプロトンが残されることができ、それによって内部のリポソームpH値が安定化されるという理由であり得る。
【0023】
いくつかの実施形態において、安定化した、治療効果のある薬剤とは安定化水溶液中にて安定化させることのできるあらゆる薬物である。いくつかの実施形態において、安定化した、治療効果のある薬剤とはビンクリスチンなどの抗がん剤であるが、これに限定されるものではない。
【0024】
ビンクリスチンは、次の化学構造式によって表すことができる。
【化1】
【0025】
ビンクリスチンはまた、次の化学名によって表すこともできる:(3aR,3a
1R,4R,5S,5aR,10bR)−メチル−4−アセトキシ−3a−エチル−9−((5S,7S,9S)−5−エチル−5−ヒドロキシ−9−(メトキシカルボニル)−2,4,5,6,7,8,9,10−オクタヒドロ−1H−3,7−メタノ[1]アザシクロウンデシノ[5,4−b]インドール−9−イル)−6−ホルミル−5−ヒドロキシ−8−メトキシ−3a,3a1,4,5,5a,6,11,12−オクタヒドロ−1H−インドリジノ[8,1−cd]カルバゾール−5−カルボキシレート。
【0026】
いくつかの実施形態において、第2水性緩衝液は安定化水溶液内にて溶解したビンクリスチンを安定化させるために役立つ。いくつかの実施形態において、治療効果のある薬剤は、第1水性緩衝液中におけるよりも安定化水溶液おける方が実質的により安定性である。いくつかの実施形態において、ビンクリスチンは第1水性緩衝液におけるよりも安定化水溶液における方が実質的により安定性である。
【0027】
安定化水溶液は第2水性緩衝液を含む。第2水性緩衝液は、リポソーム相の外に輸送することができる少なくとも1の溶質を有する塩を含むべきである。溶質がリポソーム相の外に輸送する場合、安定化水溶液中に正電荷を持つ溶質またはヒドロニウムイオンを残す。したがって、正電荷を持つ溶質またはヒドロニウムイオンはビンクリスチンを安定化することができる。リポソーム相の外に輸送することができ、正電荷を持つ溶質またはヒドロニウムイオンを残す多くの塩が存在する。例えば、電荷的中性塩基はリポソーム相の外へ輸送することができる。したがって、中性塩基の塩(アンモニア、アミン、アミノ酸、ホスフィンなど)について、中性塩基(例えば、アンモニアまたはアミン)はリポソーム相の外に輸送することができ、塩由来のカチオンまたはヒドロニウムイオンは安定化水溶液中に残存することができる。好適な安定化塩の例としては、これらに限定されないが、アンモニアの塩、またはアミンの塩(メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、など)を挙げることができる。
【0028】
いくつかの実施形態において、治療効果のある薬剤は、アンモニウム塩によって第2水性緩衝液中にて実質的に安定化される。いくつかの実施形態において、硫酸アンモニウム緩衝液はデスホルミルビンクリスチンに対するビンクリスチンの分解率を実質的に減少させる。いくつかの実施形態において、硫酸アンモニウムは脱ホルミル化に対してビンクリスチンを実質的に保護する。いくつかの実施形態において、アンモニウムイオンの存在は脱ホルミル化に対してビンクリスチンを実質的に保護することができる。いくつかの実施形態において、アンモニウムイオンの溶液への主な寄与体は硫酸アンモニウムである。いくつかの実施形態において、あらゆるアンモニウム塩緩衝液は脱ホルミル化に対してビンクリスチンの保護に寄与してもよい。
【0029】
第2水性緩衝液は、安定化水溶液中にビンクリスチンの安定化に役立ち得るpH値で存在してもよい。いくつかの実施形態において、第2水性緩衝液(例えば、硫酸アンモニウムといったアンモニウム塩など)が存在していてもよい。請求項1に記載の組成物は、アンモニウム塩が第2水性緩衝液中に、約100mM〜約500mM、約200mM〜約400mM、約200mM〜約300mM、約250mM〜約300mM、約300mM〜約350mM、または約250mM〜約350mMの濃度で存在する。
【0030】
いくつかの実施形態において、連続した水相または第1水性緩衝液は、約pH5〜約pH8.8、または約pH9、約pH5〜約pH6、約pH6〜約pH7、約pH7〜約pH8、約pH7〜約pH8.5、約pH7〜約pH8.8、または約pH9、約pH7.2〜約pH7.8、約pH7.4〜約pH7.8、約pH7.8〜約pH8、約pH8〜約pH8.2、約pH8.2〜約pH8.8、約pH8.4〜約pH8.8、約pH7.8、約pH7.4、約pH8であるか、またはこれらの値によって境界づけられたあらゆるpH値、もしくはこれらの値のいずれかの間のあらゆるpH値である。
【0031】
いくつかの実施形態において、安定化水溶液または第2水性緩衝液は、約pH3〜約pH5.5、約pH3〜約pH4、約pH3.5〜約pH4.5、約pH4〜約pH5、約pH4であるか、またはこれらの値によって境界づけられたあらゆるpH値、もしくはこれらの値のいずれかの間のあらゆるpH値である。
【0032】
いくつかの実施形態において、連続した水相と安定化水溶液との間、または第1水性緩衝液と第2水性緩衝液との間のpH値の差異またはΔpΗは、1pH単位〜約4pH単位、約2pH単位〜約3pH単位、約1.5pH単位〜約2.5pH単位、約2.5〜約3.5pH単位、約3pH単位〜約4pH単位、約3.8pH単位であるか、またはこれらの値によって境界づけられたあらゆる差異、もしくはこれらの値のいずれかの間のあらゆる差異である。
【0033】
いくつかの実施形態において、ΔpΗはリポソーム被包効率を高めるために役立ち得る。いくつかの実施形態において、有用なリポソーム装填を達成するために役立つΔpΗは、約1pH単位〜約4pH単位、約2pH単位〜約3pH単位、約1.5pH単位〜約2.5pH単位、約2.5pH単位〜約3.5pH単位、約3pH単位〜約4pH単位、約3.8pH単位であるか、またはこれらの値によって境界づけられたあらゆる差異、もしくはこれらの値のいずれかの間のあらゆる差異である。
【0034】
いくつかの実施形態において、リポソームの活性成分の装填は、膜貫通電位差装填と記述することができる。いくつかの実施形態において、電位は上述のプロトン勾配によって作成され、これによりリポソーム内の治療薬の蓄積がもたらされる。
【0035】
いくつかの実施形態において、ΔpΗ、使用する緩衝液、およびリポソームの組合せにより、治療効果のある薬剤の良好な装填のために必要とされる特性、および治療効果のある薬剤の分解を最小化する特性の両方の均衡が得られる。
【0036】
いくつかの実施形態において、開示した組成物は硫酸アンモニウム緩衝液を包含し、これは安定した硫酸ビンクリスチン種の濃度増加をもたらす多重リポソーム膜pH平衡を作り出すことができる(
図1を参照されたい)。相補的な外部pH緩衝液によって調節されるイオン移動と組合せられた硫酸アンモニウム平衡の開示したリポソーム製剤の使用は、驚くべきことにN−デスホルミルビンクリスチン(NFV)に対するビンクリスチンの分解を緩和するが、リポソームの構造的及び動的完全性を維持して、膜貫通式の方法によるビンクリスチンの効率的な装填および保持を可能とする。
【0037】
N−デスホルミルビンクリスチンは次の構造式によって表すことができる。
【化2】
【0038】
N−デスホルミルビンクリスチンはまた、次の化学名によって表すこともできる:(3aR,3a
1R,4R,5S,5aR,10bS)−メチル4−アセトキシ−3a−エチル−9−((5S,7S,9S)−5−エチル−5−ヒドロキシ−9−(メトキシカルボニル)−2,4,5,6,7,8,9,10−オクタヒドロ−1H−3,7−メタノ[1]アザシクロウンデシノ[5,4−b]インドール−9−イル)−5−ヒドロキシ−8−メトキシ−3a,3a1,4、5、5a、6、11,12−オクタヒドロ−1H−インドリジノ[8、1−cd]カルバゾール−5−カルボキシレート。
【0039】
NFVは、勾配が存在する場合(すなわち、内部のpH4および外部のpH7.5)、または外部および内部pHが同一である場合(すなわち、pH4)でさえ、しばしば形成され得る。これは、ビンクリスチン種(不可逆的な脱ホルミル化反応に感受性であり得る)がリポソーム内部で形成され得るということを示し得る。ひとつの可能性のある種は中性ビンクリスチンであり、ビンクリスチン分解経路に対して感受性があり得る。現在開示されている組成物のひとつの優位性は、リポソーム内にて分解に感受性のあるビンクリスチン種の形成を最小化するそれらの能力である。
【0040】
いくつかの実施形態において、本明細書にて開示した組成物を、がん治療のためまたは再発したがんの治療のために哺乳類へ投与することができる。いくつかの実施形態において、がんはリンパ腫または白血病を含む。いくつかの実施形態において、哺乳類は以前にがん治療の経験があってもよい。
【0041】
いくつかの実施形態において、本明細書にて開示した組成物は哺乳類において新生物を治療するための方法に含まれ得る。いくつかの実施形態において、本明細書にて開示した組成物は、哺乳類において新生物の再発形態を治療するための方法に含まれ得る。いくつかの実施形態において、本明細書にて開示された組成物は、様々な種類のリンパ腫を治療するための方法に含まれ得る。いくつかの実施形態において、本明細書にて開示された組成物は、非ホジキンリンパ腫を治療するために投与することができる。いくつかの実施形態において、本明細書にて開示された組成物は、非ホジキンリンパ腫の再発の治療のために投与することができる。
【0042】
新生物という用語は、本明細書にて使用される場合、当業者によって理解される少なくとも広範な意味を包含し、細胞、腫瘍、悪性滲出液、嚢胞などのあらゆる異常増殖もまた包含する。新生物の例としては、種々の細胞型、これらに限定されないが、新生細胞、内皮細胞、または免役学的な細胞(白血球細胞、骨髄細胞、リンパ細胞など)を挙げることができる。
【0043】
いくつかの実施形態において、治療される新生物はがんである。
【0044】
組成物が硫酸ビンクリスチンリポソーム注射(VLSI)であるいくつかの実施形態において、組成物を、がんまたは再発したがんを治療するため哺乳類へ投与することができる。組成物は、約1mg/m
2〜約4mg/m
2、約1.5mg/m
2〜約3mg/m
2、約2mg/m
2〜約3mg/m
2、約2mg/m
2〜約2.5mg/m
2、約2mg/m
2、約1.5mg/m
2、約2.25mg/m
2、約2.5mg/m
2、約3mg/m
2、約2.0mg/m
2、約2.1mg/m
2、約2.2mg/m
2、約2.3mg/m
2、約2.4mg/m
2、または約1.9mg/m
2の用量で投与することができる。いくつかの実施形態において、VLSIは他の治療用化合物と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態において、VLSIは他の抗悪性腫瘍薬と組み合わせて投与される。
【0045】
実施例1:低遊離薬剤含量、透析Marqibo製剤
硫酸ビンクリスチンリポソーム注射(VSLI)の安定性はN−デスホルミルビンクリスチン(NFV)に対するその分解に反映される。VSLIは、3バイアルキット製剤からなる場合、ビンクリスチンの電位分解のため24時間以内に投与することが必要とされ得る。VSLIの調製はまた、5%以下の遊離ビンクリスチンを常に達成する。遊離ビンクリスチンは外部pH7.4の緩衝環境(buffer environment)中に存在するであろう。しかしながら、ビンクリスチンはその塩形態(pKa5.0および7.4)において最も安定し、pH7.4では平衡がpH4.0のリポソーム内部と比較して塩形態に対してあまり好ましくないと考えられている。これは、遊離ビンクリスチンがNFVの形成、およびそのVSLIの総合安定性に対する影響にどの程度寄与したかを試験するために有用であり得る。
【0046】
VSLIは、Marqiboキットと等価の成分、すなわち、VSI、SPI、およびSCLIから調製した。遊離(非被包)ビンクリスチンは、異なるpH条件下において種々の緩衝液を用いて透析することによって除去した。変異体を最高で12週間安定させ、判断基準を示す主要なVSLI安定性について評価した。変動により以下の外部緩衝液を用いて透析を試験した。
(a)リン酸緩衝スクロース液、pH7.4
(b)リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.4
(c)リン酸緩衝スクロース液、pH4.0
(d)リン酸緩衝スクロース液、pH5.0
【0047】
pH4.0〜7.4の外部緩衝液を用いる外部ビンクリスチン遊離VSLIの調製
キット成分由来の3つの別々のVSLI被包を行い(各31mL)、プールした。装填後の試料を分析のために除去し、残存する試料の量を4つに分けた(各およそ21.75mL)。これらの試料を、Spectrapor No.1(幅40mm、6〜8kDa MWCO)の透析膜バッグに設置し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはリン酸緩衝スクロース液(pH7.4)のいずれかを用いて、光から保護しながら室温で24時間にわたり4体積交換することで、20体積超過に対して透析した。調製したPBSは、20mMのリン酸ナトリウム、130mMの塩化ナトリウムを含有し、pHは7.4であった。リン酸緩衝スクロースは、10%(w/v)スクロース、20mMのリン酸ナトリウムを含有し、pHは7.4であった。透析後、同一の緩衝液由来の試料を一緒にプールし、無菌状態下において使い捨て注射器フィルター(Pall Acrodiscs、孔径0.2μm、Supor膜)を用いて滅菌ろ過し、そして個別の滅菌した管(4.2mL)に安定性研究の各時点(2〜8℃で、0、2、4、8、12週間;室温で2、4、8、12週間、および40℃で2週間)で分注した。
【0048】
pH4およびpH5の外部緩衝液による外部のビンクリスチンを含有しないVSLIの調製
予備小規模評価
初期検査研究を実施して、低pH条件下におけるMarqiboの透析が実際に発生したかどうかを確認した。計8mLのVSLI生成物を上述のMarqiboキットバイアルから調製し、装填後の物質を、Spectrapor No.1(幅20mm、6〜8kDa MWCO)透析膜バッグ中にて20体積超過に対して透析するため、pH4、5、または6のいずれかであるSPI溶液を用いて光から保護しながら2〜8℃で24時間にわたり4体積交換することで、2mLの分注量に分けた。透析後の試料を遊離ビンクリスチン含量(表1)について分析した。これにより、低pHの外部緩衝液による透析が可能であることを示す。
【表1】
【0049】
透析変異体のスケールアップ
VSLI生成物の50mL溶液を上述のMarqiboキットバイアルから調製した。装填後の生成物量を2つに分け、その各々半分をSpectrapor No.1(幅40mm、6〜8kDa MWCO)透析膜バッグ中へ設置し、20体積超過に対してpH4または5のいずれかであるリン酸緩衝スクロース液を用いて、光から保護しながら2〜8℃で72時間にわたり4体積交換することで透析した。透析後の試料を収集し、滅菌ろ過し、個別の滅菌した管(3.5mL)に安定性研究の各時点(2〜8℃で、0、2、4、8、12週間、および室温で2、4週間)で分注した。
【0050】
安定性分析プロトコル
各安定性時点にて、試料を以下について分析した:pH(Beckman Phi 360 pH meter)、重量モル浸透圧濃度(Wescor Inc., Vapro 5520 vapor pressure osmometer)、粒径、総量および遊離ビンクリスチン、ならびに薬剤関連不純物。
【0051】
結果
3バイアル製剤から調製されたVSLIの外部緩衝液から遊離ビンクリスチンの除去をもたらす安定性が、表2に示される。遊離ビンクリスチンの除去はVSLI安定性を改善するようには考えられなかった。4週間以内に、NFVの量が4℃で倍加し、8週間までには全ての緩衝液およびpH変異体に対する分解率が1.3%NFV/月超となった。ビンクリスチン総量はNFV形成と同時に減少した。遊離外部ビンクリスチンを伴わないVSLIもまた、薬剤が室温でより急速に分解される周知のビンクリスチン化学分解特性に従って、2週間以内にNFV比率を倍加した。これらの分解率は、NFVに対するビンクリスチン分解のため24時間の構成の内にVSLIを投与する必要をもたらした、3バイアルMarqiboキット安定性に対して4℃で観測された1.6%NFV/月と同様である。
【0052】
これらの透析研究による結果は、VSLIの安定性操作はN−デスホルミルビンクリスチン(NFV)の形成が担うことを確証させた。VSLIの有効期限は、どの程度急速にNFVが3.0の規格限界を超えるレベルまで増加するかによって決定される。ビンクリスチン総量の減少は、観測されたNFVの増殖と相関する。不純物の総量はNFVの増殖とは不釣合いに増加しなかった。これは総不純物割当(total impurity assignment)に含まれている。新規の不純物は観測されなかった。全ての変異体は、pH、重量モル浸透圧濃度、および粒径に対する許容VSLI判断基準以内のままであり、規格を超える傾向はこれらの判断基準に対して一切観測されなかった。そのうえ、マンニトール(3バイアル製剤に存在する)に対する等張剤としてのスクロースの置換は、ビンクリスチンの分解率に何ら効果を有しなかった。
【0053】
さらに、表2に示される結果は、pH4およびpH5の緩衝液を用いた透析による遊離ビンクリスチンの除去はリポソーム膜の完全性を変化させなかったことを実証した。ΔpΗ勾配の規模の変更はリポソーム含量の漏洩を引き起こさなかった(予想していた通りに、pH装填勾配が損なわれていた場合)。遊離ビンクリスチンは、長期間に渡り全ての変異体において絶えず低いままであった。
【表2】
これらの透析研究の結果は、遊離外部ビンクリスチン分解が、観測されたVSLIの安定性の決定において重要な役割を担っていないことを実証しており、またこれは、VSLIの安定性全体に対するマイナーな方法におそらく寄与する傾向がある。これらの結果は、ビンクリスチンの分解が3バイアルキットから調製したVSLIの構成後にリポソーム内部で発生していることを示している。リポソームの内部と外部との間のΔpΗ勾配の維持、またはVSLIのΔpΗの除去(もしくは最小化)は、3バイアル製剤に対するリポソーム内部のビンクリスチンの安定性を改善しない。
【0054】
実施例2:硫酸アンモニウムVCRリポソーム変異体
Marqiboは、Marqibo Kit構成成分(VSI、SCLI、およびSPI)を薬局で一緒にインキュベートすることにより構成される。硫酸ビンクリスチン(弱塩基)は、内部SCLIのpH値4.0と得られるリポソーム外部SPI緩衝液のpH値7.4とのpHの差異によって、作成される膜貫通型勾配の反応によりリポソーム内へ装填される。装填プロセスの間、ビンクリスチンの中性型だけがリポソーム膜を通過し、クエン酸塩としてSCLI内部に補足される。クエン酸緩衝液によるこの装填は95%超のビンクリスチン装填を提供する。しかしながら、一度構成されると、リポソーム内部pHが4.0(塩種としてビンクリスチンを維持するべきである)であっても24時間以内にNFVの増殖が発生するように、内部クエン酸ビンクリスチンは中程度に不安定である。上述の初期遊離薬剤透析実験から、ビンクリスチンの分解は、外部ビンクリスチン(pH7.4)環境またはリポソームからのビンクリスチン漏出いずれからでもなく、リポソーム内部に発生するものと考えられる。内部リポソームにおけるクエン酸緩衝液能力は非効率的であり、プロトンおよび溶質イオンがリポソームの内部pH4.0緩衝液を不安定化する程に膜を通過して移動することを可能にし得るということが考えられる。この可能性を試験するため、リポソーム内部のクエン酸ナトリウム緩衝液を代替の「装填電池」と置換した。一連の実験は、内部リポソーム緩衝液が硫酸アンモニウム溶液(AS)である条件で行った。250mMの硫酸アンモニウムのpHは約5.5である:しかしながら、リポソーム内部では、アンモニアとアンモニウム塩との間の解離平衡によって、中性のアンモニア分子がリポソーム膜を通過することが可能となり、後に残された水素イオンの結果として内部pHを効果的に低下させる。得られる内部pHは約4である。この平衡状態は、Marqiboのリポソーム環境内部におけるクエン酸ナトリウム−クエン酸平衡状態よりも良好な塩形態として硫酸ビンクリスチンを維持することができる。これらの実験において、外部pHは5.5〜8の間で変化し、約4.0の内部pHを維持した(上述のアンモニア/アンモニウム平衡状態の結果として)。モル濃度または緩衝容量は250〜350mMのASの間で変化し、重量モル浸透圧濃度全体に寄与する等張性の構成成分はポリオールおよびイオン性塩を用いて変化した。全ての実験において、リポソームはSCLIと本質的に同一の組成におけるスフィンゴミエリンおよびコレステロールから構成された。変化はクエン酸緩衝液の硫酸アンモニウム緩衝液との置換だけであった。
【0055】
リポソーム調製単位プロセス
本実施例は、スフィンゴミエリンコレステロールリポソーム生成に使用される一般的な方法を説明する。
【0056】
標的リポソーム成分調製計算
Marqiboリポソーム膜はスフィンゴミエリン(SM)およびコレステロール(CH)を重量配分比2.5:1で含有し、ここでは最終生成物VSLIが2.37mg/mLのSMを含有する。
【0057】
これらの実験において、プロセスを容易にするため、および薬剤装填ステップのため充分に濃縮させるため、非薬剤装填リポソーム変異体に対する標的濃度は43mg/mLのSMで選択した。
【0058】
リポソーム調製単位プロセスは次のとおりである:70mLの最終生成物の標的に対する。
【0059】
1.水和反応(リポソームの形成)
脂質の溶解。SMおよびCH脂質原材料を、エタノール中にて溶解する。充分なエタノールを使用して、15.7%(v/v)の水和相における最終濃度を得る。上記の実施例において、3gのSMおよび1.2gのCHを秤量し、一緒に混合し、13mLで200プルーフのエタノール中にて溶解する。溶解は、エタノール脂質混合物を密封した容器中において75℃で透明なエタノール溶液が得られるまで温めることによって達成する。
【0060】
水性水和反応。上で調製した脂質溶液は、事前に水浴中で65℃に平行化されているエタノール脂質溶液を水相へ急激に注ぐことによって「水和されている」。本実施例では、リポソーム製剤によって被包される対象の溶質を含有する、70mLの水相を使用した。例えば、350mMの硫酸アンモニウムまたは関連する塩である。得られる混合物を撹拌しながら0.5〜1時間インキュベートして、脂質を完全に水和させる。脂質のエタノール溶液が水相と混合される場合、エタノール溶媒は急激に希釈されることで脂質が水へと曝され、これによって不均質な大きさの分布でリポソーム小胞を同時に形成する脂質がもたらされる。水和反応は、水分子が分子の親水部分と完全に会合することを確実にする。
【0061】
2.小型化
リポソームの形成に続き、小胞は均一かつ好ましい粒子直径(この場合、約100nm)を有するリポソームの集合を作成するような大きさに作成される。これは、上述のステップ1にて作成したリポソーム懸濁液を圧力下にて所定の孔径の膜を通じて押出することによって、達成される。押出は65℃で行われ、膜の孔を通じたリポソームの通過は水和反応から残存するエタノールによって促進される。この処理を行うことによって、リポソームは使用した膜の孔の直径にほぼ一致する。これらの研究では、総容積100mLを有することのできるLipex押出器(Northern Lipids)を使用し、リポソーム懸濁液は、窒素ガスを用いて100〜400psiの圧力で、孔径0.2μm(流路3ヶ所)および0.08μm(流路5ヶ所)の25mm直径ポリカーボネート膜を通過した(Whatman Nucleopore Track-Etched Membranes)。リポソーム粒径は、動的光散乱法(Brookhaven Instruments Corporation)を使用するZetaPALS分粒器によって測定する。
【0062】
3.外部緩衝液交換
この段階では、外部水相(例えば、350mMの硫酸アンモニウム溶液)を、透析またはダイアフィルトレーションによって10%のスクロース液、またはSPIといったその他所望の緩衝液と交換し、同時にエタノールを除去する。このプロセスはリポソーム勾配(すなわち、リポソームン内部の硫酸アンモニウム緩衝液およびリポソーム外部の10%のスクロース緩衝液)を確立する。硫酸アンモニウムはアンモニウムと硫酸イオンとに水性媒体中で高度に解離される。荷電イオンであるためこれらはリポソーム膜を通過することができないが、しかしながらアンモニウムイオンはまた水とアンモニアとの平衡状態にもあり、アンモニアは中性ガスとしてリポソーム膜を通過することができる。アンモニア分子がリポソーム内部を離れる時、プロトンが後に残される(リポソーム膜内部のpHを約4まで低下させる)。これは、リポソーム内部が約pH4.0であり、外部が交換緩衝液(例えば、7.4)のpHであるΔpΗ勾配を確立する。この勾配を使用してビンクリスチンをリポソーム中へ装填する。ダイアフィルトレーションプロトコル(生成物量50mL超に対する)は、QuixStandダイアフィルトレーションシステム(GE Healthcare Life Sciences)に接続された、MidGeeカートリッジ(モデルUFP−300−E−3MA、300,000MWCO)を用いて、緩衝液の15体積を交換した。透析(生成物量50mL未満に対する)は、リポソーム懸濁液を6〜8000のMWCOであるSpectrum Spectrapore分子多孔質膜中へ設置すること、およびそれを20体積超過緩衝液中にて室温で懸濁させることからなり、外部緩衝液は1日の間に4回交換する(一晩に渡る1回の交換を含む)。次の外部緩衝液交換は、各ダイアフィルトレーション後調製のSM含量はStewartリン脂質コリンアッセイを用いて測定した。
【0063】
4.薬剤装填
薬剤装填を、VSLI処方薬対脂質比を用いて実施して、所望の総容積を達成する。VSLI装填混合物は0.16mg/mLのビンクリスチン、2.37mg/mLのSM(リポソーム調製など)のための標的であり、所望の実験変異体に使用される外部リポソーム緩衝液によって所望の総容積まで調節される。装填は、外部緩衝液、薬剤、およびリポソーム溶液(室温まで予備平衡化した)を混合し、混合物を10分間65℃で水浴中にて穏やかに混合しながらインキュベートすることによって実施する。その後、混合物を水浴から除去して室温まで冷却し、2〜8℃で保管する。
【0064】
5.滅菌ろ過およびバイアル充填
薬剤装填バルクリポソーム懸濁液は、従来法のリポソーム滅菌技術(保存に好適なバイアル中へのろ過など)によって滅菌することができる。無菌/滅菌技術は全体を通して使用され、操作はNunair Class IIのA型/B3型Biological Safety Cabinet中で実施される。室温でのバルク生成物は、滅菌した25mm直径の0.2μm孔径Acrodisc(登録商標)シリンジフィルター、ルアーフィッティングを有する滅菌した10mLシリンジを用いるSupor(登録商標)膜(Pall Corp.)を通じてろ過する。バルクは10mLの定量で滅菌した受け取り容器へとろ過する。
【0065】
リポソーム変異体調製は、種々のモル濃度のASを内部リポソーム緩衝液として補足することによって作成した。リポソームは上述のプロセスを用いて調製した。リポソームは、43mg/mLのSMにおける70mLの最終水和容量およびSM/CHの重量配分比2.5:1となるように二通りに秤量された、スフィンゴミエリン(SM)およびコレステロール(CH)によって調製した。脂質混合物を9.5mLのエタノール中にて75℃で溶解し、エタノール脂質溶液を70mLの余熱したAS溶液(65℃)へ注ぐことによって水和し、30分間混合して、12%v/vの最終エタノール濃度を作成した。このように形成したリポソームは、孔径0.2μmのポリカーボネート膜(3ヶ所の流路)および0.08μm(5ヶ所の流路)を通じてLipex押出器(Northern Lipids)中に連続的に押出することにより、サイズ分けした。続く押出では、各調製物は、MidGeeカートリッジ(モデルUFP−300−E−3MA、300,000MWCO)およびQuixStandホルダー(GE Healthcare Life Sciences)において15体積交換を用いて10%のスクロース液(同時にあらゆるエタノールを除去する)中へダイアフィルトレーションした。各ダイアフィルトレーション後の調製物のSM含量はStewartリン脂質コリンアッセイを用いて測定した。
【0066】
上で調製したリポソームを用いる小規模試験薬装填は、pH5.5、6.5、もしくは7.5へ調節したSPI緩衝液、またはpH5.5、6.5、もしくは7.5へ調節したリン酸緩衝スクロースのいずれかを用いて実施した。5%未満の遊離ビンクリスチンを装填する変異体をスケールアップに選択した(pH6.5、7.5のSPI緩衝液、およびpH6.5のリン酸緩衝スクロースであった)。大規模装填は、以前に記載した構成手順に従って各AS変異体および緩衝液に対し実施した。得られる薬剤被包リポソーム混合物を滅菌ろ過し、安定性について、2〜8℃で、0、2、4、8、12週間、および室温で2、4週間監視した。
【0067】
上の実施例の項で記載した小規模硫酸アンモニウム予備実験は、AS変異体のカプセル化効率を試験した。これらの結果は、硫酸アンモニウム内部緩衝液(平衡条件下においておよそ4.0の内部リポソームpH値を導く)は、外部緩衝液pHが6.5以上であってポリオールを使用していなかった場合に最適なビンクリスチン装填が可能であるということを示唆している。pH5.5の外部緩衝液を用いる全ての変異体は90%未満で装填した(明白に不十分な膜貫通型ΔpH勾配を提供する)。PBS緩衝液変異体は全て薬剤の少なくとも95%装填した一方で、スクロースを使用した変異体は様々な結果を示した(より広範である89〜95%被包を示す)。250mMおよび350mMの緩衝能変異体はどちらも、pHおよびポリオール変動で同様の被包傾向を示した。95%以上の装填を示した全ての変異体はスケールアップし、安定性について評価した。
【0068】
硫酸アンモニウムリポソームのスケールアップの24週安定性結果を表3に概説する。全ての変異体は所望のVSLI粒径および重量モル浸透圧濃度判断基準を維持した。遊離ビンクリスチンのpHおよび割合もまた、安定性モニタリング期間中一定のままであった。硫酸アンモニウム緩衝液はスフィンゴミエリンコレステロールリポソームの透過特性を変化させなかった。3バイアルMarqibo製剤における改善した安定性を、pH7.5の外部PBS緩衝液を有する250mMおよび350mMの硫酸アンモニウムの製剤で観測した。これらの変異体について、分解率は冷蔵温度にて月毎に0.2%のNFVを観測した。この割合によって製剤の有効期限を約1年間として計画することができた。さらに、不純物総量はNFV%のあらゆる増加と比例して増加したのみであった。不純物総量の全体は6%未満のVSLI判断基準をはるかに下回るレベルを維持した。
【0069】
pH6.5の外部緩衝液を伴う硫酸アンモニウムリポソーム、または緩衝液がポリオール等張剤(例えば、スクロース)を含有する場合は、pH7.5の変異体と比較して劣る安定率がもたらされた。これらの変異体に対する分解率は冷蔵温度で1.5〜1.8NFV%/月の範囲にわたった(表3);割合は現在の3バイアルクエン酸ベースキット製剤のVSI成分(表2)と同様であった。250mMおよび350mMの変異体はどちらも、pHおよび浸透物質変化に同じ傾向を示した。そのうえ、安定性が室温で監視された全ての場合において、急速なビンクリスチン分解が見られた。冷蔵した試料だけが硫酸アンモニウム製剤で好適な安定性特性を提供した。
【0070】
250mMおよび350mMの硫酸アンモニウムビンクリスチンリポソームSPI(pH7.4)製剤は、市販の即時使用可能な製剤に好適な予備的な有効期限の必要性を示す。これらはさらなる評価に対して選択した。
【表3】
【0071】
実施例3:硫酸アンモニウムVCRリポソーム被包ならびに
二価イオンおよびポリオールによる安定性
一連の実験は、VSLI含有二価イオンまたはポリオールが被包ビンクリスチンを増強するかどうかを試験するために行われた。
【0072】
Marqibo生成物として同一の脂質組成物を有し、200mMの硫酸マグネシウムまたは200mMの硫酸マンガンのいずれかで200mMの硫酸アンモニウムを被包する、リポソーム変異体調製物を作成した(200mMのクエン酸ナトリウム、および200mMの硫酸マグネシウムまたは200mMの硫酸マンガンのいずれか)。これらの調製物の各々を10%のスクロース中にダイアフィルトレーションし、脂質濃度を上述の通りに分析した。くわえて、リポソーム中において、pH7.4である5%のマンニトール−20mMリン酸緩衝液、pH7.4であるSPI、およびpH7.0であるSPIで250mMの硫酸アンモニウム被包するリポソームを調製した。薬剤装填は、各変異体が10分間(標準条件)または10分間に対して65℃で30分間のいずれかでインキュベートするよう試みた。
【0073】
小規模予備実験の結果を表6に示す。Mg
2+またはMn
2+がリポソームの内部緩衝液中に含まれた場合、および65℃で10分間(標準条件)または30分間のいずれかでインキュベートした場合の薬剤装填結果は、標準3バイアルキット構成と比較して効率的でない装填を示した。最良装填比率である6〜8%の遊離薬剤が10分間のインキュベーションで観測されたが、クエン酸−Mg変異体は例外であり、21%の遊離薬剤を示した。二価金属イオンの存在が、pH勾配平衡の破壊または膜透過性の崩壊のいずれかをもたらすと考えられる。
【表4】
【0074】
MgSO
4変異体を伴う硫酸アンモニウム(装填後に6%の遊離薬剤を示した)をスケールアップし、安定性について監視した。スケールアップにおいて、この製剤変異体は、以前に観測された二価イオンの存在下における乏しいリポソーム装填効率を再確認した;38%の遊離薬剤が構成後に観測された(表7)。この混合勾配変異体をさらに再透析によって処理して、外部遊離ビンクリスチンを除去した。続いて、再透析後の変異体を安定性について監視した。5週間の監視の間、遊離薬剤レベルはさらなる薬剤の漏洩がリポソームより発生しないことを示す定常性を保った。しかしながら、NFVに対する急速分解およびVCRの減少が観測された(5週間で12.2%のNFVをもたらす)。これは250mMのAS SPI(pH7.4)リポソーム製剤よりも62倍急速であった(
図7)。これらの結果は、二価の硫酸塩を含有するVSLIは被包ビンクリスチンの改善した安定性を提供しないことを実証した。
【0075】
マンニトールを有するAS製剤は、0.14%NFV/月である非ポリオール含有製剤と比較して0.17%NFV/月の分解率を示した(表7)。しかしながら、93.4%のビンクリスチンのみのその被包はポリオールを有しない製剤のそれより効率的ではなかった。
【表5】
【0076】
実施形態
実施形態1.組成物であって、
第1水性緩衝液を含む連続した水相、
該第1水性緩衝液内にて分散したリポソーム相、および、
該リポソーム相内にてカーゴとして被包された安定化水溶液、
を含み、
該安定化水溶液は、第2水性緩衝液、およびそこに溶解した安定化したビンクリスチンを含み、
該第2水性緩衝液は、リポソーム相の外に輸送することができ、該安定化水溶液中に正電荷を持つ溶質またはヒドロニウムイオンを残す、少なくとも1つの溶質を有する塩を含み、該正電荷を持つ溶質またはヒドロニウムイオンは該ビンクリスチンを安定化し、且つ、
該連続した水相および該安定化水溶液は、少なくとも2pH単位のpH差を有する、
組成物。
【0077】
実施形態2.リポソーム中においてビンクリスチンを安定化する方法であって、
第1水性緩衝液を含む連続した水相内にてリポソーム相を分散することを含み、
該リポソーム相は、リポソーム相内にてカーゴとして被包された安定化水溶液を含有し、
該安定化水溶液は、第2水性緩衝液、およびそこに溶解した安定化ビンクリスチンを含み、
該第2水性緩衝液は、リポソーム相の外に輸送することができ、安定化水溶液中に正電荷を持つ溶質またはヒドロニウムイオンを残す、少なくとも1つの溶質を有する塩を含み、該正電荷を持つ溶質またはヒドロニウムイオンは該ビンクリスチンを安定化し、且つ、
該連続した水相および該安定化水溶液は、少なくとも2pH単位のpH差を有する、
方法。
【0078】
実施形態3.該第2水性緩衝液がアンモニウム塩を含む、実施形態1または2に記載の組成物または方法。
【0079】
実施形態4.該第1水性緩衝液がリン酸緩衝液を含む、実施形態1、2、または3に記載の組成物または方法。
【0080】
実施形態5.該リポソーム相がスフィンゴミエリンコレステロールリポソームを含む、実施形態1、2、3、または4に記載の組成物または方法。
【0081】
実施形態6.該第2水性緩衝液が硫酸アンモニウムを含む、実施形態1、2、3、4、または5に記載の組成物または方法。
【0082】
実施形態7.該ビンクリスチンが硫酸ビンクリスチンを含む、実施形態1、2、3、4、5、または6に記載の組成物または方法。
【0083】
実施形態8.該安定化水溶液のpHが、約3〜約5である、実施形態1、2、3、4、5、6、または7に記載の組成物または方法。
【0084】
実施形態9.該連続した水相のpHが、約5〜約8である、実施形態1、2、3、4、5、6、7、または8に記載の組成物または方法。
【0085】
実施形態10.該連続した水相のpHが、約7〜8.8である、実施形態9に記載の組成物。
【0086】
実施形態11.該連続した水相のpHが、約7.5〜約8.8である、実施形態10に記載の組成物。
【0087】
実施形態12.該リポソームが加水分解抵抗性である、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または11に記載の組成物または方法。
【0088】
実施形態13.ビンクリスチンが、該連続した水相中においてよりも該安定化水溶液中においてより安定である、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12に記載の組成物または方法。
【0089】
実施形態14.該連続した水相と該安定化水溶液との割合が、該2つの相の混合がpH約6〜約8.8の結合水相を結果として生じるような割合である、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13に記載の組成物または方法。
【0090】
実施形態15.該アンモニウム塩が、約150mM〜約350mMの濃度で該第2水性緩衝液中に存在する、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14に記載の組成物または方法。
【0091】
実施形態16.該アンモニウム塩が硫酸アンモニウムである、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15に記載の組成物または方法。
【0092】
実施形態17.治療量の実施形態1、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16に記載の組成物を、それを必要とする哺乳類へ投与することを含む、哺乳類においてがんを治療する方法。
【0093】
実施形態18.該がんが、リンパ腫、白血病、または骨髄腫である、実施形態17に記載の方法。
【0094】
実施形態19.該哺乳類へ実施形態1、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16に記載の組成物を投与することを含む、哺乳類におけるがんの再発を治療する方法。
【0095】
実施形態20.該がんの再発が、リンパ腫、白血病、または骨髄腫である、実施形態19に記載の方法。
【0096】
実施形態21.該哺乳類が、以前に少なくとも1回の多剤併用レジメンを受けたことがある、実施形態17、18、19、または20に記載の方法。
【0097】
実施形態22.少なくとも1つの他の化学療法薬と同時投与される、実施形態17、18、19、20、または21に記載の方法。
【0098】
実施形態23.該哺乳類がヒトである、実施形態17、18、19、20、21、または22に記載の方法。
【0099】
実施形態24.ビンクリスチンを脱ホルミル化から保護する方法であって、ビンクリスチンをアンモニウム塩緩衝液と混合することを含む、方法。
【0100】
実施形態25.該ビンクリスチンが、約1.5mg/m
2〜約2.5mg/m
2の容量で投与される、実施形態23に記載の方法。
【0101】
別段示されない限り、成分の定量、分子量などの特性、反応条件、および本明細書において使用される数字などを表す全ての数字、ならびに請求項は、全ての例において用語「約」によって修正されるものであると理解されたい。したがって、反対の指示が無い限り、数値パラメーターは本明細書の範囲内で説明され、そして付属する請求項は、本開示の実施形態によって得られるように求められた所望の特性に応じて変動し得る近似である。少なくとも、そして等価物の学説の適用が特許請求の範囲を制限することは意図せず、各数値パラメーターは少なくとも報告された有効桁の数を考慮して、そして一般的な端数処理技術を適用することによって解釈されるべきである。本開示の広範にわたる範囲を説明する数値の範囲およびパラメーターが近似であるものの、特定の実施例において説明される数値は可能な限り正確に報告されている。あらゆる数値は、しかしながら、それら各々の試験測定にて見出される標準偏差が必然的にもたらすいくらかの誤差を、本質的に含有する。一実施形態において、用語「約」および「およそ」とは、示された範囲の10%以内の数値パラメーターを指す。
【0102】
本開示の実施形態を記述する文脈において(特に、以下の請求項の文脈において)使用される、用語「ひとつの(a)」、「ひとつの(an)」、「該(the)」、および同様の指示対象は、本明細書において別段に示されない限り、または文脈と明確に矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を包含するものとして解釈されたい。本明細書における値の範囲の詳説は単に、範囲に収まる各別個の値を個々に参照するための簡潔な表現方法として機能するものである。本明細書において別段に示されない限り、個々の値は、それが本明細書において個別に参照されたかのように、本明細書に組み込まれるものである。本明細書に記載の全ての方法は、本明細書にて別段に示されない限り、または文脈と明確に矛盾しない限り、あらゆる好適な順番で実施することができる。本明細書にて提供される、あらゆる例、および全ての例、または例示的な用語(例えば、「など(such as)」)の使用は、本開示の実施形態をより明らかにすることを意図するものであり、本開示の範囲を制限するものではない。本明細書における用語は、本開示の実施形態の実行に必須であるあらゆる非請求要素を示すものとして解釈するべきではない。
【0103】
本明細書にて開示される代替的な要素または実施形態の分類は、制限であるとして解釈されないものである。各群の構成要素は、個別に言及および主張され得るか、またはその他の群の構成要素もしくは本明細書にて見られるその他の要素とのあらゆる組合せで言及および主張され得る。群の1つ以上の構成要素が、利便性および/または特許性の理由から、群に含まれてもよく、または群から削除されてもよいということは予測されよう。あらゆるその様な包含または削除が発生する場合、本明細書は、付属の請求項にて使用される全てのMarkush群の書面による明細をそのように満たすように修正された群を含有するものと見なされる。
【0104】
本開示の実施形態を実行するため発明者に周知である最良の方法が含まれる、ある特定の実施形態が本明細書にて説明される。当然、これらの実施形態に対する変形は、前述の描写を読む際に、当業者には明らかであろう。発明者は、その様な変形を適切に使用する熟練の当業者を期待しており、そして発明者は本開示の実施形態が本明細書にて特に記載された方法とは別の方法で実施されることを意図している。したがって、本開示は、本明細書に付属の請求項に記載される主題の全ての修正および等価物を、準拠法によって許可されるように含む。さらに、全ての可能性があるその変形における上述の要素のあらゆる組合せが、本明細書において別段に示されない限り、または文脈と明確に矛盾しない限り、本開示によって包含される。
【0105】
本明細書にて開示される特定の実施形態は、「からなる(consisting of)」または「から本質的になる(consisting essentially)」という用語を用いる請求項によってさらに限定されてもよい。請求項で使用された場合、申請されたか、または補正を追加されたかに関わらず、移行用語(transition term)「からなる(consisting of)」は、請求項に明記されない、あらゆる要素、ステップ、または成分を除外する。移行用語「から本質的になる(consisting essentially of)」は、特定の物質またはステップ、ならびに基本的特性および新規特性には実質的に影響しない特定の物質またはステップに対して、請求項の範囲を限定する。その様に主張される本開示の実施形態は、本質的にまたは明白に、本明細書にて記述され、使用可能である。
【0106】
なおその上に、あらゆる参照が本開示を通じて特許および刊行物に対してなされている場合、これらの参照および刊行物の各々は、それらの全体が本明細書へ個別に組み込まれる。
【0107】
最後に、本明細書にて開示される実施形態は本開示の原理の解説であるということを理解されたい。使用することができるその他の修正は、本開示の範囲内である。したがって、例として、しかし限定するものではないが、本開示の実施形態の代替構造が本明細書に記載の教示にしたがって利用されてもよい。したがって、本開示は、示した通り、および解説した通りに厳密に制限されるものではない。
【0108】
(付記)
(付記1)
即時使用可能なビンクリスチン組成物であって、
第1水性緩衝液を含む連続した水相、
前記第1水性緩衝液内にて分散したリポソーム相、および、
前記リポソーム相内にてカーゴとして被包された(encapsulated)安定化水溶液、
を含み、
前記安定化水溶液は、第2水性緩衝液、およびそこに溶解した安定化したビンクリスチンを含み、
前記第2水性緩衝液は、前記リポソーム相の外に輸送することができ、前記安定化水溶液中に正電荷を持つ溶質またはヒドロニウムイオンを残す、少なくとも1つの溶質を有する塩を含み、前記正電荷を持つ溶質またはヒドロニウムイオンは前記ビンクリスチンを安定化し、且つ、
前記連続した水相および前記安定化水溶液は、少なくとも2pH単位のpH差を有する、
即時使用可能なビンクリスチン組成物。
【0109】
(付記2)
前記第2水性緩衝液がアンモニウム塩を含む、付記1に記載の組成物。
【0110】
(付記3)
前記第1水性緩衝液がリン酸緩衝液を含む、付記1に記載の組成物。
【0111】
(付記4)
前記リポソーム相がスフィンゴミエリンコレステロールリポソームを含む、付記1に記載の組成物。
【0112】
(付記5)
前記第2水性緩衝液が硫酸アンモニウムを含む、付記2に記載の組成物。
【0113】
(付記6)
前記ビンクリスチンが硫酸ビンクリスチンを含む、付記1に記載の組成物。
【0114】
(付記7)
前記安定化水溶液のpHが、約3〜約5である、付記1に記載の組成物。
【0115】
(付記8)
前記連続した水相のpHが、約5〜約8.8である、付記1に記載の組成物。
【0116】
(付記9)
前記連続した水相のpHが、約7〜約8.8である、付記1に記載の組成物。
【0117】
(付記10)
前記連続した水相のpHが、約7.5〜約8.8である、付記1に記載の組成物。
【0118】
(付記11)
前記安定化水溶液のpHが、約3〜約5である、付記10に記載の組成物。
【0119】
(付記12)
前記ビンクリスチンが硫酸塩形態にある、付記1に記載の組成物。
【0120】
(付記13)
前記リポソームが加水分解抵抗性である、付記1に記載の組成物。
【0121】
(付記14)
薬剤が、前記連続した水相中よりも前記安定化水溶液中においてより安定である、付記1に記載の組成物。
【0122】
(付記15)
前記連続した水相と前記安定化水溶液との割合が、前記2つの相の混合がpH約6〜約8.8の結合水相を結果として生じるような割合である、付記1に記載の組成物。
【0123】
(付記16)
前記アンモニウム塩が、約150mM〜約350mMの濃度で前記第2水性緩衝液中に存在する、付記1に記載の組成物。
【0124】
(付記17)
前記アンモニウム塩が硫酸アンモニウムである、付記16に記載の組成物。
【0125】
(付記18)
哺乳類においてがんを治療する方法であって、付記1に記載の組成物の治療量を、それを必要とする前記哺乳類へ投与することを含む、方法。
【0126】
(付記19)
前記がんが、リンパ腫、白血病、または骨髄腫である、付記18に記載の方法。
【0127】
(付記20)
前記ビンクリスチンが、約1.5mg/m
2〜約2.5mg/m
2の用量で投与される、付記18に記載の方法。
【0128】
(付記21)
哺乳類におけるがんの再発を治療する方法であって、前記哺乳類へ付記1に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【0129】
(付記22)
前記がんの再発が、リンパ腫、白血病、または骨髄腫である、付記21に記載の方法。
【0130】
(付記23)
前記哺乳類が、以前に少なくとも1回の多剤併用レジメン(multi-agent combination regime)を受けたことがある、付記21に記載の方法。
【0131】
(付記24)
リポソームで被包された前記ビンクリスチンが、少なくとも1つのさらなる化学療法薬と同時投与される、付記21に記載の方法。
【0132】
(付記25)
前記哺乳類がヒトである、付記21に記載の方法。
【0133】
(付記26)
リポソーム中においてビンクリスチンを安定化する方法であって、
第1水性緩衝液を含む連続した水相内にてリポソーム相を分散することを含み、
前記リポソーム相は、前記リポソーム相内にて被包された安定化水溶液を含有し、
前記安定化水溶液は、第2水性緩衝液、およびそこに溶解した安定化したビンクリスチンを含み、
前記第2水性緩衝液は、前記リポソーム相の外に輸送することができ、前記安定化水溶液中に正電荷を持つ溶質またはヒドロニウムイオンを残す、少なくとも1つの溶質を有する塩を含み、前記正電荷を持つ溶質またはヒドロニウムイオンは前記ビンクリスチンを安定化し、且つ、
前記連続した水相および前記安定化水溶液は、少なくとも2pH単位のpH差を有する、
方法。
【0134】
(付記27)
前記第2水性緩衝液がアンモニウム塩を含む、付記26に記載の方法。
【0135】
(付記28)
前記第1水性緩衝液がリン酸緩衝液を含む、付記27に記載の方法。
【0136】
(付記29)
前記リポソーム相が、スフィンゴミエリンコレステロールリポソームを含む、付記27に記載の方法。
【0137】
(付記30)
前記第2水性緩衝液が硫酸アンモニウムを含む、付記27に記載の方法。
【0138】
(付記31)
前記ビンクリスチンが硫酸ビンクリスチンを含む、付記27に記載の方法。
【0139】
(付記32)
前記安定化水溶液のpHが、約3〜約5である、付記27に記載の方法。
【0140】
(付記33)
前記連続した水相のpHが、約5〜約8.8である、付記27に記載の方法。
【0141】
(付記34)
前記連続した水相のpHが、約7〜約8.8である、付記27に記載の方法。
【0142】
(付記35)
前記連続した水相のpHが、約7.5〜約8.8である、付記27に記載の方法。
【0143】
(付記36)
前記安定化水溶液のpHが、約3〜約5である、付記34に記載の方法。
【0144】
(付記37)
前記ビンクリスチンが硫酸塩形態にある、付記27に記載の方法。
【0145】
(付記38)
前記リポソームが加水分解抵抗性である、付記27に記載の方法。
【0146】
(付記39)
薬剤が、前記連続した水相中においてよりも前記安定化水溶液中においてより安定である、付記27に記載の方法。
【0147】
(付記40)
前記連続した水相と前記安定化水溶液との割合が、前記2つの相の混合がpH約6〜約8.8の結合水相を結果として生じるような割合である、付記27に記載の方法。
【0148】
(付記41)
前記アンモニウム塩が、約150mM〜約350mMの濃度で前記第2水性緩衝液中に存在する、付記27に記載の方法。