特許第6850810号(P6850810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6850810微粒子アルカリ金属分散体との反応のための連続方法
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  • 特許6850810-微粒子アルカリ金属分散体との反応のための連続方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850810
(24)【登録日】2021年3月10日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】微粒子アルカリ金属分散体との反応のための連続方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 1/28 20060101AFI20210322BHJP
   C07F 7/08 20060101ALI20210322BHJP
   C07C 13/18 20060101ALI20210322BHJP
   C07C 45/65 20060101ALI20210322BHJP
   C07C 49/17 20060101ALI20210322BHJP
   C08G 77/60 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   C07C1/28
   C07F7/08 W
   C07C13/18
   C07C45/65
   C07C49/17 E
   C08G77/60
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-543433(P2018-543433)
(86)(22)【出願日】2016年10月27日
(65)【公表番号】特表2018-536029(P2018-536029A)
(43)【公表日】2018年12月6日
(86)【国際出願番号】EP2016075956
(87)【国際公開番号】WO2017076744
(87)【国際公開日】20170511
【審査請求日】2019年7月25日
(31)【優先権主張番号】102015221529.6
(32)【優先日】2015年11月3日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518156705
【氏名又は名称】ツェーハーテー ジャーマニー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CHT Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100111707
【弁理士】
【氏名又は名称】相川 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】ヒース, ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルギ, ウルリケ
(72)【発明者】
【氏名】バクス, ヘルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー, カイ・スヴェン
【審査官】 進士 千尋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−008549(JP,A)
【文献】 特開2013−081570(JP,A)
【文献】 特開平08−120082(JP,A)
【文献】 特表平01−503237(JP,A)
【文献】 特開昭63−243054(JP,A)
【文献】 特開昭54−117441(JP,A)
【文献】 特開2009−132675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07F
B01J 8/00
B01J 14/00
B01J 19/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性溶媒中において微細に分割されたアルカリ金属の分散液の連続化学反応をさせる方法であって、
液体アルカリ金属又はアルカリ金属混合物/合金を有する計量容器と、
反応物又は反応物混合物の計量容器と、
溶媒又は溶媒混合物の計量容器と、及び
回転ディスク・リアクターと、
を提供するステップと、
溶媒を回転ディスク・リアクターに計量供給するステップと、
液体アルカリ金属又はアルカリ金属混合物/合金を回転ディスク・リアクターに計量供給するステップと、
反応物又は反応物混合物を回転ディスク・リアクターに計量供給し、化学反応させるステップと、
を含む方法
【請求項2】
前記アルカリ金属又はアルカリ金属混合物又は合金は、リチウム、ナトリウム、カリウム、それらの混合物及び/又はそれらの合金であることを特徴とする、請求項1に記載の方法
【請求項3】
化学プロセスがウルツ合成であることを特徴とする、請求項1又は2のいずれかに記載の方法
【請求項4】
主族第IV族のモノハロゲン化合物、ジハロゲン化合物、又は多ハロゲン化合物が、前記ウルツ合成のための反応物として使用されることを特徴とする、請求項に記載の方法
【請求項5】
ウルツ合成において有機モノハロゲン化合物、有機ジハロゲン化合物、有機多ハロゲン化合物、及びそれらの混合物から、直鎖状、分枝状、及び環状の炭化水素を調製するための、請求項に記載の方法
【請求項6】
モノハロシラン、ジハロシラン、多ハロシラン、及びそれらの混合物から、ポリシランを調製するための、請求項に記載の方法
【請求項7】
化学プロセスがアシロイン縮合であることを特徴とする、請求項1又は2のいずれかに記載の方法
【請求項8】
有機モノエステル化合物、ジエステル化合物、トリエステル化合物、又はポリエステル化合物が、前記アシロイン縮合のための反応物として使用されることを特徴とする、請求項に記載の方法
【請求項9】
前記回転ディスク・リアクターが、その下流側に接続された滞留時間ユニットを有することを特徴とする、請求項1からのいずれかに記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細アルカリ金属分散体が有機溶媒において生成され、及び、特に、回転ディスク・リアクター(spinning disc reactor)(SDR)上で、有機エステル及びハロゲン化物の、及び、オルガノハロシランの結合のために用いられる連続プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ金属、及び、それらの中で特にナトリウムは、例えば、アルコラートの生産のため、ダルツェンのグリシド酸エステル縮合のため、芳香族化合物から脂肪族化合物への変換のためのバーチ還元のため、又は、α―ヒドロキシカルボニル化合物へのエステルのアシロイン縮合に対して、試薬として、有機化学において長く確立されてきた(K.Ruhlmann;Synthesis(1971),1971(5),236−253)。特に、後者の反応は、中環系及び大環系へのジカルボン酸エステルの分子内環化(反応)のために有機化学において重要である。
【0003】
元素のアルカリ金属のための応用のもう一つの主要な分野は、ハロアルカンから(シクロ)アルカンの合成のために主として最初に機能した、フランスの化学者Adolphe Wurtzによって1854年に発見されたウルツ・カップリング又はウルツ合成によって提供される。ウルツ合成により、3から6個の炭素原子の環サイズを有するシクロアルカンが入手可能である。ウルツ・カップリングはまた、非プロトン性有機溶媒中でのハロシランの重縮合によるσ−π−共役シリコンポリマーの生成のための主な経路でもある(R.D.Miller、J.Michl、Chemical Reviews(1989),89(6),1359−1410)。
【0004】
現在の技術水準によれば、上記の反応は、セミバッチ・プロセスで行われる(特に、欧州特許公報第0123934号、欧州特許公報第0632086、欧州特許出願公報第0382651号、欧州特許出願公報第1769019号、ドイツ特許出願公報第102012223260号、欧州特許出願公報第2872547号、欧州特許公報第0230499号、日本国特許公報第3087921号、日本国特許公報第2736916号、中国特許公報第103508869号、米国特許公報第4,324,901号、米国特許公報第4,276,424号、に記載されている)。この目的のために、アルカリ金属(例えばナトリウム)の懸濁液は、反応容器に入れられる。結合されるべき物質(ハロアルカン、ハロシラン、又はジエステル/エステル)は厳密に制御された条件下で、そこに計量される。しかし、この方法は、多くの安全上のリスク及び手続き上の問題を有している。一方、液体アルカリ金属の取り扱いだけでなく、反応性の高いクロロシランのような反応物の取り扱いも非常に複雑である。従って、水分はいずれにしても完全に排除されなければならない。一方、反応は非常に発熱性であるため、異なるバッチ内における小さな変動によってさえも、生成物特性の再現性は、影響を受ける。例えば、実験室規模においてでさえ、ポリシランの調製のためのウルツ・カップリングの結果の再現性が低いことが観察される。
【0005】
アルカリ金属分散液との反応は、界面反応であるので、できるだけ細かく分散された分散液、及びそれゆえに高い粒子表面は、迅速かつ完全な反応に対して、有利である。しかしながら、セミバッチ・プロセスにとって、このことを生成において厳密に調整することが難しく、結果としてプロセスにおいて、違いが生じる。また、異なる投与量が温度経過における誤差を導くことがあるので、正確な反応制御のためには反応物(例えば、ハロゲン化合物、エステル)の正確な量の投与が不可欠である。上記の理由から、これらの要因がまた、セミバッチ・プロセスのスケールアップ及び関連する反応の大規模(大スケール)な使用を、大幅により困難にすることは容易に理解できる。
【0006】
金属の融点を超える温度でのアルカリ金属とアルコールとの反応のために、静電ミキサー及び約500μmのチャネル寸法を備える熱交換器を備えるマイクロ・リアクターが、欧州特許第1162187号において用いられた。
【0007】
SDRの使用は、欧州特許公報第1206460号の置換シクロヘキサノンのエポキシ化、国際公開公報第2002/018328号のカルボキシ酸及びエステルの変換、米国特許公報第8,870,998号のナノ粒子の調製に対して、欧州特許公報第1862477号の溶液中のニトリルゴムの水素添加に対して、欧州特許公報第1152823号の不均一触媒反応に対して、及び、米国特許公報第7,683,142号のフリーラジカル・エマルション重合を実施することに対して、従来技術である。
【0008】
加えて、以下のようなことは科学文献において記述されているが、それらは、二酸化チタン粒子の生産のための適用(S.Mohammadi;A.Harvey;K.V.K.Boodhoo;Chemical Engineering Journal(2014)、258、171−184)、固定化触媒を用いたスチレンのカチオン重合のための適用(KVK Boodhoo;WAE Dunk;M.Vicevic;RJ Jachuck;V.Sage;DJ Macquarrie、JH Clark Journal of Applied Polymer Science(2006)、101(1)、8−19)、n−ブチルアクリレートの光重合のための適用(K.V.K.Boodhoo;W.A.E.Dunk;R.J.Jachuck;ACS Symposium Series(2003)、847(Photoinitiated Polymerization)、437−450)、同様に、マヨネーズの生産のための適用(M.Akhtar;B.S.Murray、S.Dowu;Food Hydrocolloids(2014)、42(S)、223−228)、リンゴジュース濃縮物の生産のための適用(M.Akhtar、P.Chan、N.Safriani、B.Murray、G.Clayton、Journal of Food Processing&Technology(2011)、2(2)、1000108)、そして、アイスクリーム・ベース・エマルションの生産のための適用(M.Akhtar;I.Blakemore;G.Clayton、S.Knapper、国際食品科学技術誌(2009)、44(6)、1139−1145)である。更に、Flowid社は、原材料の100kg/h若しくはビオゲン(Biogen)のための生成物の20kg/hの生成物フローでもって、室温で、リチウムハロゲン交換反応を実現した。(http://www.flowid.nl/success−ful−scale−up−of−butyl−lithium−using−the−SpinPro/08.08.2015)。更に、再結晶化又は粒子合成に関する多くの例が文献に記載されている。これらの多相系(マルチフェーズ・システム)のためのSDR技術の利点は、文献において詳細に議論され、そして、例とともに文書化された(K.Boodhoo&A.Harvey、「環境に優しい化学(グリーン・ケミストリー)のためのプロセス強化:持続可能な化学処理(ケミカル・プロセッシング)のための工学的な解(エンジニアリング・ソリューション)(2013)、第3章、John Wiley&Sons Ltd、59−90頁)、S.D.Pask、O.Nuyken、Z.Cai、Polymer Chemistry(2012)、3、2698)、P.Oxley、C.Brechteisbauer、F.Ricard、N.Lewis、C.Ramshaw、Industrial & Engineering Chemistry Research(2000)、39(7)、2175−2182)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、本発明の目的は、セミバッチ・モードの記述された問題によって限定されない、不活性溶媒中の微細に分割されたアルカリ金属の液体分散液との化学反応を行うための連続プロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことに、上記の目的は、不活性溶媒中における微細に分割されたアルカリ金属の分散体の変換(Umsetzung)のための連続化学反応を実施するための装置の使用によって、特に、不活性溶媒中において、微細に分割されたアルカリ金属、アルカリ金属混合物、及び/又は、アルカリ金属合金、の分散液を用いて、連続化学プロセスを実施するための回転ディスク・リアクター(スピニング・ディスク・リアクター)の使用によって、第1の実施例において達成される。
【0011】
連続生成技術の既知のシステムは、いわゆる栓流リアクター(Plug Flow Reactors)(PFR)、連続撹拌タンク・リアクター(Continuously Stirred Tank Reactor)(CSTR)、及び、そのカスケード、並びに、マイクロリアクション技術(Mikroreaktionstechnik)(MRI)を含む。通常は非常に発熱性である、分散されたアルカリ金属の界面反応に対して、非常に効率的な混合は、その表面へ若しくはその表面からの反応物及び生成物の最大の可能な質量流量(マスフロー)を確実にし、そして、それによって生じる熱を迅速に消散させるために不可欠である。これは、例えば、フロー・チューブ又はマイクロ・リアクター内の静的ミキサー(スタティック・ミキサー)を用いて達成することができる。後者は、滞留時間の理想的な分布を更に有する。CSTRにおいては良好な混合も可能であるが、比較的洗浄が容易であるという更なる利点を有し、それによって、(例えば、2つの非混和性液体成分又は固体反応生成物に関して)多相反応(マルチフェーズ・リアクション)における付着・堆積(ファウリング)又は閉塞(ブロッキング)が、軽微な問題となる。
【0012】
これまで技術的にほとんど使用されてこなかった連続生産技術の好ましいシステムは、回転ディスク・リアクター(spinning disc reactor)(SDR)である。
【0013】
本発明によれば、セミバッチ手順の本質的な問題は、連続プロセスにより微細に分割されたアルカリ金属の分散体との反応を実行するために排除することができる。連続的な反応プロセスにおいて、単位時間当たりほんの少量の危険物質のみが集められ、そして、それによって、理想的なケースにおいて効率的に混合される。もし、非常に発熱性の反応が取り扱われるならば、生成された熱は、高い表面対体積比によって消散され、その結果、反応混合物における均一な温度プロファイルが得られる。本発明によれば、このすべてが、そのような反応の安全性の側面の顕著な改善、及び、そのような連続プロセスの定常状態における生成物品質の著しく改善された再現性、という結果になる。
【0014】
本発明は、特に、ハロゲン化合物のウルツ・カップリング、及び、エステルのアシロイン縮合ために使用される。ウルツ・カップリングにおいて形成された濃縮塩分散又は反応に先立ち、ここにおいてそれぞれ存在する、液体二相系は、この動的システムにおける高いせん断力のために、SDRの連続操作において、付着・堆積(ファウリング)又は閉塞(ブロッキング)という結果にならない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の例示的なフローチャートを示す。符号1は、液体アルカリ金属又はアルカリ金属混合物/合金を有する計量容器を示し、符号2は、反応物又は反応物混合物の計量容器を示し、符号3は、溶媒又は溶媒混合物の計量容器を示し、符号4は、回転ディスク・リアクター(spinning disc reactor)(SDR)を示し、符号5は、オプションとしての滞留時間ユニット(例えば、攪拌タンク、攪拌タンク・カスケード、熱交換器)を示し、符号6は、生成物混合物の収集容器を示し、符号7は、副生成物混合物の収集容器を示す。
【0016】
上記の例のために、回転ディスク・リアクターは、固体沈殿物を形成するように、不活性有機溶媒中における液体アルカリ金属分散液との反応、特に、ハロゲン化合物のウルツ・カップリング及びアシロイン縮合、を実施するための本発明による妥当な技術として発展され得るであろう。このタイプのリアクターは、特に、熱伝達(加熱、冷却、熱交換)及び物質輸送プロセス(混合、分散)を最適化するために、プロセスの強化のために開発されてきた。この技術は、電動モータによって駆動される回転軸上に水平に取り付けられる、1つ又はそれ以上のディスクに基づいている。このディスクの表面に塗布される液体は、遠心加速度の作用によって、プレートの縁へ又はそれを超えるように、飛ばされる。形成された薄膜においては、高いせん断力が働いており、そして、そのために優れた熱及び物質移動速度が存在する。従って、非常に発熱性の反応において、結果として得られる熱を迅速に散逸させることができ、そして、拡散制御プロセスにおいて物質輸送(マストランスポート)を最大化させることができる。加えて、中を流れる液体フィルムにおいて導入される高いせん断力は、多相系(マルチフェーズ・システム)における反応において主に、顕著な利点を提供する強い乱流を導く。高いせん断力のために、分散相は非常に細かく分割され、そして、2つの不混和相間の界面が最大化される。これにより、その界面へ及びその界面からの物質輸送(マストランスポート)が最適化される。さらに、回転運動は、ディスク表面からの固体堆積物を押し出すのに十分強く、自浄メカニズムを作り出し、付着・堆積(ファウリング)又は閉塞(ブロッキング)が、沈殿物形成により減少させられる。
【0017】
本発明に記載される使用は、典型的には、不活性溶媒又は溶媒混合物及びその中に溶解された反応物質(例えば、ハロアルカン、ハロシラン、エステル)からなる液体媒体中において行われる。一般に、高い反応速度を達成するために、使用されるアルカリ金属又は使用されるアルカリ金属混合物若しくは合金は、反応媒体中において、微細に分散させられた状態に分散するために溶融状態にある必要がある。アルカリ金属又はアルカリ金属の混合物若しくは合金、反応物及び溶媒は、各々別個にリアクター内へと計量供給される。アルカリ金属又はアルカリ金属の混合物若しくは合金と反応物との反応において、反応混合物内の不溶性のアルカリ金属塩が生成し、そして、反応のタイプにより、液体媒体中に可溶性又は不溶性である、カップリング生成物が形成される。したがって、それは連続的に実行される、反応相が液体形態で存在する、多相(マルチフェーズ)反応であり、そして、1又はそれ以上の反応生成物が、固体沈殿物として沈着する。
【0018】
すべての反応ステップは、酸素又は湿度による副反応、特に水素及び塩化水素の形成、を防止するために、不活性ガス雰囲気下で典型的に実施される。
【0019】
原則として、全てのアルカリ金属、それらの混合物若しくは合金は、アルカリ金属分散体を調製するために妥当である。その融点が−20及び190℃の間の範囲にある、アルカリ金属又はその混合物及び/又は合金は、好ましい。特に好ましいのは、リチウム、ナトリウム、及びカリウム、並びに、それらの混合物及び合金であるが、それらは、技術的に入手し易く、取り扱いが技術的に容易な温度範囲内で溶融するからである。
【0020】
妥当な不活性溶媒として、反応物(例えば、主族IVの元素のハロゲン化合物又は有機エステル)が可溶性であり、そして、使用されるアルカリ金属と又は使用されるアルカリ金属混合物若しくは合金と反応しない、工業的に通常の非プロトン性有機溶媒のすべてを使用することができる。ベンゼン、トルエン、キシレン、及び脂肪族炭化水素のような炭化水素、並びに、ジオキサン、アニソール、及びTHFのようなエーテルが、好ましく使用される。不活性溶媒はまた、述べてきた溶媒、例えば炭化水素及びエーテルの混合物、即ち、トルエン及びTHFの混合物であってもよい。典型的には、反応において形成されるアルカリ金属塩は、使用される溶媒に可溶性でなく、沈殿物の濾過によって分離することができる。
【0021】
前記反応物として異なる物質を使用してもよい:
本発明の方法に関し、一官能基の、二官能基の、三官能基の、及び多官能基の(mono−,di−,tri− und polyfunktionelle)ハロゲン化アルキル(アルキルハライド)及びハロゲン化アリール(アリールハライド)、並びにそれらの混合物、及び、一官能基の、二官能基の、三官能基の、及び多官能基のハロオルガノシラン(polyfunktionelle Halogenorganosilane)及びそれらの混合物、のようなウルツ・カップリングに対して、共通の全ての基材を反応させることができる。ハロゲン化合物において、前記ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、及びびヨウ素を使用することができ、特に、塩素、臭素、及びヨウ素を使用することができ、好ましくは、塩素及び臭素を使用することができる。特に、本発明は、ポリシランではないハロゲン化されたオルガノシラン構成要素のポリカルボシラン及びポリシランの調製のために適している。ハロゲン化されたオルガノシラン成分は、5個未満のケイ素原子、好ましくは3個までのケイ素原子、より好ましくは2個以下のケイ素原子、及び最も好ましくは1個だけのケイ素原子を含むことによって規定される。
【0022】
アシロイン縮合に対して、モノエステル、ジエステル、トリエステル、及びポリエステルが使用される。好ましくは、モノエステル及びジエステルが使用される。特に、記述された方法は、ジカルボン酸エステルの中環系及び大環系への分子内環化に適している。
【0023】
本発明において、溶剤、アルカリ金属、及び反応物の量は、SDRの付着・堆積(ファウリング)及び閉塞(ブロッキング)が最小限に維持されるように、固体沈殿するアルカリ金属ハロゲン化物及び不溶性生成物(仮にあったとしても)の形成の後であっても、反応媒体が依然流動的であるように、選択されるべきである。典型的には、全反応混合物に基づいて、5から99重量%の溶媒、好ましくは50から97重量%の溶媒割合、より好ましくは70から95重量%の溶媒割合が用いられる。
【0024】
本発明によれば、反応物に対する使用されるアルカリ金属又はその混合物及び/又は合金の割合は、完全な変換が達成されるように選択される。低分子量のカップリング生成物の生産において、可能であれば、化学量論的使用が好ましい。高分子カップリング生成物の調製に対して、ハロゲン化物に対するアルカリ金属の過剰量が、好ましくは20重量%までの過剰量が、より好ましくは10重量%までの過剰量が、更により好ましくは5重量%までの過剰量が、典型的には必要とされる。
【0025】
本発明において記述のプロセスは、広い温度範囲で実施することができる。温度範囲は、2つの流体、より具体的には溶融アルカリ金属又は溶融アルカリ金属混合物若しくは合金、及び、溶媒及び反応物の反応媒体、を有する多段プロセスであるという事実によって制限される。従って、アルカリ金属又はアルカリ金属合金/混合物の溶融温度は、その温度範囲の下限として生じる上限は、反応混合物の沸騰及びSDRの技術的設計によって決定される。好ましくは、反応は、50及び200℃の間の範囲内、より好ましくは100及び115℃の範囲内において実施される。
【0026】
SDRのターンテーブルの回転速度は、溶媒中の液体アルカリ金属又はアルカリ金属混合物/合金の最適分散が得られるように選択されなければならない。
【0027】
本発明の更なる利点は、反応混合物の表面積対体積の高い比であり、これの効率的な混合であるが、これにより、発熱反応において発生する熱量の効率的な除去が可能となる。このことは、SDRにおける反応混合物の短い滞留時間という結果になり、それゆえに、反応の潜在的危険性の同時低下と共に、短い全体的なプロセス時間となる。結果として生じる高い空間―時間の生産は、確立されたセミバッチ・プロセスと比較して、記述されるプロセスを経済的に非常に興味深くする。典型的には、SDRにおける反応混合物の滞留時間は、10分未満であり、より好ましくは5分未満である。この間、反応の発熱反応の熱量の大部分は、放出され、消散する。反応基の変換を最大にするために、特に高分子反応生成物の調製において、滞留時間ユニットは、オプションとして下流側に接続されてもよい。ここで、本技術分野で知られている全ての適切なユニット、特に連続攪拌タンク、攪拌タンク・カスケード、熱交換器、及び温度制御可能なループ・リアクターが適している。
【0028】
反応が所望の変換の度合いに達したとき、反応生成物は反応混合物から分離され得、オプションとして、本技術分野において既知の如何なる妥当な方法によってもオプション的に精製され得る。例えば、もし生成物が反応媒体内において可溶であるならば、固体アルカリ金属塩沈殿物は、もしあるならば、残存するアルカリ金属と共に最初に濾過により分離される。次いで、生成物は、例えば、分別蒸留によって、又は、溶媒を留去することによって得られる。もし生成物が反応媒体に不溶であれば、固体アルカリ金属塩沈殿物及び場合によっては残留アルカリ金属と共に濾過により除去することができる。未反応のアルカリ金属は、必要に応じて、プロトン性溶媒によって、不活性化され、そして、アルカリ金属塩は、水で抽出される。これらは実施例である。
【実施例】
【0029】
[実験例]
実施された反応のために、3つのターンテーブル及び一体化された熱交換器を備えた市販のFlowid社(the Company Flowid)のスピンプロ・リアクター(SpinPro Reactor)を使用した。(アイントホーフェン(Eindhoven)、オランダ(Netherlands)、http://www.flowid.nl/spinpro−reactor/)。ターンテーブルと壁との間の距離は2mmであった。リアクター容積は230mlであった。すべての反応に対して、リアクターは、不活性化のために20回排気され、8バールの窒素で換気した。ポリシラン(実験例1及び2)の合成のために、20分間の滞留時間でもって(流速7.2kg/h = 2.8L;流速10.8kg/h => 4.1L)連続撹拌タンクは、滞留時間ユニットとしてSDRの下流側に接続された。
【0030】
[比較例:]
[ポリ(メチルフェニルシラン)の調製のためのセミバッチ・プロセス:]
標準的なシュレンク技術(Standard−Schlenk−Technik)を用いて、滴下漏斗、還流冷却器、KPG撹拌機、及び温度プローブを備えた1000mLの四ツ口フラスコを含む装置は、排気され、アルゴンで満たされた。四ツ口フラスコ内に、215gのキシレン及び17.9gのナトリウムが充填された。滴下漏斗はまた、不活性ガス雰囲気下において、67.3gのジクロロメチルフェニルシランで満たされた。ゆっくり攪拌しながら、ナトリウムが溶融するように、フラスコはオイルバス中で約102℃に加熱された。ここで、攪拌速度を正確に300rpmに設定し、約5分間撹拌が実施された。この後、均質で微細に分割された分散体が形成された(目視評価)。この懸濁液に、ジクロロフェニルメチルシランが約30分間かけて計量供給された。反応の開始は、反応混合物の強い紫色の着色だけでなく、温度における上昇によっても、観察され得た。反応温度が常に102から106℃の温度範囲内に保たれるところ、ジクロロフェニルメチルシランが計量供給時間にわたって均一に添加されるように、計量供給速度は選択された。
【0031】
計量供給の終了後、反応混合物は、102℃で更に2時間撹拌された。室温にまで冷却した後、得られた懸濁液は、保護ガス下で、セラミックフリット(Keramikfritte)(G4)を通して濾過された。形成されたポリ(メチルフェニルシラン)の可溶性画分を得るために、真空下で、溶媒混合物を蒸留除去することにより、濾液は濃縮された。ポリマーは、H NMR、13C NMR、29Si NMR分光法(それぞれC中)及びゲル浸透クロマトグラフィー(THF中、光散乱検出器を用いて)によって特徴付けられた。
【0032】
収率:32%
モル質量:2000g/モル
H NMR(δ[ppm]、CDCl):6.5−7.5ppm、0.5ppm
13C NMR(δ[ppm]、CDCl):134−138ppm、125−130ppm、21ppm
29Si−NMR(δ[ppm]、CDCl):−41ppm、−40ppm、−39ppm、+15ppm
【0033】
[実験例1−ポリ(メチルフェニルシラン)の連続的調製:]
反応を開始させるために、SDRは、回転速度を1000又は2500rpmに、加熱オイル温度を100又は105℃に、そして、初期キシレン流速を6.5kg/hに、調整された。リアクター内で一定の温度が確立されたら、ナトリウム計量供給が開始された。収集容器内へと灰色の分散液の放出が観察されるとすぐに、ジクロロメチルフェニルシランの計量供給が開始された。ジクロロメチルフェニルシラン対ナトリウムの質量比は、すべての実験において5/1で一定であった。反応の開始は、リアクターの第1及び第2のプレート上の温度上昇によって直ちに認識された。その後、深く紫色に呈色した反応混合物は、収集容器内へと排出された。計量供給速度及びオイル温度は、表にリストされているように、変化させた。
【0034】
生成物は、G4セラミックフリットを通して窒素下で濾過され、溶媒は、真空下で完全に留去された。ポリマーは、H NMR、13C NMR、29Si NMR分光法(それぞれC中)及びゲル浸透クロマトグラフィー(THF中、光散乱検出器を用いて)によって特徴付けられた。
【0035】
【表1】
【0036】
H NMR(δ[ppm])、CDCl):6.5−7.5ppm、0.5ppm
13C NMR(δ[ppm]、CDCl):134−138ppm、125−130ppm、21ppm
29Si−NMR(δ[ppm]、CDCl):−41ppm、−40ppm、−39ppm、+15ppm
【0037】
[実験例2−環状オリゴ(メチルフェニルシラン)の調製:]
2500rpmの回転速度、125℃の加熱オイル温度、及び6.5kg/hのキシレン流速で、ナトリウム計量供給が、2g/分で開始された。リアクター内の温度は、122℃で平準化された。リアクターからの灰色の分散液の放出が観察されるとすぐに、モノマー計量供給が、10g/分で開始された。反応の開始は、第1のプレート上の129℃までのリアクター内の温度上昇によって直ちに認識された。少し後に、濃い紫色に呈色した反応混合物は、収集容器内へと排出された。生成物は、窒素下で濾過され、そして、溶媒は留去された。ポリマーは、H NMR、13C NMR、29Si NMR分光法(それぞれC中)及びゲル浸透クロマトグラフィー(THF中、光散乱検出器を用いて)によって特徴付けられた。
【0038】
GPC(溶離剤トルエン、RI検出器、キャリブレーション:ポリシロキサン標準):300g/mol、900g/mol
【0039】
GPC(溶離剤THF、LS検出器、試料特定キャリブレーション):1300g/mol、D=1.6
【0040】
H NMR(δ[ppm]、CDCl):6.5−7.5ppm、0.5ppm
13C NMR(δ[ppm]、CDCl):134−138ppm、125−130ppm、21ppm
29Si−NMR(δ[ppm]、CDCl):−41ppm、−40ppm、−39ppm、+15ppm
【0041】
[実験例3−1,6−ジブロモヘキサンのシクロヘキサンへの環化:]
2500rpmの回転速度、110℃のオイル温度、及び6.5kg/hのキシレン流速で、ナトリウム計量供給は、1.0g/分で開始された。リアクター内の温度は、122℃で平準化された。リアクターからの灰色の分散液の放出が観察されるとすぐに、1,6−ジブロモヘキサンの計量供給が、4g/分で開始された。反応の開始は、第1のプレート上の127℃までのリアクター内の温度上昇によって直ちに認識された。少し後に、濃い紫色に呈色した反応混合物が、収集容器内へと排出された。生成物は、窒素下で濾過して分離され、濾液の組成は、GC−MSによって分析され、98.5%の変換率が、決定された。純粋な生成物は、91%の収率において濾液の分別蒸留によって得られ、そして、H及び13C NMR分光法により解析された。
H NMR(δ[ppm]、CDCl):1.44
13C NMR(δ[ppm]、CDCl):26.9
図1