特許第6850811号(P6850811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850811
(24)【登録日】2021年3月10日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/42 20060101AFI20210322BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20210322BHJP
   B60R 16/04 20060101ALI20210322BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20210322BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20210322BHJP
【FI】
   H01M10/42 P
   H01M10/48 P
   B60R16/04 W
   H02J7/00 Y
   G01R31/392
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-548574(P2018-548574)
(86)(22)【出願日】2017年8月30日
(86)【国際出願番号】JP2017031142
(87)【国際公開番号】WO2018083873
(87)【国際公開日】20180511
【審査請求日】2019年3月18日
(31)【優先権主張番号】特願2016-214833(P2016-214833)
(32)【優先日】2016年11月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003333
【氏名又は名称】ボッシュ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山田 哲也
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第101639522(CN,A)
【文献】 特開2013−140055(JP,A)
【文献】 特開2013−051764(JP,A)
【文献】 特開2010−208539(JP,A)
【文献】 特開2006−188130(JP,A)
【文献】 特表2006−509670(JP,A)
【文献】 特開2007−280776(JP,A)
【文献】 特開2010−230654(JP,A)
【文献】 特開2010−064538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42
B60R 16/04
G01R 31/392
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池(5)の電圧を第1の間隔で測定し、測定した電圧値を前記第1の間隔よりも長い第2の間隔で抽出する制御装置(10)において、
前記第2の間隔ごとに、前記第1の間隔で測定した複数の電圧値を抽出する抽出処理を内燃機関の始動時に繰り返し、抽出した電圧値に基づいて前記二次電池(5)の最下点を特定し、前記最下点がしきい値を下回るか否かに基づいて前記二次電池(5)の劣化を判定する制御部(11,18)
を備え
前記制御部(11,18)は、前記第2の間隔ごとに、前記第1の間隔で測定された電圧値について複数の平均値を取得し、取得された該複数の平均値のうち最小の平均値を前記最下点として特定し、
前記複数の平均値は、第1組の電圧値のデータに基づいて取得される第1平均値と、該第1組に含まれるデータとは異なる第2組の電圧値のデータに基づいて取得される第2平均値と、を含む
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記制御部(11,18)は、前記内燃機関の始動時に、エンジンオフタイマ(17)の時間が所定時間以上であると判定した場合、前記抽出処理を行わない
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部(11,18)は、アイドリングが安定すると、前記抽出処理を行わない
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部(11,18)は、エンジンオンタイマ(20)が規定時間を超えると判定した場合、前記二次電池(5)の劣化を判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は制御装置に関し、例えば二次電池の劣化を判定可能な制御装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車では、エンジンの回転を動力源としてオルタネータが常時発電しているため、バッテリが満充電となった後も、エンジンに負荷がかかり、燃料を消費している。
【0003】
近年、燃費向上のためにエンジンとオルタネータとを直接駆動させず(常時発電せず)、極力バッテリに蓄えられた電力を先に使い(放電させ)、バッテリが過放電レベルになる前に、オルタネータを回転させてバッテリの充電を行うシステムが一般化しつつある。これは、バッテリにとっては以前より過酷な使用環境であり、バッテリ劣化の発生のおそれが以前に比べて増し、バッテリ劣化の把握が以前に比べてより重要になっている。しかしながら、エンドユーザーは、始動性が悪い、ヘッドライトが暗いなど、バッテリに不調を感じた際、自ら補充電や新品への交換時期を感覚で判断している。このようなことから、自動車に搭載されているバッテリについて、その劣化をシステム的に判断したいという要望が高まっている。
【0004】
一般にバッテリが劣化した際は、バッテリの内部抵抗値が増加し、電気の流れが悪くなる。例えば車両用の鉛バッテリでは、CCA(Cold Cranking Amps)値(液温−18℃で30秒後に7.2Vとなる放電電流)、希硫酸の比重、または充放電電流を専用のセンサで計測することでバッテリ劣化をより正確に判断できる。このように専用のセンサを新たに設ける構成は、問題解決の手段として簡潔であるが、部品の設置スペースについて数々の制約がある車両にあっては、新たな部品の追加は現実的ではなく、また検査工程の追加による製品単価の上昇を招くという問題がある。この点、バッテリ電圧については、既にECU(Engine Control Unit)等で測定されており、専用のセンサを新たに設ける必要がないため、現状は、バッテリ劣化については、定常時におけるバッテリ電圧で判断することが大半である。
【0005】
ここで、バッテリが劣化した場合、内部抵抗が増加する場合が多く(例えば鉛バッテリでは明確に現れる)、またエンジンの始動時は、スタータモータで瞬間的に大電流を要求されるので、エンジンの始動時には、この増加した内部抵抗による電圧降下が顕著に現れる。このような特徴を踏まえ、エンジンの始動時におけるバッテリ電圧の最下点を測定し、バッテリ劣化を判定することが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−208539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
バッテリ電圧の最下点を精度良くモニタするには、サンプリング間隔を短くする必要性が出てくる。一般に、システムで使用するバッテリ電圧のサンプリング間隔は、例えば10〜20msで十分に満足できるが、エンジンの始動時の最下点を十分な精度でモニタするには、より短い例えば数msのサンプリング間隔を必要とする。しかしながら、常時この速度でサンプリングし続けることはCPU(Central Processing Unit)に無用な計算負荷を掛けてしまう問題がある。
【0008】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、新たなセンサを追加することなく、かつ電圧値を抽出する間隔を既存の間隔より短くすることなく、二次電池の劣化を高精度に判定可能な制御装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため本発明においては、二次電池の電圧を第1の間隔で測定し、測定した電圧値を第1の間隔よりも長い第2の間隔で抽出する制御装置において、第2の間隔ごとに、第1の間隔で測定した複数の電圧値を抽出する抽出処理を内燃機関の始動時に繰り返し、抽出した電圧値に基づいて二次電池の最下点を特定し、最下点がしきい値を下回るか否かに基づいて二次電池の劣化を判定するようにした。
【0010】
本発明の制御装置によれば、第2の間隔ごとに抽出処理する際に、第1の間隔で測定された複数の電圧値を取得して評価することで、エンジンの始動時におけるバッテリ電圧の最下点を精度良く測定するので、二次電池の劣化を高精度に判定することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、新たなセンサを追加することなく、かつ電圧値を抽出する間隔を既存の間隔より短くすることなく、二次電池の劣化を高精度に判定可能な制御装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】車両システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】ECUにおけるサンプリングの概略構成を示す図である。
図3A】ECUが実行する処理のフローチャートを示す図である。
図3B】ECUが実行する処理のフローチャートを示す図である。
図4】最下点の検出結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0014】
(1)実施の形態
図1は、本実施の形態による車両システム1の概略構成を示す。この車両システム1は、イグニッションスイッチ2、スタータモータ3、オルタネータ4、バッテリ5、表示灯・警告灯パネル6、およびECU10を備えて構成される。この車両システム1では、イグニッションスイッチ2がオンでさらに内燃機関始動信号(スターター信号2a)がオンになると、二次電池(例えば鉛電池)であるバッテリ5の電力が用いられてスタータモータ3が回転し、内燃機関であるエンジン(図示せず。)が始動される。エンジンの始動の際、ECU10では、バッテリ5が劣化しているか否かの判定(バッテリ劣化判定処理)が行われ、バッテリ5が劣化している場合、表示灯・警告灯パネル6にてバッテリ5が劣化していることを示す警告灯表示で運転者にバッテリ5の異常を知らせる機能を持たすこともできる。
【0015】
ここで、ECU10は、自動車等に搭載される制御装置であり、CPU11、エンジンオフタイマ19、エンジンオンタイマ20を備え、電装部品の制御、バッテリ劣化判定処理などを行う。またCPU11は、I/Oポート12、ADC(10bit−Analog to Digital Converter)13、ADCレジスタ14、RAM(Random Access Memory)15、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)16、ローサイドドライバ17などを備える。なお上述のハードウェア構成は一例である。またECU10が行う制御(処理)の一部または全部は、ハードウェア(回路等)により実行されてもよいし、ソフトウェア18(例えばCPU11がROM(図示せず。)に記憶されたプログラムを読み出すこと)により実行されてもよい。
【0016】
図2に示すように、ADC13は、バッテリ5内の電圧(バッテリ電圧)を測定するセンサのシグナル(センサ信号)を1ms毎に読み込んでデジタルデータ(電圧値)としてADCレジスタ14に蓄える。例えば、エンジンの始動時にバッテリ電圧の最下点を特定するために、CPU11のサンプリング間隔(CPU11がADCレジスタ14から電圧値を抽出する間隔)を10msとする場合、従来は、ADCレジスタ14に保存された直近の1個が使用され、10個のうち9個が使用されなくなってしまう。この点、CPU11のサンプリング間隔を2msに早めることによって、より正確なデータ(バッテリ電圧の最下点)を抽出することが可能である。しかしながら、2ms等の短いサンプリング間隔は、CPU11に計算負荷を与えることになるので、CPU11のサンプリング間隔は、通常の10〜20msが適切なサンプリング間隔となる。そこで本実施の形態のECU10では、ADC13の処理レート(測定間隔)「1ms」およびCPU11の処理レート(サンプリング間隔)「10ms」は変更せずに、CPU11のサンプリング間隔毎に、CPU11がADC13から出力されたADCレジスタ14内の10個のデータに基づく最下点(最小値)を決定し、RAM15に保存する構成を採用する。最下点については、CPU11は、ADCレジスタ14内の10個のデータのうち、最も小さい電圧値を最下点としてもよいが、連続する2個のデータを平均化し、平均化した5個のデータ(平均値)のうちの最小の平均値を最下点として選択する。このように平均値から最下点を選択することで、センサ信号におけるノイズを除去できるようになる。
【0017】
次にECU10によって10ms毎に実行されるバッテリ劣化判定処理を図3Aおよび図3Bに示すフローチャートに基づいて説明する。バッテリ劣化判定処理の繰り返しは、アクセサリポジションON、キーONなど、エンジンの始動前の適宜のユーザ操作に応じて開始され、アイドリングが安定する、スタータモータ3の回転が停止するなどの予め設定した終了条件が満たされると、終了される。
【0018】
まずステップS11では、ECU10は、車両が長期間放置されているか否か、より具体的にはエンジンオフタイマ19が所定時間以上となっているか否かを判定する(S11)。ECU10は、車両が長期間放置されていると判定した場合、バッテリ5が過放電となっている可能性があるので、今回のドライビングサイクルでは最下点の特定(検出)を実施することなく、通常発電を行い(S12)、バッテリ劣化判定処理を終了する。他方、車両が長期間放置されていないと判定した場合、ステップS13に処理を移す。
【0019】
ここで、現在の車両システムでは、キーOFF時であっても、微弱な電流が流れ続けていて(暗電流)、車両が放置される(エンジンを掛けない)時間が長い程、放電ぎみな状態になるが、これはバッテリ劣化ではなく単なるバッテリ上がり(空に近い)である。しかしながら、たとえ専用のセンサを新たに取り付けたとしても暗電流によって放電したバッテリ上がりを検出することは困難である。そのため、長期間放置による過放電のバッテリ5についてバッテリ電圧の最下点を同様に判定すると誤検知につながるため、長時間放置後の最初のドライビングでは診断をスキップする。なお過放電となっているか否かは車両システムで使用される電流量から推測可能である。
【0020】
次いでステップS13では、ECU10は、アイドリングが安定しているか否か、より具体的にはアイドリングディレイタイマが所定時間を経過したか否かを判定する(S13)。ECU10は、アイドリングが安定していると判定した場合、バッテリ劣化判定処理を終了するように判定許可フラグをクリアし(S14)、ステップS15に処理を移す。つまり、バッテリ電圧の最下点は、エンジンの始動時に顕著になるが、エンジンの回転数が安定してオルタネータ4の電力が使用できるようになると、バッテリ電圧の最下点が検出できなくなるので、バッテリ劣化判定処理は、エンジンの回転数が安定したら止められる。他方、ECU10は、アイドリングが安定していないと判定した場合、ステップS15に処理を移し、S13の所定時間経過までバッテリ劣化判定処理は継続されることになる。
【0021】
次いでステップS15では、ECU10は、判定許可フラグが「TURE」であるか否か、すなわちバッテリ電圧の最下点の検出を行うか否かを判定する(S15)。ECU10は、バッテリ電圧の最下点の検出を行うと判定した場合、ステップS16に処理を移し、バッテリ電圧の最下点の検出を行わないと判定した場合、バッテリ劣化判定処理を終了する。なお判定許可フラグについてはバッテリ劣化判定処理の初期化処理(図示せず。)で初期値「TURE」がセットされている。
【0022】
次いでステップS16では、ECU10は、スタータモータ3が始動したか否かを判定する(S16)。スタータモータ3の初回起動時はバッテリ電圧の最下点を示すRAM15の値(RAM値)が「0」であるので、ECU10は、始動したと判定した場合、バッテリ電圧の最下点の初期値(例えば12V)をRAM15に保存し(S17)、ステップS18に処理を移し、始動していないと判定した場合、ステップS18に処理を移す。
【0023】
次いでステップS18では、ECU10は、スタータモータ3が回転しているか否かを判定する(S18)。ECU10は、スタータモータ3が回転していると判定した場合、ステップS19に処理を移し、スタータモータ3が回転していないと判定した場合、バッテリ劣化判定処理を終了する。
【0024】
次いでステップS19では、ECU10は、ADCレジスタ14の電圧値について平均化処理を行う(S19)。より具体的には、ECU10は、ADCレジスタ14に保存された10個の電圧値について、連続する2個の電圧値の平均を算出して平均化データ(平均値(0−1)、平均値(2−3)、平均値(4−5)、平均値(6−7)、平均値(8−9))を生成する。
【0025】
次いでステップS20では、ECU10は、平均化データについてミニマム処理を行う(S20)。より具体的には、ECU10は、平均化データにおいて最小の平均値を特定する。
【0026】
次いでステップS21では、ECU10は、バッテリ電圧の最下点を更新する(S21)。より具体的には、ECU10は、ステップS20で特定した最小の平均値(今回の最下点)とRAM15に保存している値(以前までの最下点)とを比較し、今回の最下点の方が以前までの最下点より小さい場合、RAM15の値を今回の最下点に更新する。
【0027】
次いでステップS22では、ECU10は、バッテリ電圧の最下点が所定のしきい値を下回っているか否か(例えば7.2V以下であるか否か)を判定する(S22)。ECU10は、バッテリ電圧の最下点が所定のしきい値を下回っていると判定した場合、ステップS25に処理を移し、バッテリ電圧の最下点が所定のしきい値を下回っていないと判定した場合、ステップS23に処理を移す。
【0028】
次いでステップS23では、ECU10は、バッテリ5の劣化(異常)があることを示すバッテリ劣化フラグをクリアし(S23)、次いでステップS24では、今回のドライビングサイクルにおいてバッテリ5の劣化(異常)があることを示す履歴(劣化履歴)をEEPROM16からクリアし(S24)、バッテリ劣化判定処理を終了する。
【0029】
次いでステップS25では、ECU10は、バッテリ劣化フラグを「TURE」にセットし(S25)、ステップS26に処理を移す。
【0030】
次いでステップS26では、ECU10は、単位期間あたりのエンジンのONおよびOFFの回数が所定回数を下回っているか否か、より具体的にはエンジンオンタイマ20が規定時間を超えているか否かを判定する(S26)。ECU10は、所定回数を下回っていると判定(規定時間を超えていると判定)した場合、ステップS27に処理を移し、所定回数を下回っていないと判定(規定時間を超えていないと判定)した場合、バッテリ劣化判定処理を終了する。ここで、エンジンオンタイマ20の値は、前回のドライビングサイクルでEEPROM16に保存されていて、エンジンオンタイマ20の値が小さいと、通常使用ではないので、バッテリ5が多く放電していることを示し、バッテリ劣化としてカウントされない。より具体的には、宅配便等の用に供される車両において、短期間に移動および停止を繰り返した場合、エンジンオンタイマ20の値が小さく、バッテリ劣化を正しく判定できないおそれがあるので、バッテリ劣化の判定をスキップする。また宅配便等の用に供される車両ではなく、バッテリ5の電力(エネルギー)を多く使っているときは、後述するようにエンジンオンタイマ20の値は十分に上がっておらず、バッテリ劣化を正しく判定できないおそれがあるので、バッテリ劣化の判定をスキップする。また宅配便等の用に供される車両ではなく、バッテリ5の電力を多く使っていないときは、エンジンオンタイマ20の値は十分に上がっているので、バッテリ劣化の判定を実施する。
【0031】
次いでステップS27では、ECU10は、EEPROM16に保存されている前回の劣化履歴を参照し、前回のドライビングサイクルでバッテリ5が劣化していると判定したか否かを判定する(S27)。ECU10は、バッテリ5が劣化していると判定した場合(例えば2回連続でバッテリ5が劣化していると判定した場合)、ステップS29に処理を移し、バッテリ5が劣化してないと判定した場合、ステップS28に処理を移す。
【0032】
ここで、本実施の形態の車両システム1では、電力を多く消費するもの(例えば、ヘッドライト、グロープラグ、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータ等)のON信号がECU10等で測定され、エンジンオンタイマ20の値(エンジンON時間)も計測されている。ただしバッテリ5が多くのエネルギーを使用しているときは、バッテリ5が十分に充電されていない可能性があるので、エンジンON時間は加算されない。このことから、ECU10は、エンジンON時間が十分でないとき、例え連続したバッテリ劣化の検出がある場合でも、バッテリ5は劣化していると判定されない。
【0033】
次いでステップS28では、ECU10は、劣化履歴をEEPROM16にセットし(S28)、バッテリ劣化判定処理を終了する。
【0034】
次いでステップS29ではバッテリ劣化が確定したため、ECU10は、バッテリ劣化を示す警告ランプを表示灯・警告灯パネル6で点灯させるための警告ランプフラグをEEPROM16にセットし(S29)、バッテリ劣化判定処理を終了する。
【0035】
図4は、最下点の計測結果を示す図である。図4において、計測結果31は、10msごとに電圧値を1つ抽出してプロットしたときの結果を示し、計測結果32は、10msごとに平均化処理およびミニマム処理を行ってプロットしたときの結果を示す。図4に示すように、平均化処理およびミニマム処理を行ったときの方が最下点をより正確に捉えられることがわかる。
【0036】
以上のように、本実施の形態によれば、新たなセンサを追加することによって必要スペースの増加等を招くことなく、CPU11の負荷(電圧値のサンプリング間隔)を短くすることなく、エンジンの始動時におけるバッテリ電圧の最下点を精度良く測定できるECU10を実現することができる。またECU10によれば、バッテリ5の劣化および過放電をいち早く検出し、バッテリ上がりによるトラブルを未然に防ぐことができるようになる。
【0037】
(2)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、本発明を自動車等に搭載されるECU10に適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々の制御装置に広く適用することができる。特に、減速エネルギー回生システム備える自動車、C端子(調整電圧切替機能)付きオルタネータを備える自動車、ハイブリッド車などバッテリを酷使する車両に搭載される制御装置に適用して好適なものである。例えば、C端子付きのオルタネータでは、バッテリ5の充電量が十分と判断される場合、発電を最小限にするまたは発電しないようにし、バッテリ5の電力を先に使うため、バッテリ劣化が増すおそれがあるので、C端子付きのオルタネータを備える自動車に適用することは好適である。
【0038】
また上述の実施の形態においては、一のドライビングサイクルでバッテリ電圧の最下点の検出を1回だけ行う場合について述べたが、本発明はこれに限らず、エンジンの始動時にエンストなどが発生することもあるので、一のドライビングサイクルでバッテリ電圧の最下点の検出を複数回行うようにしてもよい。例えば、オプション機能を選択(再判定許可フラグを設定)できる構成を採用し、バッテリ電圧の最下点の再検出を可能とする。
【0039】
また上述の実施の形態においては、バッテリ劣化判定処理の繰り返しの終了条件として、スタータモータ3の回転が停止することを例示して述べたが、本発明はこれに限らず、スタータモータ3が停止時もバッテリ劣化判定処理の繰り返しが行われるように終了条件を設定するようにしてもよい。スタータモータ3のギアがエンジンのギアから離されるときにバッテリ5の電力が多く使用される場合があるが、この終了条件によれば、その際の内部抵抗による電圧降下を捉えることができるようになる。
【0040】
また上述の実施の形態においては、ステップS22の判定でYesの場合はステップS25の処理を行う場合について述べたが、本発明はこれに限らず、ステップS25の処理の前にバッテリ電圧の最下点が0Vであるか否かの判定を行い、0Vの場合はバッテリ劣化判定処理を継続するようにしてもよい。
【0041】
また上述の実施の形態においては、10ms毎にバッテリ劣化判定処理を繰り返す場合について述べたが、本発明はこれに限らず、ECU10のサンプリング間隔は、10msとし、その他の処理(平均化処理、ミニマム処理、バッテリ電圧の最下点が所定のしきい値を下回ったかの判定等)は、適宜のタイミングで行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1……車両システム、2……イグニッションスイッチ、3……スタータモータ、4……オルタネータ、5……バッテリ、6……表示灯・警告灯パネル、10……ECU、11……CPU、12……I/Oポート、13……ADC、14……ADCレジスタ、15……RAM、16……EEPROM、17……ローサイドドライバ、18……ソフトウェア、19……エンジンオフタイマ、20……エンジンオンタイマ。
図1
図2
図3A
図3B
図4