特許第6850818号(P6850818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850818
(24)【登録日】2021年3月10日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】センサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20210322BHJP
   G01D 5/245 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   G01D5/347 E
   G01D5/245 110M
   G01D5/347 110A
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-568784(P2018-568784)
(86)(22)【出願日】2017年6月29日
(65)【公表番号】特表2019-525157(P2019-525157A)
(43)【公表日】2019年9月5日
(86)【国際出願番号】DE2017100543
(87)【国際公開番号】WO2018001416
(87)【国際公開日】20180104
【審査請求日】2019年2月18日
(31)【優先権主張番号】102016112062.6
(32)【優先日】2016年7月1日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505257752
【氏名又は名称】フィジック インストゥルメント(ピーアイ)ゲーエムベーハー アンド ツェーオー.カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グラボウスキ、アクセル
(72)【発明者】
【氏名】ワレンダ、カロリン
【審査官】 清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】 仏国特許出願公開第02851650(FR,A1)
【文献】 特表2011−520100(JP,A)
【文献】 特開平05−118879(JP,A)
【文献】 特開2011−226864(JP,A)
【文献】 特開2016−001107(JP,A)
【文献】 特表平11−514091(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0022888(US,A1)
【文献】 特許第4059767(JP,B2)
【文献】 独国特許出願公開第02811807(DE,A1)
【文献】 特開2005−172696(JP,A)
【文献】 特開平08−304118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線的又は回転的に移動可能な物体の絶対位置に関する測定データを検出するためのセンサ装置であって、
光学センサシステムと、
磁気センサシステムと、
計算ユニット(105)と、を備え、
前記光学センサシステムは、測定ユニット(102)と、前記測定ユニット(102)と協働するゲージ(220)とを有し、
前記光学センサシステムは、位置測定のためにゼロ次反射のみを使用し、前記光学センサシステムは、可動体の決定されるべき位置に応じて第1のセンサ出力信号(401)を発し、
前記磁気センサシステムは、測定ユニット(101)と、前記測定ユニットと協働するゲージ(203)とを有し、可動体の決定されるべき位置に応じて第2のセンサ出力信号(402)を発し、
前記光学センサシステムの前記ゲージ(220)と前記磁気センサシステムの前記ゲージ(203)とが共通のゲージ本体(210)に一体化され、
前記光学センサシステムの前記測定ユニット(102)と前記磁気センサシステムの前記測定ユニット(101)は、前記ゲージ本体(210)の表面に面するように、前記光学センサシステムの前記ゲージ(220)及び前記磁気センサシステムの前記ゲージ(203)が配置されており、
前記光学センサシステムは、前記磁気センサシステムよりも高い分解能を有し、1つの位置における前記磁気センサシステムの位置情報の最大偏差が、前記光学センサシステムの信号周期よりも小さく、
前記計算ユニット(105)は、前記第1のセンサ出力信号(401)及び前記第2のセンサ出力信号(402)を取得し、前記第1のセンサ出力信号(401)及び前記第2のセンサ出力信号(402)から組み合わせのセンサ出力信号を生成するために設けられ、前記第1のセンサ出力信号及び前記第2のセンサ出力信号に基づいて一意の絶対位置情報を計算することを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
前記光学センサシステムの前記ゲージ(220)は、前記ゲージ本体(210)の共通の測定表面(309)の平面に配置されることを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記磁気センサシステムの前記ゲージ(203)は、前記光学センサシステムの前記測定ユニット(102)及び前記磁気センサシステムの前記測定ユニット(101)と対向し、かつ、前記ゲージ本体(210)の共通の測定表面(309)から離間していることを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記磁気センサシステムからの前記センサ出力信号(402)は、前記光学センサシステムからの前記センサ出力信号(401)とは別のデジタルデータ形式であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記光学センサシステムの前記ゲージ(220)の、最大延伸方向における幾何学的寸法は、前記磁気センサシステムの前記ゲージ(203)の、最大延伸方向における幾何学的寸法に本質的に対応することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記光学センサシステムが増分センサシステムであり、前記磁気センサシステムが絶対測定センサシステムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項7】
センサ装置の分解能が前記光学センサシステムの分解能と同一であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項8】
前記光学センサシステムの前記ゲージ(220)は、格子構造であって、1mmあたり3〜20本のラインがあることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項9】
前記格子構造は、エッチング又はレーザによって製造されることを特徴とする請求項8に記載のセンサ装置。
【請求項10】
前記光学センサシステムの前記ゲージ(220)用の材料の熱膨張係数が、前記磁気センサシステムの前記ゲージ(203)用の材料の熱膨張係数に本質的に対応することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項11】
総合的な分解能は、線形位置測定においては100nmよりも高く、回転位置測定においては100μradよりも高いことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項12】
前記光学センサシステムの前記測定ユニット(102)及び/又は前記磁気センサシステムの前記測定ユニット(101)が集積回路として実現されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項13】
センサ装置の測定データ項目は、高次ユニットのデジタルデータ形式で送信されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のセンサ装置を使用して直線的又は回転的に移動可能な物体の絶対位置に関する測定データを検出する方法であって、
両方のセンサシステムのセンサ出力信号(401、402)が、冗長性を高め、障害発生時に警告を生成するために、計算ユニット(105)において互いに比較されることを特徴とする測定データ検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の直線的又は回転的に移動可能な物体の絶対位置に関する測定データを検出するためのセンサ装置に関する。さらに、本発明は、請求項14に記載の、このようなセンサ装置を用いて直線的又は回転的に可動な物体の位置を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンコーダ技術の分野では、増分方式で動作する位置測定システムと、絶対方式で動作する位置測定システムとを区別することができる。増分システムでは、ユーザは絶対位置情報を読み取ることができない。したがって、基準位置は、増分測定システムをゼロにするか、又は基準にするために、システムを再起動した後に最初に見つけられなければならず、それによって、開始位置(いわゆるホーミング(homing))を得る。この目的のために、ゲージ上の基準マークと、基準マークを読み取るセンサヘッド内の対応するセンサ素子とが必要とされる。
【0003】
絶対測定システムでは、常に絶対である位置情報は、ゲージを走査することによって生成され、そのため、絶対位置情報は、システムを再起動した後でさえ直ちに利用可能であり、ホーミングは不要であり、これは、増分測定システムを超える明確な利点を表す。
【0004】
磁気アブソリュートエンコーダ技術の分野では、そのような絶対位置情報を生成する様々な方法が知られており、例えば、ノギスの原理(nonius principle)を使用して、いくつかのトラックが読み取られ、絶対位置が様々なトラックの位相差から計算され得る。
【0005】
磁気的に絶対的な測定をするシステムは、通常、比較的単純な構造を有し、したがって、比較的低い費用で費用効率の高い方法で製造することができる。これらは、単純でコンパクトな集積回路として市販されている。これらのシステムの本質的な利点は、汚染に対する耐性である。しかし、このことは、このようなシステムの分解能が、システム依存の仕方で、典型的には数100nmの範囲の大きさに制限されるという欠点によって打ち消される。
【0006】
対照的に、光学原理に基づく絶対測定システムは、有意に<10nmの範囲のより高い分解能を可能にするという利点を提供する。これは、特に、磁気システムと比較してゲージの周期が短いために可能である。しかし、光学測定システムは、磁気測定絶対システムよりも製造が複雑であり、したがって高価である。絶対光学測定はまた、磁気絶対センサよりも複雑であり、例えば、対応するゲージ上の擬似ランダムコードを読み取ることによって実行される。
【0007】
DE19520299A1から、異なる物理的原理で動作する2つの別個のセンサシステムによって、可動体の位置を測定するために使用されるセンサ装置が知られている。これら2つのセンサシステムからの信号は、両センサシステムのデータを評価し、それらを共通の位置値に結合する処理システムによって補完される。DE19520299A1は、特に、ホールセンサの形態の検出素子と組み合わされた2つの極からなる磁石によって回転の絶対信号を検出する角度測定装置の使用を記載している。この場合、磁気検出素子は、360°の回転角度範囲にわたってアナログ正弦波信号を送出する。しかしながら、角度信号は120°の適用範囲にわたってのみ明確であり、角度信号の線形化がさらに必要である。
【0008】
磁気検出素子は、測定セクションに沿って1つ以上の基準マークを有する増分ゲージからなる増分光学センサシステムと組み合わされる。制度の基本的な機能には、参考マークや基準マークが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
DE19520299A1には、異なるセンサシステムの組み合わせの基本構造が線形測定システムにも適用可能であることは、詳細には記載されておらず、例示的な実施形態によっても明示されておらず、短い注記のみが存在する。しかしながら、そこに記載されたセンサ装置によって、360°の角度範囲(いわゆる1回転)の明確な(絶対的な)測定を実現することは不可能である。さらに、そこに記載されたセンサ装置は、一般的に、使用可能な絶対位置信号が、より長い測定区間にわたって生成されることを可能にはしない。
【0010】
DE19520299A1によるセンサ装置のさらなる欠点は、センサ装置が比較的大きな組立空間又は比較的大きな組立高さを必要とするため、センサ装置に小さな組立寸法しか存在しない用途には適さないことである。
【0011】
特開2009036637号公報から、磁気コーディングと光学コーディングの両方を特徴とする複合ゲージからなる測定システムが知られている。光学的コード化は、このシステムにおいて回折格子として実現される。一般的な技術的理解によれば、これは、回折格子の構造が10μm未満の周期性を有することを意味する。対応する説明において、4μmの周期性が対応して言及されている。さらに、特開2009036637号公報には、磁気トラックのコードが絶対コードによって実現するものが記載されている。絶対位置は、磁気構造及び光学構造のデータに基づいて計算される。
【0012】
この方法が確実に機能するためには、磁気トラックの信号が常に光回折格子の関連する周期に明確に割り当てられるように、磁気トラックの絶対位置情報と光学トラックのデータとを相互に計算する必要がある。この点に関して、特開2009036637号公報では、回折格子が完全な周期性を有することが基本とされている。磁気トラックの周期性に関して、特開2009036637号公報は、磁気トラックの周期性が光学トラックの周期性よりも実質的に大きくなるように、明示的な値として1000μmを示している。
【0013】
しかし、磁気ゲージは、その製造プロセスにより、一般的な技術的理解にしたがって、約±10μmの範囲の精度でしか製造することができず、特開2009036637号公報は、明示的な値に関して何も述べていない。磁気スケール及び光学スケールが、絶対位置値の決定に不可欠な一定かつ決定された周期的依存関係に常にあることを妨げるのは、まさにこの磁気ゲージの比較的高い不正確さである。つまり、2つのゲージのデータを組み合わせることによって、明確な位置情報を有する絶対センサシステムを作成することはもはや不可能である。特開2009036637号公報は、両方のセンサシステムの位置情報をどのように互いに同期させることができるかという問題を扱っていない。
【0014】
GB2230666Aから、異なる周期性のいくつかのトラックを有する光学ゲージが使用される方法が知られている。絶対位置情報は、互いに関連するトラックの異なる位相情報によって計算することができる。この絶対位置情報を算出するには、全トラックの情報を同時に合成する必要がある。この方法の欠点は、全てのフォトダイオードに基づく位置計算が同時に行われることである。したがって、個々のトラックのフォトダイオードのノイズ成分も加算される。さらに、走査されるべきトラックの形成において生じる誤差は、信号全体において加算される。
【0015】
以上より、本発明の課題は、既知のセンサ装置の上述の問題を克服するセンサ装置を提供することである。特に、本発明の課題は、任意の長さ、又は回転角度を測定する場合には360°の角度範囲全体にわたる線形測定区間にわたって、いつでも明瞭で絶対的かつ高度に正確な位置情報を送ることができ、コンパクトかつ小さな組立空間で実現できるコンパクトなセンサ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この課題は、請求項1に記載のセンサ装置によって解決される。後続の従属請求項は、少なくとも適切なさらなる発展の形態を示す。
【0017】
センサ装置は、直線的又は回転的に移動可能な物体の位置を絶対的に測定することができる基礎とみなされる。この目的のために、センサ装置は、測定ユニットと、測定ユニットと協働するゲージとを有する光学センサシステムを備え、光学センサシステムは、位置測定のための反射率において動作し、専らゼロ次反射を使用し、光学センサシステムは、可動体の決定されるべき位置に応じて第1のセンサ出力信号を発する。
【0018】
センサ装置は、さらに、測定ユニットと、測定ユニットと協働するゲージとを有する磁気センサシステムを備え、可動体の決定される位置に応じて第2のセンサ出力信号を発する。この場合、磁気センサシステムの分解能は、光学センサシステムの分解能よりも低い。
【0019】
光学センサシステムのゲージ及び磁気センサシステムのゲージは、共通のゲージ本体内に配置され、光学センサシステムの測定ユニット及び磁気センサシステムの測定ユニットは、光学センサシステムのゲージ及び/又は磁気センサシステムのゲージがゲージ本体の表面に面し、共通の測定表面を画定するように配置されている。2つのゲージの対応する配置により、センサ装置の非常にコンパクトで組立スペースを節約する構造が達成される。特に、非常に平坦な設計のセンサシステムを実現することができる。
【0020】
上記で使用された「共通の測定表面」という用語は、必ずしも、測定ユニットによって検出されるべきデータ又は情報の断片が、共通測定表面の平面内に排他的に存在するように理解されるべきものではない。また、この用語は、2つのゲージが、必ずしも同じ平面、すなわちゲージ本体の対応する表面に配置されるというように理解されるべきものではない。むしろ、この点に関して正確な空間的描写が可能であるため、物理的に見た共通の測定表面は、光学センサシステムのゲージによって画定される。通常、光学ゲージは、ゲージ本体の表面に配置されるか、又はそれと一致する。磁気センサシステムのゲージについては、磁力線は高い技術的費用かけなければ描くことができないので、このような空間描写はほとんど不可能である。通常、磁気センサシステムのゲージは、光学センサシステムのゲージと同じ平面内に配置されないが、磁力線が磁気ゲージの空間的延長よりも遠くに到達するので、必ずしも必要ではない。しかしながら、光学ゲージと磁気ゲージが同じ平面に配置されて、2つの測定ユニットに面するゲージ本体の表面が同時に共通の測定表面を表わすようにすることも考えられる。
【0021】
センサ装置は、さらに、センサ出力信号の両方から位置情報を計算するために第1のセンサ出力信号又は光学センサ出力信号及び第2のセンサ出力信号又は磁気センサ出力信号を得るために提供される計算ユニットを備え、光学センサシステムの現在の周期は、任意の時間に第2センサ出力信号又は磁気センサ出力信号から推定され得るため、その結果、明確な絶対位置情報は、第1及び第2センサ出力信号に基づいて計算ユニットにおいて計算され得る。光学センサシステムの現在の周期に対する磁気センサ出力信号のこの明確な割り当てのために、光学センサシステムの信号周期よりも小さい磁気センサシステムの精度が不可欠である。これは、1つの位置における磁気センサシステムの位置情報の最大偏差が、光学センサシステムの信号周期よりも小さいことを意味する。
【0022】
光学センサシステムのゲージが測定表面の平面内に配置されることが有利であり得る。同様に、磁気ゲージが、光学センサシステムの測定ユニット及び磁気センサシステムの測定ユニットから離れる方向に、測定表面から間隔を置いて配置されることが有利であり得る。
【0023】
上述の有利な実施形態によれば、磁気ゲージの物理的表面は、光学センサシステムのゲージの物理的表面と同じ平面内にはない。具体的には、磁気システムの物理的表面は、光学センサシステムのゲージの物理的表面の下にある。それでも、この構造は、光学センサシステムのゲージの物理的表面に対応する単一の又は共通の測定表面をもたらす。これは、磁気ゲージの磁界が、磁気ゲージの表面と共通の測定表面との間に位置する材料に侵入し、共通の測定表面から出て、対応する磁界が測定ユニットの対応する磁気センサによって検出されることができるため可能となる。
【0024】
磁気センサシステムの測定信号は、光学センサシステムの測定信号とは別のデジタルデータ形式によって利用可能であることも有利であり得る。DE19520299A1と比較すると、磁気センサシステムのデータは、増分データとしては利用できないが、既に絶対データストリームとして利用可能であり、以下の利点を与える。(i)絶対位置測定はいつでも可能であり、これは第2の(増分)システムによって精緻化される。(ii)絶対位置データは、より高感度(光学)システムが故障した場合でも測定セクション全体で利用可能である。(iii)絶対システムのデータ形式はより安全である(例えば、CRC(巡回冗長検査)、エラービット)。
【0025】
さらに、最大延伸方向における光学センサシステムのゲージの幾何学的寸法が、最大延伸方向における磁気センサシステムのゲージの幾何学的寸法に本質的に対応することは、有利であり得る。言い換えれば、第1のセンサシステムのゲージは、第2のセンサシステムのゲージとほぼ同じ長さである。
【0026】
さらに、光学センサシステムが増分センサシステムであり、磁気センサシステムが絶対測定センサシステムであることが有利であり得る。
【0027】
さらに、センサ装置の分解能は、光学センサシステムのより高い分解能と同一であることが有利であり得る。したがって、センサ装置の分解能は、磁気センサシステムのより低い分解能によって制限されない。
【0028】
光学センサシステムのゲージが、330μmと50μmの間の周期に相当する3〜20本/mmの格子構造を有することが有利であり得る。この場合、格子構造は、エッチング又はレーザによって製造されることが有利であり得る。
【0029】
同様に、光学センサシステムのゲージ用の材料の熱膨張係数が、磁気センサシステムのゲージ用の材料の熱膨張係数に本質的に対応することが有利であり得る。この場合に上記で使用される「本質的に」という用語は、+/−10%の絶対的同一性からの偏差を表す。これは、2つのゲージが、温度変化において互いに対して変位しないか、又はごくわずかしか変位しないことを保証する。したがって、温度が変化した場合でも、正確で信頼できる位置測定が可能である。これは、特に、温暖化の変化にもかかわらず、互いに対する期間の明確な割り当てが依然として可能であることを保証する。
【0030】
さらに、センサ装置の総合的な分解能は、線形位置測定においては100nmよりも高く、回転位置測定においては100μradよりも高いことが有利であり得る。
【0031】
さらに、第1のセンサシステムの測定ユニット及び/又は第2のセンサシステムの測定ユニットが、集積回路として実装されることが有利であり得る。これにより、センサ装置の組立品をさらにコンパクトにし、省スペース化することが可能になる。
【0032】
さらに、本発明は、上述のセンサ装置を用いて直線的又は回転的に可動な物体の位置を識別する方法に関する。本発明による方法は、特に、両方のセンサシステムの信号が、冗長性を高め、障害発生時に警告を生成するために、計算ユニットにおいて互いに比較されることを特徴とする。この場合、センサ装置の総合的な分解能が、より高い分解能を有するセンサシステムの分解能に対応することが特に有利である。
【0033】
本発明の好ましい実施形態では、磁気コード化ゲージが使用され、磁気コード化ゲージを介して、いくつかの磁界センサを使用して、増分光学センサシステムと組み合わせて、任意の長さ又は角度の測定区間にわたってゲージに沿った任意の位置で絶対位置情報を生成することができる。増分トラックに沿った絶対位置情報は、いつでも直ちに利用可能であるため、基準マークが必要とされない。任意選択的に、基準マークは、システムにおける追加の冗長性を達成するために(例えば、絶対システムが故障した場合に)使用可能であるが、センサ装置の基本機能には必要ではない。
【0034】
光学センサシステムのゲージと、同時に磁気センサシステムのゲージとが一体化されたゲージ本体の使用は、両方のセンサシステムの位置情報を一箇所で統一することを達成し、それによって、組立スペースが節約されるだけでなく、例えば熱膨張による環境の影響が、特定の配置によって最大限に排除される。この場合、光学ゲージを磁気ゲージと一体的に又は一体的に実現し、光学ゲージの対応する格子構造を磁気ゲージの材料に組み込むことも考えられる。
【0035】
したがって、本発明のセンサ装置は、反射方法及び透過方法の両方に使用することができる。しかしながら、反射方法は、著しくよりコンパクトな組立空間を可能にする。
【0036】
絶対センサシステム又は磁気センサシステムの位置信号は、増分センサシステム又は光学センサシステムの位置信号とは別のデジタルデータ形式で利用可能であることが好ましく、計算ユニットにおけるそれらの組合せは、高分解能の共通絶対位置信号を得るための特別なアルゴリズムを必要とする。
【0037】
上述したように、センサ装置は、増分光学センサシステムと絶対測定磁気センサシステムとを備えることが好ましい。磁気センサシステムは、例えばノギスの原理によって位置データを測定し、このノギスの原理によると、異なる周期を有するいくつかの磁気トラックが走査され、絶対位置が磁気トラック間の位相差から計算される。他の絶対測定原理も同様に考えられる。この場合、磁気センサシステムは、制限された分解能で絶対位置値を測定する。この制約は、磁気ゲージを走査する対応する測定ユニットの磁気センサが、通常、磁極幅の半分であるゲージ上方の距離に配置されるという状況によって引き起こされる。ゲージに対する磁気センサの距離は一般に500μmを下回らないように選択されるので、典型的な最小磁極幅は1mmの大きさを有し、その結果、典型的なノイズ制限は100nmのオーダーとなる。
【0038】
光学センサシステムの測定ユニットの光学増分センサは、光学センサにおいてより小さいゲージ周期を選択することができるので、より高い分解能を有する。
【0039】
磁気センサ及び光学センサは、例えば、走査されるゲージに対するセンサの最適な動作距離を実現する共通のキャリア上に配置することができる。
【0040】
本発明によるセンサ装置は、線形用途における絶対位置値の測定と、回転用途における絶対位置値の測定との両方に使用することができる。回転適用の場合、360°の完全な回転にわたる絶対測定(いわゆる単一回転測定(single turn measurement))が可能である。
【0041】
磁気絶対センサと光学増分センサの組み合わせは、両方のセンサ原理の利点、すなわち磁気センサの比較的単純な構造の利点を可能にし、それは分解能が制限され、絶対位置値をレンダリングするが、絶対位置情報を提供しない光学センサの高い分解能と組み合わされることになることは事実である。
【0042】
計算ユニットにおいてデータを処理するために、両方のセンサシステムの位置情報がデジタル形式で利用可能であることが有利である。最も単純な場合、絶対測定センサシステムの情報は、対応する準備なしにデジタル位置情報としてすでに利用可能である。そうでない場合、絶対デジタル位置情報は、適切な回路においてセンサシステムの出力信号から生成される。そして、これらの位置情報は、高次のインスタンスからの要求に応じて取り出すことができる。
【0043】
光学増分センサは、通常、アナログ出力信号を供給する。これらのアナログ出力信号は、まず補間回路で準備され、高次のインスタンスによっても読み取ることができるデジタルデータストリームに変換される。
【0044】
位置情報を計算するために、少なくとも2つのモード又はプロセスが可能である。
【0045】
第1のモード又はプロセスでは、センサ装置は、それ自体のクロックで連続的に位置情報を計算する。位置情報の計算は、両方のセンサシステムのデータを同期して読み込むことと、これら2つのデータストリームを新しい絶対データストリームに計算的に変換することとを含む。この新たに生成された高分解能の位置情報は、後続のユニットが位置情報を読み出す準備が整う。後続のユニットがいつでも新しい位置情報を取り出すことができるために、2つの新しいデータストリームの新しい位置情報の計算プロセスは、後続のユニットからの要求とは非同期である。
【0046】
第2のモード又はプロセスでは、位置情報を読み取るユニットから要求を受信するまで、位置情報は計算されない。その手順は次の通りである。
−読取ユニットが要求を送信する。
−計算ユニットは、2つのセンサシステムから位置情報を同期して要求する。
−計算ユニットは、2つの位置情報から新たな位置情報を計算する。
−新しい位置情報が読取ユニットに送り返される。
【0047】
この場合、位置情報が提供されるまでの時間的遅延は、例えばBiSSプロトコルなどのデジタルセンサプロトコルによって補償することができる。
【0048】
2つのセンサシステムのデータストリームを組み合わせる計算ユニットは、特に、CPU(中央演算処理装置)、MCU(マイクロ制御ユニット)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(特定用途向け集積回路)として実現することができる。
【0049】
さらに、既に上述したように、磁気センサ用の磁気ゲージ及び光学センサ用の光学ゲージは、共通のゲージ本体に一体化される。好ましくは、磁気ゲージは、ゲージ本体内に隠されるように配置され、例えば、センサシステムの測定ユニットから離れる方向に対して光学ゲージの後方に配置される。ゲージ本体又はこのようなハイブリッドゲージもしくは一体ゲージの上側には、光学センサシステムのセンサによって検出することができ、光学センサシステムのための好ましくは増分位置情報を含む構造、好ましくは、格子構造が適用される。この場合、構造は、磁気ゲージ用の磁性材料が配置されるキャリア構造と同じ熱膨張係数を有する材料に優先的に組み込まれる。
【0050】
本発明によるセンサユニットは、両方のセンサシステムの信号を同時に、又は個別に、さらには組み合わせて取り出すことができるように動作することができる。適用の可能なケースは、両方のセンサシステムの冗長な動作であり、その結果、システムのうちの1つの位置情報は、対応する他のセンサシステムが故障するか、又はオフに切り換えられた場合に、必要に応じてアクセスされ得る。磁気絶対測定センサシステムは、比較的頑丈であり、汚染に対して耐性があり、それにより、その位置情報の信頼性は、光学センサシステムに対して比較的高い。両方のセンサシステムからのデータを組み合わせることによって、冗長性を作り出すことができ、その中で両方のシステムが相互に監視し合う。
【0051】
GB2230666Aが明示する内容とは対照的に、全てのトラックの情報は、本発明によるセンサユニットによる位置の決定のために同時に必要とされるのではなく、むしろ、より低い分解能及びより低い精度の測定システムは、明確な方法で任意の時点でより高い分解能の測定システムの周期を決定するために使用されるだけであり、つまり、それは、光学周期に明確に戻って絶対位置情報を計算することを可能にするために使用されるだけである。したがって、本発明によるセンサユニットでは、システムのトラックの相互関係に対する要求は、GB2230666Aに記載されたセンサユニットよりも低い。以上によれば、システム全体の精度及び分解能は、より高い分解能のシステムによって決定され、より低い分解能のシステムとは無関係である。唯一の制限は、期間の明確な割り当てが可能でなければならないという事である。
【0052】
EP2020591A2とは対照的に、本発明は、2つの情報キャリアの情報を互いに相関させることができることを保証する。位置データを互いに同期させることなく、2つのセンサシステムの位置情報(磁気絶対及び光学増分)を単純に結合すると、結合信号に飛び及び偏差が生じることになる。
【0053】
これを防止するために、データは互いに同期させることができなければならず、又はトラックの周期性を互いに明確に割り当てることが可能であることがトラックの相互関係によって保証されなければならない。数値例としては、ポール・トゥ・ポール距離1.6mm、それに相当する3.2mmのシグナルの周期性を、磁気絶対計器の基礎とすべきである。3.2mmのシグナル期間を有する該当ゲージには光尺を適用する。光学ゲージを有するセンサシステムにおいて、6シグマノイズは、約5μmのオーダーである(高いシステム帯域幅で)。磁気ゲージの精度は10μm/m程度である。光学ゲージの非線形性の部分は、同様に、約5μmのオーダーである。適切な材料を使用する最適な熱設計は、2つのトラックの熱膨張の差が互いに対して小さいように、システムを構築することを可能にする。全体として、磁気システムの精度は、約20μmのオーダーである。磁気システムから得られる位置情報が光学システムへの明確な割り当てを可能にするために、光学センサシステムの周期は、動作パラメータの全範囲にわたる明確な割り当てを保証するために、2×20μm=40μm未満に選択されることはない。
【0054】
また、両方のセンサシステムの位置情報を個別に同時に読み出すことができる。この使用方法は、データが、例えば、汚染により光学センサシステムからもはや供給されない場合に、絶対磁気センサシステムの位置データが、しかしながら、より低い分解能で使用され得るという利点を有する。光学センサシステムのデータが後の時点で再び利用可能である場合、光学センサシステムの高分解能と共に絶対位置測定が再び利用可能となる。同様な応用例は、エネルギー節約を目的とした、後の時点での光学センサシステムのスイッチオフ及びニーズベースのスイッチオンである。
【0055】
さらに、位置依存のトリガ信号が同期のために必要であるか又は有用である場合、両方のセンサシステムの信号を同時に、かつ単一の信号として組み合わせて使用することが可能である。このような用途の場合、両方のセンサ部分のデータの組み合わせ計算から生じる高分解能の絶対位置信号と、アナログ(sin/cos)及びデジタル(A/N)形式で独立かつ同期して利用可能な増分センサの信号との両方が使用される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
本発明によるセンサ装置又は本発明によるセンサ装置の部品の様々な実施形態の説明は、対応する図面に関して以下で与えられ、同じ参照番号は、異なる図面における同じ部品に関連する。
【0057】
以下に示す。
【0058】
図1】本発明によるセンサ装置内のデータフローの概略図。
【0059】
図2】本発明によるセンサ装置のゲージの配置の実施形態。
【0060】
図3】本発明によるセンサ装置の実施形態の概略図。
【0061】
図4】両方のセンサシステムの位置データのストリームの同期に関する概略表現。
【0062】
図5】部分(a)及び(b)で示す、本発明によるセンサ装置の関連するゲージと比較したセンサシステムの測定ユニットの配置に関する異なる実施形態。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図1は、本発明によるセンサ装置内のデータフローの概略図を示す。磁気及び絶対測定センサシステムの測定ユニット101及び光学及び増分測定センサシステムの測定ユニット102は、光学的に走査可能なゲージ及び磁気的に走査可能なゲージを備え、ハイブリッドゲージを表すゲージ200を走査する。測定ユニット101は、この場合、ハイブリッドゲージ200の磁気構造を走査する。この過程で、絶対位置が処理ユニット103において得られた情報から決定される。位置情報は、この場合、デジタルインターフェースを介してデジタル情報として提供される。測定ユニット101及び102は、単一の集積回路に組み合わされていてもよい。測定部102は、ハイブリッドゲージ200の表面又は光学ゲージを光学的に反射走査する。対応する位置情報は、適切な回路104、例えば補間回路においてデジタル位置情報に変換され、デジタルインターフェースを介して提供される。デジタル位置信号又は位置情報は、その後さらなるデータ処理のために計算ユニット105に用いられる。計算ユニット105は、この場合、MCU、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)、ASIC(特定用途向け集積回路)などであり、2つのセンサシステムの位置情報を組み合わせることによって新しい絶対位置値を計算し、位置情報のデジタルプロトコル(例えば、SSI、BiSSなど)に従うデータストリーム106として図1に示されていないコントローラに供給する。測定ユニット101及び102、処理ユニット103、回路104及び計算ユニット105は、集積回路内に任意の組み合わせで配置することができる。
【0064】
図2は、本発明によるセンサ装置のゲージの配置に関する可能な実施形態の概略図を、それぞれのセンサシステムの磁気測定ユニット及び光学測定ユニットのための複合ゲージ又はハイブリッドゲージ200の形で示す。ハイブリッドゲージ200は、材料層202とキャリア層204との間に磁気ゲージ203が配置される共通ゲージ本体210を含む。キャリア層204及び材料層202の両方は、非磁性ステンレス鋼からなる。材料層202は、外側に表面層201に隣接しており、光学ゲージ220は、格子構造の形態で一体化又は組み込まれている。
【0065】
外部磁界を印加することによって、磁気ゲージ203は、磁気構造が連続的かつ交互のシーケンスで多数のN極及びS極を含むように磁化され、これは、磁気センサシステムの測定ユニットによって評価され得る。磁気ゲージの磁界は、磁気ゲージの上にある材料層202及び表面層201及び光学ゲージ220をそれぞれ貫通し、表面層201から間隔を置いて対向する磁気センサシステムの測定ユニットによって検出することができるように突き出るには十分な大きさである。さらに、磁化は、磁気センサシステムのセンサによる検出が、絶対位置が計算されることを可能にするように構成される(例えば、ゲージ上にノギスの原理によって並んで配置されたいくつかのトラックを有する)。
【0066】
キャリア層204の熱膨張係数は、磁気ゲージ203の熱膨張係数に本質的に対応する。材料層202は、キャリア層の材料と同一の熱膨張係数を有し、表面層201の熱膨張係数は、材料層202又はキャリア層204の熱膨張係数にも本質的に対応する。したがって、温度が変化すると、ハイブリッドゲージは均一に膨張又は収縮し、その結果、ハイブリッドゲージ内の熱張力は生じない。
【0067】
表面層201は、光学ゲージ220を画定する画定された構造を有し、光学センサシステム102の測定ユニットは、この構造から増分位置データを生成することができる。構造化は、異なる方法、例えば、表面のレーザ処理、又はエッチングによって実施され得る。
【0068】
キャリア層204、磁気ゲージ203、材料層202及び表面層201の熱的に適合された膨張挙動は、センサユニット又はゲージ本体が受ける温度の変化においてさえ、寸法構造の相互関係が常に同じままであることを保証する。
【0069】
磁気ゲージ及び光学ゲージは、それらの表面が共通又は等しい平面内にあるように、並んで取り付けられることが考えられる。
【0070】
ハイブリッドゲージの下側には、ゲージをその下側でゲージ本体210の構造体に取り付けることを可能にする接着材料205(例えば、両面接着テープ)が適用される。
【0071】
図3は、本発明によるセンサ装置の一実施形態を概略的に示す。センサ装置は、磁気ゲージ及び光学ゲージを含むハイブリッドゲージ200と、ハイブリッドゲージ200の磁気ゲージと協働する対応する測定ユニット101を有する磁気センサシステムと、ハイブリッドゲージの光学ゲージと協働する対応する測定ユニット102を有する光学センサシステムとを含む。
【0072】
測定ユニット101の測定表面309からの距離307は、磁気ゲージの磁化の周期の約半分に相当する。光学測定距離102の共通測定表面309からの距離306の最適範囲も存在する。この場合、測定ユニット101及び102が配置された支持要素302は、最適な動作距離を設定することを可能にする。
【0073】
光学測定ユニット102又は光学センサのデータは、補間チップの形態の回路104においてデジタル位置信号に変換される。同じことが、磁気測定ユニット又は磁気センサ102の信号にも当てはまり、その信号は処理ユニット103でさらに処理される。磁気測定ユニット101及び関連する処理ユニット103、又は光学測定ユニット102及び関連する補間チップ102は、別個のASICにおいて結合されることが考えられる。2つのセンサからのデータストリームは、その後、計算ユニット105、例えばDSP(digital signal processor)、MCU又はFPGAに転送され、さらに処理される。
【0074】
計算ユニット105におけるデータストリームの可能な処理を以下に説明する。ノギスの原理に基づく磁気絶対位置センサからのデジタル出力データストリームは、例えば、23ビットの長さを有する。この出力データストリームから、3200μmのノギスベースのセンサ周期及び14ビットのノギス入力データの補間において、後部9ビットは100μmの経路に対応する。このデータストリームの1ビットは195.31nmに相当する。
【0075】
100μmの周期と14ビットのアナログ信号の補間レートを有する光学増分センサでは、100μmの周期の信号が得られる。この信号では、1ビットは6.18nmに相当する。
【0076】
ここで、計算ユニットは、2つのセンサ又はセンサシステムのデータを読み取り、データの組合せから28ビットの位置データを有する新しい絶対データストリームを生成し、増分測定システムの下位14ビット及び絶対測定システムの上位14ビットが使用され、連結される。増分センサの周期をカウントし、対応する3つのデータストリーム(すなわち、周期カウンタを有する増分センサ、絶対センサ、及び新しい出力データストリーム)を互いに比較して、冗長性を作り出すことができる。周期の相互遷移点において、計算ユニットは、対応するアルゴリズムを使用して、増分測定システム及び絶対測定システムの両方においてデータの一貫性を提供する。
【0077】
この方法では、2つのセンサシステムからの生データは、必ずしも互いにバイナリの関係にある必要はないが、これは、例えば、FPGAにおける出力データの計算を単純化する。センサデータが互いに非バイナリの関係にある場合、この方法は、アナログ方式で適用されてもよいが、整数又は浮動小数点数によってさえデータの相互計算を実行することを必要とする。
【0078】
図4は、2つのセンサシステムの位置データストリームの同期を概略的に示す。磁気絶対センサは、その位置決め範囲にわたって絶対位置データ402を提供する。これらのデータ項目は絶対値であり、第2の測定システムの長さの位置部分にダウンサンプリングすることができる。これらのデータ項目に対する1つの要件は、光学増分センサの位置データ401に関して、増分センサが絶対位置情報に関する期間の明確な割り当てを常に可能にすることである。
【0079】
2つの情報の相互関係が正しくない場合、増分センサの相対位置に対する磁気センサの絶対位置の割当てが、もはや不可能である可能性があるので、故障のケースが生じることになる。つまり、センサ装置が最初に稼動されるときに較正ステップを実行することが合理的であり得る。それによって、2つの測定ユニット又はセンサの位相情報が比較され、互いに一致させられる。増分センサシステムは、ゲージの1周期400において周期的である位置データ401を常に供給する。周期の相互遷移点において、1周期内の位置値は、1周期内のその最大値から初期値(例えば、周期niからn+1)に戻る。同様に、絶対センサシステムの位置データ402には、センサシステムがどの期間にあるかを示す点、又はそれぞれの次の期間(例えば、期間naからna−1、又はnaからna+1)への遷移を示す点がある。これらの遷移は、図4の参照番号404及び405で示される。
【0080】
合理的には、周期は、絶対センサシステムの人工周期が増分センサシステムの実周期(例えば、位置403)に正確に整列するように、互いに整合される。言い換えれば、各場合において1つの周期から次の周期への遷移が起こる点は、擬似的に同じ位置にある。ここで、2つのゲージの信号の位置情報が互いに対してわずかにシフトする場合、より大きな領域にわたるこの整合は、絶対位置信号が常に正しい増分期間に割り当てられることを保証する。
【0081】
位置403に関して、周期の相互整合が確実に働くある安全距離を計算することができる。この場合、妥当な距離は、例えば、増分測定システムの周期の半分とすることができる。この値を超えた場合、測定システム全体は、例えば、安全マージンが使い果たされたことを知らせる警告を出力することができる。
【0082】
互いに対する信号のシフトは、2つのセンサシステムの位置信号の異なる線形性、光学トラックに対する磁気ゲージの絶対精度、及び熱の影響によって影響を受ける。さらに、互いに対するセンサの位置が、熱の影響によって最小限にしかシフトしないことを確実にすることも必要である。
【0083】
図5は、本発明によるセンサ装置のゲージ(単数又は複数)と比較して、センサシステムの測定ユニットの配置に関する異なる実施形態を部分(a)及び(b)で示す。ゲージ200は、ハイブリッドゲージとして形成されている。その表面層201は、反射領域及び吸収領域(明るいストライプ及び暗いストライプによって示される)を含む規定された構造を特徴とし、したがって、光学センサシステム(すなわち、光学センサ)の測定ユニットによって走査され得る対応する光学ゲージ220を構成する。図5に示す断面図に基づいて、その内部に埋め込まれ、隠された磁気ゲージ203も見ることができ、この磁気ゲージ203は、連続した交互のシーケンス(明るいストライプ及び暗いストライプによって示される)で多数の北極及び南極を備え、異なる周期を有する磁気トラックを並べて含んでもよい。
【0084】
対応するゲージと協働する2つの測定ユニット又はセンサ101及び102は、ハイブリッドゲージ200に関して、その長手方向の延長に沿って並んで(図5の部分(b))、又はその横方向の延長において並んで(図5の部分(a))配置することができる。
【符号の説明】
【0085】
101 : 磁気センサシステムの測定ユニット
102 : 光学センサシステムの測定ユニット
103 : 処理部
104 : 回路
105 : 演算部
106 : データストリーム
200 : ハイブリッドゲージ
201 : 表面層
202 : 材料層
203 : 磁気センサシステムのゲージ
204 : キャリア層
205 : 接着材料
210 : ゲージ本体
220 : 光学センサシステムのゲージ
302 : キャリア要素
306 : 光学測定ユニットの測定表面からの距離
307 : 磁気測定ユニットの測定表面からの距離
308 : 共通の測定表面
400 : ゲージの信号の周期
401 : 光学センサシステムの位置データ
402 : 磁気センサシステムの位置データ
403 : 2つのゲージの信号の周期の遷移点までの最大距離の位置
405 : 2つのゲージの信号の周期の遷移点
406 : 2つのゲージの信号の周期の遷移点
図1
図2
図3
図4
図5