特許第6850851号(P6850851)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6850851
(24)【登録日】2021年3月10日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0271 20160101AFI20210322BHJP
   H01M 8/1004 20160101ALI20210322BHJP
   H01M 8/0276 20160101ALI20210322BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20210322BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20210322BHJP
【FI】
   H01M8/0271
   H01M8/1004
   H01M8/0276
   H01M8/02
   !H01M8/10
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-193129(P2019-193129)
(22)【出願日】2019年10月24日
【審査請求日】2020年8月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊之
(72)【発明者】
【氏名】菅 博史
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕己
(72)【発明者】
【氏名】大森 誠
【審査官】 守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−224682(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/020686(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/094459(WO,A1)
【文献】 特開2013−120727(JP,A)
【文献】 特開2013−045701(JP,A)
【文献】 特開2002−015758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/10、8/12
H01M 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質、第1電極、及び第2電極を有する膜電極接合体と、
前記膜電極接合体の前記第1電極側に配置される第1セパレータと、
前記膜電極接合体の前記第2電極側に配置される第2セパレータと、
前記第1セパレータと前記膜電極接合体との間に配置され、前記膜電極接合体の外周部と前記第1セパレータの外周部との間をシールする第1シール部材と、
前記第2セパレータと前記膜電極接合体との間に配置され、前記膜電極接合体の外周部と前記第2セパレータの外周部との間をシールする第2シール部材と、
前記第1シール部材と前記第1電極との間に配置され、前記膜電極接合体に供給される燃料と酸化剤との酸化反応に対して活性を有する酸化触媒を有する第1酸化触媒部と、
を備え、
前記第1酸化触媒部は、前記第1シール部材上に配置される、
燃料電池。
【請求項2】
電解質、第1電極、及び第2電極を有する膜電極接合体と、
前記膜電極接合体の前記第1電極側に配置される第1セパレータと、
前記膜電極接合体の前記第2電極側に配置される第2セパレータと、
前記第1セパレータと前記膜電極接合体との間に配置され、前記膜電極接合体の外周部と前記第1セパレータの外周部との間をシールする第1シール部材と、
前記第2セパレータと前記膜電極接合体との間に配置され、前記膜電極接合体の外周部と前記第2セパレータの外周部との間をシールする第2シール部材と、
前記第1シール部材と前記第1電極との間に配置され、前記膜電極接合体に供給される燃料と酸化剤との酸化反応に対して活性を有する酸化触媒を有する第1酸化触媒部と、
を備え、
前記第1酸化触媒部は、前記第1電極から空間的に独立している、
燃料電池。
【請求項3】
前記第1酸化触媒部は、前記第1シール部材上に配置される、
請求項2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記第2シール部材と前記第2電極との間に配置され、前記膜電極接合体に供給される燃料と酸化剤との酸化反応に対して活性を有する酸化触媒を有する第2酸化触媒部をさらに備える、
請求項1から3のいずれかに記載の燃料電池。
【請求項5】
前記電解質は、前記第1電極が配置される第1中央領域と、前記第1中央領域と前記第1シール部材との間の第1外周領域とを有しており、
前記第1酸化触媒部は、前記第1外周領域に配置される、
請求項1から4のいずれかに記載の燃料電池。
【請求項6】
前記第1電極は、平面視において矩形状であり、
前記第1シール部材は、平面視において矩形環状であり、
前記第1酸化触媒部は、前記第1電極の角部と、前記第1シール部材の角部との間に配置される、
請求項1から5のいずれかに記載の燃料電池。
【請求項7】
前記第1酸化触媒部は、酸化触媒として白金を有する、
請求項1から6のいずれかに記載の燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素などの燃料と、空気などの酸化剤との電気化学反応によって電気エネルギーを取り出す。燃料電池は、膜電極接合体と、一対のセパレータとを有している。膜電極接合体は、電解質と、一対の電極とを有している。電解質は、一対の電極間に配置されている。一対のセパレータは、膜電極接合体を挟むように配置されている。この膜電極接合体とセパレータとの間から燃料又は酸化剤が外部へ漏出しないようにシール部材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−206572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のような構成の燃料電池において、出力低下の抑制が要望されている。そこで本発明の課題は、燃料電池の出力低下を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1側面に係る燃料電池は、膜電極接合体と、第1セパレータと、第2セパレータと、第1シール部材と、第2シール部材と、第1酸化触媒部とを備えている。膜電極接合部は、電解質、第1電極、及び第2電極を有する。第1セパレータは、膜電極接合体の第1電極側に配置される。第2セパレータは、膜電極接合体の第2電極側に配置される。第1シール部材は、第1セパレータと膜電極接合体との間に配置される。第1シール部材は、膜電極接合体の外周部と第1セパレータの外周部との間をシールする。第2シール部材は、第2セパレータと膜電極接合体との間に配置される。第2シール部材は、膜電極接合体の外周部と第2セパレータの外周部との間をシールする。第1酸化触媒部は、第1シール部材と第1電極との間に配置される。第1酸化触媒部は、膜電極接合体に供給される燃料と酸化剤との酸化反応に対して活性を有する酸化触媒を有する。
【0006】
この構成によれば、次のような要領で、燃料電池の出力の低下を抑制することができる。まず、第1電極に燃料が供給され第2電極に酸化剤が供給される場合において、第1シール部材の密着不良などによって、第1セパレータのガス流路に酸化剤が侵入することがある。ここで、従来の燃料電池では、その酸化剤が第1電極まで到達し、第1電極の表面で酸化剤と燃料との燃焼反応が起こるおそれがある。このように第1電極の表面で燃焼反応が起こると、第1電極内で混成電位が形成され、燃料電池による出力が低下する。
【0007】
これに対して、上述したように構成された燃料電池は、第1酸化触媒部が第1シール部材と第1電極との間に配置されているため、上述した燃料電池の出力低下を次のように抑制することができる。まず、第1セパレータのガス流路内に侵入した酸化剤は、第1電極に到達する前に、第1酸化触媒部上で、ガス流路内を流れる燃料と燃焼反応が起こる。この燃焼反応によって酸化剤が消費されるため、第1電極に到達する酸化剤が低減する。この結果、第1電極の表面での酸化剤と燃料との燃焼反応の発生が低減し、燃料電池の出力の低下を抑制することができる。なお、第1電極に酸化剤が供給され第2電極に燃料が供給される場合であっても、同様に燃料電池の出力の低下を抑制することができる。
【0008】
好ましくは、燃料電池は、第2酸化触媒部をさらに備える。第2酸化触媒部は、第2シール部材と第2電極との間に配置される。第2酸化触媒部は、膜電極接合体に供給される燃料と酸化剤との酸化反応に対して活性を有する酸化触媒を有する。
【0009】
好ましくは、第1酸化触媒部は、第1シール部材上に配置される。
【0010】
好ましくは、電解質は、第1中央領域と、第1外周領域とを有する。第1中央領域は、第1電極が配置される領域である。第1外周領域は、第1中央領域と第1シール部材との間の領域である。第1酸化触媒部は、第1外周領域に配置される。
【0011】
好ましくは、第1電極は、平面視において矩形状である。第1シール部材は、平面視において矩形環状である。第1酸化触媒部は、第1電極の角部と、第1シール部材の角部との間に配置される。
【0012】
好ましくは、第1酸化触媒部は、酸化触媒として白金を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、燃料電池の出力低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】燃料電池の断面図。
図2】電解質の平面図。
図3】電解質の底面図。
図4】膜電極接合体の拡大断面図。
図5】第1セパレータを取り外した状態の燃料電池の平面図。
図6】第2セパレータを取り外した状態の燃料電池の底面図。
図7】第1セパレータを取り外した状態の、変形例に係る燃料電池の平面図。
図8】第1セパレータを取り外した状態の、変形例に係る燃料電池の平面図。
図9】変形例に係る燃料電池の断面図。
図10】変形例に係る燃料電池の断面図。
図11】変形例に係る電解質の拡大断面図。
図12】変形例に係る膜電極接合体の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る燃料電池の実施形態である固体アルカリ形燃料電池100について図面を参照しつつ説明する。固体アルカリ形燃料電池100は、水酸化物イオンをキャリアとするアルカリ形燃料電池(AFC)の一種である。
【0016】
(固体アルカリ形燃料電池100)
図1は、実施形態に係る固体アルカリ形燃料電池100の構成を示す断面図である。固体アルカリ形燃料電池100は、膜電極接合体10、第1セパレータ11、第2セパレータ12、第1シール部材13、第2シール部材14、第1酸化触媒部15、及び第2酸化触媒部16を有している。実際に使用する際は、複数の固体アルカリ形燃料電池100がスタックされる。詳細には、複数の膜電極接合体10が第1及び第2セパレータ11、12を介してスタックされる。
【0017】
(膜電極接合体10)
膜電極接合体10は、アノード2(第1電極の一例)、カソード3(第2電極の一例)、及び電解質4を備える。膜電極接合体10は、下記の電気化学反応式に基づいて、比較的低温(例えば、50℃〜250℃)で発電する。ただし、下記の電気化学反応式では、燃料の一例としてメタノールが用いられている。
【0018】
・アノード2: CHOH+6OH→6e+CO+5H
・カソード3: 3/2O+3HO+6e→6OH
・全体 : CHOH+3/2O→CO+2H
【0019】
(アノード2)
アノード2は、電解質4の第1面41側(図1の上面側)に配置されている。アノード2は、一般的に燃料極と呼ばれる陰極である。
【0020】
固体アルカリ形燃料電池100の発電中、アノード2には、第1セパレータ11の第1流路111を介して、水素原子(H)を含む燃料が供給される。燃料としては、メタノールを用いるのが好ましい。アノード2は、内部に燃料を拡散可能な多孔質体である。アノード2の気孔率は特に制限されない。アノード2の厚みは特に制限されないが、例えば3〜500μmとすることができる。
【0021】
燃料は、アノード2において水酸化物イオン(OH)と反応可能な燃料化合物を含んでいればよく、液体燃料及び気体燃料のいずれの形態であってもよい。
【0022】
燃料化合物としては、例えば、(i)ヒドラジン(NHNH)、水加ヒドラジン(NHNH・HO)、炭酸ヒドラジン((NHNHCO)、硫酸ヒドラジン(NHNH・HSO)、モノメチルヒドラジン(CHNHNH)、ジメチルヒドラジン((CHNNH、CHNHNHCH)、及びカルボンヒドラジド((NHNHCO)等のヒドラジン類、(ii)尿素(NHCONH)、(iii)アンモニア(NH)、(iv)イミダゾール、1,3,5−トリアジン、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール等の複素環類化合物、(v)ヒドロキシルアミン(NHOH)、硫酸ヒドロキシルアミン(NHOH・HSO)等のヒドロキシルアミン類、及びこれらの組合せが挙げられる。これらの燃料化合物のうち炭素を含まない化合物(すなわち、ヒドラジン、水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、アンモニア、ヒドロキシルアミン、硫酸ヒドロキシルアミン等)は、一酸化炭素による触媒被毒の問題が無いため特に好適である。
【0023】
燃料化合物は、そのまま燃料として用いてもよいが、水及び/又はアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの低級アルコール等)に溶解させた溶液として用いてもよい。例えば、上記燃料化合物のうち、ヒドラジン、水化ヒドラジン、モノメチルヒドラジン及びジメチルヒドラジンは液体であるので、そのまま液体燃料として使用可能である。また、炭酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、カルボンヒドラジド、尿素、イミダゾール、及び3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、及び硫酸ヒドロキシルアミンは固体であるが水に可溶である。1,3,5−トリアジン及びヒドロキシルアミンは固体であるがアルコールに可溶である。アンモニアは気体であるが水に可溶である。このように、固体の燃料化合物は、水又はアルコールに溶解させて液体燃料として使用可能である。燃料化合物を水及び/又はアルコールに溶解させて用いる場合、溶液中の燃料化合物の濃度は、例えば1〜90重量%であり、好ましくは1〜30重量%である。
【0024】
また、メタノール、エタノール等のアルコール類やエーテル類を含む炭化水素系液体燃料、メタン等の炭化水素系ガス、或いは純水素などは、そのまま燃料として用いることができる。特に、本実施形態に係る固体アルカリ形燃料電池100に用いられる燃料としては、メタノールが好適である。メタノールは、気体状態、液体状態、及び、気液混合状態のいずれであってもよい。
【0025】
アノード2は、AFCに使用される公知のアノード触媒を含むものであればよく、特に限定されない。アノード触媒の例としては、Pt、Ni、Co、Fe、Ru、Sn、及びPd等の金属触媒が挙げられる。金属触媒は、カーボン等の担体に担持されるのが好ましいが、金属触媒の金属原子を中心金属とする有機金属錯体の形態としてもよく、この有機金属錯体を担体として担持されていてもよい。また、アノード触媒の表面には多孔質材料等で構成された拡散層を配置してもよい。アノード2及びそれを構成する触媒の好ましい例としては、ニッケル、コバルト、銀、白金担持カーボン(Pt/C)、パラジウム担持カーボン(Pd/C)、ロジウム担持カーボン(Rh/C)、ニッケル担持カーボン(Ni/C)、銅担持カーボン(Cu/C)、及び銀担持カーボン(Ag/C)が挙げられる。
【0026】
アノード2の作製方法は特に限定されないが、例えば、アノード触媒及び所望により担体をバインダと混合してペースト状にする。そして、このペースト状混合物を電解質4の第1面41上に塗布することにより形成することができる。
【0027】
(カソード3)
カソード3は、電解質4の第2面42側(図1の下面側)に配置されている。カソード3は、一般的に空気極と呼ばれる陽極である。
【0028】
固体アルカリ形燃料電池100の発電中、カソード3には、第2セパレータ12の第2流路121を介して酸素(O)を含む酸化剤が供給される。酸化剤としては、空気を用いるのが好ましく、空気は加湿されていることがより好ましい。カソード3は、内部に酸化剤を拡散可能な多孔質体である。カソード3の気孔率は特に制限されない。カソード3の厚みは特に制限されないが、例えば5〜200μmとすることができる。
【0029】
カソード3は、AFCに使用される公知の空気極触媒を含むものであればよく、特に限定されない。カソード触媒の例としては、白金族元素(Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)、鉄族元素(Fe、Co、Ni)等の第8〜10族元素(IUPAC形式での周期表において第8〜10族に属する元素)、Cu、Ag、Au等の第11族元素(IUPAC形式での周期表において第11族に属する元素)、ロジウムフタロシアニン、テトラフェニルポルフィリン、Coサレン、Niサレン(サレン=N,N’−ビス(サリチリデン)エチレンジアミン)、銀硝酸塩、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。カソード3における触媒の担持量は特に限定されないが、好ましくは0.1〜10mg/cm、より好ましくは、0.1〜5mg/cmである。カソード触媒はカーボンに担持させるのが好ましい。カソード3ないしそれを構成する触媒の好ましい例としては、白金担持カーボン(Pt/C)、パラジウム担持カーボン(Pd/C)、ロジウム担持カーボン(Rh/C)、ニッケル担持カーボン(Ni/C)、銅担持カーボン(Cu/C)、及び銀担持カーボン(Ag/C)が挙げられる。
【0030】
カソード3の作製方法は特に限定されないが、例えば、カソード触媒及び所望により担体をバインダと混合してペースト状にする。そして、このペースト状混合物を電解質4の第2面42上に塗布することにより形成することができる。
【0031】
(電解質4)
電解質4は、アノード2とカソード3との間に配置される。電解質4は、アノード2及びカソード3のそれぞれに接続される。電解質4は、イオン伝導性を有する。電解質4は、膜状であって、第1面41と第2面42とを有している。第1面41と第2面42とは、互いに逆側を向いている。電解質4の第1面41側にはアノード2が配置されており、第2面42側にはカソード3が配置されている。
【0032】
図2は、電解質4の平面図である。なお、図2において、内側の二点鎖線によって囲まれた領域はアノード2が配置される領域を示しており、外側の二点鎖線よりも外側の領域は第1シール部材13が配置される領域を示している。
【0033】
図2に示すように、電解質4は、第1中央領域43と、第1外周領域44とを有している。第1中央領域43は、アノード2が配置される領域である。アノード2及び第1中央領域43は平面視において矩形状である。
【0034】
第1外周領域44は、第1中央領域43と第1シール部材13との間の領域である。すなわち、第1外周領域44は、第1中央領域43を囲んでおり、第1シール部材13によって囲まれている。第1外周領域44は、枠状である。
【0035】
図3は、電解質4の底面図である。なお、図3において、内側の二点鎖線によって囲まれた領域はカソード3が配置される領域を示しており、外側の二点鎖線よりも外側の領域は第2シール部材14が配置される領域を示している。
【0036】
図3に示すように、電解質4は、第2中央領域45と、第2外周領域46とを有している。第2中央領域45は、カソード3が配置される領域である。カソード3及び第2中央領域45は、平面視において矩形状である。なお、第2中央領域45は、第1中央領域43と同じ大きさでもよいし、第1中央領域43よりも小さくてもよいし、第1中央領域43よりも大きくてもよい。
【0037】
第2外周領域46は、第2中央領域45と第2シール部材14との間の領域である。すなわち、第2外周領域46は、第2中央領域45を囲んでおり、第2シール部材14によって囲まれている。第2外周領域46は、枠状である。
【0038】
図4は、電解質4の断面を拡大して示す模式図である。電解質4は、支持体5と、イオン伝導体6とを有する。
【0039】
支持体5は、イオン伝導体6を支持するように構成されている。詳細には、支持体5は、三次元網目構造を有する多孔質基材である。「三次元網目構造」とは、基材の構成物質が立体的かつ網目状に繋がった構造である。支持体5は、連続孔5aを形成する。連続孔5aは、立体的かつ網目状に孔が繋がることによって構成されており、支持体5の外表面に露出している。連続孔5aには、イオン伝導体6が含浸されている。
【0040】
支持体5は、金属材料、セラミックス材料、及び高分子材料から選択される少なくとも1種によって構成することができる。
【0041】
支持体5を構成する金属材料としては、ステンレス(Fe−Cr系合金、Fe−Ni−Cr系合金など)、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、又は、チタンなどを用いることができる。このような金属材料は、セラミックス材料や高分子材料に比べて熱伝導性が高いため、支持体5の放熱効率を向上させることができるとともに、支持体5内の温度分布を低減させることができる。三次元網目構造を有する限り、支持体5の形態は特に制限されず、例えば、多孔質金属材料(例えば、発砲金属材料)によって構成されるセル状又はモノリス状の構造物であってもよいし、細線金属材料によって構成されるメッシュ状の塊であってもよい。
【0042】
また、支持体5が金属材料によって構成される場合、支持体5の表面には絶縁膜が形成されていてもよい。絶縁膜は、Cr、Al、ZrO、MgO、MgAlなどによって構成することができる。支持体5をステンレスによって構成する場合、ステンレスを酸化処理することにより、絶縁膜としてのCr膜を簡便に形成することができる。ただし、本実施形態では、後述する第1及び第2膜状部4b,4cが、絶縁膜として機能するため、支持体5の表面には、絶縁膜が形成されていなくてもよい。
【0043】
支持体5を構成するセラミックス材料としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、カルシア、コージェライト、ゼオライト、ムライト、酸化亜鉛、炭化ケイ素、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0044】
支持体5を構成する高分子材料としては、例えば、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイド、親水化したフッ素樹脂(四フッ素化樹脂:PTFE等、ポリフッ化ビニリデン)、セルロース、ナイロン、ポリエチレン及びこれらの任意の組合せが挙げられる。支持体5をフレキシブル性の高分子材料で構成する場合には、気孔率を高めながら厚さを薄くしやすいため、水酸化物イオン伝導性を向上させることができる。高分子材料によって構成される支持体5としては、リチウム電池用セパレータとして市販されているような微多孔膜を用いることができる。
【0045】
支持体5の厚さは特に制限されないが、例えば、200μm以下とすることができ、好ましくは100μm以下、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは25μm以下であり、5μm以下が最も好ましい。支持体5の厚さの下限値は、用途に応じて適宜設定すればよいが、ある程度の堅さを確保するには1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましい。
【0046】
支持体5の断面における連続孔5aの平均内径は特に制限されないが、例えば、0.001〜1.5μmとすることができ、好ましくは0.001〜1.25μm、より好ましくは0.001〜1.0μm、さらに好ましくは0.001〜0.75μm、特に好ましくは0.001〜0.5μmである。これらの範囲内とすることによって、支持体5に支持体としての強度を付与しつつ、イオン伝導体6の緻密度を向上させることができる。連続孔5aの平均内径とは、支持体5の断面を電子顕微鏡で観察した場合に、観察画像上で無作為に選出した20箇所における連続孔5aの円相当径を算術平均することによって得られる。連続孔5aの円相当径とは、観察画像において、連続孔5aの断面積と同じ面積を有する円の直径である。なお、電子顕微鏡の倍率は、連続孔5aの断面サイズに応じて適宜設定すればよい。
【0047】
連続孔5aの体積率は特に制限されないが、例えば、10〜80%とすることができ、好ましくは15〜75%、より好ましくは20〜70%である。これらの範囲内とすることによって、支持体5に支持体としての強度を確保しつつ、イオン伝導体6の緻密度を向上させることができる。連続孔5aの体積率は、アルキメデス法により測定することができる。
【0048】
また、図4では図示されていないが、支持体5は、それ自体の内部に複数の細孔を有することが好ましい。複数の細孔は、支持体5の内部において、互いに繋がっていてもよい。そして、各細孔は支持体5の表面に開口する開気孔であって、各細孔にはイオン伝導体6が含浸していることがより好ましい。これによって、連続孔5a→支持体5内の細孔→連続孔5aという短距離イオン伝導パスや、連続孔5a→支持体5内の細孔→第2膜状部4c、或いは、第1膜状部4b→支持体5内の細孔→第2膜状部4cという長距離イオン伝導パスを形成することができる。その結果、複合部4a内のイオン伝導可能領域が広がるため、電解質4全体としてのイオン伝導性を向上させることができる。
【0049】
イオン伝導体6は、水酸化物イオン伝導性を有する。固体アルカリ形燃料電池100の発電中、イオン伝導体6は、カソード3側からアノード2側に水酸化物イオン(OH)を伝導させる。イオン伝導体6の水酸化物イオン伝導率は特に制限されないが、0.1mS/cm以上が好ましく、より好ましくは0.5mS/cm以上、さらに好ましくは1.0mS/cm以上である。イオン伝導体6の水酸化物イオン伝導率は、高いほど好ましく、その上限値は特に制限されないが、例えば10mS/cmである。
【0050】
イオン伝導体6は、水酸化物イオン伝導性を有するセラミックス材料によって構成することができる。このようなセラミックス材料としては、層状複水酸化物(LDH:Layered Double Hydroxide)が好適である。
【0051】
LDHは、M2+1−x3+(OH)n−x/n・mHO(式中、M2+は2価の陽イオン、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、xは0.1〜0.4、mは水のモル数を意味する任意の整数である)の一般式で示される基本組成を有する。M2+の例としてはMg2+、Ca2+、Sr2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Mn2+、及びZn2+が挙げられ、M3+の例としては、Al3+、Fe3+、Ti3+、Y3+、Ce3+、Mo3+、及びCr3+が挙げられ、An−の例としてはCO2−及びOHが挙げられる。M2+及びM3+としては、それぞれ1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0052】
LDHは、複数の水酸化物基本層と、これら複数の水酸化物基本層間に介在する中間層とから構成される。中間層は、陰イオン及びHOで構成される。水酸化物基本層は、例えば金属MがNi、Al、Tiの場合には、Ni、Al、Ti及びOH基を含む。以下、LDHの水酸化物基本層がNi、Al、Ti及びOH基を含む場合について説明する。
【0053】
LDH中のNiはニッケルイオンの形態を採りうる。LDH中のニッケルイオンは典型的にはNi2+であると考えられるが、Ni3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。LDH中のAlはアルミニウムイオンの形態を採りうる。LDH中のアルミニウムイオンは典型的にはAl3+であると考えられるが、他の価数もありうるため、特に限定されない。LDH中のTiはチタンイオンの形態を採りうる。LDH中のチタンイオンは典型的にはTi4+であると考えられるが、Ti3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti及びOH基を主要構成要素として含むのが好ましいが、他の元素ないしイオンを含んでいてもよいし、不可避不純物を含んでいてもよい。不可避不純物は、製法上不可避的に混入されうる任意元素であり、例えば原料や基材に由来してLDH中に混入しうる。
【0054】
LDHの中間層は、陰イオン及びHOで構成される。陰イオンは1価以上の陰イオン、好ましくは1価又は2価のイオンである。好ましくは、LDH中の陰イオンはOH及び/又はCO2−を含む。
【0055】
上記のとおり、Ni、Al及びTiの価数は必ずしも定かではないため、LDHを一般式で厳密に特定することは非実際的又は不可能である。仮に水酸化物基本層が主としてNi2+、Al3+、Ti4+及びOH基で構成されるものと想定した場合、LDHは、一般式:Ni2+1−x−yAl3+Ti4+(OH)n−(x+2y)/n・mHO(式中、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、好ましくは1又は2であり、0<x<1、好ましくは0.01≦x≦0.5、0<y<1、好ましくは0.01≦y≦0.5、0<x+y<1、mは0以上、典型的には0を超える又は1以上の実数である)なる基本組成で表すことができる。もっとも、上記一般式はあくまで「基本組成」と解されるべきであり、Ni2+、Al3+、Ti4+等の元素がLDHの基本的特性を損なわない程度に他の元素又はイオン(同じ元素の他の価数の元素又はイオンや製法上不可避的に混入されうる元素又はイオンを含む)で置き換え可能なものとして解されるべきである。
【0056】
電解質4は、複合部4a、第1膜状部4b、及び第2膜状部4cを有する。複合部4aは、支持体5とイオン伝導体6とを有する。第1膜状部4b及び第2膜状部4cは、イオン伝導体6を有しているが、支持体5を有していない。
【0057】
複合部4aは、第1膜状部4bと第2膜状部4cとの間に配置される。イオン伝導体6は、支持体5内において、支持体5に支持されている。詳細には、イオン伝導体6は、支持体5の連続孔5a内に配置される。イオン伝導体6は、支持体5の連続孔5a内に含浸されており、支持体5と一体化している。このように、イオン伝導体6を支持体5で支持することによって、イオン伝導体6の強度を向上できるため、イオン伝導体6を薄くすることができる。その結果、電解質4の低抵抗化を図ることができる。
【0058】
本実施形態において、イオン伝導体6は、支持体5の連続孔5aの略全域に広がる。ただし、電解質4が第1膜状部4b及び第2膜状部4cの少なくとも一方を有さない場合、イオン伝導体6は、支持体5の一部にのみ含浸されていてもよい。
【0059】
ここで、複合部4aにおいて、電解質4は、その内部に形成された複数の閉気孔61を有する。このような閉気孔61が形成されるため、固体アルカリ形燃料電池100の作動中にイオン伝導体6の含水状況の変動に起因する電解質4の体積変化を緩和させることができる。これにより、電解質4とカソード3との界面、又は/及び電解質4とアノード2との界面に応力が発生することを抑制できる。その結果、カソード3又は/及びアノード2から電解質4が剥離したり、電解質4自体が変形したりすることを抑制できる。
【0060】
さらに、閉気孔61が複合部4aの内部に形成されることで、複合部4aに柔軟性を付与することができるため、固体アルカリ形燃料電池100内の温度分布に起因して、カソード3と電解質4との界面、又は/及び、アノード2と電解質4との界面に熱応力が発生することを抑制できる。そのため、カソード3又は/及びアノード2から電解質4が剥離したり、或いは、電解質4自体が変形したりすることを抑制できる。
【0061】
閉気孔61は、支持体5から離れている。すなわち、閉気孔61は、複合部4aの内部に閉じこめられており、連続孔5aの内表面と直接的に接触しない。これによって、閉気孔61が支持体5に直接接触する場合に比べて、電解質4に体積変化や変形が生じた場合に、支持体5、複合部4a及び閉気孔61の三者で作られる角部を起点として、複合部4aが支持体5から剥離することを抑制できる。
【0062】
各閉気孔61の平均円相当径は特に制限されないが、例えば、0.001〜1.0μmとすることができる。各閉気孔61の平均円相当径は、0.001μm以上が好ましく、0.002μm以上がより好ましい。これによって、複合部4aの柔軟性をより向上させることができる。また、各閉気孔61の平均円相当径は、1.0μm以下が好ましく、0.8μm以下がより好ましい。
【0063】
各閉気孔61の平均円相当径は、電解質4の断面を20,000〜1,500,000倍の電子顕微鏡で観察し、無作為に選出した20個の閉気孔61の円相当径を算術平均することによって得られる。閉気孔61の円相当径とは、電解質4の断面において、閉気孔61と同じ面積を有する円の直径である。ただし、0.001μm以下の円相当径を有する閉気孔61は、複合部4aの柔軟性向上への寄与が極めて小さいため、各閉気孔61の平均円相当径を求める際には除外するものとする。
【0064】
第1膜状部4bは、複合部4aのアノード2側に連なる。第1膜状部4bは、膜状に形成される。第1膜状部4bのイオン伝導体6は、複合部4aのイオン伝導体6と一体的に形成される。
【0065】
第2膜状部4cは、複合部4aのカソード3側に連なる。第2膜状部4cは、膜状に形成される。第2膜状部4cのイオン伝導体6は、複合部4aのイオン伝導体6と一体的に形成される。第1膜状部4b及び第2膜状部4cそれぞれは、一様な平面状に形成されていてもよいし、縞状など所望の平面形状にパターン化されていてもよい。第1膜状部4b及び第2膜状部4cそれぞれの厚さは特に制限されないが、例えば、10μm以下とすることができ、好ましくは7μm以下、より好ましくは5μm以下である。
【0066】
(電解質4の製造方法)
電解質4の作製方法は特に限定されないが、イオン伝導体6をLDHで構成する場合であって、LDHの水酸化物基本層がNi、Al、Ti及びOH基を含むとき、以下の工程(1)〜(4)で作製することができる。
【0067】
(1)支持体5を用意する。
【0068】
(2)支持体5の全体にアルミナ及びチタニアの混合ゾルを含浸させて熱処理することでアルミナ・チタニア層を形成させる。後述するように、支持体5の表面全体からLDHを成長させるには、支持体5の表面全体にアルミナ・チタニア層を形成させることが重要となるため、アルミナ及びチタニアの混合ゾルを含浸させて熱処理することを複数回実施する。これにより、支持体5の表面全体にアルミナ・チタニア層を形成することができる。
【0069】
(3)ニッケルイオン(Ni2+)及び尿素を含む原料水溶液に支持体5を浸漬させる。
【0070】
(4)原料水溶液中で支持体5を水熱処理して、LDHを支持体5上及び支持体5中に形成させることによって、イオン伝導体6を形成する。この際、水熱処理時間および溶液濃度を適宜調整することによって、気孔が閉塞する前に反応を停止することでイオン伝導体6内に閉気孔61を形成させることができる。LDHは支持体5の表面に形成されたアルミナ・チタニア層を核として成長するため、支持体5の表面全体にアルミナ・チタニア層を形成させた場合においては、支持体5の表面全体からLDHが成長することになる。その結果として、閉気孔61を支持体5から離すことができる。
【0071】
(第1及び第2セパレータ11、12)
図1に示すように、第1セパレータ11は、膜電極接合体10のアノード2側に配置されている。第2セパレータ12は、膜電極接合体10のカソード3側に配置されている。第1セパレータ11と第2セパレータ12との間に膜電極接合体10が配置されている。積層方向(z軸方向)において、第1セパレータ11と第2セパレータ12とによって、膜電極接合体10を挟んでいる。
【0072】
第1セパレータ11は、アノード2に水素原子(H)を含む燃料を供給するように構成されている。第1セパレータ11は、第1流路111を有している。第1流路111は、アノード2と対向している。この第1流路111には、燃料ガス供給路(図示省略)が連結されており、水素原子(H)を含む燃料が供給される。例えば、第1流路111には、メタノールが供給される。
【0073】
第2セパレータ12は、カソード3に酸素(O)を含む酸化剤を供給するように構成されている。第2セパレータ12は、第1流路121を有している。第2流路121は、カソード3と対向している。この第2流路121には、酸化剤ガス供給路(図示省略)が連結されており、酸素(O)を含む酸化剤が供給される。
【0074】
複数の膜電極接合体10が第1及び第2セパレータ11,12を介してスタックされている場合は、第1セパレータ11は、第1流路111が形成される面とは反対側の面に第2流路が形成されている。また、第2セパレータ12は、第2流路121が形成される面とは反対側の面に第1流路が形成されている。
【0075】
(第1シール部材13)
第1シール部材13は、第1セパレータ11と膜電極接合体10との間に配置されている。第1シール部材13は、第1セパレータ11と膜電極接合体10との間をシールしている。詳細には、第1シール部材13は、第1セパレータ11の外周部と、膜電極接合体10の外周部との間をシールしている。第1シール部材13は、膜電極接合部10の電解質4の外周部と当接している。第1シール部材13は、電解質4の第1面41と当接している。
【0076】
第1シール部材13は、第1ガス流路111内を流れる燃料が外部へ漏出することを防止するように構成されている。また、第1シール部材13は、カソード3に供給される酸化剤が第1ガス流路111内に侵入することを防止するように構成されている。
【0077】
図5は、第1セパレータ11が取り外された状態の燃料電池100の平面図である。図5に示すように、第1シール部材13は、平面視において、矩形環状である。第1シール部材13は、アノード2を囲むように配置されている。第1シール部材13は、アノード2に対して間隔をあけて配置されている。この第1シール部材13とアノード2との間の空間内に、第1酸化触媒部15が配置されている。
【0078】
第1シール部材13は、例えば、Oリング、又はゴムシートなどを例示することができる。第1シール部材13は、第1セパレータ11と別部材である。なお、第1シール部材13は、第1セパレータ11と一体的に構成されていてもよい。
【0079】
(第2シール部材14)
図1に示すように、第2シール部材14は、第2セパレータ12と膜電極接合体10との間に配置されている。第2シール部材14は、第2セパレータ12と膜電極接合体10との間をシールしている。詳細には、第2シール部材14は、第2セパレータ12の外周部と、膜電極接合体10の外周部との間をシールしている。第2シール部材14は、膜電極接合部10の電解質4の外周部と当接している。第2シール部材14は、電解質4の第2面42と当接している。
【0080】
第2シール部材14は、第2ガス流路121内を流れる酸化剤が外部へ漏出することを防止するように構成されている。また、第2シール部材14は、アノード2に供給される燃料が第2ガス流路121内に侵入することを防止するように構成されている。
【0081】
図6は、第2セパレータ12が取り外された状態の燃料電池100の底面図である。図6に示すように、第2シール部材14は、平面視において、矩形環状である。第2シール部材14は、カソード3を囲むように配置されている。第2シール部材14は、カソード3に対して間隔をあけて配置されている。この第2シール部材14とカソード3との間の空間内に、第2酸化触媒部16が配置されている。
【0082】
第2シール部材14は、例えば、Oリング、又はゴムシートなどを例示することができる。第2シール部材14は、第2セパレータ12と別部材である。なお、第2シール部材14は、第2セパレータ12と一体的に構成されていてもよい。
【0083】
(第1酸化触媒部15)
図1及び図5に示すように、第1酸化触媒部15は、第1シール部材13とアノード2との間に配置されている。詳細には、第1酸化触媒部15は、第1シール部材13の内周面上に配置されている。第1酸化触媒部15は、第1シール部材13の内周面に沿って、環状に延びている。
【0084】
第1酸化触媒部15は、燃料と酸化剤との酸化反応に対して活性を有する酸化触媒を有している。具体的には、第1酸化触媒部15は、白金、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、ニッケル及び鉄の少なくとも一つを酸化触媒として有している。酸化触媒は一部または全体が酸化物となった形態であってもよい。好ましくは、第1酸化触媒部15は、酸化触媒として白金を有している。
【0085】
例えば、燃料電池スタックとして組み立てる前の時点で第1シール部材13の内周面上に酸化触媒を塗布しておくことによって、第1酸化触媒部15を第1シール部材13の内周面上に形成することができる。酸化触媒の塗布方法としては、スプレーコート法、刷毛塗法、又は印刷法などを用いることができる。酸化触媒の固着性を高めるために、適宜バインダを添加してもよい。
【0086】
このように第1酸化触媒部15が配置されているため、次のような効果を得ることができる。例えば、第1シール部材13の密着不良などによって、第1ガス流路111内に空気などの酸化剤が侵入することがある。ここで、第1酸化触媒部15が配置されていない場合、その酸化剤がアノード2まで到達すると、アノード2の表面で酸化剤と燃料との燃焼反応が発生する。この結果、アノード2内で混成電位が形成され、この燃料電池100による出力が低下するおそれがある。
【0087】
これに対して、本実施形態のように第1酸化触媒部15が第1シール部材13とアノード2との間に配置されていると、上述した燃料電池100の出力低下を次のように抑制することができる。まず、第1ガス流路111内に侵入した酸化剤は、アノード2に到達する前に、第1酸化触媒部15上で、第1ガス流路111内を流れる燃料と燃焼反応が起こる。この燃焼反応によって酸化剤が消費されるため、アノード2に到達する酸化剤が低減する。この結果、アノード2の表面での酸化剤と燃料との燃焼反応の発生が低減し、燃料電池100の出力の低下を抑制することができる。
【0088】
(第2酸化触媒部16)
図1及び図6に示すように、第2酸化触媒部16は、第2シール部材14とカソード3との間に配置されている。詳細には、第2酸化触媒部16は、第2シール部材14の内周面上に配置されている。第2酸化触媒部16は、第2シール部材14の内周面に沿って、環状に延びている。
【0089】
第2酸化触媒部16は、燃料と酸化剤との酸化反応に対して活性を有する酸化触媒を有している。具体的には、第2酸化触媒部16は、白金、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、ニッケル及び鉄の少なくとも一つを酸化触媒として有している。酸化触媒は一部または全体が酸化物となった形態であってもよい。好ましくは、第2酸化触媒部16は、酸化触媒として白金を有している。
【0090】
例えば、燃料電池スタックとして組み立てる前の時点で第2シール部材14の内周面上に酸化触媒を塗布しておくことによって、第2酸化触媒部16を第2シール部材14の内周面上に形成することができる。酸化触媒の塗布方法としては、スプレーコート法、刷毛塗法、又は印刷法などを用いることができる。酸化触媒の固着性を高めるために、適宜バインダを添加してもよい。
【0091】
このように第2酸化触媒部16が配置されているため、次のような効果を得ることができる。例えば、第2シール部材14の密着不良などによって、第2ガス流路121内にメタノールなどの燃料が侵入することがある。ここで、第2酸化触媒部16が配置されていない場合、その燃料がカソード3まで到達すると、カソード3の表面で燃料と酸化剤との燃焼反応が発生する。この結果、カソード3内で混成電位が形成され、この燃料電池100による出力が低下するおそれがある。
【0092】
これに対して、本実施形態のように第2酸化触媒部16が第2シール部材14とカソード3との間に配置されていると、上述した燃料電池100の出力低下を次のように抑制することができる。まず、第2ガス流路121内に侵入した燃料は、カソード3に到達する前に、第2酸化触媒部16上で、第2ガス流路121内を流れる酸化剤と燃焼反応が起こる。この燃焼反応によって燃料が消費されるため、カソード3に到達する燃料が低減する。この結果、カソード3の表面での燃料と酸化剤との燃焼反応の発生が低減し、燃料電池100の出力の低下を抑制することができる。
【0093】
(実施形態の変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0094】
変形例1
上記実施形態では、第1酸化触媒部15は、第1シール部材13の内周面に沿って、環状に連続して延びているが、第1酸化触媒部15の構成はこれに限定されない。例えば、第1酸化触媒部15は、環状に断続的に延びていてもよい。第2酸化触媒部16も同様である。
【0095】
第1酸化触媒部15は環状に延びていなくてもよい。この場合、第1酸化触媒部15は、第1シール部材13のうち、より酸化剤が侵入してきやすい場所に配置されることが好ましい。例えば、図7に示すように、第1酸化触媒部15は、アノード2の角部と第1シール部材13の角部との間に配置されていてもよい。同様に、第2酸化触媒部16は、カソード3の角部と第2シール部材14の角部との間に配置されていてもよい。
【0096】
また、図8に示すように、酸化剤が流れる配管101とアノード2との間に、複数の第1酸化触媒部15が互いに間隔をあけて配置されていてもよい。同様に、燃料が流れる配管とカソード3との間に、複数の第2酸化触媒部16が互いに間隔をあけて配置されていてもよい。
【0097】
変形例2
上記実施形態では、第1酸化触媒部15は、第1シール部材13の内周面上に配置されているが、第1酸化触媒部15の配置はこれに限定されない。例えば、図9に示すように、第1酸化触媒部15は、電解質4の第1外周領域44上に配置されていてもよい。そして、第1酸化触媒部15は、第1シール部材13から離れていてもよい。同様に、第2酸化触媒部16は、電解質4の第2外周領域46上に配置されており、第2シール部材14から離れていてもよい。
【0098】
変形例3
上記実施形態では、第1及び第2酸化触媒部15、16は、電解質4上に配置されているが、第1及び第2酸化触媒部15、16の配置はこれに限定されない。例えば、図10に示すように、膜電極接合部10は、枠状部材47を有している。この枠状部材47は開口部を有しており、電解質4は枠状部材47の開口部内に配置されている。そして、枠状部材47と電解質4とは互いに接合されている。そして、第1酸化触媒部15は、この枠状部材47上に配置されていてもよい。この場合、第1シール部材13及び第2シール部材14は、枠状部材47上に配置されている。
【0099】
変形例4
上記実施形態では、電解質4の支持体5は、多孔質基材によって構成されているが、支持体5はこれに限定されない。例えば、電解質4の支持体5は、バインダであってもよい。例えば、図11に示すように、バインダとして構成されている支持体5は、イオン伝導体6の構成粒子間に配置されている。この支持体5は、イオン伝導体6の各構成粒子同士を結着する。例えば、支持体5は、LDH粒子同士を結着することによって、電解質4の形状を維持する。このようなバインダとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン−ブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、又はエチレン−アクリル酸共重合体などを挙げることができる。
【0100】
変形例5
上記実施形態では、閉気孔61は、支持体5から離れていたが、図12に示すように、閉気孔61は、支持体5に接していてもよい。すなわち、閉気孔61は、連続孔5aの内表面と直接的に接触していてもよい。これによって、閉気孔61が支持体5から離れている場合に比べて、閉気孔61の存在による支持体5の拘束面積を低減できるため、支持体5自体の柔軟性を向上させることができる。そのため、電解質4に体積変化や変形が生じた場合に、カソード3と電解質4との界面、又は/及び、アノード2と電解質4との界面に応力が発生することをより抑制できる。
【0101】
変形例6
上記実施形態では、電解質4は、複合部4a、第1膜状部4b、及び第2膜状部4cを有することとしたが、複合部4aのみを有していてもよい。すなわち、電解質4は、第1膜状部4b及び第2膜状部4cの少なくとも一方を備えていなくてよい。
【0102】
変形例7
上記実施形態では、第1酸化触媒部15及び第2酸化触媒部16が設けられているが、第1酸化触媒部15のみを設けていてもよい。すなわち、第2酸化触媒部16は省略されてもよい。
【0103】
変形例8
上記実施形態では、アノード2が本発明の第1電極に相当し、カソード3が本発明の第2電極に相当しているが、逆であってもよい。すなわち、アノード2が本発明の第2電極に相当し、カソード3が本発明の第1電極に相当してもよい
【0104】
変形例9
上記実施形態では、本発明に係る燃料電池を固体アルカリ形燃料電池に適用した実施形態を説明したが、本発明に係る燃料電池が適用される対象は固体アルカリ形燃料電池に限定されず、例えば、プロトン伝導膜を用いた固体高分子形燃料電池などの他の燃料電池にも適用することができる。
【符号の説明】
【0105】
2 アノード
3 カソード
4 電解質
10 膜電極接合体
11 第1セパレータ
12 第2セパレータ
13 第1シール部材
14 第2シール部材
15 第1酸化触媒部
16 第2酸化触媒部
100 燃料電池
【要約】
【課題】燃料電池の出力低下を抑制する。
【解決手段】燃料電池100は、膜電極接合体10、第1及び第2セパレータ11,12、第1及び第2シール部材13,14、並びに、第1酸化触媒部15を備えている。第1シール部材13は、第1セパレータ11と膜電極接合体10との間に配置される。第1シール部材13は、膜電極接合体10の外周部と第1セパレータ11の外周部との間をシールする。第2シール部材14は、第2セパレータ12と膜電極接合体10との間に配置される。第2シール部材14は、膜電極接合体10の外周部と第2セパレータ12の外周部との間をシールする。第1酸化触媒部15は、第1シール部材13と第1電極3との間に配置される。第1酸化触媒部15は、膜電極接合体10に供給される燃料と酸化剤との酸化反応に対して活性を有する酸化触媒を有する。
【選択図】図1
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