(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記潤滑油組成物が、前記潤滑油組成物中1.15重量%の前記バイモーダルのエチレンコポリマー組成物の濃度において測定された特性(i)〜(v)のそれぞれを示す、請求項1に記載の潤滑油組成物。
前記潤滑油組成物が、前記潤滑油組成物中1.15重量%の前記バイモーダルのエチレンコポリマー組成物の濃度において測定された2.5〜3.7の範囲内のHTHSを示す、請求項1または2に記載の潤滑油組成物。
前記潤滑油が1.15重量%の前記バイモーダルのエチレンコポリマー組成物を含んでいる場合に、前記潤滑油組成物が3.0〜3.7の範囲内のHTHSを示す、請求項3に記載の潤滑油組成物。
前記第2のエチレンコポリマー画分が、60重量%超から80重量%までの範囲内のエチレン由来含有量および20,000g/モル〜100,000g/モルの範囲内のMwを有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
潤滑油組成物であって、(1)ベースオイルおよび(2)前記潤滑油組成物の全量に基いて1.15重量%のバイモーダルのエチレンコポリマー組成物を含んでいる潤滑油組成物において、前記バイモーダルのエチレンコポリマー組成物が
(a)第1のエチレンコポリマー画分であって、エチレンおよび1種以上のC3〜C12α−オレフィンの由来単位を含んでおり、かつ(i)前記第1のエチレンコポリマー画分中のモノマー由来単位の含有量に基いて40重量%〜60重量%の範囲内のエチレン由来含有量(C2第1);(ii)100,000〜750,000g/モルの範囲内の重量平均分子量(Mw);および(iii)0.95以下の分枝指数g’を有する、第1のエチレンコポリマー画分;および
(b)第2のエチレンコポリマー画分であって、エチレンおよび1種以上のC3〜C12α−オレフィンの由来単位を有し、かつ(i)前記第2のエチレンコポリマー画分中のモノマー由来単位の含有量に基いてC2第1+3重量%以上のエチレン由来含有量;(ii)前記第1のエチレンコポリマー画分のMwよりも少なくとも50,000g/モル少ないMw;および(iii)0.96〜1の範囲内の分枝指数g’ を有する、第2のエチレンコポリマー画分
を含んでおり、かつ、
さらに、前記潤滑油組成物が以下の特性の1つ以上を示す、潤滑油組成物:
(i)3.0〜6.0cPの範囲内の、ASTM D4683によって測定された高温高せん断(HTHS)値;
(ii)12〜20cStの範囲内の、100℃での動粘度(ASTM D445によって測定されたkv@100℃);
(iii)95〜120cStの範囲内の、40℃での動粘度(ASTM D445によって測定されたkv@40℃);
(iv)7〜11cStの範囲内のせん断後のkv@100℃(ASTM D6278によって測定されたもの);
(v)少なくとも140の粘度指数(ASTM D2270によって測定されたもの)
(vi)2.5〜5.5の範囲内の増粘効率(TE);および
(vii)55未満のせん断安定性指数(SSI)。
前記ベースオイルが、75〜110の範囲内の(前記バイモーダルのエチレンコポリマー組成物が存在しない状態でASTM D2270によって測定された)粘度指数を有する、請求項8に記載の潤滑油組成物。
【発明を実施するための形態】
【0019】
様々な実施形態のプロセスは、好ましくは単一の重合反応ゾーンで、以下のようなエチレンコポリマー組成物を得るように2元メタロセン触媒重合を使用する:すなわち、このエチレンコポリマー組成物は(1)高い分子量を有し、分枝状構造を示し、かつ(第1のエチレンコポリマー画分の重量に基いて)比較的より低いエチレン含有量を有する第1のエチレンコポリマー画分;および(2)低い分子量を有し、直鎖状レオロジーを示し、かつ(第2のエチレンコポリマー画分の重量に基いて)比較的より高いエチレン含有量を有する第2のエチレンコポリマー画分を有する。2元メタロセン触媒重合としては、第1のメタロセン触媒および第2のメタロセン触媒の存在下でエチレンと1種以上の追加のα−オレフィンモノマー(好ましくはプロピレン)との重合が挙げられる。特定の実施形態では、第1のメタロセン触媒と第2のメタロセン触媒とのモル比は、第1の画分と第2の画分とを有する所望のコポリマー組成物を得るように調節され、維持されまたは他様に制御される。
【0020】
そのような2元触媒系によって製造され、上記の第1および第2の画分を有するエチレンコポリマー組成物は、粘度調整剤として使用されてもよく、この粘度調整剤は有利なことに(1)良好なせん断減粘性および燃費経済性(たとえば、より低いエチレン含有量、分枝状、高い分子量の第1の画分の存在に少なくとも部分的に起因するもの)および(2)良好な増粘効率(たとえば、より高いエチレン含有量、直鎖状、低い分子量の第2の画分の存在に少なくとも部分的に起因するもの)の両方を示す。
定義
【0021】
本明細書で使用される周期表の族の付番方式は、Chemical and Engineering News、63巻、第5号、27頁(1985年)に記載された表記法である。したがって、「第4族金属」とは周期表の第4族金属の元素、たとえばZr、TiおよびHfである。
【0022】
メタロセン触媒についてここで言及される。当業者は、メタロセン触媒組成物が、典型的にはそれが重合に使用される前にメタロセン触媒をイオン型にしてそのイオン型がモノマーと反応してポリマーを生成するように、活性化されることを理解するだろう。そのような活性化された触媒は「活性化された触媒」と呼ばれてもよく、またはその触媒はそうでなければ「活性化された」と呼ばれてもよい。しかし、当業者は、その議論の文脈からメタロセン触媒の状態(すなわち、活性化型または未活性化型あるいは前駆体型)を直ちに判断することができるだろう。したがって、メタロセン触媒は必ずしも常に「活性化された」または「予備活性化された」と呼ばれるとは限らず、その代りに単にメタロセン触媒または単に「触媒」と言及されることもある。たとえば、重合反応ゾーンに供給されおよび/またはその中に配置されて重合を生じさせる触媒は、特に明記されない限り(活性化により生じる電荷を平衡させる部分の有無に関らず)活性化型であると直ちに推定されることができ、他方、活性剤または触媒活性剤と接触させられていると記載されるメタロセン触媒組成物は、未活性化型または前駆体型である(すなわち、遷移金属に結合されたアニオン配位子を有している)と直ちに推定されることができる。同様に、触媒組成物の構造がその未活性型であると本明細書に記載されることがあるけれども、活性型もまたそのような記載に含まれることが意図されていることは直ちに明らかであろうし、また、その逆も同様である。未活性化型または前駆体型を考察した後の当業者には、活性型は直ちに明らかであろうし、また、その逆も同様である。
【0023】
本明細書で使用される「2元触媒系」または「2元メタロセン触媒系」は、2種の異なる触媒または2種の異なるメタロセン触媒をそれぞれ使用する反応やその他のプロセスに言及している。同様に、「2元触媒重合」または「2元触媒メタロセン重合」は、1種以上の種類のモノマーの重合が2種の異なる触媒、たとえば2種の異なるメタロセン触媒の存在下で起こるプロセスに言及している。
【0024】
「重合反応ゾーン」は、モノマーの重合が起こってもよい任意の空間を含む。特定の実施形態としては、単一の重合リアクターまたは直列に接続されたまたは並列に運転される1組の複数の重合リアクターが挙げられ、これらは任意の公知の重合リアクター(たとえば、連続撹拌槽型リアクター、溶液リアクター、流動床等)に従うものでもよい。好ましい実施形態では、重合反応ゾーンは単一の重合リアクターを含んでいる。
【0025】
捕捉剤とは、不純物を捕捉することによってオリゴマー化または重合を促進するために典型的に添加される化合物である。いくつかの捕捉剤はまた、活性剤としても作用し、共活性剤と呼ばれることもある。捕捉剤でない共活性剤もまた、活性触媒を形成するために活性剤とともに使用されてもよい。いくつかの実施形態では、共活性剤は遷移金属化合物と予め混合されて、アルキル化された遷移金属化合物を形成することができる。遷移金属化合物はプレ触媒内におけるように中性であってもよく、または活性化された触媒系内におけるように対イオンを有する荷電化学種であってもよい。
【0026】
本明細書で使用されるMnとは数平均分子量であり、Mwは重量平均分子量であり、Mzはz平均分子量であり、重量%は重量パーセントであり、またモル%はモルパーセントである。分子量分布(MWD)はまた多分散性とも呼ばれ、MwをMnで割ったもの(Mw/Mn)であると定義される。特に指定のない限り、全ての分子量単位(たとえば、Mw、Mn、Mz)はg/モルである。「アルキル」基は、炭素および水素の直鎖状、分枝状または環状の基である。好ましい実施形態では、「アルキル」は直鎖状のアルキルを指す。
【0027】
本明細書で使用される「コポリマー」とは、2個以上のモノマー単位から形成されたおよび/またはそれから誘導された単位を含んでいる任意のポリマー化合物を指す。コポリマーは「ターポリマー」を含み、これは3個のモノマー単位から形成されたおよび/またはそれから誘導された単位を含んでいる任意のポリマー化合物のより特定の場合である。
2元触媒重合
【0028】
様々な実施形態によるプロセスは、第1のメタロセン触媒および第1のメタロセン触媒とは異なる第2のメタロセン触媒の存在下で、複数のモノマーを好ましくは同じ重合反応ゾーンで重合する工程を含む。第1のメタロセン触媒は高いムーニーのポリマー組成物(すなわち、より長いまたはより高い分子量鎖)を製造することができ、第2のメタロセン触媒はビニル末端鎖の部分を有する、比較的より低いムーニーのポリマー組成物(すなわち、より短いまたはより低い分子量鎖)を製造する。一緒に使用されて、これらの触媒は、(i)バイモーダルのポリマー組成物(第1のメタロセン触媒によって製造された高いムーニーの画分および第2のメタロセン触媒によって製造された低いムーニーの画分)を製造してもよく、その場合に(ii)高いムーニーの画分は長鎖分枝物と整合するレオロジーを示す。理論によって拘束されることを望むわけではないが、高いムーニーの画分のレオロジーは、第2の触媒がビニル末端ポリマー鎖を製造し、このビニル末端ポリマー鎖が第1の触媒によって、成長中の高分子量ポリマー鎖中に組み込まれ、それによってそのような高い分子量のポリマー鎖中に長鎖分枝をもたらすということに少なくとも部分的に起因すると考えられる。
第1のメタロセン触媒
【0029】
第1のメタロセン触媒は、記載されたように、高いムーニー(すなわち、高い分子量)のポリマーを製造することができ、そしてそれはとりわけ、それが製造する高いムーニーのポリマー中にビニル末端ポリマー鎖を組み入れることができる。適当な触媒化合物は、2015年12月28日に出願された国際特許出願番号PCT/US15/67582の「ポリマー組成物を製造するための装置およびプロセス」と標記された段落[0076]〜[0109]に「HMP触媒」として記載されており、その記載は参照によって本明細書に組み込まれる。そこに記載されたように、そのような触媒としては、架橋フルオレニル−シクロペンタジエニル第4族金属錯体(および/またはCp−フルオレニル変異体)、モノ−Cpアミド第4族金属錯体(および/またはモノ−Cpアミド変異体)、ビフェニルフェノール(BPP)遷移金属錯体、ピリジルアミド遷移金属錯体および/またはピリジルジアミド遷移金属錯体が挙げられる。
【0030】
いくつかの実施形態による特に好ましい第1のメタロセン触媒としては、一般式(I)を有するフルオレニル−シクロペンタジエニル第4族金属錯体が挙げられる:
【化1】
この式で、(1)Jは2価の架橋基(好ましくはC、Siまたは両方を含んでいるもの)であり;(2)Mは第4族遷移金属(ある実施形態ではHfが好ましい。)であり;(3)Xはそれぞれ独立して1価のアニオン性配位子であり、または2個のXは連結され金属原子に結合されてメタラサイクル環を形成し、または2個のXは連結されてキレート化する配位子、ジエン配位子またはアルキリデン配位子を形成し;(4)R”
1、R”
2、R”
3、R”
4、R”
5、R”
6、R”
7、R”
8、R”
9およびR”
10はそれぞれ、独立して水素、C
1〜C
50の置換または非置換アルキル(好ましくは非置換C
1〜C
10アルキル、より好ましくはC
1〜C
5アルキル)であり、但しR”
1およびR”
2、R”
3およびR”
4、R”
5およびR”
6、R”
6およびR”
7、R”
8およびR”
9ならびにR”
9およびR”
10の対の任意の1個以上が任意的に一緒に結合されて飽和または部分的に飽和の環構造または縮合環構造を形成してもよいことを条件とする。いくつかの実施形態では、Jは、炭素および/またはケイ素原子、たとえばジアルキルシリルを含んでいる架橋基であり;好ましくは、JはCH
2、CH
2CH
2、C(CH
3)
2、SiMe
2、SiEt
2、SiPh
2、SiMePh、Ph
2C、(p−(Et)
3SiPh)
2C、Si(CH
2)
3、Si(CH2)
3、Si(CH
2)
4およびSi(CH
2)
5から選ばれ、ここでMeはメチルであり、Etはエチルであり、Phはフェニルである。
【0031】
式(I)に従う構造を有する化合物に言及することによって、この化合物の活性化型および未活性化(前駆体)型の両方が考慮に入れられていることが当業者によって理解されるだろう。
【0032】
ある実施形態では、(1)R”
6およびR”
9は、それぞれC
1〜C
4アルキル、好ましくはC
4アルキル、たとえば第3級ブチルであり;(2)R”
1〜R”
4、R”
5、R”
7、R”
8およびR”
10はそれぞれ独立してメチル、エチルまたはH(好ましくは、それぞれはHである。)であり;(3)Jはまさに上記された基のいずれかから選ばれ(好ましくは、Jは(p−(Et)
3SiPh)
2Cである。);(4) MはHfであり;(5)Xはそれぞれ独立してC
1〜C
3アルキルまたはハライド(好ましくは、Xはそれぞれメチルである。) である。
【0033】
ある実施形態による特に好ましい第1のメタロセン触媒は、1,1'−ビス(4−トリエチルシリルフェニル)メチレン−(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−第3級ブチルフルオレン−9−イル)ハフニウムジメチルを含んでいる。
【0034】
他の実施形態では、第1のメタロセン触媒はモノ−Cpアミド第4族金属錯体、たとえば国際特許出願番号PCT/US15/67582の段落[0079]〜[0085]の記載に従うものを含んでいてもよく、その記載は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0035】
さらに他の実施形態では、第1のメタロセン触媒は、国際特許出願番号PCT/US15/67582の段落[0093]〜[0098]に記載されたようなキレート化された遷移金属錯体(タイプ1)を含んでいてもよく、その記載は参照によって本明細書に組み込まれる。これらのものとしては、特にビフェニルフェニル遷移金属錯体、たとえば国際特許出願番号PCT/US15/67582の段落[0094]〜[0098]の記載に従うものが挙げられ、その記載は参照によって本明細書に組み込まれる。そのような化合物のさらなる記載についてはまた、国際公開番号WO2003/091262、WO2005/108406、米国公開番号2006/0025548、2006/0052554、国際公開番号WO2007/136494、WO2007/136496、WO2007/136495、WO2009/064482およびWO2013/096573も見よ。これらのそれぞれは参照によって本明細書に組み込まれる。
【0036】
いくつかのさらなる実施形態では、第1のメタロセン触媒は、国際特許出願番号PCT/US15/67582の段落[0099]〜[0101]に記載された、ピリジルアミド遷移金属錯体を含んでいるキレート化された遷移金属錯体(タイプ2)を含んでおり、その記載は参照によって本明細書に組み込まれる。そのような化合物のさらなる記載についてはまた、国際公開番号WO2010/0227990、米国公開番号2004/0220050、国際公開番号WO2004/026925、WO2004/024740、WO2004/024739、WO2003/040201、WO2002/046249およびWO2002/038628も見よ。これらは参照によって本明細書に組み込まれる。
【0037】
またさらなる実施形態では、適当な第1のメタロセン触媒は、キレート化された遷移金属錯体(タイプ3)、たとえばピリジルジアミド遷移金属錯体、例として国際特許出願番号PCT/US15/67582の段落[0102]〜[0109]に記載されたものを含んでおり、その記載は参照によって本明細書に組み込まれる。そのような化合物のさらなる記載についてはまた、米国公開番号2014/0316089、国際公開番号WO2012/134614、WO2012/134615、WO2012/134613、米国公開番号2012/0071616、2011/0301310および2010/0022726も見よ。これらのそれぞれは参照によって本明細書に組み込まれる。
第2のメタロセン触媒
【0038】
いくつかの実施形態の第2のメタロセン触媒は、記載されたように、比較的より低いムーニーのポリマー組成物(すなわち、より短い鎖またはより低い分子量のポリマー)を製造し、その少なくとも一部は、第1のメタロセン触媒によって形成されたポリマー鎖の中に取り込まれるのに適したビニル末端鎖を有する。適当な第2のメタロセン触媒化合物としては、国際特許出願番号PCT/US15/67582の段落[0061]〜[0065]に「VTP触媒」として記載されたものが挙げられ、その記載は参照によって本明細書に組み込まれる。そこに記載されたように、特に有用な第2のメタロセン触媒としては、2個のインデニル配位子(すなわち、ビス−インデニル遷移金属錯体)を有する第4族遷移金属メタロセン触媒化合物が挙げられる。特に有用な第2のメタロセン触媒化合物としては、国際特許出願番号PCT/US15/67582の段落[0074](その記載は参照によって本明細書に組み込まれる。)に列挙され記載されたメタロセン化合物の1種以上、および/または2014年7月8日に出願された米国特許出願第14/325,449号であって米国特許出願公開2015/0025209として2015年1月22日に公開されたものの段落[0089]〜[0090](その記載は参照によって本明細書に組み込まれる。)に列挙され記載されたメタロセン化合物の1種以上が挙げられる。
【0039】
いくつかの実施形態では、第2のメタロセン触媒は式(II)に従う構造を有する:
【化2】
この式で、(1)JはC、Siまたは両方を含んでいる2価の架橋基であり;(2)Mは第4族遷移金属(好ましくはHf)であり;(3)Xはそれぞれ独立して1価のアニオン性配位子であり、または2個のXは連結され金属原子に結合されてメタラサイクル環を形成し、または2個のXは連結されてキレート化する配位子、ジエン配位子またはアルキリデン配位子を形成し;(4)R
2、R
3、R
4、R
5、R
6およびR
7はそれぞれ、独立して水素、C
1〜C
50の置換または非置換アルキル(好ましくはHまたは非置換C
1〜C
10アルキル、より好ましくはHまたはC
1〜C
5アルキル)であり、但しR
4およびR
5、R
5およびR
6ならびにR
6およびR
7の対の任意の1個以上が任意的に一緒に結合されて飽和または部分的に飽和の環構造または縮合環構造を形成してもよいことを条件とする。このような化合物はまた、ビス−インデニルメタロセン化合物とも呼ばれる。
【0040】
式(II)に従う構造を有する化合物に言及することによって、この化合物の活性化型および未活性化(前駆体)型が考慮に入れられていることが当業者によって理解されるだろう。
【0041】
ある実施形態では、Xはそれぞれ独立して1〜20個の炭素原子、水素化物、アミド、アルコキシド、硫化物、リン化物、ハロゲン化物、ジエン、アミン、ホスフィン、エーテルまたはこれらの組み合わせを有するヒドロカルビル基から成る基から選ばれる。2個のXは、縮合環または環系の一部を形成してもよい。特定の実施形態では、Xはそれぞれ、ハライドおよびC
1〜C
5アルキル基から独立して選ばれる。たとえば、Xはそれぞれ、クロロ、ブロモ、メチル、エチル、プロピル、ブチルまたはペンチル基であってもよい。特定の実施形態では、Xはそれぞれメチル基である。
【0042】
Jは式(IIa)によって表されてもよい:
【化3】
この式で、J’はCまたはSi(好ましくはSi)であり、xは1、2、3または4であり、好ましくは2または3であり、またR'はそれぞれ独立して水素またはC
1〜C
10ヒドロカルビル、好ましくは水素である。J’がケイ素である場合のJ基の特定の例としては、シクロペンタメチレンシリレン、シクロテトラメチレンシリレン、シクロトリメチレンシリレン等が挙げられる。J’が炭素である場合のJ基の特定の例としては、シクロプロパンジイル、シクロブタンジイル、シクロペンタンジイル、シクロヘキサンジイル等が挙げられる。
【0043】
いくつかの実施形態では、Jは、式(R
a2J’)
nによって表され、J’はそれぞれ独立してCまたはSi(ここでもJ’は好ましくはSi) であり、nは1または2(好ましくはnは1)であり、またRaはそれぞれ独立してC
1〜C
20の置換または非置換ヒドロカルビルであり、但し、2個以上のRaは、任意的に一緒に連結されて飽和または部分的に飽和または芳香族の環状または縮合環状の、少なくとも1個のJ’を組み込む構造でもよいことを条件とする。J基の特定の例としては、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン等が挙げられる。
【0044】
特定の実施形態では、第2のメタロセン触媒は、式IIに従う構造を有しており、かつ(1)R
4およびR
7はそれぞれ独立してC
1〜C
5アルキル、好ましくはC
1〜C
3アルキル(また、より好ましくは両方ともにメチル)であり;(2)R
2はそれぞれHまたはC
1〜C
5アルキル、好ましくはC
1またはHであり、より好ましくはHであり;(3)R
3、R
5およびR
6はそれぞれ独立してHまたはC
1〜C
5アルキル、好ましくはC
1またはHであり、より好ましくはC
1であり;(4)Jはシクロペンタメチレンシリレン、シクロテトラメチレンシリレン、シクロトリメチレンシリレン、シクロプロパンジイル、シクロブタンジイル、シクロペンタンジイルまたはシクロヘキサンジイルであり、(5)MはHfであり;また(6)Xはそれぞれ独立してハライドまたはC
1〜C
3アルキル、好ましくはメチルである。
【0045】
特定の実施形態では、たとえば第2のメタロセン触媒は、(1)シクロテトラメチレンシリレン−ビス(2,4,7−トリメチルインデン−1−イル)ハフニウムジメチル;および(2)シクロテトラメチレンシリレン-ビス(4,7−ジメチルインデン−1−イル)ハフニウムジメチルのうちの1個または両方を含んでいる。
【0046】
第2のメタロセン触媒化合物は、ラセミまたはメソ形であることができる。1つの特定の実施形態では、第2のメタロセン触媒化合物はラセミ形である。たとえば、存在するラセミ形とメソ形との重量に基いて触媒化合物の少なくとも90重量%はラセミ形であってもよい。より特定すると、触媒化合物の約92、93、94、95、96、97、98および99重量%のうちの少なくとも任意の1つがラセミ形であってもよい。1つの実施形態では、全ての触媒化合物はラセミ形である。
【0047】
本明細書に記載された第2のメタロセン触媒化合物は、任意の適当な方法で、たとえば2014年7月8日に出願された米国特許出願第14/325,449号であって米国特許出願公開2015/0025209として2015年1月22日に公開されたものの段落[0096]および[00247]〜[00298]に記載された手順に従って合成されてもよく、その記載は参照によって本明細書に組み込まれる。
触媒活性剤
【0048】
「共触媒」および「活性剤」の用語は本明細書では互換的に使用され、上記された(第1および第2のメタロセン触媒化合物のいずれかまたは両方を含む)触媒化合物のいずれか1種を、中性の触媒化合物を触媒的に活性な触媒化合物カチオンに変換することによって活性化することができる任意の化合物であると定義される。適当な活性剤は、国際特許出願番号PCT/US15/67582の段落[0110]〜[0115]に記載され(その記載は参照によって本明細書に組み込まれる。)および/または米国特許出願公開2015/0025209の段落[0110]〜[0133]に記載されている(その記載は参照によって本明細書に組み込まれる。)。
【0049】
いくつかの実施形態での特に有用な活性剤としては、非配位性アニオン(NCA)活性剤、たとえば米国特許出願公開2015/0025209の段落[0124]におけるもの、およびまた米国特許8,658,556の7欄および20〜21欄におけるものが挙げられ、この記載は参照によって本明細書に組み込まれる。適当なNCA活性剤の特定の例としては、以下のものが挙げられる:N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(パーフルオロナフチル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(パーフルオロビフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(パーフルオロナフチル)ボレート、ビス(C
4−C
20アルキル)メチルアンモニウムテトラキス(パーフルオロナフチル)ボレート、Me
3NHテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、Me
3NHテトラキス(ヘプタフルオロ−2−ナフチル)ボレートおよびビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート。
【0050】
第1および第2のメタロセン触媒は、同じまたは異なる活性剤によって活性化されてもよい。これらの触媒は、一緒に(同じ活性剤が使用される場合)または別々に活性化されてもよい。特定の実施形態では、これらの触媒は、同じ活性剤によって一緒にあるいは別々に、好ましくは別々に活性化される。両方の触媒はまた、触媒供給ライン中でまたは重合リアクター中で、オンラインで活性化されることができる。
【0051】
さらに、第1および第2のメタロセン触媒のそれぞれについての典型的な活性剤−触媒のモル比は1:1である。もっとも、好ましい範囲としては0.1:1〜1000:1(たとえば0.5:1〜100:1、例として2:1〜50:1)が挙げられてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、活性剤は、触媒化合物と接触させられて、活性化された触媒および活性剤または他の電荷平衡部分を含んでいる触媒系を形成し、その後にその触媒系は1種以上のモノマーと接触させられる。他の実施形態では、活性剤は、1種以上のモノマーと一緒に触媒化合物へと同時供給されてもよい。好ましくは、それぞれの触媒はそのそれぞれの活性剤と接触させられて、その後に一緒に混合されおよび/またはその後に重合反応ゾーン中に供給される。
任意的な捕捉剤または共活性剤
【0053】
活性剤化合物に加えて、捕捉剤または共活性剤が、重合反応ゾーン中で第1および第2のメタロセン触媒とともに使用されてもよい。捕捉剤または共活性剤として利用されてもよいアルミニウムアルキルまたは有機アルミニウム化合物としては、たとえば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム等が挙げられる。他の求酸素性化学種、たとえばジエチル亜鉛が使用されてもよい。
適当なα−オレフィンモノマー
【0054】
記載されたように、本明細書に記載された重合プロセスは、2元触媒重合への入力として1種以上のオレフィンモノマーを使用する。モノマーは、好ましくは(コポリマー組成物を製造するように)2種以上のα−オレフィン、より好ましくは(エチレンコポリマー組成物および特にエチレン−α−オレフィンコポリマー組成物を製造するように)エチレンおよび1種以上の追加のα−オレフィンを含んでいる。最も好まれるのは、エチレン−プロピレンコポリマー組成物(すなわち、エチレンおよびプロピレンの由来単位から成るコポリマー組成物、またはエチレンおよびプロピレンの由来単位から本質的に成るコポリマー組成物、これは他のモノマー由来単位が0.001重量%未満で存在することを意味する。)を製造するようにエチレンおよびプロピレンを使用する重合である。もっとも、ある実施形態は、より一般的には、エチレンおよび1種以上のC
3〜C
20、好ましくはC
3〜C
12α−オレフィン、最も好ましくはエチレンおよび1種の他のC
3〜C
12α−オレフィンを重合する工程を含んでいる。
2元触媒重合を調節する工程
【0055】
記載されたように、様々な実施形態の重合プロセスとしては、重合反応ゾーン(好ましくは単一の重合リアクターであるような反応ゾーン)中での第1および第2のメタロセン触媒の両方の存在下における重合が挙げられる。
【0056】
本明細書での様々な実施形態のプロセスは、(1)高分子量を有し、分枝状のレオロジーを示しおよび(第1のエチレンコポリマー画分の重量に基いて)比較的より低いエチレン含有量を有する第1のエチレンコポリマー画分;および(2)低分子量を有し、直鎖状のレオロジーを示し、(第2のエチレンコポリマー画分の重量に基いて)比較的より高いエチレン含有量を有する第2のエチレンコポリマー画分を有するエチレンコポリマー組成物を得るように重合を操作する工程(たとえば、重合条件を調節しおよび/または使用する工程、および/またはモノマーを触媒と接触させる工程)を含む。これらの実施形態のあるものによれば、第1のメタロセン触媒は第1の画分を生成し、他方、第2のメタロセン触媒は第2の画分を生成する。より具体的には、第2の触媒は、比較的より高いエチレン含有量を有する直鎖状で低分子量のポリマー鎖を生成し、そのうちのいくらかはビニル鎖末端を有する。したがって、これらの直鎖状低分子量ポリマー鎖の一部はそれ自体が、第1のメタロセン触媒によってより高い分子量の鎖中に組み込まれることが可能であり、それによって分枝状構造(たとえば、くし形分枝状構造)を有するより高い分子量の第1画分を生成する。本開示発明の恩恵を受ける当業者は、第1の画分および第2の画分の所望の分子量を得るように(たとえば、第1および第2の触媒の活性をそれぞれ増加しまたは低減するように重合プロセスを操作することによって)重合反応条件をどのように調節するかを直ちに理解するであろう。さらに、各画分の相対量(すなわち、コポリマー組成物中の第1および第2の画分の割合)は、第1および第2のメタロセン触媒の相対活性を調節することによって調節されてもよい。特定の実施形態では、これは、第1のメタロセン触媒と第2のメタロセン触媒とのモル比を調節することを含む。
【0057】
そのような調節の方法は知られており、重合反応温度を調節すること、および重合反応ゾーンへの連鎖移動剤(たとえば、水素)の供給量を調節すること、とともに、反応ゾーン中のモノマー(たとえば、エチレンおよび/またはプロピレン)濃度を調節することが挙げられる。たとえば、分子量(すなわち、ポリマー鎖長)の調節は、リアクター温度の調節を通して(たとえば、モノマーおよび溶媒の供給温度を調節することによって)達成されることができる。リアクター温度を下げることは、一般により高い分子量(より長いポリマー鎖長)をもたらすだろう。他方、より高い運転温度は、触媒活性を増加させ、および/またはリアクター中のより高いポリマー濃度を可能にして、より高い生産性を達成することがある(もっとも、より高い触媒活性は、典型的にはより低い分子量すなわちより短いポリマー鎖を意味する。)。しかし、その温度は、重合分解温度または触媒が重合反応を持続することができる温度を超えてはいけない。
【0058】
重合反応ゾーンのモノマー濃度は、モノマー供給量、触媒供給量および(特に、連続反応プロセスでは)滞留時間の1種以上によって調節されることができる。各画分のより高い分子量は、より高いモノマー濃度の下で達成されることができる。他方、触媒供給量を増加することは、転化率の増加をもたらすが、重合反応ゾーン中のより低いモノマー濃度、したがってより低い分子量をもたらすことがある。
【0059】
連鎖移動剤、たとえば水素は、分子量の調節を補足するために使用されることができる(たとえば、分子量を下げるために反応ゾーンへの水素の流れが増加される。)。
【0060】
単一触媒の重合に使用されるポリマー特性を調節するための一般的な方法は、本発明の様々な実施形態の2元触媒プロセスに適用される。本発明の2元触媒による重合の場合、ムーニー粘度もまた、それぞれの触媒(たとえば、様々な実施形態の第1および第2のメタロセン触媒)から誘導されるそれぞれのポリマー成分の量(および分子量)によって決定される。高分子量側での長鎖分枝状の分子構造(たとえば、第1のメタロセン触媒によって製造されたポリマー)の生成は、調節のための別の要素を加える。MWDおよび分枝度は、触媒比を変えることによって操作調節されることができる。本発明の系では、他のプロセス変数が一定に保持されると、全体のポリマー組成物の分子量は、あるピーク点までは、第1の(高分子量を生成する)メタロセン触媒の割合を増加させるにつれて増加する。すなわち、第1のメタロセン触媒と第2のメタロセン触媒との触媒比(モル:モル)が増加するにつれて、分枝状高分子量画分の量は(およびしたがって全体のコポリマー組成物の分子量も)、ある点まで増加する。その分子量は次に、第1のメタロセン触媒の割合が増加するにつれて減少する。第1と第2とのメタロセン触媒のある触媒比(モル:モル)を超えた後のコポリマー組成物の分子量のこの最終的な減少は、(より低い割合で存在する)第2のメタロセン触媒によって生成されるビニル末端ポリマー鎖が少なくなることに起因する。したがって、第1のメタロセンによって取り込まれるビニル末端ポリマー鎖が減少し、かくして全体のポリマー分子量が低下することになる(そしてさらに、高分子量の第1の画分の分枝状のレオロジーが相対的に少なくなる結果をもたらす。)。
【0061】
したがって、本発明の様々な実施形態の重合方法はまた、(1)高分子量、低エチレン含有量、好ましくは非直鎖状(たとえば、長鎖分枝状)の第1の画分および(2)低分子量、高エチレン含有量、直鎖状の第2の画分の所望の量を有するポリマー組成物を得るように重合を操作する工程(たとえば、重合条件を調節しおよび/または使用する工程)を含む。
【0062】
好ましい実施形態では、所望の第1および第2の画分を(および所望の量で)得るように重合を操作する工程は、重合反応ゾーン中の第1のメタロセン触媒と第2のメタロセン触媒とのモル比に少なくとも部分的に基く。第1および第2のメタロセン触媒が非連続的な様式で重合反応ゾーンに提供されるバッチまたはセミバッチ反応に関して本明細書で使用されるモル比は、重合反応ゾーンに提供される第1および第2のメタロセン触媒のそれぞれの(モル単位での)相対的な量を指してもよい。触媒が重合反応ゾーンに連続的に供給される連続反応プロセスに関しては、モル比は第1および第2のメタロセン触媒の相対的な供給量(モル/時、モル/分、モル/秒等)を指す。
【0063】
理論によって拘束されることを望むわけではないが、本発明の様々な実施形態による第1および第2のメタロセン触媒の組み合わせは、そのような実施形態のコポリマー組成物のそれぞれのポリマー画分の相対量およびレオロジー特性の有利な注意深い調整を可能にすると考えられる。
【0064】
しかし、触媒比と生成されたポリマー特性との関係は、第1のメタロセン触媒と第2のメタロセン触媒との相乗効果によって複雑になる。特に、上記のように、第1のメタロセン触媒が生成する高ポリマー分子量画分は長鎖分枝状(および特にくし形分枝状)構造を有することになり、これは少なくとも部分的には、第1のメタロセン触媒によって製造された高分子量ポリマー中に(第2のメタロセン触媒によって製造された)ビニル末端鎖を組み込む第1の触媒の能力に起因すると考えられる。このような構造は、たとえば、高ポリマー分子量画分の分枝指数g'および/またはコポリマー組成物の分枝指数g'によって示されてもよい。したがって、第1のメタロセン触媒が製造する高分子量ポリマーの量が多ければ多いほど、得られるポリマー組成物の分子量をそれだけ高くするだけでなく、それはまた、ポリマー組成物が(より多い量の分枝状高分子量ポリマーが生成されることによる)長鎖分枝状であることの指標であるレオロジー特性をそれだけ多く示すようになる傾向がある。しかし、長鎖分枝状構造の形成は、同一の所与の重合環境において同一のポリマー鎖内でのモノマーの成長反応と(たとえば、第2のメタロセン触媒によって生成されるような)ビニル末端マクロモノマーの取り込み反応との間の競合プロセスである。レオロジーへのこの強制効果が生じるためには、第2のメタロセン触媒からビニル末端鎖がまた十分な量で生成しなければならない。したがって、より高い触媒比(すなわち、比較的より多くの第1のメタロセン)は、長鎖分枝の程度がより大きくなることを必ずしも意味するわけではない。
【0065】
したがって、(i)コポリマー組成物の(それぞれ第1および第2の触媒によって生成された)高いムーニー画分および低いムーニー画分の分配;および(ii)分枝状構造の分枝の程度および割合;の両方のバランスをとる特定の触媒比を(所与のポリマー分子量のコポリマー組成物を生成するための所与の他の重合条件において)決定する際には、注意が必要である。いくつかの特定の実施形態では、ポリマー分子量を調節するための従来の手段(たとえば、温度、モノマー濃度および/または連鎖移動剤供給量)を使用することが、その目的のために触媒比を利用することよりもむしろ好ましく、かつ、少なくとも部分的に触媒比に基いて反応を調節することによって所望のポリマー分子量および(たとえば、分枝指数、位相角等によって示されるような)ポリマー組成物のレオロジーを得るための調節パラメーターの範囲内で使用することが好ましい。
【0066】
より一般的には、さらに他の実施形態によるプロセスは、所望の特性(および、特に、所望のレオロジー、所望のポリマー分子量、および/または各画分中のおよび/または全体のコポリマー組成物中の所望のエチレン含有量)を有するコポリマー組成物を得るようにモノマーを第1および第2のメタロセン触媒と接触させる工程を含む。
バイモーダルのエチレンコポリマー組成物の製造工程
【0067】
したがって、特定の実施形態の2元触媒重合プロセスは、(1)高い分子量を有し、分枝状構造を示し、かつ(第1のエチレンコポリマー画分の重量に基いて)比較的より低いエチレン含有量を有する第1のエチレンコポリマー画分;および(2)低い分子量を有し、直鎖状レオロジーを示し、かつ(第2のエチレンコポリマー画分の重量に基いて)比較的より高いエチレン含有量を有する第2のエチレンコポリマー画分を含んでいるバイモーダルのエチレンコポリマー組成物を得るように、エチレンおよび1種以上の追加のC
3〜C
20(好ましくはC
3〜C
12)α−オレフィンを第1および第2のメタロセン触媒と接触させる工程を含む(および任意的に重合反応を調節する工程をさらに含む。)。
【0068】
第1のエチレンコポリマー画分は好ましくは、60重量%以下、好ましくは40〜60重量%の範囲内、より好ましくは50〜59重量%の範囲内のエチレン含有量を有し、当該重量%は第1のエチレンコポリマー画分中のモノマー由来単位の含有量に基いている。様々な実施形態では、任意の上記の下限から任意の上記の上限までの範囲も意図される。第1のエチレンコポリマー画分の残りは1種以上のC
3〜C
12α−オレフィン由来単位から構成され、好ましくは第1のエチレンコポリマー画分の残りはプロピレン由来単位から成る。
【0069】
さらにまたは代わりに、第1のエチレンコポリマー画分は80,000g/モル〜1,000,000g/モルの範囲内、好ましくは90,000〜900,000g/モルの範囲内、たとえば100,000〜750,000g/モル、100,000〜600,000g/モル、または100,000〜500,000g/モルさえの重量平均分子量(Mw)を有してもよく、任意の上記の下限から任意の上記の上限までの範囲も様々な実施形態で意図される。第1のエチレンコポリマー画分は、少なくとも70,000、または少なくとも100,000、たとえば70,000〜500,000または100,000〜500,000g/モルの数平均分子量(Mn)を有してもよい(ここでも、任意の上記の下限から任意の上記の上限までの範囲も様々な実施形態で意図される。)。
【0070】
さらに、第1のエチレンコポリマー画分は0.95以下、たとえば0.4〜0.95、または0.5〜0.95、または0.6〜0.95の範囲内の分枝指数g’を有してもよい。
【0071】
第2のエチレンコポリマー画分は、好ましくは第1のコポリマー画分のエチレン含有量プラス3重量%以上、好ましくはプラス5重量%であるエチレン含有量を有する。数学用語で言うと、第1のコポリマー画分のエチレン含有量が(第1のコポリマー画分のモノマー由来含有量に基いた重量%で)C2
第1と特性付けられる場合には、第2のコポリマー画分の(第2のコポリマー画分のモノマー由来含有量に基いた重量%での)エチレン含有量C2
第2は、好ましくは(C2
第1+3)重量%以上、より好ましくは(C2
第1+5)重量%以上である。いくつかの実施形態では、第2のコポリマー画分のエチレン含有量は、下限のC2
第1+3重量%から上限のC2
第1+10重量の範囲内であってもよい。さらにまたは代わりに、第2のエチレンコポリマーのエチレン含有量は、60重量%超、および/または60もしくは61重量%から80重量%までの範囲内、好ましくは60もしくは61重量%から70重量%までであってもよい。この段落に記載されている第2のエチレンコポリマー画分のエチレン含有量の重量%は、第2のエチレンコポリマー画分中のモノマー由来単位の含有量に基く。第2のエチレンコポリマー画分の残りは1種以上C
3〜C
12α−オレフィン由来単位から構成され、好ましくは第2のエチレンコポリマー画分の残りはプロピレン由来単位から成る。
【0072】
さらに、第2のエチレンコポリマー画分の分子量(Mw)は、第1のエチレンコポリマー画分の分子量(Mw)よりも少なくとも50,000g/モル少なくてもよい。たとえば、いくつかの実施形態では、第2のエチレンコポリマー画分のMwは、15,000g/モル〜500,000g/モル、好ましくは15,000g/モル〜400,000g/モル、たとえば20,000g/モル〜300,000g/モル、または20,000g/モル〜200,000g/モルでさえ、たとえば20,000g/モル〜100,000g/モルの範囲内であってもよく、任意の上記の下限から任意の上記の上限までの範囲も様々な実施形態で意図される(たとえば、15,000g/モル〜100,000g/モル)。いくつかの実施形態では、第2のエチレンコポリマー画分のMnは、5,000g/モル〜100,000g/モル、たとえば10,000〜50,000g/モルの範囲内であってもよい。
【0073】
さらにまたは代わりに、第2のエチレンコポリマー画分は、直鎖状の構造を示す分枝指数g’を有してもよい。たとえば、第2のエチレンコポリマー画分は、1の、または0.96〜1、たとえば0.98〜1、または0.99〜1の範囲内のg’を有してもよく、任意の上記の下限から任意の上記の上限までの範囲も様々な実施形態で意図される。
【0074】
いくつかの実施形態のエチレンコポリマー組成物は、50〜97重量%の範囲内、たとえば51〜95重量%、60〜95重量%、70〜93重量%、または75〜90重量%の範囲内の量で第1のエチレンコポリマー画分を含んでいてもよく、任意の上記の下限から任意の上記の上限までの範囲も様々な実施形態で意図される。このような重量%は全て、第1および第2のエチレンコポリマー画分を合わせた重量に基く。第2のエチレンコポリマー画分は、そのような実施形態でのエチレンコポリマー組成物の残りを構成してもよい。ある実施形態では、より一般的には、コポリマー組成物は第2のコポリマー画分よりも多くの第1のエチレンコポリマー画分を含んでいる。
【0075】
なおさらなる実施形態では、(第1および第2のエチレンコポリマー画分を含んでいる)エチレンコポリマー組成物は、上記の代りに、全体のコポリマー組成物の特性に基いて特性付けられてもよい。あるいは、いくつかの実施形態のエチレンコポリマー組成物は、(1)第1および第2のエチレンコポリマー画分のそれぞれの上記の特性および(2)全体のエチレンコポリマー組成物の以下の特性の両方を示してもよい。
【0076】
特に、エチレンコポリマー組成物は以下の1つ以上を有してもよい:
●エチレン含有量(エチレンコポリマー組成物のモノマー由来含有量に基いた重量%):40〜70重量%の範囲内、好ましくは50〜65重量%の範囲内、たとえば50〜60重量%であって、任意の上記の下限から任意の上記の上限までの範囲も様々な実施形態で意図されるもの。好ましい実施形態では、エチレンコポリマー組成物の残りは、C
3〜C
12α−オレフィン由来単位、好ましくはプロピレン由来単位から成りまたはから本質的に成る。;
●重量平均分子量(Mw):100,000g/モル〜500,000g/モルの範囲内、好ましくは100,000〜400,000g/モル、たとえば110,000〜250,000g/モルの範囲内であって、任意の上記の下限から任意の上記の上限までの範囲も様々な実施形態で意図されるもの。
●数平均分子量(Mn):20,000g/モル〜100,000g/モルの範囲内、好ましくは25,000g/モル〜90,000g/モル、たとえば30,000g/モル〜80,000g/モルの範囲内であって、任意の上記の下限から任意の上記の上限までの範囲も様々な実施形態で意図されるもの。
●分子量分布(MWD)、別名、多分散性指数(PDI)、Mw/Mnとして定義されるもの:2〜10、好ましくは2.5〜9、たとえば3〜8の範囲内であって、任意の上記の下限から任意の上記の上限までの範囲も様々な実施形態で意図されるもの。
●分枝指数g’:0.97以下、好ましくは0.96以下、たとえば0.95以下、たとえば0.4〜0.97、または0.5〜0.96、または0.6〜0.95の範囲内であって、任意の上記の下限から任意の上記の上限までの範囲も様々な実施形態で意図されるもの。および
●任意的に、いくつかの実施形態では、位相角(δ):15°〜25°、たとえば15°〜24°、好ましくは15°〜22°の範囲内。
【0077】
当業者は理解するように、全体のコポリマー組成物の特性は、特により低いMnおよびより高いMw(および、したがってより高い多分散性、またはMWD)が存在する場合に、コポリマー組成物のバイモーダル性を示すための便利な測定値を提供してもよい。さらに、全体のコポリマー組成物の長鎖分枝特性(たとえば、分枝指数g’および/または位相角δ)は、便利なことに長鎖分枝状の高分子量画分の存在を示してもよく、かつ、特に分枝構造(たとえば、高分子量画分中のくし形分枝の存在)を示してもよい。
【0078】
なおさらなる実施形態では、そのようなエチレンコポリマー組成物は一般に、第1および第2のエチレンコポリマー画分を含んでいると特性付けられてもよく、その場合に第1のエチレンコポリマー画分は第2のエチレンコポリマー画分よりも(i)高いMw、(ii)低いエチレン由来含有量、および(iii)低いg’を有する。
【0079】
このような実施形態の(たとえば、上記の実施形態のいずれかに従うコポリマー組成物を得るための)重合プロセスは、単一の重合反応ゾーン中で上記の第1および第2のメタロセン触媒の存在下でエチレンおよび1種以上のα−オレフィン(好ましくは、プロピレン)を共重合する工程を含んでいてもよい。そのような実施形態は好ましくは、第1および第2のメタロセン触媒を0.5:1〜5:1、好ましくは1:1〜4:1、たとえば1.5:1〜3.5:1の範囲内の触媒比(第1のメタロセン触媒のモル数:第2のメタロセン触媒のモル数)で使用し、任意の上記の下限から任意の上記の上限までの範囲も様々な実施形態で意図される。
【0080】
さらに他の実施形態によるプロセスは直列重合を含んでいてもよい;たとえば、エチレンおよび他のC
3〜C
12α−オレフィン(好ましくは、プロピレン)が、第1の重合反応ゾーン中で第2のメタロセン触媒の存在下で重合されて第1の重合流出物を得てもよく、この第1の重合流出物は次に第2の重合反応ゾーンに送られ(そこに追加のエチレンおよび/または追加のC
3〜C
12α−オレフィンも任意的に供給され)、そして第1のメタロセン触媒の存在下に(第1の重合からの未反応のエチレンおよび/またはC
3〜C
12α−オレフィンモノマーならびに/または第2の重合反応ゾーンに供給された追加のエチレンおよび/または追加のC
3〜C
12α−オレフィンモノマーと)共重合される。
【0081】
様々な重合プロセスの実施形態での好ましい重合リアクター温度は、50℃〜300℃の範囲でもよいが、好ましくは90℃〜200℃の範囲内、たとえば100℃〜180℃、または100℃〜150℃の範囲内である。リアクター圧力は、100〜2000psig(0.7〜13.8MPa−g)、250〜1500psig(1.7〜10.3MPa−g)、たとえば350〜1000psig(2.4〜6.9MPa−g)、または400〜800psig(2.8〜5.5MPa−g)の範囲でもよい。また、連鎖移動剤は任意の1基の重合反応ゾーン(たとえば、連続重合プロセスにおける場合)に2重量%までの(供給原料中の)濃度で供給されてもよいが、好ましくは20〜500wppmの範囲内で供給され、このような重量%は重合反応ゾーンに供給されるモノマー、溶媒および触媒の合計質量に基く。好ましい連鎖移動剤は水素(H
2)であるが、他の連鎖移動剤もまたあるいは代わりに使用されてもよい(たとえば、とりわけ塩化ビニル、フッ化ビニル、臭化ビニル、アルミニウムアルキルおよび/または重水素)。
粘度調整剤としてのエチレンコポリマー組成物の使用
【0082】
上記の様々な実施形態に従うエチレンコポリマー組成物は有利なことに、いくつかの実施形態において粘度調整剤組成物として使用されてもよい。理論によって拘束されることを望むわけではないが、上記の所望の特性の1種以上を示すバイモーダルのエチレンコポリマー組成物(および/またはその中で第1および第2のエチレンコポリマー画分が上記の特性を示すもの)は、粘度調整剤として顕著な利点を提供してもよい。α−オレフィンモノマーをビニル末端ポリオレフィンと共重合することは、くし形分枝状ポリオレフィン(たとえば、様々な実施形態の第1のエチレンコポリマー画分)の開発をもたらしてもよい。くし形からの長鎖分枝は、星形からの長鎖分枝ほど強くポリマー溶液コイルを収縮しない。さらに、バイモーダルのコポリマー組成物の中で低分子量画分(たとえば、様々な実施形態の第2のエチレンコポリマー画分)が実質的に直鎖状であるが高分子量画分よりも高いエチレン含有量を有するそのバイモーダルのコポリマー組成物を得ることは、追加の利点を提供する。コポリマー組成物が粘度調整剤として使用される場合に、そのような低分子量画分は増粘効率を上げてもよい(たとえば、何故ならば、炭化水素溶媒または潤滑油ベースストック中で、エチレンは全てのポリα−オレフィンの中で最も大きく膨潤し最も高い増粘効率を有しているからである)。それと同時に、高分子量画分(たとえば、様々な実施形態の第1のエチレンコポリマー画分)は、星形分枝状ではなくてくし形分枝状であるので、せん断減粘性および燃費経済性をもたらすことができる。
【0083】
さらに、長鎖分枝はポリマー鎖のコイルを収縮させるので、長鎖分枝は(高分子量の分子はそもそもより大きいコイルを有するので)高分子量の分子にのみ存在することが好ましく、このことはまた本明細書に記載されたコポリマー組成物と整合性を有する。直鎖状(低分子量)の画分と分枝状(高分子量)の画分とのこの混合物は、(直鎖状分子と分枝状分子との間のせん断減粘性が開始するせん断速度の差の結果として)せん断減粘性開始せん断速度を下げ、緩やかなせん断減粘性の傾斜をもたらし、かつそれと同時に増粘効率および燃費経済性の両方をもたらす。
【0084】
したがって、上記の実施形態のいずれかに従うコポリマー組成物(たとえば、エチレンコポリマー組成物)は、1種以上のベースオイル(またはベースストック)とブレンドされることができ、その結果、たとえば、得られたブレンド組成物(これはまた、潤滑油組成物と呼ばれてもよい。)は0.1〜10重量%、たとえば0.5〜5重量%、または0.8〜2.0重量%、または1.0〜1.2重量%さえ、たとえば1.10〜1.20重量%、または1.14〜1.16重量%のエチレンコポリマー組成物を含んでおり、任意の上記の下限から任意の上記の上限までの範囲も様々な実施形態では意図されている。ある実施形態では、潤滑油組成物は1.15重量%のエチレンコポリマー組成物を含んでいる。ベースストックは、水素化分解、水素化、他の精製プロセス、未精製プロセスまたは再精製プロセスに由来するかどうかにかかわらず、潤滑粘度の天然油または合成油であるか、またはそれらを含んでいることができる。ベースストックは、使用済み油であるか、またはそれを含んでいることができる。天然油としては、動物油、植物油、鉱油およびこれらの混合物が挙げられる。合成油としては、炭化水素油、ケイ素に基いた油およびリン含有酸の液状エステルが挙げられる。合成油は、フィッシャー−トロプシュガスツーリキッド合成法によって製造されてもよく、また他のガスツーリキッド油でもよい。
【0085】
1つの実施形態では、ベースストックはポリアルファオレフィン(PAO)、たとえばPAO−2、PAO−4、PAO−5、PAO−6、PAO−7またはPAO−8(この数値は100℃での動粘度に関する。)であるか、またはそれらを含んでいる。好ましくは、ポリアルファオレフィンはドデセンおよび/またはデセンから調製される。一般に、潤滑粘度の油として適当なポリアルファオレフィンは、PAO−20またはPAO−30油の潤滑粘度未満の粘度を有する。1つ以上の実施形態では、ベースストックは、米国石油協会(API)ベースオイル互換性ガイドラインに指定されたように定義されることができる。たとえば、ベースストックは、APIグループI、II、III、IV、Vの油またはこれらの混合物であるか、またはこれらを含んでいることができる。
【0086】
1つ以上の実施形態では、ベースストックとしては、クランクケース潤滑油として従来から使用されている油またはその組成物が挙げられることができる。たとえば、適当なベースストックとしては、スパーク点火および圧縮点火内燃機関、たとえば自動車およびトラックのエンジン、船舶および鉄道ディーゼルエンジン等用のクランクケース潤滑油が挙げられることができる。適当なベースストックとしてはまた、動力伝達流体、たとえば自動変速装置流体、トラクター油、汎用トラクター油および油圧作動油、大型油圧作動油、パワーステアリング液等に従来から使用されおよび/またはそれらとしての使用に適合されたような油も挙げられることができる。適当なベースストックはまた、ギヤー潤滑剤、産業油、ポンプ油および他の潤滑油であるか、またはこれらを含むことができる。
【0087】
1つ以上の実施形態では、ベースストックとしては、石油に由来する炭化水素油だけでなく、合成潤滑油、たとえば2塩基酸のエステル;1塩基酸のエステル化によって作られた錯体エステル; ポリグリコール、2塩基酸およびアルコール;ポリオレフィン油等も挙げられることができる。したがって、記載された潤滑油組成物は、合成ベースオイルベースストック、たとえばジカルボン酸、ポリグリコールおよびアルコールのアルキルエステル;ポリアルファオレフィン;ポリブテン;アルキルベンゼン;リン酸の有機エステル;ポリシリコーン油等中に適当に取り込まれることができる。潤滑油組成物はまた、取り扱いの容易さのために濃縮物形態で、たとえば鉱物潤滑油のような油中に1重量%〜49重量%で使用されることができ、また、本発明の反応を上記の油中で実施することによってこの形態に調製されてもよい。
【0088】
任意的に、1種以上の従来の添加物、たとえば流動点抑制剤、耐摩耗剤、酸化防止剤、他の粘度指数向上剤、分散剤、防蝕剤、反起泡剤、洗剤、さび抑制剤、摩擦調整剤等がベースストック中にブレンドされることができる。
【0089】
本発明のペレット化された固形ポリマー組成物は上記されたように、従来技術の複雑な多段階プロセスを必要としないで、VI向上剤としての粘度を直接与えるようにベースオイルと直接ブレンドすることによって添加されることができる。固形ポリマー組成物は、追加のせん断および分解プロセスの必要なしにベースストック中に溶解されることができる。
【0090】
ポリマー組成物を含んでいる組成物、たとえば潤滑油組成物は、特に有利な特性を示すことがあり、とりわけそのような潤滑油組成物が、ベースストックと、その潤滑油組成物に粘度を改変する効果を与えるのに有効である量のポリマー組成物とを(たとえば、上で検討された量のいずれかの範囲に従って)含んでいる場合にそうである。
【0091】
たとえば、そのような組成物は、2.5超、好ましくは2.6、2.7または2.8超、たとえば2.5、2.6、2.7、2.8および2.9のいずれか1つの下限から3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5および4.0のいずれか1つの上限までの範囲内の望ましい増粘効率(TE)を有していてもよい。増粘効率は、油中のポリマーが増粘させる能力の尺度であり、TE=2/c×ln((kv
(ポリマー+油))/kv
油)/ln(2)と定義され、この式で、cは(1g/油100g単位での)ポリマーの濃度であり、kvはASTM D445によって測定された100℃での動粘度である。測定に使用された油は、ASTM D445によって測定された100℃で5.12cStの動粘度を有するグループIベースオイルである。ここでのTEの測定の場合、cは1.15重量%であり、ミニ回転式粘度計が使用されて1.15重量%のポリマーを含んでいる油の粘度(kv
(ポリマー+油))が測定され、TEがそれに応じて計算される。
【0092】
さらにまたは代わりに、コポリマー組成物(たとえば、バイモーダルのエチレンコポリマー組成物)およびベースオイルを含んでいる潤滑油組成物は、その潤滑油組成物がその潤滑油組成物の全重量に基いて1.15重量%のポリマー組成物を含んでいる場合に、1つ以上、好ましくは2つ以上、3つ以上または全てさえの以下の特性を有してもよい:
● 55未満、好ましくは50以下、たとえば20、24、28、30、32、35および40のいずれか1つの下限から30、35、37、40、42、45、47、50、55および60のいずれか1つの上限までの範囲内であり、但しこの範囲の上限は下限よりも大きいことを条件とする、せん断安定性指数(SSI)。SSIは、エンジン内での永久的な機械的せん断劣化に対するポリマーの耐性の指標である。SSIは、ASTM D6278に示された手順に従って、ポリマー−油溶液(ASTM D6278に従って油中1.15重量%のポリマー)を高せん断ディーゼル噴射器(たとえば、Bosch社またはKurt Orbahn社製ディーゼル噴射器。相反する結果の場合にはKurt Orbahnのものが好ましい。)に30サイクル通すことによって測定されることができる。ポリマーのSSIは、ポリマーを含んでいない油の動粘度(kv)ならびにポリマー−油溶液の当初およびせん断を受けた後の動粘度(そのようなkvはそれぞれASTM D445に従って測定されたものである。)から、以下の式によって計算されることができる:SSI=100×(kv
(ポリマー+油)、新鮮 − kv
(ポリマー+油)、せん断後)/(kv
(ポリマー+油)、新鮮 − kv
油、新鮮)。
● 高温高せん断(HTHS)値であって、ASTM D4683によって測定され、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5および3.6のいずれか1つの下限から3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.5および5.0のいずれか1つの上限までの範囲内であり、当該HTHS値がcP単位で測定され(たとえば2.5〜3.7、例として3.0〜3.7cPの範囲内)、さらに但しその範囲の上限は下限よりも大きいことを条件とする、高温高せん断(HTHS)値。HTHS値は燃費経済性に関係し、100℃で同じような動粘度(kv)値を有する潤滑油組成物同士を比較するのに有用である。特に、100℃で同じようなkvを有する2種の潤滑油組成物のうちどちらをとるかと言われれば、より低いHTHS粘度を示す組成物は、たとえば自動車に使用された場合に、より良好な燃費経済性を提供する傾向がある。HTHSは、実施例2および3に関連してより詳細に検討される。
● 12〜20cStの範囲内、好ましくは14、15または16cStの下限から17、18、19または20cStの上限までの範囲内、たとえば14.5〜16.5cStの範囲内の、100℃での動粘度(ASTM D445によって測定されたcSt単位でのkv@100℃)。
● 95〜120cStの範囲内、好ましくは95、100、101、103または105の下限から110、112、113、115、116、117、118、119または120cStの上限までの範囲内の、40℃での動粘度(ASTM D445によって測定されたcSt単位でのkv@40℃)。
● 7、8、9または10cStから11、12または13cStまでの範囲内、たとえば10.15cSt〜11.5cStの範囲内の(ASTM D6278による)、せん断後の100℃での動粘度。
● 少なくとも140、好ましくは少なくとも150、より好ましくは少なくとも151、152、153、154または155の、(ASTM D2270による)粘度指数。
【0093】
あるいは、任意の1つ以上の実施形態では、潤滑油組成物は、ベースオイルと、潤滑油組成物の全重量に基いて1〜1.5重量%、たとえば1.10〜1.20重量%のコポリマー組成物(たとえば、バイモーダルのエチレンコポリマー組成物)とを含んでいてもよい。そのような潤滑油組成物はまた、上記の範囲において任意の1つ以上の上記特性(TE、SSI、HTHS、kv@100℃、kv@40℃、せん断後のkv@100℃および粘度指数)を示してもよい。これらの実施形態のうちのあるものの潤滑油組成物のベースオイルは、APIグループIのベースストック油またはAPIグループIIのベースストック油であってもよくまたはそれらを含んでいてもよい。さらにまたは代わりに、そのような実施形態のベースオイルは、少なくとも75、好ましくは少なくとも80、85、90または95、たとえば75、80、85、90または95の下限から100、105、110または115の上限までの範囲内の(バイモーダルのエチレンコポリマー組成物がない場合には、ASTM D2270によって測定された)粘度指数を有するとして特性付けられてもよい。
他のテスト方法
【0094】
小振幅振動せん断(SAOS);位相角(別名、損失角としても知られている)δまたはデルタ;せん断減粘性比;せん断減粘性指数(STI);緩和時間τ;大振幅振動せん断(LAOS);ムーニー大粘度(ML);ムーニー大緩和面積(MLRA);補正MLRA(cMLRA);分子量(数平均Mn、重量平均Mwおよびz−平均Mz);および組成分布が、以下の記載に従って測定される。
【0095】
小振幅振動せん断(SAOS):動的せん断融解物レオロジーデータがAlpha Technologies社からのATD(商標)1000ゴムプロセス分析計を使用して測定された。重量およそ4.5gのサンプルがATD(商標)1000の並行プレート間に入れられる。試験温度は125℃であり、かけられた歪みは14%であり、周波数は0.1ラジアン/秒から200ラジアン/秒まで変えられた。複素弾性率(G
*)、複素粘度(η
*)および位相角(δ)は各周波数で測定される。
【0096】
実験中の鎖の延伸または架橋を最小限にするために、窒素流がサンプルオーブンの中を循環された。シヌソイドせん断歪みが材料にかけられる。歪み振幅が十分に小さい場合に、材料は直線的に挙動する。当業者は承知しているように、得られる定常状態応力も同じ周波数でシヌソイドに振動するが、歪み波に関して位相角δ(またはデルタ)だけシフトする。応力は歪みにδ(またはデルタ)だけ先行する。位相角δは、G”(せん断損失弾性率)とG’(せん断貯蔵弾性率)との比の逆タンジェントである。典型的な直鎖状ポリマーの場合、ポリマー鎖は融解物中で迅速に緩和し、エネルギーを吸収しG”をG’よりもはるかに大きくするので、位相角は低周波数(または長い時間)で90°に近づく。周波数が増加すると、緩和プロセスは速くなく、ポリマー鎖はせん断振動で付与された全てのエネルギーを吸収することができず、結果として、貯蔵弾性率G’はG”に比較して増加する。最終的には交差点でG’はG”と等しくなり、位相角は45°になる。はるかに高い周波数(または短い時間)では、G’がG”よりも応答を支配し、位相角は0°に近づき、これは高原領域の指標である。直鎖状ポリマーとは対照的に、分枝状ポリマー鎖は非常にゆっくりと緩和し、非常に低い周波数においてさえ付与されるエネルギーを吸収することができず、その結果、位相角は低周波数では90°に近づかない。一般に、特定の周波数での位相角は、分枝状ポリマーの場合、直鎖状ポリマーと比較してはるかに低くなる。同様に、分枝状ポリマーの場合、tan(δ)は直鎖状ポリマーのそれと比較して低くなる。
【0097】
Van Gurp Palmenプロット:位相角(δ)対複素弾性率(G
*)のプロットはVan Gurp Palmenプロットとして知られている(M.Van Gurp、J.Palmen、Rheol.Bull.、第67巻、5〜8頁、1998年)。位相角は、分析される各ポリマーについて10
5PaのG
*で計算される。δ対log(G
*)のプロットが、最小二乗法(R
2>0.95)を使用して3次多項式にフィッティングされ、その多項式が使用されて特定のG
*値(たとえば、10
5Pa)でのδが計算される。位相角は、分枝度が高いほどまたは多分散性(分子量分布、またはMWD)が増加するほど、減少する。
【0098】
せん断減粘性比:せん断減粘性はポリマー融解物のレオロジー応答であり、流れへの抵抗(粘度)がせん断速度の増加とともに減少する。複素せん断粘度は、低いせん断速度(ニュートン領域)では一般に一定であり、せん断速度の増加とともに減少する。低いせん断速度領域では粘度はゼロせん断粘度と称され、これは多分散性および/またはLCBのポリマー融解物については測定するのが多くの場合難しい。より高いせん断速度では、ポリマー鎖はせん断方向に配向させられ、これは、ポリマー鎖が変形していない状態に比べてポリマー鎖の絡み合いの数を減少させる。ポリマー鎖の絡み合いの減少はより低い粘度をもたらす。せん断減粘性は、シヌソイドで加えられたせん断の周波数の増加とともに減少する複素動粘度によって特性付けられる。せん断減粘性比は、0.1ラジアン/秒の周波数での複素せん断粘度と128ラジアン/秒の周波数での複素せん断粘度との比として定義される。
【0099】
せん断減粘性指数:せん断減粘性を定量化する別の方法は、以下のように定義されたせん断減粘性指数(STI)と呼ばれるパラメーターを使用することである:
【数1】
この式で、η
0.1ラジアン/秒およびη
128ラジアン/秒は、それぞれ0.1ラジアン/秒および128ラジアン/秒の周波数での複素せん断粘度である。せん断減粘性指数は典型的には、分枝のレベルとともに増加する;したがって、高度に分枝状のポリマー(および/または高度に分枝状のポリマーのように挙動するポリマー組成物)の場合、パラメーターSTIは、η
0.1ラジアン/秒がη
128ラジアン/秒よりもはるかに大きいので、1に近づくと考えられる。逆に、ニュートン流体の場合には、粘度がせん断速度に依存しないのでSTIは0に近づく。
【0100】
緩和時間:緩和時間τは、多分散性/MWDおよび/またはポリマー組成物中の長鎖分枝の存在(または、長鎖分枝状ポリマーを模倣する様式でのポリマー組成物の挙動)を示すのに役立つことができる。緩和時間τは、ある範囲の周波数にわたって収集された粘度データをモデル化するために使用されるCrossの粘性式から決定されてもよい。ある範囲の周波数にわたって収集された粘度データはCrossの粘性式(J.M.DealyおよびK.F.Wissbrun、「プラスチック加工理論および応用における融解物レオロジーおよびその役割」、Van Nostrand Reinhold社、米国、ニューヨーク州、162頁(1990年))の一般式を使用して(たとえば、最小二乗法によって)フィッティングされることができる:
【数2】
この式で、ηは動粘度であり、η
0は極限ゼロせん断粘度であり、η
∞は無限せん断粘度であり、τは所与の周波数ηにおける緩和時間であり、nはせん断減粘性の程度を表す、べき乗則指数であり、ニュートン流体の場合、n=1であり、動的複素粘度は周波数に依存しない。本明細書で関心の対象であるポリマーについては、n<1であり、それ故に、高められたせん断減粘性挙動はnの減少(1−nの増加)によって示され、またγ(ドット)は入力されたせん断周波数である。用語η
∞は曲線フィッティングから0であり、その結果、式は3個のパラメーターに整理される:
【数3】
試験が(SAOS測定法について上記されたように)一定の応力および一定の温度で行われる場合、この式は緩和時間を与える。上記のように、Crossの粘性式における緩和時間τは、多分散性および/またはポリマー中の長鎖分枝に関連させることができる。分枝のレベルが増加した場合(および/または分枝のレベルの増加を模倣するポリマー組成物の場合)には、τは同じ分子量の直鎖状ポリマーと比較してより高くなることが期待される。
【0101】
大振幅振動せん断(LAOS):ポリマー組成物のレオロジー特性は、以下の記載による方法を使用して、ゴムプロセス分析計(RPA)を使用して検討される。大振幅振動するせん断(LAOS)は、ポリマーの有用な非直鎖状の特性を提供することができる。LAOSは、SAOSと比較されたせん断複素弾性率(G
*)および歪みの両方が角周波数の関数である振動歪みドメインとして記載されることができる。LAOSの試験は、Alpha Technologies社によって市販されるATD(商標)1000ゴムプロセス分析計を使用して行われる。ATD(商標)1000は、無充填のエラストマーおよびコンパウンドを試験するために設計された動的機械的レオロジー試験装置である。特に指定のない限り、大振幅振動せん断を使用するレオロジー試験は、125℃の温度、1000%の歪み振幅および0.63ラジアン/秒の周波数で実施された。入力歪みは関数:γ=γ
0sin(ωt)によって表され、この式でγ
0は歪み振幅である。この式から分かるように、この関数は時間依存性である。ポリマーサンプルのストレス応答は、以下のフーリエ級数を使用して測定され、このフーリエ級数は、下に示されるように時間、角周波数および歪み振幅の関数である:
【数4】
この式で、G’およびG”は複素弾性率(G
*)の実数および虚数成分に相当する。別の言い方をすると、G’はせん断貯蔵弾性率(Pa)に相当し、G”はせん断損失弾性率(Pa)に相当する。このフーリエ級数(G
1’、G
3’、G
5’等)の奇数次高調波はRPAによって計算される。
【0102】
長鎖分枝(LCB)指数は、Florian J. Stadlera、Adrien Leyguea、Henri Burhin、Christian Baillya、Polymer Reprints、2008年、第49巻(第1号)、121〜122頁 (H.g.Burhin、N.Rossion、C.Bailly、A.Leygue、R.Kuenings、「FTレオロジーおよび大振幅振動せん断(LAOS)、ポリマー構造を研究するための興味深い手段」、国際ゴム会議IRC2006、仏国、リヨン(2006年); A. Leygue、N.Roisson、C.Bailly、R. Keunings、「構成モデルによる直鎖状絡み合いポリマーの反転流れの研究」、AERC、ギリシャ、ヘルソニソス、クレタ島 (2006年);および Burhinら、第15回レオロジーに関する国際会議、米国、カルフォルニア州、モントレー(2008年8月)も見よ。) に記載された方法によって計算される。特に、以下の式が使用される:
【数5】
【数6】
これらの式で、G
1’、G
3’およびG
5’は、複素弾性率(G
*)の実数成分G’ に関連する第1、第3および第5調波である。より高いLCB指数は、典型的にはポリマー分枝の増加を示す。
【0103】
ムーニー粘度(MLおよびMST):本明細書で使用される「ムーニー粘度」とは、ポリマーまたはポリマー組成物のムーニー粘度である。ムーニー粘度を測定するために分析されるポリマー組成物は、実質的に溶媒を含まないものでなければならない。たとえば、サンプルは、実験室分析技術に従って、フード中の沸騰水スチームテーブル上に置かれて溶媒および未反応モノマーの大部分が蒸発され、次に試験前に真空オーブン中で一晩(12時間、90℃)乾燥させられてもよい。または、試験用のサンプルは揮発性成分を除去されたポリマー(すなわち、工業規模プロセスでの脱揮発性成分後のポリマー)から得られてもよい。特に指定のない限り、ムーニー粘度はASTM D−1646によってムーニー粘度計を使用して測定されるが、その手順に以下の修正/明確化が加えられる。最初に、サンプルポリマーは試験前に圧縮プレス機の2個のホットプレート間でプレスされる。プレート温度はASTM D−1646で推奨される50℃+/−5℃の代わりに150℃+/−10℃である。というのは、50℃では十分な一体化をさせるのに不十分であるからである。さらに、ASTM D−1646はダイ保護材によって、任意の2個の選択肢が相反する結果を生じる場合にはいくつかの選択肢を許容しているが、36ミクロンのPETがダイ保護材として使用されるべきである。さらに、ASTM D−1646は第8節でサンプル重量を示していないので、サンプル重量に基いて結果が変動する可能性がある限りにおいてASTM D−1646第8節の手順で21.5+/−2.7gのサンプル重量を使用して測定されたムーニー粘度が採用されることになる。最後に、D−1646第8節に規定された試験前の安定化手順は空気中23℃+/−3℃で30分間であるが、ここで報告されるMLは空気中24℃+/−3℃で30分間の安定化後に測定された。その結果はムーニー単位(ML、1+4@125℃)として報告され、ここでMはムーニー粘度数であり、Lは(ASTM D1646−99でMLとして定義された)大ローターを表示し、1は分単位での予熱時間であり、4はモーターが始動した後の分単位でのサンプル試験時間であり、125℃は試験温度である。したがって、上記の方法によって測定された90のムーニー粘度は、90(ML、1+4@125℃)のムーニー粘度として報告される。あるいは、ムーニー粘度は90MUとして報告されてもよい。そのような場合には、そのような粘度を決定するために、特に指定のない限り上記の方法が使用されているとみなされなければならない。いくつかの場合には、より低い試験温度が使用されてもよい(たとえば、100℃)。その場合にはムーニーは、ムーニー粘度(ML、1+4@100℃)または@T℃として報告され、Tは試験温度である。
【0104】
ムーニー粘度計のトルク限界は約100ムーニー単位(MU)である。約100ムーニー単位より大きいムーニーの値は、一般にこれらの条件の下では測定されることができない。この場合には、非標準の設計ローターがムーニー尺度の変更とともに使用されて、これはより粘性の高いポリマーに使用されることになるムーニー粘度計で同じ計装の使用を可能にする。このローターは、標準MLローターよりも直径が小さくかつ薄い、したがってそれはMST(ムーニー小さい(Small)−薄い(Thin))と名付けられる。MST方法は、米国特許第9,006,332号の第5欄、15〜52行に記載されたように100ムーニー単位超の粘度を有するポリマーの粘度を測定するために使用されてもよく、この記載は参照によって本明細書に組み込まれる。特に、MSTは(MST、5+4@200℃)として測定され報告されてもよく、これは5分間の予熱および200℃で4分間のトルクの記録がMSTローターとともに使用されることを意味する。さらに、ムーニー粘度がMU、MSTとして本明細書で報告される場合には、特に指定のない限りMST粘度を測定するための上記の方法が使用されるとみなされなければならない。
【0105】
MSTローターは以下のように調製されなければならない:
1.ローターは、30.48±0.03mmの直径、2.8±0.03mmの厚さ(鋸歯状の切り込みの頂上)および11mm以下のシャフト直径を有しなければならない。
2.ローターは、鋸歯状の面および端であって、1.6mmの中心上でカットされた0.8mmの幅および0.25〜0.38mmの深さの角溝を備えるものを有しなければならない。鋸歯状の切り込みは互いに直角の2組の溝から成る(正方形の断面線を形成する)。
3.ローターディスクの中心線がダイキャビティの中心線と許容誤差±0.25mm以内で一致するように、ローターはダイキャビティの中心に配置されるものとする。スペーサーまたはシムが、シャフトを中間点に上げるために使用されてもよい。
4.摩耗点(ローターの上面の中心にある円錐形の突起)は、ローターの面とフラットに切り出されるものとする。
【0106】
GPC−3Dによる分子量および組成分布:分子量(数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)およびz平均分子量(Mz))は、オンラインの示差屈折率(DRI)、光散乱(LS)および粘度計(VIS)検出器を装備したPolymer Laboratories社製モデル220高温GPC−SEC(ゲル浸透/サイズ排除クロマトグラフ)を使用して測定される。これは、0.54ml/分の流量および300マイクロリットルの名目注入体積量を使用して、3本のPolymer Laboratories社製PLゲル10μmの混合B LSカラムを分離のために使用する。検出器およびカラムは135℃に維持されたオーブンに収容されていた。SECのカラムから出てくる流れは、miniDAWN光学フローセルそして次にDRI検出器に送られた。DRI検出器は、Polymer Laboratories社製SECの一体部分であった。粘度計は、DRI検出器の後に配置され、SECオーブンの内部にあった。これらの検出器の詳細とともにこれらの較正法は、たとえば、T.Sunらによって、Macromolecules、第34巻、第19号、6812〜6820頁、(2001年)に記載されており、これは参照によって本明細書に組み込まれる。このGPC SEC−DRI−LS−VIS法はまた、「GPC−3D」の省略表現によって言及されてもよい。
【0107】
SECの実験のための溶媒は、4リットルのAldrich社製試薬等級1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)中に酸化防止剤として6グラムのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を溶解することによって調製された。TCB混合物は、その後0.7マイクロメートルのガラスプレフィルター、引き続いて0.1マイクロメートルのテフロン(登録商標)フィルターを通してろ過された。TCBは次にオンライン脱ガス装置で脱ガスされ、その後SECに入れられた。ポリマー溶液は、乾燥ポリマーをガラス製容器に入れ、BHTで安定化された所望量のTCBを加え、次にこの混合物を約2時間連続的に揺動しながら160℃で加熱することによって調製された。全ての量は重量法によって測定された。ポリマー濃度を質量/体積単位で表すために使用されたTCBの密度は、22℃で1.463g/mLおよび135℃で1.324g/mLである。注入濃度は1.0〜2.0mg/mLであり、より低い濃度はより高い分子量のサンプルに使用された。サンプルを試験する前にDRI検出器および注入器はパージされた。装置内の流量が次に0.5ml/分に増加され、DRIは8〜9時間放置安定化され、その後第1のサンプルが注入された。クロマトグラムの各点での濃度(c)はベースラインを差し引かれたDRIシグナル(I
DRI)から以下の式を使用して計算される:
【数7】
この式で、K
DRIは、600〜10Mの範囲の分子量を有する一連の単分散ポリスチレン標準物を用いてDRIを較正することによって決定された定数であり、(dn/dc)はその系の屈折率増分である。屈折率(n)は、145℃でのTCBおよびλ=690nmの場合にn=1.500である。本発明および添付された特許請求の範囲の目的のためには、エチレン−プロピレンコポリマーについて(dn/dc)= 0.1048である。(dn/dc)の値は、他のポリマーおよびコポリマーについては別に0.1とされる。SEC方法についてのこの記載の全体にわたって使用されるパラメーターの単位は次の通りである:濃度はg/cm
3単位で表され、分子量はg/モル単位で表され、固有粘度はdL/g単位で表される。
【0108】
光散乱(LS)検出器は、高温miniDAWN(Wyatt Technology社)であった。主要部材は光学フローセル、30mW、690nmのレーザーダイオード光源であり、3個の一連のフォトダイオードが45°、90°および135°の収集角度に置かれた。クロマトグラムの各点での分子量(M)は、静的な光散乱についての以下のZimmモデル(M.B.Huglin著、「ポリマー溶液からの光散乱」、Academic Press社、1971年刊)を使用して、LS出力を分析することによって決定された:
【数8】
この式で、ΔR(θ)は散乱角θで測定された超過レーリー散乱強度であり、cはDRI分析から測定されたポリマー濃度であり、A
2は第二ビリアル係数である(本発明の目的のためには、エチレンホモポリマーについてA
2=0.0015、およびエチレン−プロピレンコポリマーについてA
2=0.0015−0.00001EEであり、EEはそのエチレン−プロピレンコポリマー中の重量パーセントでのエチレン含有量である。)。P(θ)は単分散ランダムコイルについての形状因子であり、K
oはその系の光学定数である:
【数9】
この式で、N
Aはアボガドロ数であり、(dn/dc)はその系の屈折率増分である。屈折率(n)は、145℃のTCBおよびλ=690nmの場合にn=1.500である。本出願の目的のためには、DRIおよびLSの測定値が矛盾する場合には、MwおよびMzについてはLS測定値が使用されなければならず、MnについてはDRI測定値が使用されなければならない。MWD(多分散性)はMw/Mnとされるが、DRIおよびLSの測定値が矛盾する場合には、MWDはMw(LSによって測定されたもの)/Mn(DRIによって測定されたもの)、すなわちMw
LS/Mn
DRIとして決定されなければならない。
【0109】
分枝指数(g’またはg’
vis):Viscotek社からの高温粘度計が使用されて比粘度が測定された。この粘度計は2台の圧力変換器を備えたホイートストンブリッジ状に配置された4本のキャピラリーを有する。1台の変換器は検出器を通しての全圧力低下を測定し、ブリッジの2つの側の間に配置された他方の変換器は差圧を測定する。粘度計を通って流れる溶液の比粘度(η
s)は、それらの出力から計算される。クロマトグラム内の各点での固有粘度[η]は次の式から計算された:
【数10】
この式で、cは濃度であり、DRIの出力から測定された。
【0110】
分枝指数(g’
vis)は、分枝状ポリマーの固有粘度と、等しい分子量および同じ組成の直鎖状ポリマーの固有粘度との比として定義され、SEC−DRI−LS−VIS法の出力を使用して以下のように計算された。サンプルの平均固有粘度[η]
avgは以下の式によって計算された:
【数11】
この式で、総和は積分限界間のクロマトグラフのスライスiの全体にわたる。
【0111】
分枝指数g’
visは以下のように定義される:
【数12】
等しい分子量および同じ組成の直鎖状ポリマーの固有粘度は、Mark−Houwinkの式を使用して計算され、その式でkおよびαは標準較正手順を使用して直鎖状エチレンプロピレンコポリマーの組成に基いて決定される。本明細書に記載された実施形態およびそれらについての特許請求の範囲の目的のためには、エチレンポリマーについてk=0.000579およびα=0.695、プロピレンポリマーについてk=0.0002288およびα=0.705である。EPの場合、kおよびαの値はエチレン/プロピレンの組成に基いて標準較正手順を使用して以下のように決定される:k=(1−0.0048601EP−6.8989×10
−6EP
2)×5.79×10
−4(200000)
−Trunc(0.1EP)/1000およびα=0.695+Trunc(0.1EP)/1000。この式で、EPはそのEP中のプロピレンの重量パーセントであり、Truncは整数部分だけが計算に用いられることを示す。たとえば、Trunc(5.3)=5である。Mvは、LS分析によって測定された分子量に基く粘度平均分子量である。同じような分子量およびコモノマー含有量を有する直鎖状標準物の選択ならびに係数kおよびべき乗則指数αを決定することについては、Macromolecules、2001年、第34巻、6812〜6820頁および2005年、第38巻、7181〜7183頁を見よ。本明細書で使用される省略表現g’は、特に指定のない限り用語g’
visと等価であると考えられなければならない。
【0112】
GPC−IR(GPC−4D)による分子量分布および組成分布:指定された場合には、GPC−IR(時にはGPC−4Dとも呼ばれる。)が代りに、分子量の分布およびモーメント(たとえば、Mn、Mw、Mz等)ならびに/またはコモノマー分布(C2、C3、C6等)を測定するために使用されてもよい。GPC−IR手順によれば、分子量の分布およびモーメントならびに/またはコモノマー分布は、多チャンネル帯域フィルターに基いた赤外線(IR)検知器統合体IR5を備えた高温ゲル透過クロマトグラフィー(PolymerChar社製GPC−IR)で測定され、そこでは広帯域チャンネルがポリマー濃度を測定するために使用され、他方、2本の狭帯域チャンネルが組成を特性解析するために使用される。3本のAgilent社製PLゲル10μmの混合B LSカラムが使用されて、ポリマーの分離がされる。Aldrich社製試薬等級1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)が300ppmの酸化防止剤ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含んで移動相として使用される。TCB混合物は、0.1マイクロメートルのテフロン(登録商標)フィルターを通してろ過され、オンライン脱ガス装置で脱ガスされ、その後GPC計器に入れられた。名目流量は1.0mL/分であり、名目注入体積量は200マイクロリットルである。移送ライン、カラム、検知器を含む装置全体は、145℃に維持されたオーブンに収容される。所定量のポリマーサンプルが秤量され、10マイクロリットルのフローマーカー(ヘプタン)を加えられた標準バイアルの中に密閉される。バイアルをオートサンプラー中に装填した後、ポリマーは計器中に8mLのTCB溶媒を加えられて自動的に溶解される。ポリマーは160℃で連続的に揺動されながら、ほとんどのPEサンプルの場合に約1時間またはPPサンプルの場合に2時間溶解される。濃度の計算に使用されたTCB密度は22℃で1.463g/mlおよび145℃で1.284g/mlである。サンプル溶液の濃度は0.2〜2.0mg/mlであり、より低い濃度がより高い分子量のサンプルに使用される。
【0113】
クロマトグラム中の各点における濃度(c)は、ベースラインを引かれたIR5の広帯域シグナル(I)から以下の式を使用して計算される:
【数13】
この式で、αはPE標準物のNBS1475を用いて決定された質量定数である。質量回収率は、溶出体積量に対する濃度クロマトグラフィーの統合された面積と、所定の濃度に注入ループ体積量を掛けたものに等しい注入質量との比から計算される。
【0114】
分子量は、万能較正関係式を一連の単分散ポリスチレン(PS)標準物で実施されるカラム較正と組み合わせることによって決定される。分子量は各溶出体積において以下の式を用いて計算される:
【数14】
この式で、KおよびαはMark−Houwinkの式の係数である。添字「X」の付いた変数は試験サンプルを表し、添字「PS」の付いたものはポリスチレンを表す。この方法で、α
PS=0.67およびK
PS=0.000175であり、他方、α
XおよびK
Xは標準較正手順を使用して直鎖状エチレン/プロピレンコポリマーの組成に基いて決定される。T. Sun、P. Brant、R. R. ChanceおよびW. W. Graessley、「希薄溶液中のポリオレフィンのコイル寸法に対する短鎖分枝の影響」、Macromolecules、第34巻、第19号、6812〜6820頁(2001年)を見よ。コモノマー組成は、その名目値がNMRによって予め決められた一連のPEおよびPP標準物を用いて較正されたCH
2およびCH
3チャンネルに対応するIR検知器の強度の比によって決定される。本出願の目的のためには、GPC−3D手順に関して上記されたエチレン、プロピレンおよびエチレン−プロピレンポリマーについての同じkおよびαの値が、この式でも使用されなければならない。
【0115】
GPC−SEC(GPC−3D)あるいはGPC−IR(GPC−4D)のいずれかが、本明細書の文脈で指定されたように分子量、分子量分布および/または組成分布を決定するために使用されてもよい。いずれの方法も指定されていない場合または2つの方法の結果が矛盾する場合には、上で詳述されたGPC−SEC(GPC−3D)方法を使用することが好ましい。
【0116】
13C NMR測定: エチレン-プロピレンコポリマーについての化学シフトのアサインメントは、「エチレンに基いたポリマーの高解像度液体
13炭素核磁気共鳴による特性解析の総論」、Polymer Reviews、第29巻、第2号、201〜317頁(1989年)でRandallによって記載されている。コポリマー含有量(モル%および重量%)もこの論文でRandallによって確立された方法に基いて計算される。r
1r
2の計算は式r
1r
2=4×[EE]×[PP]/[EP]
2に基いており、この式で[EE]、[EP]、[PP]はダイアドのモル濃度であり、Eはエチレンであり、Pはプロピレンである。
【0117】
メチレン連鎖分布および数平均連鎖長の値は、James C.Randall、「エチレン−プロピレンコポリマー中のメチレン連鎖分布および平均連鎖長」、
Macromolecules、1978年、第11号、33〜36頁によって確立された方法に基いて測定された。
【0118】
エチレン含有量:エチレン含有量はASTM D3900によりFTIRを使用して測定される。
[実施例]
【実施例1】
【0119】
エチレンおよびプロピレンの重合は、28リットルの連続撹拌槽型リアクター(オートクレーブリアクター)中で溶液プロセスを使用して実施された。オートクレーブリアクターは、撹拌機、温度調節器付き水冷/スチーム加熱要素および圧力調節器を備えていた。イソヘキサンが溶媒として使用された。それはPulsaポンプを使用してリアクター中に供給され、その流量はポンプで流出量を(較正曲線を使用して)調節することによって調節された。圧縮され液化されたプロピレン供給原料は、質量流量調節器によって調節された。エチレンはリアクターの前でプロピレンと混合され、多岐管に供給された。イソヘキサン中トリn−オクチルアルミニウム(TNOAL)の3重量%混合物も(捕捉剤として使用される)別個のラインを通して多岐管に加えられ、またモノマーおよび溶媒の一緒にされた混合物が単一管を使用してリアクター中に供給された。
【0120】
触媒溶液は、触媒A((1,1'−ビス(4−トリエチルシリルフェニル)メチレン−(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−第3級ブチルフルオレン−9−イル)ハフニウムジメチル)(様々な実施形態の第1のメタロセン触媒に相当するもの)および下の表1で示されている場合には触媒B(rac−シクロテトラメチレンシリレン−ビス(2,4,7−トリメチルインデン−1−イル)ハフニウムジメチル)(様々な実施形態の第2のメタロセン触媒に相当するもの)を含んでいた。触媒Aおよび触媒Bの溶液のそれぞれは、窒素で満たされたグローブボックス内で4リットルのエルレンマイヤーフラスコの中で別々に調製された。各フラスコには1リットルの脱気された無水トルエンが仕込まれた。触媒Aについては、次にフラスコに1.7gの活性剤A1(それはN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートであった。)とともに2g(2.1ミリモル)の触媒Aおよび最後に追加の3リットルのトルエンが仕込まれた。触媒Bについては、フラスコには、0.50g(0.83ミリモル)の触媒B、次に0.95gの活性剤A2(0.83ミリモル)(それはN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ヘプタフルオロ−2−ナフチル)ボレートであった。)および最後に追加の3リットルのトルエンが仕込まれた。各触媒溶液について、固形分が溶解した後にその溶液は撹拌されながらISCOポンプに仕込まれ、リアクター中に計量投入された。
【0121】
2種の触媒の供給量は、表1に示されるようにモノマー供給量および反応温度とともに調節されて、55〜60重量%の目標C2(エチレン)含有量を有するコポリマーE1およびE2が製造され、また参照例のコポリマーR1(触媒Bを使用しないで作られたもの)が製造された。各リアクター製品流れは、微量のメタノールで処理されて重合が停止された。リアクター混合物は次に低圧フラッシュ分離によって溶媒から分離され、酸化防止剤で処理され、次に揮発性成分除去押出機プロセスに付された。その後、乾燥されたポリマーはペレット化された。
【0122】
重合反応条件および使用された触媒が、下の表1に記載される。
【表1】
【0123】
これらのポリマー製品の特性は以下の分析法によって解析された:分子量および組成の分布についてGPC−IR(またはGPC−4D)によって;分子量および長鎖分枝の分布についてGPC−3Dによって;組成および連鎖分布についてC13 NMRによって;それらの(長鎖分枝分布の存在を決定するために使用された)レオロジー特性についてレオロジー粘度曲線(SAOS(小角度振動せん断)および引き続いてTTS(時間−温度の重ね合わせ)によって測定された。)によって。それらの特性解析の結果が表2に示され、またそれらの分子量、組成および長鎖分枝の分布曲線が、
図1、
図2および
図3に示される。
【表2】
【0124】
触媒Bが加えられないと、R1の組成は分子量全体にわたって均一でありモノモーダルの分子量分布を有している。R1はわずかに分枝状である。触媒Aが添加されると、
図2および
図3に示されたように、触媒AとBとの間のエチレンに対する反応性の差異の結果として不均一な組成分布が出現する。E2において触媒Aと触媒Bとの比を下げたことによって、長鎖分枝が高分子量成分中にのみ存在するバイモーダルの分子量および組成の分布が形成される。E2中の高分子量成分のピークは156,000g/モルである一方、その低分子量成分のピークは約20,000g/モルである。E2中の高分子量成分のC2含有量は57重量%であり、E2中の低分子量成分のC2含有量は65重量%である。
【実施例2】
【0125】
潤滑油溶液のブレンド実験が、ベースストックとしてポリアルファオレフィンPAO4(4センチポアズの粘度、25℃)を使用して実施された。R1、E1、E2およびParatone(商標)8900G(直鎖状であり狭い分子量分布を有するOCP粘度調整剤)が、0.015重量%のIrganox 1076および0.005重量%のIrgafos 168の酸化防止剤(AO)の添加とともに、0.5重量%でPAO4中にブレンドされた。酸化防止剤は、ポリマーのレオロジー評価の間のその劣化を防ぐのに有用である。このようにして調製されたこれらの潤滑油溶液の密度値が表3に示される。
【表3】
【0126】
様々な温度で操作される超高せん断粘度計(10
6〜10
7秒
−1のせん断速度範囲)およびm−VROCミクロキャピラリー粘度計(10
3〜10
5秒
−1のせん断速度範囲)を使用して、せん断速度および温度の関数としての粘度値が得られることができる。次に時間−温度対応の原理に基いて、時間−温度の重ね合わせ(TTS)が適用されて、移動係数を使用して100℃の参照温度で全ての測定されたデータが1本の単一の粘度マスタ−カーブ(Paratone(商標)8900GおよびE2についてそれぞれ
図4および
図5に示されたように)に統合された。このようにして得られた粘度曲線は、下の式(1)に示されたように5個のパラメーターの非ニュートンCarreau-Yasudaモデルにフィッティングされることができる。
【数15】
【0127】
これは、ゼロせん断漸近粘度(η
0)および高せん断漸近粘度(η
∞)、せん断速度を有し、降伏応力を有しない擬塑性流動モデルである。パラメーター1/λは粘度が減少し始めるまたはせん断減粘性が始まる臨界せん断速度であり、べき乗則の傾きは(n−1)であってこれはせん断減粘性の傾きである。パラメーター「a」は、ゼロせん断粘度とべき乗則領域との間の遷移領域の幅、またはニュートン領域からせん断減粘性までの遷移の幅を表す。この場合の高せん断漸近粘度はベースストックPAOの粘度に設定される。
【0128】
PAO溶液中のParatone 8900GおよびR1の粘度曲線が
図6に示される。そこに示されたように、好ましいバイモーダル性を有さずほんの少量の長鎖分枝を有するだけなので、PAO中のR1の粘度曲線は、PAO中の直鎖状かつモノモーダルMWDの市販Paratone 8900G製品の粘度曲線に類似している。いったん、組成の不均一性およびバイモーダル性が導入されれば、
図6に示されたように、増粘効率(または増粘)が改善される。さらに、せん断減粘性の開始が早くなり、また、せん断減粘性の傾きが小さくなる(より広い遷移領域を有する)。E2を含んでいるPAO溶液は、それが低いせん断速度では最も高い粘度を有するにもかかわらず、高いせん断速度、>10
6秒
−1では、最も低い粘度を有する(良好な増粘効率)。
【0129】
乗用車および商用車用の潤滑油に適用される場合、エンジン油の粘性の損失の問題が存在し、これはエンジンの定常状態の走行における燃費経済性に影響を及ぼす。この粘性の寄与度は、その車両の役務に応じて100〜150℃の範囲の温度で測定される4×10
5〜10
6秒
−1のせん断速度での粘度値によって決定されるべきことが一般に認められている。10
6秒
−1のせん断速度および150℃で測定された各粘度グレードについて、指定されたHTHS(高温度高せん断速度)の最小粘度がある。HTHSの粘度の測定のために定義されたせん断速度および温度は、定常状態で作動しているクランクシャフトベアリング内の流動環境を反映している。より低い粘度およびより高い粘度指数のベースストックが、得られる潤滑油の粘度指数の全体としての改善のために使用されることができるように、粘度調整剤が潤滑油ベースストックの粘度を上げるために潤滑油に加えられる。粘度調整剤含有潤滑油では次に、潤滑油溶液がより低い高せん断速度粘度および良好な燃費経済性を有するように、せん断減粘性が必要になる。ポリマー粘度調整剤が、せん断速度の増加に伴う粘性の損失が極端でなくかつ摩耗につながる可能性があるHTHS最小粘度より下であるように、10
5秒
−1未満のせん断速度でのより早いせん断減粘性の開始および穏やかなせん断減粘性の傾きをもたらすことが好ましい。したがって、E2を含んでいるPAO潤滑油溶液は、優れた粘度測定上の性能および燃費経済性を有すると期待されることができる。
【実施例3】
【0130】
E2(上記の実施例1および2に従うもの)およびE3(E1およびE2に関して記載されたのと同じ手順に従って作られたもう一つのバイモーダルのエチレン−プロピレンコポリマー組成物)のサンプルが、この実施例で使用された。下の表4はE2の特性のうちのいくつかを再掲し、またE3の対応する特性も提供する。
【表4】
【0131】
E2およびE3は、表5の特性を有するアメリカの地域グレードCORE(商標)150ベースストック油(ExxonMobil社から市販のAPIグループIベースストック油)とブレンドされ、そのブレンドは1.15重量%のそれぞれのポリマーを含んでいるものである。
【表5】
【0132】
さらに、比較例のブレンドが、同じベースストック油中に1.15重量%のParatone(商標)8941(P8941)およびParatone(商標)P8910(P8910)を加えて作られた。これらの市販の粘度調整剤が比較物として選ばれる。というのは、P8910およびE2が同じポリマー濃度で約15.3cStという同じような100℃での動粘度(kv@100℃)を有するからである。既に上記のように、同じようなkv@100℃を有する2種の組成物間で比較される場合には、HTHSによる比較が燃費経済性についての特に適切な指標である。P8941は158.2kg/モルと測定されたMw
LS、1.5のPDI(Mw
LS/Mn
DRI)および58.3のエチレン重量%を有し、P8910は、115.4kg/モルと測定されたMw
LS、1.6のPDIおよび59.3のエチレン重量%を有する。
【0133】
サンプルは(ASTM D445によって)100℃および40℃での動粘度について試験され、またASTM D6278のせん断安定性試験に従ってせん断後の100℃での動粘度について試験された。ASTM D6278のせん断安定性試験は、Kurt Orbahn 30サイクル試験に従ってkv@100℃を試験することを含み、これはまたSSIを計算するのにも使用される。サンプルはまた、ASTM D2270に従ってそれらの粘度指数を測定するためにさらに試験された。
【0134】
増粘効率(TE)は、既に上記のように1.15重量%の油中ポリマー溶液を使用して測定された。
【0135】
下の表6は、E2、E3、P8941およびP8910から作られた潤滑油組成物書のそれぞれについて以下の測定された特性を報告する:kv@100℃;(ASTM D6278による)せん断後のkv@100℃;kv@40℃;粘度指数;TE;SSI; およびHTHS。
【表6】
【0136】
表6に示されたように、実施例のサンプルE2およびE3は、市販サンプルと同じようなkv@100℃を有しているけれども、有利なことに、より低いHTHS値を示し、これは粘度調整剤として使用された場合の燃料効率の増加を示している。得られたVI値もまた、E2およびE3を使用して作られた組成物の場合に、より高かった(有利な、より低いkv@40℃と整合している)。それと同時に、本発明のサンプルのTEは、市販の粘度調整剤を使用して作られた組成物と比較して、有利なことに許容範囲内にある。
【0137】
本明細書に記載された全ての文書は、どのような優先権書類もおよび/または試験手順書を含めて、それらの文書が本明細書の記載と矛盾しないことを限度として、参照によって本明細書に組み込まれる。これまでの一般的な記載および特定の実施形態から明らかなように、本発明の形態が例示され記載されてきたが、様々な修正が本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく成されることができる。したがって、本発明がそれによって制限されることは意図されていない。同様に、用語「含んでいる(comprising)」は、用語「含んでいる(including)」と同義であると見なされ、任意の他の追加の成分の存在を排除することなく、示された成分を求めている。同様に、組成物、要素または一群の要素の前に移行句「含んでいる(comprising)」が置かれた場合には常に、本発明者らはまた、同じ組成物または一群の要素がさらにより限定的な移行句、たとえばその組成物、要素または複数の要素の記載の前に置かれた「から本質的に成る(consisting essentially of)」、「から成る(consisting of)」、「から成る群から選ばれた(selected from the group consisting of)」または「である(is)」によって狭義にされることおよびその逆の場合も同じであることも意図していることが理解されるべきである。