特許第6850869号(P6850869)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6850869マルチユーザ重畳符号化を用いた送信概念
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850869
(24)【登録日】2021年3月10日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】マルチユーザ重畳符号化を用いた送信概念
(51)【国際特許分類】
   H04J 99/00 20090101AFI20210322BHJP
   H04L 27/26 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   H04J99/00 100
   H04L27/26 113
   H04L27/26 310
【請求項の数】26
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2019-507251(P2019-507251)
(86)(22)【出願日】2017年8月11日
(65)【公表番号】特表2019-531005(P2019-531005A)
(43)【公表日】2019年10月24日
(86)【国際出願番号】EP2017070438
(87)【国際公開番号】WO2018029344
(87)【国際公開日】20180215
【審査請求日】2019年4月11日
(31)【優先権主張番号】16183897.4
(32)【優先日】2016年8月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500341779
【氏名又は名称】フラウンホーファー−ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デル・アンゲヴァンテン・フォルシュング・アインゲトラーゲネル・フェライン
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・フェーレンバッヘ
(72)【発明者】
【氏名】バリシュ・ゲクテペ
(72)【発明者】
【氏名】コルネリウス・ヘルゲ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・ドゥメル
(72)【発明者】
【氏名】ラーシュ・シーレ
【審査官】 吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0010839(US,A1)
【文献】 特表2009−525665(JP,A)
【文献】 特開2003−304215(JP,A)
【文献】 特開2014−204200(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0100414(US,A1)
【文献】 特表2010−513937(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0287801(US,A1)
【文献】 Sharp,Scalable numerology for New RAT, 3GPP TSG-RAN WG1#84b R1-163295,2016年 4月 2日,pp.1-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 99/00
H04L 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチユーザ重畳符号化を使用して、複数の送信機(12a、12b)からデータ信号を受信するための受信機であって、前記受信機は、
チャネル(16a、16b)間の位相シフト情報を取得するために、前記受信機が前記データ信号を受信する、前記チャネル間の位相シフトを推定し(18)、
前記複数の送信機の少なくとも一方に、前記位相シフト情報によって異なる位相シフト補償信号を送信し(20)、かつ
データ信号ごとに情報データを取得するために、前記データ信号を重畳したものにデマッピングを行うことによって、前記データ信号をデマッピングする(30)ように構成されており、
前記受信機は、前記複数の送信機の少なくとも一方に対して、前記チャネル間の位相シフトを低減するように指示を出すような、前記位相シフト補償信号を送信するように構成されており、
前記受信機は、
電力比情報を取得するために、前記受信機が前記データ信号を受信する、前記チャネル間の電力比を推定し(36)、
前記複数の送信機の少なくとも一方に、前記電力比情報によって異なる電力比補償信号を送信する(38)ようにさらに構成されており、
前記電力比補償信号は前記電力比情報によって異なり、かつ前記位相シフト補償信号は前記位相シフト情報によって異なり、
これにより、前記位相シフト補償信号が前記チャネル間の位相シフトを低減し、かつ
前記電力比補償信号が、前記チャネル間の前記電力比と目標比との偏差を低減するようにしている、受信機。
【請求項2】
前記データ信号はN>1となるデータ信号であり、前記目標比を、a、a<a、a<…<aである第1から第Nのデータ信号においてa:a:…:aとしており、第(2n+1)のデータ信号のBPSKコンスタレーションを、第(2(n+1))のデータ信号のデータ信号のBPSKコンスタレーションに対して−1<n<N/2で回転させる形態で、各データ信号を別々にBPSK変調しており、前記受信機は、前記重畳をデマッピングするために、第Nから第1のデータ信号のBPSKコンスタレーションを順に1つずつ再帰的にコピーすることから生じる、コンポーネントコンスタレーションを使用するように構成されている、請求項に記載の受信機。
【請求項3】
前記データ信号を、それぞれの変調方式に従って別々に変調しており、前記受信機は、前記重畳をデマッピングするために、第2のデータ信号の変調方式における第2のコンスタレーションのコンスタレーション点で、第1のデータ信号の変調方式における第1のコンスタレーションをコピーすることから生じる、コンポーネントコンスタレーションを使用するように構成されている、請求項1又は2に記載の受信機。
【請求項4】
マルチユーザ重畳符号化を使用して、複数の送信機(12a、12b)からデータ信号を受信するための受信機であって、前記受信機は、
チャネル(16a、16b)間の位相シフト情報を取得するために、前記受信機が前記データ信号を受信する、前記チャネル間の位相シフトを推定し(18)、
前記複数の送信機の少なくとも一方に、前記位相シフト情報によって異なる位相シフト補償信号を送信し(20)、かつ
データ信号ごとに情報データを取得するために、前記データ信号を重畳したものにデマッピングを行うことによって、前記データ信号をデマッピングする(30)ように構成されており、
前記受信機は、スペクトル的に配置されたOFDM信号サブキャリアを介して、前記複数の送信機から前記データ信号を受信するように構成されており、第1の送信機からの第1のOFDM信号におけるリソースブロックは、第2の送信機(12b)から送信される第2のOFDM信号における物理リソースブロックに対応するKサブバンドに細分されており、
前記受信機は、マルチユーザ重畳を使用して第1および第2のデータ信号を受信するように構成されており、前記受信機は、前記位相シフト補償信号が、スペクトルサブバンドごとに1つの位相シフト値を含み、これに対して、前記第1のOFDM信号の物理リソースブロックが細分されるように、前記位相シフト補償信号を前記第1の送信機に送信するように構成されている、受信機。
【請求項5】
マルチユーザ重畳符号化を使用して、複数の送信機(12a、12b)からデータ信号を受信するための受信機であって、前記受信機は、
チャネル(16a、16b)間の位相シフト情報を取得するために、前記受信機が前記データ信号を受信する、前記チャネル間の位相シフトを推定し(18)、
前記複数の送信機の少なくとも一方に、前記位相シフト情報によって異なる位相シフト補償信号を送信し(20)、かつ
データ信号ごとに情報データを取得するために、前記データ信号を重畳したものにデマッピングを行うことによって、前記データ信号をデマッピングする(30)ように構成されており、
前記受信機は、チャネル推定を行うために、前記第2の送信機によって送信される第2のチャネル推定参照信号の少なくともサブセットに干渉させないように、OFDM送信をブランキングするタイミングに関して前記第1の送信機に指示するブランキングスケジューリング信号を前記第1の送信機(12a)に送信するように構成されており、前記受信機は、前記第2の送信機によって送信される第2のチャネル推定参照信号に基づいて位相シフト推定を行うように構成されている、受信機。
【請求項6】
前記受信機は、前記第2のチャネル推定参照信号のサブセットを、位相シフト推定参照信号として使用するように構成されている、請求項に記載の受信機。
【請求項7】
前記受信機は、下りリンク制御情報(DCI)メッセージを介して、かつ/または無線リソース制御(RRC)メッセージを介して、前記ブランキングスケジューリング信号を送信するように構成されている、請求項またはに記載の受信機。
【請求項8】
前記受信機は、物理ランダム・アクセス・チャネル(PRACH:Physical Random Access Channel)信号が位相シフト推定参照信号に干渉しないように、ランダム・アクセスPRACHのアクティブ位相の最後に前記複数の送信機の少なくとも一方から前記位相シフト推定参照信号を受信することにより、前記位相シフト推定を行うように構成されている、請求項1からのいずれか一項に記載の受信機。
【請求項9】
前記受信機は、前記受信機に位相シフト推定参照信号を送信するタイミング、および/または送信時のスペクトルバンドに関して前記複数の送信機の少なくとも一方に指示する参照信号スケジューリング信号を前記複数の送信機の少なくとも一方に送信するように構成されており、前記受信機は、前記位相シフト推定参照信号に基づいて前記位相シフト推定を行うように構成されている、請求項1からのいずれか一項に記載の受信機。
【請求項10】
前記受信機は、前記参照信号スケジューリング信号内で、発生し得るいくつかの位相シフト推定参照信号から前記位相シフト推定参照信号を表示するように構成されている、請求項に記載の受信機。
【請求項11】
前記受信機は、下りリンク制御情報(DCI)メッセージを介して、かつ/または無線リソース制御(RRC)メッセージを介して、前記参照信号スケジューリング信号を送信するように構成されている、請求項または10に記載の受信機。
【請求項12】
前記受信機は、下りリンク制御情報(DCI)メッセージを介して、かつ/または無線リソース制御(RRC)メッセージを介して、前記位相シフト補償信号を送信するように構成されている、請求項1から11のいずれか一項に記載の受信機。
【請求項13】
前記受信機は、前記位相シフト補償信号を、第1のタイプのメッセージおよび第2のタイプのメッセージ内で送信するように構成されており、前記第1のタイプのメッセージは、前記第2のタイプのメッセージと比較して送信頻度がより少なく、かつ前記第1のタイプのメッセージにおける前記位相シフト補償信号は、前記第2のタイプのメッセージにおける前記位相シフト補償信号によって記述することのできないシグナリング位相オフセットを可能にしている、請求項1から12のいずれか一項に記載の受信機。
【請求項14】
前記受信機は、インジケータフィールドと位相シフトフィールドとを含むメッセージ内で前記位相シフト補償信号を送信するように構成されており、前記インジケータフィールド内の値は、前記位相シフトフィールド内の値と、位相シフト補償に使用される位相シフト値との間のマッピングを変更する、請求項1から13のいずれか一項に記載の受信機。
【請求項15】
前記受信機は、次に配慮すべき位相シフトを絶対的に、または相対的に現在の位相シフトに表示する方法で、前記位相シフト補償信号を送信するように構成されている、請求項1から14のいずれか一項に記載の受信機。
【請求項16】
前記受信機は、重みによって求められた予測アルゴリズムを使用した、過去の位相シフトの重み付けに基づいて前記位相シフトを予測し、かつ位相シフト補償信号として前記重みの更新を送信するように構成されている、請求項1から15のいずれか一項に記載の受信機。
【請求項17】
前記受信機は、前記位相シフトを追跡するようにあるモデルを訓練し、かつ位相シフト補償信号として訓練される前記モデルに関する情報を送信するように構成されている、請求項1から16のいずれか一項に記載の受信機。
【請求項18】
前記受信機は基地局であり、前記データ信号は前記受信機に対して、上りリンク方向で前記複数の送信機によって送信されるか、または前記受信機は移動端末であり、前記データ信号は前記受信機に対して、下りリンク方向で前記複数の送信機によって送信されており、前記送信機は別々の基地局である、請求項1から17のいずれか一項に記載の受信機。
【請求項19】
マルチユーザ重畳符号化を使用して、複数の送信機(12a、12b)からデータ信号を受信するための受信機であって、前記受信機は、
チャネル(16a、16b)間の位相シフト情報を取得するために、前記受信機が前記データ信号を受信する、前記チャネル間の位相シフトを推定し(18)、
前記複数の送信機の少なくとも一方に、前記位相シフト情報によって異なる位相シフト補償信号を送信し(20)、かつ
データ信号ごとに情報データを取得するために、前記データ信号を重畳したものにデマッピングを行うことによって、前記データ信号をデマッピングする(30)ように構成されており、
前記受信機は、OFDMもしくはSC−FDMまたはOFDMA もしくはSC−FDMA無線通信システムの基地局であり、前記複数の送信機は、OFDMもしくはSC−FDMまたはOFDMAもしくはSC−FDMA無線通信システムの移動端末であり、前記データ信号は、上りリンク方向において前記複数の送信機によって供給される、時間的にオーバーラップするOFDMシンボルにおいて周波数がオーバーラップするサブキャリア上で受信されている、受信機。
【請求項20】
サポートしている送信機(UE1)から所望のデータ信号を受信するための受信機であって、前記受信機は、
チャネル間の位相シフト情報を取得するために、前記受信機が前記所望のデータ信号と、別の受信機(BS2)によってサポートされている送信機(UE2)から、前記所望のデータ信号で重畳する方法で送信される干渉データ信号とを受信する、前記チャネル間の位相シフトを推定し、
前記別の送信機(UE2)に、前記位相シフト情報によって異なる位相シフト補償信号が転送されるように、これを別の基地局(BS2)に送信し、かつ
前記所望のデータ信号に関する情報データを取得するために、前記所望のデータ信号と前記干渉データ信号とを重畳したものに、マルチユーザ重畳復号化を使用してデマッピングを行うことにより、前記所望のデータ信号をデマッピングするように構成されている、受信機。
【請求項21】
マルチユーザ重畳符号化を使用して複数の送信機(12a、12b)からデータ信号を受信する方法であって、前記方法は、
チャネル(16a、16b)間の位相シフト情報を取得するために、前記受信機が前記データ信号を受信する、チャネル間の位相シフトを推定するステップ(18)と、
前記複数の送信機の少なくとも一方に、位相シフト補償信号を送信するステップ(20)であって、前記位相シフト補償信号は前記位相シフト情報によって異なる、ステップ(20)と、
前記データ信号ごとに情報データを取得するために、前記データ信号を重畳したものにデマッピングを行うことによって、前記データ信号をデマッピングするステップ(30)とを含み、
前記データ信号は、スペクトル的に配置されたOFDM信号サブキャリアを介して、前記複数の送信機から受信され、第1の送信機からの第1のOFDM信号におけるリソースブロックは、第2の送信機(12b)から送信される第2のOFDM信号における物理リソースブロックに対応するKサブバンドに細分されており、
第1および第2のデータ信号は、マルチユーザ重畳を使用して受信され、前記位相シフト補償信号は、前記位相シフト補償信号が、スペクトルサブバンドごとに1つの位相シフト値を含み、これに対して、前記第1のOFDM信号の物理リソースブロックが細分されるように、前記第1の送信機に送信される、方法。
【請求項22】
マルチユーザ重畳符号化を使用して複数の送信機(12a、12b)からデータ信号を受信する方法であって、前記方法は、
チャネル(16a、16b)間の位相シフト情報を取得するために、前記受信機が前記データ信号を受信する、チャネル間の位相シフトを推定するステップ(18)と、
前記複数の送信機の少なくとも一方に、位相シフト補償信号を送信するステップ(20)であって、前記位相シフト補償信号は前記位相シフト情報によって異なる、ステップ(20)と、
前記データ信号ごとに情報データを取得するために、前記データ信号を重畳したものにデマッピングを行うことによって、前記データ信号をデマッピングするステップ(30)とを含み、
前記方法は、チャネル推定を行うために、前記第2の送信機によって送信される第2のチャネル推定参照信号の少なくともサブセットに干渉させないように、OFDM送信をブランキングするタイミングに関して前記第1の送信機に指示するブランキングスケジューリング信号を前記第1の送信機(12a)に送信するステップを含み、前記方法は、前記第2の送信機によって送信される第2のチャネル推定参照信号に基づいて位相シフト推定を行うステップをさらに含む、方法。
【請求項23】
サポートしている送信機(UE1)から所望のデータ信号を受信する方法であって、前記方法は、
チャネル間の位相シフト情報を取得するために、前記受信機が前記所望のデータ信号と、別の受信機(BS2)によってサポートされている送信機(UE2)から、前記所望のデータ信号で重畳する方法で送信される干渉データ信号とを受信する、前記チャネル間の位相シフトを推定するステップと、
前記別の送信機(UE2)に位相シフト補償信号が転送されるように、これを前記別の基地局(BS2)に送信するステップであって、前記位相シフト補償信号は前記位相シフト情報によって異なる、ステップと、
前記所望のデータ信号に関する情報データを取得するために、前記所望のデータ信号と前記干渉データ信号とを重畳したものに、マルチユーザ重畳復号化を使用してデマッピングを行うことにより、前記所望のデータ信号をデマッピングするステップとを含む、方法。
【請求項24】
基地局(BS2)から所望のデータ信号を受信するユーザエンティティ(UE2)であって、前記ユーザエンティティは、
チャネル間の位相シフト情報を取得するために、前記ユーザエンティティが前記所望のデータ信号と、別の基地局(BS1)によってサポートされている別のユーザエンティティ(UE1)から、前記所望のデータ信号で重畳する方法で送信される干渉データ信号とを受信する、前記チャネル間の位相シフトを推定し、
前記別の基地局(BS1)に、前記位相シフト情報によって異なる位相シフト補償信号が転送されるように、これを前記基地局(BS2)に送信し、かつ
前記所望のデータ信号に関する情報データを取得するために、前記所望のデータ信号と前記干渉データ信号とを重畳したものに、マルチユーザ重畳復号化を使用してデマッピングを行うことにより、前記所望のデータ信号をデマッピングするように構成されている、ユーザエンティティ(UE2)。
【請求項25】
基地局(BS2)から所望のデータ信号を受信する方法(UE2)であって、前記方法は、
チャネル間の位相シフト情報を取得するために、前記ユーザエンティティが前記所望のデータ信号と、別の基地局(BS1)によってサポートされている別のユーザエンティティ(UE1)から、前記所望のデータ信号で重畳する方法で送信される干渉データ信号とを受信する、前記チャネル間の位相シフトを推定するステップと、
前記別の基地局(BS1)に位相シフト補償信号が転送されるように、これを前記基地局(BS2)に送信するステップであって、前記位相シフト補償信号は前記位相シフト情報によって異なる、ステップと、
前記所望のデータ信号に関する情報データを取得するために、前記所望のデータ信号と前記干渉データ信号とを重畳したものに、マルチユーザ重畳復号化を使用してデマッピングを行うことにより、前記所望のデータ信号をデマッピングするステップとを含む、方法(UE2)。
【請求項26】
コンピュータ上で実行されると、請求項21から23および25のいずれか一項に記載の方法を実行する命令を格納しているコンピュータプログラムを含む、非一時的デジタル記憶媒体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、マルチユーザ重畳送信(MUST:MultiーUser Superposition Transmission)を用いた送信概念などの、マルチユーザ重畳符号化による送信の概念に関する。
【背景技術】
【0002】
下りリンクMUSTでは、異なるユーザ機器(UE:User Equipment)専用のオーバレイ信号間の同期は、進化型ノード B(eNB:Evolved Node B)によって簡便に得ることができる。しかしながら、上りリンクMUST(UL−MUST:uplink MUST)の場合、問題となるのは、図17aに示すように、異なるUEによって形成された基地局(BS:Base Station)で受信したコンポジットコンスタレーションの復号化である。受信BSでは、異なるUEからのコンポーネントコンスタレーションは、U−MUSTのUEとBSとの間の独立したチャネル(振幅および位相)によって影響を受ける。MUST−Cat.2および3は、コンポジットコンスタレーションでのラベルビットの割り当ての点で、とりわけ問題がある。UL−MUSTのコンポジットコンスタレーションの例を図17に示している。また、図17bに示すように2つのBSが同じリソースで同じUEに送信する場合、または図17cに示すようにUEに近接した異なるリソースで送信する場合でそれぞれ、下りリンク(DL:downlink)干渉制御方式が重要な意味を持つ。
【0003】
送信がUE側で開始される上りリンク環境において、またはオーバレイ信号が異なるBS側で発生し、かつその送信がBS側で開始されるDL干渉シナリオにおいて、マルチユーザ重畳符号化技術によってもたらされる効率の利得が利用できる概念を念頭に置くことが好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、複数の送信機から送信されるデータ信号を、より効率的に送信するための概念を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、本出願の独立請求項の主題によって達成される。
【0006】
本出願の基本的な知見は、マルチユーザ重畳符号化を受信機における適切な位相シフト推定と組み合わせることにより、送信機側で位相シフト補償を行うことでデータ信号の重畳がもたらされ得、これを正確にデマッピングしてデータ信号ごとに情報データを取得することができるようになり、その結果、複数の送信機によって送信されるデータ信号の送信がより効率的に行われるようになる可能性があるということである。これらを組み合わせることにより、典型的な上りリンク状況、または別々に関与しているBSの下りリンク状況に本概念を適用することができる。すなわち、データ信号が1つのBSから発生し、これらが1つのドメイン、すなわち基地局のドメインにおいて重畳される下りリンク状況とは異なり、重畳すべきデータ信号が、典型的な上りリンク状況におけるユーザエンティティまたは移動端末、あるいは下りリンク状況における異なる基地局などの別々の送信機から発生するという状況でも適用可能である。ここで受信機側、すなわち前者の場合はBSとなり、後者の場合はUEとなる状況で位相シフト推定を行い、かつ関与している送信機の少なくとも一方へ位相シフト補償信号をシグナリングすることにより、送信機のコンスタレーションにそれぞれデータをマッピングするときに、送信機側で位相シフトを補償できるようになる。別の実施形態によれば、セル間干渉状況を緩和するために本概念を使用している。
【0007】
本出願の一実施形態によれば、送信機が受信機に位相シフト推定信号を送信することと、これに続き、受信機が送信機の少なくとも一方に対応する位相シフト補償信号を送信することとに基づく受信機側の位相シフト推定に加えて、受信機側で電力比推定を行い、これに続き、送信機の少なくとも一方に電力比補償信号を送信している。電力比補償信号の受信者は、位相シフト補償信号の受信者と同じであってもなくてもよい。送信機側で位相シフト補償信号を適用することにより、受信機で重畳する送信機のデータ信号間の位相シフトが低減されるが、その一方で振幅比補償信号を、受信機で重畳するデータ信号間の振幅比と目標比との偏差を低減するために設けている。目標比は、たとえば1:2:…:2に近いか、または同様の比率であってもよく、もしくはかかる比率とすることができ、ここでNは、マルチユーザ重畳符号化送信に関与している送信機の数である。他の比率を同様に適用してもよい。送信機は、各送信機がそのデータ信号を送信する際の電力を適切に設定するために、電力比補償信号を使用している。
【0008】
一実施形態によれば、電力比補償信号を送信することにより、送信機側での電力の設定を、各上りリンクの電力を制御するためにマルチユーザ重畳符号化送信に関与している送信機を含む、すべての実行中の送信機に受信機が送信する送信電力制御信号よりも小さい、あるいは細かい単位で行うことが可能となる。実際、アンカーまたは第2のコンポーネントキャリアとアグリゲートされた第1のコンポーネントキャリアでマルチユーザ重畳符号化送信を実行するとき、第1のコンポーネントキャリアの電力を振幅比補償信号が制御する際の量子化精度またはステップサイズは、最終的にはアンカーまたは第2のコンポーネントキャリアの送信電力を制御するために使用される送信電力制御信号の量子化精度を超えるものとなる可能性がある。この手段により、より細かい粒度の電力比補償信号に対処することができないレガシー送信機を、アンカーまたは第2のコンポーネントキャリア上でさらに実行させることができ、その際の送信電力は、より低い量子化精度をもって制御される。
【0009】
本出願の一実施形態によれば、N>1を超えるデータ信号が、a、a<a、a<…<aである第1から第Nのデータ信号に対する目標比をa:a:…:aとする状態でマルチユーザ重畳符号化送信に関与しており、ここでは各データ信号を別々に二位相偏移変調(BPSK:Binary Phase Shift Keying)している。第(2n+1)のデータ信号のBPSKコンスタレーションを、第(2(n+1))のデータ信号のBPSKコンスタレーションに対して−1<n<N/2で回転させている。この手段により、2、3、4またはそれ以上となるN> 1のデータ信号は共通の物理リソースを効果的に共有し、これは、第1から第Nのデータ信号のBPSKコンスタレーションを順に1つずつ再帰的にコピーすることから生じる、複素ドメインのグリッドにおいて規則的に間隔を置いた2個のコンスタレーション点によるコンポーネントコンスタレーションをもたらす。
【0010】
一実施形態によれば、物理ランダム・アクセス・チャネル(PRACH:Physical Random Access Channel)を使用して、位相シフト推定参照信号(PSERS:Phase Shift Estimation Reference Signal)を送信している。ランダムアクセスPRACH信号が実際のPSERSに干渉しないように、この送信をPRACHのアクティブ位相の最後に行ってもよい。その利点は、PRACH信号が既にレガシー送信機から送信されているため、レガシー送信機が、自身が送信するデータ信号が受信機に着信する際に、その着信が、同じ物理リソース上の受信機に代わって、ピギーバック方式でデータ信号を送信する別の送信機のデータ信号を重畳する方法によるものであるかどうかを認識することなく、マルチユーザ重畳符号化送信に関与できる点にある。
【0011】
一実施形態によれば、位相シフト補償信号、振幅比補償信号、および/または位相シフト推定参照信号の送信をスケジューリングするための参照信号スケジューリング信号を、下りリンク制御情報(DCI:Downlink Control Information)メッセージを介して、かつ/または無線リソース制御(RRC:Radio Resource Control)メッセージを介して、受信機から各送信機へと送信している。
【0012】
位相シフト補償信号および/または振幅比補償信号を送信することによって発生する制御オーバーヘッドを低減するために、これらの信号の一方または両方を、第1のタイプのメッセージおよび第2のタイプのメッセージにおいて送信してもよく、その際、第1および第2のタイプのメッセージ送信の頻度は異なっている。そうすることで、第1のタイプのメッセージは、たとえばその送信頻度がより少なくなる可能性があるが、第2のタイプのメッセージ内で各信号が記述することのできないシグナリング位相オフセットを可能にする方法となっている。位相シフト補償信号の場合は位相シフトフィールド、または振幅比補償信号の場合は電力制御フィールドなど、他のフィールドの読み取り方法を変更するインジケータフィールドをメッセージに付与することによって、同様の効果を達成することができる。
【0013】
別の実施形態によれば、この位相シフト補償は、一連の位相シフト補償信号が、位相シフト補償信号の受信者、すなわち各送信機が、そのコンスタレーションにデータをマッピングするときに使用する現在の位相シフトに対して、各送信機のコンスタレーションにデータをマッピングする次のタスクにおいて配慮すべき位相シフトを示すことによって達成される。このようにして、位相シフト補償信号を送信する際に発生するオーバーヘッドをさらに低減している。
【0014】
別の実施形態によれば、位相シフト補償信号を予測符号化を用いて符号化してもよく、これはすなわち、単に予測残差を符号化するか、あるいはたとえば、単に予測アルゴリズムを更新する際の重みを符号化してもよいということである。この場合、送信機および受信機は、予測残差のみ、すなわち使用される実際の位相シフトと、位相シフト補償信号によってシグナリングされる予測された位相シフトとの差のみを用いて、使用される位相シフトを予測するか、あるいはその際、重み更新を行うことによって予測アルゴリズムを継続的に更新し、このような予測アルゴリズムの更新で得られた予測を用いることになる。
【0015】
本出願の有利な実施形態を従属請求項の主題としている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】左側で、関与している両方のUE、すなわちUE1およびUE2に対して電力割り当てを行い、かつUE2に対してのみ位相オフセット補償を行い、また右側で、両方のUEに電力割り当てと位相オフセット補償とを行う状況における、重畳データ信号のコンスタレーションの相互回転を示した概略図である。
図2】下りリンクMUSTの場合の基地局の送信経路を示したブロック図である。
図3】MUSTカテゴリ1のコンポジットコンスタレーションを示した概略図である。
図4】本出願の一実施形態による受信機のブロック図および送信機のブロック図であり、その両方を、重畳方式で受信機にデータ信号を送信する別の送信機と共に設けているシナリオにおいて示す。
図5】電力比推定をも含む別の実施形態による、図4のシナリオにおける受信機のブロック図および送信機のブロック図である。
図6】狭帯域モノのインターネット(NB−IoT:Narrow Band IoT)のM−PRACHにおけるLTEサウンディング参照信号(LTE−SRS:LTE Sounding Reference Signal)のオーバレイを示した概略図である。
図7】データ信号が受信機に着信する際に経由するチャネルのチャネル位相によって、受信機が受信するデータ信号のコンスタレーションの回転、およびその間に結果として生じる位相オフセットまたは位相シフトを示した(すなわち、受信機または基地局での受信(Rx:receive)コンスタレーションを示した)概略図である。
図8】左側から中央にかけてのコンポジットコンスタレーションにおいて第1の位相補償反復を有し、かつ中央から右側にかけてのコンポジットコンスタレーションにおいて別の位相補償反復を有する、受信機で隣り合った3つの(3x)コンポジットコンスタレーションを概略的に示した図である。
図9】RRC物理チャネルの再構成を示した例である。
図10】例示的なRRC上りリンク位相補償シグナリングを示した図である。
図11】UE2がその復調参照信号(DMRS:Demodulation Reference Signal)をブランキングする、周波数・時間リソース上のサブフレームのブランキングを示した概略図である。
図12】NB−IoT ULキャリア上で6つの直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Duplexing)シンボルをブランキングするLTE UEを示した概略図である。
図13】ブランキングパターンの一例を示した表である。
図14】半永続ブランキングを設定するためのRRCメッセージの一例を示した図である。
図15】4つのBPSK送信の重畳を示した概略図である。
図16】セル間干渉の低減のために前掲の図に関連して教示しているマルチユーザ重畳符号化の概念を使用した、一実施形態による受信機および送信機を示した概略図である。
図17a】上りリンク状況、および異なるBSから発生する重畳信号を伴う下りリンク状況における、概略的な重畳符号化を示した概略図である。
図17b】1つのUEを対象としている、概略的な重畳符号化を示した概略図である。
図17c】別々に存在しているが近傍にあるUEを対象としているが、チャネル状態情報(CSI:Channel State Information)および位相補償のない状態における、概略的な重畳符号化を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本出願の好ましい実施形態を、図面に関連して以下に記載する。
【0018】
本出願の実施形態における以下の記載を容易に理解できるように促すために、図1に関連して、下りリンクシナリオにおけるマルチユーザ重畳送信の使用と、この送信概念を上りリンクへと移行させる試みに関連した課題とに関して本出願明細書の導入部分で行っている説明を再開するものとする。したがって、この動機について述べている考察を、後に記載する本出願の実施形態に関して限定しているものとして捉えるべきではない。
【0019】
MUSTコンポジットコンスタレーションを復号化するために、受信機(すなわち、上りリンク状況では基地局であり、下りリンク状況ではUE)は、UL−(上りリンク)MUSTの場合に関与しているUL−MUSTのUE、またはDL(下りリンク)MUSTの場合に重畳信号の発生元となる、関与しているBSのチャネル状態推定、または重畳データ信号の相互干渉を補償するための干渉制御を必要とする。UL−MUSTの状況を予備的に検証することとする。上りリンク状況に対して予備的に焦点を当てることを、限定として捉えるべきではない。UL状況に関して記載している詳細は、関与しているBSが別々に存在する下りリンク状況に容易に置き換えることができ、後者の場合に関連する実施形態については、UL MUSTに関する実施形態の後に後述するものとする。UL−MUSTを改善するために、電力割り当てと位相オフセット補償とを利用し、これによってコンポジットコンスタレーションを最適化することができる。図1は、かかる位相オフセット補償および電力割り当て制御の効果を示した図である。図1の左側は、複素ドメインにおける別の送信機UE2の直交振幅変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)コンスタレーション(斜線を付した円)点に対する第1の送信機またはユーザエンティティUE1のQAMコンスタレーション(太字の円)の回転を示しており、UE2の位相オフセットから生じる回転はここでは補償されていると仮定している一方で、UE2のQAMコンスタレーションに対するUE1のQAMコンスタレーションの回転が、UE1と受信機とを、かつUE2と受信機とをそれぞれ接続しているチャネルにおける任意の差異に起因して発生するように、いかなる位相オフセットも補償されていないと仮定している。両方のUE、すなわちUE1およびUE2は既に電力制御されていると仮定し、その結果、UE1のデータ信号は受信機、すなわち基地局に、UE2のQAMコンスタレーションと比較して拡散が少ないか、または縮小しているUE1のQAMコンスタレーション点に発生するUE2のデータ信号と比較して、低電力状態で着信する。図1の右側では、両方の送信機、すなわちUE1およびUE2が位相オフセット補償されている場合に生じる状況の変化を示している。以下にさらに記載しているように、UE1およびUE2のデータ信号に受信機または基地局への途上で発生する位相シフトを補償または低減するために、UE1がそのQAMコンスタレーションを適切に事前回転させることによってこれを実行してもよい。図1の右側に示しているように、UE1のコンスタレーション点は、UE2のコンスタレーションにおけるコンスタレーション点と同様に、ここで複素ドメインのアクセスへと位置合わせされる。その結果、 UE1およびUE2のコンスタレーションが同じタイプ、すなわちQAMである本事例では、UE1のコンスタレーション点を、複素ドメインにおいてのみ並進シフトおよび等方性スケーリングによってUE2のコンスタレーション点に変換することができる。すなわち回転は必要とならない。例示する目的で、図1では、UE2が、送信すべき自身のデータを左上の象限内のコンスタレーション点(斜線矢印で示す)にマッピングした状態でこれを示し、またUE1が、送信すべき自身のデータを右上の象限内のコンスタレーション点(実線矢印で示す)にマッピングした状態でこれを示している。以下により詳細に概説しているように、受信機では、受信データ信号の重畳デマッピングを行う際に何ら問題が発生しない。これはなぜなら、図1の実線エラーが指している、受信機に着信するマッピング重畳に対し、一例として、たとえば重畳コンスタレーション点と同じ象限に存在するUE2のQAMコンスタレーション点に重畳信号点を関連付けることで、まずこのコンスタレーション点をUE2のQAMコンスタレーション点のいずれかにマッピングし、次いで以前にUE2のデータ信号用に求めたUE2のコンスタレーションにおけるQAMコンスタレーション点に対して、重畳コンスタレーション点の相対位置を評価することで、重畳コンスタレーション点をUE1のQAMコンスタレーション点のうちの1つと関連付けることにより、逐次干渉除去を行うことができるからである。以下の説明では、関与しているUEの数が2つに限定されず、また他のコンポーネントコンスタレーションが、関与しているUEによって同様に使用され得ることを示している。
【0020】
以下の説明は、関与しているUE間に通常のUL電力制御が既に設定されていると仮定した、位相シフト制御に関するものであるが、いくつかの実施形態では、電力割り当てを改善できる可能性についても言及している。
【0021】
したがって、図1に関連して先に述べたように、後続の実施形態への導入部分を簡単に要約すると、概説した位相シフト補償によって、上りリンクでマルチユーザ重畳符号化を使用することが可能となることに留意すべきである。なおここで、たとえばLTE規格内では、かかる可能性を実現するためのソリューションが何ら存在しないことにも手短に言及しておく。
【0022】
LTEの場合は、下りリンク(DL)用の重畳符号化について[1]に記載している。そこに記載しているように、マルチユーザ重畳送信(MUST)は下りリンク方式として使用するものである。すなわち、マルチアクセス方式では、複数のユーザが、空間的に隔離されない状態で同じ物理リソース要素上で同時スケジュールされていることを前提としている。かかる非直交送信により、マルチユーザ(MU:Multi User)システムの容量および/またはネットワーク内の接続装置の数について改善することができる。その概念は、送信側の基地局(BS)が個別のデータストリーム用のコンポジットコンスタレーションを形成するという点にある。受信機側では、逐次干渉除去に基づく受信機構造を使用することによって、データストリームを分離することができる。[1]で下りリンク(DL)方向に対して3つのMUSTカテゴリを指定しており、これについては表1を参照されたい。

【0023】
【0024】
カテゴリ1の場合の送信側処理の例を図2[左]に示している。個別のチャネル符号化、レートマッチング(RM:rate matching)、スクランブリング、および変調シンボルへのマッピングを行った後、MUSTの近傍UEおよびMUSTの遠方UEの信号をそれぞれ、振幅重み
および
と結合する。ここで
は、MUSTの近傍ユーザの場合の送信電力比である。
【0025】
図3は、MUSTカテゴリ1の例示的なコンポジットコンスタレーションを示す。
【0026】
なお、図3に示すコンポジットコンスタレーションは、重畳データ信号をデマッピングするために、図1の例示的な事例において受信機、すなわち基地局が使用するコンスタレーションに対応している。
【0027】
図4を参照すると、マルチユーザ重畳符号化送信の概念が記載されている。図4は、本出願の一実施形態による受信機と、本出願の一実施形態による2つの送信機とを示す。参照符号10を用いて受信機を示し、かつ参照符号12を用いて送信機を示しており、またアルファベットの添え字を用いて個々の送信機を区別している。具体的には、受信機10を基地局とする一方で、送信機12から12を移動端末またはユーザエンティティとすることができる。各送信機12が同様に見える可能性があるが、その内部構造に関しては、送信機12のものを代表的に図4に示している。送信機12は、送信機12に関して記載しているのと同じ内部構造および機能を有していてもよいが、以下に述べる実施形態によれば、送信機12は、送信機12が有するいくつかの特有の機能を備えていなくてもよい。
【0028】
後述する方法でマルチユーザ重畳符号化を用いて送信機12および12からデータ信号を受信させるために、受信機10を設けており、またこれに対して、各データ信号を互いに重畳する方法で、これらを受信する受信機10に対して送信させるために、送信機12および12を設けている。
【0029】
図4に示すように、送信機12(したがって送信機12も)は、位相シフト推定参照信号を受信機10に送信するように構成された、位相シフト推定参照信号(PSERS)送信部14を備える。位相シフト推定参照信号により、受信機10は、対応する送信機12がマルチユーザ重畳符号化に従ってデータ信号を受信機10に送信するために経由する、チャネル16a間の位相シフトを推定することができる。同様に、送信機12も同じことを実行する。すなわちPSERSをその接続チャネル16bを介して受信機10に送信する。受信機10は、チャネル16aと16bとの間の位相シフトを推定するための位相シフト推定部18を備える。このため、位相シフト推定部18は、送信機12および12からそれぞれ受信した位相シフト推定参照信号を評価する。後に、いかにして受信機10が順次、かつ個別に自身において位相シフト推定参照信号を受信し、その際、異なる送信機12、12、または受信機10によってサポートされているが、たとえば送信機12および12それぞれのデータ信号間のマルチユーザ重畳符号化には関与していない別の任意の送信機12に、位相シフト推定参照信号を競合送信または同時送信させることなくその受信を達成できているかについて述べるものとする。なお、かかる例示的な別の受信機については、たとえば参照符号12を用いて図4に示している。
【0030】
受信機10は、位相シフト推定によって取得されるチャネル間の位相シフト情報を位相シフト推定部18から受信し、かつ複数の送信機の少なくとも一方に位相シフト補償信号を送信する、位相シフト補償送信部信号20を備える。図4では、送信部20によって送信される位相シフト補償信号を、送信機12が受信すると仮定している。このために、送信機12は位相シフト補償信号受信部22を備える。後に、位相シフト補償信号の実施形態について詳述するものとする。たとえば、信号化オーバーヘッドを低く抑えることを可能にする概念について説明する。これらの実施形態によれば、たとえば受信機10から送信機12へ、および必要に応じて受信機10がサポートしているすべての送信機12〜12へと送信される、下りリンク制御情報(DCI)メッセージおよび/または無線リソース制御(RRC)メッセージ内に、この位相シフト補償信号を含めてもよい。
【0031】
この位相シフト補償信号は、チャネル16aおよび16b間のあらゆる位相の低減または補償をもたらすように選択されている。かかる位相シフトはたとえば、受信機10から送信機12および12までの距離がそれぞれ異なることに起因して発生している。図4に示すように、送信機12は、位相シフト補償信号に従って位相シフトを補償した特定のコンスタレーションを使用して、送信すべきデータをマッピングするマッパー24を備え、これにより、チャネル16aを介して最終的に受信機10に送信すべきデータ信号を、送信機12から送信される対応するデータ信号によって重畳する方法で得ている。たとえば、データマッパー24は、一例として四位相偏移変調(QPSK:Quadrature Phase Shift Keying)、およびQAMなどの特定のチャネル状態に基づいて選択される特定のコンスタレーションに対して、送信すべきデータ26をマッピングする。ただしデータマッパー24は、以下に詳述しているように、自身のチャネル16aと、マルチユーザ重畳のパートナーである12bのチャネル16bとの間の位相シフトに配慮して、自身のコンスタレーションを回転させている。次いで、このようにして取得したデータ信号28を使用して、たとえば送信機12によって受信機10に最終的に送信されるOFDMもしくはシングルキャリア周波数分割多重(SC−FDM:Single Carrier Frequency Division Multiplexing)または直交周波数分割多重接続(OFDMA:Orthogonal Frequency Division Multiple Access)もしくはシングルキャリア周波数分割多重接続(SC−FDMA:ingle Carrier Frequency Division Multiple Access)信号の特定のOFDMサブキャリアを形成し、その結果、言及したサブキャリアが、送信機12の対応するマッパーがそれ自身のデータをマッピングするサブキャリアと一致するようにしている。
【0032】
受信機10はデマッパー30を備え、このデマッパー30は、重畳データ信号、すなわち図4において32で示している、対応するOFDMサブキャリアにデータ信号を重畳したものを受信し、これは複素平面内の特定の点を指しており、またデマッピングを行うことにより、各データ信号、すなわち送信機12から送信されるデータ信号28と、送信機12から送信される対応するデータ信号とに対する情報データを取得している。このために、デマッパー30は逐次干渉除去(SIC:Successive Interference Cancellation)を実行する。すなわち、たとえば図1に関連して上述したデマッピングを順次実行する。つまり、デマッパー30は、たとえば最初に「より強度の高い」データ信号の情報データ、すなわち「より近傍にある」送信機からのデータ信号を取得し、次いで「より遠方の」送信機の情報データを導出する。デマッピング装置30は、情報データが1または複数のビットである場合はハードデマッピング装置となってもよく、あるいは情報データが0と1との間(両方を含む)の値である場合はソフトデマッピング装置となってもよい。このようにして、デマッパー30によって送信機12および12に対してそれぞれ得られた情報データ34に、次いで、たとえばデインタリービング、前方誤り訂正、スクランブル解析、またはデパンクチャリングなど、各送信機12および12に対してそれぞれ別々に実行されるものを含む、チャネル復号化を例とする処理をさらに施してもよい。最終的にこれは、送信機12が対応するチャネルコーダ、インターリーバ、スクランブラ、および/またはパンクチャ・アップストリームデータ・マッパー24を備えていてもよく、また受信機10がアップストリームデマッパー30、すなわち受信OFDM、SC−FDMまたはOFDMAもしくはSC−FDMAシンボルをOFDMサブキャリアへと分解し、そのうちの1つは重畳データ信号を搬送している形態の分解装置を備えていてもよいことを意味する。
【0033】
上記とは異なって記載されているが、以下の説明から、送信機12が位相シフト補償信号受信部を備えていなくてもよく、かつ/または任意の位相シフト補償信号のデマッピングに配慮するデマッパー24を備えていなくてもよいことが明らかとなる。むしろ送信機12は、送信機12がデータ信号チャネル16b上でピギーバック方式で別のデータ信号を送信し、この信号が、次いで受信機10において、上述した方法でマルチユーザ重畳符号化(復号化)処理を受けるということを認識さえしていなくてもよい。
【0034】
図5は、本出願の別の実施形態による、受信機10と送信機12とを示す。ここで、受信機10は、電力比情報を取得するために、複数の送信機間の電力比を推定するように構成された電力比推定部36をさらに備える。送信部38は、電力比情報によって異なる電力比補償信号を、送信機12および12の少なくとも一方に送信している。図5は、送信機12が、対応する電力比補償信号受信部40を備えていることを示しているが、既に上記で示したように、これは単なる一例に過ぎず、したがって、送信機12が、対応する受信部40を代替的にまたは付加的に備えていてもよい。送信機12は、電力比補償信号に応じてデータ信号28を送信する際の電力を設定する。実際には、この電力の設定は、データ信号28のサブキャリアをその一部として有する、サブキャリアのセット全体に影響を及ぼし得る。つまり、マッパー24がデータ26をマッピングしたものを含む複数のOFDMサブキャリアを搬送しているOFDMもしくはSC−FDMまたはOFDMA もしくはSC−FDMAシンボル全体が、受信部40によって受信される電力比補償信号に従って行われる電力設定の対象となる。
【0035】
上記から明らかなように、送信部38によって送信され、受信部40によって受信される電力比補償信号を、マルチユーザ重畳符号化に関与するデータ信号が受信機10において互いに重畳する際の電力と、たとえばデマッパー30が重畳データ信号をデマッピングするときに使用するコンポジットコンスタレーションのコンスタレーション点が、複素ドメイン内に最も効率的に分布されることを可能にする、所定の目標電力比との偏差を低減するために設定している。
【0036】
以下の記載では、これまでに説明したマルチユーザ重畳符号化の概念に関係する種々の態様に従って実施することができる、実施態様の詳細を示す本出願の特定の実施形態に関する説明を続けるものとする。以下に記載する態様は、その限りにおいて、図4および図5それぞれに関連して記載している実施形態と個々に、または組み合わせ形式において組み合わせることができる。これらの態様を構成するにあたり、これらを複数のセクションにまとめるものとする。
【0037】
[E1]位相シフト推定
以下の詳細および実施形態は位相シフト推定に関する。単に例示する目的で、マルチユーザ重畳符号化が狭帯域モノのインターネットの上りリンク(NB−I0T UL)キャリアのLTE UE間を対象とすると仮定している。ただし、以下に述べる詳細を、他の任意の例に容易に置き換えることができる。より正確には、以下で、NB−IOT ULキャリアのULでMUSTカテゴリ1の送信を実現するために、同時スケジュールされたLTE−UEおよびNB−IOT装置のコンスタレーション間における相対位相オフセットの推定について説明する。この推定を、NB−IOT ULキャリアのLTE−UEの推定送信によって実行している。
【0038】
[E1.1]位相シフト推定参照信号(PSERS)としてのPRACHの使用
具体的には、NB−IOT ULをMUSTの「プレイグラウンド」として例示的に使用するとき、160kHzのM−PRACHにおけるLTE UEのPRACHをPSERSとして使用することができる。換言すれば、NB−IOTキャリアにおけるLTE UEの位相オフセットを、M−PRACHを活用することによって推定することができる。LTE UEは、基地局、すなわちeNBにおける位相オフセットを推定できるように、M−PRACHにおけるPRACHシーケンス、DMRSまたはSRSに基づき得る位相シフト推定参照信号(PSERS)を送信する。この参照信号は次いで160kHzの帯域幅に制限されるが、これは[2]に記載しているように、M−PRACHの帯域幅に対応している。
【0039】
図6は、NB−IoTのM−PRACHにおけるLTE−SRSのオーバレイを示す。関与中のUEから送信されるこれらのPRACH信号に基づいて、図7に示すように、ここで位相オフセットを求めることができる。図7では、チャネル位相による受信コンポーネントデータ信号のコンスタレーションへの影響の様子を個々に示している。データ信号のコンスタレーションを図7の左側に示しているが、このデータ信号は、右上のQAMコンスタレーション点が角度β1となるように角度β1−α1をもって着信し、その一方で第2のデータ信号のQAMコンスタレーションは、右上のQAMコンスタレーション点が角度β2で発生するように、角度β2−α2だけ傾斜しており、その際、両方のデータ信号間に対する位相オフセットまたは位相シフトはβ1−β2となっている。
【0040】
図4および図5の記載に関連して、これは、図4および図5に関連して前述したPSERSが、PRACH位相において送信されるPRACHシーケンス、DMRSまたはSRSであり得ることを意味している。受信機10が個々の送信機からPSERSを別々に受信するために、受信機10がサポートする送信機12を成功裏に制御する方法の詳細について、以下にさらに記載するものとする。
【0041】
[E1.1.1]発生し得るRA試行への干渉回避
先に言及したNB−IOTキャリア上の場合など、PRACH位相においていまだサポートされていない送信機で発生し得るランダムアクセス(RA:Random Access)試行への干渉を回避するために、以下の手段を設けることができる。PRACHはネットワークへの正確な同期(タイミングアドバンス)なしに実行できるので、干渉を回避するためにPRACHの最後にガードが必要となる。ここで、発生し得るNB−IOTのランダムアクセス(RA)試行への干渉を回避するために、チャネル推定または位相推定において正確に同期された、すなわち既にサポートされたLTE UEが、このガードインターバルを使用することができる。
【0042】
図4および図5の記載に関連して、これは、PSERS送信部14がPRACH位相の最後に自身のPSERSを送信できることを意味しており、その際受信機10によるサービスにランダムにアクセスしようとする送信機は、ランダムアクセスのために自身のPRACHを送信しない。
【0043】
[E1.2] eNBサポート式LTE−UE用PRACHまたはRS
基地局、すなわちeNBにより、LTE UEが自身のセルをNB−IOTのULキャリア上で送信するのをサポートできる可能性がある。この形式を使用して、E1.1で提案しているように、M−PRACHまたは予約されたNB−IOTのULリソースのいずれかで、位相シフト推定を実行することができる。また、この概念を使用して、NB−IOTのULキャリア上の予約されたリソースでリソースブロック(RB:Resource Block)帯域幅全体を利用することができる。したがって、PSERS送信の周波数帯域および時間を記述している専用のDCIフォーマットを、この目的のために使用することができる。DCIフォーマット4に基づく例示的なDCIフォーマットを表2に提示している。ここで、「RS送信のためのOFDMシンボル時間インデックス」は、LTE UEが自身のPSERSを送信すべきOFDMシンボルインデックスを記述している。「PSERSフォーマットインジケータ」は、LTE UEが位相シフト推定を行うために送信すべきPSERSを記述している。
【0044】
【0045】
つまりこれは、図4および図5の実施形態を参照すると、受信機10が送信機12などのPSERSを送信すべき送信機に対して、各送信機が送信すべき時間と、必要に応じて送信すべきPSERS信号とを示すメッセージを送信してもよいということを意味する。
【0046】
[E1.3]反復的な位相オフセットの適応
原理上は、位相シフト補償信号がその受信者、すなわち図4および図5の場合には送信機12に、重畳データ信号間に位相シフトがない状態を近似するように指示するためのいくつかの方法が存在する。たとえば、位相シフト補償信号は、送信すべきデータがマッピングされる各コンスタレーションを、マッパー24が、複素平面のアクセスなどの固定アクセスに対して回転させる際に使用すべき位相または角度回転を示すことができる。あるいは、位相オフセットまたは位相シフトを増分更新情報としてシグナリングすることができ、この情報は、送信すべきデータ26をマッピングするときに使用するコンスタレーションの位相または回転を、以前送信したデータのマッピング操作を行うときに以前使用した位相または回転に対して別途変更する方法について、図4および図5の送信機12などの送信機に指示を出すものである。
【0047】
これをLTEの例に置き換えると、LTE UEは、IOTキャリア上で位相オフセットなしで送信することができ、ここで位相は、増分更新情報によって反復的に補償される。第1のステップでは、LTE UEはNB−IOTキャリア上で送信を開始し、その後第2のステップでは、基地局、すなわちeNBが位相オフセットを推定し、位相更新の方向と、必要に応じてステップサイズとをシグナリングする。図8は、位相補償状態に達するまで2回の反復を伴う一定チャネル、すなわちチャネル間に一定の位相オフセットを有するチャネルの状況を示す。左側では、第2のデータ信号のコンスタレーション(斜線なし)が第1のデータ信号のコンスタレーション(斜線を付した円)に対して回転している第1の状況を示している。第1の操作の後の状況は、図8の中央に示しているとおりである。ここでは、第2のデータ信号のコンスタレーションを第1の位相オフセット量だけ回転させており、さらなる(最終)反復を実行した後の状況を右側に示している。ここで、第2のデータ信号のコンスタレーションを、一定量(ここでは、例示的に第1の反復と同量)だけ再度回転させている。ここで、最終反復の後、両方のコンスタレーション、すなわち第1および第2のデータ信号のコンスタレーションは、互いに正しく位置合わせされている。
【0048】
[E2]位相シフト補償
基地局または受信機は、上述したように、以前の上りリンク送信によって、異なる送信機またはUEの相対位相オフセットまたはシフトを推定することができる。NB−IOTキャリアでは、セクションE1において上記で説明した実行可能なソリューションを適用して、IOT装置とLTE UEとの間の相対位相オフセットまたはシフトを推定することができる。推定した相対オフセットを、たとえば、その位相オフセットを適応させる1つのUEにシグナリングする。図4および図5を参照すると、これを行うための対応する信号が、位相シフト補償信号として示されている。この信号の送信は、後述するように、DCIシグナリングまたはRRCメッセージングによって行うことができる。
【0049】
[E2.1]位相オフセットをシグナリングするための新規のDCIフォーマット
通常のLTEとは対照的に、新規のDCIフォーマットは、図4および図5の送信機12などの、対応するUEに対して異なる帯域の位相オフセットまたはシフトをシグナリングするために使用することができる。具体的には、DCIフォーマットは、位相情報がDCIメッセージで提供されるサブバンドごとに、位相オフセットまたはシフトをシグナリングすることができる。DCIメッセージの一例を下記の表3に示す。つまり、ここで図4および図5を考慮されたい。マルチユーザ重畳符号化と、対応する位相シフト推定および補償とを、特定の周波数範囲において実行することができ、表3で提案しているDCIフォーマットは、この周波数範囲内の各サブバンドに対する位相オフセットまたはシフトを個別にシグナリングする。サブバンドの数は、表3ではKとして示している。つまりKは、位相シフト推定および補償を伴うマルチユーザ重畳符号化の概念が実行される1つのリソースブロックに対応する、サブバンドの数を示している。DCIメッセージが属するリソースブロックRBは、LTE UEなどの送信機12が属する送信機のグループに対して、サブキャリアのスペクトルが割り当てられる単位に対応している。Kは、オーバレイされた非適応のUEがLTE UEであるか、またはNB−IOTであるかに依存する。オーバレイされた非適応のUEとは、たとえば位相シフト補償信号受信部と、位相シフト補償依存のマッパーとを備えていない場合の、図4および図5の送信機12である。オーバレイされたUEがNB−IOT装置である場合、サブバンドはIOTキャリアのリソースブロックRBの周波数帯域幅に対応し、したがってLTE UEの周波数帯域幅の6分の1に対応する。 DCIメッセージが、相対位相オフセット情報を有する位相情報ブロックフィールドを含むことが、ここで示唆されている。
【0050】
つまり、送信機12が、第1のOFDMシンボルサブキャリアの(MUST)バンドを介してMUSTの対象となるデータ信号を送信し、送信機12が、スペクトル的に配置された第2のOFDMシンボルサブキャリアを介してMUSTの対象となるデータ信号を送信すると仮定すると、ここで第1のOFDM信号は、第2のOFDM信号と比較してより短く(それでも、より頻繁に送信される)、かつサブキャリアのスペクトル密度がより高くなっている。送信機12は、送信機12からの、配置された対応する第2のOFDMシンボルサブキャリアとの重畳が想定される、スペクトル的に隣接する第1のOFDMシンボルサブキャリアの帯域に、位相シフト補償信号に従って位相シフトを補償したそれぞれのコンスタレーションを使用して、自身のデータをマッピングする。これに対して、送信機12は、位相シフト補償信号に従って、位相シフトなしでマッピングを実行する。ここで、位相シフト補償信号は、スペクトルサブバンドごとに1つの位相シフト値(表3の位相情報ブロックにおけるサイズPのK値)を含み、これに対して、MUST内で、送信機12の第1のOFDMシンボルが属するキャリアの物理リソースブロックが、送信機12の第2のOFDMシンボルが属するキャリアの物理リソースブロックによってさらに細分される。たとえば、送信機12の6つのサブバンド、すなわち6つの物理リソースブロック(PRB:physical resource block)は、MUSTバンドに属する各PRBにスペクトル的に適応し得る。
【0051】
[E2.1.1]同じUEにスケジュールされた隣接帯域におけるオーバーヘッドの低減
eNB、すなわち図4および図5の場合には基地局または受信機によるRBのスケジュール方法に応じて、隣接帯域におけるKを削減することができる。送信機12などの、オーバレイされた非適応のUEが、MUST UEによってオーバレイされる予定の隣接帯域にスケジュールされる場合、チャネル状態が適切であれば、シグナリングオーバーヘッドを低減することができる。
【0052】
[E.2.1.2]高速の位相適応および低速の位相適応によるオーバーヘッドの低減
DCIメッセージにおけるサブバンドごとの相対位相オフセット情報の粒度Pに関して、その一例を以下の表3で提示しているが、この粒度Pを、高速適応粒度と低速適応粒度とに分類することができる。低速適応の場合はより高い粒度となり、これを使用して、発生し得るすべての相対位相オフセットを記述することができる。高速適応の場合はより低い粒度となり、したがっオーバーヘッドが低減され、これを使用して、位相オフセットの限定された補正を記述することができる。
【0053】
つまり、位相シフト補償信号を、第1のタイプのメッセージおよび第2のタイプのメッセージ内で送信することができ、第1のタイプのメッセージは、第2のタイプのメッセージと比較して送信頻度がより少なく、かつ第1のタイプのメッセージにおける位相シフト補償信号は、第2のタイプのメッセージにおける位相シフト補償信号によって記述することのできないシグナリング位相オフセットを可能にしている。これはたとえば、第1のタイプのメッセージにおける記述可能な位相シフト範囲が、第2のタイプのメッセージにおける記述可能な位相シフト範囲と比較してより広くなっているためであり、その際、第1のタイプのメッセージの場合は、記述可能な位相シフトの数が、第2のタイプのメッセージと比較して同じであるか、あるいはより多くなっている。つまり、第2のメッセージと比較して、量子化ステップサイズが大きくなることが第1のタイプのメッセージにおける位相シフト補償信号の基盤となり得、また第1のタイプのメッセージにおける位相シフト補償信号のビット長は、第2のタイプのメッセージと比較すると長くなる可能性がある。
【0054】
[E2.1.3]位相情報ブロックのフォーマット
図3にさらに示している変形形態によれば、インジケータ、すなわち位相情報ブロックのフォーマットは、位相情報ブロックのフォーマットを記述することができる。低速および高速両方の場合に対して別々のDCIフォーマットを導入する代わりに、このインジケータを使用して、低速の位相適応DCIと高速の位相適応DCIとを区別することができる。このインジケータはさらに、E2.1.1に記載した、隣接帯域におけるオーバーヘッドを低減するのに使用できるパターンを記述することができる。
【0055】
換言すれば、位相シフト補償信号は、インジケータフィールドと位相シフトフィールドとを含むメッセージ内で送信することができ、インジケータフィールド内の値は、位相シフトフィールド内の値と、量子化、および/またはその値を増分補正もしくは更新、あるいはマッパー24によるマッピング時に直近で適用された位相シフトの相対補正として、またはそのままマッピングに使用される絶対位相シフトとして解釈するなどの、位相シフト補償に使用される位相シフト値との間のマッピングを変更する。
【0056】
[E2.1.4] 送信電力制御(TPC:Transmit Power Control)のためのさらなる粒度
以下の表3に例示しているDCIメッセージは、DCIメッセージのそれぞれの受信者によって使用される送信電力をシグナリングするビットの粒度を、レガシーTPCフィールドと比較してさらに高めることにより、上りリンク送信電力の微調整を確実に行うことができることを示している。したがって、たとえば、アグリゲートキャリアを介して基地局と通信する送信機または移動端末もしくはUEの場合、上記に概説したようなマルチユーザ重畳符号化が実行されるキャリアを制御するDCIメッセージが、アンカーキャリアを例とする他のキャリアを制御しているDCIメッセージと比較して、より高いビット粒度で送信電力を制御することになり得る。
【0057】
【0058】
[E.2.2]位相オフセットを通知するためのRRCシグナリング
マルチユーザ重畳符号化UEにおけるこの位相オフセットまたはシフトを構成するための、RRCシグナリングを供給してもよい。これは、RRC物理Configuration Dedicated(RRC PhysicalConfigDedicated)メッセージを使用して、実行することができる。例示的なシグナリング構造を図9および図10に示している。
【0059】
[E2.3] PDCCHにおけるHARQ ACK/NACKのような高速の位相適応シグナリング
高速の反復位相適応は、DCIメッセージ内でデルタを送信することによっても、物理ハイブリッド自動反復要求インジケータチャネル(PHICH:Physical Hybrid ACK/NACK Indicator Channel)同様の別個のチャネルを使用することによっても、物理下りリンク制御チャネル(PDCCH:Physical downlink Control Channel)を介して実行することができる。ここで、1または複数のビットが位相をシフトさせる方向または量を通知する。別の選択肢としては、たとえばPI制御器の形態など、シフトさせるにあたり、同じ方向が数回示される場合に、デルタを増加させることが挙げられる。
【0060】
例示的な実装例としては、マスター情報ブロック(MIB:Master Information Block)システム情報とすることができ、ここでは3ビットが物理位相インジケータチャネル(PPICH:Physical Phase indicator Channel)情報用に供給される。すなわち、標準または拡張PPICHを示すための1ビットと、PPICHのNg値を示すための2ビットとすることができる。
【0061】
[E.2.4]モデルベースの位相シグナリング
[E2.4.1]所定の位相オフセットを追跡するように、あるモデルを訓練することができる。使用するモデルおよびモデルパラメータは、eNB、すなわち受信機から送信機12などの各UEにシグナリングすることができる。たとえば、基地局で実行されている適切なモデルおよびアルゴリズムのセットを標準化することができる。
【0062】
[E2.4.2]時間および/または周波数における位相回転の予測を適用し、かつこれを使用して、予測アルゴリズムの識別子と共に信号化情報として適用された予測手法のための重み付け更新を行うことができる。次いで、この識別子をUEにおいて使用して、予測の信頼性を分類することができる。すなわち、これによって予想されるエラーを補償したり、あるいは送信前に使用すべき位相オフセットを事前調整したりすることができる。PPICH上の位相情報の位置は、MUSTリソース割り当てと、実行可能な別の巡回シフトとによって非明示的にシグナリングされる。
【0063】
[E3] 干渉を受けないRSの受信のための専用サブフレーム
DMRSおよびSRSを干渉を受けずに受信するために、図4および図5の基地局またはeNBまたは受信機は、OFDMシンボルを空にするようにいくつかのUEに指示することができ、これにより、図4および図5の送信機12などの1つのUEのみが、図11に示すものと同じ周波数−時間リソースで送信することになる。このメカニズムを使用して、周波数分割多重化(FDM:Frequency Division Multiplexing)および/または時分割多重化(TDM:Time Division Multiplexing)方式でDMRSおよびSRSを多重化することができる。DMRSまたはSRSがLTE UEに対して単一のOFDMシンボルを占有する一方で、NB−IOT ULキャリア内のDMRSシンボルは、後にLTEキャリア内の6つのOFDMシンボルに及ぶようになる。したがって、LTE UEは、図12に示すように6つのOFDMシンボルを空にしなければならない。
【0064】
[E3.1]サブフレームの可変ブランキングのためのDCIフォーマット
位相ブランキングパターンのインデックスを含むDCIフォーマットを、表4に例示的に示している。DMRSおよびSRSブランキングにおける例示的なブランキングパターンを図13に示している。
【0065】
【0066】
[E3.2]半永続ブランキングを設定するためのRRCシグナリング
DMRSまたは同様のものを含むRSは定期的に発生することが多いため、半永続ブランキング構成を使用して、制御オーバーヘッドを低減することができる。この目的のために、半永続ブランキングを構成するためのRRCシグナリングを図14に例示的に示している。ブランキングサブフレーム間隔UL(blankingSubframeIntervalUL)は、サブフレーム内の間隔を記述している。ブランキング・サブフレーム・パターン(blankingSubframePattern)は、ブランキングに使用すべきパターンを示している。
【0067】
ここでも、送信機12が、第1のOFDMシンボルサブキャリアの(MUST)バンドを介してMUSTの対象となるデータ信号を送信し、送信機12が、スペクトル的に配置された第2のOFDMシンボルサブキャリアを介してMUSTの対象となるデータ信号を送信すると仮定すると、第1のOFDM信号は、第2のOFDM信号と比較してより短く(それでも、より頻繁に送信される)、かつサブキャリアのスペクトル密度がより低くなっている。送信機12は、送信機12からの、配置された対応する第2のOFDMシンボルサブキャリアとの重畳が想定される、スペクトル的に隣接する第1のOFDMシンボルサブキャリアの帯域に、位相シフト補償信号に従って位相シフトを補償したそれぞれのコンスタレーションを使用して、自身のデータをマッピングする。これに対して、送信機12は、位相シフト補償信号に従って、位相シフトなしでマッピングを実行する。次いで、送信機12が、干渉を受けることなくチャネル推定および/または位相オフセット推定のために自身のRSを送信できるように、OFDM送信をブランキングするタイミングに関して送信機12に指示するブランキング信号を使用して、送信機12を受信機10によって制御することができる。送信機12の参照信号は、送信機12の参照信号よりも長くなる。換言すれば、受信機は、チャネル推定を行うために、送信機12によって送信されるチャネル推定参照信号の少なくともサブセットに干渉させないように、OFDM送信をブランキングするタイミングに関して送信機12に指示するブランキングスケジューリング信号を第1の送信機12に送信する。これに対して、送信機12は、自身のリソースを送信機12とコアロケーションしていることを認識さえしていない可能性がある。チャネル推定参照信号は、各送信機からの上りリンク送信を正しく受信するために、散在パイロットシンボルによるペイロード送信を伴うDMRS、および/または個々のチャネル状態を推定して上りリンクスケジューリングを決定するために、すべての送信機によって断続的に送信されるSRSを含み得る。次いで受信機は、送信機12によって送信される第2のチャネル推定参照信号に基づいて、チャネル推定を実行する。受信機10は、送信機12から送信される第1のチャネル推定参照信号でも同様に実行することになるが、この場合の参照信号は、送信機12の第2のチャネル推定参照信号よりも短いものとなっている。しかしながら、チャネル推定、すなわち送信機12のチャネルおよび送信機12のチャネルをそれぞれ推定するために、チャネル推定参照信号を使用するにあたり、これが送信機12および12からの同時送信であっても可能である。しかしながら、送信機12に自身の送信をブランキングするように指示する第2のチャネル推定参照信号のサブセットは、位相シフト推定を行うための位相シフト推定参照信号としても使用されている。たとえば、受信機10は、一方で送信機12がブランキングを実行する際に参照した送信機12からの上述のチャネル推定参照信号と、他方で、一例として以前に概説したように、送信機12のPRACHにおいて送信機12によって送信される位相シフト推定参照信号との評価に基づいて、位相シフトを決定している。当然のことながら、両方の送信機12および12は受信機10からのそれぞれのブランキング指示の受信者であり得、また位相シフト推定を行う際に、両方の送信機のチャネル推定参照信号が干渉を受けない状態で利用できるように、それぞれの他方の送信機によってチャネル推定参照信号が送信されている間に、当該送信をブランキングする。当然のことながら、送信機12および12が同じOFDMシンボル長およびサブキャリアのスペクトル密度で動作する場合には、同じ概念を使用してもよく、またこれを、より多くのMUST送信機に置き換えることができる。ブランキングスケジューリング信号を下りリンク制御情報(DCI)メッセージ内に含めるか、かつ/または無線リソース制御(RRC)メッセージを介してこれを送信してもよい。RRCメッセージを使用して、第1の送信機12aが別の何らかのメッセージによって解除されるまで、周期的にOFDM送信をブランキングする指示を受けるように、サブフレーム単位で間隔を構成することができる。
【0068】
[E4]マルチユーザBPSKコンスタレーションの重畳
図3に示すようにQAM信号を重畳すると、同じULリソースに2つのUEを割り当てることができ、たとえば、 2ビット/ UE /コンスタレーションの状態の16QAMコンスタレーションに2つのUEを設けることができる。[E4]の概念は、図15に示しているように、1ビット/ UE /コンスタレーションの状態の16QAMコンスタレーションにおいて4つのUEをスケジューリングするために、BPSKコンスタレーションを使用することにある。
【0069】
16QAMラスタへ4つのBPSKを重畳する際、[E2]における位相シフト補償に加えて、電力の適応とBPSK信号の回転とが必要となる。2つのUEは回転されず、電力ドメインにおいてのみ適応される。他の2つのUEは90°で回転している。既に上述したように、通常のUL電力制御を用いて電力割り当てを開始することができる。
BPSK信号の回転については、RRC物理チャネル再構成において特定のUEにシグナリングする必要がある。
【0070】
UEの数は、複数のBPSK信号の重畳によって受信機側でより多値数の高いコンスタレーション(16QAM以上)を使用することにより、増加させることができる(たとえば、256QAMにおいて8つのUE)。
【0071】
図4および図5を参照されたい。ここで、MUSTに関与しているデータ信号は、N>1のデータ信号、すなわち、これまでに図4および図5で述べているように2つ、またはそれより多くてもよい。目標比を、a、a<a、a<…<aである第1から第Nのデータ信号においてa:a:…:aとしていてもよい。第(2n+1)のデータ信号のBPSKコンスタレーションを、第(2(n+1))のデータ信号のデータ信号のBPSKコンスタレーションに対して−1<n<N/2で回転させる形態で、各データ信号を別々にBPSK変調している。受信機は、重畳をデマッピングするために、第Nから第1のデータ信号のBPSKコンスタレーションを順に1つずつ再帰的にコピーすることから生じる、コンポーネントコンスタレーションを使用する。
【0072】
図16は、システムであって、2つの基地局BS1およびBS2を備え、したがって、図4および図5の状況では受信機をそれぞれ形成し、かつUE1およびUE2の2つのUEを備え、すなわち図4および5の状況では送信機をそれぞれ形成しているシステムを示す。図16は、MUST UL送信を可能にするために上記で教示した概念を使用して、セル間干渉状況を改善してもよいことを示している。その他の場合で、UE1によるBS1へのUL送信に使用されるサブキャリアなどの特定のスペクトルリソースが、UE2などのBS2によってサポートされているUEに対してブロックまたは割り当てられないまま維持される状況では、基地局BS1およびBS2は、UE1およびUE2によってBS1およびBS2にUL送信がそれぞれ行われるように、これらにこうしたスペクトルリソースを割り当てることができる。すなわち図16では、UE1はBS1によってサポートされ、かつBS1に対してUL送信を行い、またUE2はBS2によってサポートされ、かつBS2に対してUL送信を行っている。UE1はBS1の近傍にあり、BS2から遠く離間しているので、UE2からBS2へのUL送信に干渉しないが、UE2はBS1およびBS2から等しく離間しているので、UE1からBS1へのUL送信に干渉することになる。ここで考察しているUL送信はMUST UL送信ではない。それでもなお、UE2が送信機12のように作用するか、あるいはそのように解釈されると仮定している。つまり、UE2が、位相補正に応じて受信部22と上記で教示したマッパー機能とを備えていることになる。UE2の場合、これは送信機12の場合と同様に任意選択できるが、PERSEを送信する。基地局BS1は専用のデマッピング機能を有するが、UE2から送信されるデータ信号に関する情報データの取得を試みようとしない。ただ単に、UE1からのデータ信号によって伝達される情報データをUE2のデータ信号によって伝達される情報データから分離するためにのみ、MUSTを使用している。その他の場合は、BS1は図4および図5の受信機10の構造に対応している。BS2はMUSTデマッピング機能を有している必要はないが、これを有していてもよい。しかしながら、BS2は、上記に概説したものに対応するUE2への位相シフト補償信号をUE2に転送するために、以下に概説している方法でBS1と通信してもよい。これに関する詳細、すなわち上述したような、発生し得る位相シフト補償信号に関する詳細を、ここでも適用することができる。
【0073】
図4および図5に示した用語を使用して、受信機BS1は、サポートしている送信機UE1から所望のデータ信号を受信している。受信機BS1は、受信機BS1がUE1からの所望のデータ信号と、別の受信機BS2によってサポートされている送信機UE2から、前記UE1からの所望のデータ信号で重畳する方法で送信される干渉データ信号とを受信する、チャネル間の位相シフトを推定している。これにより、BS1はチャネル間の位相シフト情報を取得する。上述したPSERS送信などをスケジューリングするための概念を使用してもよい。BS1は、別の送信機UE2に位相シフト補償信号が転送されるように、これを別の基地局BS2に送信してもよく、この位相シフト補償信号は位相シフト情報によって異なる。この信号に関する詳細すべてを、ここでも使用することができる。送信機UE2は、上記に概説した方法で位相シフト補償信号を処理するが、別の目的も有する。つまり送信機UE2は、BS1およびUE1間の UL通信に関して干渉データ信号上にマッピングを行うために、使用するコンスタレーションを事前に位相シフトする。BS2はMUSTデマッピングの実行を試みようとしないため、位相シフト補償をあまり重要視していない。しかしながら、BS1は、位相シフト補償によってUE1から送信される所望のデータ信号に関する情報データを取得するために、ここでUE1およびUE2からの所望のデータ信号と干渉データ信号とを重畳したものに、マルチユーザ重畳復号化を使用してデマッピングを行うことにより、所望のデータ信号をデマッピングすることができる。付加的にまたは代替的に、位相シフト補償をUE1において行っている。
【0074】
上記で提示したように、上述した概念をDL(下りリンク)MUSTまたは下りリンク干渉制御にも適用することができる。上記の説明がどの程度容易に下りリンク状況に置き換えることができるかについて示すために、以下の説明では、前述の説明を図17bおよび17cに図示したシナリオにマッピングしている。図4に注意を向け、送信機12aから12cを基地局に置き換え、たとえば12aは図17bのBS1であり、かつ12bはBS2であるとし、また受信機10を移動端末またはユーザエンティティUEに置き換えて解釈されたい。つまり、マルチユーザ重畳符号化を使用して送信機12および12からデータ信号を受信させるために、受信機10を設けており、またこれに対して、各データ信号を互いに重畳する方法で、これらを受信する受信機10に対して送信させるために、送信機12および12を設けていることになる。受信機UEはここでは、BS1およびBS2からキャリアをアグリゲートするために、キャリアアグリゲーションモードにあってもよい。重畳チャネル16aおよび16bは、これらのアグリゲートキャリアの一部であってもよい。送信機BS1および送信機BS2の位相シフト推定参照信号送信部14は、受信機UEに位相シフト推定参照信号を送信している。この位相シフト推定参照信号を使用して、受信機UEの位相シフト推定部18は、対応する送信機BS1およびBS2がマルチユーザ重畳符号化に従って自身のデータ信号を送信する、チャネル16aと16bとの間の位相シフトを推定する。UEは、BS1またはBS2あるいはその両方に対して、自由に位相シフト補償信号を送信することができる。なお、位相シフト推定参照信号を競合送信または同時送信させることなく、これらが受信機UEにおいて順次かつ個別に受信されるように、BS1およびBS2が、基地局間インターフェース(X2インターフェース)などの自身のネットワーク相互接続を介して各自PSERS送信を制御するように、これらを構成してもよく、またBS1およびBS2が、UEから受信した受信補償信号について互いに通知し合ってもよい。つまり、受信機UEの位相シフト補償信号送信部20は、位相シフト推定部18から位相シフト推定によって取得したチャネル間の位相シフト情報を導出し、かつ複数の送信機BS1およびBS2の少なくとも一方、すなわち各BS1および/またはBS2内の位相シフト補償信号受信部22に対して、位相シフト補償信号を送信している。位相シフト補償信号を、たとえば上りリンク制御情報(UCI:Uplink Control Information)メッセージおよび/または無線リソース制御(RRC)上りリンクメッセージ内に含めてもよい。送信機BS1内で、マッパー24は、位相シフト補償信号に従って位相シフトを補償した特定のコンスタレーションを使用して送信すべきデータをマッピングし、これにより、BS2から送信される対応するデータ信号によって重畳する方法で、チャネル16aを介して受信機UEに最終的に送信されるデータ信号を取得している。BS1のデータマッパー24は、たとえばQPSKまたはQAMなどの特定のチャネル状態に基づいて選択される特定のコンスタレーションに対して、送信すべきデータ26をマッピングしてもよく、またデータマッパー24は、自身のチャネル16aと、マルチユーザ重畳のパートナーであるBS2のチャネル16bとの間の位相シフトに配慮して、自身のコンスタレーションを回転させている。次いで、このようにして取得したデータ信号28を使用して、たとえば送信機BS1によって受信機UEに最終的に送信されるOFDMもしくはSC−FDMまたはOFDMAもしくはSC−FDMA信号の特定のOFDMサブキャリアを形成し、その結果、言及したサブキャリアが、送信機BS2の対応するマッパーがそれ自身のデータをマッピングするサブキャリアと一致するようにしている。上述したように、受信機UE内でデマッパー30は、重畳データ信号、すなわち32で示している、対応するOFDMサブキャリアにデータ信号を重畳したものを受信し、これは複素平面内の特定の点を指しており、またデマッピングを行うことにより、各データ信号、すなわち送信機BS1から送信されるデータ信号28と、送信機BS2から送信される対応するデータ信号とに対する情報データを取得している。上述したように、受信機UEは、電力比情報を取得するために、複数の送信機間の電力比を推定するように構成された電力比推定部36と、電力比情報によって異なる電力比補償信号を、送信機BS1およびBS2の少なくとも一方に送信する送信部38とをさらに備えていてもよく、この信号は、対応する電力比補償信号受信部40によって受信され、これにより、BS1などの送信機は、電力比補償信号に応じて、データ信号28を送信する際の電力を設定してもよい。同様に、図16に関連して上述した詳細を、セル間DL干渉状況を改善するために、図17cのDL状況に対して容易にマッピングすることができる。UE2とUE1とが互いの近傍に配置され、UE1がBS1から同じ物理リソース上で受信する信号にピギーパックされたBS2からのDL信号を受信するために、UE2がMUSTモードにあり、ここでUE1は、この状況に対して認識さえしていなくてもよいと仮定する。UE1もUE1もキャリアアグリゲーションモードにはない可能性がある。BS2は送信機12のように動作している。つまり、BS2が送信部14によってPSERSを送信し、かつ位相補正に応じて受信部22と上記で教示したマッパー機能とを備えていることになる。BS1は、たとえばただ単にPSERSを送信している可能性があるが、受信機と専用のマッパー機能とを有していなくてもよい。UE2は専用のデマッピング機能を有するが、BS1から送信されるデータ信号に関する情報データの取得を試みようとしない。ただ単に、BS2からのデータ信号によって伝達される情報データをBS1のデータ信号によって伝達される情報データから分離するためにのみ、MUSTを使用している。その他の場合は、UE2は図4および図5の受信機10の構造に対応している。UE1はMUSTデマッピング機能を有している必要はないが、これを有していてもよい。したがって、UE2は、BS1からのものとBS2からの別のものとからなる、2つのPSERSを受信している。UE2はBS2によってサポートされているため、BS2に位相シフト補償信号をシグナリングしてもよい。BS2は、データマッピングにおける位相シフト補償を制御するために、UE2から受信する位相シフト補償信号をBS1に転送するか、かつ/または自身でデータマッピングにおける位相シフト補償を制御してもよい。電力制御に関しても、同様の事項を実行してもよい。X2インターフェースなどの任意のネットワーク相互接続を、BS1とBS2との間の信号転送または情報交換のために使用してもよい。
【0075】
いくつかの態様を装置に関連して記載したが、これらの態様が対応する方法に関する記載をも表していることは明らかであり、ここではブロックまたは装置は、方法ステップもしくは方法ステップの特徴に対応している。同様に、方法ステップに関連して記載している態様は、対応する装置において対応しているブロックまたは項目または特徴に関する記載をも表している。方法ステップのいくつかまたはすべてを、たとえばマイクロプロセッサ、プログラム可能なコンピュータまたは電子回路のようなハードウェア装置によって(またはこれらを使用して)実行してもよい。いくつかの実施形態では、最も重要な方法ステップの1または複数を、かかる装置によって実行してもよい。
【0076】
上述の関与している信号を、デジタル記憶媒体上に格納することができ、あるいはインターネットなどの無線送信媒体または有線送信媒体上でこれらを送信することができる。
【0077】
特定の実装要件に応じて、本発明の実施形態をハードウェアまたはソフトウェアに実装することができる。この実装を、たとえばフロッピーディスク、DVD、BluーRay、CD、ROM、PROM、EPROM、EEPROMまたはFLASHメモリなどの、電子的に読み取り可能な制御信号を格納しているデジタル記憶媒体を使用して行うことができ、これらは、それぞれの方法が実行されるように、プログラム可能なコンピュータシステムと協働する(または協働することができる)。したがって、デジタル記憶媒体はコンピュータ可読であってもよい。
【0078】
本発明によるいくつかの実施形態は、電子的に読取り可能な制御信号を有するデータキャリアを備え、これらは本明細書に記載の方法のうちの1つが実行されるように、プログラム可能なコンピュータシステムと協働することができる。
【0079】
一般に、本発明の実施形態を、プログラムコードを有するコンピュータプログラム製品として実装することができ、このプログラムコードは、コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で実行されるときに、本方法のうちの1つを実行するように動作可能である。このプログラムコードは、たとえば機械可読キャリアに格納することができる。
【0080】
他の実施形態は、機械可読キャリアに格納された、本明細書に記載の方法のうちの1つを実行するためのコンピュータプログラムを備える。
【0081】
換言すれば、本発明の方法の一実施形態は、したがってコンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるときに、本明細書に記載の方法のうちの1つを実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムである。
【0082】
したがって、本発明の方法の別の実施形態は、本明細書に記載の方法のうちの1つを実行するためのコンピュータプログラムを格納した、データキャリア(またはデジタル記憶媒体、もしくはコンピュータ可読媒体)である。データキャリア、デジタル記憶媒体、または事前記録媒体は、通常有形かつ/または非一時的である。
【0083】
したがって、本発明の方法の別の実施形態は、本明細書に記載の方法のうちの1つを実行するためのコンピュータプログラムを表す、データストリームまたは信号シーケンスである。データストリームまたは信号シーケンスが、たとえばインターネットなどのデータ通信接続を介して転送されるように、これを構成してもよい。
【0084】
別の実施形態は、本明細書に記載の方法のうちの1つを実行するように構成されているか、または適合されている、たとえばコンピュータまたはプログラマブル・ロジック・デバイスなどの処理手段を備える。
【0085】
別の実施形態は、本明細書に記載の方法のうちの1つを実行するためのコンピュータプログラムをインストールしたコンピュータを備える。
【0086】
本発明の別の実施形態は、本明細書に記載の方法のうちの1つを実行するためのコンピュータプログラムを受信機に転送(たとえば、電子的または光学的に)するように構成された、装置またはシステムを備える。受信機は、たとえばコンピュータ、モバイル機器、または記憶装置などであってもよい。本装置またはシステムは、たとえば、コンピュータプログラムを受信機に転送するためのファイルサーバを備えていてもよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、プログラマブル・ロジック・デバイス(たとえばフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)を使用して、本明細書に記載の方法の機能の一部またはすべてを実行してもよい。いくつかの実施形態では、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイは、本明細書に記載の方法のうちの1つを実行するためにマイクロプロセッサと協働してもよい。これらの方法を通常、任意のハードウェア装置によって実行することが好ましい。
【0088】
本明細書に記載の装置を、ハードウェア装置を使用して、またはコンピュータを使用して、あるいはハードウェア装置とコンピュータとの組み合わせを使用して実装してもよい。
【0089】
本明細書に記載の装置、または本明細書に記載の装置の任意の構成要素を、少なくとも部分的にハードウェアおよび/またはソフトウェアに実装してもよい。
【0090】
本明細書に記載の方法を、ハードウェア装置を使用して、またはコンピュータを使用して、あるいはハードウェア装置とコンピュータとの組み合わせを使用してもよい。
【0091】
本明細書に記載の方法、または本明細書に記載の装置の任意の構成要素を、ハードウェアおよび/またはソフトウェアによって少なくとも部分的に実行してもよい。
【0092】
上述の実施形態は、本発明の原理を単に例示しているものに過ぎない。本明細書に記載の構成および詳細に関する修正および変形は、他の当業者にとって明らかであると理解するものとする。したがって、後続の特許請求の範囲によってのみ限定され、本明細書の実施形態に関する記載および説明によって提示している具体的な詳細によっては限定されないことを意図している。
【0093】

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17a
図17b
図17c