(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記技術では、R信号増幅手段とGB信号増幅手段におけるゲインの選択は、予め設定されているトーンカーブを選択することにより行われる。すなわち、上記技術は、RGBの色信号の成す色空間において、全体として赤味の強い生体組織の像の中で、血管などの色味に特徴のある部分の色信号、例えばG信号やB信号と、それ以外の色信号、例えばR信号について別々にトーンカーブを設定し、強調処理したい特徴部分の色信号の値間の差を拡大することで画像の強調処理を行う。
しかし、この強調処理では、色信号の値が所定の範囲内にある部分では、色信号の値は値が大きいほど強調のための値の増大量を大きくして値間の格差を増大させる強調を行うことができるが、色信号の値が所定の範囲を外れた部分では、色信号の値間の差を圧縮するので、この部分の像はつぶれて表示画像上で識別不能になり易い。
【0007】
また、上記トーンカーブを用いた強調処理では、色信号の階調レベルを、ルックアップテーブルを使用して階調変換し、階調変換後の階調レベルを出力する。このため、複数のトーンカーブを用いるには、複数のルックアップテーブルをRGBの3色の色信号毎に用意しなければならない。しかも、上記技術では、ゲインは、観察対象となる部位に基づいて選択されるので、部位毎に、ルックアップテーブルを用意しなければならない。このため、画像処理を行うプロセッサは、ルックアップテーブルを記憶保持する多量のメモリを必要とするため、簡素な装置構成を実現できない。
特に、画像中に、色成分が他の部分と異なる特徴部分の像はあるが、暗い部分にあるために識別がしにくい場合、この特徴部分を識別可能にする一方、他の部分の階調数が圧縮されて識別不能になることを抑制できるような強調処理をすること、すなわち、1つの画像において、画像中の色成分に特徴のある特徴部分と特徴部分以外の部分の強調処理の程度を変えることが好ましい。
【0008】
そこで、本発明は、複数のルックアップテーブルを用いることなく、画像中の色成分に特徴がある特徴部分と特徴部分以外の部分の強調処理の程度を変えることができる電子内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、電子内視鏡システムである。当該電子内視鏡システムは、
生体組織を撮像するように構成された撮像素子を備える電子内視鏡と、
撮像した前記生体組織の画像を画像処理するように構成されたプロセッサと、
画像処理した前記画像を表示するように構成されたディスプレイと、を備え、
前記プロセッサは、前記画像の各画素の複数の色信号のうちの2つの色信号の値の基準値からの差分同士の比率を特徴量として算出するように構成された特徴量算出部と、前記画像を強調するために、算出した前記比率に基づいて前記2つの色信号の少なくとも一方の値の増減の程度を定めることにより、前記画像の強調処理を行うように構成された画像強調処理部と、
を備える。
前記2つの色信号は、第1の色信号と第2の色信号であり、
前記比率は、前記第1の色信号の値の、前記第1の色信号に対応する前記基準値からの第1の差分に対する、前記第2の色信号の値の、前記第2の色信号に対応する前記基準値からの第2の差分の比率であり、
前記強調処理は、前記画像のいずれの画素についても前記比率を増大する処理であり、
前記画像強調処理部は、前記比率が大きいほど、前記第2の色信号の値の増加量を大きくすること、及び、前記第1の色信号の値の減少量を大きくすること、の少なくともいずれか一方を行うことにより、前記比率を増大するように構成され、
前記基準値は、前記第1の色信号のための第1基準値と、前記第2の色信号のための第2基準値を含み、
前記特徴量算出部は、前記基準値を変更するとき、前記第1基準値と前記第2基準値の変化量が、互いに異なる量になるように設定するように構成される
。
【0011】
本発明の一態様も、電子内視鏡システムである。当該電子内視鏡システムは、
生体組織を撮像するように構成された撮像素子を備える電子内視鏡と、
撮像した前記生体組織の画像を画像処理するように構成されたプロセッサと、
画像処理した前記画像を表示するように構成されたディスプレイと、を備え、
前記プロセッサは、前記画像の各画素の複数の色信号のうちの2つの色信号の値の基準値からの差分同士の比率を特徴量として算出するように構成された特徴量算出部と、前記画像を強調するために、算出した前記比率に基づいて前記2つの色信号の少なくとも一方の値の増減の程度を定めることにより、前記画像の強調処理を行うように構成された画像強調処理部と、
を備える。
前記2つの色信号は、第1の色信号と第2の色信号であり、
前記比率は、前記第1の色信号の値の、前記第1の色信号に対応する前記基準値からの第1の差分に対する、前記第2の色信号の値の、前記第2の色信号に対応する前記基準値からの第2の差分の比率であり、
前記画像強調処理部は、前記比率が大きいほど、前記第2の色信号の値の増加量を大きくすること、及び、前記第1の色信号の値の減少量を大きくすること、の少なくともいずれか一方を行うように構成され、
前記基準値は、前記第1の色信号のための第1基準値と、前記第2の色信号のための第2基準値を含み、前記第1基準値と前記第2基準値のそれぞれは、変更可能な値である。
【0012】
前記特徴量算出部は、前記基準値を変更するとき、前記第1基準値と前記第2基準値の変化量が、互いに異なる量になるように設定するように構成される、ことが好ましい。
【0013】
本発明の他の一態様も、電子内視鏡システムである。当該電子内視鏡システムは、
生体組織を撮像するように構成された撮像素子を備える電子内視鏡と、
撮像した前記生体組織の画像を画像処理するように構成されたプロセッサと、
画像処理した前記画像を表示するように構成されたディスプレイと、を備え、
前記プロセッサは、前記画像の各画素の複数の色信号のうちの2つの色信号の値の基準値からの差分同士の比率を特徴量として算出するように構成された特徴量算出部と、前記画像を強調するために、算出した前記比率に基づいて前記2つの色信号の少なくとも一方の値の増減の程度を定めることにより、前記画像の強調処理を行うように構成された画像強調処理部と、
を備え、
前記2つの色信号は、第1の色信号と第2の色信号であり、
前記比率は、前記第1の色信号の値の、前記第1の色信号に対応する前記基準値からの第1の差分に対する、前記第2の色信号の値の、前記第2の色信号に対応する前記基準値からの第2の差分の比率であり、
前記強調処理は、前記画像のいずれの画素についても前記比率を増大する処理であり、
前記画像強調処理部は、前記比率が大きいほど、前記第2の色信号の値の増加量を大きくすること、及び、前記第1の色信号の値の減少量を大きくすること、の少なくともいずれか一方を行うことにより、前記比率を増大するように構成され、
前記特徴量算出部は、前記基準値を、前記画像全体の前記2つの色信号の分布、あるいは、前記画像全体の輝度情報に応じて設定するように構成されている
。
【0014】
前記画像は、生体組織の動画の1つの画像であり、
前記特徴量算出部及び前記画像強調処理部は、前記動画のそれぞれの画像を順次処理するように構成され、
前記基準値の設定のために用いる前記輝度情報は、前記動画中の、時系列で前記強調処理を行う画像の1つ前の画像全体の輝度情報である、ことが好ましい。
【0015】
本発明の他の一態様も、電子内視鏡システムである。当該電子内視鏡システムは、
生体組織を撮像するように構成された撮像素子を備える電子内視鏡と、
撮像した前記生体組織の画像を画像処理するように構成されたプロセッサと、
画像処理した前記画像を表示するように構成されたディスプレイと、を備え、
前記プロセッサは、前記画像の各画素の複数の色信号のうちの2つの色信号の値の基準値からの差分同士の比率を特徴量として算出するように構成された特徴量算出部と、前記画像を強調するために、算出した前記比率に基づいて前記2つの色信号の少なくとも一方の値の増減の程度を定めることにより、前記画像の強調処理を行うように構成された画像強調処理部と、
を備える。
前記2つの色信号は、第1の色信号と第2の色信号であり、
前記比率は、前記第1の色信号の値の、前記第1の色信号に対応する前記基準値からの第1の差分に対する、前記第2の色信号の値の、前記第2の色信号に対応する前記基準値からの第2の差分の比率であり、
前記強調処理は、前記画像のいずれの画素についても前記比率を増大する処理であり、
前記画像強調処理部は、前記比率が大きいほど、前記第2の色信号の値の増加量を大きくすること、及び、前記第1の色信号の値の減少量を大きくすること、の少なくともいずれか一方を行うことにより、前記比率を増大するように構成され、
前記特徴量算出部は、前記基準値を、前記ディスプレイに表示された画像に対してオペレータから受けた入力値に設定するように構成され、前記画像強調処理部は、設定した前記基準値を用いて前記画像の強調処理を行うように構成されている
。
【0016】
前記色信号は、RGBの色信号であり、
前記比率は、R信号の値の前記R信号に対応する前記基準値からの差分に対する、G信号の値の前記G信号に対応する前記基準値からの差分の比率、及び、R信号の値の、前記R信号に対応する前記基準値からの差分に対する、B信号の値の前記B信号に対応する前記基準値からの差分の比率、の一方を含む、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
上述の電子内視鏡システムによれば、複数のルックアップテーブルを用いることなく、画像中の色成分に特徴がある特徴部分と特徴部分以外の部分の強調処理の程度を変えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(電子内視鏡システムの構成)
以下、本実施形態の電子内視鏡システムについて詳細に説明する。
図1は、本実施形態の電子内視鏡システム1の外観斜視図であり、
図2は、電子内視鏡システム1の主な構成を示すブロック構成図である。
電子内視鏡システム1は、プロセッサ2、光源装置3、電子内視鏡4、ディスプレイ5、を主に備える。光源装置3、電子内視鏡4、及びディスプレイ5は、それぞれプロセッサ2に接続される。なお、光源装置3とプロセッサ2とは別体で構成されているが、光源装置3がプロセッサ2内に設けられて構成されてもよい。
【0020】
光源装置3は、白色光や複数の波長帯域の光を射出する。光源装置3は、例えば、LED(Light Emitting Diode)光源、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ等の高輝度ランプ等の白色光源を有する。また、光源装置3は、複数の光学フィルタを配した回転板を回転させて、白色光源からの出射光の光路上を通過する光学フィルタを切り替えることにより、光学フィルタのそれぞれでフィルタリングされた光を順次出力する構成を備えてもよい。この場合、光源装置3は、例えば、図示されないが、ランプ電源ドライバ、光源、集光レンズ、フィルターターレット、モータ、及びモータドライバ、を備える。また、光源装置3は、種々の波長帯域の光を発する発光ダイオードあるいはレーザダイオード等の半導体発光素子を複数備えてもよい。
【0021】
電子内視鏡4の先端には、
図1に示すように、可撓性を有し、人体内部に挿入するための挿入部42が設けられている。挿入部42の先端近傍には、挿入部42の基端に連結された手元操作部44からの遠隔操作に応じて屈曲する屈曲部45が設けられている。屈曲部45の屈曲機構は、一般的な内視鏡に組み込まれている周知の機構である。屈曲構造は、手元操作部44に設けられた湾曲操作ノブの回転操作に連動した操作ワイヤの牽引によって屈曲部45を屈曲させるものである。屈曲部45の先端には、撮像素子46A(
図2参照)を備えた先端部46が連結している。湾曲操作ノブの回転操作による屈曲部45の屈曲動作に応じて先端部46の向きが変わることにより、電子内視鏡4による撮影領域が移動する。
【0022】
電子内視鏡4は、コネクタ部49から先端部46にかけての略全長に渡って配置されたライトガイド48(
図2参照)を備えている。ライトガイド48は、光ファイバ束であり、光源装置3から供給された照射光を電子内視鏡4の先端部46まで導光する。
電子内視鏡4の先端部46は、図示されないが、ライトガイド48の先端の前方に設けられた配光レンズ、生体組織の像を結像する対物レンズ46B(
図2参照)、結像した像を受光する撮像素子46A(
図2参照)、及び撮像素子46Aから出力した画像信号を増幅する図示されないアンプ等を備える。
上記配光レンズは、ライトガイド48の先端面と対向して配置され、ライトガイド48の先端面から射出される照射光を発散させて、被写体である生体組織を照明する。
対物レンズ46Bは、生体組織からの散乱光あるいは反射光を集光して、撮像素子46Aの受光面上で被写体の像を結像させる。
撮像素子46Aは、CCD撮像素子、あるいはCMOS撮像素子が好適に用いられる。
撮像素子46Aから出力された撮像信号は図示されないアンプによって増幅された後、コネクタ部49へ順次伝送される。
【0023】
コネクタ部49は、プロセッサ2と接続されている。コネクタ部49は、以下の機能を有する回路を備えてもよい。例えば、コネクタ部49は、撮像素子46Aに駆動信号を供給して撮像素子46Aを駆動させるとともに、撮像素子46Aから出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換して、プロセッサ2に撮像画像の信号として送信する回路を備えてもよい。また、回路は、コネクタ部49に設けられた図示されないメモリにアクセスして電子内視鏡4の固有情報を読み出し、プロセッサ2に出力する機能を備えてもよい。
【0024】
プロセッサ2は、電子内視鏡の撮像素子46Aが生体組織を撮像することで得られる撮像画像の信号をさらに信号処理してディスプレイ5に供給する装置である。
プロセッサ2には、電子内視鏡4と接続するための図示されないコネクタ部が設けられている。このコネクタ部とコネクタ部49が機械的に接続されることにより、電子内視鏡4とプロセッサ2とが電気的に接続され、光源装置3と電子内視鏡4が光学的に接続される。
【0025】
プロセッサ2は、画像入力処理部21、画像メモリ22、結果表示部23、システムコントローラ24、及び演算部25を備える。
図2中では、プロセッサ2が設けられる筐体内に、交換可能な光源装置3が設けられる構成が示されている。
【0026】
システムコントローラ24は、画像入力処理部21、画像メモリ22、結果表示部23、及び演算部25の動作を管理、制御するとともに、光源装置3、電子内視鏡4の動作を制御する部分である。プロセッサ2は、画像メモリ22の他に、情報やデータを記憶する図示されないメモリを備える。
【0027】
画像入力処理部21は、生体組織の画像の信号に対して色補正、マトリックス演算等の所定の信号処理を施す部分である。信号処理された映像信号は、1画素毎に撮像画像としてフレームメモリである画像メモリ22に送られ一旦記憶される。
さらに、画像メモリ22に記憶された画像は、強調処理のために呼び出され、システムコントローラ24の指示により、システムコントローラ24を介して演算部25に送られる。演算部25における処理については後述する。
演算部25で処理された画像は、再度画像メモリ22に送られて記憶される。
【0028】
結果表示部23は、画像メモリ22に記憶された画像を呼び出して、画像の信号を信号処理(γ補正等)してモニタ表示用の画像信号を生成し、生成された画像信号を所定のビデオフォーマット信号に変換する。変換されたビデオフォーマット信号は、ディスプレイ5に出力される。これにより、生体組織の画像がディスプレイ5の表示画面に動画として表示される。
【0029】
このようなプロセッサ2において、演算部25は、生体組織の画像に対して、画像の強調処理を行うように構成される。演算部25は、
図2に示すように、特徴量算出部25A及び画像強調処理部25Bを備える。
特徴量算出部25Aは、画像の複数の色信号のうちの2つの色信号の値の基準値からの差分同士の比率を算出するように構成される。
【0030】
具体的に説明すると、特徴量算出部25Aは、画像を構成する各画素のRGB信号のうち、2つの信号、例えばR信号とG信号の値の基準値からの差分同士の比率を算出する。特徴量算出部25Aは、2つの信号としてR信号とB信号を用いて、R信号とB信号の値の基準値からの差分同士の比率を算出してもよい。
図3(a),(b)は、本実施形態の電子内視鏡システム1のプロセッサ2で行う強調処理の一例を説明する図である。
図3(a)は、強調処理に用いる比率を説明している。
図3(a)に示す例では、特徴量算出部25Aは、R信号及びG信号で形成される色空間において、色空間の原点、すなわち、R信号の値=G信号の値=0を基準値Svとして、基準値SvからのR信号の値の差分と基準値SvからのG信号の値の差分の比率を算出する。
図3(a),(b)中の“●”の分布は、画像中の画素におけるR信号とG信号の分布を示す。
図3(a)に示す画素S1の比率は小さく、画素S2の比率は大きい。生体組織の画像では、赤味が強く、基本的にR信号の値が大きい画素が多数を占めるが、生体組織中の病変部や血管等の強調したい部分では、G成分やB成分はそれ以外の部分に比べて相対的に少ない。このため、特徴量算出部25Aは、上記比率の大きい画素のG信号やB信号の値の増大量を大きくし、上記比率の小さい画素のG信号やB信号の値の増大量を小さくすることにより、G信号やB信号の値が異なる画素間で、その値の差が広がるように調整する。これにより、G成分やB成分において階調数が少なく画像が潰れていた部分の像を識別可能に強調させることができる。
このような強調処理を行うために、特徴量算出部25Aは、2つの色信号の値の基準値Svからの差分同士の比率を算出する。この比率が、生体組織の特徴量の指標といえる。比率が異なれば色信号に対応した色成分の特徴が異なるといえるので、生体組織中の病変部や血管等の強調したい部分のような小さな比率を有する画素はそれ以外の画素と区別することが可能な特徴部分といえる。したがって、特徴部分が識別可能な像を作成するには、この特徴部分をそれ以外の部分に対して目立つように強調することが好ましい。生体組織中の病変部や血管等の、G成分やB成分がその他の部分に比べて相対的に少ない部分は、それ以外の部分に比べてG信号やB信号の値の増大量を小さくすることにより、画像において、それ以外の部分に対して目立ち易くなる。このようにして生体組織中の病変部や血管等の特徴部分を識別可能に強調することができる。
【0031】
画像強調処理部25Bは、特徴量算出部25Aが算出した比率に基づいて、2つの色信号の少なくとも一方の値の増減の程度を定めることにより、画像の強調処理を行う。
図3(b)に示す例では、算出した上記比率が大きいほど増加量が大きくなるように、G信号を調整する。どのように信号の値を増加させるかについては、特に限定されない。
一実施形態によれば、上記比率に一定の係数を掛け算した結果をG信号の値に加算して調整後の値とする。一実施形態によれば、上記比率に一定の係数を掛け算した結果をG信号の値に掛け算して調整後の値とする。一実施形態によれば、上記比率に一定の係数を掛け算した結果を指数とした値、例えば、指数をxとし、aを底としたときの値a
xをG信号の値に掛け算して調整後の値とする。一実施形態によれば、上記比率が大きくなるほど大きな出力値を返す関数式を用いて出力値を算出し、この出力値をG信号の値に掛け算した値を、調整後の信号の値とする。
【0032】
図3(b)に示す例では、比率の大きい画素ほど、画像強調処理部25Bは、色信号の値を大きく調整することになる。このため、G信号の値が小さくても、G信号の値がR信号の値に対して相対的に大きい部分(比率の大きな部分)は、値が大きくなるように強調される。
従来、中間階調レベルを一律強調する場合が多いので、画像中に、中間階調レベルより暗い部分に強調したい部分があっても、暗い部分の、特定の色の強調処理は難しかった。しかし、本実施形態では、暗い部分であっても、比率に基づいて強調の程度が設定されるので、暗い部分でも強調処理を行うことができる。
【0033】
上記比率は、各画素の2つの色信号のうち第1の色信号の値の、第1の色信号に対応する基準値Svからの第1の差分に対する、第2の色信号の値の、第2の色信号に対応する基準値Svからの第2の差分の比率であって、この比率が大きいほど、画像強調処理部25Bは、第2の色信号の値の増加量を大きくする。しかし、一実施形態によれば、画像強調処理部25Bは、第2の色信号の値を維持しつつ、あるいは第2の色信号の値の増加量を大きくしつつ、第1の色信号の値の減少量を大きくすることも好ましい。このような処理により、処理された部分では、第1の色信号の値の差が広がり、画素の色味の変化が強調されるので、この部分の強調が実現できる。
【0034】
なお、上述したように、生体組織中の病変部や血管等の強調したい部分は、G成分やB成分がその他の部分に比べて少ないので、R信号に対して相対的にG信号やB信号の大きい値と小さい値の差が広がるように調整することにより、G成分あるいはB成分において階調数が少なく画像中で潰れていた部分の像を識別可能に強調させることができる。したがって、生体組織の画像において、色信号がRGBの色信号である場合、強調処理に用いる比率は、RGBの色信号のうち、R信号の値のR信号に対応する基準値Svからの差分に対する、G信号の値のG信号に対応する基準値Svからの差分の比率、及び、R信号の値のR信号に対応する基準値Svからの差分に対する、B信号の値のB信号に対応する基準値Svからの差分の比率、の少なくとも一方を含む、ことが好ましい。
【0035】
また、一実施形態によれば、比率の算出に用いる基準値Svは、第1の色信号のための第1基準値と、第2の色信号のための第2基準値を含む。このとき、第1基準値と第2基準値のそれぞれは、変更可能な値であることが好ましい。すなわち、
図3(a)に示す例では、2つの色信号(R信号及びG信号)の色空間における原点の値(R信号の値=G信号の値=0)をそれぞれ基準値Svとするが、特徴量算出部25Aは、
図4に示すように、第1の色信号に対応する第1基準値及び第2の色信号に対応する第2基準値はそれぞれ変更可能な値であることが好ましい。例えば、色空間上の画素の分布から遠ざかるようにあるいは近づくように原点Oから移動した点を、基準点Spとし、この基準点Spの第1の色信号の座標位置及び第2の色信号の座標位置を第1基準値及び第2基準値とする。基準点Spが、原点Oに対して、画素の分布から遠ざかるように移動した位置にある場合、各画素における比率の変化は小さくなるので、画像の強調処理の程度は画素間で小さくなる。一方、基準点Spが、原点Oに対して、画素の分布に近づくように移動した位置にある場合、各画素における比率の変化は大きくなるので、画像の強調処理の程度は画素間で大きくなる、すなわち、コントラストが強くなる。基準点Spを、画素の分布に近づくように移動させることは、明るさの変動が少ない画像(一様な明るさの画像)において、画素の特徴量(比率)に応じて強調処理の強調の程度を変えるときに有効である。このように、第1基準値及び第2基準値がそれぞれ変更可能であるので、強調の程度を自在に調整することができる。このような調整のための第1基準値及び第2基準値は、オペレータにより入力された値に設定されてもよいし、画像中の画素の色空間上の分布や画像の輝度情報に応じて自動的に設定されてもよい。オペレータにより第1基準値及び第2基準値が入力される場合、ディスプレイ5に表示された処理前の静止画像をオペレータが見ながら、マニュアルで第1基準値及び第2基準値を仮入力し、オペレータによる仮入力の設定の度に、第1基準値及び第2基準値に基づいた強調処理が施された処理画像が表示されるように構成されていることが好ましい。この場合、オペレータが、最適な第1基準値及び第2基準値を、処理画像を見ながら試行錯誤により探索して設定することが好ましい。
【0036】
なお、一実施形態によれば、特徴量算出部25Aは、基準値Svを変更するとき、第1基準値と第2基準値の変化量が、互いに異なる量になるように設定することが好ましい。
図4は、強調処理の他の一例を説明する図であり、R信号とG信号の色空間において、原点OからG信号の負の座標軸方向に沿った位置に基準点Spを移動させた例を示している。
図4に示す例では、原点Oから基準点Spを移動することにより、R信号に対応する第1基準値の変化量に比べて、G信号に対応する第2基準値の変化量は大きい。そして、R信号の値及びG信号の値が小さな画素S3の比率は、R信号の値及びG信号の値が大きな画素S4の比率に比べて大きくなるので、画素S3の強調処理のためのG信号の値の増加量は、画素S4の強調処理のためのG信号の値の増加量に比べて大きくなる。すなわち、暗い部分の画素S3及びその周辺の画素は、明るい部分の画素S4及びその周辺の画素に比べてG成分が強くなり、画素S3及びその周辺の画素における信号の値間の差が広がるように強調されるので、暗い部分を明るくしつつ、暗い部分の像を識別可能になるように強調処理することができる。
このような基準点Spの移動は、一実施形態によれば、R信号及びG信号の色空間と、R信号及びB信号の色空間の少なくともいずれか一方の色空間内において行うことが好ましい。
【0037】
このように、本実施形態の画像の強調処理は、強調したい色信号に応じて、基準点Spを自在に移動することで、コントラストの強弱の程度を設定することができ、さらに、暗い部分にあって識別が困難な像であっても、選択的に明るくでき、さらに、像を強調して識別可能にすることができる。
【0038】
一実施形態によれば、特徴量算出部25Aは、基準値Svを、画像全体の2つの色信号の分布(R信号とG信号の色空間上の画素の分布、R信号とB信号の色空間上の画素の分布)、あるいは、画像全体の輝度情報に応じて設定することが好ましい。例えば、画像全体においてR成分の色味が強い場合(R信号の値が所定の閾値を越える画素数の、全画素数に対する比率が所定数以上である場合)、R信号の値に対してG信号の値やB信号の値の強調の程度を調整して、赤味の強い画像に埋もれた部分を識別可能に表示するために、特徴量算出部25Aは、
図4に示すように、基準点Spを自動的に移動させるように構成することが好ましい。また、画像全体の輝度情報、例えば画像の輝度平均値が所定の値よりも低く、暗い部分に強調したい部分がある場合、特徴量算出部25Aは、輝度平均値に応じて基準値Svを設定するために、基準点Spを所定距離、所定の方向に自動的に移動させるように構成することも好ましい。例えば、人体内部の大きな空間内で生体組織を撮像した画像では、照明光の広がりに制限があるため、画像の中央部分から外れた領域では暗い部分が形成されやすい。このような暗い部分に強調したい像がある場合もある。なお、輝度は、R信号、G信号、及びB信号それぞれの値の線形和で表される。
【0039】
(画像の強調処理のフロー)
図5は、電子内視鏡システム1で行う強調処理の流れの一例を説明する図である。
図5に示す例では、動画の各画像を強調処理する例を示す。
【0040】
特徴量算出部25Aは、画像メモリ22に記憶された現フレームのRGB信号で構成された画像を取得する(ステップST10)。
特徴量算出部25Aは、画像を取得した後、メモリに記憶された前フレームの画像の輝平均値を読み出す(ステップST12)。特徴量算出部25Aは、この輝度平均値は、上述したように、比率を定める基準値Sv(基準点Sp)の位置を定めるために用いられる。すなわち、特徴量算出部25Aは、輝度平均値に応じて、
図4に示すように、基準点Spの位置(基準値Sv)を自動的に調整する(ステップST14)。
特徴量算出部25Aは、画像の各画素を注目画素として、注目画素の特徴量、すなわち、R信号の値のR信号に対応する基準値Svからの差分に対する、G信号の値のG信号に対応する基準値Svからの差分の比率G/R、及び、R信号の値のR信号に対応する基準値Svからの差分に対する、B信号の値のB信号に対応する基準値Svからの差分の比率B/Rを計算する(ステップST16)。
【0041】
画像強調処理部25Bは、比率G/R及び比率B/Rに基づいて、注目画素のG信号の値及びB信号の値を増加させる増加量を定めて、G信号の値及びB信号の値を増加させる(ステップST18)。
画像強調処理部25Bは、比率G/R及び比率B/Rに基づいて、注目画素のR信号の値を減少させる減少量を定めて、R信号の値を減少させる(ステップST20)。
画像強調処理部25Bは、画像中の画素全てを、注目画素として上記計算を終了したか否かを判定する(ステップST22)。演算部25は、全画素の計算が終了するまで、ステップST16〜ST20を繰り返す。
全画素の計算が終了すると、特徴量算出部25Aは、現フレームにおける強調処理をする前の画像の輝度平均値を算出してメモリに記憶させる(ステップST24)。
【0042】
このように、強調処理の施される画像は、生体組織の動画の1つの画像である場合、特徴量算出部25A及び画像強調処理部25Bは、動画のそれぞれの画像を順次処理するが、このとき、基準値Svの設定のために用いる輝度情報(輝度平均値)は、動画中の、時系列で強調処理を行う画像の1つ前の画像全体の輝度情報(輝度平均値)であることが好ましい。動画では、連続するフレームの画像間で輝度は大きく変化しないので、1つ前のフレームの画像の輝度情報(輝度平均値)を有効に活用することにより、強調処理に利用する基準値Svの値を短時間に設定することができる。
【0043】
演算部25で強調処理された画像は、システムコントローラ24を介して画像メモリ22に記憶される。この後、結果表示部23は1つのルックアップテーブルを用いて画像の各画素の値は各階調レベルに変換し、さらに画像表示用の信号に変換する。画像表示用の信号は、ディスプレイ5に送られる。ディスプレイ5は、強調処理された画像を動画の1フレーム画像として表示する(ステップST26)。
演算部25は、動画が終了したか否かを判定し(ステップST28)、演算部25は、動画が終了するまでステップST10〜ステップST28を繰り返す。
【0044】
このように、プロセッサ2の演算部25は、画像の各画素の複数の色信号のうちの2つの色信号の値の基準値Svからの差分同士の比率を算出し、算出した比率に基づいて、2つの色信号の少なくとも一方の値の増減の程度(増減量)を定めることにより、画像の強調処理を行うので、従来のようなトーンカーブを規定したルックアップテーブルを多数用意することなく、画像中の色成分に特徴がある特徴部分と特徴部分以外の部分の強調処理の程度を自在に変化させることができる。このため、画像中の暗い部分に強調処理したい部分があっても、暗部を明るくしつつ該当部分を強調処理することができる。
【0045】
図6は、従来の電子内視鏡システムで行う強調処理を説明する図である。
図6に示す例では、暗い部分に強調したい特徴部分があるが、中間階調レベルILを広げる強調処理を画像全体に施すので、暗い部分(低階調レベルLL)の階調数は少なくなり、強調したい特徴部分は識別が困難になる。一方、低階調レベルLLの階調数を多くする強調処理を画像全体に施すと、明るい部分の階調数は少なくなり、識別が困難になる。このため、明るい部分の識別を維持したまま、暗い部分(低階調レベルLL)の階調数を多くする処理は従来の強調処理ではできない。いいかえると、画像中の特徴部分を局部的かつ選択的に強調することは、従来の強調処理ではできない。
【0046】
図7,8は、電子内視鏡システム1で行う強調処理結果の一例を説明する図である。
図7に示す例では、画像中の明るい部分に強調したい部分Ob1がある画像に、
図5に示す流れに沿った強調処理をした結果の一例を示す。この場合、基準点Spを色空間上の原点にした状態で強調処理がされている。処理前画像中の明るい部分にある部分Ob1は、処理画像において、強調処理により、より鮮明に識別できる部分として再現される。
図7中のTCは、処理前画像と処理画像の間のR信号、G信号、及びB信号における入力−出力関係を示す図であり、この入力−出力関係は、従来のトーンカーブに対応するものである。このように、
図7に示す本実施形態の強調処理の入力−出力関係は、1本のトーンカーブではなく、種々のトーンカーブを用いた処理結果に対応する。すなわち、
図7に示す本実施形態の強調処理は、画素の特徴量(比率)に応じて、強調処理の強調を変化させているので、画像中の特徴量に応じて異なる複数のトーンカーブを用いたことことに相当する。
図7に示す例では、R信号の入力−出力関係における出力レベルと、G信号及びB信号の入力−出力関係における出力レベルとを比較すると、R信号の低階調レベル〜中間階調レベルの階調数を少なくし(階調レベルが低〜〜中間の範囲にある入力信号に対して、階調数を少なくして出力信号とし)、相対的にG信号及びB信号の低階調レベル〜中間階調レベルの階調数を多くした(階調レベルが低〜〜中間の範囲にある入力信号に対して、階調数を多くして出力信号とした)ことを表す。
【0047】
図8に示す例では、画像中の暗い部分に強調したい部分Ob2がある画像に、
図5に示す強調処理をした結果の一例を示す。この場合、基準点Spを、色空間上の原点に対して、R信号の256階調数に換算してR信号の軸方向の−20の階調レベルで、G信号の256階調数においてG信号の軸方向の−40の階調レベルの位置に対応した点に移動した状態で強調処理がされている。処理前画像中の暗い部分にある部分Ob2は、処理画像において、強調処理により、明るくなり、かつ鮮明に識別できる強調された部分として再現される。
図8中のTCは、処理前画像と処理画像の間のR信号、G信号、及びB信号における入力−出力関係を示す図であり、この入力−出力関係は、従来のトーンカーブに対応するものである。このように、
図8に示す本実施形態の強調処理の入力−出力関係は、1本のトーンカーブではなく、種々のトーンカーブを用いた処理結果に対応する。すなわち、
図8に示す本実施形態の強調処理は、画素の特徴量(比率)に応じて、強調処理の強調を変化させているので、画像中の特徴量に応じて異なる複数のトーンカーブを用いたことに相当する。
図8に示す例では、R信号、G信号及びB信号のいずれの入力−出力関係における出力レベルにおいても、低階調レベルの階調数を多くし、暗い部分を明るくするとともに、低階調レベルにおいて、G信号及びB信号の階調数を、R信号の階調数よりも多くしたことを表す。
【0048】
以上、本発明の電子内視鏡システムについて詳細に説明したが、本発明の電子内視鏡システムは上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。