特許第6850892号(P6850892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6850892官能化環状ジチオカルバメートの合成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850892
(24)【登録日】2021年3月10日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】官能化環状ジチオカルバメートの合成方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 17/00 20060101AFI20210322BHJP
   C07C 329/00 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   C12P17/00
   C07C329/00CSP
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-535938(P2019-535938)
(86)(22)【出願日】2017年12月21日
(65)【公表番号】特表2020-503052(P2020-503052A)
(43)【公表日】2020年1月30日
(86)【国際出願番号】FR2017053781
(87)【国際公開番号】WO2018122510
(87)【国際公開日】20180705
【審査請求日】2019年8月21日
(31)【優先権主張番号】1663491
(32)【優先日】2016年12月29日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フレミ,ジョルジュ
(72)【発明者】
【氏名】マスラン,アルノー
【審査官】 長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03960881(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 17/00
C07C 329/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の官能化環状ジチオカルバメートを合成する方法であって、
【化1】
式中
は、水素であるか、O、S、N、P及びSiから選択される1個以上のヘテロ原子を含み得る、芳香族若しくは非芳香族、直鎖若しくは環状、飽和若しくは不飽和、分枝若しくは非分枝の1〜20個の炭素原子を含む炭化水素系鎖であり、
Xは、−C(=O)−又は−CH−又は−CNを表し、
は、(i)存在しない(Xが−CNを表す場合)、(ii)又は水素、(iii)又は−OR(Rは、水素であるか、O、S、N、P及びSiから選択される以上のヘテロ原子を含み得る、芳香族若しくは非芳香族、直鎖若しくは環状、飽和若しくは不飽和、分枝又は非分枝の1〜20個の炭素原子を含む炭化水素系鎖である。)、(iv)又は−NR(R及びRは、異なる又は異ならず、水素であるか、O、S、N、P及びSiから選択される1個以上のヘテロ原子を含み得る芳香族若しくは非芳香族、直鎖若しくは環状、飽和若しくは不飽和、分枝又は非分枝の1〜20個の炭素原子を含む炭化水素系鎖である。)のいずれかであり、
nは0、1又は2に等しく、
は不斉炭素を表し、
前記方法が、
a/少なくとも1つの式(II)の化合物を提供するステップであって、
G−(CH−C*H(NHR)−X−R (II)
式中、
n、R、R、X及び*は先に定義した通りであり、
Gは、(i)R−C(=O)−O−CH−又は(ii)(RO)(RO)−P(=O)−O−CH−又は(iii)RO−SO−O−CH−のいずれかを表し、
は、水素であるか、O、S、N、P及びSiから選択される1個以上のヘテロ原子を含み得る、芳香族若しくは非芳香族、直鎖若しくは環状、飽和若しくは不飽和、分枝若しくは非分枝の1〜20個の炭素原子を含む炭化水素系鎖であり、
及びRは、同一でも異なっていてもよく、互いに独立して、プロトンH、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウムから選択される、ステップ、
b/少なくとも1つの無機トリチオカーボネートを提供するステップ、
c/スルフヒドリラーゼから選択される少なくとも1つの酵素の存在下での、前記少なくとも式(II)の化合物と前記少なくとも無機トリチオカーボネートとの反応のステップ、
d/少なくとも1つの式(I)の官能化環状ジチオカルバメートの生成のステップ、
e/前記少なくとも1つの式(I)の官能化環状ジチオカルバメートの分離及び単離のステップ
む、方法。
【請求項2】
ステップa/及びb/が同時に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記式(I)の官能化環状ジチオカルバメートがエナンチオマー的に純粋である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記式(I)の官能化環状ジチオカルバメートが、L−ラファヌサム酸又はL−ホモラファヌサム酸である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記式(II)の化合物が、L−セリン誘導体及びL−ホモセリン誘導体から選択される、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記L−セリン誘導体が、O−ホスホ−L−セリン、O−スクシニル−L−セリン、O−アセチル−L−セリン、O−アセトアセチル−L−セリン、O−プロピオ−L−セリン、O−クマロイル−L−セリン、O−マロニル−L−セリン、O−ヒドロキシメチルグルタリル−L−セリン、O−ピメリル−L−セリン及びO−スルファト−L−セリンから選択される、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記L−ホモセリン誘導体が、O−スクシニル−L−ホモセリン、O−アセチル−L−ホモセリン、O−アセトアセチル−L−ホモセリン、プロピオ−L−ホモセリン、O−クマロイル−L−ホモセリン、O−マロニル−L−ホモセリン、O−ヒドロキシメチルグルタリル−L−ホモセリン、O−ピメリル−L−ホモセリン、O−ホスホ−L−ホモセリン及びO−スルファト−L−ホモセリンから選択される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記スルフヒドリラーゼが、前記L−セリン誘導体に結合したスルフヒドリラーゼ及び前記L−ホモセリン誘導体に結合したスルフヒドリラーゼから選択される、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記L−セリン誘導体に結合したスルフヒドリラーゼが、O−ホスホ−L−セリンスルフヒドリラーゼ、O−スクシニル−L−セリンスルフヒドリラーゼ、O−アセチル−L−セリンスルフヒドリラーゼ、O−アセトアセチル−L−セリンスルフヒドリラーゼ、O−プロピオ−L−セリンスルフヒドリラーゼ、O−クマロイル−L−セリンスルフヒドリラーゼ、O−マロニル−L−セリンスルフヒドリラーゼ、O−ヒドロキシメチルグルタリル−L−セリンスルフヒドリラーゼ、O−ピメリル−L−セリンスルフヒドリラーゼ及びO−スルファト−L−セリンスルフヒドリラーゼから選択される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記L−ホモセリン誘導体に結合したスルフヒドリラーゼが、O−ホスホ−L−ホモセリンスルフヒドリラーゼ、O−スクシニル−L−ホモセリンスルフヒドリラーゼ、O−アセチル−L−ホモセリンスルフヒドリラーゼ、O−アセトアセチル−L−ホモセリンスルフヒドリラーゼ、O−プロピオ−L−ホモセリンスルフヒドリラーゼ、O−クマロイル−L−ホモセリンスルフヒドリラーゼ、O−マロニル−L−ホモセリンスルフヒドリラーゼ、O−ヒドロキシメチルグルタリル−L−ホモセリンスルフヒドリラーゼ、O−ピメリル−L−ホモセリンスルフヒドリラーゼ及びO−スルファト−L−ホモセリンスルフヒドリラーゼから選択される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記無機トリチオカーボネートが、アルカリ金属トリチオカーボネート、アルカリ土類金属トリチオカーボネート及びアンモニウムトリチオカーボネートから選択される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップd/又はステップe/で得られた式(I)の官能化環状ジチオカルバメートをさらに官能化するステップf/を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12に記載の方法に従って調製された、L−ラファヌサム酸又はL−ホモラファヌサム酸。
【請求項14】
式(IV)のホモシステインナトリウムトリチオカーボネートであって:
−C=(S)−S−CH−(CHC*H(NHR)−X−R (IV)
式中、R、R、X、及びnが請求項1で定義された通りであり、Xがアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウム基を表す、式(IV)のホモシステインナトリウムトリチオカーボネート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状ジチオカルバメートの分野に関し、より具体的には環状ジチオカルバメートの合成方法、より詳細には官能化環状ジチオカルバメートに関する。
【背景技術】
【0002】
ジチオカルバメートは、ラジカル前駆体、有機合成における中間体、加硫剤、キレート剤又は酵素阻害剤として使用され得る有機化合物である。その利用分野は多様であり、ジチオカルバメートは農業分野において、例えば殺真菌剤、除草剤、駆除剤又は殺虫剤の組成中に包含され得て、ゴム工業において又はさもなければ製薬工業においてがんやHIVなどの疾患の治療に使用され得る。
【0003】
ジチオカルバメートの多数の用途の結果として、これらの化合物を合成するための種々の技術が存在する。
【0004】
したがって、Entesar A.Hassanによる論文、“Dithiocarbamates as precursors in organic chemistry,synthesis and uses”,Phosphorus,Sulfur and Silicon,vol.189,(2014),pages 300−323には、ジチオカルバメートを合成するための各種の方法が記載されている。例えば、ジチオカルバメート塩とハロゲン化アルキルとの若しくはジアルキルホスフェートとの反応による、又は電子不足オレフィンの添加による、N、N−ジアルキルジチオカルバメートの合成が開示されている。前記論文には、アミンをクロロジチオホルメートによってアシル化することによる、ジチオカルバメートの製造についても記載されている。ジスルフィドと(i)2−アミノエタノール、2−アミノエチルサルフェート及び2−アミノエチルハライドとの、(ii)塩基の存在下での第1級アミン及び1,2−ジブロモエタンとの、(iii)アジリジンとの、並びに(iv)2−イミノチアゾリジンとの反応による、環状ジチオカルバメートの調製も開示されている。環状ジチオカルバメートは、ピリジン中のメシルクロリドを用いた処理によるβ−ヒドロキシアルキルジチオカルバメートの環化によって、又は塩基の存在下でのチオホスゲンによる2−アルキルアミノメタンチオールの環化によっても調製され得る。
【0005】
さらに、特許出願CN103804258は、カルバミド及びカーボンジスルフィドからのジチオカルバメートの合成について記載し、特許出願CN103804257は、カルバミド及びカーボンジスルフィドからのジエチルジチオカルバメートの調製を開示している。
【0006】
特許出願US 2046876に関しては、ジアリールアミン誘導体へのカーボンジスルフィドの付加による、N−ジアリールジチオカルバメートの合成が記載されている。
【0007】
ジチオカルバメートの多数の可能な用途のために、新規ジチオカルバメートに対して、特に新規官能化ジチオカルバメート、最も詳細には、重合における用途に対して(特に有機担体への任意のグラフト化に対して)、脱硫などの用途に対してだけではなく、より具体的には、医薬品、生物学などの中の非常に多くの用途のための新規な光学活性ジチオカルバメートに対しても、必要性が高まり続けていることが容易に認識されよう。
【0008】
合成方法の説明から、耐久性であると記載することができる、即ち、穏やかな温度及び圧力条件で、pH値が中性に近い水溶液中にて、再生可能な起源の出発材料を用いて行うことができる、並びにより一般に、より環境に優しい方法を用いた、ジチオカルバメートの合成に対する必要性が存在することも、認識されよう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】中国特許出願公開第103804258号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第103804257号明細書
【特許文献3】米国特許第2046876号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Entesar A.Hassan,Phosphorus,Sulfur and Silicon,vol.189,(2014),pages 300−323
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明による、以下に記載する方法を実施することによって、上で定義した目的を全体的に又は少なくとも部分的に満足できることが、今や見出されている。他の目的は、以下に続く本発明の説明を続けることで、なお明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、第1の態様により、本発明は、式(I)の官能化環状ジチオカルバメートを合成する方法に関し、
【0013】
【化1】
式中
−Rは、水素であるか、O、S、N、P及びSiから選択される1個以上のヘテロ原子を含み得る、芳香族若しくは非芳香族、直鎖若しくは環状、飽和若しくは不飽和、分枝若しくは非分枝の1〜20個の炭素原子を含む炭化水素系鎖であり、
−Xは、−C(=O)−又は−CH−又は−CNを表し、
−Rは、(i)存在しない(Xが−CNを表す場合)、(ii)又は水素、(iii)又は−OR(Rは、水素であるか、O、S、N、P及びSiから選択される以上のヘテロ原子を含み得る、芳香族若しくは非芳香族、直鎖若しくは環状、飽和若しくは不飽和、分枝又は非分枝の1〜20個の炭素原子を含む炭化水素系鎖である。)、(iv)又は−NR(R及びRは、異なる又は異ならず、水素であるか、O、S、N、P及びSiから選択される1個以上のヘテロ原子を含み得る芳香族若しくは非芳香族、直鎖若しくは環状、飽和若しくは不飽和、分枝又は非分枝の1〜20個の炭素原子を含む炭化水素系鎖である。)のいずれかであり、
−nは0、1又は2、好ましくは1に等しく、
は不斉炭素を表し、
前記方法は、
a/少なくとも1つの式(II)の化合物を提供するステップであって、
G−(CH−C*H(NHR)−X−R (II)
式中、
−n、R、R、X及び*は先に定義した通りであり、
−Gは、(i)R−C(=O)−O−CH−又は(ii)(RO)(RO)−P(=O)−O−CH−又は(iii)RO−SO−O−CH−のいずれかを表し、
−Rは、水素であるか、O、S、N、P及びSiから選択される1個以上のヘテロ原子を含み得る、芳香族若しくは非芳香族、直鎖若しくは環状、飽和若しくは不飽和、分枝若しくは非分枝の1〜20個の炭素原子を含む炭化水素系鎖であり、
−R及びRは、同一でも異なっていてもよく、互いに独立して、プロトンH、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウム、好ましくはプロトンH又はアルカリ金属、及びより詳細にはプロトンH又はNaから選択される、ステップ、
b/少なくとも1つの無機トリチオカーボネートを提供するステップ、
c/スルフヒドリラーゼ、及び好ましくは前記式(II)の化合物に結合したスルフヒドリラーゼから選択される少なくとも1つの酵素の存在下での、前記少なくとも式(II)の化合物と前記少なくとも無機トリチオカーボネートとの反応のステップ、
d/少なくとも1つの式(I)の官能化環状ジチオカルバメートの製造のステップ、
e/前記少なくとも1つの式(I)の官能化環状ジチオカルバメートの分離及び単離のステップ、
f/任意に、ステップd/又はe/で得た式(I)の官能化環状ジチオカルバメートのさらなる官能化のステップ、
を含み、
ステップa/及びb/は、任意に同時に行われる。
【0014】
不斉炭素の立体配置は、反応を通じて保存されることが認められている。別の利点として、本発明による方法に従って得られる式(I)の官能化環状ジチオカルバメートは、エナンチオマー的に純粋なジチオカルバメートであることに留意すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
「官能化環状ジチオカルバメート」という用語は、任意の種類の式(I)の環状ジチオカルバメートを意味し、その窒素原子は官能基を有し(Rが水素原子を表す場合を除く。)、及び/又は窒素原子に対してαとしてのその炭素原子は、官能基を有する(−X−が−CH−を表す場合及びRが水素原子を表す場合を除く。)。
【0016】
本発明は、以下の説明及び実施例に照らしてより明確に理解されるであろうが、これらの実施例に決して限定されるものではない。
【0017】
本発明の一実施形態により、Rは水素原子を表す。
【0018】
本発明の他の実施形態により、−X−は−C(=O)−を表す。
【0019】
本発明のまた別の実施形態により、Rは−ORを表し、Rは水素原子である。
【0020】
本発明の他の実施形態により、nは0に等しい。
【0021】
本発明のまた別の実施形態により、nは1に等しい。
【0022】
本発明の好ましい実施形態により、式(I)において、Rは水素原子を表し、−X−は−C(=O)−を表し、Rは−ORを表し、Rは水素であり、nは0に等しく、式(I)の化合物はL−ラファヌサム酸である。
【0023】
本発明の別の好ましい実施形態により、式(I)において、Rは水素原子を表し、−X−は−C(=O)−を表し、Rは−ORを表し、Rは水素原子であり、nは1に等しく、式(I)の化合物はL−ホモラファヌサム酸である。
【0024】
本発明の好ましい実施形態により、式(II)において、Rは水素原子を表し、−X−は−C(=O)−を表し、Rは−ORを表し、Rは水素であり、nは0に等しく、式(II)の化合物はL−セリン誘導体である。
【0025】
本発明による方法で使用されるL−セリン誘導体は、例えば、限定されないが、O−ホスホ−L−セリン、O−スクシニル−L−セリン、O−アセチル−L−セリン、O−アセトアセチル−L−セリン、O−プロピオ−L−セリン、O−クマロイル−L−セリン、O−マロニル−L−セリン、O−ヒドロキシメチルグルタリル−L−セリン、O−ピメリル−L−セリン及びO−スルファト−L−セリンから選択され得る。
【0026】
好ましくは、L−セリン誘導体は、O−ホスホ−L−セリン、O−スクシニル−L−セリン、O−アセチル−L−セリン及びO−スルファト−L−セリンから選択される。
【0027】
最も特に好ましくは、L−セリン誘導体はO−アセチル−L−セリンである。
【0028】
本発明の別の好ましい実施形態により、式(II)において、Rは水素原子を表し、XはC=O官能基を表し、Rは−ORを表し、Rは水素であり、nは1に等しく、式(II)の化合物はL−ホモセリン誘導体である。
【0029】
本発明による方法において使用されるL−ホモセリン誘導体は、例えば、限定されないが、O−ホスホ−L−ホモセリン、O−スクシニル−L−ホモセリン、O−アセチル−L−ホモセリン、O−アセトアセチル−L−ホモセリン、O−プロピオ−L−ホモセリン、O−クマロイル−L−ホモセリン、O−マロニル−L−ホモセリン、O−ヒドロキシメチルグルタリル−L−ホモセリン、O−ピメリル−L−ホモセリン及びO−スルファト−L−ホモセリンから選択され得る。
【0030】
好ましくは、L−ホモセリン誘導体は、O−ホスホ−L−ホモセリン、O−スクシニル−L−ホモセリン、O−アセチル−L−ホモセリン及びO−スルファト−L−ホモセリンから選択される。
【0031】
最も特に好ましくは、L−ホモセリン誘導体は、O−アセチル−L−ホモセリン(OAHS)である。
【0032】
L−セリン誘導体及びL−ホモセリン誘導体は市販されているか、又は当業者に既知である任意の技術によって得られる。
【0033】
それらは、例えば再生可能な出発材料の発酵によって得られ得る。再生可能な出発材料は、グルコース、スクロース、デンプン、糖蜜、グリセロール及びバイオエタノールから選択され得て、好ましくはグルコースである。
【0034】
L−セリン誘導体は、L−セリンのアセチル化からも製造され得て、L−セリン自体はおそらく再生可能な出発材料の発酵により得られる。再生可能な出発材料は、グルコース、スクロース、デンプン、糖蜜、グリセロール及びバイオエタノールから選択され得て、好ましくはグルコースである。
【0035】
L−ホモセリン誘導体は、L−ホモセリンのアセチル化からも製造され得て、L−ホモセリン自体はおそらく再生可能な出発材料の発酵により得られる。再生可能な出発材料は、グルコース、スクロース、デンプン、糖蜜、グリセロール及びバイオエタノールから選択され得て、好ましくはグルコースである。
【0036】
本発明による方法で使用される無機トリチオカーボネートは、アルカリ金属トリチオカーボネート、アルカリ土類金属トリチオカーボネート及びアンモニウムトリチオカーボネートから選択され得る。
【0037】
好ましくは、無機トリチオカーボネートは、ナトリウムトリチオカーボネート、カリウムトリチオカーボネート、カルシウムトリチオカーボネート及びアンモニウムトリチオカーボネートから選択される。
【0038】
特に好ましくは、無機トリチオカーボネートはナトリウムトリチオカーボネートである。
【0039】
本発明による方法の間、前記少なくとも式(II)の化合物と前記少なくとも無機トリチオカーボネートとの反応は少なくとも1つの酵素の存在下で行われ、前記酵素は好ましくは、式(II)の化合物に結合したスルフヒドリラーゼである。
【0040】
したがって、式(II)の化合物がL−セリン誘導体である場合、使用される酵素は、O−ホスホ−L−セリンスルフヒドリラーゼ、O−スクシニル−L−セリンスルフヒドリラーゼ、O−アセチル−L−セリンスルフヒドリラーゼ、O−アセトアセチル−L−セリンスルフヒドリラーゼ、O−プロピオ−L−セリンスルフヒドリラーゼ、O−クマロイル−L−セリンスルフヒドリラーゼ、O−マロニル−L−セリンスルフヒドリラーゼ、O−ヒドロキシメチルグルタリル−L−セリンスルフヒドリラーゼ、O−ピメリル−L−セリンスルフヒドリラーゼ及びO−スルファト−L−セリンスルフヒドリラーゼから選択され得る。
【0041】
好ましくは、L−セリン誘導体に結合した酵素は、O−ホスホ−L−セリンスルフヒドリラーゼ、O−スクシニル−L−セリンスルフヒドリラーゼ、O−アセチル−L−セリンスルフヒドリラーゼ及びO−スルファト−L−セリンスルフヒドリラーゼから選択される。
【0042】
最も特に好ましくは、L−セリン誘導体に結合した酵素は、O−アセチル−L−セリンスルフヒドリラーゼである。
【0043】
さらに、式(II)の化合物がL−ホモセリン誘導体であるとき、使用される酵素は、O−ホスホ−L−ホモセリンスルフヒドリラーゼ、O−スクシニル−L−ホモセリンスルフヒドリラーゼ、O−アセチル−L−ホモセリンスルフヒドリラーゼ、O−アセトアセチル−L−ホモセリンスルフヒドリラーゼ、O−プロピオ−L−ホモセリンスルフヒドリラーゼ、O−クマロイル−L−ホモセリンスルフヒドリラーゼ、O−マロニル−L−ホモセリンスルフヒドリラーゼ、O−ヒドロキシメチルグルタリル−L−ホモセリンスルフヒドリラーゼ、O−ピメリル−L−ホモセリンスルフヒドリラーゼ及びO−スルファト−L−ホモセリンスルフヒドリラーゼから選択され得る。
【0044】
好ましくは、L−ホモセリン誘導体に結合した酵素は、O−ホスホ−L−ホモセリンスルフヒドリラーゼ、O−スクシニル−L−ホモセリンスルフヒドリラーゼ、O−アセチル−L−ホモセリンスルフヒドリラーゼ及びO−スルファト−L−ホモセリンスルフヒドリラーゼから選択される。
【0045】
最も特に好ましくは、L−ホモセリン誘導体に結合した酵素は、O−アセチル−L−ホモセリンスルフヒドリラーゼである。
【0046】
これらの前記酵素は、それらが補因子、例えばピリドキサール5’−ホスフェート(PLP)の存在下で使用されるときに、当業者に周知であるように、最適な機能を有する。
【0047】
酵素及びその結合した補因子は、一般に、反応媒体への添加前に水に溶解される。式(II)の化合物の質量に対する酵素の割合は、0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%となり、式(II)の化合物に対する補因子の量は、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%となる。
【0048】
合成媒体、温度及びpH条件に関しては、特許出願WO2008/013432及びWO2013/029690に記載されているものが参照され得る。
【0049】
したがって、反応pHは、好ましくは5〜8、好ましくは6〜7.5、より詳細には6.2〜7.2である。前記pHは、酵素の作用範囲に依存し、塩基性トリチオカーボネートを添加することによって、又は希硫酸若しくは希アンモニアを添加することによって、酵素の最適条件に従って調節され得る。好ましくは、塩基性トリチオカーボネートの添加を調節することによってpHを調整する。
【0050】
したがって、反応中の温度は10℃〜45℃、好ましくは20℃〜40℃、より詳細には25℃〜35℃である。前記温度は酵素の作用範囲に従って選択される。
【0051】
反応は水性媒体中で、又はこれらの有機溶媒が使用される酵素と相溶性である場合、有機溶媒の存在下で起こる。好ましくは、反応は水性媒体中で起こる。
【0052】
反応は、バッチ式、半連続式又は連続式で行われ得る。当業者に既知の任意の種類の反応装置が、この種類の反応に好適であり得る。
【0053】
本発明の一実施形態により、得られたジチオカルバメートの分離及び単離は、当業者に既知の任意の技術に従って、特に析出及び濾過によって実施され得る。
【0054】
本発明による方法の任意のステップf/によって、ステップd/の後又はステップe/において得られるものとは異なる、追加の官能基を得ることができる。
【0055】
これは、ステップd/の終了時又はステップe/の終了時に得られた式(I)の官能化環状ジチオカルバメートが、このステップf/の間に再度官能化され得るためである。例えば、X−Rがカルボキシル官能基を表す場合、前記官能基はエステル化され、アルデヒドに還元され、アルコールに還元され、次いでエーテル化、アミド化、ニトリル化などされることができる。すべての官能基は、ジチオカルバメートについて意図される最終用途に応じて、当業者に周知の技術に従って得られ得る。
【0056】
したがって、ステップd/又はe/の終了時に得られた式(I)の官能化環状ジチオカルバメートは、異なる官能基を有する1つ以上のジチオカルバメートを得るために、1つ以上の追加の化学反応に供され得て、前記化学反応は、当業者に既知であるすべての反応である。
【0057】
本発明の一実施形態により、O−アセチル−L−セリンなどのL−セリン誘導体、O−アセチル−L−セリンスルフヒドリラーゼなどの酵素、ピリドキサール5’−ホスフェート(PLP)などの補因子及びナトリウムトリチオカーボネートなどの塩基性トリチオカーボネートを接触させると、驚くべきことに、得られた主生成物の1つは、L−ラファヌサム酸という名称に対応する環状ジチオカルバメートであることが判明し、ラファヌサム酸は、次式で表される。
【0058】
【化2】
【0059】
本発明の別の実施形態により、O−アセチル−L−ホモセリンなどのL−ホモセリン誘導体、O−アセチル−L−ホモセリンスルフヒドリラーゼなどの酵素、ピリドキサール5’−ホスフェート(PLP)などの補因子及びナトリウムトリチオカーボネートなどの塩基性トリチオカーボネートを接触させる。驚くべきことに、得られた主生成物の1つは、L−ホモラファヌサム酸(L−ラファヌサム酸の環状高級同族体)の名称に対応する環状ジチオカルバメートであり、ホモラファヌサム酸は次式で表される。
【0060】
【化3】
【0061】
ジチオカルバメートの合成は、式(III):HS−CH(CH−C*H(NHR)−X−Rのメルカプタンの生成を伴い得ることが認められ、式中、n、R、R、X及び*は、先に定義した通りである。このメルカプタンは、塩基性媒体中でのカーボンジスルフィドとの反応によるジチオカルバメートの合成のための出発材料として有利に作用し得る。
【0062】
例えば、ホモラファヌサム酸の合成の場合、生成されたメルカプタンはホモシステインであり、ホモシステインは以下のスキームに従ってカーボンジスルフィドと反応する。
【0063】
【化4】
【0064】
角括弧内の化合物は、工程の過程で出現する中間化合物である。この化合物及び他のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はそのアンモニウム塩も新規であり、この点で本発明の一部を形成する。以下、これらの化合物をホモシステインの「トリチオカーボネート」(対イオンがナトリウムイオンの場合は「ナトリウムトリチオカーボネート」)と称する。
【0065】
より一般的には、中間化合物は式(IV)の化合物であり得る。
【0066】
−C=(S)−S−CH−(CHC*H(NHR)−X−R (IV)
式中、R、R、X、*及びnは、先に定義した通りであり、Xはアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウム基、好ましくはNa、K、NH又はCa、より好ましくはNaを表す。
【0067】
本発明の別の好ましい実施形態により、カーボンジスルフィドは、反応中に連続的に又はバッチ式で添加され得る。
【0068】
カーボンジスルフィドを添加すると、ジチオカルバメートの合成収率を顕著に高めることができる。
【0069】
本発明の好ましい実施形態により、L−セリン誘導体はO−アセチル−L−セリンであり、トリチオカーボネートはナトリウムトリチオカーボネートであり、使用される酵素はO−アセチル−L−セリンスルフヒドリラーゼである。
【0070】
本発明の好ましい実施形態により、本方法に従って得られる式(I)の官能化環状ジチオカルバメートは、L−ラファヌサム酸である。
【0071】
本発明の別の好ましい実施形態により、L−ホモセリン誘導体はO−アセチル−L−ホモセリンであり、トリチオカーボネートはナトリウムトリチオカーボネートであり、使用される酵素はO−アセチル−L−ホモセリンスルフヒドリラーゼである。
【0072】
本発明の好ましい実施形態により、本方法に従って得られる式(I)の官能化環状ジチオカルバメートは、L−ホモラファヌサム酸である。
【0073】
前述のように、不斉炭素の立体配置は反応を通じて保存される。これにより特定のエナンチオマーを得ることが可能となり、このエナンチオマーは、特に医療又は医薬分野におけるある用途に有利であり得る。
【0074】
さらに、式(I)の官能化ジチオカルバメートに存在するカルボン酸は、広範な種類の化合物又は分子を「付着」させて、有機又は無機担体へグラフト化できるようにし得る。
【0075】
本発明による方法に従って製造された式(I)の官能化環状ジチオカルバメートは、ラジカル前駆体、有機合成における中間体、加硫剤、キレート剤又は酵素阻害剤として使用され得る。その利用分野は多様であり、ジチオカルバメートは農業分野において、例えば殺真菌剤、除草剤、駆除剤又は殺虫剤の組成中に包含され得て、ゴム工業において又はさもなければ製薬工業においてがんやHIVなどの疾患の治療に使用され得る。
【実施例】
【0076】
実施例1
L−ホモラファヌサム酸の酵素的合成
ステップ1:
O−アセチル−L−ホモセリン(OAHS)は、Sadamu Nagai,“Synthesis of O−acetyl−l−homoserine”,Academic Press(1971),vol.17,pages 423−424に従って、Lーホモセリン及び無水酢酸から合成した。
【0077】
ステップ2:
事前に合成したOAHS 10g(62mmol)をサーモスタット制御された250mLガラス反応装置内の蒸留水140ml中に投入する。溶液を機械撹拌しながら35℃とする。反応媒体のpHは4.8である。酵素を添加する前に、ナトリウムトリチオカーボネート溶液数滴(4.78g;31mmol、蒸留水20mLに溶解)を用いてpHを6.5に設定する。(t=0にて)反応媒体1mLのサンプルを採取する。ピリドキサール5’−ホスフェート(10mmol、0.4g)及び酵素O−アセチル−L−ホモセリンスルフヒドリラーゼ(0.6g)の溶液を水10mLに溶解させ、次いで反応装置に添加する。
【0078】
反応が開始して、pHの低下を引き起こす。滴下漏斗を介してナトリウムトリチオカーボネートをゆっくり添加することにより、反応媒体をpH6.5に維持する。反応中に試料(1mL)を採取する。電位差滴定、TLC、HPLC及びUPLC/UV質量による分析は、試薬(OAHS及びNaCS)の段階的な消失及び以下の化合物の、次第に大量となる段階的な出現を示す。
【0079】
【化5】
【0080】
この中間化合物は次いで、徐々に消失して等モル量を与える:
−L−ホモラファヌサム酸(官能化環状ジチオカルバメート)
【0081】
【化6】
−及びL−ホモシステイン
【0082】
【化7】
【0083】
OAHSの完全消失後に認められた唯一の他の生成物は、微量のホモセリン(OAHSの加水分解)である。
【0084】
ステップ3:ジチオカルバメートの分離及び単離:
反応媒体を、30℃にて減圧下で(反応媒体中に存在するナトリウムアセテートの析出を回避するために)水を一部蒸発させることによって濃縮する。ジチオカルバメートは反応媒体中に存在する化合物の中で最も溶解度が低いことが判明しているため、析出物が生成する。濾過及び乾燥の後、ジチオカルバメート4.9gが得られる。ジチオカルバメートの全体的な単離収率は45%である(理論的予測では、11gから4.9gが得られる)。この乾燥生成物をさらに分析すると、この固体が微量のホモシステインのみを含むことが示された。
【0085】
実施例2
ジチオカルバメートの合成(酵素又は補酵素なし)
実施例1を反復し、唯一の相違は、水10mLに溶解させたピリドキサール5’−ホスフェート(10mmol;0.4g)及び酵素O−アセチル−L−ホモセリンスルフヒドリラーゼ(0.6g)の溶液を反応装置に添加しなかったことである。反応が開始せず、pH6.5の維持を試みながらトリチオカーボネートの溶液を連続添加するのは不可能であることが判明する。ナトリウムトリチオカーボネート溶液を添加することによるpH8への、次いでpH12への上昇時に認められた唯一の反応は、OAHSのホモセリンへの加水分解の開始である。本実施例は、ジチオカーボネートの合成を有効とするためには、酵素で触媒する必要があることを示している。
【0086】
実施例3
ジチオカルバメートの酵素的合成(反応の最後にCSを添加)
ステップ1:
O−アセチル−L−ホモセリン(OAHS)は、文献(Sadamu Nagai,“Synthesis of O−acetyl−l−homoserine”,Academic Press(1971),vol.17,pages 423−424)から得たプロトコルに従って、L−ホモセリンから合成した。
【0087】
ステップ2:
OAHS 10g(62mmol)をサーモスタット制御された250mLガラス反応装置内の蒸留水140mL中に投入する。溶液を機械撹拌しながら35℃とする。反応媒体のpHは4.8である。酵素を添加する前に、ナトリウムトリチオカーボネート溶液数滴(反応を通して添加する総量は、蒸留水20mLに溶解させた4.78g、即ち31mmolに等しい)を添加することによって、pHを6.5に設定する。(t=0にて)反応媒体1mLのサンプルを採取する。
【0088】
ピリドキサール5’−ホスフェート(10mmol/L)の溶液400μL及び酵素(O−アセチル−L−ホモセリンスルフヒドリラーゼ)0.6gを含有する蒸留水10mLの溶液を調製する。酢酸の形成を示すpHの低下によって、反応の開始を示すことができる。反応媒体を6.5に等しいpHに維持することが必要である。これを行うために、滴下漏斗を介してナトリウムトリチオカーボネート溶液をゆっくり添加する。反応中に試料(1mL)を採取する。
【0089】
電位差滴定による分析によってOAHSのホモシステインへの50%変換が示されたら、カーボンジスルフィド1.87mL(31mmol)を反応媒体に添加する。反応媒体のpHを、1M水酸化ナトリウム溶液によって10に調整する。次いで反応媒体を50℃にする。電位差分析によるシステインの消失が認められる。次いで、塩酸溶液(2N)を使用して、反応媒体のpHを5に低下させる。
【0090】
TLC、HPLC及びUPLC/UV質量による追加の分析によって、主生成物であるL−ホモラファヌサム酸の形成が示される。
【0091】
OAHSの完全消失後に認められた唯一の他の生成物は、微量のホモセリン(OAHSの加水分解)及びさらに微量のホモシステインである。
【0092】
ステップ3:ジチオカルバメートの分離及び単離
反応媒体を、30℃にて減圧下で(反応媒体中に存在するナトリウムアセテート及び他の塩の析出を回避するために)水を一部蒸発させることによって濃縮する。ジチオカルバメートは水に最も溶解しにくい種であることが判明しているため、析出物がこのように形成される。濾過及び乾燥の後、ジチオカルバメート9.2gが得られる。ジチオカルバメートの全体的な単離収率は、理論値11gのうち9.2g、即ち84%である。
【0093】
実施例4
ジチオカルバメートの酵素的合成(反応中にCSを添加した)
ステップ1:
O−アセチル−L−ホモセリン(OAHS)は、文献(出典:Sadamu Nagai,“Synthesis of O−acetyl−homoserine”,Academic Press,(1971),vol.17,pages 423−424)から得たプロトコルに従って、L−ホモセリンから合成した。
【0094】
ステップ2:
事前に合成したOAHS 10g(61mmol)をサーモスタット制御された250mLガラス反応装置内の蒸留水140ml中に投入する。溶液を機械撹拌しながら35℃とする。反応媒体のpHは4.8である。酵素を添加する前に、トリチオカーボネート及びカーボンジスルフィドの溶液数滴(トリチオカーボネート4.78g、カーボンジスルフィド31mmol、1.87mL;蒸留水20mLに31mmolを溶解)を添加することによって、pHを7.2に設定する。
【0095】
(t=0にて)反応媒体1mLのサンプルを採取する。ピリドキサール5’−ホスフェート(10mmol/L)の溶液400μL及び酵素(O−アセチル−L−ホモセリンスルフヒドリラーゼ)0.6gを含有する蒸留水10mLの溶液を調製する。酢酸の形成を示すpHの低下によって、反応の開始を示すことができる。反応媒体を7.2に等しいpHに維持することが必要である。これを行うために、滴下漏斗を介してナトリウムトリチオカーボネート溶液をゆっくり添加する。反応中に試料(1mL)を採取する。電位差滴定、TLC、HPLC及びUPLC/UV質量による分析(誘導体化後)は、試薬(OAHS及びNa)の段階的な消失及びL−ホモラファヌサム酸の、次第に大量となる段階的な出現を示す。OAHSがすべて反応したら、2M塩酸溶液を使用して、媒体のpHを5に低下させる。
【0096】
L−ホモラファヌサム酸(ジチオカルバメート)が得られる。
【0097】
UPLC/UV質量法のための誘導体化は、実施例1に記載したのと同じ方法で実施した。
【0098】
OAHSの完全消失後に認められた唯一の他の生成物は、微量のホモセリン(OAHSの加水分解)及びさらに微量のホモシステインである。
【0099】
ステップ3:ジチオカルバメートの分離及び単離
反応媒体を、30℃にて減圧下で(反応媒体中に存在するナトリウムアセテート及び他の塩の析出を回避するために)水を一部蒸発させることによって濃縮する。ジチオカルバメートは水に最も溶解しにくい種であることが判明しているため、析出物がこのように形成される。濾過及び乾燥の後、ジチオカルバメート8.3gが得られる。ジチオカルバメートの全体的な単離収量は、理論値11gのうち8.3g、即ち75.4%である。