特許第6850904号(P6850904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6850904切削インサートを機械加工する方法及び切削インサートを機械加工するための対応する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850904
(24)【登録日】2021年3月10日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】切削インサートを機械加工する方法及び切削インサートを機械加工するための対応する装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/36 20140101AFI20210322BHJP
   B23K 26/03 20060101ALI20210322BHJP
   B23P 15/28 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   B23K26/36
   B23K26/03
   B23P15/28 A
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-553634(P2019-553634)
(86)(22)【出願日】2017年12月8日
(65)【公表番号】特表2020-506065(P2020-506065A)
(43)【公表日】2020年2月27日
(86)【国際出願番号】EP2017081997
(87)【国際公開番号】WO2018114390
(87)【国際公開日】20180628
【審査請求日】2019年11月20日
(31)【優先権主張番号】102016225602.5
(32)【優先日】2016年12月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505385985
【氏名又は名称】ザウアー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】SAUER GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】マルティン ライザッハ
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ヒルデブラント
【審査官】 石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102004058868(DE,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0000893(US,A1)
【文献】 特開2007−248461(JP,A)
【文献】 特開2011−098390(JP,A)
【文献】 特表2018−514392(JP,A)
【文献】 特許第3643104(JP,B2)
【文献】 特許第6675420(JP,B2)
【文献】 特表2013−514889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/36
B23K 26/03
B23P 15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザービームを用いて硬質材料でコーティングされた多層切削インサートブランクを機械加工する方法であって、
レーザー加工装置を使用して所望のエッジ及び/又は表面幾何学的形状(13)を生成するために、アブレーション形状に従って前記多層切削インサートブランクを機械加工するための機械加工プログラムを事前に確定するステップと、
前記レーザー加工装置において前記多層切削インサートブランクを締め付けるステップと、
前記締め付けられた多層切削インサートブランクの切刃のエッジ位置を求めるステップと、
前記多層切削インサートブランクを測定位置に位置決めするステップと、
前記切刃のエッジ位置を求めるステップの後に、前記多層切削インサートブランクの層のうちの少なくとも1つの厚さを測定するステップと、
一貫したアブレーション形状で前記測定された層厚さに従って前記多層切削インサートブランクを機械加工するために、事前に確定された前記機械加工プログラムを変更するステップと、
切刃(12)を含む前記所望のエッジ及び/又は表面幾何学的形状(13)を生成するために、前記変更された機械加工プログラムを使用して、前記レーザー加工装置のレーザーにより前記締め付けられた多層切削インサートブランクを機械加工するステップと、
を含む、レーザービームを用いて多層切削インサートブランクを機械加工する方法。
【請求項2】
前記機械加工プログラムを変更する前記ステップは、前記レーザーの制御を前記測定された層厚さに適合させるステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載のレーザービームを用いて多層切削インサートブランクを機械加工する方法。
【請求項3】
前記機械加工プログラムを変更する前記ステップは、前記レーザーの焦点が外れないように、前記測定された層厚さに応じて前記レーザーの焦点合せを適合させることを含むことを特徴とする、請求項2に記載のレーザービームを用いて多層切削インサートブランクを機械加工する方法。
【請求項4】
前記機械加工プログラムを変更する前記ステップは、前記測定された層厚さに応じて、1つ以上のレーザーパラメーター及び/又は前記レーザー誘導を適合させることを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のレーザービームを用いて多層切削インサートブランクを機械加工する方法。
【請求項5】
前記機械加工プログラムを変更する前記ステップは、前記レーザーによってアブレーション層厚さを調整するステップを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のレーザービームを用いて多層切削インサートブランクを機械加工する方法。
【請求項6】
記測定するステップ及び前記機械加工するステップは、前記締め付けられた工作物ブランクの同じ位置で実施されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のレーザービームを用いて多層切削インサートブランクを機械加工する方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法によってレーザービームを用いて硬質材料でコーティングされた多層切削インサートブランクを機械加工するレーザー加工装置であって、
前記レーザー加工装置は、
レーザー加工によって所望のエッジ及び/又は表面幾何学的形状を生成するために、アブレーション形状に応じて前記多層切削インサートブランクを機械加工するための所定の機械加工プログラムを記憶するメモリデバイスと、
レーザー加工によって所望のエッジ及び/又は自由表面幾何学的形状を生成するために、アブレーション形状に応じて前記多層切削インサートブランクを機械加工するための前記機械加工プログラムを実行する制御ユニットと、
前記多層切削インサートブランクを締め付ける締付け装置と、
締め付けられた前記多層切削インサートブランクの切刃のエッジ位置を求めるための光学測定デバイスと、
前記多層切削インサートブランクを測定位置に位置決めする位置決め装置と、
前記多層切削インサートブランクの少なくとも1つの層の厚さを測定する測定デバイスと、
一定のアブレーション形状で前記測定された層厚さに応じて前記多層切削インサートブランクを機械加工するために、前記メモリデバイスに記憶された事前に確定された前記機械加工プログラムを変更するデバイスと、
前記所望のエッジ及び/又は表面幾何学的形状(12、13)を生成するために、前記変更された機械加工プログラムを用いてレーザーにより前記締め付けられた多層切削インサートブランクを処理するレーザーデバイスと、
を備える、多層切削インサートブランクを機械加工するレーザー加工装置。
【請求項8】
前記層厚さを測定する前記測定デバイス及び/又は前記締め付けられた多層切削インサートブランクを機械加工する前記レーザーデバイスは、最大120度の傾斜量だけ前記締付け装置に対して傾斜させることができることを特徴とする、請求項7に記載の多層切削インサートブランクを機械加工するレーザー加工装置。
【請求項9】
前記制御ユニット(16)は、レーザー加工と、前記層厚さ及び/又はエッジ位置及び/又は相対位置に関する前記多層切削インサートブランクの測定とを、同時に実行するように構成されていることを特徴とする、請求項7又は8に記載の多層切削インサートブランクを機械加工するレーザー加工装置。
【請求項10】
前記メモリデバイスに記憶された前記機械加工プログラムを変更する前記デバイス(18)は、前記メモリデバイス(17)に記憶された前記機械加工プログラムを、前記測定
された層厚さに自動的に適合するように構成され、レーザーパラメーター、レーザー誘導、レーザー設定及び/又は前記アブレーション層の厚さは、前記レーザーにより、前記材料層厚さの測定後に前記層厚さに応じて適合されることを特徴とする、請求項8又は9に記載の多層切削インサートブランクを機械加工するレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーを用いて切削インサートを機械加工する、特にエッジ及び表面加工のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現行の技術水準では、切削又は材料加工工具として、レーザーが使用されることが多い。
【0003】
特許文献1から、例えば、レーザーを用いて工作物を切削する方法が既知である。この方法により、レーザー出力が測定され、レーザーのアブレーション速度は、測定されたレーザー出力に基づいて調整される。これにより、レーザーのアブレーション速度を非常に精密に調整することができる。
【0004】
半導体技術では、例えば、特許文献2が、金属表面に付与される透明層の層厚さが求められ、下にある金属層に損傷を与えることなく上記透明層のみが除去されるように、透明層の層厚さに応じてレーザーが制御されるプロセスについて記載している。
【0005】
切削インサート等の切削工具の製造では、現行の技術水準から、レーザーを用いるエッジ加工も既知である。こうしたインサートは、例えば、基板上に形成された多結晶ダイヤモンド層(PCD)からなる硬質材料層を有することが多い。こうした切削インサートは、通常、工作物ブランクであり、工作物ブランクは、エンドミル等としてのそれらの後の意図された用途に従って工具ブランクとも呼ばれる。
【0006】
例えば、特許文献3から、切刃又は切刃に隣接する表面の対応する幾何学的形状を保証するために、パルス状レーザーが切削インサートブランクのエッジに沿って誘導され、したがって、層毎に除去される方法が既知である。
【0007】
アブレーションは、機械加工プログラムにおいて、工作物ブランクの形状と結果として得られる切刃又は傾斜面の所望の幾何学的形状とに応じて事前に定義される、アブレーション形状(ablation geometry)に従って行われる。アブレーション形状は、工作物ブランクと、切刃を含む所望の自由表面を有する完成した工作物の幾何学的形状との相違を表す。
【0008】
レーザー処理装置、通常、工作機械の制御もまた、機械加工プログラムを使用する自動化機械加工の枠組内でアブレーション形状及び材料特性に合わせて調整される。多層材料の場合、レーザーパラメーターは、この目的で、その時点で機械加工されている材料層に応じて求められる。これが必要であるのは、異なる材料は、それらの特性、密度、強度、吸収能力、硬度等に応じて、レーザービームに対して異なるように反応するためである。材料に対するレーザー制御の適合は、機械加工プログラムの仕様に従って、機械加工位置に応じて自動的に行われ、特に、異なる硬質材料の間の層変化中に適合される。
【0009】
実際には、最初に、サンプルがより大きな丸いブランクから分離され、その後、機械加工プログラムの仕様に従ってレーザー加工が施される。
【0010】
それにより、実際には、切削面の製作のための精密な自由形状の幾何学的形状の製作中に問題が発生することが多いことが証明された。
【0011】
したがって、本発明の発明者らは、レーザーによって多層材料を機械加工するために切刃品質を最適化するという問題に徹底的に対処し、この目的で、レーザーを用いて多層材料を機械加工することに含まれるプロセスをより精密に分析した。
【0012】
そうしたプロセスの基本的な性質を説明するために、特定された問題を図5a、図5bに示す。図5a及び図5bは、切削インサートブランク100の断面図を示し、基材101の表面に硬質材料層102が付与されている。
【0013】
インサートブランク100の表面は、切削表面103の先行面、すなわち、機械加工するための完成したインサートの切削表面を形成する面に対応する。切削表面103のこの先行面は、切刃104の先行エッジを介して先行端部フランク105から分離されている。
【0014】
制御ユニットを用いて、このとき、図5aに示すように、切刃104の先行エッジに沿ってレーザービーム106が(例えば、前後に)誘導され、したがって、エッジにおいて層毎に深さ方向に、最初に層107、最上層102の完全なアブレーションの後に層108を除去する。図5aにおいて破線により概略的に示すように、機械加工は、中実材料から実施することができ、レーザー切削は表面に対して垂直である。しかしながら、実際には、粗く事前切削されたブランクから角度をなして、レーザーによって表面/エッジ加工を実施することも妥当である。
【0015】
図5a及び図5bに示す現行の技術水準からの例では、硬質材料層102の層厚さDは、図面において層の異なるハッチングによって示す所望の層厚さDより大きい。
【0016】
したがって、機械加工プログラムに記憶された層厚さは、機械加工すべき切削インサートブランク100の実際の層厚さに対応せず、レーザーパラメーターは、実際の層厚さはD又はDであるものの、最初の機械加工プログラムに記憶された層厚さD又はDに従って、層107から層108への移行時に、指定された機械加工プログラムに従って変更される。
【0017】
したがって、制御ユニットは、切刃104の先行エッジに沿ったいくつかの材料層のアブレーションの後に、制御、すなわち、レーザー106のレーザー誘導及び/又はレーザーパラメーターを、全ての硬質材料102がまだ除去されてはいないものの、基材101の材料特性に既に適合させる。したがって、図5bに概略的に示すように、硬質材料層102と基材101との間の移行領域において、オフセット107が生成される。
【0018】
切削インサートブランク100の対応する層厚さが機械加工プログラムに記憶された値に従わないため、切削インサート110の後部にも更なるオフセット108が発生する。
【0019】
その結果、アブレーション層107及び108の層厚さもまた異なることとなり(図5aを参照)、その理由は、上述したように、レーザー放射線が異なる硬質材料と異なるように相互作用し、その結果、同じレーザー設定、すなわち同じレーザーパラメーターで、異なる量の材料が除去されるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】独国特許出願公開第10200506107号
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0084837号
【特許文献3】独国特許出願公開第102009044316号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上述した問題に基づき、本発明の目的のうちの1つは、工作物ブランクからより高品質の切刃及び自由表面を製造する方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上述した問題を解決するために、請求項1の特徴を有する方法及び請求項8の特徴を有する装置を提供する。好ましい構成は、従属請求項に示す。
【0023】
レーザービームを用いて多層工作物ブランクを機械加工する、本発明による方法は、レーザー加工により所望の表面及び/又はエッジを生成するために、アブレーション形状に応じて工作物ブランクを機械加工するための機械加工プログラムを事前に確定するステップと、レーザー加工装置によって機械加工するために工作物ブランクを締め付け(tensioning)、工作物ブランクを測定位置に位置決めするステップと、多層工作物ブランクの層の少なくとも1つの厚さを測定するステップと、一貫したアブレーション形状で、測定された層厚さに応じて多層工作物ブランクを機械加工するために、機械加工プログラムを変更するステップと、所望の表面及び/又はエッジ幾何学的形状を生成するために、変更された機械加工プログラムを使用して、レーザー加工装置のレーザーにより、締め付けられた工作物ブランクを機械加工するステップとを含む。
【0024】
したがって、本発明の本質的な態様は、所定厚さに基づいた工作物のアブレーション形状を既に含む、最初に事前に確定された機械加工プログラムを、後に、工作物ブランクの締め付けられた位置で、すなわち、工作物ブランクの層厚さ(複数の場合もある)の(追加の)測定に応じて変更することからなる。
【0025】
これは、従来の機械加工プログラムが、アブレーションに関連する幾何学的情報の全てを既に含む限りにおいて、特有である。
【0026】
したがって、本発明による手法は、第1のステップにおける機械加工プログラムの分離及び生成並びに第2のステップにおける工作物の締付け及び機械加工のこの原理から逸脱し、工作物を締め付けた後に変更されたものである変更された機械加工プログラムと、多層工作物ブランクの層厚さ(複数の場合もある)の更新された測定とに従って、締め付けられた工作物ブランクを機械加工することにより、これらの2つのステップを組み合わせる。
【0027】
これらの追加の処置は、一見して努力を要することに見えるが、本発明の特別な利点の1つは、締付け又はクランプ位置でのこの追加の測定が、難なく自動的に実施することもでき、この段階で、機械加工プログラムの単純な変更が依然として可能である、ということが認められるということである。これが可能であるのは、締め付けられた工作物の同じ座標系を、測定とレーザーによる機械制御又はプログラム制御アブレーション機械加工とに使用することができるためである。
【0028】
その結果、生成される自由表面の品質を大幅に向上させることができ、その理由は、機械加工プログラムが常に自動的に現在の層厚さに正確に適合されることが保証されるためである。このように、例えば、自動化方法においても、コーティング厚さの非常に不規則なばらつきもまた考慮することができる。総じて、「後続する」層厚さ測定による機械加工プログラムのこの適合は、例えば、図5a/図5bに示したような、接着層と基材との間のオフセットの形成の上述した問題を、完全に防止するか又は少なくとも著しく低減させることができる。
【0029】
有利なように、レーザーパラメーターは、本発明の一実施形態において、測定された層厚さに応じて測定された層厚さに適合される。こうしたレーザーパラメーターとしては、例えば、レーザー出力、レーザー周波数、パルス持続時間及び/又は表面上でのレーザーの移動速度が挙げられる。
【0030】
しかしながら、本発明によれば、レーザーパラメーターを変更することができるだけでなく、特に好ましい実施形態では、レーザー誘導もまた適合される。レーザーのレーザー軌跡及び/又は焦点位置もまた、レーザーが焦点から外れないように調整することができる。
【0031】
本発明による方法の特に好ましい構成では、アブレーション層の厚さは、機械加工プログラムにおいてレーザーによって調整される。言い換えれば、幾何学的NCプログラムにより、機械加工プログラムの本質的な部分として、精密に測定された層厚さに応じて、機械加工プログラムにおける新たな層、除去すべき層の再定義、及びそれらの寸法により、アブレーション層の厚さは材料変化に対して特に反応する。この処置では、上述したレーザーパラメーターの追加の調整は必ずしも必須ではないが、適切な材料を選択するときに必要であるべきである限り、レーザーパラメーターを調整することもできる。
【0032】
この時点で、エッジ又は表面加工の枠組内でのレーザー誘導の基本原理は、当業者には極めて熟知されていることが指摘されるべきである。例えば、この時点で、工作物を機械加工するための、特に、切削工具の製造及び関連するレーザー誘導のための方法であって、レーザーが、エッジに沿って誘導され、アブレーション形状に従って深さ方向に層毎に除去される方法について記載している、本出願人による国際公開第2013/004850号を参照されたい。レーザー誘導の同様の説明は、同様に、レーザー制御に関する当業者の平均的な知識の典型的な例である、特許文献3にも見出すことができる。
【0033】
本発明の好ましい更なる展開によれば、装置の座標系に関する締め付けられた切削インサートブランクの位置もまた測定することができ、この位置に加えて、切削インサートブランクのエッジ位置もまた求めることができる。
【0034】
切削インサートブランクの実際の位置とともにそのエッジ位置の位置確定は、層厚さの対応する測定及び後にレーザー加工も実施される、対応する公称位置まで、切削インサートブランクを移動させるために、重要である可能性がある。
【0035】
切削インサートブランクの位置及びそのエッジ位置が正確に既知である場合、層厚さ測定の続くステップにおいて、切削インサートブランクにおける特定の位置を測定することができ、すなわち、特に、切刃の先行エッジの特定の位置において、硬質材料の層厚さを測定することができる。
【0036】
本発明の好ましい実施形態によれば、切削インサートブランクの位置及びエッジ位置を求めた後、計測学的に必要である限り、本質的に自由表面の先行面を考慮して層厚さが測定される測定位置まで、切削インサートブランクを枢動させることができる。
【0037】
代替的に、工作物の締付けステップ及び測定位置における位置決めステップもまた、締め付けた後の締付け又はクランプされた工作物ブランクの位置が、工作物ブランクを更に位置決めする必要なしに測定位置として既に使用することができる場合、1つのステップで実施することができる。
【0038】
好ましい実施形態では、層厚さ測定及び/又は切削インサートブランクの位置確定及び
/又はエッジ位置確定は、光学測定デバイスを用いて実施することができる。
【0039】
光学測定デバイスは、光学カメラ、顕微鏡、又は光学的方法によって動作する他の任意のデバイスとすることができる。好ましくは、カメラを使用して、層の異なるコントラストに基づいて層厚さを求めることができる。画像処理方法を用いて、個々の層(複数の場合もある)のコントラストに基づいて、位置及び対応する層厚さが求められる。
【0040】
特に、締付け装置に関連して切削インサートブランクの対応する位置を求め、切削表面の先行面の上面図において対応するエッジ位置を求めるカメラを使用することができる。エッジの位置を求めるために、例えば、カメラは、切削インサートブランクのエッジに沿って移動する。
【0041】
この確定の後、好ましくは、カメラ及び/又は切削インサートブランクは、枢動し、好ましくは約90度回転し、その結果、カメラは、自由表面の先行面に対して本質的に垂直に向けられ、したがって、光学的に切刃の先行エッジの領域において硬質材料層の層厚さを求める。
【0042】
切削インサートブランク及びそのエッジの位置を求め、層厚さを測定した後、レーザーは、対応する先行エッジ(その位置はこの時点で既知である)に沿って誘導されて、対応する切刃を生成する。
【0043】
本発明による方法の好ましい更なる展開によれば、層厚さ測定は、切刃の先行エッジのいくつかのエッジ位置で実施することができ、レーザーパラメーターは、測定された位置における平均層厚さに、又は対応する位置におけるそれぞれの層厚さに調整することができる。
【0044】
したがって、対応する基体の切刃の先行エッジの1つの単一エッジ位置において層厚さが測定されるだけでなく、いくつかのエッジ位置が測定される、ということが有利である。
【0045】
代替的に、これらの求められた層厚さを平均することができ、平均された層厚さの情報を、レーザーパラメーターの調整に使用することができる。
【0046】
更に高い表面及び/又はエッジ品質を得るために、レーザーパラメーター及び/又はレーザー誘導はまた、生成すべきエッジに沿って移動する間、又はいくつかの層のアブレーションの後に、これらが各々、対応する測定位置における層厚さに適合されるように、変更することもできる。
【0047】
本発明の関連する態様によれば、好ましくは工作機械として構成されたレーザー加工装置に、請求項7の特徴も提供される。
【0048】
レーザービームを用いて多層工作物ブランクを機械加工する、本発明によるレーザー加工装置は、レーザー加工によって所望のエッジ及び/又は自由表面幾何学的形状を生成するために、アブレーション形状に応じて工作物ブランクを機械加工するための所定の機械加工プログラムを記憶するメモリデバイスと、レーザー加工によって所望のエッジ及び/又は表面幾何学的形状を生成するために、アブレーション形状に応じて工作物ブランクを機械加工するための機械加工プログラムを実行する制御ユニットと、工作物ブランクを締め付ける締付けユニットと、工作物ホルダーを測定位置に位置決めする位置決め装置と、多層工作物ブランクの少なくとも1つの層の厚さを測定する測定デバイスと、一定のアブレーション形状で測定された層厚さに応じて多層工作物ブランクを機械加工するために、
メモリデバイスに記憶された機械加工プログラムを変更するデバイスと、所望のエッジ及び/又は表面幾何学的形状を生成するために、変更された機械加工プログラムを用いてレーザーにより締め付けられた工作物を機械加工するレーザーデバイスとを備える。
【0049】
好ましい実施形態では、層厚さを測定する測定デバイス及び/又は締め付けられた工作物ブランクを機械加工するレーザーデバイスは、締付け装置に対して最大120度、傾斜させることができる。
【0050】
制御ユニットは、例えば、PC又は工作機械の制御ユニットとすることができ、そのインターフェース(複数の場合もある)を介して、対応するレーザー、対応する測定デバイス及び対応する保持又は供給装置が制御される。
【0051】
制御ユニットは、レーザー加工と、層厚さ及び/又はエッジ位置及び/又は相対位置に関する工作物ブランクの測定とを、同時に実行するように構成することができる。
【0052】
好ましい実施形態では、メモリデバイスに記憶された機械加工プログラムを変更するデバイスは、メモリデバイスに記憶された機械加工プログラムを、測定された層厚さに自動的に適合するように構成され、レーザーパラメーター、レーザー誘導、レーザー調整及び/又はアブレーション層の厚さは、レーザーにより、層厚さの測定後に層厚さに応じて適合される。
【0053】
5軸加工の本発明による装置を用いて可能である測定システム又はレーザーに対する工作物の位置決めは、レーザー加工及び測定を1回の締付けで実施することができるため、本質的な利点を提供する。このように、最初に機械加工プログラムを定義し、その後、それを、機械上の工作物の締付けに直接適合させることができる。これにより、時間のかかる再締付けが不要となる。
【0054】
本発明の更なる詳細及び利点は、図面に関連して後述する実施形態からもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】本発明によるレーザー加工装置の工作物テーブル上で締め付けられている切削インサートブランクを示す図である。
図2図1からの切削インサートの図である。
図3図1からの切削インサートの概略側面図である。
図4a】エッジ処理の前の切削インサートブランクの側面図である。
図4b】レーザーを用いる自由表面の露出の後の切削インサートの側面図である。
図5a】現行の技術水準において既知の方法による、エッジ処理の前の切削インサートブランクの側面図である。
図5b】現行の技術水準において既知の方法による、レーザーを用いる自由表面の露出の後の切削インサートの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1は、レーザー加工装置1の工作物テーブル2の上で締め付けられている多層工作物ブランク3を機械加工する、本発明によるレーザー加工装置の一実施形態を示す。
【0057】
本実施形態において、レーザー加工装置は、5軸加工用に構成されている工作機械である。したがって、図1には、3つの直線軸XYZ及び2つの回転軸A、Cが描かれている。工作機械は制御ユニット16を有し、制御ユニット16は、レーザー9によるインサートブランクのレーザー加工のために、メモリデバイス17に記憶された機械加工プログラムを制御するために使用することができる。この目的で、メモリデバイス17に記憶され
た機械加工プログラムは、アブレーション形状を含む従来のNCプログラムとともに、必要なレーザー経路誘導及びパラメーター化を含む。レーザー出力、レーザー周波数、パルス持続時間並びにレーザーの送り速度及び軌跡速度等、レーザー設定を制御するレーザーパラメーターは、アブレーション形状に従って指定される。
【0058】
図1において、参照符号6はカメラを指し、カメラは、工作物ブランク3上の機械加工すべき層の位置と、工作物テーブルに対するブランクの位置とを確定するために使用することができる。したがって、この実施形態では、工作機械は、自動的に、切削インサートブランクの位置を測定し、同時に、この位置の位置合せに従ってレーザーを制御することができる。このように、本実施形態の工作機械は、最新の5軸CNC加工を工作物のレーザー測定と組み合わせる。このように、特にPCD又はCVDから作製される切削インサート及びエンドミルの切刃、自由角度切削溝を、1回の締付けで測定し機械加工することができ、その結果、本発明による方法によって、生産性もまた大幅に向上する。この種の機械加工により、自由角度は、9度〜35度の広い範囲内で自由に変更することができる。最小切刃半径は、最大1μmとすることができる。
【0059】
実際に利用可能な層厚さによる正確な制御により、チッピングのない最適化された切刃がもたらされ、それは、切刃半径又は自由角度に関する損失を受け入れる必要なしに、結果として得られる工具の耐用年数の延長に対して大きく寄与することができる。
【0060】
機械加工プログラムを適合させる目的で、制御ユニットは、自動プログラム生成デバイス18を有し、自動プログラム生成デバイス18は、3D CADデータから最初の機械加工プログラムを生成することができるだけでなく、測定された層厚さに基づき、機械加工プログラムを後で同様に自動的に変更することもできる。
【0061】
同様にメモリデバイス17に記憶され、制御ユニット16によって実行される、関連する画像処理アルゴリズムを用いて、切刃ブランクの異なる材料層のコントラストに基づき、正確な相対切刃位置を正確に求めることができる。5軸加工の範囲内における可動性により、カメラが側部領域に直接向けられるように、測定のために切削インサートブランクを90度傾斜させることは、難なく可能である。
【0062】
図2は、切削インサートブランクの上からの図を示し、位置Aは工作物テーブル2上の公称位置に対応し、位置B(エッジに水平線がつけられている)は実際の位置に対応する。
【0063】
カメラ6の画像視野は、切削インサートブランク3、すなわち、切削表面4の先行面が、このカメラ6によってスキャンされるか、又はカメラがエッジに沿って移動するように寸法が決められ、エッジ位置及び対応する切削インサートブランク3の位置は、画像処理を用いて高精度で求められる。
【0064】
位置を求めた後、切削インサートブランクは、例えば、工作物テーブル2を移動させるか又は傾斜させることにより、実際の位置Bから公称位置Aまで移動する。
【0065】
この後、図3に概略的に示すように、カメラ6及び切削インサートブランク3は、カメラ6が自由表面5の先行面に対して本質的に垂直に向けられるように、互いに対して90度枢動する。図2及び図3の両方において、カメラを用いてそれぞれのエッジ又は層厚さの確定が実施される位置には、横線が引かれた円がつけられている。
【0066】
カメラ6は、硬質材料層7及び基材8を、関連する画像処理アルゴリズムを用いて、これらの層の異なるコントラストに基づいて検出し、したがって、制御ユニットは、硬質材
料層7の層厚さを正確に求めることができる。
【0067】
この実施形態では、切削インサートブランク3の位置、そのエッジの位置、及び硬質材料層の層厚さは、工作物ブランクの1回の締付けで同じカメラ6を用いて求められる。
【0068】
カメラ6、及び/又は位置決め装置全体若しくはその一部、例えば、工作物テーブル2は、枢動可能に取り付けることができる。これにより、切削インサートブランク3をカメラ6に対して傾けることができることが確実になる。
【0069】
工作物テーブル2上での切削インサートブランク3の位置及びそのエッジ位置並びに硬質材料層のその層厚さもまた既知となった後、図2及び図3には示さず図4aにおいて参照符号9が付されたレーザービームが、このとき、切削インサートブランク3の切削表面4の先行面の側から、切削インサートの先行エッジ10の領域上に向けられ(図4aを参照)、自由表面11の先行面に対して実質的に平行な切刃の先行エッジ10に沿って誘導される(図4aを参照)。ここで、レーザーを移動させることができ、及び/又は、図1に示す工作物テーブルの位置決め装置を使用して、切削インサートブランクを移動させることができる。
【0070】
図4aは、切削インサートブランク3の断面図を示し、そこでは、エッジ加工の前に切削インサートブランク3に所定角度で形成されている、切刃の先行エッジ10、自由表面の先行面5及び切削表面の先行面4を概略的に示し、完成した切削インサート11に設けられているそれぞれの切刃12、自由表面13及び切削表面14を概略的に示す。
【0071】
図4aに示すように、レーザービーム9は、(紙面に対して垂直である)切刃の先行エッジ10に沿って誘導され、幅b1の材料を、切刃の先行エッジ10まで長手方向に層毎に(深さ方向に)除去する。
【0072】
レーザーが、硬質材料層7と基材8との間の境界面に到達すると、図1に示すとともに基材8の材料特性に適合された制御ユニット16の機械加工プログラムに従って、硬質材料層7の測定された層厚さに基づき、レーザー軌跡、焦点位置及びアブレーション層の厚さが変更される。
【0073】
材料幅b1のアブレーションにより、図4bにおいて断面図で概略的に示す、切削表面14、自由表面13及び切刃12を有する完成した切削インサート幾何学的形状11が生成される。
【0074】
レーザー厚さ情報に基づいてレーザー誘導をそれぞれのインサートブランク3に適合させることにより、発生するオフセットを比較的小さくすることができ、又は、図4bに示すように、硬質材料層7と基材8との間のオフセットを完全に回避することができる。
【0075】
硬質材料層は、好ましくは、多結晶ダイヤモンドからなり、他の硬質材料は、立方晶BN、TiC、TiV WC、TaCとすることができる。硬質材料層は、好ましくは、セラミック層である。
【0076】
基材として、好ましくは超硬合金が使用される。基材用の材料は、焼入鋼、高強度合金とすることができる。
【0077】
硬質材料層の厚さは、好ましくは、30μm〜1000μm、特に50μm〜800μm、好ましくは100μm〜700μm、特に約400μmである。
【0078】
単層の基材の代わりとして、基材8と硬質材料層7との間に、1つ以上の更なる層もまた設けることができる。この場合、機械加工プログラムのレーザーパラメーター又はレーザー誘導は、少なくとも1つ以上の層、又は各対応する層の厚さに適合させることができ、2層材料に対して上述したものと類似する手順を実施することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 エッジ加工装置
2 工作物テーブル
3 工作物ブランク
4 切削表面の先行面
5 自由表面の先行面
6 カメラ
7 硬質材料層
8 基材
9 レーザー
9a レーザービーム
10 切刃の先行エッジ
11 切削インサート
12 切刃
13 自由表面
14 切削表面
15 インターフェース
16 制御ユニット
17 メモリデバイス
18 機械加工プログラム生成デバイス
100 切削インサートブランク
101 基材層
102 硬質材料層
103 切削表面の先行面
104 切刃の先行エッジ
106 レーザービーム
107 オフセット
108 オフセット
B 実際の位置
A 公称位置
b1 材料幅
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b