【文献】
冨川 章, 外3名,施設栽培のトマト、イチゴで発生する病害虫や天敵に対する電解機能水利用への試み,三重県科学技術振センター農業研究部報告,[online],2002年 3月,29号,pp. 1-13,[令和2年11月26日検索], インターネット <URL:https://www.pref.mie.lg.jp/nougi/hp/29110027003.htm>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
温暖な季節を迎えると、家庭内において、食物残渣やその臭いにつられ、ショウショウバエなど各種の害虫が寄り集まったり、湧いたりすることがある。
身近な例えとして、一般的に「コバエ」と呼ばれるショウジョウバエ、ノミバエを挙げれば、ショウジョウバエは、病原菌を媒体するまでには至らないものの、食品などに集まり産卵、そして一気に大量発生する。
また、ノミバエについては動物の排泄物からも発生することから衛生上、問題視される害虫である。
【0003】
害虫に対し、殺虫成分として用いられる物質には、代表的なものとしてピレスロイド系化合物がある。
たとえば、後述する特許文献1の技術では、殺虫成分としてケロシン難溶性ピレスロイド化合物が用いられ、その溶解剤には、芳香族アミド系化合物であるN,N−ジエチル−m−トルアミドを含有するエアゾール剤が用いられている。
しかし、このような殺虫成分は、ヒトに対する安全性と健全性が十分確保されているとは言い難く、実際に使用した空間に居るのが苦痛であることが一般的な共通認識である。
【0004】
また、特許文献2には、高圧水収容タンク内部に、酸素と水素の混合ガス噴射ノズルと点火装置、ならびに棒状ないしは線状金供給装置を備えた燃焼室を設けることが開示されている。
同文献2の技術では、この燃焼室のなかで、点火装置により酸素と水素の混合ガス噴射ノズルに点火して、原料の金を溶解蒸発させることにより金蒸気を生成する。
その後、発生した金蒸気を高圧水と接触させることにより生じる金超微粒子を水中に浮遊分散させる、という非常に独自の構成を有する装置を用いた製法により「金超微粒子含有高機能水」を生成する。
同文献2の構成からは「金超微粒子含有高機能水」として、酸素と水素を混合して生成される純水中に金超微粒子が浮遊分散したもの、が得られることになる。
特許文献2では、このような「金超微粒子」含有高機能水が、害虫忌避剤としての効能も有することを示唆している(同文献2・第7段落)。
特許文献2によれば、純水に含まれる成分は、浮遊分散している金超微粒子だけであるため、同文献2の高機能水を害虫忌避成分として使用すれば、人体への安全性が確保されるものと考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
殺虫剤を使用して害虫を駆除した際、その死骸の一部が、駆除を行った箇所に残ってしまうことがあり得る。
特許文献1〜2に例示したような従来の殺虫剤は、殺虫効果こそ認められるものの、駆除した後の害虫の死骸の一部部位が残ってしまっているときに、これを分解することまでは考慮されていない。
殺虫剤の使用者が気付くのが難しいほどに細やかなサイズの害虫の死骸が残っているのは、心理的にも不快なだけでなく、特に乳幼児においてはそれらを何らかの手段で経口投入してしまう恐れすらある。
また、それらの死骸を餌として生活する新たな害虫を呼び込むことにもなりかねず、好ましくない。
さらに、それら害虫の体には細菌が付着していることもあるため、駆除後において微細な死骸の一部がそのまま残されていることは、衛生的な状態とは言い難い。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、殺虫効果を奏するとともに、駆除後に残された害虫の死骸を分解することが可能な溶液状殺虫剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔第1発明〕
そこで、上記の課題を解決するために、本願の第1発明に係る溶液状殺虫剤は、
殺虫作用を及ぼしつつ、除菌・抗菌効果をも発揮しうる溶液状の殺虫剤であって、
精製水と、
光触媒である酸化チタン(TiO
2)と、
溶液状の本殺虫剤の全体量に対して5.5重量パーセントだけ添加されるpH11.5のアルカリ性電解水と、
を含んでなり、
(1)アルカリ性電解水は、本殺虫剤が噴霧された害虫に対して殺虫作用を及ぼし、
(2)酸化チタンは、紫外線が照射された際に、害虫を引寄せたり害虫が繁殖する原因物質に対して除菌・抗菌作用を及ぼし、
(3)同酸化チタンは、紫外線が照射された際に、アルカリ性電解水により駆除された害虫の死骸を分解する構成とした。
【0009】
第1発明によれば、(1)アルカリ性電解水による殺虫作用と、(2)昆虫を引寄せたり昆虫が繁殖する原因物質(食物残渣など)に対する酸化チタンによる除菌・抗菌作用と、(3)駆除された害虫の死骸に対する分解作用と、を併せ持つ。
そのため、溶液状の本殺虫剤を噴霧した際、(1)噴霧された昆虫を殺生するとともに、(2)昆虫が寄り集まる原因物質(食物残渣をはじめとする生ごみ等)への除菌・抗菌処理も同時に施すことができる。
【0010】
さらに、酸化チタン(光触媒)に紫外線が照射されると、光触媒(酸化チタン)表面に正孔が生じ、この正孔が光触媒表面の吸着水を酸化して、水酸基ラジカル(ラジカルOH)を生成させる。
水酸基ラジカルは、活性酸素のなかで最も反応性が高く、かつ最も酸化力が強いため、糖質・タンパク質・脂質などあらゆる物質と反応する。
そのため、水酸基ラジカルは、酸化チタン(光触媒)の表面に吸着している有機物を、水と二酸化炭素に分解する。
【0011】
この水酸基ラジカルの分解作用はきわめて強いものであり、たとえ昆虫の死骸(元来、有機物からなる)であっても、最終的に二酸化炭素にまで分解してしまう。
そのため、第1発明によれば、(3)殺虫剤により駆除された害虫の死骸の一部が、駆除をおこなった場所に残ってしまっている場合でも、酸化チタン(光触媒)の効果により、当該の死骸が分解される。
さらに、昆虫の死骸には、さまざまな細菌が潜んでいるものの、酸化チタン(光触媒)は、昆虫の死骸と分け隔てなく、これらの細菌についても分解作用を発揮できる。
【0012】
なお、本溶液状殺虫剤に混入する光触媒としては、可視光領域における触媒作用を高めるべく、酸化チタンとともに「鉄イオンないしは銅イオンを追加」してもよい。
【0013】
さらに、市場流通している一般的な殺虫剤には、エアスプレーボトルに殺虫成分がガスとともに充填され、気体として噴霧されるものが多く散見される。
このような気体状の殺虫剤を用いて、駆除対象の害虫に噴霧した場合、スプレー噴霧したあとの気体が空気中に拡散し、使用者が殺虫成分を吸込んでしまう事態が起こりやすい。
しかしながら、第1発明によれば、もともと粘度の低い水(精製水やアルカリ性電解水)が成分のほとんどを占めており、溶液状の殺虫剤となっている。
そのため、第1発明の溶液状殺虫剤をスプレーボトルで噴霧した場合でも、霧状に液滴が噴霧されるだけであるため、気体状の殺虫剤と比べて、空気中での拡散範囲が格段に狭いものとなっている。
そのため、第1発明の溶液状殺虫剤を使用した場合、気体状の殺虫剤に比して、使用者が、鼻孔や口腔から本願殺虫剤を吸入するリスクを著しく低減できる。
さらに、第1発明の溶液状殺虫剤は、精製水・アルカリ性電解水のような人体にとって無害な成分に加え、抗菌成分についても「食品添加物に用いられる酸化チタン」が採用されている。
そのため、たとえ使用者が、本溶液状殺虫剤の使用時に、誤って当該殺虫剤を吸込んでしまった場合でも、高い安全性が確保される。
【0014】
〔第2発明〕
また、上記の課題を解決するために、本願の第2発明に係る溶液状殺虫剤は、
炭酸水素ナトリウム(NaHCO
3)をさらに含む構成とした。
【0015】
第2発明によれば、炭酸水素ナトリウムが有する酸性の臭いに対する脱臭効果により、本殺虫剤を食物残渣などに噴霧したときに、これらの臭気を緩和する効果が期待できる。
【0016】
〔第3発明〕
また、上記の課題を解決するために、本願の第3発明に係る溶液状殺虫剤は、
ハーブその他の植物由来の芳香成分をさらに含む構成とした。
【0017】
第3発明によれば、ハーブその他の植物由来の芳香成分により、本殺虫剤を、害虫を引寄せる原因物質に噴霧したときに、害虫に対する忌避効果を期待できる。
上述したような植物由来の芳香成分としては、ハーブ油をはじめ、シトロネラ油・レモンユーカリ油・レモングラス油・オレンジ油・カシア油といった天然精油を採用することもできる。
また、これらの植物由来の芳香成分には、食物残渣をはじめとする生ごみの臭気を緩和する効果も奏する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、
図1を参照して、本発明の溶液状殺虫剤について説明する。
[実施形態]
本発明の実施形態は、ショウジョウバエなどの害虫に対し殺虫作用を及ぼすと同時に、害虫を引寄せる原因物質(食物残渣など)に対する除菌・抗菌作用、ならびに、害虫の死骸に対する分解作用を及ぼすことを目的として、溶液状殺虫剤100を構成した例である。
【0020】
図1は、本実施形態に係る溶液状殺虫剤100の組成を示す模式図である。
同
図1に示す溶液状殺虫剤100は、精製水1と、アルカリ性電解水2と、光触媒3である酸化チタン(TiO2)と、を含んでなる。
なお、本例では、光触媒3の「可視光領域における触媒作用」をより高めるべく、酸化チタンとともに鉄イオンないしは銅イオンを追加してもよい。
【0021】
本溶液状殺虫剤100は、これらの構成要素1〜3以外には「特別な殺虫成分、除菌・抗菌成分を一切含むことなく」調製されている。
そのため、本殺虫剤100の製造方法は、非常に簡易的であり、これらの構成要素1〜3を混合するだけでよい。
また、製造工程が極めて簡易であることに付随して、製造コストや、市場における販売価格についても抑制することが可能となる。
なお、酸化チタン3の結晶構造は、最安定型のルチル型(正方晶)に限らず、アナターゼ型(正方晶)・ブルッカイト型(斜方晶)であってもよい。
また、殺虫剤100に酸化チタン3を添加する際は、あらかじめ粉末状に加工された酸化チタン3を、精製水1とアルカリ性電解水2の混合物に溶解させればよい。
【0022】
精製水1は、イオン交換・蒸留・逆浸透・限外ろ過を単独に又は組合わせて使用することで、常水から製造された水である。
本発明の溶液状殺虫剤100に使用する精製水1は、一般的な精製水(科学実験の溶媒やコンタクトレンズ・医療用器具の洗浄などに供する、雑菌が混入しても大きく影響が出ない用途に使う水)でよい。
溶液状殺虫剤100は、その使用目的に照らして、害虫が寄り集まる原因物質(食物残渣など)に噴霧されるものであり、高純度に精製されていることは溶媒(精製水1)に対して要求されるものではないからである。
【0023】
つぎに、アルカリ性電解水2について説明する。
アルカリ性電解水2は、水道水に食塩を加えて、これを電気分解した際に、負極側において得られる電解水である。
アルカリ性電解水2は、タンパク質を溶解する能力や、油脂を乳化する能力を有することから、一般に調理器具などの洗浄に用いられている。
【0024】
なお、アルカリ性電解水のうち、pH(power of hydrogen:水素イオン濃度指数)値がpH9〜10の範囲内にあるものは飲用可能とされている。
しかしながら、本願の溶液状殺虫剤100では、飲用可能とされる範囲よりも数十倍程度、水素イオン(H
+)の活量(水素イオン濃度とほぼ等しい)が低い「pH11.5」のアルカリ性電解水2を用いる。
【0025】
先述の特許文献2では、「金超微粒子含有高機能水」(酸素と水素を混合して生成される純水中に、金超微粒子が浮遊分散したもの)がそのまま飲用することもできること、さらに同機能水を害虫忌避剤としても使用できることが開示されている(同文献2・第7段落)。
この点、本願発明では「アルカリ性電解水」を使用して、殺虫効果を発揮せしめる点で、特許文献2とは異なる技術的観点に立脚している。
また、本願の溶液状殺虫剤100では「アルカリ性」電解水のうち、飲用可能な範囲(pH9〜10)からは外れたものとなっており、顕著な殺虫効果が得られるpH11.5の
「アルカリ性」電解水に着目している。
【0026】
本発明の溶液状殺虫剤100においては、液体状である本剤100の全体量に対し「5.5重量パーセント」相当量だけ、pH11.5のアルカリ性電解水2を添加する。
この、きわめて強いアルカリ性を示すアルカリ性電解水2が、害虫に対して、非常に有効な殺虫効果をもたらす。
【0027】
本願発明者は、pH11.5のアルカリ性電解水2を5.5重量パーセントだけ含む精製水1を使用し、殺虫効果を確かめる試行を繰返しおこなった。
そのため、害虫に対し「5.5重量パーセントのpH11.5のアルカリ性電解水を含む精製水」(光触媒3を含まないもの)を噴霧した
噴霧を行うために、上記所定量(5.5重量パーセント)のアルカリ性電解水2を含む精製水1を、液体用のスプレーボトルに充填した。
なお、試行に用いた液体スプレーボトルは、ポンプ押下による1回あたりの吐出量は0.14ミリリットルであり、噴霧口から排出される液滴の粒径は20〜30ミクロン程度である。
【0028】
上記試行によれば、最少で5回の噴霧(最多では14回。平均7回)、すなわち、液量に換算して約0.7ミリリットル(0.14ミリリットル×5)の最少分量で「カメムシへの致死効果」が確認された。
【0029】
また、上記試行によれば、平均して2回の噴霧、すなわち、液量に換算して約0.3ミリリットル(0.14ミリリットル×2)の分量で「ショウジョウバエへの致死効果」が確認された。
【0030】
上述したように、従来、アルカリ性電解水は、タンパク質の溶解能力や油脂の乳化能力のみが注目され、その一般的な用途としては、調理器具の洗浄などにとどまっていた。
そのため、「アルカリ性」電解水を、殺虫することを目的として用いる試みは、過去に行われてこなかったように思われる。
そのため、今回の忌避効果を確かめる試行により「アルカリ性電解水を使った殺虫剤」という「用途発明」が成されたものと考える。
【0031】
つぎに、光触媒3について説明する。
本願の溶液状殺虫剤100で使用する光触媒3は、酸化チタン(TiO
2)であり、強い酸化還元作用と、超親水作用を及ぼす。
酸化チタン(TiO
2)は、安価で化学的安定性に優れ、かつ高い光触媒活性(有機化合物分解性、抗菌性・抗ウイルス性など)を有し、さらに人体にも無害であることを理由に広く用いられている。
【0032】
以下に、光触媒3が抗菌作用をもたらす原理について説明する。
光触媒活性を有する酸化チタン(TiO
2)は、一般に、その価電子帯と伝導帯との間のバンドギャップに相当するエネルギーを有する光を吸収すると、価電子帯に存在していた電子が伝導帯に遷移する。
価電子帯から伝導帯に遷移した電子は、酸化チタンの表面に吸着している物質に移動する性質がある。
そのため、酸化チタン表面に吸着している物質は当該電子によって還元される。
また、価電子帯から伝導帯に遷移した電子は、空気中の酸素を還元した場合には、スーパーオキシドアニオン(1つの不対電子を持つ酸素分子)を生成させる。
【0033】
一方、価電子帯に存在していた電子が伝導帯に遷移すると、価電子帯には正孔が生ずる。
価電子帯に生じた正孔は、酸化チタン(TiO
2)表面に吸着している物質から電子を奪い取る性質がある。
そのため、酸化チタンの表面に吸着している物質は、正孔に電子を奪われて酸化される。
さらに、価電子帯に生じた正孔が、光触媒3表面の吸着水を酸化した場合には、水酸基ラジカル(ラジカルOH)を生成させる。
【0034】
つぎに、本実施形態に係る溶液状殺虫剤100の作用について説明する。
【0035】
本溶液状殺虫剤100においては、アルカリ性電解水2が「害虫に対する殺虫効果」をもたらす。
これは、本願発明者が、2ヶ月に及ぶ試行実験を基に、一般的な用途として調理器具などの洗浄に用いられているアルカリ性電解水が「害虫に対する殺虫効果をも奏する」ことをあらたに発見したものである。
このアルカリ性電解水2の害虫に対する殺虫効果は、きわめて高い再現性をもって確認された。
なお、本願発明者が実際に殺虫効果を試した実験対象は、上述したようにショウジョウバエならびにカメムシである。
【0036】
また、光触媒3たる酸化チタン(TiO
2)に対し紫外線が照射された際、害虫を引寄せたり害虫が繁殖する原因物質(食物残渣など)に対して抗菌効果をもたらす。
酸化チタン(TiO
2)を励起する際に必要な光エネルギー(価電子帯と伝導帯との間のバンドギャップに相当するエネルギー)は、3.2電子ボルト〜3.3電子ボルトといわれている。
このエネルギーは、エネルギー量子と振動数の比例関係を基に換算すると約380nmの波長に相当し、近紫外線領域(波長200〜380nm)に含まれる。
【0037】
上述したように、酸化チタン(光触媒3)に紫外線が照射されると光触媒3の表面に正孔が生じ、この正孔が、光触媒3表面の吸着水を酸化して、水酸基ラジカル(ラジカルOH)を生成させる。
水酸基ラジカルは、活性酸素のなかで最も反応性が高く、かつ最も酸化力が強いため、糖質・タンパク質・脂質などあらゆる物質と反応する。
そのため、水酸基ラジカルは、酸化チタン(光触媒3)の表面に吸着している有機物を、水と二酸化炭素に分解する。
すなわち、光触媒3は、近紫外線が照射されると、近紫外線がもつ光エネルギーを吸収し、光触媒3の表面に吸着されている有機物等を分解するため「酸化分解作用」や「抗菌作用」を発現する。
なお、本例においては、光触媒3の可視光領域における触媒性能を向上させるため、酸化チタン単体のみを光触媒3とするのではなく、酸化チタンとともに鉄イオンや銅イオンを追加して光触媒3としてもよい。
【0038】
以上説明したように、本実施形態に係る溶液状殺虫剤100によれば、(1)害虫に対する殺虫作用と、(2)害虫が群がる原因物質への除菌・抗菌機能、を両立・併存できる。
【0039】
とりわけ、溶液状殺虫剤100が、害虫を駆除(殺虫)すべく、食物残渣などの害虫を引寄せる原因物質に噴霧された場合、紫外線を含む太陽光が同剤100に当たることにより、光触媒3たる酸化チタン(TiO2)により、当該原因物質に対する除菌・抗菌効果が発揮される。
これにより、殺虫作用(アルカリ性電解水による機能)とともに、害虫を引寄せる原因物質への除菌・抗菌作用(光触媒による機能)も同時に施すことができる。
なお、溶液状殺虫剤100のように、殺虫効果とともに、太陽光(紫外線)の照射により原因物質への除菌・抗菌効果をも同時に発揮させることは、害虫の二次的な繁殖の連鎖を断ち切ることにもつながるものと考えられる。
【0040】
さらに、本実施形態によれば、(3)殺虫剤により駆除された害虫の死骸の一部が、駆除をおこなった場所に残存している場合でも、酸化チタン(光触媒3)の効果によって、死骸の残りが二酸化炭素まで分解される。
また、昆虫の死骸には、さまざまな細菌が潜んでいるものの、酸化チタン(光触媒3)は、昆虫の死骸と分け隔てなく、これらの細菌についても分解効果を発揮する。
【0041】
また、本実施形態の溶液状殺虫剤100は、もともと粘度の低い水(精製水やアルカリ性電解水)が成分のほとんどを占めており、溶液状に構成されている。
そのため、溶液状殺虫剤100をスプレーボトルで噴霧した場合でも、霧状に液滴が噴霧されるだけであり、気体状の殺虫剤と比べて、空気中での拡散範囲が格段に狭くなる。
そのため、本溶液状殺虫剤100の噴霧時に、使用者が、鼻孔や口腔から同剤100を吸入するリスクを大幅に抑制できる。
【0042】
さらに、本溶液状殺虫剤100は、精製水1・アルカリ性電解水2のような人体にとって無害な成分に加え、抗菌成分としても食品添加物に用いられる酸化チタン(光触媒3)が採用されている。
そのため、たとえ使用者が、誤って溶液状殺虫剤100を鼻孔・口腔から吸込んでしまった場合でも、安全性が保たれる。
【0043】
[変形例:炭酸水素ナトリウム(NaHCO
3)を追加]
本溶液状殺虫剤100は、炭酸水素ナトリウム(NaHCO
3)(いわゆる、重曹)をさらに含むものでもよい。
このようにすることで、炭酸水素ナトリウムが有する、酸性の臭いに対する脱臭効果により、殺虫剤100を、害虫が寄り集まる原因物質(食物残渣など)に噴霧したときに、同原因物質の臭気を緩和する効果が期待できる。
なお、炭酸水素ナトリウム(NaHCO
3)は、常温において白色の粉末状であり、水溶液のpHはわずかにアルカリ性を示す。
【0044】
[変形例:植物由来の芳香成分を追加]
本溶液状殺虫剤100は、ハーブその他の植物由来の芳香成分をさらに含むものでもよい。
このようにすることで、植物由来の芳香成分により、本殺虫剤100を、害虫を引寄せる原因物質に噴霧したときに、害虫に対する忌避効果を期待できる。
上述した植物由来の芳香成分としては、ハーブ油をはじめ、シトロネラ油・レモンユーカリ油・レモングラス油・オレンジ油・カシア油といった天然精油を採用することもできる。
また、これらの植物由来の芳香成分には、害虫が寄り集まる原因物質の臭気を緩和する効果も奏する。
【0045】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が理解し得る各種の変形が可能である。
【解決手段】溶液状殺虫剤100は、精製水1と、光触媒3である酸化チタン(TiO2)と、本殺虫剤の全体量に対して5.5重量パーセントだけ添加されるpH11.5のアルカリ性電解水2とを含んでなる。アルカリ性電解水2は、本殺虫剤が噴霧された害虫に殺虫作用を及ぼす。酸化チタン(光触媒3)は、紫外線が照射された際に、害虫を引寄せたり害虫が繁殖する原因物質に対し除菌・抗菌作用を及ぼす。同酸化チタン(光触媒3)は、紫外線が照射された際に、アルカリ性電解水2により駆除された害虫の死骸を分解する。