【課題を解決するための手段】
【0004】
少なくとも1つの外部装置とのオーディオ通信のための補聴装置が開示される。補聴装置は、処理済第1シグナルを与えるための処理ユニットを備える。補聴装置は、処理ユニットに接続される第1音響入力トランスデューサであって、第1音響シグナルを、処理済第1シグナルを与えるための処理ユニットに対する第1入力シグナルに変換するように構成される、第1音響入力トランスデューサ、を備える。補聴装置は、第2入力シグナルを与えるための第2入力トランスデューサを備える。補聴装置は、処理ユニットに接続される音響出力トランスデューサであって、処理済第1シグナルを音響出力トランスデューサのオーディオ出力シグナルに変換するように構成される、音響出力トランスデューサを備える。第2入力シグナルは、第2入力トランスデューサにおいて、音響出力トランスデューサからのオーディオ出力シグナルと、補聴装置のユーザからの体内伝導音声シグナルを少なくとも変換することによって与えられる。補聴装置は、音声シグナルを抽出するためのユーザ音声抽出ユニットであって、処理済第1シグナルを受信するために処理ユニットに接続されているとともに、第2入力シグナルを受信するために第2入力トランスデューサに接続されている、ユーザ音声抽出ユニット、を備える。ユーザ音声抽出ユニットは、第2入力シグナルと処理済第1シグナルとに基づいて、音声シグナルを抽出するように構成されている。音声シグナルは、少なくとも1つの外部装置に送信されるように構成されている。
【0005】
補聴装置と少なくとも1つの外部装置との間のオーディオ通信のための補聴装置における方法も開示される。補聴装置は、処理ユニットと、第1音響入力トランスデューサと、第2入力トランスデューサと、音響出力トランスデューサと、ユーザ音声抽出ユニットとを備えている。方法は、処理ユニットにおいて、処理済第1シグナルを与えることを含む。方法は、第1音響入力トランスデューサにおいて、第1音響シグナルを第1入力シグナルに変換することを含む。方法は、第2入力トランスデューサにおいて、第2入力シグナルを与えることを含む。方法は、音響出力トランスデューサにおいて、処理済第1シグナルをオーディオ出力シグナルに変換することを含む。第2入力シグナルは、第2入力トランスデューサにおいて、音響出力トランスデューサからのオーディオ出力シグナルと、補聴装置のユーザからの体内伝導音声シグナルを少なくとも変換することによって与えられる。方法は、ユーザ音声抽出ユニットにおいて、第2入力シグナルおよび処理済第1シグナルに基づいて、音声シグナルを抽出することを含む。方法は、抽出された音声シグナルを少なくとも1つの外部装置に送信することを含む。
【0006】
開示される補聴装置および方法は、少なくとも補聴装置から外部装置への送信またはストリーミング通信を可能にしつつ、外部音響オーディオシグナルのための有効なノイズキャンセレーション機構を提供する。
【0007】
補聴装置および方法によって、2つの補聴装置間(例えば、2人のユーザによって着用された2つの補聴装置間)の送信またはストリーミング通信が可能になる。したがって、第2のユーザが第1のユーザの音声を聞くことができるように、第1補聴装置のユーザの音声を、第2のユーザの補聴装置にストリーミングすることができ、その逆も可能である。
【0008】
同時に、補聴装置は、補聴装置内のオーディオループに入る外部音を除外し、それにより、第1のユーザの外部からのノイズが除去され、および/またはフィルタによって除去されるため、第2の補聴装置のユーザは、第1のユーザの周囲からのノイズを受信しない。
【0009】
したがって、第1補聴装置のユーザの音声は、周囲のノイズを除去しつつ、第2補聴装置に対して音として送信されるか、またはストリーミングされる。第1補聴装置のユーザも、第1補聴装置の周囲のノイズがキャンセルされつつ、第2補聴装置または別の外部装置から送信された音またはストリーミングされた音を受信してもよい。
【0010】
第1音響入力トランスデューサの提供(例えば、補聴装置のユーザの周囲からの音を除外するための参照マイクロフォンとして作用し得る外側マイクロフォンを補聴装置中に提供すること)によって、周囲のノイズをキャンセルすることができる。
【0011】
補聴装置はまた、補聴装置のユーザの耳閉塞感を防ぎ、なくし、および/または除去してもよい。このことは、第2入力トランスデューサの提供(例えば、ユーザの外耳道内マイクロフォンのような、外耳道挿入型の入力トランスデューサを提供すること)によるものである。
【0012】
補聴装置は、音響シグナルをキャンセルするように構成されていてもよい。例えば、少なくとも1つの外部装置または別の外部装置から補聴装置に第1の送信またはストリーミングされたシグナル、体内伝導音声シグナル、または可能ならば振動シグナルである体内伝導音声シグナルのほとんど大部分は、補聴装置内の音響処理ループからはずれていてもよい。したがって、第1の送信またはストリーミングされたシグナルと体内伝導(例えば、振動)音声シグナルは、補聴装置内に保持され、維持されるのであって、キャンセルされないだろう。
【0013】
補聴装置は、補聴器、両耳用補聴装置、耳あな(ITE)型補聴装置、外耳道挿入(ITC)型補聴装置、完全外耳道挿入(CIC)型補聴装置、耳かけ(BTE)型補聴装置、外耳道レシーバ挿入(RIC)型補聴装置であってもよい。補聴装置は、デジタル補聴装置であってもよい。補聴装置は、ハンズフリーモバイル通信装置、発話認識装置などであってもよい。補聴装置または補聴器は、補聴装置または補聴器のユーザの難聴を補うような構成の処理ユニットのために構成されていてもよく、またはこのような処理ユニットを備えていてもよい。
【0014】
補聴装置は、少なくとも1つの外部装置とのオーディオ通信のために構成されている。補聴装置は、補聴装置ユーザの耳の中に着用されるように構成される。補聴装置ユーザは、両耳または片方の耳に補聴装置を着用してもよい。少なくとも1つの外部装置は、ユーザとは別の人が着用していてもよく、持ち運びしていてもよく、携帯していてもよく、付着していてもよく、隣接していてもよく、接触していてもよく、接続などしていてもよい。外部装置と関連する他の人は、補聴装置のユーザとオーディオ通信している。少なくとも1つの外部装置は、抽出された音声シグナルを補聴装置から受信するように構成されている。したがって、少なくとも1つの外部装置に関連する人は、補聴装置のユーザが話すことを聞くことができ、一方、補聴装置のユーザの周囲のノイズは、キャンセルされるか、または除去される。補聴装置のユーザの音声シグナルは、シグナルが少なくとも1つの外部装置に送信されるときに、補聴装置のユーザの位置に存在するノイズがキャンセルされるか、または低減されるように、ユーザ音声抽出ユニットにおいて抽出される。
【0015】
オーディオ通信は、補聴装置からのシグナルを送信することを含んでいてもよい。オーディオ通信は、シグナルを補聴装置に送信することを含んでいてもよい。オーディオ通信は、補聴装置からシグナルを受信することを含んでいてもよい。オーディオ通信は、シグナルを少なくとも1つの外部装置から受信することを含んでいてもよい。オーディオ通信は、シグナルを少なくとも外部装置から送信することを含んでいてもよい。オーディオ通信は、補聴装置と少なくとも1つの外部装置との間にシグナルを送信すること、例えば、シグナルを補聴装置へと送信すること、シグナルを補聴装置から送信すること、例えば、シグナルを少なくとも1つの外部装置と送信すること、シグナルを少なくとも1つの外部装置から送信することを含んでいてもよい。
【0016】
オーディオ通信は、補聴装置のユーザと、このユーザの会話相手(例えば、配偶者、家族、友人、仲間など)との間の通信であってもよい。補聴装置のユーザは、難聴を補うために補聴装置を着用していてもよい。補聴装置のユーザは、例えば、コールセンターで働く場合、または毎日多くの電話をとる場合、または兵士であって、仲間の兵士と通信する必要があるか、または命令または情報を与える必要がある場合のように、仕事用のツールとして補聴装置を着用していてもよい。
【0017】
少なくとも1つの外部装置は、補聴装置、テレフォン、フォン、スマートフォン、コンピュータ、タブレット、ヘッドセット、無線通信のための装置などであってもよい。
【0018】
補聴装置は、処理済第1シグナルを与えるための処理ユニットを備えている。処理ユニットは、補聴装置のユーザの難聴を補うような構成であってもよい。処理済第1シグナルは、少なくとも音響出力トランスデューサに与えられる。
【0019】
補聴装置は、第1音響シグナルを、処理済第1シグナルを与えるための処理ユニットに対する第1入力シグナルに変換するために処理ユニットに接続される第1音響入力トランスデューサを備えている。第1音響入力トランスデューサは、マイクロフォンであってもよい。第1音響入力トランスデューサは、補聴装置中の外側マイクロフォン、例えば、補聴装置のユーザの外側から(例えば、補聴装置のユーザの周囲から)の音響シグナルを受信するために補聴装置の中、または補聴装置に接して、または補聴装置に配置されるマイクロフォンであってもよい。第1音響入力トランスデューサにおいて受信される第1音響シグナルは、音響シグナル、例えば、音(例えば、補聴装置のユーザの環境中に存在する周囲の音のような音)であってもよい。補聴装置のユーザがオフィス空間にいる場合、第1音響入力シグナルは、同僚の声、オフィス装置、例えば、コンピュータ、キーボード、プリンタ、コーヒーマシンからの音であってもよい。補聴装置のユーザが、例えば、戦地にいる兵士である場合、第1音響シグナルは、軍需資材からの音、仲間の兵士からの音声であってもよい。
【0020】
第1音響シグナルは、第1音響入力トランスデューサに与えられるアナログシグナルである。第1入力シグナルは、処理ユニットに与えられるデジタルシグナルである。アナログ−デジタル変換器(A/D変換器)は、第1音響入力トランスデューサからのアナログシグナルを、処理ユニットが受信するデジタルシグナルに変換するために、第1音響入力トランスデューサと処理ユニットとの間に配置されてもよい。処理ユニットは、処理済第1シグナルを与える。
【0021】
処理ユニットに入る前にシグナルを前処理するための前処理ユニットが、処理ユニットの前に備えられてもよい。処理ユニットを出た後でシグナルを後処理するための後処理ユニットが、処理ユニットの後に備えられてもよい。
【0022】
補聴装置は、第2入力シグナルを与えるための第2入力トランスデューサを備えている。第2入力トランスデューサは、補聴装置がユーザに着用される場合に、補聴装置のユーザの耳、例えば、外耳道の中に配置される内部入力トランスデューサであってもよい。
【0023】
補聴装置は、処理済第1シグナルを音響出力トランスデューサのためのオーディオ出力シグナルに変換するために処理ユニットに接続されている音響出力トランスデューサを備えている。音響出力トランスデューサは、ラウドスピーカー、レシーバ、スピーカーなどであってもよい。音響出力トランスデューサは、補聴装置がユーザに着用される場合に、補聴装置のユーザの耳、例えば、外耳道の中に配置されてもよい。デジタル−アナログ変換器(D/A変換器)は、処理ユニットからのデジタルシグナルを、音響出力トランスデューサが受信するアナログシグナルに変換するために、音響出力トランスデューサと処理ユニットとの間に備えられてもよい。音響出力トランスデューサによって与えられるオーディオ出力シグナルは、第2入力トランスデューサに与えられる。
【0024】
第2入力シグナルは、第2入力トランスデューサにおいて、音響出力トランスデューサからの少なくともオーディオ出力シグナルと、補聴装置のユーザからの体内伝導音声シグナルを変換することによって与えられる。第2入力トランスデューサは、オーディオ出力シグナルおよび体内伝導音声シグナルよりもっと多くのシグナルを受信してもよい。したがって、第2入力シグナルは、オーディオ出力シグナルおよび体内伝導音声シグナルよりもっと多くのシグナルを変換することによって与えられてもよい。例えば、第1音響シグナルも、第2入力トランスデューサに与えられてもよく、これにより、第1音響入力シグナルを使用し、第2入力シグナルを与えてもよい。したがって、第1音響シグナルは、第1音響入力トランスデューサと第2入力トランスデューサの両方において受信されてもよい。
【0025】
したがって、第2入力トランスデューサは、音響出力トランスデューサからのオーディオ出力シグナルと、補聴装置のユーザからの体内伝導音声シグナルの両方を受信するように構成される。
【0026】
体内伝導音声シグナルは、スペクトル的に改変された態様の、ユーザの口から発生する音声または発声シグナルであってもよい。
【0027】
補聴装置は、音声シグナルを抽出するためのユーザ音声抽出ユニットを備えている。ユーザ音声抽出ユニットは、処理済第1シグナルを受信するために処理ユニットに接続されている。ユーザ音声抽出ユニットは、第2入力シグナルを受信するために第2入力トランスデューサにも接続されている。ユーザ音声抽出ユニットは、第2入力シグナルおよび処理済第1シグナルに基づいて、ユーザの音声シグナルを抽出するように構成されている。音声シグナルが抽出されたら、少なくとも1つの外部装置に送信するように構成されている。抽出されたユーザの音声シグナルは、電気シグナルであって、音響シグナルではない。
【0028】
アナログ−デジタル変換器(A/D変換器)は、第2入力トランスデューサからのアナログシグナルを、ユーザ音声抽出ユニットにおいて受信されるデジタルシグナルに変換するために、第2入力トランスデューサとユーザ音声抽出ユニットとの間に備えられてもよい。
【0029】
補聴装置におけるフィルタリング(以下を参照)が、音響出力トランスデューサからのオーディオ出力シグナルをほとんど全体的に除去し得るため、第2入力トランスデューサ(例えば、内部入力トランスデューサである)に到達するオーディオシグナルは、ほとんど体内伝導音声シグナルのみからなるものであってもよい。したがって、音響出力トランスデューサからのオーディオ出力シグナルは、第2入力トランスデューサに入る前にフィルタリングによって除去されてもよい。音響出力トランスデューサからのオーディオ出力シグナルは、主に、第1入力トランスデューサにおいて受信される第1音響シグナルからなっていてもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、体内伝導音声シグナルがユーザの口および喉から発生し、ユーザの骨構造、軟骨、軟組織、組織および/または皮膚を通ってユーザの耳に伝わり、第2入力トランスデューサによって検知されるように構成される。体内伝導音声シグナルは、音響シグナルであってもよい。体内伝導音声シグナルは、振動シグナルであってもよい。体内伝導音声シグナルは、音響シグナルと振動シグナルの組み合わせであるシグナルであってもよい。体内伝導音声シグナルは、低周波シグナルであってもよい。体内を通って伝導しないが、空気だけを通って伝導するか、または主に空気を通って伝導する対応する音声シグナルは、もっと周波数の高いシグナルであってもよい。体内伝導音声シグナルは、外耳道の外側の対応する音声シグナル、すなわち、体内を通って伝導しないが、空気だけを通って伝導するか、または主に空気を通って伝導する音声シグナルよりも低周波エネルギーが多く、高周波エネルギーが少なくてもよい。体内伝導音声シグナルは、体内を通って伝導しないが、空気だけを通って伝導する対応する音声シグナルとは異なるスペクトルの内容を有していてもよい。体内伝導音声シグナルは、ユーザの体内と、空気の両方を通って伝導してもよい。体内伝導音声シグナルは、骨伝導シグナル、例えば、純粋な骨伝導シグナルではない。体内伝導シグナルは、第2入力トランスデューサによって、補聴装置のユーザの外耳道において受信されるべきものである。体内伝導音声シグナルは、音声または発声が作られるユーザの口および喉からユーザの体内を通って伝わる。体内伝導音声シグナルは、ユーザの骨、骨構造、軟骨、軟組織、組織および/または皮膚によって、ユーザの体内を通って伝わる。体内伝導音声シグナルは、体内物質を通って少なくとも部分的に伝わり、したがって、体内伝導音声シグナルは、少なくとも部分的に振動シグナルであってもよい。ユーザの体内の空気腔も存在していてもよいため、体内伝導音声シグナルは、少なくとも部分的に空気によって伝わるシグナルであってもよく、したがって、体内伝導音声シグナルは、少なくとも部分的に音響シグナルであってもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、第2入力トランスデューサが、補聴装置のユーザの外耳道に配置されるように構成されている。第2入力トランスデューサは、外耳道の中に完全に配置されるように構成されていてもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、第2入力トランスデューサが、振動センサおよび/または骨伝導センサおよび/または運動センサおよび/または音響センサである。第2入力トランスデューサは、1つ以上のセンサの組み合わせ、例えば、振動センサ、骨伝導センサ、運動センサおよび音響センサの1つ以上の組み合わせであってもよい。一例として、第2入力トランスデューサは、ユーザの外耳道の中に配置されるように構成された振動センサおよび音響入力トランスデューサ、例えばマイクロフォンであってもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、第1音響入力トランスデューサは、補聴装置のユーザの外耳道の外側に配置されるように構成され、第1音響入力トランスデューサは、ユーザの周囲からの音を検出するように構成される。第1音響入力トランスデューサは、任意の方向を向いていてもよく、したがって、任意の方向から来る音を検知してもよい。第1音響入力トランスデューサは、例えば、完全外耳道挿入(CIC)型補聴装置および/または耳あな(ITE)型補聴装置のために、例えば、補聴装置のフェイスプレートに配置されてもよい。第1音響入力トランスデューサは、耳かけ(BTE)型補聴装置および/または外耳道レシーバ挿入(RIC)型補聴装置のために、例えば、ユーザの耳の後ろに配置されてもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、第1の送信されたシグナルが、少なくとも1つの外部装置から補聴装置に与えられ、第1の送信されたシグナルは、音声シグナルを抽出するためのユーザ音声抽出ユニットに与えられる処理済第1シグナルおよび第2入力シグナルに含まれる。第1の送信されたシグナルは、ストリーミングされたシグナルであってもよい。第1の送信されたシグナルは、別の補聴装置、スマートフォン、配偶者のマイクロフォン、メディアコンテンツデバイス、TVストリーミングなどからのものであってもよい。第1の送信されたシグナルは、少なくとも1つの外部装置および/または別の外部装置からのものであってもよい。第1の送信されたシグナルは、1つのデバイスからの1つのシグナルであってもよく、および/または多くのデバイスからの多くのシグナルの組み合わせ、例えば、通話からのシグナルと、メディアコンテンツからのシグナルとの両方などであってもよい。したがって、第1の送信されたシグナルは、複数の外部装置からの複数の入力シグナルであってもよく、または複数の外部装置からの複数の入力シグナルを含んでいてもよい。第1の送信されたシグナルは、異なるシグナルの混合物であってもよい。第1の送信されたシグナルは、第1のストリーミングされたシグナルであってもよい。第1の送信されたシグナルが、少なくとも1つの外部装置、例えば、第1外部装置から送信される場合、補聴装置は、同じ外部装置に送信し、同じ外部装置から送信するように構成されている。第1の送信されたシグナルが、別の外部装置、例えば、第2外部装置から送信される場合、補聴装置は、異なる外部装置に送信し、異なる外部装置から送信するように構成されている。第1の送信されたシグナルは、例えば、処理ユニットの前で、処理ユニットで、および/または処理ユニットの後に付加されて補聴装置に与えられる。一例において、第1の送信されたシグナルは、処理ユニットの後、音響出力トランスデューサおよびユーザ音声抽出ユニットの前で付加される。
【0035】
いくつかの実施形態では、ユーザ音声抽出ユニットが、第2入力シグナルからオーディオ出力シグナルをキャンセルするように構成された第1フィルタを備えている。第2入力シグナルは、第2入力トランスデューサにおいて、少なくとも音響出力トランスデューサからのオーディオ出力シグナルと、補聴装置のユーザからの体内伝導音声シグナルとを少なくとも変換することによって与えられる。したがって、第2入力シグナルは、音響出力トランスデューサからのオーディオ出力シグナルに由来する部分と、ユーザからの体内伝導音声シグナルに由来する部分とを含む。したがって、オーディオ出力シグナルが、ユーザ音声抽出ユニットの第1フィルタにおいて第2入力シグナルからキャンセルされる場合、体内伝導音声シグナルが残り、これを外部装置に抽出することができる。第1フィルタは、適応フィルタであってもよく、または適応フィルタではないフィルタであってもよい。第1フィルタは、ベースバンドサンプリングレート、および/またはもっと速いレートで駆動してもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、補聴装置は、抽出された音声シグナルを少なくとも1つの外部装置に送信する前に、抽出された音声シグナルおよび/または第1入力シグナルに基づいて、抽出された音声シグナルを処理するための音声処理ユニットを備えている。したがって、抽出された音声シグナルを送信する前に、この抽出された音声シグナルは、音声抽出ユニットから受信したように、それ自身に基づいて処理され、かつ第1音響入力トランスデューサからの第1入力シグナルに基づいて処理される。第1音響入力トランスデューサからの第1入力シグナルを、第1音響入力トランスデューサ(補聴装置の外部参照マイクロフォンであってもよい)によって受信し得る周囲からの音/ノイズをフィルタによって除去するために音声処理ユニットで使用してもよい。それぞれが補聴装置を着用している2人のユーザが互いにオーディオ通信する場合、この実施形態を使用してもよく、または関連していてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、音声処理ユニットは、抽出された音声シグナル中に存在する第1音響シグナルの任意の部分を最低限にするように構成された第2フィルタを少なくとも備えている。第1音響シグナルは、第1音響入力トランスデューサ(外部参照マイクロフォンであってもよい)によって受信される、ユーザの周囲からの音またはノイズであってもよい。抽出された音声シグナル中の第1音響シグナルの部分を最低限にすると、第1音響入力トランスデューサ(外部参照マイクロフォンであってもよい)によって受信される、ユーザの周囲からの音またはノイズが最低限になり、これによって、周囲からのこの音またはノイズは、外部装置には送信されないようにされ得る。このことは、外部装置のユーザが、補聴装置のユーザからの音声シグナルを主に受信し、補聴装置のユーザの環境からの周囲の音またはノイズを受信しないため、利点である。第2フィルタは、抽出された音声シグナル中に存在する第1音響シグナルの任意の部分をキャンセルおよび/または低減するように構成されていてもよい。第2フィルタは、適応フィルタであってもよく、または適応フィルタではないフィルタであってもよい。第2のフィルタは、ベースバンドサンプリングレート、および/またはもっと速いレートで駆動してもよい。第2フィルタが適応フィルタである場合、音声活動検出器が設けられていてもよい。第2フィルタは、非常に低周波のエネルギー(例えば、ユーザの歩行、顎運動などからの非常に低周波のエネルギー)を取り除くために、急勾配の低域遮断応答を含んでいてもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、音声処理ユニットは、抽出された音声シグナルのスペクトルの内容を体内伝導音声シグナルとは異なるスペクトルの内容を有するように形成するためのスペクトル形成ユニットを備えている。体内伝導音声シグナルは、ユーザの体内物質を通って伝導されるため、体内伝導音声シグナルは、ユーザの口から発生する音声または発声シグナルの、スペクトル的に改変された態様のものであり得る。したがって、体内伝導音声シグナルが、ユーザの口から発生する(すなわち、空気を通って伝導される)音声シグナルに似たスペクトルの内容を有するために、抽出された音声シグナルのスペクトルの内容がこれにしたがって形成されるか、または変えられてもよい。スペクトル形成ユニットは、フィルタ、例えば、第3フィルタであってもよく、適応フィルタであってもよく、または適応フィルタではないフィルタであってもよい。スペクトル形成ユニットまたは第3フィルタは、ベースバンドサンプリングレート、および/またはもっと速いレートで駆動してもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、音声処理ユニットは、抽出された音声シグナルの帯域幅を拡張するように構成された帯域幅拡張ユニットを備えている。
【0040】
いくつかの実施形態では、音声処理ユニットは、音声処理ユニットの電源を入れる/切断するように構成される音声活動検出器を備えており、抽出された音声シグナルは、音声活動検出器に入力として与えられる。音声活動検出器は、フィルタ、例えば、第1フィルタ、第2フィルタおよび/または第3フィルタの任意の適応を可能にするか、および/または不可能にし得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、抽出された音声シグナルは、第2入力トランスデューサにおいて、第1音響シグナルをさらに変換することによって与えられる。したがって、第1音響入力トランスデューサにおいて第1音響シグナルを受信する以外に、第1音響シグナルは、第2入力トランスデューサでも受信される。したがって、第1音響シグナルは、第2入力シグナルの一部を形成していてもよく、したがって、第1音響シグナルは、抽出された音声シグナルの一部を形成していてもよい。
【0042】
一態様によると、第1補聴装置と第2補聴装置とを備える両耳用補聴装置システムであって、第1補聴装置および/または第2補聴装置は、上記及び以下に開示された態様および/または実施形態のいずれかの補聴装置である、両耳用補聴装置システムを開示する。第1補聴装置からの抽出された音声シグナルは、第1の抽出された音声シグナルである。第2補聴装置からの抽出された音声シグナルは、第2の抽出された音声シグナルである。第1の抽出された音声シグナルおよび/または第2の抽出された音声シグナルは、少なくとも1つの外部装置に送信されるように構成される。第1の抽出された音声シグナルと第2の抽出された音声シグナルは、送信する前に合わされるように構成される。第1補聴装置は、ユーザの耳の片方(例えば、左耳または右耳)に挿入されるように構成される。第2補聴装置は、ユーザの他方の耳(例えば、右耳または左耳)にそれぞれ挿入されるように構成される。
【0043】
本記載全体で、補聴装置という用語と、ヘッドウェアラブル補聴装置という用語は、相互に置き換え可能に使用されてもよい。本記載全体で、外部装置という用語と、遠端受信者または遠方の受信者という用語は、相互に置き換え可能に使用されてもよい。本記載全体で、処理ユニットという用語と、シグナルプロセッサという用語は、相互に置き換え可能に使用されてもよい。本記載全体で、処理済第1シグナルという用語と、処理された出力シグナルという用語は、相互に置き換え可能に使用されてもよい。本記載全体で、第1音響入力トランスデューサという用語と、アンビエントマイクロフォンとの用語は、相互に置き換え可能に使用されてもよい。本記載全体で、第1音響シグナルという用語と、環境音という用語は、相互に置き換え可能に使用されてもよい。本記載全体で、第1入力シグナルという用語と、マイクロフォン入力シグナルという用語は、相互に置き換え可能に使用されてもよい。本記載全体で、第2入力トランスデューサという用語と、外耳道マイクロフォンという用語は、相互に置き換え可能に使用されてもよい。本記載全体で、第2入力シグナルという用語と、外耳道電気シグナルという用語は、相互に置き換え可能に使用されてもよい。本記載全体で、音響出力トランスデューサという用語と、ラウドスピーカーまたはレシーバという用語は、相互に置き換え可能に使用されてもよい。本記載全体で、オーディオ出力シグナルという用語と、音響出力シグナルという用語は、相互に置き換え可能に使用されてもよい。本記載全体で、ユーザ音声抽出ユニットという用語と、補償フィルタを伴う/に加えて/含む補償加算器という用語は、相互に置き換え可能に使用されてもよい。本記載全体で、抽出された音声シグナルという用語と、ハイブリッドマイクロフォンシグナルという用語は、相互に置き換え可能に使用されてもよい。
【0044】
クリーンな発声シグナルを取得することは、種々のヘッドウェアラブル補聴装置、例えば、ヘッドセット、アクティブ聴覚保護装置および補聴器具または補聴器を用いる多くの双方向通信アプリケーションの分野において、関心が高い。クリーンな発声シグナル、例えば、抽出された音声シグナルを遠端受信者に供給し、無線データ通信リンクを介し、さらに明瞭で快適に聞こえる発声シグナルを含むクリーンな発声シグナルを受信する。クリーンな発声シグナルは、典型的には、例えば、電話での会話中に遠方の受信者にとって改良された発声の明瞭さおよびよりよい快適さを与える。
【0045】
しかし、ヘッドウェアラブル補聴装置のユーザがいる音環境は、多くのノイズ源、例えば、干渉する会話者たち、交通、大きな音楽、機械などによって悪化するか、または影響を受けることが多く、補聴装置のアンビエントマイクロフォンに到達するターゲット音シグナルのシグナル−ノイズ比が悪くなる。このアンビエントマイクロフォンは、ユーザの音環境から全ての方向に到達する音に影響を受けやすい場合があるため、全ての周囲の音を無差別に検知し、これらの音を、ノイズによって影響を受けた発声シグナルとして遠端受信者に送信する傾向がある。これらの環境ノイズの問題は、特定の指向性を有するアンビエントマイクロフォンを用いることによって、またはいわゆるブームマイクロフォン(典型的にはヘッドセット用)を用いることによってある程度まで軽減される場合があるが、当該技術分野では、無線データ通信リンクを介して遠端受信者に送信される際において、ユーザ自身の音声の改良されたシグナル品質、特に、改良されたシグナル−ノイズ比を有する、ヘッドウェアラブル補聴装置を提供することが、必要とされている。後者は、Bluetooth(登録商標)リンクまたはネットワーク、Wi−Fi(登録商標)リンクまたはネットワーク、GSM(登録商標)セルラーリンクなどを含んでいてもよい。
【0046】
本発明のヘッドウェアラブル補聴装置は、ユーザの外耳道において検知されるユーザ自身の音声の骨によって伝導される要素を検出及び利用して、遠端受信者に送信するための特定の音環境条件下、改良されたシグナル−ノイズ比を有するハイブリッド発声/音声シグナルを与える。ハイブリッド発声シグナルは、ユーザ自身の音声の骨によって伝導される要素に加え、ヘッドウェアラブル補聴装置のアンビエントマイクロフォン配置によって検知されるようなユーザ自身の音声の要素/寄与も含んでいてもよい。アンビエントマイクロフォン配置から誘導されるこのさらなる音声要素は、ハイブリッドマイクロフォンシグナル中のユーザの音声の元々のスペクトルを少なくとも部分的に復元するために、ユーザ自身の音声の高周波数要素を含んでいてもよい。
【0047】
本発明の第1の態様は、ヘッドウェアラブル補聴装置であって、
環境音を受信し、環境音をマイクロフォン入力シグナルに変換するように構成された、アンビエントマイクロフォンの配置と、
処理された出力シグナルを作成するための所定の処理スキームまたは適応処理スキームに従って、マイクロフォン入力シグナルを受信し、処理するように構成されたシグナルプロセッサと、
処理された出力シグナルを受信し、処理された出力シグナルを、対応する音響出力シグナルに変換し、ユーザの外耳道において外耳道の音圧を作り出すように構成されたラウドスピーカーまたはレシーバと、
外耳道の音圧を受信し、外耳道の音圧を外耳道電気シグナルに変換するように構成された外耳道マイクロフォンと、
処理された出力シグナルと、補償加算器の第1入力との間に接続し、環境音圧要素を削除するために、補償加算器が、処理された出力シグナルと外耳道電気シグナルを引き算し、補償された外耳道シグナルを生成するように構成された、補償フィルタとを備えている、ヘッドウェアラブル補聴装置に関する。ヘッドウェアラブル補聴装置は、さらに、補償された外耳道シグナルとマイクロフォン入力シグナルを合わせ、ハイブリッドマイクロフォンシグナルを生成するように構成されたミキサーと;ハイブリッドマイクロフォンシグナルを、無線または有線のデータ通信リンクを介して遠端受信者に送信するように構成された無線または有線のデータ通信インターフェースとを備えている。
【0048】
ヘッドウェアラブル補聴装置は、異なる種類の頭部着用型聴取装置または通信装置、例えば、ヘッドセット、アクティブ聴覚保護装置または補聴器具または補聴器を備えていてもよい。補聴器具は、筐体と、シェルと、ユーザの外耳道に合うような形状および大きさの筐体部分を有する耳あな(ITE)型、外耳道挿入(ITC)型または完全外耳道挿入(CIC)型の補聴器として具現化されてもよい。筐体またはシェルは、アンビエントマイクロフォン、シグナルプロセッサ、外耳道マイクロフォンおよびラウドスピーカーを包んでいてもよい。または、本発明の補聴器具は、ユーザの外耳道に挿入するためのイアモールドまたはプラグを備える外耳道レシーバ挿入(RIC)型または従来の耳かけ(BTE)型の補聴器として具現化されてもよい。BTE補聴器具は、ユーザの外耳道に対し、BTE補聴器の筐体中に配置されたレシーバによって作られる音圧を伝えるように構成された可撓性音響管を備えていてもよい。この実施形態において、アンビエントマイクロフォンの配置、シグナルプロセッサおよびレシーバまたはラウドスピーカーをBTE筐体の中に配置しつつ、外耳道マイクロフォンは、イアモールドに配置されてもよい。外耳道シグナルは、適切な電気ケーブルまたは別の有線または無線の通信チャンネルを介し、シグナルプロセッサに送信されてもよい。アンビエントマイクロフォン配置は、頭部着用型聴取装置の筐体の中に配置されてもよい。アンビエントマイクロフォン配置は、頭部着用型聴取装置の筐体を通って延びる適切な音声チャンネル、ポートまたは開口部を通って環境音または周囲音を感知または検出してもよい。外耳道マイクロフォンは、ITE型、ITC型またはCIC型の補聴器の筐体の先端部分またはヘッドセット、アクティブ聴覚保護またはBTE補聴器のイアプラグまたはモールドの先端に配置される音の入口を有していてもよく、好ましくは、ユーザの鼓膜(tympatic membraneまたはear drum)の前に存在する完全または部分的に閉塞された外耳道の容積の中の外耳道の音圧の妨害されない感知を可能にする。
【0049】
シグナルプロセッサは、プログラミング可能なマイクロプロセッサ、例えば、所定の一連のプログラム命令を実行し、所定の処理スキームまたは適応処理スキームに従って、マイクロフォン入力シグナルを増幅し、処理する、プログラミング可能なデジタルシグナルプロセッサを備えていてもよい。したがって、シグナルプロセッサによって行われるシグナルを処理する機能または操作は、専用のハードウェアによって実行されてもよく、または1つ以上のシグナルプロセッサで実行されてもよく、または専用のハードウェアと1つ以上のシグナルプロセッサを組み合わせて行われてもよい。本明細書で使用される場合、「プロセッサ」、「シグナルプロセッサ」、「コントローラ」、「システム」などの用語は、マイクロプロセッサまたはCPUに関連するエンティティ、ハードウェア、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせ、ソフトウェア、実行時のソフトウェアのいずれかを指すことを意図している。例えば、「プロセッサ」、「シグナルプロセッサ」、「コントローラ」、「システム」などは、限定されないが、プロセッサで実行するプロセス、プロセッサ、オブジェクト、実行可能なファイル、実行のスレッドおよび/またはプログラムであってもよい。実例として、「プロセッサ」、「シグナルプロセッサ」、「コントローラ」、「システム」などの用語は、プロセッサで動くアプリケーションおよびハードウェアプロセッサの両方を示す。1つ以上の「プロセッサ」、「シグナルプロセッサ」、「コントローラ」、「システム」など、またはこれらの任意の組み合わせは、プロセスおよび/または実行のスレッドの中に存在していてもよく、1つ以上の「プロセッサ」、「シグナルプロセッサ」、「コントローラ」、「システム」など、またはこれらの任意の組み合わせは、可能ならば他のハードウェア回路と組み合わせて、1つのハードウェアプロセッサに集中していてもよく、および/または可能ならば他のハードウェア回路と組み合わせて、2つ以上のハードウェアプロセッサに分配されていてもよい。また、プロセッサ(または同様の用語)は、シグナル処理を行うことができる任意の構成要素または構成要素の任意の組み合わせであってもよい。例えば、シグナルプロセッサは、ASIC集積プロセッサ、FPGAプロセッサ、汎用プロセッサ、マイクロプロセッサ、回路構成要素または集積回路であってもよい。
【0050】
マイクロフォン入力シグナルは、マイクロフォンのトランスデューサ要素に接続されるA/D変換器によって作られるデジタルマイクロフォン入力シグナルとして与えられてもよい。A/D変換器は、例えば、共通の半導体基板上で、シグナルプロセッサと一体化されていてもよい。それぞれの処理された出力シグナルについて、外耳道電気シグナル、補償された外耳道シグナルおよびハイブリッドマイクロフォンシグナルは、適切なサンプリング頻度および解像度で、デジタル形態で与えられてもよい。これらのデジタルシグナルそれぞれのサンプリング頻度は、16kHz〜48kHzであってもよい。当業者は、補償フィルタ、補償加算器およびミキサーのそれぞれの機能が、所定の実行可能なプログラム命令のセットおよび/または専用の適切に構成されたデジタルハードウェアによって発揮されてもよいことを理解するだろう。
【0051】
無線データ通信リンクは、双方向または単方向のデータリンクを含んでいてもよい。無線データ通信リンクは、工業、科学、医療用(ISM)無線周波数範囲または2.40〜2.50GHz帯または902〜928MHz帯で操作してもよい。無線データ通信インターフェースおよび関連する無線データ通信リンクの種々の詳細は、添付の図面を参照しつつ、以下にさらに詳細に記載される。有線データ通信インターフェースは、ハイブリッドマイクロフォンシグナルを別個の無線データトランシーバまたは通信装置(例えば、スマートフォンまたはタブレット)に送信するためのUSB、IICまたはSPI対応データ通信バスを含んでいてもよい。
【0052】
ヘッドウェアラブル通信装置の1つの実施形態は、さらに、補償加算器とミキサーとの間に挿入され、ミキサーの第1入力に適用する前に、補償された外耳道電気シグナルをローパスフィルタリングするように構成されたローパスフィルタリング機能を含んでいる。これに加え、またはこれに代えて、ヘッドウェアラブル通信装置は、マイクロフォン入力シグナルとミキサーとの間に挿入され、ミキサーの第2入力に適用する前に、マイクロフォン入力シグナルをハイパスフィルタリングするように構成されたハイパスフィルタリング機能を含んでいてもよい。当業者は、ローパスフィルタリング機能およびハイパスフィルタ機能は、それぞれ多くの様式で実行されてもよいことを理解するだろう。特定の実施形態において、ローパスフィルタリング機能およびハイパスフィルタリング機能は、所定の周波数応答または調節可能/改変可能な周波数応答を有する別個のFIRフィルタまたはIIRフィルタを備えている。ローパスおよび/またはハイパスフィルタリング機能の代替的な実施形態は、フィルタバンク、例えば、デジタルフィルタバンクを備えている。フィルタバンクは、可聴周波の少なくとも一部にわたって配置された複数の隣接するバンドパスフィルタを含んでいてもよい。フィルタバンクは、例えば、4〜25のバンドパスフィルタ、例えば、少なくとも100Hz〜5kHzに隣接して配置されるバンドパスフィルタを含んでいてもよい。フィルタバンクは、デジタルフィルタバンク、例えば、FFT系デジタルフィルタバンクまたはワープ周波数スケール型のフィルタバンクを含んでいてもよい。シグナルプロセッサは、シグナルプロセッサのプログラミング可能なマイクロプロセッサの実施形態で動く所定の実行可能なプログラム命令のセットとしてローパスフィルタリング機能および/またはハイパスフィルタ機能を作り出すか、または与えるように構成されていてもよい。デジタルフィルタバンクを用い、ローパスフィルタリング機能は、ミキサーの第1入力に適用するための複数の隣接するバンドパスフィルタの第1のサブセットのそれぞれの出力を選択することによって実行されてもよく、および/またはハイパスフィルタリング機能は、ミキサーの第2入力に適用するための複数の隣接するバンドパスフィルタの第2のサブセットのそれぞれの出力を選択することを含んでいてもよい。フィルタバンクの隣接するバンドパスフィルタの第1および第2のサブセットは、以下に記載するそれぞれのカットオフ周波数を除き、実質的に重なり合わなくてもよい。
【0053】
ローパスフィルタリング機能は、500Hz〜2kHzのカットオフ周波数を有していてもよく、および/またはハイパスフィルタリング機能は、500Hz〜2kHzのカットオフ周波数を有していてもよい。一実施形態において、ローパスフィルタリング機能のカットオフ周波数は、ハイパスフィルタリング機能のカットオフ周波数と実質的に同じである。別の実施形態によれば、ローパスフィルタリング機能およびハイパスフィルタリング機能のそれぞれの出力シグナルの合計大きさは、実質的に少なくとも100Hz〜5kHzの単位である。ローパスフィルタリング機能およびハイパスフィルタリング機能の2つの後者の実施形態は、典型的には、添付の図面を参照しつつ、以下にさらに詳細に記載するようなフィルタリング機能の合計出力の比較的平坦な大きさを導くだろう。
【0054】
補償フィルタは、ラウドスピーカーと外耳道マイクロフォンとの間の伝達機能をモデリングするように構成されていてもよい。ラウドスピーカーと外耳道マイクロフォンとの間の伝達機能は、典型的には、ヘッドウェアラブル通信装置、すなわち、ユーザの耳に配置される外耳道マイクロフォンを備えるデバイスの正常な操作条件下、ラウドスピーカーと外耳道マイクロフォンとの間の音響伝達機能を含む。ラウドスピーカーと外耳道マイクロフォンとの間の伝達機能は、さらに、ラウドスピーカーおよび/または外耳道マイクロフォンの周波数応答特徴を含んでいてもよい。補償フィルタは、適応フィルタ、例えば、適応FIRフィルタまたは適応IIRフィルタ、または添付の図面を参照しつつ以下にさらに詳細に記載されるような、適切な周波数応答を有するように構成された静的なFIRフィルタまたはIIRフィルタを含んでいてもよい。
【0055】
頭部着用型聴取装置のさらに別の実施形態によれば、シグナルプロセッサは、
マイクロフォン入力シグナルのシグナル特徴を概算し、
マイクロフォン入力シグナルの決定されたシグナル特徴に基づいて、ハイブリッドマイクロフォンシグナルに対する、補償された外耳道シグナルおよびマイクロフォン入力シグナルの相対的な寄与を制御するように構成される。後者の実施形態によれば、シグナルプロセッサは、決定されたシグナル特徴に従って、上述のローパスフィルタリング機能およびハイパスフィルタリング機能のそれぞれのカットオフ周波数を調節することによって、ハイブリッドマイクロフォンシグナルに対する、補償された外耳道シグナルおよびマイクロフォン入力シグナルの相対的な寄与を制御してもよい。マイクロフォン入力シグナルのシグナル特徴は、例えば、100Hz〜5kHzの目的の特定のオーディオ帯域幅にわたって測定/概算されるマイクロフォン入力シグナルのシグナル−ノイズ比を含んでいてもよい。マイクロフォン入力シグナルのシグナル特徴は、マイクロフォン入力シグナルのノイズレベル(例えば、dB SPLで表される)を含んでいてもよい。シグナルプロセッサは、これに加えて、またはこれに代えて、マイクロフォン入力シグナルの決定されたシグナル特徴に基づいてミキサーに適用する前に、補償された外耳道シグナルおよびマイクロフォン入力シグナルの相対的な増幅または減衰を制御するように構成されていてもよい。添付の図面を参照しつつ、以下にさらに詳細に記載されるように、マイクロフォン入力シグナルの高いシグナル−ノイズ比(例えば、10dBを超える)を有する音環境において、補償された外耳道シグナルからの寄与を比較的小さくし、マイクロフォン入力シグナルの低いシグナル−ノイズ比(例えば、0dB未満)を有する音環境において、補償された外耳道シグナルからの寄与を比較的大きくするために、ハイブリッドマイクロフォンシグナルに対する、補償された外耳道シグナルおよびマイクロフォン入力シグナルの相対的な寄与を制御するためのこれらの方法の1つまたは両方が開発されてもよい。
【0056】
本発明の第2の態様は、例えば、上述のいずれかの実施形態に係る無線ヘッドセットとして具現化される複数のヘッドウェアラブル通信装置を備えており、複数のヘッドウェアラブル通信装置が、複数のコールセンターサービスの個人のそれぞれの耳の上または耳に取り付けられる、複数ユーザのコールセンター通信システムに関する。本発明のヘッドウェアラブル通信装置のノイズ抑制特性は、かなりのレベルの環境ノイズが、多くの干渉するノイズ源に起因して存在する多種類の複数ユーザ環境における適用にとって、これらを有利なものにする。本発明のヘッドウェアラブル通信装置のノイズ抑制特性は、遠端受信者の利点のための改良された快適さおよび明瞭さを有するユーザ自身の音声を表すハイブリッドマイクロフォンシグナルを与えてもよい。
【0057】
本発明の第3の態様は、ヘッドウェアラブル補聴装置によって、ハイブリッドマイクロフォンシグナルを作成し、遠端受信者にハイブリッドマイクロフォンシグナルを送信する方法であって、この方法が、
環境音を受信し、環境音をマイクロフォン入力シグナルに変換することと、
処理された出力シグナルを作成するための所定の処理スキームまたは適応処理スキームに従って、マイクロフォン入力シグナルを受信し、処理することと、
ラウドスピーカーまたはレシーバによって、処理された出力シグナルを、対応する音響出力シグナルに変換し、ユーザの外耳道において外耳道の音圧を作り出すことと、
補償フィルタによって、処理された出力シグナルをフィルタリングし、フィルタリングされた処理された出力シグナルを生成することと、
外耳道マイクロフォンによって外耳道の音圧を感知し、外耳道の音圧を外耳道電気シグナルに変換することと、
フィルタリングされた処理された出力シグナルと外耳道電気シグナルを引き算し、補償押された外耳道シグナルを生成することと、
補償された外耳道シグナルと、マイクロフォン入力シグナルとを合わせ、ハイブリッドマイクロフォンシグナルを生成することと、ハイブリッドマイクロフォンシグナルを無線または有線のデータ通信リンクを通って遠端受信者に送信することとを含む、方法に関する。
【0058】
この方法論は、さらに、
マイクロフォン入力シグナルまたはマイクロフォン入力シグナルから誘導されたシグナルのシグナル特徴を概算することと、
マイクロフォン入力シグナルまたはこのシグナルから誘導されるシグナルの決定されたシグナル特徴に基づいて、ハイブリッドマイクロフォンシグナルに対する、補償された外耳道シグナルおよびマイクロフォン入力シグナルの相対的な寄与を制御することとを含んでいてもよい。
【0059】
この方法論の1つの実施形態は、さらに、
マイクロフォン入力シグナルと合わせる前に、補償された外耳道シグナルをローパスフィルタリングし、および/または補償された外耳道シグナルと合わせる前に、マイクロフォン入力シグナルをハイパスフィルタリングすることを含んでいてもよい。当業者は、ローパスフィルタリングおよび/またはハイパスフィルタリングが、マイクロフォン入力シグナルおよび補償された外耳道シグナルに対するフィルタバンクの上述のいずれかの実施形態の適用を含んでいてもよいことを理解するだろう。
【0060】
本発明は、上述のシステムと、以下の対応するシステム部分、方法、装置、システム、ネットワーク、キット、使用および/または製造手段とを含み、それぞれが、第1の上述の態様と組み合わせて、記載される利益および利点の1つ以上を与え、それぞれが、第1の上述の態様と組み合わせて記載され、および/または添付の特許請求の範囲に開示される実施形態に対応する1つ以上の実施形態を有する、異なる態様に関する。
【0061】
上述の特徴および利点と、他の特徴および利点は、添付の図面を参照しつつ、以下の例示的な実施形態の詳細な記載によって当業者には容易に明らかになるだろう。