(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ディスクジャケットは、薄くて破損し易いディスクメディアを適切に保護し得るとともに、持ち運び等にも便利なように軽量であることが望まれる。またその他、ディスクジャケットは、製造コストやデザイン性等においても優れていることがより望ましい。
【0006】
本発明は上述した問題点に鑑み、ディスクメディアを適切に保護し得るとともに軽量化等の点にも優れたディスクジャケットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るディスクジャケットは、メディアディスクを収容するディスクジャケットであって、底部と、前記底部上に設けた第1板状部と、を有し、第1板状部は、孔または窪みである収容スペースを設けた段ボール又は中芯であり、前記底部上の前記収容スペース内に、前記メディアディスクが収容される構成とする。本構成によれば、ディスクメディアを適切に保護し得るとともに軽量化等の点にも優れたディスクジャケットとすることが可能である。
【0008】
また上記構成としてより具体的には、第1板状部は片面段ボールであり、当該片面段ボールのライナが、平面状である前記底部に接着固定されている構成としてもよい。本構成によれば、中芯の波形を利用してデザイン性等にも優れたディスクジャケットとすることが可能である。
【0009】
また、前記底部に連接した蓋部を有し、折り曲げにより前記蓋部が第1板状部を覆う閉状態となる上記構成のディスクジャケットについて、前記閉状態において第1板状部と中芯同士が対向するように、片面段ボールである第2板状部を前記蓋部に設けた構成を採用してもよい。
【0010】
また上記構成としてより具体的には、第1板状部と第2板状部の中芯同士は、波形の波長および前記閉状態における波形方向が略一致する構成としてもよい。本構成によれば、閉状態においてこれら中芯同士の波形が噛み合うことによる利点を享受することが可能となる。また上記構成としてより具体的には、第2板状部には、前記閉状態において前記収容スペースと重なる孔が設けられた構成としてもよい。
【0011】
また、前記底部に連接した蓋部を有し、折り曲げにより前記蓋部が第1板状部を覆う閉状態となる上記構成のディスクジャケットについて、前記片面段ボールの中芯の波形方向は、前記折り曲げのラインの方向と直交する構成としてもよい。本構成によれば、当該ディスクジャケットを立てて置く場合に、内部のゴミ等を落下させることが可能となる。
【0012】
更に上記構成としてより具体的には、前記底部は厚紙を用いて形成され、前記収容スペースは略円形の孔であって、直径がLPレコード盤と略同一である構成としてもよい。本構成によれば、LPレコード盤を収容するレコードジャケットとして好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ディスクメディアを適切に保護し得るとともに軽量化等の点にも優れたディスクジャケットを提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について第1実施形態と第2実施形態を例に挙げ、図面を参照しながら以下に説明する。
【0016】
1.第1実施形態
まず第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係るレコードジャケットJ1(本発明に係るディスクジャケットの一形態)の開いた状態の外観図である。また
図2は、折り曲げラインXの近傍における前方縁部分の前方視による模式的な構成図である。なお以下の説明における上下、左右、および前後の各方向(互いに直交する方向)は、
図1等に示すとおりである。
【0017】
レコードジャケットJ1は、厚みが一定である厚紙により構成された厚紙部1に板状部2(本発明に係る第1板状部の一形態)を接着固定して形成されており、不図示のLPレコード盤(本発明に係るディスクメディアの一形態)の収容に用いられる。厚紙部1は、底部11、蓋部12、および蓋止め部13を有する。なお本実施形態の厚紙部1は厚紙をカバーするように薄紙が貼り付けられているが、厚紙部1の形態はこれに限られず、例えば単一の厚紙のみから形成されても良い。また厚紙部1に相当する部材は、厚紙以外の材料(例えば、段ボールや樹脂板等)により形成されても良い。
【0018】
底部11の外縁形状は、前後に伸びた対辺と左右に伸びた対辺を有する略正方形となっており、これらの対辺からなる四辺それぞれの長さは、LPレコード盤の直径よりも数cm程度長くなっている。なお、底部11は全体が平らであって孔は設けられておらず、両面とも平面状である。
【0019】
底部11の上面には、板状部2が積層するように配置されて接着固定されている。板状部2は、
図2に示すように、1枚のライナ21に波形状に成形した中芯(「中芯原紙」とも呼ばれる)22を貼り合わせた片面段ボールであり、ライナ21が底部11に接着されている。ここでの片面段ボール、ライナ、および中芯は、日本工業規格(JIS規格)に規定されたものである。ライナ21と底部11は何れも紙材質であるため、例えば紙用の接着剤を用いて双方を容易に接着することが可能である。
【0020】
板状部2の外縁の形状および寸法は底部11と同等であり、板状部2は、底部11と外縁同士が上下に重なるように配置されている。但し板状部2の中央には、上方視円形の収容孔Hが設けられており、収容孔Hの直径は、LPレコード盤の直径(約30cm)と同等或いはこれより僅かに大きく設定されている。つまり収容孔Hの直径は、LPレコード盤と略同一である。
【0021】
そのため収容孔H内には、
図1に示すようにレコードジャケットJ1を開いた状態にて、底部11上に寝かすように(片面を底部11へ対向させるように)LPレコード盤を着脱自在に収容することが可能である。収容孔Hの直径はLPレコード盤の直径に合わせて設定されているため、LPレコード盤の外周の縁全体が収容孔Hの側壁に支持され、収容孔H内におけるLPレコード盤の位置は安定する。なお本発明に係る収容孔は、ディスクメディアが収容可能であれば本実施形態のような形態には限定されず、板状部に完全には囲まれていない形態(例えば板状部の外側へ連通する切欠きや溝などがある形態)とされても良い。
【0022】
また板状部2の厚み(ライナ21の下端から中芯22の上端までの上下方向距離)は、LPレコード盤の厚みと同等或いはこれ以上に設定されており、LPレコード盤の全体を収容孔H内へ収容することができる。板状部2の厚みの調節は、中芯22の波形(フルート)の種類を変えることによっても可能である。
【0023】
底部11の左側の縁は、
図1に破線で示す折り曲げラインX(前後に伸びたライン)を境にして、蓋部12の右側の縁に連接している。蓋部12の外縁形状および寸法は、底部11の外縁形状および寸法と同等である。蓋部12は全体が平らであって孔は設けられておらず、両面とも平面状である。更に蓋部12の左側の縁には、蓋止め部13が連接している。蓋止め部13は右方へ折り返されており、蓋部12の上側へ位置している。
【0024】
折り曲げラインXには予め折り癖が付けられているため、
図3に示すように、折り曲げラインXにおいて蓋部12を容易に折り曲げ可能である。当該折り曲げにより蓋部12を回転移動させると、レコードジャケットJ1を閉じることができる。この閉じた状態(閉状態)における蓋部12は、外縁同士が一致するように板状部2の上に重なり、収容穴Hを塞ぐように板状部2を覆っている。
【0025】
閉じた状態のレコードジャケットJ1について、前方縁部分の前方視による模式的な構成図を
図4に示す。
図4に示す状態では、中芯22それぞれの上端が蓋部12に接触ないし近接しており、ライナ21と中芯22の間における空洞C1に加え、中芯22と蓋部12の間における空洞C2が形成されている。
【0026】
閉じた状態のレコードジャケットJ1は、内部に収容されたLPレコード盤を適切に保持するとともに、外部衝撃から保護する役割をも果たし、LPレコード盤の保管や持ち運びに便利である。なお閉じた状態において、蓋止め部13の全体または一部を底部11の下側(閉じたレコードジャケットJ1の裏面側)に係合させると、蓋部12が勝手に開かないようにし、LPレコード盤の脱落をより確実に防ぐことが可能である。
【0027】
以上に説明したとおり、レコードジャケットJ1は、収容孔Hを設けた片面段ボールが板状部2として採用されており、底部11上の収容孔H内にLPレコード盤が収容可能である。そのため段ボールの特性を活かし、従来品に比べ種々の点において優れたレコードジャケットが実現される。以下、この点についてより具体的に説明する。
【0028】
まず段ボールは、波形の中芯によって側方視トラス構造(略三角形が連なった構造)が形成されており、強度および衝撃吸収性(クッション性)に優れている。そのため板状部2は、LPレコード盤を外部衝撃から効果的に保護することができる。なお板状部2は、LPレコード盤を前後左右の衝撃から十分に保護し得るだけでなく、底部11或いは蓋部12がLPレコード盤側へ押圧された際にもLPレコード盤を効果的に保護する。すなわち、底部11或いは蓋部12がLPレコード盤側へ押圧されたり衝撃を受けたりしても、段ボールである板状部2は潰され難く、更に段ボールのクッション性により衝撃も吸収され、LPレコード盤の破損等は極力回避される。
【0029】
また段ボールは、上記トラス構造により内部が相当に空洞化されており、強度および衝撃吸収性に優れながらも、同じ厚みの厚紙等に比べると非常に軽いという特徴を有する。そのためレコードジャケットJ1は軽量化が容易であり、流通時の搬送コスト低減やユーザによる持ち運びのし易さ等において有利である。
【0030】
更に、
図4に示す各空洞(C1、C2)は前後方向に貫通しており、これらの空洞ごとに通気性が確保される。特に、収容孔Hと左右方向位置が重複する各空洞(C1、C2)は、収容孔HをレコードジャケットJ1の外部へ連通させる。そのため、例えば水分や異物が付着したLPレコード盤を収容した場合にも、当該空洞を介した換気によって収容孔H内に湿気や異臭が篭ることを防ぎ、その分、LPレコード盤の品質劣化を抑えることが可能である。なお、紙材質である段ボール自体も吸湿・脱臭の性能を有しており、これと上述した換気との相乗効果によって、LPレコード盤の品質劣化をより効果的に抑えることが可能である。
【0031】
また段ボールは、様々な梱包等に利用される非常に汎用性の高い素材であり、安価であって大量調達も容易であるとともに、紙材質のために切断加工等も容易である。そのためレコードジャケットJ1は、段ボールを使用した分だけ製造コストの抑制が容易であり、更に量産化にも好適である。なお紙材質である段ボールは、プラスチック素材等に比べて生産や廃棄に伴う環境負荷が小さく、リサイクルが容易であるという特長も有しており、レコードジャケットJ1は段ボールを使用した分だけその利点を享受し得る。
【0032】
また本実施形態では板状部2として片面段ボールを採用し、ライナ21を底部11に向けて接着して、中芯22を上側へ露出させている。そのため開いた状態(
図1を参照)において、中芯22の左右に連続する波形は、上方視点のユーザにとって立体的で美しいストライプ模様に見え、更に手触りも良好である。このようにレコードジャケットJ1は、片面段ボールの特性を利用してデザイン性や手触りにも優れたものに仕上がっている。
【0033】
また板状部2は、中芯22の波形方向(山と谷が繰り返される方向)が折り曲げラインXの方向(前後方向)と直交するように配置されている。そのため、閉じた状態のレコードジャケットJ1を立てて置くと(折り曲げラインXの方向が鉛直方向となるように置くと)、先述した各空洞(C1、C2)の伸びる方向も鉛直方向となる。これにより、収容孔Hや板状部2の表面に残っていた小さなゴミ等を、これらの空洞を介して自然に落下させることが可能である。なお、本実施形態のような見開き型のレコードジャケットを立てて置く場合は、本を立てて置く場合と同様に、折り曲げラインの方向が鉛直方向となるように置くのが通常である。
【0034】
2.第2実施形態
次に第2実施形態について説明する。なお以下の説明では、第1実施形態と異なる部分の説明に重点をおき、共通する部分については説明を省略することがある。また第1実施形態の場合と同等の要素には、基本的に同じ符号を付することとする。
【0035】
図5は、第2実施形態に係るレコードジャケットJ2(本発明に係るディスクジャケットの一形態)の開いた状態の外観図である。また
図6は、折り曲げラインXの近傍における前方縁部分の前方視による模式的な構成図である。
【0036】
レコードジャケットJ2は、底部11に設けられた板状部2に加え、蓋部12に設けられた蓋側板状部2a(本発明に係る第2板状部の一形態)をも有している。蓋側板状部2aは、板状部2と同仕様の片面段ボール(ライナ21aと中芯22aを有する)を板状部2と同じ寸法・形状に加工した部材であり、ライナ21aが蓋部12の上面に接着されている。ライナ21aと蓋部12は何れも紙材質であるため、例えば紙用の接着剤を用いて双方を容易に接着することが可能である。
【0037】
蓋側板状部2aの外縁の形状および寸法は蓋部12と同等であり、蓋側板状部2aは、蓋部12と外縁同士が上下に重なるように配置されている。蓋側板状部2aの中央には、板状部2に設けた収容孔Hと同じ寸法・形状の蓋側孔Haが設けられている。折り曲げラインXにおいて蓋部12を折り曲げてレコードジャケットJ2を閉じると、中芯22を露出した板状部2と中芯22aを露出した蓋側板状部2aがほぼ完全に重なるとともに、収容孔Hと蓋側孔Haもほぼ完全に重なる。
【0038】
このように、レコードジャケットJ2を閉じた状態において板状部2と中芯同士が対向するように、片面段ボールである蓋側板状部2aが蓋部12に設けられている。更に板状部2と蓋側板状部2aの中芯同士(22、22a)は、波形の波長(隣合う山同士の間隔)が一致するとともに、当該閉じた状態における波形方向が左右方向で一致する。
【0039】
閉じた状態のレコードジャケットJ2について、前方縁部分の前方視による模式的な構成図を
図7に示す。上述のとおり、中芯同士(22、22a)の波形の波長および波形方向が一致するため、本図に示すように、中芯同士(22、22a)の波形が噛み合うことになる。これにより、両方の中芯(22、22a)による二重のトラス構造により非常に高い強度と衝撃吸収性が得られるとともに、板状部2と蓋側板状部2aにおける左右方向の位置ずれも生じ難く、安定した状態が得られる。また、このように中芯同士(22、22a)の波形を噛み合わせると、中芯同士(22、22a)の摩擦或いは係合等の作用によって蓋部12が勝手には開き難くなり、簡易なロックの効果を得ることが可能である。
【0040】
またレコードジャケットJ2は、閉じた状態において収容孔Hと重なる蓋側孔Haを有することにより、LPレコード盤の収容スペースに余裕を持たせること、或いは、蓋側板状部2aにも別のLPレコード盤を収容して複数枚のLPレコード盤を保持すること等が可能である。なお蓋側孔Haは、LPレコード盤以外のディスクメディアを収容するようにサイズが調整されていても良い。また蓋側板状部2aには、小さめの蓋側孔Haを複数個設けるようにしても良く、場合によっては蓋側孔Haを全く設けないようにしても構わない。
【0041】
3.総括
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の構成は上記実施形態に限られず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。例えば上述した板状部または蓋側板状部として、片面段ボール以外の段ボール(両面段ボール等)を採用することも可能である。この場合、基本的に中芯は上側へ露出しないが、段ボールを用いたことによる利点を得ることが可能である。なお、各実施形態において用いられる段ボールとしては、紙製の段ボールの代わりに、樹脂製の段ボール(プラダン)が採用されても良い。また段ボールの代わりに、中芯(ライナが無い状態のもの)が採用されても良い。
【0042】
また、上記実施形態における底部11(厚紙部1の一部)と板状部2の間に、例えば底部11と同等のサイズで孔の無い両面段ボールを設けるようにしてもよい。このようにすれば、その分だけレコードジャケットの厚みは増すが、強度や衝撃吸収性をより一層向上させることができる。この場合、底部11と当該両面段ボールを合わせた部分が、本発明に係る底部に相当する。また、LPレコード盤が収容されるスペース(本発明に係る収容スペースに相当する)として、各実施形態では板状部2に設けた収容孔Hが採用されていたが、その代わりに、圧縮プレス等によって板状部2に設けた窪み(凹部)が採用されても良い。
【0043】
なお蓋側孔Haも同様に、圧縮プレス等によって蓋側板状部2aに設けた窪み(凹部)としても良い。また蓋部12には、このような孔や窪みの代わりに、収容孔H(窪みとした場合も含む)に嵌め込まれる出っ張りを設けるようにしても良い。一例としては、第2実施形態における蓋側板状部2aを設ける代わりに、収容孔Hと同等或いはこれよりも小さい片面段ボール等を、レコードジャケットJ2を閉じた際に収容孔Hに嵌め込まれる位置に設けるようにしても良い。このようにすれば、収容孔H内に収容されたLPレコード盤の脱落を上記出っ張りにより阻止し、当該脱落をより確実に防ぐことが可能となる。
【0044】
また、上記実施形態ではディスクメディアとしてLPレコード盤を例に挙げたが、他種のレコード盤(SPレコード盤など)、CD[Compact Disc]、DVD[Digital Versatile Disc]、或いはBD[Blu-ray Disc](登録商標)などのディスクメディアについても、本発明を適用可能である。
【0045】
なお本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。