(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
シリカフューム(Silica Fume)は、一般に、一次粒子が直径0.1〜0.2μm程度のガラス質(非晶質)シリカの球状超微粒子である。このシリカフュームをコンクリート混和材として使用すると、そのポゾラン反応性やコンクリート中の微細な空隙を減少させる効果により、コンクリートの強度や耐久性の改善に有効である。また、シリカフュームは強度や耐久性のみならず、低水粉体比のコンクリートの施工性の改善にも有効なことが明らかになっている(非特許文献1参照)。シリカフュームを含むシリカフューム含有セメント組成物として、特許文献1には、ポルトランドセメントと、シリカフュームと石灰石微粉末を含むセメント組成物が開示されている。
【0003】
シリカフューム含有セメント組成物を使用したコンクリートの流動性や強度発現性はシリカフュームの含有量によって大きく変化する。このため、シリカフューム含有セメント組成物中のシリカフューム含有量を正確に定量することはその品質管理上きわめて重要な技術である。そこで、シリカフューム含有セメント組成物中のシリカフューム含有量を正確に測定する技術が求められている。
【0004】
セメント中の二酸化ケイ素量を定量する方法として、JIS R 5202(セメントの化学分析方法)で規定されている「二酸化ケイ素の定量方法」が知られている。この方法は、試料のセメントを過塩素酸で溶解し、砂浴上で加熱して二酸化ケイ素を脱水して不溶性とした後、塩酸(1+1)を加え、可溶性塩類を溶かしてろ過し、沈殿を強熱して質量を量ることによって、二酸化ケイ素量を求める方法である。
【0005】
また、JIS R 5204(セメントの蛍光X線分析方法)には、セメント中の二酸化ケイ素量を、蛍光X線を用いて定量する方法が規定されている。
【0006】
さらに、特許文献2および特許文献3には、セメント中の非晶質の二酸化ケイ素量を、粉末X線回折を用いて定量する方法が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
JIS R 5202に規定されている二酸化ケイ素量の定量方法は、セメントに含まれる二酸化ケイ素を定量する方法としては有効である。しかしながら、この方法は、シリカフューム含有セメント組成物中のシリカフュームのみを定量することは難しい。例えば、ポルトランドセメントは、エーライト(3CaO・SiO
2)やビーライト(2CaO・SiO
2)などのケイ酸カルシウムが含まれているが、これらのケイ酸カルシウムに含まれている二酸化ケイ素分とシリカフュームとを分離して、シリカフューム含有量のみを定量することは難しい。また、JIS R 5204に規定されているセメントの蛍光X線分析方法は、シリカフュームの定量は可能であるが、その分析方法の実施に使用する蛍光X線装置は高価で導入しにくい。
【0010】
一方、特許文献2および特許文献3に記載されている粉末X線回折を用いる方法では、X線回折パターンから非晶質のシリカフュームのX線回折ピークを抽出することによって、シリカフュームのみを定量することが可能となる。しかしながら、非晶質のシリカフュームのX線回折ピーク強度は、ベースとなるセメントの鉱物組成やその粉末度の影響を強く受けるため、シリカフューム含有量を正確に測定するためには、ベースとなるセメントの組成や粉末度を予め測定する必要がある。
【0011】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、ベースとなるセメントの組成や粉末度を予め測定しなくとも、シリカフューム含有セメント組成物に含まれるシリカフュームを簡便かつ迅速に、精度よく定量することができる方法を提供することを目的とする。また、本発明は、シリカフューム含有量が所定の範囲にあるシリカフューム含有セメント組成物を簡便かつ迅速に、精度よく製造することができるシリカフューム含有セメント組成物の製造方法を提供することもその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明のシリカフューム含有セメント組成物に含まれるシリカフュームの定量方法は、シリカフュームとポルトランドセメントを含むシリカフューム含有セメント組成物に含まれるシリカフュームを定量する方法であって、前記シリカフューム含有セメント組成物の質量を測定して質量m
1を得た後、前記シリカフューム含有セメント組成物と、塩酸濃度が5質量%以上10質量%以下の範囲にある塩酸水溶液とを混合し、得られた混合物を、80℃以上100℃以下の温度で加熱して、前記ポルトランドセメントを溶解させるポルトランドセメント溶解工程と、前記混合物中の不溶物を回収し、その質量を測定して質量m
2を得る不溶物回収工程と、前記質量m
1と前記質量m
2を用いて、前記シリカフューム含有セメント組成物に含まれるシリカフュームの量を算出する算出工程と、を含むことを特徴としている。ここで、本発明において、塩酸濃度は、濃塩酸(濃度36質量%)の希釈倍率のことを示す。例えば濃度10%の塩酸水溶液とは、濃塩酸:水=10:90(質量比)のことを云う。
【0013】
このような構成とされた本発明のシリカフューム含有セメント組成物に含まれるシリカフュームの定量方法によれば、シリカフューム含有セメント組成物と、塩酸濃度が5質量%以上10質量%以下の範囲にある低濃度の塩酸水溶液とを混合して得た混合物を、80℃以上100℃以下の温度で加熱するので、シリカフュームを溶解あるいは変質させずに、ベースとなるポルトランドセメントのみを選択的に溶解させることができる。このため、ベースとなるセメントの組成や粉末度を予め測定しなくとも、シリカフューム含有セメント組成物に含まれるシリカフュームを精度よく定量することが可能となる。
【0014】
本発明のシリカフューム含有セメント組成物の製造方法は、シリカフュームとポルトランドセメントとを混合して、シリカフューム含有セメント組成物を得る混合工程と、前記シリカフューム含有セメント組成物に含まれるシリカフュームを、上記のシリカフューム含有セメント組成物に含まれるシリカフュームの定量方法により定量する定量工程と、を含むことを特徴としている。
【0015】
このような構成とされた本発明のシリカフューム含有セメント組成物の製造方法によれば、シリカフューム含有セメント組成物に含まれるシリカフュームを、上述のシリカフューム含有セメント組成物に含まれるシリカフュームの定量方法により定量するので、シリカフューム含有量が所定の範囲にあるシリカフューム含有セメント組成物を精度よく製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ベースとなるセメントの組成や粉末度を予め測定しなくとも、シリカフューム含有セメント組成物に含まれるシリカフュームを簡便かつ迅速に、精度よく定量することができる方法を提供することが可能となる。また、本発明によれば、シリカフューム含有量が所定の範囲にあるシリカフューム含有セメント組成物を精度よく製造することができるシリカフューム含有セメント組成物の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態であるシリカフューム含有セメント組成物に含まれるシリカフュームの定量方法およびシリカフューム含有セメント組成物の製造方法について、添付した図面を参照して説明する。
なお、本実施形態において分析対象となるシリカフューム含有セメント組成物は、シリカフュームとポルトランドセメントとを含む組成物である。ベースとなるポルトランドセメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメントなどの各種ポルトランドセメントを用いることができる。シリカフューム含有セメント組成物に含まれるシリカフュームの含有量は、用途によって異なるが、一般に1質量%以上30質量%以下の範囲にある。
【0019】
<シリカフューム含有セメント組成物に含まれるシリカフュームの定量方法>
図1は、本発明の一実施形態に係るシリカフューム含有セメント組成物に含まれるシリカフュームの定量方法を示すフロー図である。
本実施形態のシリカフュームの定量方法は、
図1に示すように、ポルトランドセメント溶解工程S01と、不溶物回収工程S02と、算出工程S03を含む。
【0020】
(ポルトランドセメント溶解工程)
ポルトランドセメント溶解工程S01は、分析試料として用いるシリカフューム含有セメント組成物の質量を測定して質量m
1を得た後、このシリカフューム含有セメント組成物と、塩酸濃度が5質量%以上10質量%以下の範囲にある塩酸水溶液とを混合し、得られた混合物を、80℃以上100℃以下の温度で加熱して、シリカフューム含有セメント組成物中のポルトランドセメントを溶解させる工程である。
【0021】
分析試料として用いるシリカフューム含有セメント組成物の質量は、0.5g以上5.0g以下の範囲にあることが好ましい。分析試料の質量が少なくなりすぎると、次の不溶物回収工程S02で回収される塩酸不溶物の量が少なくなり、分析の精度が低下するおそれがある。また、分析試料の質量が多くなりすぎると、ポルトランドセメントを溶解させるのに時間が掛かり、またポルトランドセメントが十分に溶解せずに塩酸不溶物として残留するおそれがある。
【0022】
ポルトランドセメント溶解工程S01においては、シリカフューム含有セメント組成物のセメントを塩酸水溶液のみで溶解させる。
ここで、塩酸水溶液の塩酸濃度が低くなりすぎると、ポルトランドセメントが溶解しにくくなるおそれがある。塩酸水溶液に溶解せずに残留したポルトランドセメントは、不溶物回収工程S02において不溶物として回収されるため、ポルトランドセメントの残留量が多くなると、シリカフューム含有量の分析値の誤差が大きくなる。一方、塩酸水溶液の塩酸濃度が高くなりすぎると、シリカフュームの一部が塩酸水溶液と反応してゲル状物質を生成するおそれがある。シリカフュームのゲル状物質は、シリカフュームよりも質量が大きいため、ゲル状物質が生成すると、シリカフューム含有量の分析値の誤差が大きくなる。以上の理由から、本実施形態においては、塩酸水溶液の塩酸濃度を5質量%以上10質量%以下の範囲と設定している。塩酸水溶液の塩酸濃度は、5質量%以上8質量%以下の範囲にあることが好ましい。なお、塩酸水溶液のpHは、0.25以上0.60以下の範囲にあることが好ましい。
【0023】
シリカフューム含有セメント組成物と塩酸水溶液との混合割合は、シリカフューム含有セメント組成物1gに対して、塩酸水溶液の量が30mL以上70mL以下の範囲となる割合であることが好ましい。
【0024】
シリカフューム含有セメント組成物と塩酸水溶液との混合物の加熱温度は、低くなりすぎるとセメントが溶解しにくくなるおそれがある。一方、加熱温度が高くなりすぎると、シリカフュームの一部が塩酸水溶液と反応してゲル状物質を生成するおそれがある。このため、本実施形態においては、混合物の加熱温度を80℃以上100℃以下の範囲と設定している。混合物の加熱温度は、80℃以上95℃以下の範囲にあることが好ましい。混合物の加熱時間は、5分間以上30分間以下の範囲にあることが好ましく、8分間以上20分間以下の範囲にあることが特に好ましい。また、混合物の加熱は、混合物に撹拌を加えながら行うことが好ましい。混合物に撹拌を加えることによって、ポルトランドセメントの溶解速度が高くなり、ポルトランドセメントをより確実に溶解させることができるので、シリカフューム含有セメント中のシリカフューム量をより精度良く定量することが可能となる。
【0025】
(不溶物回収工程)
不溶物回収工程S02は、混合物中の塩酸不溶物を回収し、その質量を測定して質量m
2を得る工程である。この不溶物回収工程S02で回収される塩酸不溶物は、主としてシリカフュームである。
【0026】
塩酸不溶物を回収する方法としては、ろ過、デカンテーション、遠心分離などの固液分離法として一般に利用されている各種の方法を使用することができる。
【0027】
回収された塩酸不溶物は、900℃以上1000℃以下の温度で10分間以上60分間以下の範囲の時間加熱することが好ましい。
【0028】
(算出工程)
算出工程S03は、前述の分析試料の質量m
1と塩酸不溶物の質量m
2を用いて、シリカフュームの含有量を算出する工程である。
【0029】
シリカフュームの含有量C(質量%)は、例えば、下記の式(1)を用いて算出することができる。
C(質量%)=(m
2/m
1)×100・・・(1)
【0030】
また、シリカフューム含有セメント組成物に含まれるポルトランドセメントの塩酸不溶分およびシリカフュームの塩酸不溶分が既知の場合は、下記の式(2)よりシリカフュームの補正含有量C’(質量%)を算出することができる。
C’(質量%)=[(m
2/m
1)×100−a]/(b−a)・・・(2)
【0031】
上記の式(2)において、aは、セメントの塩酸不溶分(質量%)を意味し、bはシリカフュームの塩酸不溶分(質量%)を意味する。なお、ポルトランドセメントおよびシリカフュームの塩酸不溶分は、上述のポルトランドセメント溶解工程S01と同じ条件で、ポルトランドセメントおよびシリカフュームと塩酸水溶液とを混合、加熱し、得られた不溶物を加熱して測定した塩酸不溶分である。上記の式(2)を用いることによって、シリカフュームの含有量をより正確に求めることが可能となる。
【0032】
<シリカフューム含有セメント組成物の製造方法>
図2は、本発明の一実施形態に係るシリカフューム含有セメント組成物の製造方法を示すフロー図である。
本実施形態のシリカフューム含有セメント組成物の製造方法は、
図2に示すように、混合工程S11と、定量工程S12と、シリカフューム含有量が適切であるかを判断する判断工程S13とを含む。
【0033】
(混合工程)
混合工程S11は、シリカフュームとセメントとを混合して、シリカフューム含有セメント組成物を得る工程である。
【0034】
混合工程S11では、シリカフュームとセメントとを、所定の量比となるように混合する。シリカフュームとセメントとの混合割合は、一般にシリカフュームの含有量が1質量%以上30質量%以下の範囲となる割合である。シリカフュームとセメントとの混合方法としては、特には制限はなく、セメント組成物の製造に使用されている通常の混合装置を用いて混合することができる。
【0035】
(定量工程)
定量工程S12は、混合工程S11で得られたシリカフューム含有セメント組成物に含まれるシリカフュームを、上述のシリカフューム含有セメント組成物に含まれるシリカフュームの定量方法により定量する工程である。
【0036】
(判断工程)
判断工程S13は、定量工程S12において定量されたシリカフュームの含有量が適切であるかを判断する工程である。シリカフューム含有量が適切であると判断された場合(Yes)は、シリカフューム含有セメント組成物は製品として利用される。一方、シリカフューム含有量が適切でないと判断された場合(No)は、シリカフューム含有セメント組成物は混合工程S11に送られる。混合工程S11において、シリカフュームの含有量が多い場合は、セメントが添加、混合され、シリカフュームの含有量が少ない場合は、シリカフュームが添加、混合される。そして、再度、定量工程S12にてシリカフューム含有セメント組成物に含まれるシリカフュームが定量される。
【0037】
以上のような構成とされた本実施形態のシリカフューム含有セメント組成物に含まれるシリカフュームの定量方法によれば、シリカフューム含有セメント組成物と、塩酸濃度が5質量%以上10質量%以下の範囲にある低濃度の塩酸水溶液とを混合して得られた混合物を、80℃以上100℃以下の温度で加熱するので、シリカフュームを溶解あるいは変質させずに、ベースとなるポルトランドセメントのみを選択的に溶解させることができる。このため、ベースとなるセメントの組成や粉末度を予め測定しなくとも、シリカフューム含有セメント組成物に含まれるシリカフュームを精度よく定量することが可能となる。
【0038】
また、本実施形態のシリカフューム含有セメント組成物の製造方法によれば、シリカフューム含有セメント組成物に含まれるシリカフュームを、シリカフューム含有セメント組成物に含まれるシリカフュームの定量方法により定量するので、シリカフューム含有量が所定の範囲にあるシリカフューム含有セメント組成物を精度よく製造することが可能となる。
【実施例】
【0039】
以下に、本発明を、実施例により説明する。
【0040】
[実施例1]
(1)試料の調製
シリカフューム含有セメント組成物:低熱ポルトランドセメント(三菱マテリアル(株)九州工場製)とシリカフューム(エルケムジャパン(株)製)とを質量比で90:10の割合で混合して、シリカフュームの仕込み量が10質量%のシリカフューム含有セメント組成物を調製した。
塩酸水溶液:濃塩酸(濃度36質量%)を水で希釈して、塩酸濃度が0.5質量%(No.11)、1質量%(No.12)、3質量%(No.13)、5質量%(No.14)、7質量%(No.15)、10質量%(No.16)、15%(No.17)、20%(No.18)、50%(No.19)の塩酸水溶液を調製した。
【0041】
(2)シリカフューム含有量の測定
上記のシリカフューム含有セメント組成物を1.000g(質量:m
1)正確に測り取り、これを分析試料とした。この分析試料と上記の塩酸水溶液50mLとを混合し、得られた混合物を90℃の温度で10分間加熱して、試料中の低熱ポルトランドセメントを溶解させた。加熱中、混合物は撹拌しなかった。加熱後の混合物を、ろ過し、混合物中の塩酸不溶物を回収した。回収した塩酸不溶物をるつぼに入れ、950℃の温度で30分間加熱し、その後、デシケータ中で室温まで放冷した。放冷後の塩酸不溶物の質量m
2を測定した。そして、上記の式(1)よりシリカフューム含有量(分析値)を求め、シリカフューム含有量の仕込み量に対する分析値の相対誤差を算出した。その結果を、表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
塩酸濃度が5〜10質量%のNo.14〜No.16の塩酸水溶液を用いたときのシリカフューム含有量の分析値は、11.57〜12.01質量%であり、シリカフュームの仕込み量に対する分析値の相対誤差は20%以下であることが確認された。
【0044】
これに対して、塩酸濃度が5質量%未満のNo.11〜No.13の塩酸水溶液を用いたときは、塩酸濃度が低くなるにともなって、シリカフューム含有量が多くなった。これは、塩酸濃度が低くなるにともなって低熱ポルトランドセメントが溶解しにくくなり、溶解せずに残留した低熱ポルトランドセメントがシリカフューム含有量として検出されたためであると推察される。また、塩酸濃度が10質量%を超えるNo.17〜No.19の塩酸水溶液を用いたときのシリカフューム含有量の分析値は13.20〜13.49質量%であり、シリカフュームの仕込み量に対する分析値の相対誤差は30質量%以上と大きくなった。これは、シリカフュームの一部がゲル状物質となったためであると推察される。
【0045】
[実施例2]
(1)試料の調製
シリカフューム含有セメント組成物:実施例1と同様にして、シリカフュームの仕込み量が10質量%のシリカフューム含有セメント組成物を調製した。
塩酸水溶液:濃塩酸(濃度36質量%)を水で希釈して、塩酸濃度が5質量%(No.21)、6質量%(No.22)、7質量%(No.23)、8質量%(No.24)、9質量%(No.25)、10質量%(No.26)の塩酸水溶液を調製した。
【0046】
(2)シリカフューム含有量の測定
シリカフューム含有セメント組成物と塩酸水溶液50mLとを混合して得た混合物を、室温で5分間、マグネチックスターラーを用いて撹拌し、次いで、撹拌を続けながら、混合物を90℃まで昇温させた後、その温度で20分間加熱して、低温ポルトランドセメントを溶解させたこと以外は、実施例1と同様にして、シリカフューム含有量を求め、シリカフューム含有量の仕込み量に対する分析値の相対誤差を算出した。その結果を、表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
混合物に撹拌を加えながら、混合物を加熱することによって、分析値の相対誤差は最大で11.0%となり、シリカフュームの仕込み量に対する分析値の相対誤差が低減することが確認された。
【0049】
[実施例3]
(1)試料の調製
シリカフューム含有セメント組成物:低熱ポルトランドセメントとシリカフュームとを質量比で95〜80:5〜20の割合で混合して、シリカフュームの仕込み量が5質量%(No.31)、10質量%(No.32)、15質量%(No.33)、20質量%(No.34)のシリカフューム含有セメント組成物を調製した。なお、使用した低熱ポルトランドセメントおよびシリカフュームは、実施例1で使用したものと同一のものである。
【0050】
(2)シリカフューム含有量の測定
上記のシリカフューム含有セメント組成物を1.000g(質量m
1)正確に測り採り、これを分析試料とした。この分析試料と、塩酸濃度10質量%の塩酸水溶液50mLとを混合し、得られた混合物を、マグネチックスターラーを用いて撹拌しながら、90℃の温度で10分間加熱して、試料中の低熱ポルトランドセメントを溶解させた。加熱後の混合物を、ろ過し、混合物中の塩酸不溶物を回収した。回収した塩酸不溶物をるつぼに入れ、950℃の温度で20分間加熱し、その後、デシケータ中で室温まで放冷した。放冷後の塩酸不溶物の質量m
2を測定した。また、シリカフューム含有セメント組成物の調製に用いた低熱ポルトランドセメントの塩酸不溶分とシリカフュームの塩酸不溶分を測定した。その結果、低熱ポルトランドセメントの塩酸不溶分は0.39質量%、シリカフュームの塩酸不溶分は88.50質量%であった。
【0051】
シリカフューム含有セメント組成物の分析試料の質量m
1と塩酸不溶物の質量m
2から、上記の式(1)を用いて、シリカフューム含有量(分析値)を求め、シリカフューム含有量の仕込み量に対する分析値の相対誤差を算出した。その結果を、表3の「補正なし」の欄に示す。
【0052】
また、シリカフューム含有セメント組成物の分析試料の質量m
1と塩酸不溶物の質量m
2と低熱ポルトランドセメントの塩酸不溶分とシリカフュームの塩酸不溶分から、上記の式(2)を用いて、シリカフューム含有量(分析値)を求め、シリカフューム含有量の仕込み量に対する分析値の相対誤差を算出した。その結果を、表3の「補正あり」の欄に示す。
【0053】
【表3】
【0054】
シリカフュームの仕込み量に対する分析値の相対誤差は、概ね補正ありの方が低くなることが確認された。
【0055】
以上の結果から、本実施例によれば、ベースとなるセメントの組成や粉末度を予め測定しなくとも、シリカフューム含有セメント組成物に含まれるシリカフュームの量を精度よく定量することができることが確認された。