(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851083
(24)【登録日】2021年3月11日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】畜舎
(51)【国際特許分類】
A01K 1/00 20060101AFI20210322BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20210322BHJP
F24F 7/02 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
A01K1/00 F
F24F7/06 K
F24F7/02 K
F24F7/02 L
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-86965(P2018-86965)
(22)【出願日】2018年4月27日
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3210031号
【原出願日】2017年2月8日
(65)【公開番号】特開2018-126161(P2018-126161A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2019年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】597049765
【氏名又は名称】株式会社興和工業
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(72)【発明者】
【氏名】高柳 稔
【審査官】
田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/113895(WO,A1)
【文献】
実開昭56−163223(JP,U)
【文献】
実開昭55−146936(JP,U)
【文献】
特開昭63−231130(JP,A)
【文献】
特開平01−196438(JP,A)
【文献】
特開昭63−238353(JP,A)
【文献】
特開平05−244840(JP,A)
【文献】
特開2010−005601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 1/00−1/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状の棟部を有する屋根と、前記棟部に平行に延びると共に窓を有する壁とを備える畜舎において、
前記棟部が直線状に延びる細長い開口部とされ、この開口部の縁から上へ密閉性のよい小壁が延ばされ、小壁の上に密閉性のよい小屋根が掛けられ、この小屋根に所定ピッチで複数個の換気扇が設けられ、前記小壁及び前記小屋根には、開閉可能な窓が設けられておらず、
前記換気扇は、前記小屋根から上に延びる筒体と、この筒体に収められる回転翼と、前記筒体で支持され前記回転翼を回すモータと、前記筒体の上部開口に被せた傘とからなり、前記筒体は前記小屋根から下へは延びておらず、
前記屋根の下方の空気が、前記小屋根の下を通って、前記換気扇で外へ排出され、屋根裏に水滴が溜まりにくい構造にしたことを特徴とする畜舎。
【請求項2】
前記畜舎は、乳牛の飼育に供する建物であることを特徴とする請求項1記載の畜舎。
【請求項3】
前記屋根は、切妻屋根又は腰折れ屋根であることを特徴とする請求項1記載の畜舎。
【請求項4】
前記窓は、前記壁の上部と下部に各々設けられており、各々カーテン又はシャッタを備えていることを特徴とする請求項1記載の畜舎。
【請求項5】
前記傘の外径が前記筒体の外径より大きいことを特徴とする請求項1記載の畜舎。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛舎に好適な畜舎に関する。
【背景技術】
【0002】
寒冷地においては、乳牛は、牛舎で飼育される。多くの牛舎は、壁に大きな窓を備え、窓から外気を取り入れ、汚れて温まった空気を窓又は排気口から排出する構造のものであった。しかし、牛、特に乳牛は、温度変化に敏感である。従来の自然換気では温度管理が困難であるため、強制換気が必要になってきた。
そこで、強制換気機構を備えた牛舎が提案されてきた(例えば、特許文献1(
図2、
図3、
図4参照)。
【0003】
特許文献1の
図2に示されるように、鶏舎(10)(括弧付き数字は特許文献1記載の符号を示す。以下同様)の屋根(15)に、5個の風雨防護部(22)が点々と配置されている。
【0004】
特許文献1の
図3に示されるように、風雨防護部(22)では、固定部(35)と称する筒が垂直に配置され、この固定部(35)の下端から変形部(34)と称する蛇腹管が鶏舎(10)内へ深く延ばされている。
特許文献1の
図4に示されるように、筒状の固定部(35)内にファン(32)が配置されている。
【0005】
変形部(34)が鶏舎(10)内部に深く降ろされるため、鶏舎(10)内の必要な箇所から局部的に汚れた空気を外部へ排出することができる。
【0006】
一方、特許文献1の
図3において、屋根(15)は変形部(34)の下端から離れているため、屋根(15)の下に空気が滞留する。鶏に比較して乳牛は、身体が格段に大きく体表面積が大きいため、発汗量は甚大である。この発汗により湿った空気が上昇し、屋根(15)の下面に当たる。
【0007】
冬期は屋根(15)が低温であるため、屋根(15)の下面に結露が生じる。この結露がある程度まとまると、水滴となって落下する。
乳牛は、敏感であるため、身体に水滴が当たるだけで、乳の出が悪くなる。
【0008】
すなわち、特許文献1は、鶏舎に好適であるものの、牛舎には不向きである。
そこで、寒冷地で使用する畜舎であって、屋根裏に水滴が溜まりにくい構造の畜舎が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−104300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、寒冷地で使用する畜舎であって、屋根裏に水滴が溜まりにくい構造の畜舎を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、直線状の棟部を有する屋根と、前記棟部に平行に延びると共に窓を有する壁とを備える畜舎において、
前記棟部が直線状に延びる細長い開口部とされ、この開口部の縁から上へ密閉性のよい小壁が延ばされ、小壁の上に密閉性のよい小屋根が掛けられ、この小屋根に所定ピッチで複数個の換気扇が設けられ、前記小壁及び前記小屋根には、開閉可能な窓が設けられておらず、
前記換気扇は、前記小屋根から上に延びる筒体と、この筒体に収められる回転翼と、前記筒体で支持され前記回転翼を回すモータと、前記筒体の上部開口に被せた傘とからなり、前記筒体は前記小屋根から下へは延びておらず、
前記屋根の下方の空気が、前記小屋根の下を通って、前記換気扇で外へ排出され
、屋根裏に水滴が溜まりにくい構造にしたことを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明では、畜舎は、乳牛の飼育に供する建物であることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明では、屋根は、切妻屋根又は腰折れ屋根であることを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る発明では、窓は、壁の上部と下部に各々設けられており、各々カーテン又はシャッタを備えていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に係る発明で
は、傘の外径が筒体の外径より大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、屋根の棟部に、細長い開口部が設けられ、この開口部に小壁が立てられ小壁に小屋根が掛けられ、小屋根に複数個の換気扇が取付けられている。
屋根の下方の空気は、小屋根の下を通って換気扇で外へ排出される。小壁と小屋根が空気を集める役割を果たすため、屋根裏に局部的に空気が滞留する心配はない。滞留しないため屋根裏に水滴が発生する心配はない。発生したとしても水滴の量は微量である。
よって、本発明によれば、屋根裏に水滴が溜まりにくい構造の畜舎が提供される。
【0017】
請求項2に係る発明では、畜舎は、乳牛の飼育に供する建物である。本発明の畜舎は小壁、小屋根及び換気扇が必要であるため、従来の畜舎より高価になる。しかし、敏感な乳牛に水滴が落下する心配がないため、搾乳量の増加が期待できる。すなわち、本発明の畜舎は、牛舎に好適である。
【0018】
請求項3に係る発明では、屋根は、切妻屋根又は腰折れ屋根である。切妻屋根又は腰折れ屋根であれば、棟部が中央にあり、屋根裏の換気が均等に行える。
【0019】
請求項4に係る発明では、窓は、壁の上部と下部に各々設けられており、各々カーテン又はシャッタを備えている。強制換気の場合には上の窓を開放する。自然換気の場合は上の窓と下の窓の両方を開放する。畜舎の使い勝手がよくなる。
【0020】
請求項5に係る発明では、回転翼を収納する筒体の上に大径の傘を被せた。大径の傘で雨や雪が筒体内へ侵入することを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0023】
図1に示すように、畜舎10は、切妻屋根(又は腰折れ屋根)を備える建物であって、柱11と、この柱11に掛けた屋根梁12と、柱11に取付けた壁13と、屋根梁12に載せた屋根14とからなる。壁13には上部窓15と下部窓16が設けられており、各々カーテン17(又はシャッタ)を備えている。カーテン17(又はシャッタ)は、人為的に開閉可能である
【0024】
自然換気の場合に、上部窓15と下部窓16とを開放する。外気が下部窓16から流入し、温まった空気が上部窓15から出る。
強制換気については、後述する。
【0025】
屋根14の頂点である棟部18には、図面表裏方向に延びる細長い開口部21が設けられ、この開口部21の縁から上へ小壁22、22が延ばされ、小壁22、22の上に小屋根23が掛けられ、この小屋根23に換気扇30が設けられている。
【0026】
図2に示すように、棟部18に、左右一対の小壁22、22が立てられ、小壁22、22の上に小屋根23が掛けられ、この小屋根23に所定のピンチPで換気扇30が設けられている。
小壁22及び小屋根23は、隙間を殆ど有しておらず、密閉性が良好である。
【0027】
屋根14は片流れ屋根やドーム屋根や陸屋根であってもよいが、屋根14下の空気の排出を考えると切妻や腰折れが好適である。切妻や腰折れであれば、雪下ろしも楽になる。
【0028】
図3に示すように、換気扇30は、小屋根23から上に延びる筒体31と、この筒体31に収められる回転翼32と、筒体31で支持され回転翼32を回すモータ33と、筒体31の上部開口に被せた傘34とからなる。傘34は筒体31より大径にすることで、雪や雨が筒体31内へ侵入することを防止する。モータ33で回転翼32を回すことで、筒体31内の空気を外へ排出することができる。
【0029】
図4に示すように、換気扇30は、所定のピンチPで複数個(この例では6個)を小屋根23に配置する。
【0030】
以上の構成からなる本発明の畜舎10における空気の流れ(強制換気)を
図5に基づいて説明する。
図5(a)は比較例、
図5(b)が実施例である。
図5(a)の比較例では、小壁22や小屋根23が無く、屋根14に直接換気扇30が取付けられている。比較例であれば、小壁22や小屋根23が無い分、建築コストを抑えることができる。
【0031】
しかし、空気の流れは、換気扇30の直下で盛んになり、換気扇30と隣の換気扇30との中間部分では空気の淀み36が発生する。冬期は空気が乾燥する。しかし、牛は体が大きいため、発汗により空気が湿る。すなわち、冬期であっても畜舎10内の湿度は高くなる。
【0032】
加えて、屋根14が低温であるため、換気扇30と隣の換気扇30との中間部分にて屋根14裏に結露が生じる。この結露が纏まると水滴となって落下する。畜舎10が牛舎である場合は、水滴が乳牛に当たる。乳牛は神経質であるため、水滴が当たると搾乳量が減る。よって、
図5(a)の構造は、改善の余地がある。
【0033】
この点、
図5(b)の実施例では、屋根14下の空気が一旦小屋根23の下に集められ、その後に換気扇30で排出される。すなわち、小屋根23と小壁22とにより、空気の流れを平均化できるため、
図5(a)に示す空気の淀み36の発生を抑えることができる。発生したとしても実害がない程度に縮小することができる。結果、屋根14裏に水滴が溜まりにくい構造の畜舎10が提供される。
【0034】
尚、本発明は、牛舎の他、豚舎などの畜舎に適用可能である。鶏舎にも適用できる。動物園の獣舎に適用することも差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、寒冷地に建てられる畜舎、特に牛舎に好適である。
【符号の説明】
【0036】
10…畜舎、13…壁、14…屋根、15…上部窓、16…下部窓、17…カーテン、21…開口部、22…小壁、23…小屋根、30…換気扇、31…筒体、32…回転翼、33…モータ、34…傘、P…換気扇の取付けピッチ。