特許第6851086号(P6851086)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6851086栄養不良を処置するための組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851086
(24)【登録日】2021年3月11日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】栄養不良を処置するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/19 20160101AFI20210322BHJP
   A23L 33/155 20160101ALI20210322BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20210322BHJP
   A61K 35/20 20060101ALI20210322BHJP
   A61K 31/59 20060101ALI20210322BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20210322BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20210322BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20210322BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20210322BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   A23L33/19
   A23L33/155
   A23L33/10
   A61K35/20
   A61K31/59
   A61K38/02
   A61K31/19
   A61P1/14
   A61P3/02
   A61P21/00
【請求項の数】13
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2018-518784(P2018-518784)
(86)(22)【出願日】2016年6月24日
(65)【公表番号】特表2018-519365(P2018-519365A)
(43)【公表日】2018年7月19日
(86)【国際出願番号】EP2016064636
(87)【国際公開番号】WO2016207329
(87)【国際公開日】20161229
【審査請求日】2019年6月14日
(31)【優先権主張番号】2015032
(32)【優先日】2015年6月26日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】517452073
【氏名又は名称】バイタルネクスト・ベスローテン・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】VitalneXt B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ヘルベン・カロルス・マルティヌス・ゾンダフ
(72)【発明者】
【氏名】レインデル・ストレイケル
【審査官】 中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0164833(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/005568(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0229029(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0203712(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/055905(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/099904(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0044685(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02705844(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0250317(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
70〜200mg/mlの乳タンパク質;
30〜60ng/mlのビタミンDまたはその誘導体;および
0.2〜1mg/mlのウルソール酸;
を含む液体または半液体栄養組成物であって、
前記乳タンパク質におけるカゼイン:ホエー比が20:80〜80:20までの範囲であり、総アミノ酸含量の30〜45%がロイシン、イソロイシンおよびバリンの混合物である、栄養組成物。
【請求項2】
乳タンパク質の濃度が7〜180mg/mlである、請求項1に記載の液体または半液体栄養組成物。
【請求項3】
ビタミンDまたはその誘導体の濃度が3〜55ng/mlである、請求項1または2に記載の液体または半液体栄養組成物。
【請求項4】
ウルソール酸の濃度が0.25〜0.95mg/mlである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体または半液体栄養組成物。
【請求項5】
カゼイン:ホエー比が30:70〜70:30である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体または半液体栄養組成物。
【請求項6】
カゼイン:ホエー比が40:60〜68:32である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体または半液体栄養組成物。
【請求項7】
カゼイン:ホエー比が45:55〜65:35である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体または半液体栄養組成物。
【請求項8】
総アミノ酸含量の7〜10%の濃度でバリンおよびイソロイシンを、および総アミノ酸含量の16〜25%の濃度でロイシンを含み、ここでバリン、イソロイシンおよびロイシンが遊離および結合形態で存在する、請求項1〜のいずれか一項に記載の液体または半液体栄養組成物。
【請求項9】
.5〜3Kcal/mlを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の液体または半液体栄養組成物。
【請求項10】
100Kcalあたり
.5〜8.5グラムの乳タンパク質;
.2〜3.0μgのビタミンDまたはその誘導体;および
8〜50mgのウルソール酸
を含み、前記乳タンパク質におけるカゼイン:ホエー比が20:80〜80:20であり、総アミノ酸含量の30〜45%がロイシン、イソロイシンおよびバリンの混合物である、栄養組成物。
【請求項11】
ルソール酸の量が1〜48mgである、請求項10に記載の栄養組成物。
【請求項12】
組成物が粉末である、請求項10または11に記載の栄養組成物。
【請求項13】
栄養不良、体重減少および/または筋萎縮の患者の処置に使用するための、請求項1〜9のいずれか一項に記載の液体または半液体栄養組成物、または請求項1012のいずれか一項に記載の栄養組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医学および栄養学の分野に関する。より具体的には、本発明は疾患の結果であり得る栄養不良を処置するための手段および方法に関する。本発明はさらに、体重減少および筋萎縮のような、栄養不良およびそれに関連する合併症を有する患者を処置するための、経腸投与のための栄養組成物、および栄養補助食品、および特にそのような栄養成分および栄養補助食品における化合物群の組合せに関する。
【背景技術】
【0002】
栄養不良はエネルギー、タンパク質、および他の栄養素の欠乏、過剰または不均衡が組織/身体形成(体型、体格および身体組成)、機能および臨床転帰に対する重大な有害作用を引き起こす栄養状態である(Stratton RJ et al. 2003. Disease-related malnutrition: an evidence based approach to treatment. Wallingford: CABI Publishing)。世界中で人口の高齢化とともに、疾患関連栄養不良の現象が増加しており、公衆衛生上の懸念が高まっている。欧州単独では、約3300万人の患者が疾患または加齢に関連する栄養不良を有している(Ljungqvist O et al. 2010. The European fight against malnutrition. Clin. Nutr 29:149-150)。栄養不良は全ての年齢層に影響を与えるが、高齢者は特にリスクがある:栄養不良のリスクは65歳未満の人々よりも、65歳以上の人々で40%大きい。入院患者は特にリスクがあると判定されている:入院患者の4人に1人は栄養不良のリスクがあるか、既に栄養不良を有しており、そして長期介護施設入居者の最大90%にリスクがある。栄養不良はまた、多様な患者群にわたって一般的であり、特に癌またはAIDS患者に蔓延している。栄養不良は主に食品ならびに栄養摂取および/または取り込みの不足により引き起こされ;疾患および処置の影響はさらに、栄養不良の発症に貢献し得る。入院患者はしばしば、一日に必要なエネルギー、タンパク質および微量栄養素を満たすことができない。これを通じて、合併症率、罹患率、死亡率、再入院率および入院期間が増大する。疾患関連栄養不良は、罹患率および死亡率上昇の一因となる肉体的および心理社会的レベルに対して深刻な結果となる可能性を伴い、体内の全組織系に悪影響を与える(Elia M and Russell C. 2009. Combating malnutrition: recommendations for action. Report from the Group on malnutrition. Led by British Association of Parenteral and Enteral Nutrition, BAPEN, Redditch)。明らかに、栄養不良症例の増加は社会に高価な処置費用および関連する費用をもたらす。栄養不良に関する問題が明らかであり、栄養不良に関する直接的および間接的費用が相当であるにも関わらず、それはしばしば看過され、察知されず、そして未処置のままである。従って、栄養不良をモニタリングすること、および栄養不良およびしばしば生じる深刻な影響を検出および処置するための方法および手段に対する一定の需要が存在する。
【0003】
栄養不良は免疫系、胃腸および心肺機能を含む全ての臓器系の機能および回復に影響を与えるが、第一におよび大部分は、筋肉量および筋機能を損なう。臓器重量を含む脂肪および筋肉量の減少による体重減少はしばしば、栄養不良の最も明確な兆候である。筋肉量の変化が起こる前に筋機能が減少し、変化した栄養摂取が筋肉量への影響と独立して重大な影響を有することを示唆する。同様に、栄養サポートによる筋機能における改善は、筋肉量のみの置換により説明され得るよりも迅速に生じる(Stratton RJ et al. 2003. Disease-related malnutrition: an evidence based approach to treatment. Wallingford: CABI Publishing; Green CJ 1999. Existence, causes and consequences of disease-related malnutrition in the hospital and the community, and clinical and financial benefits of nutrition intervention. Clin Nutr 18:3-28)。エネルギー依存細胞膜ポンプの下方制御、または適応減少(reductive adaptation)はこれらの所見の一つの説明である。これは既にほんの短期の飢餓に続いて起こり得る。しかし、食事摂取がさらに長期にわたって必要量を満たすのに不十分であるならば、身体は組織におけるそれ自体の機能的貯蔵を引き出し、アミノ酸を供給するために骨格筋組織を破壊し始め、そして十分なエネルギーを得るためにグルカゴン貯蔵および脂肪組織を破壊し始める。減少した筋肉量はしばしば、身体活動の減少をもたらし、さらに栄養不良の筋肉量および筋機能への有害な影響を増大させる。心筋量の減少もまた、栄養不良個体において観察され、減少した心拍出量と、腎かん流および糸球体ろ過率の減少による腎機能への対応する影響をもたらす。さらに、呼吸器系および横隔膜筋機能障害は咳嗽圧を低下させ、分泌物を肺から排出することにおいて困難をもたらし、呼吸器感染症からの回復を遅らせる。
【0004】
適切な栄養はまた、胃腸機能を保存するために重要である:慢性栄養不良は膵臓および膀胱外分泌機能、腸管血流、絨毛構造ならびに腸透過性における変化をもたらす。結腸は水および電解質を再吸収する機能を失い、小腸および大腸においてイオンおよび液体の分泌が起こる。これは下痢をもたらすことがあり、これは既に衰弱した、栄養不良の患者におけるさらに高い罹患率に関連している。
【0005】
十分な栄養の不足はさらに、栄養不良の外科患者における創傷治癒を遅らせ、かつ免疫系に悪影響を与え、それにより、細胞媒介免疫およびサイトカイン、補体ならびに食細胞機能の障害による感染リスクが増大することが記載されている。これらの身体的な結果に加えて、栄養不良はまた、無気力症、鬱病、不安神経症およびセルフネグレクトのような心理社会的影響をもたらし、さらに疾患の進行を悪化させる。
【0006】
公知技術の栄養組成物の欠点の一つは、そのような栄養補助食品、またはそのような機能性食品の多くは、それ自体は良好な健康に貢献し得るが、栄養不良を回復させることに関する短期的および長期的効果が未知である化合物から構成されるということである。支持的な科学的データは一般的に不足している(または公表されていない)。さらに、公知技術の組成物中の成分は、政府の承認の観点から、全く制限なしに、かつ主張される肯定的効果を裏付ける科学的データの必要性なしに、販売のために組合せ、提供され得る一般的に利用できる食料品である。栄養不良への効果が健全な科学的データにより支持され、何が「健康的」と考えることができるかまたはできないかについての一般的な考えのみに基づかない、栄養不良の処置に有効な栄養組成物の強い需要が存在する。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的の一つは、栄養不良を処置するために使用され得て、体重増加をもたらし、および/または筋萎縮の壊滅的な影響を回復させる新しい栄養組成物を提供することであり、ここで、このような組成物は科学的に健全な実験において試験され、それらの効果についての結論は重要な科学的データに基づく。
【0008】
本発明の第一の態様は、70〜200mg/mlの乳タンパク質、30〜45ng/mlのビタミンDまたはその誘導体;および0.2〜0.8mg/mlのウルソール酸を含む栄養組成物であって、ここで前記乳タンパク質のカゼイン:ホエー比は20:80〜80:20の範囲であり、総アミノ酸含量の30〜45%はロイシン、イソロイシン、およびバリンの混合物である、栄養組成物を提供する。好ましい実施態様において、カゼイン:ホエー比は約60:40であり、および/または本発明の組成物はカゼインおよびホエー以外の他のタンパク質を実質的に含まず、および/または乳タンパク質の濃度は約100mg/ml、および/またはウルソール酸の濃度は約0.35mg/mlであり、および/またはビタミンDまたはその誘導体の濃度は37.5ng/mlである。
【0009】
本発明はまた、本明細書に開示される表IIに列挙される各濃度の構成成分を含み、0.2〜0.8mg/mlのウルソール酸をさらに含む、液体または半液体の栄養組成物に関する。
【0010】
本発明はまた、乳タンパク質、ビタミンDまたはその誘導体、ウルソール酸および、場合により、遊離ロイシン、遊離イソロイシンおよび遊離バリンを含むアミノ酸プレミックスを、適切な担体(例えば水または別の適当な液体および半液体)と組み合わせたとき、液体または半液体の本発明の栄養組成物を生じる適切な量で全てを含む粉末製剤に関する。さらに別の実施態様において、本発明は、遊離ロイシン、遊離イソロイシンおよび遊離バリンを含むアミノ酸プレミックス;ビタミンDまたはその誘導体;およびウルソール酸を牛乳、クワルク、バター、ヨーグルトなどの乳タンパク質含有製品と組み合わせたとき、液体または半液体の本発明の栄養組成物を生じる適切な量で全てを含む粉末製剤に関する。
【0011】
本発明はまた、本発明の液体または半液体栄養組成物、または本発明の乾燥粉末製剤の、栄養不良、体重減少および/または筋萎縮を有する患者の処置における使用にも関する。本明細書において説明されるように、この場合における栄養不良は、好ましくは低栄養をいう。本発明はまた、栄養不良、体重減少および/または筋萎縮の処置のための医薬の製造における、本発明の粉末製剤に関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明のこれらおよび他の態様は、本明細書に以降記載される実施態様から明らかであり、また実施態様を参照することにより明らかになる。図面において、請求される対象の効果はさらに具体化される。
【0013】
図1】実施例1の絶食−再給餌実験の試験デザインの図式概要を示す。この試験において、動物に、栄養不良の状態を誘導するために一定期間食餌を制限(通常一日摂取の60%)して提供し、その間に動物は体重が約25%減少した(飢餓期)。続く再給餌期において、制限された食餌は通常のマウス餌(「chow」)、または同量の既存の医学的栄養製品Nutridrink Compact Protein(Nutridrink CP,Nutricia,the Netherlands)、またはVital01と称される本発明の新規組成物のいずれかにより、通常(100%)摂取量まで補われた。通常の100%のchowの食餌が維持された非飢餓状態の動物を、本試験の対照群とした。再給餌期の開始から、全体重と除脂肪体重の測定を毎日、全群について実施した。試験の終了(e.o.s.)は、いずれかの再給餌群の動物が正常体重、すなわち非飢餓状態の対照動物の平均体重に達した最初の日として定義した。関連する時点(試験の開始時、飢餓期終了時および試験終了時)でベースラインまたは基準サンプルを収集した。各群の動物数、実験時系列図および提供された再給餌組成物とともに、実験における種々の群を示す。下部パネル中の「x」は、その特定の試験日にどの行動がとられたかを示す。t=0は、細矢印により示されるように、群3〜6がそれらの一日エネルギー摂取を通常摂取(通常食料摂取は飢餓の前二週間で決定した)の60%まで制限された絶食期間の初日である。この期間は二週間継続し、13日目(t=13)を包含した。14日目(t=14)に、群4〜6に再給餌を開始した。質量、体重および筋肉特性のベースライン値を得るために、群1の対照動物を1日目(t=1)に屠殺した。群2の対照動物は試験全体の間通常の、100%の食事を維持し続け、体重および筋肉特性の基準値を得るために、試験終了時(t=e.o.s.)に屠殺した。体重および筋肉特性に対する飢餓の影響を試験するために、群3の動物を飢餓期間の終了時である14日目に屠殺した。
【0014】
図2】正常な、一日100kcal%摂取を受けている対照群2における非飢餓状態の動物と比較した、60kcal%の食事を二週間維持した群3〜6における全ての動物について平均化したマウスの全体重の減少を示す。13日目に、全ての飢餓群において、マウスはそれらの全体重の約25%を失った。この体重減少が有意(P値<0.05)であることもまた、示している。
【0015】
図3】通常量の標準マウス餌(Ssniff R/M diet,100% chow対照)、およびVital01と称される本発明の新規組成物を用いた再給餌後の、全体重(グラム)に対する影響を示す。比較するために、市販および規定のNutridrink CP製剤が一動物群に与えられた。驚くべきことに、かつ治験医師の初期の予想を上回り、Vital01を摂取した動物は予想よりも極めて速く体重が増加した。Vital01群における動物の半分は5日間の再給餌後に正常な、完全な体重に達した(平均で体重減少の96%を取り戻した)が、chowについての対照群は、5日間の再給餌以内に平均で体重減少の47%取り戻したのみであり、一方Nutridrink CPは、5日間の再給餌以内に平均で体重減少の漸く65%を取り戻したのみであった。分析のウィンドウを最大化するために、従って、再給餌の6日後(図1に記載されたもとの研究デザインにおけるt=20に相当する)に動物を屠殺し始めることを決定した。
【0016】
図4】通常の100% chow(対照)、および組成物Nutridrink CPおよびVital01を用いた再給餌後の、除脂肪体重(グラム)に対する影響を示す。再び、Vital01組成物再給餌は、Nutridrink CP および100% chow対照と比較してより速い除脂肪体重の増加をもたらした。
【0017】
図5】再給餌および屠殺後の大腿四頭筋の質量(グラム)を示す棒図表である。棒は(左から右へ)、chowベースライン、筋萎縮群、対照100% chow再給餌群、Nutridrink CP群およびVital01群を表す。全ての再給餌群において観察された質量の増加は、筋萎縮群に関して有意であったが、Vital01群についてのみ、観察された大腿四頭筋の増加がchow 100%対照群と比較して有意であった。
【0018】
図6】屠殺後および再給餌後の腓腹筋の質量(グラム)を示す棒図表である。棒は(左から右へ)、chowベースライン、筋萎縮群、対照100% chow再給餌群、Nutridrink CP群およびVital01群を表す。全ての再給餌群において観察された質量の増加は、筋萎縮群に関して有意であったが、Vital01群において観察された腓腹筋量の増加は、対照100% chow再給餌群およびNutridrink CP群と比較して有意であった。
【0019】
図7】屠殺後および再給餌後のヒラメ筋の質量(グラム)を示す棒図表である。棒は(左から右へ)、chowベースライン、筋萎縮群、対照100% chow再給餌群、Nutridrink CP群およびVital01群を表す。種々の再給餌群の間で、この特定の筋肉量における有意差は観察されなかった。全ての再給餌群において、筋肉量は再給餌後に正常レベルまで戻った。
【0020】
図8】屠殺後および再給餌後の脛骨筋の質量(グラム)を示す棒図表である。棒は(左から右へ)、chowベースライン、筋萎縮群、対照100% chow再給餌群、Nutridrink CP群およびVital01群を表す。100% chow対照群に対するNutridrink CPおよびVital01における質量の増加を測定したが、種々の再給餌群の間で、この特定の筋肉量における有意差は観察されなかった。
【0021】
図9】屠殺後および再給餌後の肝臓の質量(グラム)を示す棒図表である。棒は(左から右へ)、chowベースライン、筋萎縮群、対照100% chow再給餌群、Nutridrink CP群およびVital01群を表す。全ての再給餌群において、肝臓は飢餓により大きく質量が減少し、再給餌により質量を取り戻し、屠殺直前にはほぼ正常レベルに達した。種々の再給餌群の間で、肝臓質量における差異は観察されなかった。
【0022】
図10】ノンパラメトリックKruskall−Wallis検定と続くMann−Whitney検定を用いた、SPSSにおける体重および筋肉重量の群間の差異の統計的計算を示す。0日(再給餌プロトコル開始)から6日(屠殺)までにおける群間の体重比較(n=10)のためのP値が提供される。小さなP値(<0.05)は測定された体重差が無作為サンプリングによるものである可能性が低いことを意味することは注意すべきである。
【0023】
図11】全群における筋肉量の測定に使用された統計的計算を示す。Vital01で処置した動物における筋肉量の増加は、比較対照Nutridrink CPよりも有意に良好である(表中、星で示す)ことを強調するのは重要である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
実施態様の詳細な説明
良好な栄養は治療の不可欠な一部である。良好な栄養療法は栄養リスクのある患者を特定するための栄養スクリーニング、および患者が適切な栄養を適切な時期に受けることを確保するためのケアプランニングを包含する。栄養的介入は食欲を上昇させる、栄養価の高い食品を提供することから、人々が食べたり飲んだりすることを助け、目的に合わせた人工栄養補助を提供することまで、多くの形態をとっている。
【0025】
本明細書で使用される「栄養不良」は、エネルギー、タンパク質および他の栄養素の欠乏、過剰または不均衡が組織/身体形態(体型、体格および体組成)、機能および臨床転帰に対して重大な悪影響を引き起こす栄養状態として定義される。この定義は一般的に過剰栄養(過体重/肥満)および栄養不足の双方に関するが、本発明の方法および手段は主に、そして最も好ましくは、栄養不足の処置に適用される。言い換えれば、本明細書で使用される栄養不良は、栄養不足を指す。栄養不良はさらに、栄養リスクのさらなる概念を包含し、これらの用語がしばしば互換的に使用される一般的な慣習を反映する。
【0026】
「医学的栄養」は、経口栄養補助食品、経腸チューブ栄養および経静脈栄養を含む、(商業的に)入手可能な栄養補助のための製品を表すために使用される用語である。医学的栄養は、一般的には通常の食事により満たされない患者の栄養必要量を満たす。それは患者の免疫学的状態、生化学的状態、代謝的状態に影響を与え、それにより重要な臨床的利益を提供する。好ましくは、ONSは十分に確立された安全性記録を有する食品に基づいた成分を使用し、欧州FSMPガイドライン(特定医療目的の食品)に従う。
【0027】
本明細書で使用される「経腸栄養」は、一般的に、個人のカロリーおよび栄養必要量の一部または全てを送達するために胃腸管を使用するあらゆる摂取方法を指す。それは通常の経口の食事、経口栄養補助食品の使用、または経鼻、経鼻胃、経鼻十二指腸、経鼻空腸、直腸のような種々の方法によるチューブ摂取または経皮チューブを介した一日必要量の一部または全部の送達を含む。
【0028】
「栄養評価」は、一般的には栄養の専門知識を有する個人/臨床家(例えば、栄養士、栄養学者、栄養看護専門家)による、または栄養サポートチームによる患者の健康状態の詳細な、より具体的かつ深い評価を指す。これは通常、スクリーニング過程により栄養的問題が特定された場合に、または適切な活動方針について不確実性があるときに行われる。評価プロセスは、より具体的な栄養ケアプランを個々の患者のために展開できるようにする。好ましくは、本発明によれば、栄養評価は特定の処置が要求され得る筋萎縮についての患者の状態またはリスクの評価を含む。栄養不良の指標は、例えば、低体格指数(BMI)、意図しない体重減少、食欲低下および平均または通常の必要量を満たすには不十分であると思われる食餌摂取である。衰えた筋力および/または筋萎縮もまた、栄養不良または栄養介入の指標でもある。
【0029】
栄養不良に気づいたとき、一般的に栄養スクリーニング、ケアプランニング、栄養介入(食品、ONS、チューブおよび/または経腸摂取)および患者の栄養必要量を評価し、満たし、定期的に見直すことを確保するためにデザインされたフォローアップを含む範囲の活動を含むケアプログラムがこれに続く。重度の栄養不良(重度の栄養不足)は、一般的に、臨床的に明らかである。それにもかかわらず、より軽度の栄養不良ならびに筋萎縮および他の栄養不良に関連する疾患および障害のような、栄養不良の結果として起こる事象を確認することについて、不確実性が存在し得る。高い感度および特異性で栄養不良を特定するための広く許容された基準が存在しない中で、栄養リスクの概念が引き起こされる。リスクは栄養不良および/または筋萎縮が存在するか、発症する可能性があるという見込みの評価基準である。それは悪化した栄養状態の結果として不良転帰のリスクを反映する。体重減少および筋萎縮のような栄養不良および栄養不良に関連する障害の患者は、一般的に、処置を必要とする栄養不良(および/または筋萎縮)のヒト対象と称される。栄養スクリーニングは栄養的問題に苦しむリスクのある患者を検出するために看護スタッフ、医療スタッフおよび他のスタッフにより利用される、迅速で、単純かつ一般的な方法であり、その結果、好ましくは本発明の組成物を投与することにより、または別の態様において、本明細書に開示の処置方法を提供することにより、行動をとり得る。スクリーニングは一般的に、間隔を置いて繰り返されるべきである。
【0030】
「栄養補助」は一般的に、食品、ONS(例えば本発明のもの)、チューブ摂取および経腸栄養を含む補助を指す。
本明細書で使用される「経口栄養補助食品」(ONS)は、好ましくは経口栄養摂取を向上させる目的で主要栄養素および微量栄養素を提供し、そして栄養不良(栄養不足)から引き起こされた障害の処置を追加する、(溶解して(半)液体を形成し得る)多栄養液体、半固体、半液体または粉末の製品である。好ましくは、NOSは栄養的に完全であり、好ましくは唯一の栄養源としてもまた、使用され得る。ONSは錠剤の形態でビタミン、ミネラルおよび/または微量元素を提供する栄養補助食品(フード・サプリメントとしても知られている)とは異なる。本発明のような組成物を製造するときは、医療管理下で処置されている個人の疾患、障害または医療状態の食事管理のために特に製剤され、処理され、かつ目的とされる食品の組成物およびラベル表示ついての規則を提示している1999年3月25日の特別医療目的の食品に関する委員会指令1999/21/EC(指令2006/141/ECにより改正)で説明されている欧州FSMPガイドラインを考慮しなければならない。これらの食品は、通常の食品により栄養必要量を満たすことができない人々の、全部または一部の給餌を目的としている。もちろん、本発明の栄養組成物は特定のおよび一般的に入手可能な栄養補助食品およびフード・サプリメント中に存在する(または存在し得る)化合物および物質を含み得る。言い換えれば、栄養補助食品またはフード・サプリメントの成分(例えばビタミン)としてしばしば投与される化合物の存在は、本発明の栄養補助食品またはフード・サプリメントの栄養組成物を構成しない。
【0031】
定義「半液体」は、流れるが、シロップのようにゆっくりと流れるか、クワルクもしくは(軟)バター、または堅いミルクセーキのような柔らかい質感を有するかもしれない物質を指すと解されるべきである。いずれにしても、本発明による液体または半液体の栄養組成物は経腸経路で、好ましくは経口で、かつ適切な形態で、恐らく患者の要望により、患者が好む形態で投与され得る。
【0032】
ONSを提供することは、入院患者、高齢者および栄養不足の人々における栄養不良の管理についての効果的な戦略であると一般的に考えられている。それは栄養摂取を改善し、体重減少を回復または抑制し、日常生活の機能または活動を改善することが示されている。それにもかかわらず、患者が助言または処置プランにどれだけ従っているかを示すのに使用される用語、遵守(「コンプライアンス」とも称される)不良に苦しんでいることも発見されている。このような遵守不良の理由は多様である。例えば、多くの医療栄養製剤は単に無味であるか、多くの人々に「不快である」と考えられる味を有する。コンプライアンス不良を増加させる別の側面は、現在利用できる医療栄養製剤の提供を受けた後に個人が体験する遅い胃排出および高レベルの満腹感である。身体障害による食品および栄養摂取不足は栄養不良の原因の中心であり、例えば、癌患者は処置による味覚変化、吐き気および食欲不振を有することがあり;発作または他の神経学的疾患を伴う患者は嚥下が困難であるか、自己摂食に関して問題を抱えていることがある。他の原因は混乱、落ち込みおよび不安障害、咀嚼および嚥下の問題、疼痛、嘔吐、急速な満腹感、覚醒不足、口渇、便秘、貧困、セルフネグレクト、認知症、剥奪および食品選択肢の乏しさである。栄養不良の重要な肉体的および心理社会学的な結果は、免疫応答障害、筋力低下および疲労、不活動、体温調節障害、創傷治癒不良、電解質および分泌液の調節能力障害ならびに心理社会学的機能障害である。重度の不活動および筋力低下は、ベッドから出ることができない患者にしばしば見られる。長期にわたる寝たきりのよく知られている結果は、一般的に「筋萎縮」と称される筋肉の衰えである、筋肉の減少である。飢餓(重度の栄養不良)および筋肉の不使用は、結果的に、常に筋萎縮をもたらす。従って、患者は適切な栄養摂取をするかもしれない、またはしないかもしれないが、患者が寝たきりの状態で十分な運動ができないという事実は筋萎縮をもたらし得るか、確実に筋萎縮の発生率を増加させる。本発明は栄養不良、および/または筋肉の長期間の不使用による、例えばベッドに寝たままである必要があり、十分に筋肉が使用できない患者の場合における筋萎縮を軽減する、ならびに/または予防するための方法および手段を提供する。本発明の栄養組成物は、主に高ホエー含量により、一般的に当該分野で知られている製品よりも迅速な胃からの遊離を確保するタンパク質組成物を有する。高カゼイン含量は、例えば胃における低いpH状況下で、製品を硬化および沈殿させる。本発明の栄養組成物における比較的高いホエーの量は、胃におけるより少ない沈殿およびより迅速な腸への進入をもたらす。高カゼイン含量および低ホエー含量を有する当該技術分野の栄養補助食品と比較して、この効果は本発明の栄養組成物を摂取した後に、人々が「満腹である」と感じることが少なくなる傾向があるようにする。「満腹である」と感じることが少なくなることは、より良好なコンプライアンスを確保する。
【0033】
筋萎縮は、広く知られており、かつ蔓延している障害である。筋萎縮を軽減する組成物が知られている。例えば、米国特許第2006/0035824号(A1)は、gOBG3の投与により筋細胞の再組織化および分化を加速すること、およびそれにより筋障害を処置することを開示している。
【0034】
特に、当該技術分野で知られているONSと比較したとき、本発明は体重減少および栄養不良に関連する筋萎縮の処置において独特かつ高利益であるように考えられる。これは以下に添付する実施例において詳細に説明される。本発明の組成物における好ましい成分の一つは、化学式C3048を有する「ウルソール酸」であり、これは時々プルノール、マロール、3−3−ヒドロキシ−ウルス−12−エン−28−酸または3−β−3−ヒドロキシ−ウルス−12−エン−28−酸と称される。ウルソール酸は、オレアノール酸のようなその異性体およびグリコシドのような天然に存在するその類縁体および誘導体の全ても含む五環性トリテルペノイド類に属する。それはバジル、クランベリーおよびローズマリーのような多くのハーブ、植物および果物に見られる。特に、リンゴの皮は比較的高い量のウルソール酸を含む。このように、低濃度のウルソール酸はヒトの食事の一般的な成分であると考えることができる。ウルソール酸には、STAT3活性化経路を阻害することによる抗腫瘍効果を含むいくつかの役割があるとされている。それは癌細胞増殖を阻害し、アポトーシスを誘導すると考えられている。ウルソール酸はまた、増殖およびT細胞活性化の減少をもたらすJurkat白血病T細胞のJNK発現およびIL−2活性化を阻害することが発見されている。筋萎縮の処置のためのウルソール酸の使用が示唆されている(Kunkel SD et al. 2011. mRNA expression signatures of human skeletal muscle atrophy identify a natural compound that increases muscle mass. Cell Metab 13(6):627-638)。さらに、国際公開第2012/170546号には筋萎縮を処置するための数千の誘導体を含む少なくとも7つの化合物群の使用が開示されている。ウルソール酸はまた、アルツハイマー病に対して使用されることも開示されている(米国特許第8,021,701号)。
【0035】
本発明の組成物は、20:80〜80:20の間のカゼイン対ホエータンパク質比を有する。Nutridrink CP(実施例に示す)は約93:7のカゼイン対ホエー比を有する。好ましくは、本発明の組成物中の全てのタンパク質は乳タンパク質である。本発明の他の態様において、乳カゼインおよびホエータンパク質は、他の動物源および植物源のタンパク質とともに補給され得る。本明細書で使用される用語「カゼイン」は、カゼイン塩およびミセルカゼインの双方を指す。カゼイン塩はナトリウム−カゼイン塩、カルシウム−カゼイン塩、マグネシウム−カゼイン塩またはカリウム−カゼイン塩であり得る。好ましくは、カゼイン塩はカルシウム−カゼイン塩またはナトリウム−カゼイン塩である。ホエータンパク質は食品タンパク質の上位群である。それは良好なアミノ酸プロファイルを有し、哺乳動物におけるタンパク質合成を(高ロイシン含量により)増加させることが知られている。ホエータンパク質は耐容性が高く、上記のように、増加した胃内容排出を確保する。さらに、ホエータンパク質は免疫増強特性を有する生物活性なタンパク質(ラクトグロブリン、α−ラクトアルブミン、免疫グロブリン、リソザイムおよびラクトフェリン)を有する。
【0036】
本発明は、70〜200mg/mlの乳タンパク質;30〜45ng/mlのビタミンDまたはそれらの誘導体;および0.2〜0.8mg/mlのウルソール酸を含み;ここで前記乳タンパク質中のカゼイン:ホエー比が20:80〜80:20の間であり、かつここで総アミノ酸含量の30〜45%がロイシン、イソロイシンおよびバリンの混合物である、液体または半液体栄養組成物に関する。好ましい実施態様において、前記液体または半液体栄養組成物中のカゼイン:ホエー比が約60:40、および/または乳タンパク質濃度が約100mg/ml、および/またはウルソール酸濃度が約0.35mg/mlである。本明細書に開示するように、使用される乳タンパク質の量は約10.56g/100mlであり、これは少量の脂質の割合を含む。これについての好ましい乳タンパク質の量は、100mg/mlに設定される。乳タンパク質の量は、組成物中に70〜200mg/mlの間で、栄養不良、体重減少および/または筋萎縮の処置において良好な結果を与えることができることに留意するべきである。別の好ましい実施態様において、組成物はカゼインおよびホエー以外の他のタンパク質を実質的に含まない。これは本発明の好ましい態様において、カゼインタンパク質+ホエータンパク質がタンパク質量の100%を占めることを意味する。例えば、カゼイン由来の量が60%であるとき、タンパク質含量の残りは、好ましくは全てホエータンパク質由来の40%である。本発明の栄養組成物は好ましくは、ロイシン、イソロイシンおよびバリンから成る群から選択される、遊離分枝鎖アミノ酸混合物である。これらのアミノ酸は天然に存在する僅か3つの分枝鎖タンパク質新生アミノ酸であり、3つ全てはヒトにとって必須アミノ酸である。しかしながら、前記組成物中の総アミノ酸の30〜45%がロイシン、イソロイシンおよびバリンの混合物で構成されている本発明の組成物中に十分な乳タンパク質が存在している場合には、これらのタイプの追加のアミノ酸は必要ない(含まない)。しかしながら、乳タンパク質含量がこれらの必須アミノ酸混合物の30〜45%の範囲に達しないとき、このタイプの遊離アミノ酸が、好ましくはプレミックス中に添加される。表IIに列挙する3つのアミノ酸の量が好ましい。イソロイシンの最小の好ましい濃度は7%であり、バリンの最小の好ましい濃度は7%であり、そしてロイシンの最小濃度は16%であり、これは組成物中の総アミノ酸含量(=30%)の全てである。45%を生じる好ましい範囲は、イソロイシン10%、バリン10%およびロイシン25%である。従って、好ましい態様において、本発明はバリンおよびイソロイシンを双方とも総アミノ酸含量の7〜10%の濃度で、およびロイシンを総アミノ酸含量の25%の濃度で含み、ここでバリン、イソロイシンおよびロイシンは遊離および結合した形態である、本発明の液体または半液体栄養組成物に関する。最も好ましくはイソロイシンおよびバリンは双方とも、総アミノ酸含量の8%の濃度で存在し、ここでイソロイシンはそのとき、総アミノ酸含量の20%の濃度で存在する。さらに別の好ましい実施態様において、本発明の液体または半液体栄養組成物はまた、ビタミンDを、好ましくは約37.5ng/mlの濃度で含む。当該技術分野ではビタミンD2およびビタミンD3の2つのタイプのビタミンDが存在することが知られており、両方とも「ビタミンDの誘導体」として考えられており、このどちら(単独または組合せ)も本発明の栄養組成物の一部であり得る。好ましくはビタミンD3が使用される。
【0037】
輸送、取り扱いおよび保存のために、投与直前に適切な溶媒(水または任意の他の適切な担体)に溶解、分散、または他の方法で混合できる粉末形態の栄養組成物混合物とすることが極めて好ましい。好ましい実施態様において、本発明は、適切な溶媒に溶解するとき、経腸、好ましくは経口投与に適切な液体または半液体組成物を形成する粉末に関し、ここで該粉末中の成分量は正確な量の成分が生じ、好ましくは一日量の1/6が生じるような量である。従って、本発明はまた、適切な担体と組み合わせるとき、乳タンパク質、ビタミンDまたはその誘導体、ウルソール酸;および場合により、遊離ロイシン、遊離イソロイシンおよび遊離バリンを含むアミノ酸プレミックスを全て、本発明の液体または半液体栄養組成物を得るための適切な量で含む、粉末製剤に関する。さらに別の態様において、本発明は、牛乳、バター牛乳、またはヨーグルトのような乳タンパク質含有製品と混合するとき、遊離ロイシン、遊離イソロイシンおよび遊離バリンを含むアミノ酸プレミックス、ビタミンDまたはその誘導体;ならびにウルソール酸を全て、本発明の液体または半液体栄養組成物を得るための適切な量で含む、粉末製剤に関する。これは、味の理由または生じる液体または半液体組成物が容易に投与または嚥下され得るというような他の理由のためであり得る。当業者は、必要とする個人または患者に対する適切な投与のために、本明細書に開示される液体または半液体栄養組成物を得るための粉末製剤中の正確な量を計算することについては全く問題としない。明らかに、牛乳、バターミルク、またはヨーグルト(または患者が好む任意の他の適切な牛乳由来の乳製品)のような乳製品が溶解または本発明の粉末製剤との混合に使用されるとき、その中の乳タンパク質の量、濃度および/または割合は容易に計算でき、適切な量の本明細書に開示される他の成分を添加し、本発明の液体または半液体栄養組成物を得ることができる。本発明の粉末製剤は「実質的に乾燥」しており、これは微量の液体(空気またはその他に由来する)が存在していることがあるが、該粉末は自由流動性であり、原則として取り扱い、輸送および/または(長期)保存に適切であることを意味する。
【0038】
本発明のさらに別の態様において、本発明の液体または半液体組成物は100mlの量であり、好ましくは本発明の粉末の一回の分散により適切な溶媒に化合物を溶解、分散または吸収させ、最終的に本発明の栄養組成物を得る。100mlの量は経口投与に適切であり、一般的に一日用量の1/6として適切である。好ましくは、本発明の粉末を溶解する液体は水である。さらに別の好ましい態様において、本発明の粉末は、溶媒に該粉末を溶解するために容易に使用できる小包となる。従って、一日用量について、6つの粉末包が提供され、それらはそれぞれ別々に溶解してよく、または代替として、一日用量の全量を含む粉末が提供され、溶解後に、一日かけて消費され得る。本発明の組成物を消費する対象の希望および能力によって、これにおける種々の組合せが提供され得ると理解される。その場合において、必要とされる乳タンパク質は粉末を溶解する溶媒に由来するため、本発明の粉末は乳タンパク質を含んでも含まなくてもよい。いずれにしても、その結果は本発明の液体または半液体栄養組成物である。結論として、本発明の粉末が乳タンパク質非含有溶媒であるとき、該粉末は本明細書に開示の量で乳タンパク質を含む。本発明の粉末を既に乳タンパク質を含む溶媒に溶解する場合、該粉末は乳タンパク質を含んでいなくてもよく、結果物が本発明の液体または半液体栄養組成物であり、そして本明細書で使用されるおよび開示される適切な量で乳タンパク質を含んでよい。当業者はカゼインおよびホエーのような乳タンパク質の量を決定することができ、それらの比を決定することができ、かつそれに基づいて、本発明の液体または半液体栄養組成物が要求されるとき、正確な量の乳タンパク質を得るために添加する乳タンパク質の量を決定できる。必須アミノ酸であるロイシン、イソロイシンおよびバリンの濃度についても同様であり、これらは乳タンパク質に(全て)存在し得るが、本発明の組成物の濃度に達するために遊離アミノ酸として添加されることもある。
【0039】
別の好ましい実施態様において、本発明は表IIに記載したそれぞれの濃度で成分を含み、0.2〜0.8mg/mlのウルソール酸をさらに含む液体または半液体栄養組成物に関する。一般的にその量の成分は溶解され、経腸投与のための液体または半液体を形成する。好ましくは、上に示されたものと一致して、適切な量のウルソール酸とともに表IIの量の成分が溶解され、栄養不良、体重減少および/または筋萎縮を処置するための一日分の約1/6である約100mlの経腸投与のための液体または半液体を形成する。保存、取り扱いおよび輸送目的のためには、本発明の栄養組成物が実質的に粉末製剤のような乾燥状態で保存される組成物が好ましい。本明細書で使用される「実質的に」とは、容易に取り扱うことができ、自由流動性であり、一般的に保存される容器に張り付かない粉末を指す。当業者は、ある成分のそのような粉末の製造方法を知っている。
【0040】
経腸経路による投与のために、種々のタイプの液体または半液体が使用され得る。本発明の栄養組成物は、粉末形態で使用できるとき、飲むことによりまたは例えば経管栄養法により容易に投与できる物質を得るために水、茶、フルーツもしくは野菜ジュース、適切な緩衝液、ゲル、プリンまたはヨーグルトのような担体に好ましくは溶解され、分散され、または混合される。明らかに、例えばヨーグルトまたは他の乳製品に粉末が分散されているとき、追加のタンパク質は投与される物質の一部となる(上記を参照)。特に、適切な担体は個人の嗜好に基づいて使用者または消費者により選択されてよく、表IIに記載されていない固有量のタンパク質、ビタミンまたは他の成分を含んでよい。従って、別の実施態様において、本発明はまた、本発明の粉末が溶解された経口送達のための液体または半液体組成物に関する。本発明の粉末製剤の溶解は、できる限り悪くならないまたは腐敗しないように、消費前のいずれかのとき、例えば組成物をボトルまたはチューブのような容器に提供する直前または前に実施され得る。
【0041】
さらに別の態様において、本発明は、栄養不良、体重減少および/または筋萎縮を有する患者の処置における使用のための、本発明の液体もしくは半液体栄養組成物、または本発明の乾燥粉末製剤に関する。本発明はまた、栄養不良、体重減少および/または筋萎縮の処置のための医薬の製造における本発明の粉末製剤に関する。
【0042】
特に、栄養不良(栄養不足)、体重減少および筋萎縮は、筋肉が萎縮を患うために体重減少が起こるという意味では関連することもあるが、関連しないこともある。体重減少は栄養不良と独立して起こり得るが、栄養不良よりもむしろ別の障害の結果である筋萎縮によることがある。また、体重減少は全く筋肉の減少または筋萎縮が原因ではないことがある。そして、筋萎縮は栄養不良の結果であり得て、筋肉の不使用の結果でもあり得て、直接的には栄養不良の結果ではないが、例えば長期的な不動状態によるものであり得る。別の実施態様において、筋萎縮または体重減少は栄養不良と無関係であり得て、むしろ癌またはAIDSなどの別の障害/疾患の結果であり得る。従って、本発明の栄養組成物は筋萎縮などの栄養不良に関する障害の処置のために投与され得るが、栄養不良により直接的に引き起こされない筋萎縮の処置にもまた使用され得る。どちらの場合にも、本発明の栄養組成物の投与は筋重量の増加をもたらし、そしてそれ故に体重増加をもたらし、筋萎縮を回復させる。しかし、最も好ましくは、本発明の栄養組成物は栄養不良および栄養不良に関する障害の処置に使用される。
【0043】
さらに別の実施態様において、本発明は栄養不良、体重減少および/または筋萎縮の処置に使用するためのウルソール酸に関する。また別の実施態様において、本発明は栄養不良、体重減少および/または筋萎縮の処置のための医薬の製造におけるウルソール酸の使用に関する。
【0044】
本発明はまた、栄養不良、体重減少および/または筋萎縮を有する哺乳動物対象の処置のための方法であって、本発明の液体または半液体栄養組成物を前記哺乳動物対象に投与する過程;前記哺乳動物対象の栄養不良率、および/または前記哺乳動物対象の体重、および/または前記哺乳動物対象における筋萎縮率をモニタリングする過程;および場合により投与されるウルソール酸および/または本発明の組成物の量を調整する過程を含む、方法に関する。体重増加または栄養不良および/もしくは筋萎縮の回復が十分でなければ、投与を受ける哺乳動物対象の評価によって、投与されるウルソール酸または本発明の組成物は、好ましくは初めに投与した量よりも多い量に変更され得る。本発明の全ての態様において、本明細書に記載の哺乳動物対象は、好ましくはヒト対象である。本発明の発明者により、成分の量は表IIに例示するように、好ましくは1日あたり6回、哺乳動物対象に対して投与されるべきであると計算され、これがそれ故に好ましいレジメンである。しかし、処置される対象、体重減少、栄養不良および/もしくは筋萎縮の重症度、または担体の性質によって、投与量および間隔が増大または減少し得る。
【0045】
ある実施態様によって、本発明の栄養組成物はさらに、組成物100Kcalあたり約6〜約20グラム、例えば約7〜約18.5、約8〜約16、約9〜約14.5、約10〜約13、例えば組成物100Kcalあたり約11グラムの量で炭水化物を含む。本発明の組成物が液体または半液体組成物である場合、それは約150〜約480mg/ml、例えば約160〜約440mg/ml、約170〜約400mg/ml、約180〜約360mg/ml、約190〜約320mg/ml、約200〜約280mg/ml、および好ましくは約210〜約270mg/mlの量で炭水化物を含み得る。組成物に使用される適切な炭水化物はモノサッカライド、ジサッカライド、ポリサッカライドおよびオリゴサッカライドである。ある実施態様において、炭水化物はマルトデキストリンおよび糖類から選択され、適切な糖類はグルコース、フルクトース、スクロース、マルトデキストリンである。
【0046】
ある実施態様によって、本発明の組成物はさらに、組成物100Kcalあたり約1.5〜約5.5グラム、例えば約2.5〜約5.0、組成物100Kcalあたり約3.5〜約4.5、例えば約4.0グラムの量で1以上の脂質を含む。本発明の組成物が液体または半液体組成物である場合、それは約40〜約140mg/ml、例えば約52〜約132mg/ml、約64〜約124mg/ml、約76〜約116mg/ml、例えば約88〜約108mg/ml、例えば約96mg/mlの量で1以上の脂質を含み得る。適切な脂質は一不飽和、多不飽和および飽和脂質である。ある実施態様において、1以上の脂質は乳脂肪および植物油から成る群から選択される。
【0047】
ある実施態様によって、本発明の栄養組成物はさらに、分枝鎖アミノ酸、ロイシン、イソロイシンおよびバリンを含み、ロイシンについては組成物が液体または半液体組成物ならば、組成物100Kcalあたり約0.5〜約3.0グラム、または約12〜約72mg/ml;イソロイシンについては組成物が液体または半液体組成物ならば、組成物100Kcalあたり約0.2〜約2.0グラムまたは約4.8〜約48mg/ml;およびバリンについては組成物が液体または半液体組成物ならば、組成物100Kcalあたり約0.2〜約2.0グラムまたは約4.8〜約48mg/mlの量で含む。好ましい実施態様において、ロイシンの量は組成物100Kcalあたり約0.75〜約2.0グラム、好ましくは約1.0グラム、または、組成物が液体または半液体ならば、約18〜約48mg/ml、好ましくは約24.7mg/mlである。好ましい実施態様において、イソロイシンの量は組成物100Kcalあたり約0.3〜約1.0グラム、好ましくは約0.44グラム、または、組成物が液体または半液体ならば、約7.2〜約24mg/ml、好ましくは約10.6mg/mlである。好ましい実施態様において、イソロイシンの量は組成物100Kcalあたり約0.3〜約1.0l、好ましくは約0.45グラム、または、組成物が液体または半液体ならば、約7.2〜約24mg/ml、好ましくは約10.8mg/mlである。
【0048】
ある実施態様によって、本発明の組成物はさらに、カルシウム、塩化物、リン、鉄、ヨウ素、カリウム、銅、マグネシウム、マンガン、ナトリウム、セレン、亜鉛、および/またはそれらの塩を含む。別の実施態様において、該組成物はさらに、クロム、モリブデンおよび/またはそれらの塩を含む。本発明のさらに別の実施態様において、該組成物はフッ化物を含む。本発明の極めて好ましい実施態様において、該組成物は、例えばEUのthe Commission Directive 1999/21/EC of 25 March 1999のように、医療栄養組成物に関する規制に適合する量でこれらの要素を含む。
【0049】
ある実施態様によって、本発明の組成物はさらに、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンA、ビタミンB3、ビタミンD、パントテン酸、ビタミンK1、ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンB2、葉酸、ビオチンおよびビタミンB12を含む。本発明のさらに好ましい実施態様において、該組成物は、例えばEUのthe Commission Directive 1999/21/EC of 25 March 1999のように、医療栄養組成物に関する規制に適合する量でこれらのビタミンを含む。
【0050】
さらなる実施態様において、次のβ−ヒドロキシ β−メチルブチレート(HMB)のようなロイシン代謝物、グルタミン、カルニチン、β−アラニン、カルノシン、クレアチン、生物活性ペプチドおよび、EPAおよびDHAのようなω−3脂肪酸から成る一覧から選択される1以上の成分をさらに添加することもできる。
【0051】
本発明の栄養組成物の種々の成分は、各成分について互いに独立して与えられた範囲内で互いに独立して変化し得る。ある状況において、組合せにおいて複数の成分に対する最適条件を選択することにより、さらに最適な効果を達成できる。
【0052】
上記の実施態様は本発明を限定するのではなく例示すること、および当業者は多くの代替的実施態様を設計することができることに留意すべきである。特許請求の範囲において、動詞「含む」およびその活用形の使用は、請求項に記載された以外の要素および工程の存在を除外するものではない。要素の前の冠詞「ある(a)」または「ある(an)」は、複数のそのような要素の存在を除外するものではない。
【0053】
有利な実施態様は以下の項で設定される。これにより本出願人らは、本願またはそれに由来するさらなる出願のいずれかの審査中、そのような項および/もしくはそのような項の組み合わせならびに/または記載から得られる特徴について新たな請求項を考案できる。
【0054】
1.70〜200mg/mlの乳タンパク質;
30〜60ng/mlのビタミンDまたはその誘導体;および
0.2〜1mg/mlのウルソール酸
を含む液体または半液体栄養組成物であって、乳タンパク質のカゼイン:ホエー比が20:80〜80:20までであり、そして総アミノ酸含量の30〜45%がロイシン、イソロイシンおよびバリンの混合物である、栄養組成物。
【0055】
2.カゼイン:ホエー比が約30:70〜約70:30、例えば約40:60〜約68:32、約45:55〜約65:35例えば約60:40までである、項1に記載の液体または半液体栄養組成物。
【0056】
3.カゼイン:ホエー比が約50:50である、項1または2に記載の液体または半液体栄養組成物
【0057】
4.約1.5〜約3Kcal/ml、例えば約1.8〜約2.7Kcal/mlまたは約2〜約2.5Kcal/mlを含む、項1〜3のいずれかに記載の液体または半液体栄養組成物。
【0058】
5.組成物がカゼインおよびホエー以外の他のタンパク質を実質的に含まない、項1〜4のいずれかに記載の液体または半液体栄養組成物。
【0059】
6.乳タンパク質の濃度が約75〜約180mg/ml、例えば約80〜約160mg/ml、約85〜約140mg/ml、約90〜約130mg/ml、約95〜約125mg/ml、約100〜約120mg/ml、例えば、約100mg/mlである、項1〜5のいずれかに記載の液体または半液体栄養組成物。
【0060】
7.ウルソール酸の濃度が約0.2〜約0.8mg/ml、例えば約0.35mg/mlである、項1〜6のいずれかに記載の液体または半液体栄養組成物。
【0061】
8.ウルソール酸の濃度が約0.25〜約0.95mg/ml、例えば約0.3〜約0.9mg/mlまたは約0.35〜約0.85mg/ml、例えば約0.85mg/mlである、項1〜6のいずれかに記載の液体または半液体栄養組成物。
【0062】
9.総アミノ酸含量の7〜10%の濃度でバリンおよびイソロイシン、および総アミノ酸含量の16〜25%の濃度でロイシンを含み、ここでバリン、イソロイシンおよびロイシンは遊離および結合形態で存在する、項1〜8のいずれかに記載の液体または半液体栄養組成物。
【0063】
10.ビタミンDまたはその誘導体の濃度が約30〜45ng/mlである、項1〜9のいずれかに記載の液体または半液体栄養組成物。
【0064】
11.ビタミンDまたはその誘導体の濃度が約32〜約55ng/ml、約35〜約45ng/ml、例えば約37.5ng/mlである、項1〜9のいずれかに記載の液体または半液体栄養組成物。
【0065】
12.成分を表IIに提供するそれぞれの濃度で含み、0.2〜0.8mg/mlのウルソール酸をさらに含む、液体または半液体栄養組成物。
【0066】
13.適切な担体と組み合わせたとき、項1〜12のいずれかに記載の液体または半液体栄養組成物を提供する適切な量で
乳タンパク質;
ビタミンDまたはその誘導体;
ウルソール酸;および
場合により遊離ロイシン、遊離イソロイシンおよび遊離バリンを含むアミノ酸プレミックス
を含む、粉末製剤。
【0067】
14.適切な担体が水である、項13に記載の粉末製剤。
【0068】
15.担体の適切な量が粉末製剤1グラムあたり約1.5〜約3ml、例えば粉末製剤1グラムあたり約1.7〜約2.8mlである、項13または14に記載の粉末製剤。
【0069】
16.100グラムの粉末が約300〜約700Kcal、例えば約350〜約650Kcal、約400〜約600Kcalまたは約450〜約550Kcalを含む、項13〜15のいずれかに記載の粉末製剤。
【0070】
17.遊離ロイシン、遊離イソロイシンおよび遊離バリンを含むアミノ酸プレミックス;
ビタミンDまたはその誘導体;および
ウルソール酸;
を、牛乳またはヨーグルトのような乳タンパク質含有製品と組み合わせたとき、項1〜12のいずれかに記載の液体または半液体栄養組成物を提供する適切な量で含む、粉末製剤。
【0071】
18.前記乳タンパク質カゼイン:ホエー比が20:80〜80:20であり、総アミノ酸含量の30〜45%がロイシン、イソロイシンおよびバリンの混合物である、100Kcalあたり
約2.5〜約8.5グラムの乳タンパク質;
約1.2〜約3.0μgのビタミンDまたはその誘導体;
約8〜約50mgのウルソール酸
を含む栄養組成物。
【0072】
19.カゼイン:ホエー比が約30:70〜約70:30、例えば約40:60〜約68:32、約45:55〜約65:35、例えば約60:40である、項18に記載の栄養組成物。
【0073】
20.カゼイン:ホエー比が約50:50である、項18または19に記載の栄養組成物。
【0074】
21.組成物がカゼインおよびホエー以外の他のタンパク質を実質的に含まない、項18〜20のいずれかに記載の栄養組成物。
【0075】
22.乳タンパク質の量が組成物100Kcalあたり約3.0〜約7.5グラム、例えば、約3.5〜約6.5グラム、約4.0〜約6.0グラム、または約4.5〜約5.5グラム、例えば約5.0グラムである、項18〜21のいずれかに記載の栄養組成物。
【0076】
23.ウルソール酸の量が組成物100Kcalあたり約15〜約48mg、例えば約20〜約46mg、約25〜約44mg、約30〜約40mgまたは約35mgである、項18〜21のいずれかに記載の栄養組成物。
【0077】
24.総アミノ酸含量の7〜10%の量でバリンおよびイソロイシンを含み、総アミノ酸含量の16〜25%の量でロイシンを含み、ここでバリン、イソロイシンおよびロイシンが遊離または結合形態で存在する、項18〜23のいずれかに記載の栄養組成物。
【0078】
25.ビタミンDまたはその誘導体が組成物100Kcalあたり約1.6〜約2.4μg、例えば約1.65〜約2.2μg、例えば約1.7〜約2.0μg、例えば約1.8μg、項18〜24のいずれかに記載の栄養組成物。
【0079】
26.組成物が粉末である、項18〜25のいずれかに記載の栄養組成物。
【0080】
27.栄養不良、体重減少および/または筋萎縮の患者の処置における使用のための、項1〜12のいずれかに記載の本発明の液体または半液体栄養組成物、項13〜17のいずれかに記載の本発明の粉末製剤または項18〜26のいずれかに記載の本発明の栄養組成物。
【0081】
28.患者がヒトである、項27に記載の組成物または製剤。
【0082】
29.液体または半液体栄養組成物が患者の一日エネルギー摂取の約1/7〜約1/5用量である、項27または28に記載の組成物または製剤。
【0083】
30.液体または半液体栄養組成物が患者の一日エネルギー摂取の約1/6用量である、項29に記載の組成物または製剤。
【0084】
31.液体または半液体栄養組成物が約200〜約500Kcal、例えば約250〜約350Kcal、例えば、約300Kcalの用量である、項27〜30のいずれかに記載の組成物または製剤。
【0085】
32.液体または半液体栄養組成物が約100〜約300ml、例えば約150〜約250ml、例えば約200mlの用量である、項27〜31のいずれかに記載の組成物または製剤。
【0086】
33.哺乳動物対象における栄養不良、体重減少および/または筋萎縮を処置、予防または軽減するための、項1〜12のいずれかに記載の液体または半液体栄養組成物、項13〜17のいずれかに記載の粉末製剤または項18〜26のいずれかに記載の栄養組成物の使用。
【0087】
34.哺乳動物対象がヒトである、項33に記載の使用。
【0088】
35.組成物または製剤が対象の一日エネルギー摂取の約1/7〜約1/5量投与される、項33または34に記載の使用。
【0089】
36.組成物または製剤が対象の一日エネルギー摂取の約1/6量投与される、項35に記載の使用。
【0090】
37.組成物または製剤が約200〜約500Kcal、例えば約250〜約350Kcal、例えば、約300Kcalを含む用量で投与される、項33〜36のいずれかに記載の使用。
【0091】
38.組成物または製剤が栄養組成物として投与され、液体または半液体であり、約100〜約300ml、例えば、約150〜約250ml、例えば、約200mlの用量で投与される、項33〜37のいずれかに記載の使用。
【0092】
39.組成物または製剤が一日あたり少なくとも一回、例えば、一日あたり少なくとも二回、一日あたり少なくとも三回、一日あたり少なくとも四回、一日あたり少なくとも五回または一日あたり少なくとも六回投与される、項33〜38のいずれかに記載の使用。
【0093】
40.項1〜12のいずれかに記載の液体または半液体栄養組成物、項13〜17のいずれかに記載の粉末製剤または項18〜26のいずれかに記載の栄養組成物を対象に投与することを含む、哺乳動物対象における栄養不良、体重減少および/または筋萎縮の処置、予防および/または軽減のための方法。
【0094】
41.哺乳動物対象がヒトである、項40に記載の方法。
【0095】
42.組成物または製剤が対象の一日エネルギー摂取の約1/7〜約1/5量で投与される、項40または41に記載の方法。
【0096】
43.組成物または製剤が対象の一日エネルギー摂取の約1/6量で投与される、項42に記載の方法。
【0097】
44.組成物または製剤が約200〜約500Kcal、例えば約250〜約350Kcal、例えば、約300Kcalを含む用量で投与される、項40〜43のいずれかに記載の使用。
【0098】
45.組成物または製剤が栄養組成物として投与され、液体または半液体であり、約100〜約300ml、例えば、約150〜約250ml、例えば、約200mlの用量で投与される、項40〜44のいずれかに記載の使用。
【0099】
46.組成物または製剤が一日あたり少なくとも1回、例えば、一日あたり少なくとも2回、一日あたり少なくとも3回、一日あたり少なくとも4回、一日あたり少なくとも5回または一日あたり少なくとも6回投与される、項40〜45のいずれかに記載の使用。
【実施例】
【0100】
実施例1.栄養不良およびその後の種々の栄養組成物の摂取後の体重および筋重量。
本試験の目的は、代謝臓器の健康および軽度の炎症という観点から、体重増加および体組成に関する新規栄養組成物の効果を評価するために、栄養体重増加製品についての条件を確立することであった。本試験のデザインを図1に示す。25〜28gの開始体重を有する50匹の成熟雄性C57BL/6マウスを個々に収容した。本実験全体を通して標準的な齧歯類飼料(R/M Sniff(登録商標)標準)が基本飼料として使用され、十分な水が自由に提供された。
【0101】
試験開始前に、全てのマウスを二週間順化させ、その間に標準齧歯類飼料(100% chow)の食餌摂取をマウス毎に個々に決定した。試験開始(ベースライン)における後肢腓腹筋、大腿四頭筋およびヒラメ筋の筋肉量についての基準値を確立するために、試験1日目に群1(n=5)を屠殺した。群2(n=5)は試験終了時点での屠殺まで、全体の試験を通して通常の100% chowの状態を保持し、体重および筋重量を計算し、介入群3〜6の体重および筋重量と比較した。0日目に「飢餓」期とも称されるカロリー制限期を開始し:群3〜6の動物(合計40匹の動物)は、(前の順化期間で個々に決定された100kcal%として設定された)即席の条件で、それらの一般的に消費されるchow飼料の60%を受けた。この給餌レジメンは全てのグループで約23%の平均体重減少に達するまで維持された。群3(n=10)はカロリー制限の影響(全体重の減少および筋肉消耗の割合)を定義するためにt=14dで屠殺された。続く体重増加期(「再給餌」期とも称される)について、残り30匹の動物は体重に合わせて群4、5および6に均等(1群あたり10匹の動物)に分けた。t=14以降、これらのカロリー制限動物は、以下のスケジュールに従って、所定量の体重増加製品を補給した60kcal% chow飼料を継続した。
−群4(n=10):60kcal% chow+40kcal% chow、標準飼料を使用した100%ベースライン食料摂取と同等;
−群5(n=10):60kcal% chow+ベースラインエネルギー摂取から40kcal%と同等量のNutridrink Compact Protein(Nutridrink CP);
−群6(n=10):60kcal% chow+群5に供給したNutridrink CPのタンパク質含有量(グラム)と同等量のVital01
【0102】
カロリー制限および再給餌レジメンは体重における急速な減少およびその後の14〜21日以内の安定化を示したGallardoら(Gallardo CM. et al. 2014. Behavioraland neural correlates of acute and scheduled hunger in C57BL/6 mice. Plos One 9(5):1-12)およびWilliamsら(Williams TD. et al. 2002. Cardiovascular responses to caloric restriction and thermoneutrality in C57BL/6J mice. Am J Physiol Regulatory Integrative Comp Physiol 282:R1459-R1467)に基づいた。Nutridrink CPは、オランダのNutriciaにより販売されている栄養的に完全な、商業的に入手可能な医療食品である。NutriciaはDanoneの完全に子会社である。基本的に、同一の製品はまた、Fortisip Compact Proteinの名称で販売されている。本試験において使用された型は表Iに示す特性とともに、100mlあたり240kcalを含む。
【表1】
【0103】
主要栄養素組成物ならびに本発明の試験化合物(Vital01)のカロリー値は、約93:7のカゼイン:ホエー比を含む14.4g/100ml総乳タンパク質を含むNutridrinkと異なる。上記のように、群5および6それぞれについて、同量(グラム)のタンパク質を投与した。Nutridrink CPは製造業者により推奨されるとおりに取り扱った。Vital01は35mgのウルソール酸を100mlのVital00、表IIに与えられる内容物に添加することで製造された。
【表2】
【0104】
体重増加期の間、エコーMRI(製造業者の指示により実施、EchoMRI LLC、ヒューストン、USA)により毎日観察した。体重増加および食餌摂取ならびに体重増加製品の摂取は毎日決定された。屠殺後、両後肢の筋肉(腓腹筋、大腿四頭筋、脛骨筋およびヒラメ筋)を回収し、筋重量を決定した。右および左両方の後肢からの筋肉の計量に続いて、(組織学的目的で)腓腹筋1本、大腿四頭筋1本、脛骨筋1本およびヒラメ筋1本をホルムアルデヒドに固定し、パラフィンに包埋した。他の後肢からの腓腹筋、大腿四頭筋、脛骨筋およびヒラメ筋を後のRNA分析のために急速凍結し、−80℃で保存した。肝臓もまた単離し、計量し、−80℃で保存した。心臓穿刺により血漿を回収した。全ての方法は標準的であり、動物倫理委員会により事前に承認されたプロトコールおよびガイドラインに従って、当業者に既知の一般的方法を用いて実施した。
【0105】
簡潔には、試験は次のようにして実施した:飢餓期に、成熟雄性マウスをそれらの体重が25%減少するまで、一般的なchow飼料の60%(日数t=0の前の2週間における100%摂取に基づく)に維持した。続く再給餌段階において、10のち3つの群でマウスを層化し、以下の計算に従って、60% chow飼料を標準chow、Nutridrink CP、またはVital01のいずれかで補充した:対照群について、一般的なマウス飼料の100%(約5g/日)に対する標準chowをマウスに給餌した。従って、対照群3において40%(一般的に約2g)の追加のchowをマウスに与えた。2gのchowのカロリー数は、等カロリーの0.47gのタンパク質を含むNutridrink CPの量を計算するために使用され、この同量のタンパク質は、Vital01補給により、最後の群における動物に与えた。表IIIに種々の群の量および栄養価を要約する。Nutridrink CPおよびVital01の種々の製剤を与えるとすると、タンパク質の量が標準であるとき、kcalにおけるエネルギー価はNutridrink CPを与えられた群とVital01を与えられた群により摂取される食料で異なることが明らかである。タンパク質含有量を標準化するための選択は、本試験の初期の目的が体重増加、特にタンパク質摂取および合成の主要な結果であり、脂質の蓄積またはエネルギー摂取の結果ではない筋肉量の増加に対するウルソール酸およびNutridrink CPおよびVital01の種々のカゼイン/ホエー比の影響を比較することであったという事実に基づく。
【表3】
【0106】
結果
長期の食事制限の影響を図2に示す。群3〜6のマウスは食事制限期の前2週間と比較して60kcal%の食事に保たれ、全体重の平均5〜6グラム(約23%)を失った。上記スケジュールによる再給餌後、マウスはほぼ即座に体重が増加し始めた。図3を参照。飢餓期前と同様に通常の100kcal%の飼料を与えられた対照群4は比較的ゆっくりと体重が増加した。予期せぬことに、Vital01を与えられた群(群6)はNutridrink CPを与えられた群(群5)よりも有意に高い全体重に極めて迅速な増加を示した。全体重における増加は単に(例えば)脂肪の蓄積(僅かにより多いkcalがVital群に与えられていることによる)による増加ではないということが、除脂肪体重における増加を示す図4に見られ、ここでVital01群もまた、(除脂肪体重において同等の増加を示した)Nutridrink CPおよび対照群よりも迅速な増加を示した。それはVital01組成物が60kcal%の飼料における2週間の飢餓後に減少した体重を有する哺乳動物対象における全体重ならびに除脂肪体重における有意なより迅速な増加をもたらすと結論づけられる。Vital01群について観察されたような、体重における驚くほどに迅速な増加により、本試験は再給餌期の6日目に既に動物を屠殺したことにより、予想されていたよりも早く終了した。
【0107】
特定の筋肉に対するVital01組成物の効果をさらに明らかにするために、4つの異なる筋肉の重量を試験終了時に決定し、それぞれの対照群と比較した。図5は屠殺時の大腿四頭筋の重量を示す。相対的に短期間の再給餌において、大腿四頭筋の重量は基準群(群1)で決定したベースライン値に達さなかったが、再給餌を受けた全ての群は群3の非再給餌動物と比較して、明らかに大腿四頭筋が増加した。またそれは、Vital01群は対照群4(100kcal% chow)および群5(Nutridrink CP)よりも高い大腿四頭筋重量に達したことを示す。図6は腓腹筋重量における増加を示す。再び、Vital01組成物を用いた再給餌は、この特定の筋肉の重量におけるより大きな増加をもたらした。重要なことに、マウスの群は比較的小さいが、Vital01で得られる増加(群6、右棒)はNutridrink CPで得られた増加(4番目の棒)よりも統計的に有意であるようであり、これはVital01製剤のタンパク質組成物がNutridrink CPに存在する筋肉喪失の処置においてより有益であり得ることを示す。さらに、それは特に腓腹筋の重量を観察したとき、Vital01組成物に添加されるウルソール酸が筋肉量の増加に有益に貢献していることを示す。図7は、全ての再給餌群の間でヒラメ筋の筋肉量における有意な差は観察されなかったことを示す。重要なことに、この筋肉は大腿四頭筋および腓腹筋(それぞれ図5および6)ほど多く減少していなかった。ヒラメ筋重量における減少は飢餓において有意であったが、全ての再給餌スケジュールは多かれ少なかれ正常な重量をもたらした。図8は脛骨筋の重量を示し、ヒラメ筋の筋肉と同様に、大腿四頭筋および腓腹筋と比較したとき、脛骨筋は飢餓において相対的に少ない萎縮を示す。それにもかかわらず、Vital01組成物を使用した再給餌は、多かれ少なかれ正常な脛骨筋重量をもたらしたが、100kcal% chow(群4)およびNutridrink CP(群5)を使用した対照群は両方とも後退していたと考えられる。全体重における増加が肝臓の大きさにおける増加に起因することを排除できないため、肝臓重量もまた、全ての試験群に組み込んだ。図9は全ての再給餌群にいて逆転した飢餓に関する肝臓重量の明確な減少飢餓(群1(1番目の棒)と比較した群3(2番目の棒))が存在したが、種々の再給餌群の間に差は観察されなかったことを示す。
【0108】
Nutridrink CPおよびVital01は両方とも、低用量および漏出のため、マウスの通常の飲料ボトルでそれらに投与することができない液体製剤として提供される。この目的を達成するため、そして試験製品の摂取を正確に観察および制御するために、ペトリ皿で動物に容易に給餌できる半固体ゲルを形成するための、非代謝性ヒドロキシプロピルメチルセルロースの添加により、Nutridrink CPおよびVital01の双方を「ゲル化させた」。マウスが摂取したNutridrink CPおよびVital01の一日容量は、3.3mlのNutridrink CPまたは4.9mlのVital01であった。100% chowは約5gの乾燥重量に相当し、全ての群のマウスは適宜水を与えられた。全体重および筋肉における群間の差についての統計を、ノンパラメトリックKruskall−Wallis検定とその後のMann−Whitney検定を使用してSPSSで計算した。0日目(再給餌プロトコールの開始)から6日目(屠殺)までにおける群間の体重の比較(n=10)についてのP値を図10に示す。小さなp値(<0.05)は測定された体重が無作為抽出によるものではないということを意味していることが、ここで強調される。全ての群における筋肉量の測定について同様の方法を使用した。Vital01で処置されたマウスにおける筋肉量の増加はNutridrink CP(図11中に星で示す)で見られた値よりも顕著であったことに留意するべきである。
【0109】
結論として、哺乳動物対象(本試験における正常な雄性マウス)が栄養不良のための筋肉喪失を有するとき、全体重がそれらの正常体重の約75%まで減少するレベルでさえ、それらは通常の食事および当該技術分野で知られている医療栄養製剤を用いた再給餌により元に戻り得るが、本発明の栄養組成物は当該対象が既知の技術の製剤よりも極めて迅速に対象が体重を取り戻すことを可能にする。全体重および脛骨筋のような筋肉は、本発明の組成物を用いた再給餌の一週間以内には既に正常重量であったが、これは通常の動物飼料または当該技術分野の組成物を投与した場合ではなかった。さらに、少なくともいくつかの筋肉(例えば大腿四頭筋および腓腹筋)において本発明の組成物中のウルソール酸の有益な効果があると考えられる。
【0110】
実施例2.再給餌後の血漿中のウルソール酸の決定
当該技術分野において、ウルソール酸が極端に低い生物学的利用能を有することは知られる。例えば、ウルソール酸(ソクズ(Sambucus chinensis)抽出物から)の腸の取り込みを調査する試験において、80mg/kg体重の用量のウルソール酸は僅か0.6%の経口生物学的利用能しか有していないことが分かった(Liao Q, et al. 2005, LC-MS determination and pharmacokinetic studies of ursolic acid in rat plasma after administration of the traditional chinese medicinal preparation Lu-Ying extract. Yakugaku Zasshi 125(6):509-515)。ウルソール酸に対する明らかな生理学的または薬学的な反応が観察されたにもかかわらず、他者は経口投与における血液または組織中のウルソール酸を検出することができなかった。これは低い生物学的利用能および/またはイン・サイチュでウルソール酸量を測定するための感度の高い方法の不足によるものであった可能性がある。
【0111】
Vital01についてウルソール酸が実際に取り込まれることを確認するため、感度の高い分析方法が体重増加試験において屠殺した動物から得られた小容量の血漿中のウルソール酸を測定するために開発された。これについて、マウスまたはヒト血漿の小容量サンプルの分析を可能にするための重要な改良にもかかわらず、本質的にはXiaらにより記載されている(Quantitation of ursolic acid in human plasma by ultra-performance liquid chromatography tandem mass spectrometry and its pharmacokinetic study. J Chromatography 2011 879(2):219-224)高感度UPLC−MSを使用した。ウルソール酸のその異性体オレアノール酸への変換が動物試験において起こったと記載されているため、ウルソール酸およびオレアノール酸の両方を同時に測定するために、当該方法をさらに改良した。
【0112】
結果
当該方法の高い特異性および感度を確保しながら、小容量の血漿のウルソール酸およびオレアノール酸を同時に分析することを可能にするために、Xiaらにより公開されているUPLC−MS方法(2011)についての以下の改良を実施および確認し:
・ウルソール酸の溶解を向上させるために、アセトニトリルを50%メタノールとともに移動層に補充し、アセトニトリルの代わりにメタノール中でストック溶液を調製し;
・最初の注入液がキャリーオーバーを示したため、アンモニアを一滴滴下した;
・ウルソール酸およびオレアノール酸間の分割を改善するために、Xiaらにより記載されたC8カラム(2011)をC18カラム(Waters Acquity BEH C18 50x2.1mm、1.7μm)により置き換え;
・抽出および蒸発に酢酸エチルを使用して、サンプル調製についての体積を減少させ;
・カラム温度を最適化し、30℃から40℃に変更し;
・再構成容量を200μLから100μLに変更した。
【0113】
クロマトグラフィー、MS検出およびサンプル調製について最適化した設定を使用して、5〜5000ng/mlの定量範囲で30μL未満の血漿中のウルソール酸とオレアノール酸の同時測定を可能にする方法が開発された。最適化された方法はその後、6日目の再給餌後の屠殺期間に回収され、分析まで−80℃で保存されていた群4、5および6における動物に由来する20μLのEDTA血漿サンプルを分析するために使用された。100% chowで再給餌した動物(群4)またはNutridrink CP(群5)で再給餌した動物に由来する血漿サンプルにおいて、ウルソール酸(検出<LOD、4.94ng/ml)は検出できなかった。しかし、ウルソール酸はVital01(群6)で再給餌した動物から得られた血漿サンプル中で、76.6±8.8ng/mlの平均濃度で容易に検出可能であった。動物(全ての群)が午前に全ての食事を終えて、断続的な給餌なしに午後に屠殺されたと仮定すると、Vital01中のウルソール酸の製剤は、その生物学的利用能が著しく向上していることになる。これは本発明の組成物中に存在する脂肪および脂質を介したウルソール酸の可溶化の増加および/または恐らく腸壁への輸送を容易にし、促進するためにVital01中のタンパク質またはアミノ酸と結合することにより、促進されたと考えられる。
【0114】
実施例3.高齢ヒト対象における臨床試験
論拠:オランダにおける栄養不良の患者数は75歳以上の人々の20%をはるかに上回る。栄養不良状態は体重減少、傷の治癒、身体能力の低下、無気力および抑うつ、免疫機能の低下、ならびに二次性合併症などの臨床パラメーターに著しくかつ負に影響を与える。疾患に関連する栄養不良の主要な直接的効果の一つは機能、可動性および自活を損なう筋肉喪失である。栄養不良は低体重によりおよび無意識の体重減少により検出できるのみならず、強度の低下およびその結果の可動性の低下をもたらす筋組織の萎縮によっても検出できる。高齢者では、年齢に関連して骨格筋量および筋力(筋肉喪失症)の進行性喪失が、機能的能力の喪失および慢性代謝疾患の発症リスクの増加をもたらす。患者の栄養状態の改善は基礎疾患からのより迅速な回復に極めて関連するより良好な身体の状態をもたらす。
目的:本発明の経口栄養補助組成物(Vital02)の、栄養不良の高齢者における、第一に体重および除脂肪体重、ならびに第二に身体能力、筋肉の健康および免疫機能に対する影響を栄養不良の処置についてのオランダにおける標準治療である栄養補助(ONS)と対比して調査するために、治験を実施した。
治験デザイン:12週間にわたり、無作為化および比較介入試験を、2つの処置と並行して実施する:処置1:Vital02(n=40)、2分割のVital02(600kcal)。処置2(基準):ONS(n=40)、2分割の標準医療用食品の(600kcal)。
試験集団:栄養不良またはMNA(簡易栄養評価)により評価される栄養不良状態のリスクを有する高齢(≧65歳)対象者。
主要な試験パラメーター/終点:主な関心は、処置1と処置2の間の体重(kg)および除脂肪体重(kg)の変化における平均差にある。さらに、身体能力、筋肉の健康および免疫機能を評価する。
【0115】
Vital02は粉末組成物100gあたり465.02Kcalを含む。表IVは対象に投与するための液体組成物の調製に使用されるVital02粉末の組成物である。表Vは、総アミノ酸含量のイソロイシン、バリンおよびロイシンの割合に由来し得るVital02の総アミノ酸含量である。
【0116】
【表4-1】
【表4-2】
【0117】
【表5】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11