【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 試験日 :令和2年6月23日 試験場所:JR線路下アンダーパス周辺(徳島県海部郡美波町奥河内寺前) 試験日 :令和2年6月23日 試験場所:美波町立日和佐中学校グラウンド裏(徳島県海部郡美波町西河内大久保) 開催日 :令和2年6月30日 開催場所:ミナミマリンラボ(徳島県海部郡美波町日和佐浦1−3水産研究課3F) 試験日 :令和2年8月4日 実験場所:JR線路下アンダーパス周辺(徳島県海部郡美波町奥河内寺前)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、その目的の一は、水感知センサに使用される水電池が浸水した後、水位が下降した際に迅速に検出を停止可能とし、また、水感知センサが浸水時に発信回路を起動させるのに必要な容量の電力を安定的に得ることを可能とする水感知センサ及びこれに用いる水電池並びに冠水検知方法を提供することにある。
【0010】
本発明の第1の側面に係る水感知センサによれば、水を感知するための水感知センサであって、電池ケースと、前記電池ケースに収納され、水と反応して起電力を生じさせることが可能な水電池と、前記電池ケースに収納され、前記水電池から電力供給を受けて、水を感知したことを示す水感知信号を外部に発信可能な発信機とを備え、前記水電池は、第一端子を有する板状の第一金属で構成された
、表裏の2つの主面を有する第一電極と、前記第一電極の、前記第一端子を除く
前記2つの主面を覆った状態で、前記第一端子と対向する第二端子を有する、前記第一金属と異なる第二金属で構成された第二電極と、前記第一電極と第二電極との間に介在され空隙を形成している絶縁部材とを備えることができる。上記構成により、第一電極と第二電極を絶縁する絶縁部材に空隙を形成したことで、近接して配置される第一電極と第二電極との間の通気性を高め、乾燥させやすくできる。この結果、水が引いた場合には乾燥を促進して起電力を抑え、発信機の発信動作を停止させることが可能となり、冠水から回復した状態の検出をより正確に行えるようにできる。
【0011】
また、第2の側面に係る水感知センサによれば、水を感知するための水感知センサであって、水と反応して起電力を生じさせることが可能な水電池と、前記水電池と接続されるハーネスと、前記水電池から離間された場所に設置され、前記水電池から前記ハーネスを介して電力供給を受けて、水を感知したことを示す水感知信号を外部に発信可能な発信機とを備え、前記水電池は、第一端子を有する板状の第一金属で構成された第一電極と、前記第一電極の、前記第一端子を除く主面を覆った状態で、前記第一端子と対向する第二端子を有する、前記第一金属と異なる第二金属で構成された第二電極と、前記第一電極と第二電極との間に介在され、空隙を形成している絶縁部材とを備えることができる。上記構成により、水電池と発信機とを別部材とすることで、発信機を異なる場所に設置可能となり、水感知センサの設置の自由度が高められる。
【0012】
さらに、第3の側面に係る水感知センサによれば、上記構成に加えて、前記第二電極で前記第一電極の主面を覆った状態で、前記第一端子と第二端子とを、同一平面状に離間することができる。
【0013】
さらにまた、第4の側面に係る水感知センサによれば、上記何れかの構成に加えて、前記第二電極が、網状に形成することができる。上記構成により、第二電極を網状として所定パターンの空隙を多数形成でき、第二電極の通気性を向上させ、水電池を乾きやすくできる。これにより、冠水時の水が引いたにもかかわらず、電池ケースの内部に留まった水で水電池が起電力を生じ、発信機が水感知信号を誤発信してしまう虞を低減することができる。
【0014】
さらにまた、第5の側面に係る水感知センサによれば、上記何れかの構成に加えて、前記絶縁部材は、前記第一電極の主面を覆うことができる。上記構成により、絶縁部材が空隙を形成しながらも、第一電極と第二電極との絶縁を図ることが可能となる。
【0015】
さらにまた、第6の側面に係る水感知センサによれば、上記何れかの構成に加えて、前記絶縁部材を、網状とすることができる。上記構成により、絶縁部材を網状として所定パターンの空隙を多数形成でき、第一電極と第二電極の間の通気性を向上させ、水電池を乾きやすくできる。これにより、冠水時の水が引いたにもかかわらず、電池ケースの内部に留まった水で水電池が起電力を生じ、発信機が水感知信号を誤発信してしまう虞を低減することができる。
【0016】
さらにまた、第7の側面に係る水感知センサによれば、上記何れかの構成に加えて、前記絶縁部材は、前記第一電極の主面の両側にそれぞれ凸部を形成しており、前記凸部同士の間に空間を形成することができる。上記構成により、凸部を設けた箇所以外を中空とできるため、空間を広く形成でき、通気性を向上させて水が引いた場合の乾燥を促進することができる。
【0017】
さらにまた、第8の側面に係る水感知センサによれば、上記何れかの構成に加えて、前記絶縁部材は、絶縁性の樹脂製とすることができる。上記構成において、樹脂製の絶縁部材は紙や不織布と比べて速乾性に優れているため、冠水時の水が引いたにもかかわらず電池ケースの内部に留まった水で水電池が起電力を生じ、発信機が水感知信号を誤発信する虞を低減することができる。
【0018】
さらにまた、第9の側面に係る水感知センサによれば、上記何れかの構成に加えて、前記電池ケースは、底部を開放した中空の柱状であり、前記水電池は、前記電池ケースの底部側に配置され、前記発信機は、前記電池ケースの上面側に配置され、前記水電池の第一端子及び第二端子は、前記水電池と、前記発信機との間に配置することができる。上記構成により、電池ケースの冠水され易い底部側に水電池を配置することで、冠水の検出を可能としつつ、発信機を冠水され難い上部に配置して、安全性が高められる。加えて、外部を柱状としたことで、設置場所の電柱等に括り付けて取り付ける等、設置を容易とできる。
【0019】
さらにまた、第10の側面に係る水感知センサによれば、上記何れかの構成に加えて、前記電池ケースは、柱状の側面の底部側に、前記電池ケース内部の前記水電池を配置した収納空間と連通させる第一穴部を開口させ、前記第一穴部よりも上方であって、該第一穴部と、前記電池ケース内部で前記第一端子及び第二端子が配置された位置との間に、第二穴部を開口させることができる。上記構成により、第二穴部を空気穴として、電池ケース内部に存在する空気で空気層が形成して第一電極や第二電極の浸水を回避し、安定的に起電力を発生させることが可能となる。
【0020】
さらにまた、第11の側面に係る水感知センサが、上記何れかの構成に加えて、さらに、前記水電池を収納する、外形を板状とする中空の電池ケースを備え、前記電池ケースは、設置する面を開放させた開放面としており、前記水電池は、前記第一端子及び第二端子を、前記開放面の反対側に位置するように前記電池ケースに収納することができる。上記構成において、発信機を電池ケース内に収納しないため、電池ケースの形状を、水電池を収納するためのコンパクトな板状とすることができる。電池ケースが板状であると、水感知センサを設置する場所に電柱等がなくても、例えば、壁などの平面に容易に取り付けることができる。また、板状であるため、突出量も少なく、狭い場所にも設置しやすい。このように、水電池の設置の自由度を向上させることが可能となる。
【0021】
さらにまた、第12の側面に係る水感知センサによれば、上記何れかの構成に加えて、前記電池ケースは、その表面において前記第一端子及び第二端子が配置された位置と対応する位置よりも下方に穴部を開口することができる。
【0022】
さらにまた、第13の側面に係る水感知センサによれば、上記何れかの構成に加えて、前記穴部は、前記電池ケースの正面視において前記水電池と重ならない位置に開口することができる。上記構成により、冠水等が発生しない通常の降雨時に、雨が穴部を介して水電池に当たって起電力が発生し、水感知信号が誤発信される虞を低減することが可能となる。
【0023】
本発明の第14の側面に係る水電池によれば、水を感知する水感知センサに用いられる、水と反応して起電力を生じさせることが可能な水電池であって、第一端子を有する板状の第一金属で構成された
、表裏の2つの主面を有する第一電極と、前記第一電極の、前記第一端子を除く
前記2つの主面を覆った状態で、前記第一端子と対向する第二端子を有する、前記第一金属と異なる第二金属で構成された第二電極と、前記第一電極と第二電極との間に介在され、空隙を形成している絶縁部材とを備えることができる。
【0024】
さらにまた、第15の側面に係る冠水検知方法によれば、冠水の発生を検知する冠水検知方法であって、第一端子を有する板状
で、表裏の2つの主面を有する第一電極と、第二端子を有し、前記第一電極の、前記第一端子を除く
前記2つの主面を覆う第二電極と、前記第一電極と第二電極との間に介在されて、該第一電極と第二電極の間に空隙を形成する絶縁部材とを備える水電池と、前記水電池から電力供給を受けて、水を感知したことを示す水感知信号を外部に発信する発信機とを備える水感知センサを所望の設置場所に設置する工程と、所定の領域で冠水が発生し、前記水感知センサが浸水された際、該浸水により前記水感知センサ内に侵入した水と反応することで前記水電池が起電力を発生させる工程と、前記水電池の起電力を、該水電池と接続されたキャパシタに蓄電し、該キャパシタに蓄電された電力でもって発信機を駆動させる工程と、前記発信機が、水を感知したこと
を示す水感知信号を外部に発信する工程とを含むことができる。これにより、水電池の起電力が周囲温度などによって変動する不安定なものであって発信機の安定駆動が容易でないところ、一旦キャパシタに蓄電させ、このキャパシタの放電によって発信機を駆動させるように工夫したことで、水電池の起電力が不安定であっても、水感知信号の安定的な出力を可能とできる。
【0025】
さらにまた、第16の側面に係る冠水検知方法によれば、上記構成に加えて、前記水感知センサを設置する工程が、底部を開放した電池ケースに収納された前記水電池が表出する面を、設置場所の設置面から離間させるように取り付けることができる。これにより、電池ケースの底部側で水の流れが発生し、同じ水が電池内部に留まり続けることを抑制することができる。その結果、水溶液の飽和による電流量の低下の虞が低減できる。
【0026】
さらにまた、第17の側面に係る冠水検知方法によれば、上記何れかの構成に加えて、前記水感知センサを設置する工程が、複数の水電池を準備し、それぞれ異なる高さに設置する工程を含み、前記水検知信号を外部に発信する工程が、前記複数の水電池のいずれで冠水が検知されたかを前記発信機で判別して出力する工程を含むことができる。これにより、異なる高さに設置した水電池の冠水の有無を判別することで、どの高さで冠水が生じたか、すなわち水位の変化を検出することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定されない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
[実施形態1]
(水感知センサ100)
【0029】
本発明の実施形態1に係る水感知センサ100を、
図1の斜め下方から見た透過斜視図に示す。この図に示す水感知センサ100は、河川沿い、道路沿い、水路や樋門近辺等、大雨による増水等を感知しようとする場所に設置し、冠水が発生した際に水を感知したことを発信するための装置である。また、開放された場所だけでなく、例えば下水道内やマンホール、道路側溝内などのある程度閉じられた空間でも使用することができる。なお本明細書において、水感知センサ100を設置して冠水の発生を検知する領域を、所定の領域と呼ぶ。
【0030】
図1に示すように、水感知センサ100は、電池ケース10と、電池ケース10に収納された水電池20及び発信機30とを備える。この水感知センサ100は、電池ケース10の底部13を開口部分とし、底部13側を設置場所の設置面と対向するように設置する。水感知センサ100は、1つの設置場所に1個のみ取り付けてもよいし、上下方向に複数個並べて取り付けてもよい。複数個の水感知センサ100を上下方向に複数個配置し、各水感知センサで個別に水感知可能とすることで、異なる高さの冠水を検知して、水位がどの高さにあるのかを把握することが可能となる。ここでは水感知センサ100の概要を説明し、各部材の詳細は後述することとする。
【0031】
水電池20の正面図を
図2に、各部材の正面図を
図3A〜
図3Cに、それぞれ示す。これらの図に示す水電池20は、板状の第一電極21と、第一電極21を覆う第二電極22と、第一電極21と第二電極22との間に介在されて、第一電極21と第二電極22の間に空隙24を形成する絶縁部材23とを備える。
図1に示す発信機30は、この水電池20から電力供給を受けて、水を感知したことを示す水感知信号SGを外部に発信する。
【0032】
この水感知センサ100により、所定の領域で冠水が発生した場合、水感知センサ100が浸水し、浸水により水感知センサ100内に侵入した水と反応することで水電池20が起電力を生じ、この起電力が発信機30に供給されて駆動される。そして発信機30が、水を感知したことを示す水感知信号SGを外部に発信するように構成している。水電池20が浸水し、濡れた状態にある場合、水電池20の起電力発生が継続して水感知信号SGは発信され続け、一方で水が引いて水電池20が乾くと、起電力が低下又は停止して発信機30への電力供給が止まり、水感知信号SGが発信されなくなるように構成している。
【0033】
第一電極21と第二電極22とは、絶縁部材23で絶縁されつつも、起電力を高めるため近接して配置される。このため第一電極21と第二電極22が密着された状態に近づくよう、絶縁部材23は薄型に形成される。ここで、冠水した水が引いたにもかかわらず、電池ケース内部や水電池の乾きが悪いと、電池ケース内部に留まる水や水分により水電池20の起電力発生が継続し、発信機30に電力を供給し続け、本来であれば冠水が止み水感知信号SGを発信してはいけないにも拘わらず、水感知信号SGを誤発信してしまう虞がある。そこで実施形態1の水感知センサ100のように、絶縁部材23により第一電極21と第二電極22との間で空隙24を形成するようにすることで、第一電極と第二電極との間の通気性が向上し、水が引いた際に水電池20を乾燥させやすくできる。この結果、水が引いた場合には乾燥を促進して起電力の発生を抑え、発信機30の発信動作を停止させることが可能となり、冠水から回復した状態の検出をより迅速に行うことができる。
(第一電極21)
【0034】
図2に示すように水電池20は、第一電極21と、第二電極22と、絶縁部材23とを備える。
図3A〜
図3Cは水電池20の各部材の一例を示す正面図である。
図3Aに示すように、第一電極21は、正面視で概ね矩形状の板状に形成され、上部に第一端子21aを突出させている。この第一端子21aは、矩形状の第一電極21の長手方向における一端部から突出するように、第一電極21と一体に形成されている。この第一電極21は、第一金属、例えばマグネシウムで構成され、負極として機能する。ただ、実施形態1の第一電極21は、電池ケース10に収納できる形状であれば任意の形状でよく、正面視で矩形以外の多角形状や楕円状としてもよい。また、板状でなく柱状とする等、上記形状に限定されない。さらに、第一金属もマグネシウムに限定されず、アルミニウム、マンガン、亜鉛等も使用し得る。
(第二電極22)
【0035】
図3Cの第二電極22は、概ね矩形状の網状で、主面22bの上部に第二端子22aを突出させている。この第二端子22aは、矩形状の第二電極22の主面22bの長手方向の端部の側面から突出するように、第二電極22と一体に形成している。また後述する通り、第二電極22の主面22bで、第一電極21の第一端子21aを除く主面21bを覆うようにしている。この第二電極22は、第二金属、例えば銅で構成され、正極として機能する。また、第二電極22を網状とすることで通気性を向上させ、水電池20の速乾性の向上を図っている。ただ、実施形態1の第二電極22は、第一端子の外周をある程度覆うことができれば、上記形状に限定されない。例えば、角部を面取するなどして丸みのある形状等としてもよい。さらに、第二金属も銅に限定されず、銀、金、白金等も使用し得る。
【0036】
さらに、上記の例では第一端子21aを第一電極21と一体に、第二端子22aを第二電極22と一体に、それぞれ形成しているが、実施形態1の端子はこのような態様に限定されない。例えば、第一端子と第二端子を別部材とし、第一電極と第二電極の本体にそれぞれ溶接等で固定して形成することもできる。この際、第一端子及び第二端子は、第一電極及び第二電極とそれぞれ同じ材料でも、異なる材料でも作製することもできる。例えば、別部材の第一端子及び第二端子を銅片で作製し、第一電極本体及び第二電極本体にそれぞれハンダ付けしてもよい。
(絶縁部材23)
【0037】
図3Bの絶縁部材23は、第一電極21の主面を覆うことができれば任意の形状とできる。実施形態1では概ね矩形状の網状としている。網状の絶縁部材23は、網目を空隙24として、多数形成しているため通気性が高く、水に濡れても乾きやすい。この網状の絶縁部材23を、第一電極21の外周に巻き付けることにより、絶縁部材23を第一電極21と、第二電極22との間に介在させ、第一電極21と第二電極22の間に多数の空隙24を均一に形成することができる。また絶縁部材23は、第一電極21と第二電極22が絶縁できれば任意の材料を使用し得る。実施形態1では、ポリエステル等の樹脂を使用している。このような、樹脂製の網状の部材として、例えば市販の網戸を流用することも可能である。網戸は安価で入手しやすい工業製品のため、量産に適し、製造コストも低減できる。ただ、実施形態1の絶縁部材は、樹脂製の網状の部材に限定されないことは言うまでもない。例えば、表面に溝状の加工を施して空隙として機能するものを形成した布状のものや不織布、スポンジ状の発泡体等も使用し得る。
【0038】
このような空隙を設けた絶縁部材23は、速乾性に優れており、第一電極21と第二電極22との間の通気性を向上することができる。これにより、冠水時の水が引いたにもかかわらず水電池20の内部に留まった水で水電池20が起電力を生じ、発信機30が水感知信号SGを誤発信する虞を低減することができる。
【0039】
従来の水電池では、絶縁性を高める観点から絶縁部材に密な素材を選択することが多かった。しかしながら、密な絶縁部材は一旦濡れると乾燥し難い。特に、従来の水電池では起電力を継続させるためにも、濡れた状態を長く保つことで起電力発生をできるだけ長時間維持させるという思想であった。仮に、絶縁部材23を乾きにくい材料で作製すると、冠水時の水が引いても、絶縁部材23が乾くのに長時間、例えば数日かかってしまう場合がある。また、水電池20は水温により電池の電流量が大きく変化する特性があり、水温が高い場合は発電量が増加し、低い場合は発電量が減少する。例えば昼間に冠水して水感知信号SGを発信し、夜になって水が引く場合がある。この場合、夜間に絶縁部材23が完全に乾かず半乾き状態であっても、夜間の気温の低下に伴って水温が低下すると、起電力が低下し、発信機30への電力供給が不十分となって、水感知信号SGの発信が停止される。ただ、電池内部の半乾き状態が翌日の昼まで続くと、気温の上昇に伴って水温が上がり、水電池内に留まる少量の水分で水電池20の発電量が増加する結果、冠水時に感知した水が引いているにもかかわらず、電力が供給されて発信機30が水感知信号SGを再度発信してしまう虞がある。このような事態に対しても、実施形態1のような乾きやすい絶縁部材23を使用することにより、水が引いた場合は電池ケース10の内部を速やかに乾かし、翌日の昼間に持ち越さないようにして水感知信号SGの誤発信の回避を図っている。
(水電池20)
【0040】
上記第一電極21、第二電極22、絶縁部材23から構成される水電池20は、水等の液体と化学反応して起電力を発生する素子である。水電池20は、第一電極21及び第二電極22に使用される金属の酸化作用を利用して電力を得るような構成とすることができる。また水電池20は単数とするのみならず、複数本を並列に接続して用いてもよい。
【0041】
ここで、水電池20を作製する手順を説明する。まず、
図3Aの第一電極21の外周を覆うように、
図3Bの絶縁部材23を、
図4に示すように巻き付ける。さらにこの上に、
図3Cに示す第二電極22を、仮想線ILで折り曲げて
図5に示すように巻き付ける。具体的には、絶縁部材23を巻き付けた第一電極21の一端部を、第二電極22の折り曲げた部分に挿入すると共に、第二電極22を絶縁部材23に巻き付ける。この際、第二電極22は、絶縁部材23の外周を全て覆ってもよいし、ある程度覆いながら、第二電極22の端部同士が多少離間していてもよい。これにより、
図2に示すような水電池20を作製することができる。このようにして作製された水電池20は、第一端子21aと第二端子22aとが、同一平面状に離間されるようにしている。これにより、配線作業を容易に行える利点が得られる。
【0042】
このようにして得られた水電池20は、第一電極21の外周を2つの網状の部材で取り囲むような構成としている。このように網状の絶縁部材23に、さらに網状の第二電極22を重ねることにより、通気性をさらに向上させ、水電池20の速乾性のさらなる向上を図っている。
【0043】
また、絶縁部材23を第一電極21に巻き付ける際、絶縁部材23を強く引っ張りながら、第一電極21に巻き付けるのが好ましい。絶縁部材23と、第一電極21とを極力、密着させるためである。同様に、第二電極22を絶縁部材23に巻き付ける際、第二電極22を強く引っ張りながら、絶縁部材に密着させるように巻き付けるのが好ましい。電極同士を近付けて起電力を増すためである。そして、絶縁部材23を介した第一電極21と第二電極22との離間距離は、電池の性能が確保できる任意の長さとすることができる。実施形態1では、一例として、1mm以下としている。ただ、第一電極21と第二電極22との離間距離は、1mm以下に限定されず、1mm以上とすることもできる。
【0044】
上述の例では、電池ケース10の内部の素早く乾かすために、第一電極21と第二電極22との間に空隙24を形成し、通気性を向上させることを図っている。一般に、通気性を向上しようとすると、第一電極21と第二電極22との間隔を広く取るのが通常である。ただ、第一電極21と第二電極22との間隔を広くすると、電池内部の抵抗の増加に起因して電圧や電流が低下し、電池としての性能が悪化してしまう虞がある。そこで、空隙24を多数形成している絶縁部材23を第一電極21と第二電極22との間に介在させて通気性を向上させている。また、第一電極21と第二電極22との距離を、近付けて、第一電極21と第二電極22との間隔が広くなり過ぎることを抑制している。
【0045】
このように、空隙24を形成する絶縁部材23で電池内部の速乾性の向上を図る一方、絶縁部材23や、第二電極22の巻き付け具合により、第一電極21と第二電極22との間隔を調整し、電池の性能の確保を図っている。
【0046】
また、第一電極21と第二電極22との間隔を絶縁部材23や、第二電極22の巻き付け具合により調整できるため、水電池20の量産の際、それぞれの水電池20における第一電極21と第二電極22とを同程度の間隔で離間して製造することが容易となる。その結果、水電池20を量産しても、得られる製品の性能のバラツキを抑えることが可能である。
[変形例]
【0047】
上述の例では、空隙を有する絶縁部材23として網状の部材を使用する例について説明した。ただ、本実施形態の絶縁部材は上記態様に限定されない。例えば、
図6は、絶縁部材の変形例の一態様を示している。この図に示すように、絶縁部材23Bは第一電極21の主面21bの両側、及び上側にそれぞれ形成された凸部23Baにより構成されている。また、主面21b側には、凸部23Baに囲まれた空間24Bを空隙として形成している。このような絶縁部材23Bを設けることにより、第二電極22が絶縁部材23Bを介して第一電極21の主面を覆う際、凸部23Baにより、第一電極21と第二電極22との接触を避け、絶縁性を確保できる。また、凸部23Baにより形成された空間24Bにより、第一電極21と第二電極22との間の通気性を向上させることができ、電池ケース内部の速乾性を確保することが可能である。特に、この態様の絶縁部材23Bによれば、凸部23Baを設けた箇所以外は中空とできるため、網状の絶縁部材よりもさらに通気性を向上させて水が引いた場合の乾燥を促進することができる。
【0048】
このような絶縁部材23Bは、凸部23Baにより、第一電極21と第二電極22との接触を避けつつ、凸部23Baによって空間24Bを形成できれば、上記態様に限定されない。例えば、構成の簡略化のため、上側に設けた凸部23Baを省略することもできる。また、凸部23Baは、樹脂、ガラス、木、紙、布等の任意の絶縁材で作製できる。さらに、
図6に示すように、凸部23Baの材料に可撓性を有する樹脂、紙、布等の任意の絶縁材を使用し、第一電極21の裏、表にある2つの主面21bに、第一電極21の一端部を介して跨ぐようにして、1つの部材で凸部23Baを形成してもよい。一方、別々の部材で2つの主面21bのそれぞれに凸部23Baを形成してもよい。
(制御部50)
【0049】
制御部50は、水電池20から電力を受けて水感知信号SGを外部に発信するための部材である。制御部50は、水電池20と連結し、水電池20と共に電池ケース10に収納するようにしている。
図1の斜視図及び
図7の回路図に示すように、制御部50は、水を感知したこと示す水感知信号SGを外部に発信する発信機30と、水電池20からの電力を昇圧する昇圧回路40とを備える。発信機30は、特に限定されないが、例えばBLE(Bluetooth Low Energy:商品又はサービス名)通信モジュールを使用できる。BLE通信モジュールは極めて低い電力で通信が可能であるため、限られた起電力でも長時間の通信が可能となる。また昇圧回路40は、水電池20で得られた電圧を発信機30を駆動可能な電圧まで昇圧するための回路である。このような昇圧回路40には、DC/DCコンバータなどの既知の回路を適用できる。さらに制御部50は、発信機30の駆動を安定化させる蓄電装置として、後述するキャパシタ41を備えている。
【0050】
図7の水電池20から供給された電力は、昇圧回路41で昇圧され、発信機30に供給される。この電力の供給を受けて、発信機30は、外部に水感知信号SGを発信するようにしている。
(発光体60)
【0051】
また、このような昇圧回路40に発光体60を接続し、水感知センサ100が水を感知した際、発光体60を光らせて、外部に水を感知したことを視認できるようにしてもよい。発光体60は、発光ダイオード(LED)や有機EL(O−LED)、半導体レーザ(LD)などの半導体発光素子が好適に利用できる。特にLEDは、安価で長寿命であり、耐衝撃性にも強く、好ましい。ただ、本実施形態の水感知センサ100は、水感知信号SGを外部に発信するのみで、発光体60を省略してもよい。
(電池ケース10)
【0052】
電池ケース10は、水電池20、制御部50、発光体60等を収納するためのものである。電池ケース10は、これらの部材を収納できれば任意の形状でよく、円柱状や多角柱状等の柱状、ブロック状等とし得る。実施形態1では、
図8に示すように、高さが概ね10cm〜50cmの中空の円筒状としている。また、円筒状の電池ケース10の底部13を開放している。底部13は、一部が開放されていてもよいし、全部が開放されていてもよいが、実施形態1では底部13の概ね全部を開放している。底部13の概ね全部を開放することにより、電池ケース10内部の通気性を高め、電池ケース10の内部及び水電池20を乾燥させやすくすることができる。さらに、電池ケース10の側面14には、後述する第一穴部11と第二穴部12とを形成している。そして、
図8に示すように、連結された水電池20と制御部50を、水電池20が電池ケース10の底部側に、制御部50等が上面側に配置されるように収納するようにしている。
【0053】
電池ケース10は、既存の材料で作製でき、例えば、プラスチック製とするのが好ましい。プラスチック製とすれば、水感知センサ100を軽量で、取り扱い易くできる。また、プラスチックは耐食性に優れ、水に浸かっても錆びないため、長期間使用することができる。さらに、電池ケース10の全体又は一部を透光性を有するプラスチック製とすれば、発光体60が発光した際に外部からより視認しやすくなる。ただ、電池ケース10はプラスチック製に限定されず、ガラス等、防水性、耐候性のある絶縁材で作製してもよい。
(連結部70)
【0054】
連結部70は、電池ケース10の内部を上面側と底部側に区画しつつ、水電池20と制御部50を連結する部材である。
図9は水電池20と制御部50を連結しつつ、電池ケース10の内部を区画する一態様を示している。
図9に示す連結部70は、連結穴75、75を形成した板状の区画板71と、区画板71の外周を囲む弾性体72と、水電池20と制御部50を連結する一対の連結線73、73とを備える。さらに連結部70は、水電池20を挟んで支持する一対の支持片74、74を2箇所に設けている。一方で、水電池20は、連結部70と連結するための一対の連結片25、25を備える。
(区画板71)
【0055】
区画板71は、電池ケース10の内部を上面側と底部側に区画するためのものである。区画板71は電池ケース10の断面形状と概ね同一の板状とし、電池ケース10の内径より若干小さい直径を有する大きさとしている。また、区画板71の外周を弾性体72で囲んで水密に封止している。弾性体72としては、例えば、Oリング等を使用し得る。このように外周を弾性体72で囲まれた区画板71は、全体として直径が電池ケース10の内径より若干大きくなるようにしている。このため、弾性体72で囲まれた区画板71で電池ケース10の内部を区画すると、電池ケース10の上面側をある程度水密に封止することができる。
(連結線73、73及び連結穴75、75)
【0056】
一対の連結線73、73及び一対の連結穴75、75は、区画板71を介して水電池20と制御部50を連結するためものである。連結穴75、75は、区画板71の主面71aの概ね中央部分に互いに離間して形成されている。連結線73、73としては、例えば、リード線等を使用し得る。この一対の連結線73、73を一対の連結穴75、75にそれぞれ挿入し、連結線73の一端側を後述する水電池の連結片25と、他端側を制御部50の一端部と連結するようにしている。また連結穴75、75は、連結線73、73が挿入された状態で、接着剤等により封止され、隙間から電池ケース10の上面側に水が浸入しにくい構成としている。
(連結片25、25)
【0057】
一方、水電池20は、連結線73を介して制御部50と連結するための一対の連結片25、25を備える。一対の連結片25、25は、第一端子21a、第二端子22aにそれぞれ取り付けられる。連結片25は、制御部50と連結できれば特に限定されず、既存の部材を使用し得る。実施形態1では、例えば、
図9に示すように、圧着端子を設けたハトメを使用している。この圧着端子の部分に連結線73の一端側を挿入し、カシメ加工等で連結している。また、連結線73の他端側は制御部50にねじ止めやハンダ付け等で連結している。これにより、水電池20と制御部50とを連結することができる。
(支持片74、74)
【0058】
一対の支持片74、74はこのようにして連結された水電池20を挟むようにして上方から支持するための部材である。
図9に示すように、一対の支持片74、74を2箇所に設け、水電池20の両側部を上方から挟むことで、第一電極21と第二電極22との間隔が広がることをさらに抑制することが可能である。これにより、水電池20の外形を安定させ、電池の性能の安定を図っている。また、水電池20を支持片74、74を介して区画板71に安定して取り付けることができるため、水電池20の位置決めもしやすくなる。さらに、水電池20が電池ケース10内で揺動することも抑制でき、電池の性能の安定化にも資する。
【0059】
一対の支持片74、74は、水電池20を挟んで水電池20の外形を安定させることができれば、任意の部材を使用できる。実施形態1では、
図9に示すように一対の支持片74、74を棒状とし、一端側を区画板71に連結している。そして、一対の支持片74、74の他端側で水電池20の本体部分を挟むようにしている。この一対の支持片74、74は水電池20の本体の両側部を挟むように、区画板71の対応する2箇所に設けられている。ただ、実施形態1の支持片74、74は上記態様に限定されず、例えば、クリップ状のもので水電池20を挟んで、上方から支持するなどとしてもよい。さらに、設ける箇所も2箇所に限定されず、1箇所のみ又は3箇所以上とすることもできる。
【0060】
このように連結した制御部50と、水電池20等を電池ケース10に挿入することにより、
図1に示すような水感知センサ100が得られる。この際、第一端子21a及び第二端子22aは、制御部50と、水電池20の間、具体的には、区画板71の裏面の近傍に配置される。この状態で、水感知センサ100の開放された底部13側を設置場所の設置面と対向させて設置するようにしている。
【0061】
このように、電池ケース10の冠水され易い底部13側に水電池20を配置することで、冠水の検出を可能としつつ、発信機30を冠水され難い上部に配置して、安全性が高められる。加えて、外部を柱状としたことで、設置場所の電柱等に括り付けて取り付ける等、設置を容易とできる。
(第一穴部11及び第二穴部12)
【0062】
ここで、
図1等に示す円筒状の電池ケース10は、側面14に、第一穴部11と、第二穴部12を形成している。第一穴部11は、側面14の底部13側に形成され、電池ケース10内部の水電池20を配置した収納空間と連通させている。第二穴部12は、第一穴部11よりも上方であって、第一穴部11と、電池ケース10内部で第一端子21a及び第二端子22aが配置された位置との間に形成されている。例えば、実施形態1では、第一端子21a及び第二端子22aの下側近傍であって、電池ケース10の中央寄りの部分に形成している。この第一穴部11を介して、浸水時、外部から電池ケース10の内部に水を浸入させる水採り入れ口とすることができる。また第二穴部12は、空気穴として機能するようにしている。
【0063】
冠水が発生した場合、第一穴部11等を介して電池ケース10内に次々と水が浸入し、電池ケース10内の水位が上昇してくる。このとき、電池ケースの内部に存在していた空気により空気の層が形成され、空気圧が発生するようにしている。これにより、水感知センサ100の全体が水没しても、電池ケース10の内部の水位が、第二穴部12より高くなることを抑制している。
【0064】
水電池20は水に濡れて起電力を発生するが、第一端子21a及び第二端子22aまで水に浸かると、これら端子に使用される金属のメッキ等が化学反応を起こし、第一端子21a及び第二端子22a側で電圧の変化が発生し得る。その結果、水電池20の電圧が低下することがある。つまり、第一端子21a及び第二端子22aが浸水するかしないかにより、発電量が異なってしまう虞がある。そこで、第二穴部12を第一端子21a及び第二端子22aと、第一穴部11との間に形成することにより、水電池20内に水が浸入しても、第一端子21a及び第二端子22aの位置まで水位が上昇することの回避を図っている。これにより、第一端子21a及び第二端子22a側での電圧降下に起因して水電池20の電圧が低下する虞を低減し、水電池20を長時間安定して動作させることを可能としている。
【0065】
ただ第一穴部11及び第二穴部12を開口する場所は、第一端子21a及び第二端子22aが水に浸かることを回避できれば特に限定されない。例えば、第一端子21a及び第二端子22aの下側近傍でなく、第一端子21a及び第二端子22aから若干離間していてもよい。さらに、第一穴部11及び第二穴部12を設ける数もそれぞれ1つに限定されず、2つ以上の任意の数とすることができる。なお、電池ケースの底面を開放する構成においては、電池ケースの底面を水採り入れ口とできるため、第一穴部を省略してもよい。
(外装ケース80)
【0066】
上述のような水感知センサ100は、そのまま設置場所に設置してもよいが、例えば、水感知センサ100を外装ケース80に収納して設置してもよい。
図10は水感知センサ100を収納した外装ケース80を示している。外装ケース80は、水感知センサ100を収納できれば任意の形状でよく、実施形態1では、水感知センサ100より若干大きい円筒状としている。また、水感知センサ100が発光体を備える場合は、発光体と対応する場所に開口部81を形成してもよい。さらに、外装ケース80の材料も、既存のものでよく、実施形態1では塩ビ管を使用している。このように水感知センサ100を外装ケース80に収納することにより、外部からの衝撃を緩和するようにしている。
[実施形態2]
(水感知センサ100C)
【0067】
実施形態1に係る水感知センサでは、水電池20と、発信機30を電池ケース10に収納する態様について説明した。ただ、本発明の水感知センサはこのような態様に限定されない。例えば、実施形態2に係る水感知センサ100Cは、水電池20を電池ケース10Cに収納し、発信機30を別部材として電池ケース10Cと離間した場所に設置している。水電池20と発信機30とを別部材とすることで、発信機30を異なる場所に設置可能となり、水感知センサ100Cの設置の自由度が高められる。また、水電池20と発信機30を別部材にすることにより、それぞれの部材の構成を簡素化でき、製造しやすく、コスト削減にも寄与し得る。
【0068】
図11は、水感知センサ100Cの一態様を示している。この図に示すように、複数の電池ケース10Cを水位を検出しようとする場所に上下方向に並べて設置している。そして、電池ケース10Cに含まれる水電池20を、ハーネス73Cを介して並列に接続している。ただ、水電池20は並列に接続される態様に限定されず、直列に接続してもよい。
【0069】
また、実施形態2では、発信機30だけでなく、昇圧回路40等を含む制御部50を、水電池20と別部材として、ケース10C’に収納し、水没しないように電池ケース10Cの上方に設置している。複数の電池ケース10Cに収納された水電池20は、ハーネス73Cを介して、制御部50と接続している。実施形態2の水感知センサ100Cは、実施形態1の水感知センサ100と異なり、複数の水電池20に対して1つの発信機30で対応している。これにより、部材の数を減らすことができ、構成の簡素化や製造コストの削減が可能となる。ただ、実施形態2の水感知センサ100Cは水電池を複数個備える態様に限定されない。水感知センサ100Cは水電池20を1つ備えるのみでもよい。
(電池ケース10C)
【0070】
実施形態2に係る水感知センサの電池ケース10Cは、水電池20を収納できる大きさであれば、正面視で矩形状、多角形状、楕円形状等、任意の形状とすることができる。また、板状やブロック状等とすることもできる。実施形態2の水感知センサで用いる電池ケース10Cは、
図12に示すように、正面視で概ね矩形状の中空の板状としている。電池ケース10Cが板状であると、水感知センサ100Cを設置する場所に電柱等がなくても、例えば、壁などの平面に容易に取り付けることができる。また、板状であるため、突出量も少なく、狭い場所にも設置しやすい。さらに、通行人等の邪魔にもなる虞も低減できる。
【0071】
電池ケース10Cは、既存の材料で作製でき、例えば、樹脂で作製されることが好ましい。電池ケース10Cを樹脂で作製することにより、全体的に軽量とすることができ、水に浸かっても錆びず、長期間使用することができる。ただ、電池ケース10Cは樹脂製に限定されず、ガラス等、防水性、耐候性のある絶縁材で作製してもよい。
【0072】
電池ケース10Cは、
図12に示す姿勢で設置した際、設置場所の設置面と対向する面、すなわち底部13Cを外部に開放した開放面としている。そして冠水発生時に、開放面とした底部13Cを介して電池ケース10Cの内部に水が侵入するようにしている。底部13Cは、一部が開放されていてもよいし、全部が開放されていてもよいが、実施形態2では底部13Cの概ね全部を開放している。底部13Cの概ね全部を開放することにより、電池ケース10C内部の通気性を高め、電池ケース10Cの内部及び水電池20を乾燥させやすくすることができる。ただ、電池ケース10Cは、底部を開放して水を内部に侵入させる態様に限定されない。例えば、スリットや穴等を開口して、電池ケース内部に水を侵入させてもよい。一方で、電池ケース10Cの上側の端部には、水電池20が制御部50と連結するために、ハーネス73Cの一端部が挿入されている。
【0073】
電池ケース10Cはさらに、表側となる主面14Cに2つの穴部16Cを形成している。2つの穴部16Cは、実施形態1の電池ケース10に形成された第二穴部12と同様に、空気穴として機能する。そこで、2つの穴部16cは、第一端子21a及び第二端子22aが配置された位置と対応する電池ケースの表面上の位置よりも下方に形成されるのが好ましい。これにより、電池ケース10Cの全体が水没しても、電池ケース10C内部の水位が穴部16Cより高くなることを抑制している。その結果、第一端子21a及び第二端子22aが水に浸かることで引き起こされる電圧降下に起因して、水電池20の電圧が低下する虞を低減することができる。
【0074】
穴部16Cを開口する場所は、第一端子21a及び第二端子22aが水に浸かることを回避できれば特に限定されない。例えば、正面視で水電池20と重ならない位置に開口することができる。これにより、冠水等が発生しない通常の降雨時に、雨が穴部16Cを介して水電池20に当たって起電力が発生し、水感知信号SGが誤発信される虞を低減することが可能となる。さらに、穴部16Cを設ける数も2つに限定されず、1つ又は3つ以上の任意の数とすることができる。
【0075】
この電池ケース10Cは、任意の態様により設置場所に取り付けることができる。例えば、電池ケース10Cの裏側の主面に粘着力の強い両面テープを貼って、設置面に接着してもよく、金具やバンド等を使用して取り付けてもよい。
(冠水検知方法)
【0076】
以下では、所定の領域で冠水が発生した際に水位を検出する冠水検知方法について説明する。まず、水電池20と、発信機30とを備える水感知センサ100又は100Cを準備する。この水電池20は、第一端子21aを有する板状の第一電極21と、第二端子22aを有し、第一電極21の、第一端子21aを除く主面21bを覆う第二電極22と、第一電極21と第二電極22との間に介在されて、第一電極21と第二電極22の間に空隙24を形成する絶縁部材23とを備える。
【0077】
そして、水電池20と発信機30を1つの電池ケース10に収納して、水感知センサ100を構成してもよい。この際、電池ケース10は、底部13を開放した中空の柱状とすることができる。また、水電池20と発信機30を別部材として、水電池20は電池ケース10Cに収納し、発信機30は別のケース10C’に収納して水感知センサ100Cを構成してもよい。電池ケース10Cも同様に、底部13Cを開放した中空の板状とすることができる。
【0078】
次に、水感知センサを設置場所に設置する。ここで、底部13を開放した中空の柱状である電池ケース10を含む水感知センサ100を設置面に設置する場合、水電池20の開放された底部13側、言い換えれば、底部13を開放した中空の柱状である電池ケース10に収納された水電池20が表出する面を設置場所の設置面から離間して取り付けるのが好ましい。離間させる間隔は任意の間隔でよく、例えば、5mm以上とできる。水感知センサ100の底部を設置場所の設置面と接触させて配置すると、水感知センサ100の底部13と、設置面との間に隙間がなくなってしまう。この状態で、冠水が発生した場合、水電池20内に水が侵入すると、侵入した水が電池内部から流出できず、電池内部に留まり続ける。
【0079】
このように電池内部の水が入れ替わらない状態で、水電池20が動作し続けると、水溶液の飽和により電池の化学反応が緩やかになり、発電量が低下して、発信機30の発信が停止してしまう虞がある。水感知センサ100を設置する際、電池ケース10の開放された底部13側を設置場所の設置面から離間して取り付けることにより、電池ケース10の底部側で水の流れが発生し、同じ水が内部に留まり続けることの回避を図っている。その結果、水溶液の飽和による電流量の低下の虞が低減できる。ただ、設置場所に応じて、水感知センサ100の底部13側を設置面と接触させて設置することもできる。
【0080】
同様に、底部13Cを開放した中空の板状である電池ケース10Cを設置面に設置する場合も、水電池20の開放された底部13C側、言い換えれば、底部13Cを開放した板状である電池ケース10Cに収納された水電池20が表出する面を設置場所の設置面から離間して取り付けるのが好ましい。離間させる間隔は任意の間隔でよく、例えば、5mm以上とできる。このような電池ケース10又は10Cの開放された底部13又は13Cは、水流を起こすことができれば、任意の大きさ、形状とすることができる。例えば、底部13又は13Cの全部を開放してもよいし、一部を開放してもよい。
【0081】
また、水感知センサ100又は100Cを設置する際、複数の水電池20を準備し、それぞれ異なる高さに設置してもよい。これにより、後述する水検知信号SGを外部に発信する工程において、複数の水電池20のいずれで冠水が検知されたかを発信機30で判別して出力することもできる。このように、異なる高さに設置した水電池20の冠水の有無を判別することで、どの高さで冠水が生じたか、すなわち水位の変化を検出することが可能となる。
【0082】
次に、所定の領域で冠水が発生すると、水感知センサ100又は100Cが浸水され、浸水により水感知センサ100又は100C内に侵入した水と反応することで水電池20が起電力を発生させる。
【0083】
このように発電された電気は、外気の温度が高い場合に発電量が増加し、該温度が低い場合に発電量が減少して電流量が安定しない。そこで、水電池20に接続されたキャパシタ41に蓄電する。そして、蓄電された電圧を昇圧回路40にて昇圧し、発信機30の駆動の安定化を図っている。
【0084】
水電池は通常、水温により電池の電流量が大きく変化する特性があり、水温が高い場合は発電量が増加し、低い場合は発電量が減少する。つまり、水温が低い場合、水電池20の浸水面積を大きくしなければ、発電量が不十分となってしまう。このため、水感知センサ100又は100Cが冠水時に水を感知しても、発信機30への電力供給が不十分なため、発信機30が水感知信号を発信できないことがある。一方で、水温が高ければ浸水部分が水電池20の端部から数mmでも発電することができる等、水温に応じて水電池20の動作が異なり安定した動作が困難な場合がある。
【0085】
そこで、水電池20で発電された電力を、一旦キャパシタ41に蓄えておき、駆動に必要な電力として発信機30に放電するようにしている。このように不足した電流量をキャパシタ41からの電力で補うことにより、冠水により水を感知した際、水温の高低に関わらず、安定して発信機30に電力を供給することを実現している。
【0086】
このように発信機30が電力供給を受けると、発信機30は、水を感知したこと示す水感知信号SGを外部に発信する。その後、水感知センサ100又は100Cの発信機30と通信可能な通信範囲内に設置された通信装置が、発信機30から水感知信号SGを収集し、水感知信号SGを送信する。次に、通信装置と離間した位置に設置されるエッジサーバが、通信装置から水感知信号SGを受信し、水感知信号SGに基づいて水位検出情報を生成する。そして、エッジサーバと離間した位置に設置されたクラウドサーバが、エッジサーバから水位検出情報を受信する。これにより、クラウドサーバと離間した位置に設置されたユーザ端末が、クラウドサーバから水位検出情報を受信することができる。その結果、ユーザは冠水の状況などの正確な情報をリアルタイムで把握することができる。なお、
図7の例では昇圧回路とキャパシタを個別に設けた回路例を示したが、本発明はこの回路構成に限定されない。例えば昇圧回路とキャパシタを一体的に構成してもよい。
【0087】
なお、従来の水電池では、吸水時にも、非常時の手動による発電開始を確実にするため極めて小さな吸水口からスポイド状の特殊器具を用いて手動による吸水を行う形式になっている。しかしながら、これでは自然環境での自律的な吸水により、発信機を起動させるに必要な容量の電力を安定的に得ることができないという問題があった。これに対して、実施形態に係る水感知センサで用いる上記の水電池では、安定的に水に浸して動作させ、かつ電力の安定化も実現される。
【解決手段】水を感知するための水感知センサ100は、電池ケース10と、電池ケース10に収納され、水と反応して起電力を生じさせることが可能な水電池20と、電池ケース10に収納され、水電池20から電力供給を受けて、水を感知したことを示す水感知信号SGを外部に発信可能な発信機30とを備える。また、水電池20は、第一端子21aを有する板状の第一金属で構成された第一電極21と、第一電極21の、第一端子21aを除く主面21bを覆った状態で、第一端子21aと対向する第二端子22aを有する、第一金属と異なる第二金属で構成された第二電極22と、第一電極21と第二電極22との間に介在され空隙24を形成している絶縁部材23とを備える。