特許第6851112号(P6851112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851112
(24)【登録日】2021年3月11日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】鉄道信号設備監視支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   B61L 25/06 20060101AFI20210322BHJP
   B61L 27/00 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   B61L25/06 Z
   B61L27/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-66683(P2017-66683)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-167701(P2018-167701A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2020年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207470
【氏名又は名称】大同信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106345
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 香
(72)【発明者】
【氏名】三林 健
(72)【発明者】
【氏名】門田 芳司
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−250684(JP,A)
【文献】 特開2009−234428(JP,A)
【文献】 特開平01−091549(JP,A)
【文献】 特開昭61−039743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 25/06
B61L 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道信号設備に取り付けた多数の検出器から設備状態情報を専用通信回線経由の順次ポーリング式通信にて収集する鉄道用監視装置のうち情報収集側の上位装置であって汎用通信回線を介して業務端末と通信しうるコンピュータにインストールされて前記コンピュータを、前記業務端末から前記汎用通信回線を介して前記の多数の検出器のうち何れかの検出器を対象にした情報要求が届くとそれを前記順次ポーリング式通信での情報収集に向けて転送する情報要求代行手段と、前記転送に対する一次応答を待って二次応答の有無を判別する一次応答処理手段と、前記二次応答を待ってそれに含まれている設備状態情報を前記汎用通信回線経由で前記業務端末へ返送する二次応答処理手段と、前記情報要求代行手段と前記一次応答処理手段と前記二次応答処理手段とのうち何れかが使用する情報を保持するデータ保持手段として機能させる鉄道信号設備監視支援プログラムにおいて、
前記情報要求の内容とその要求元特定情報とを前記データ保持手段の保持する情報要求リストに加えるとともに前記の多数の検出器のうち前記情報要求が対象にしている検出器と同じ検出器を対象とする先行情報要求が前記情報要求リストに含まれているときには前記情報要求を前記情報要求代行手段の転送対象から除外する要求集約手段と、前記情報要求リストにおいて要求対象の検出器が前記二次応答の応答元の検出器に合致する要求元を前記二次応答処理手段の返送対象に加える同報返送手段としても、前記コンピュータを機能させるようになっていることを特徴とする鉄道信号設備監視支援プログラム。
【請求項2】
前記データ保持手段の保持する蓄積情報リストに前記二次応答の内容を含める情報蓄積手段と、前記の多数の検出器のうち前記情報要求の対象と同一の検出器に係る設備状態情報である該当情報が前記蓄積情報リストに含まれているときには前記情報要求を前記情報要求代行手段の転送対象から除外するとともに前記該当情報を前記情報要求の要求元への返送対象に含める代用返送手段としても、前記コンピュータを機能させるようになっていることを特徴とする請求項1記載の鉄道信号設備監視支援プログラム。
【請求項3】
前記蓄積情報リストに含まれているデータのうち前記代用返送手段により繰り返して前記二次応答処理手段の返送対象にされたデータに係る新たな情報要求であって前記二次応答処理手段の返送対象から外れる更新情報要求を作成してそれを前記順次ポーリング式通信での情報収集に向けて送信する蓄積更新手段としても、前記コンピュータを機能させるようになっていることを特徴とする請求項2記載の鉄道信号設備監視支援プログラム。
【請求項4】
前記の多数の検出器のうち前記情報要求代行手段に届いた前記情報要求が対象にしている対象検出器について関連検出器として予め関連付けられている他の検出器を対象にした又は同一の検出器に係る残存部分の設備状態情報を対象にした新たな情報要求であって前記二次応答処理手段の返送対象から外れる関連情報要求を作成してそれを前記順次ポーリング式通信での情報収集に向けて送信する関連要求手段としても、前記コンピュータを機能させるようになっていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載された鉄道信号設備監視支援プログラム。
【請求項5】
前記の多数の検出器のうち前記情報要求代行手段に届いた前記情報要求が対象にしている対象検出器について関連検出器として予め関連付けられている他の検出器に係る設備状態情報または同一の検出器に係る残存部分の設備状態情報である関連情報が前記蓄積情報リストに含まれているときには前記関連情報を前記情報要求の要求元への返送対象に加える関連返送手段としても、前記コンピュータを機能させるようになっていることを特徴とする請求項2乃至請求項4の何れかに記載された鉄道信号設備監視支援プログラム。
【請求項6】
前記対象検出器が軌道回路に係るものであり前記関連検出器が前記軌道回路に隣接する軌道回路に係るものであることと、前記対象検出器が転てつ機に係るものであり前記関連検出器が前記転てつ機の属する軌道回路に係るものであることと、前記対象検出器が信号機に係るものであり前記関連検出器が前記信号機の内方の軌道回路に係るものであることとのうち何れか一つ又は複数のことが成立するようになっていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載された鉄道信号設備監視支援プログラム。
【請求項7】
前記対象検出器と前記関連検出器との関連付けについて互いを入れ替えても関連付けが維持される群状関連が成立するようになっていることを特徴とする請求項4乃至請求項6の何れかに記載された鉄道信号設備監視支援プログラム。
【請求項8】
転てつ機に係るものと前記転てつ機の属する軌道回路に係るものとに前記群状関連が成立することと、信号機に係るものと前記信号機の内方の軌道回路に係るものとに前記群状関連が成立することと、停車場構内にとられる進路に属する一連のものに前記群状関連が成立することとのうち何れか一つ又は複数のことが成立するようになっていることを特徴とする請求項7記載の鉄道信号設備監視支援プログラム。。
【請求項9】
前記データ保持手段が、前記対象検出器と前記関連検出器との関連付けに属するものを定めた関連情報リストに加えて、前記群状関連の成立する検出器群を定めた群状関連情報リストをデータ保持するようになっていることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載された鉄道信号設備監視支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道信号設備(鉄道の信号保安設備)を監視するための鉄道用監視装置(信号設備監視システムや信号設備集中監視システムとも呼ばれるが本願明細書では用語を鉄道用監視装置に統一する)における上位装置に組み込まれて監視機能を強化支援する鉄道信号設備監視支援プログラムに関する。
鉄道用監視装置は、保全・保守管理対象となる鉄道信号設備の要素をなす設備や機器(設備機器)に各種センサ(検出器)を取り付けておくとともに、処理装置を指令所(信号通信指令)や保守事務所(保守拠点,メンテナンスセンター)に設置して、上述の検出器(センサ)と上記の処理装置とを専用通信回線にてオンライン結合させて遠隔自動計測を行うことにより、鉄道信号設備の稼働状態を常時監視しうるシステムであり、上記の専用通信回線を介する順次ポーリング式の通信にて、上述した多数の検出器から設備状態情報(検出データ,測定データ)を収集して、その設備状態情報を、保守事務所の拠点端末(保守表示端末)や指令所の指令端末(指令表示端末)に画面表示等で提示することができる。
【0002】
鉄道用監視装置の典型例は、故障箇所の特定や故障原因の解析に資する設備状態情報を鉄道信号設備から取得して監視者に提示する定常状態監視装置や集中監視装置であるが、その特定や解析の機能に改良を加えた自動検査システムも鉄道用監視装置に該当する。
鉄道信号設備監視支援プログラムは、鉄道用監視装置に属する各装置のうち設備状態情報を収集される下位側でなく収集する上流側に属する上位装置にインストールされて使用されるプログラムであって、監視機能の強化支援のために、収集した設備状態情報をインターネット等の汎用通信回線を介して携帯端末等の業務端末に送信する機能を担う。
【背景技術】
【0003】
既存の鉄道用監視装置10は(例えば特許文献1,非特許文献1,2参照)、その典型例を挙げると(図11参照)、設備状態情報を収集される側の下位装置として検出器19と現場装置18と集約装置17とを具備するとともに、設備状態情報を収集する側の上位装置として伝送中央装置11と指令端末12と伝送集約装置13と拠点端末14と伝送拠点装置15とを具備している。
さらに、監視機能を強化支援した鉄道用監視装置(10+20)にあっては(例えば非特許文献3,図11参照)、それらに加え、設備状態情報を収集する側の上位装置の一つとして、ウェブサーバ20(鉄道信号設備監視支援装置)も具備している。
【0004】
下位装置について述べると、監視対象の鉄道信号設備が多数の駅に分散していることから、各駅の機器室や線路沿線の器具箱には検出器19が設置される。検出器19は、鉄道信号設備の要素をなす設備機器たとえば軌道回路や転てつ機(転てつ装置)などの夫々に対して付設され、それぞれの検出器19が付設先の設備機器に係る設備状態情報を取得して保持するようになっている。鉄道信号設備に属する代表的な幾つかの設備機器についてセンサ名称と設備状態情報の具体例を挙げると、軌道回路では軌道回路センサによって設備状態情報として局部電圧と軌道電圧と送電電流と位相差とが測定され、信号機では信号機センサによって設備状態情報として灯別に動作電流が測定され、電気転てつ機では電気転てつ機センサによって設備状態情報として転換時のモータ電圧と転換時のモータ電流と転換時間と制御リレー電圧が測定される。
【0005】
これらの設備状態情報については、運行する車両との関係でデータ値が大きく変動するという特徴がある。例えば、軌道回路では、そこに車両が進入するときと、そこから車両が進出するときには大きく変化するが、それ以外のときにはデータがほとんど変化しない。また、電気転てつ機では、転換動作する際の測定値が重要なので、電気転てつ機センサは、定位側・反位側への転換時の最新測定値をデータ保持するようになっている。さらに、鉄道信号設備の設備機器に障害(故障)などがあって、車両の運行がストップしている状態では、車両が移動しないので、設備状態情報のデータ値には変動がほとんど無い。
【0006】
そして、そのような設備状態情報のうち情報要求の対象になったものは、該当する検出器19から一連の下位装置18,17を介して伝送拠点装置15に送信されるが、それらの装置間に介在する専用通信回線は、線路近傍となることが多いので、2線式の半二重通信であり、その専用通信回線用の伝送線での通信速度が1200bps〜9600bpsと低速なうえ、その専用通信回線を用いる通信方式には伝送拠点装置15が各現場装置18を一つずつ順にアクセスして応答を求める旧式の順次ポーリング式(ポーリング・セレクティング方式)が採用されていて、2次局になっている現場装置18は自発的に情報を送信できないことから、例えば現場装置18や検出器19の総数がn台であると特定の現場装置18や検出器19への呼び掛けが行われるのはn回に1回の割合となるため、設備状態情報の収集は時間が掛かるものとなっている。
【0007】
上位装置について述べると、そのうち伝送拠点装置15は、多数の駅から幾つかに絞り込まれた主要駅に設置されており、上位装置のうち伝送集約装置13と拠点端末14は、通常一箇所〜数箇所の保守事務所に設置されており、上位装置のうち伝送中央装置11と指令端末12は、通常一箇所の指令所に設置されている。そして、保守事務所では、拠点端末14の操作に応じて伝送集約装置13が設備状態情報を要求するとともに、それに応じて返送されて来た設備状態情報を伝送集約装置13が受け取って拠点端末14の画面に表示するようになっている。また、指令所では、指令端末12の操作に応じて伝送中央装置11が設備状態情報を要求するとともに、それに応じて返送されて来た設備状態情報を伝送中央装置11が受け取って指令端末12の画面に表示するようになっている。
【0008】
さらに、そのような上位装置と上記の下位装置とを装備した鉄道用監視装置10では、上述した情報要求が、先ず伝送集約装置13から伝送拠点装置15へ送られ、あるいは伝送中央装置11から伝送集約装置13を介して伝送拠点装置15へ送られ、それから伝送拠点装置15によって、順次ポーリングでの順番を待たされてから時期が来ると、該当する現場装置18へ送信され、更に検出器19へ転送されるようになっている。
そして、その情報要求に応じて、対応する設備状態情報が、先ず検出器19から現場装置18へ送信され、更に伝送拠点装置15へ送信され、それから要求元の伝送集約装置13や伝送中央装置11へ上げられるようになっている。
【0009】
ウェブサーバ20は、指令端末12か拠点端末14の設置箇所に限定されていた設備状態情報の利用場所を補修現場等にまで拡張するために導入されたものであり、設備状態情報を収集する側の上位装置に仲間入りしたのが最近なので、ハードウェアには、インターネット等の汎用通信回線への接続機能を標準装備していて有線であれ無線であれ複数の携帯端末21(業務端末)とも通信しうるコンピュータが採用されており、それに鉄道信号設備監視支援プログラム30がインストールされている。
また、その導入に伴う既存の鉄道用監視装置10の変更をなるべく少なくするために、標準装備の有線の通信回線で拠点端末14とも結ばれ、拠点端末14を介して鉄道用監視装置10に対する設備状態情報の要求と収集を行うようにもなっている。
【0010】
なお、本明細書では、ウェブサーバ20にインストールされたプログラムの内容を説明する際、そのプログラムをウェブサーバ20が実行することによって具現化される処理やプロセスの内容を説明することで、プログラムの内容の説明を代替するので、ウェブサーバ20がプログラムに従って具体的な処理やプロセスを実行するのを、「プログラムにて…する」や、プログラムが「行う」とか単に「する」、といった簡略表現で記載する。
従来の鉄道信号設備監視支援プログラム30には(図11参照)、ウェブサーバ20を情報要求代行手段として機能させる情報要求代行プログラム31と、ウェブサーバ20を一次応答処理手段として機能させる一次応答処理プログラム32と、ウェブサーバ20を二次応答処理手段として機能させる二次応答処理プログラム33とが含まれている。それらのプログラム31〜33は、ウェブサーバ20のデータ保持メモリ34をデータ保持手段として機能させるようにもなっている。
【0011】
そして、携帯端末21から汎用通信回線を介して設備状態情報の要求が送信されて来ると、情報要求代行プログラム31にて、その情報要求を受け付けて、その情報要求をそのまま或いは適宜な電文形式変換等を施してから拠点端末14を介して伝送集約装置13へ転送することで、情報要求を仲介する。また、その情報要求に対応した一次応答が伝送集約装置13から拠点端末14を介して返送されて来ると、一次応答処理プログラム32にて、情報要求が伝送集約装置13によって受け付けられたか否かを判別して対処する。さらに、先の情報要求に対応した二次応答が伝送集約装置13から拠点端末14を介して返送されて来ると、二次応答処理プログラム33にて、それが情報要求に対応したものであれば、それに含まれている設備状態情報を携帯端末21へ転送することで、情報収集を仲介する。また、それらの処理中にアクセスするデータ例えば要求元の携帯端末21を特定するのに必要な情報等はデータ保持メモリ34に保存されるようになっている。
【0012】
このような鉄道用監視装置(10+20)について、先ず図12(a)のダイアグラムを参照しながら伝送拠点装置15と現場装置18や検出器19との通信状態を説明し、その後で、図12(b)のダイアグラムを参照しながら、携帯端末21から検出器19まで範囲を広げたときの通信状態を説明する。なお、多数個が設置されている現場装置18や検出器19について、それぞれの個体を特定するときには、その符号「18」や「19」の後ろにa,b,c,…,i,…,k,…,Nなどを付して識別する。
【0013】
伝送拠点装置15より下位の所では(図12(a)参照)、伝送拠点装置15によって順次ポーリングの各サイクル(周期)T1,T2,T3,…毎に現場装置18a,18b,18c,…,18i,…,18Nが順にアクセスされる(下向きの矢付き細線を参照)。このアクセスは、情報要求の無いときには、故障や異常が無いかという問い合わせ電文で行われ、アクセスされた現場装置18の下位の検出器19に故障等が有れば、その故障状態のデータを含めた電文が返送されることもあるが、アクセスされた現場装置18の下位の検出器19が総て正常であれば、アクセスされた現場装置18からその旨の応答として例えば「ACK」コードだけの空電文が伝送拠点装置15へ返送される(上向きの矢付き短破線を参照)。
【0014】
これに対し、指令端末12や拠点端末14から伝送拠点装置15に対して設備状態情報の要求が出されたときには、例えばサイクルT1において現場装置18iへのアクセスが終了した後の時刻TAに上記の情報要求が伝送拠点装置15に届いたとすると、その次のサイクルT2に属する時刻TBに伝送拠点装置15から現場装置18iへ情報要求が送信されて、その直後に現場装置18iから伝送拠点装置15へ情報要求が届いたことを報告する形式的な応答が返送される(上向きの太い矢付き長破線を参照)。
【0015】
その後、現場装置18iから検出器19iへ情報要求が送信され、それに応じて検出器19iから現場装置18iへ要求に応じた設備状態情報が返送され(上向きの太い矢付き実線を参照)、その設備状態情報が現場装置18iによって暫く保持される。
そして、次のサイクルT3に属する時刻TCに伝送拠点装置15から現場装置18iへ情報要求が送信されて、その直後に現場装置18iから伝送拠点装置15へ要求に応じた設備状態情報を含んだ実質的な応答が返送される(上向きの太い矢付き実線を参照)。
【0016】
このようにして、上位装置11〜15の情報要求に応じた設備状態情報が下位装置17〜19から返送されるが、上記の場合で、2サイクルより少し短い時間が掛かっており、時刻TA,TB間が一瞬まで縮まっても時刻TA,TC間は1サイクルまで縮まりきれないので、既存の鉄道用監視装置10は、基本的に一回当たりの情報収集に1サイクルより長く2サイクルより短い時間が掛かるものとなっている。
具体的には、順次ポーリングにおけるアクセスの間隔Sが100msなので、現場装置18の台数Nが“30”の場合、サイクル時間は3秒になり、上位装置が要求を出してから設備状態情報を得るまで3秒〜6秒の時間が掛かる。
【0017】
次に、このような鉄道用監視装置10にウェブサーバ20を付加して携帯端末21からも設備状態情報を収集できるようになった鉄道用監視装置(10+20)では、複数台の携帯端末21から汎用通信回線を介してウェブサーバ20へ順不同で情報要求が来る。
ここでは、具体例として(図12(b)参照)、サイクルT1の間に、携帯端末21aから検出器19iへの情報要求と(矢付き実線を参照)、携帯端末21bから検出器19kへの情報要求と(矢付き一点鎖線を参照)、携帯端末21cから検出器19iへの情報要求とが(矢付き二点鎖線を参照)、ウェブサーバ20に届いた場合を想定し、そのときの通信状況を説明する。
【0018】
なお、既存の鉄道用監視装置10は、指令端末12や拠点端末14といった少数の端末の手動操作による情報要求を処理することを念頭において開発された旧いシステムであることから、一つの検出器19について同時に複数の情報要求を処理することができるようにはなっていない。そのため、ウェブサーバ20は、同じ検出器19に対して複数の携帯端末21から情報要求が届いたときには、とりあえず情報要求を受け付けて拠点端末14を介して伝送集約装置13へ転送するが、その情報要求を拠点端末14経由で受け取った伝送集約装置13からウェブサーバ20への一次応答(情報要求を受け付けたか否かの形式的な応答)によって、そのときの情報要求が伝送集約装置13によって受け付けられなかったと判明すると、その旨の報告を携帯端末21に返送して、そのときの情報要求の処理を終えるようになっている。これに対し、一次応答にて伝送集約装置13の要求受付が判明すると、更に伝送集約装置13からウェブサーバ20への二次応答(設備状態情報を含んだ実質的な応答)が届くのを待ち、それに含まれている設備状態情報を要求元の携帯端末21に返送して、情報要求の処理を終えるようになっている。
【0019】
そのため、例えば、サイクルT1において、最も早く届いた携帯端末21aから検出器19iへの情報要求と(矢付き実線を参照)、それとは異なる検出器19kに対する携帯端末21bからの情報要求と(矢付き一点鎖線を参照)、それより遅いうえに先のものと同じ検出器19iに対する携帯端末21cからの情報要求とが(矢付き二点鎖線を参照)、ウェブサーバ20から拠点端末14を介して伝送集約装置13へ転送されると、要求先の検出器19i,19kが異なる二つの情報要求は伝送集約装置13によって受け付けられて更に伝送拠点装置15へ転送されるが、検出器19iに係る後の情報要求は伝送集約装置13によって受け付けられないため、その旨の一次応答を受け取ったウェブサーバ20から要求元の携帯端末21cへ、他の情報要求の処理中で対応できない旨の電文が返送されるので(×印の所を参照)、携帯端末21cでは、欲しかった設備状態情報でなく、例えば数分等の適度な時間経過後の再要求を促すメッセージが表示される。
【0020】
そして、その後の例えばサイクルT2に、伝送拠点装置15から現場装置18iへ情報要求が送信され、それが検出器19iに転送されて、現場装置18iに設備状態情報が返送される(矢付き実線を参照)。また、例えば同じサイクルT2における別のアクセス時に(矢付き一点鎖線を参照)、伝送拠点装置15から現場装置18kへ情報要求が送信され、それが検出器19kに転送されて、現場装置18kに設備状態情報が返送される。それから後の例えばサイクルT3に、検出器19iの設備状態情報が現場装置18iから伝送拠点装置15へ上げられ更に二次応答に含められてウェブサーバ20へ引き渡されてから携帯端末21aに送信される(矢付き実線を参照)。また、検出器19kの設備状態情報が現場装置18kから伝送拠点装置15へ上げられ更に二次応答に含められてウェブサーバ20へ引き渡されてから携帯端末21bに送信される(矢付き一点鎖線を参照)。
【0021】
こうして、情報要求の対象である検出器19とその現場装置18とが異なる携帯端末21a,21bからの情報要求は時間差があるものの並行処理されるが、携帯端末21aと同じ検出器19iを対象にしている携帯端末21cからの情報要求は、携帯端末21aからの情報要求の処理が完了するまで受け付けられず(サイクルT3における矢付き二点鎖線と×印を参照)、その後の例えばサイクルT4になって初めて受け付けられ(細い矢付き二点鎖線を参照)、更に後の例えばサイクルT6に至って携帯端末21cも検出器19iの設備状態情報を受け取ることができる(太い矢付き二点鎖線を参照)。
【0022】
このような鉄道用監視装置(10+20)による設備状態情報の収集状況に基づいて、鉄道信号設備監視支援プログラム30をインストールしたウェブサーバ20の具体的な機能を、フローチャートを引用して説明する(図13参照)。なお、このフローチャートは、情報要求代行プログラム31と一次応答処理プログラム32と二次応答処理プログラム33とが順に繰り返し実行される逐次処理タイプで記載されているが、マルチタスク管理機能を持ったOS下では上記プログラム31〜33が並行的に実行される。
【0023】
先ず、ウェブサーバ20は、情報要求代行プログラム31にて、携帯端末21から情報要求が送信されて来るのを待って(ステップS11)、情報要求が届くとそれを受け付け(ステップS12)、それから、その受け付けた情報要求を形式変換等が要らなければそのままで形式変換等が必要なら適切な処理を施してから拠点端末14を介して伝送集約装置13へ転送するようになっている(ステップS13)。
【0024】
それから、ウェブサーバ20は、一次応答処理プログラム32にて、伝送集約装置13から拠点端末14を介して一次応答が送られてくるのを時間切れまで待って(ステップS21の無,S22のNo)、時間切れまで待ち続けても一次応答が無ければ(ステップS21の無,S22のYes)、要求元の携帯端末21へ「無応答」の電文を返送して(ステップS23)、一つの情報要求の処理を終えるようになっている。
【0025】
また、ウェブサーバ20は、一次応答処理プログラム32にて、時間切れ前に一次応答が有っても(ステップS21の有)、その一次応答によって伝送集約装置13が情報要求を受け付けなかったことが判明したときには(ステップS24のNo)、要求元の携帯端末21へ「ビジー」の電文を返送して(ステップS25)、やはり一つの情報要求の処理を終えるようになっている。
【0026】
これに対し、ウェブサーバ20は、やはり一次応答処理プログラム32にて、上記の一次応答によって伝送集約装置13が情報要求を受け付けたことが情報受取プログラム33にて判明したときには(ステップS24のYes)、要求元の携帯端末21へ「要求受付」の電文を返送するとともに(ステップS26)、要求元の携帯端末21を特定しうる情報である要求元特定情報を後の利用に備えてデータ保持メモリ34に保存しておくようになっている(ステップS27)。
【0027】
それから、ウェブサーバ20は、二次応答処理プログラム33にて、伝送拠点装置15の収集した設備状態情報を含む二次応答が伝送集約装置13から拠点端末14を介して送られてくるのを待ち(ステップS31の無)、二次応答が送られてくると(ステップS31の有)、それを受け取ってそれに含まれている応答データを取得し(ステップS32)、その応答データの機器情報と保存中の要求元特定情報とを照合する等のことで、その応答データの内容が情報要求に対応した適切なものであるか否かを判定して(ステップS33)、対応していなければ無視するが(ステップS33のNo)、対応していれば(ステップS33のYes)、応答データから設備状態情報を抽出して、その設備状態情報を要求元の携帯端末21へ返送して(ステップS34)、一つの情報要求の処理を終えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】特開2007−261551号公報
【非特許文献】
【0029】
【非特許文献1】「鉄道信号一般」改訂版(社)日本鉄道電気技術協会発行、平成17年3月18日、p.131
【非特許文献2】「踏切保安装置」第4版(社)日本鉄道電気技術協会発行、平成9年10月30日、p.91、図2−80
【非特許文献3】大同技報「DAIDO 140号」第1〜5頁、大同信号株式会社2015年(平成27年)6月発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
このような鉄道信号設備監視支援プログラム30を搭載したウェブサーバ20(鉄道信号設備監視支援装置)を既設の鉄道用監視装置10に付設した鉄道用監視装置(10+20)では、既存の鉄道用監視装置10のシステム構成上、監視機能強化支援用の携帯端末21を使用して設備状態情報を要求したときに、既に指令端末12や他の携帯端末21から同じ検出器19に対して情報要求が出ていると、先の情報要求の処理が完了するまで後の情報要求が受け付けられないという制約があるものの、鉄道用監視装置10しかなかったときには現場から離れている保守事務所や指令所といった特定拠点でしか見られなかった設備状態情報が、ウェブサーバ20に無線接続される携帯端末21を使用することで、現場の近くなど概ね任意の場所で見られるようになっており、現場で鉄道信号設備を保守する作業者等が鉄道電話等で特定拠点の監視者に問い合わせるまでもなく個々に欲しい設備状態情報を自由に調べて確認することができるため、試験運用では好評を得ている。
【0031】
しかしながら、本格的な実用化を目指すに当たっては、試験運用の参加者より多くの者が個々に保持した携帯端末21(業務端末)をほぼ同時期に使用することが想定されるので、上記の制約をクリアする必要がある。すなわち、鉄道用監視装置(10+20)が最も多くの携帯端末21からアクセスされるのは、現場の設備機器が故障状態や異常状態になって列車の運行に影響が及ぶような状況下で、多数の作業者等が現場に駆けつけて一時でも早く設備状態を確認したいときであり、そのときには、情報要求の対象が目星を付けられた特定の又は少数の設備機器に集中しがちなので、上記の制約による不所望な影響が過大になることが想定されるため、その影響を緩和・軽減することが求められる。
そこで、情報要求の並行処理の制約下でも多数の者が並列的に設備状態情報を確認できるように鉄道信号設備監視支援プログラムを改良することが技術課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明の鉄道信号設備監視支援プログラムは(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、
鉄道信号設備に取り付けた多数の検出器から設備状態情報を専用通信回線経由の順次ポーリング式通信にて収集する鉄道用監視装置のうち情報収集側の上位装置であって汎用通信回線を介して業務端末と通信しうるコンピュータにインストールされて前記コンピュータを、前記業務端末から前記汎用通信回線を介して前記の多数の検出器のうち何れかの検出器を対象にした情報要求が届くとそれを前記順次ポーリング式通信での情報収集に向けて転送する情報要求代行手段と、前記転送に対する一次応答を待って二次応答の有無を判別する一次応答処理手段と、前記二次応答を待ってそれに含まれている設備状態情報を前記汎用通信回線経由で前記業務端末へ返送する二次応答処理手段と、前記情報要求代行手段と前記一次応答処理手段と前記二次応答処理手段とのうち何れかが使用する情報を保持するデータ保持手段として機能させる鉄道信号設備監視支援プログラムにおいて、
前記情報要求の内容とその要求元特定情報とを前記データ保持手段の保持する情報要求リストに加えるとともに前記の多数の検出器のうち前記情報要求が対象にしている検出器と同じ検出器を対象とする先行情報要求が前記情報要求リストに含まれているときには前記情報要求を前記情報要求代行手段の転送対象から除外する要求集約手段と、前記情報要求リストにおいて要求対象の検出器が前記二次応答の応答元の検出器に合致する要求元を前記二次応答処理手段の返送対象に加える同報返送手段としても、前記コンピュータを機能させるようになっていることを特徴とする。
【0033】
また、本発明の鉄道信号設備監視支援プログラムは(解決手段2)、上記解決手段1の鉄道信号設備監視支援プログラムであって、
前記データ保持手段の保持する蓄積情報リストに前記二次応答の内容を含める情報蓄積手段と、前記の多数の検出器のうち前記情報要求の対象と同一の検出器に係る設備状態情報である該当情報が前記蓄積情報リストに含まれているときには前記情報要求を前記情報要求代行手段の転送対象から除外するとともに前記該当情報を前記情報要求の要求元への返送対象に含める代用返送手段としても、前記コンピュータを機能させるようになっていることを特徴とする。
【0034】
さらに、本発明の鉄道信号設備監視支援プログラムは(解決手段3)、上記解決手段2の鉄道信号設備監視支援プログラムであって、
前記蓄積情報リストに含まれているデータのうち前記代用返送手段により繰り返して前記二次応答処理手段の返送対象にされたデータに係る新たな情報要求であって前記二次応答処理手段の返送対象から外れる更新情報要求を作成してそれを前記順次ポーリング式通信での情報収集に向けて送信する蓄積更新手段としても、前記コンピュータを機能させるようになっていることを特徴とする。
【0035】
また、本発明の鉄道信号設備監視支援プログラムは(解決手段4)、上記解決手段2,3の鉄道信号設備監視支援プログラムであって、
前記の多数の検出器のうち前記情報要求代行手段に届いた前記情報要求が対象にしている対象検出器について関連検出器として予め関連付けられている他の検出器を対象にした又は同一の検出器に係る残存部分の設備状態情報を対象にした新たな情報要求であって前記二次応答処理手段の返送対象から外れる関連情報要求を作成してそれを前記順次ポーリング式通信での情報収集に向けて送信する関連要求手段としても、前記コンピュータを機能させるようになっていることを特徴とする。
【0036】
また、本発明の鉄道信号設備監視支援プログラムは(解決手段5)、上記解決手段2〜4の鉄道信号設備監視支援プログラムであって、
前記の多数の検出器のうち前記情報要求代行手段に届いた前記情報要求が対象にしている対象検出器について関連検出器として予め関連付けられている他の検出器に係る設備状態情報または同一の検出器に係る残存部分の設備状態情報である関連情報が前記蓄積情報リストに含まれているときには前記関連情報を前記情報要求の要求元への返送対象に加える関連返送手段としても、前記コンピュータを機能させるようになっていることを特徴とする。
【0037】
また、本発明の鉄道信号設備監視支援プログラムは(解決手段6)、上記解決手段4,5の鉄道信号設備監視支援プログラムであって、
前記コンピュータにおいて、前記対象検出器が軌道回路に係るものであり前記関連検出器が前記軌道回路に隣接する軌道回路に係るものであることと、前記対象検出器が転てつ機に係るものであり前記関連検出器が前記転てつ機の属する軌道回路に係るものであることと、前記対象検出器が信号機に係るものであり前記関連検出器が前記信号機の内方(信号機が防護している方向,信号機の現示が見える方向である外方とは逆の方向)の軌道回路に係るものであることとのうち何れか一つ又は複数のことが成立するようになっていることを特徴とする。
【0038】
また、本発明の鉄道信号設備監視支援プログラムは(解決手段7)、上記解決手段4〜6の鉄道信号設備監視支援プログラムであって、
該プログラムをインストールされた前記コンピュータにおいて、前記対象検出器と前記関連検出器との関連付けについて互いを入れ替えても関連付けが維持される群状関連が成立するようになっていることを特徴とする。
【0039】
また、本発明の鉄道信号設備監視支援プログラムは(解決手段8)、上記解決手段7の鉄道信号設備監視支援プログラムであって、
該プログラムをインストールされた前記コンピュータにおいて、転てつ機に係るものと前記転てつ機の属する軌道回路に係るものとに前記群状関連が成立することと、信号機に係るものと前記信号機の内方の軌道回路に係るものとに前記群状関連が成立することと、停車場構内にとられる進路に属する一連のものに前記群状関連が成立することとのうち何れか一つ又は複数のことが成立するようになっていることを特徴とする。
【0040】
また、本発明の鉄道信号設備監視支援プログラムは(解決手段9)、上記解決手段7,8の鉄道信号設備監視支援プログラムであって、
該プログラムをインストールされた前記コンピュータにおいて、前記データ保持手段が、前記対象検出器と前記関連検出器との関連付けに属するものを定めた関連情報リストに加えて、前記群状関連の成立する検出器群を定めた群状関連情報リストをデータ保持するようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0041】
このような本発明の鉄道信号設備監視支援プログラムを上位装置にインストールした鉄道用監視装置にあっては(解決手段1)、同一の検出器に対して情報要求が重複したときにはその検出器に係る情報収集が要求集約手段によって先行収集に絞り込まれるため、後行収集が省かれて専用通信回線の混雑が回避される。
しかも、先行収集の遂行後は、二次応答処理手段と同報返送手段とによって、先に情報要求を出した業務端末に加えて後から情報要求を出した業務端末にも収集情報が返送されるので、業務端末は従来と同じか短い待ち時間で情報を取得することができる。
したがって、この発明によれば、情報要求の並行処理が制約されている環境の下でも多数の者が並列的に設備状態情報を確認できる鉄道用監視装置を鉄道信号設備監視支援プログラムの改良にて実現することができる。
【0042】
また、本発明の鉄道信号設備監視支援プログラムを上位装置にインストールした鉄道用監視装置にあっては(解決手段2)、情報蓄積手段によって二次応答の内容すなわち収集済み情報が蓄積情報リストに蓄積されるとともに、情報要求に対応した情報が既に蓄積情報リストに含まれているときには、その収集済み情報が代用返送手段と二次応答処理手段とによって要求元へ返送されるので、同一の検出器に対する情報要求に時間差が有っても、業務端末は速やかに情報を取得することができる。
しかも、そのような代用によって不要になった専用通信回線での情報収集は代用返送手段と情報要求代行手段とによって省かれるので専用通信回線の混雑が更に回避される。
【0043】
さらに、本発明の鉄道信号設備監視支援プログラムを上位装置にインストールした鉄道用監視装置にあっては(解決手段3)、業務端末から繰り返して要求された情報については蓄積更新手段によって蓄積情報リストの該当情報が適宜更新されるようにしたことにより、専用通信回線の負担を抑えつつ情報の陳腐化を回避することができる。
【0044】
また、本発明の鉄道信号設備監視支援プログラムを上位装置にインストールした鉄道用監視装置にあっては(解決手段4)、或る検出器に係る先の情報要求に後続して他の検出器についても情報要求が出される可能性が高いと予め見込まれる場合、関連検出器として予め関連付けられている他の検出器についても関連要求手段によって予め情報収集が行われ、それが後の代用に備えて二次応答処理手段により蓄積情報リストに含められるので、専用通信回線の混雑回避と業務端末への迅速応答とが共に改善されることとなる。
【0045】
また、本発明の鉄道信号設備監視支援プログラムを上位装置にインストールした鉄道用監視装置にあっては(解決手段5)、対象検出器の設備状態情報だけでなく蓄積情報リストに関連情報が有ればそれも加えて要求元へ返送されるので、専用通信回線の混雑を回避しつつ、関連検出器についても速やかに業務端末が情報を取得することができる。
【0046】
また、本発明の鉄道信号設備監視支援プログラムを上位装置にインストールした鉄道用監視装置にあっては(解決手段6)、軌道回路とそれに隣接する軌道回路や、転てつ機とそこの軌道回路、信号機とその内方の軌道回路は、故障や異常の発生に関して相互依存性が高いことから、予め関連付けしておくことで、事前の情報収集の効果が高まる。
【0047】
また、本発明の鉄道信号設備監視支援プログラムを上位装置にインストールした鉄道用監視装置にあっては(解決手段7,8)、相互に関連し合う検出器群については何れかが情報収集の対象になると他の検出器も漏れなく情報収集の対象になるので、事前の情報収集の効果が更に高まる。
【0048】
また、本発明の鉄道信号設備監視支援プログラムを上位装置にインストールした鉄道用監視装置にあっては(解決手段9)、一方向的・一方的な関連付けを定める関連情報リストに加えて、双方向的・多方向的・相互的な群状関連情報リストも導入したことにより、関連情報リストだけでは漏れなく関連付けるのが面倒な検出器群についても、容易かつ的確に関連付けを定めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本発明の実施例1について、鉄道信号設備監視支援プログラムの概要構成を示す機能ブロック図である。
図2】関連情報リストのデータ構造とデータ例を示し、(a)がリスト全体のデータ構造、(b)が軌道回路の記号図とその関連情報に係る部分のデータ例、(c)が転てつ機および軌道回路の記号図とその転てつ機を対象にした関連情報に係る部分のデータ例、(d)が,信号機および内方軌道回路の記号図と,その信号機を対象にした関連情報に係る部分のデータ例と,その内方軌道回路を対象にした関連情報に係る部分のデータ例である。
図3】代用返送プログラムや,要求集約プログラムの構成例を示すフローチャートである。
図4】情報蓄積プログラムや,関連返送プログラム,同報返送プログラムの構成例を示すフローチャートである。
図5】蓄積更新プログラムの構成例を示すフローチャートである。
図6】関連要求プログラムの構成例を示すフローチャートである。
図7】実施例1の鉄道信号設備監視支援プログラムを導入した鉄道用監視装置の動作状態を示す通信ダイアグラムである。
図8】本発明の実施例2について、(a)が鉄道信号設備監視支援プログラムの概要構成を示す機能ブロック図、(b)が群状関連情報リストの全体的なデータ構造、(c)が信号機と内方軌道回路とに係る部分の群状関連情報のデータ例である。
図9】本発明の実施例3について、(a)が鉄道信号設備監視支援プログラムの概要構成を示す機能ブロック図、(b)が軌道回路と信号機の記号図、(c)が群状関連情報リストにおける該当部分のデータ例、(d)が展開前の関連情報リストにおける該当部分のデータ例、(e)が展開後の関連情報リストにおける該当部分のデータ例である。
図10】本発明の実施例4について、(a)が停車場構内の一部経路の記号図であり、(b)が二つの進路に係る群状関連情報のデータ例である。
図11】典型的な鉄道用監視装置と従来の鉄道信号設備監視支援プログラムの構成を示す概要ブロックである。
図12】(a)が上位の伝送拠点装置と下位の現場装置等との通信状態を示すダイアグラムであり、(b)が携帯端末から検出器まで広げた範囲の通信状態を示すダイアグラムである。
図13】従来の鉄道信号設備監視支援プログラムの処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
このような本発明の鉄道信号設備監視支援プログラムについて、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1〜4により説明する。
図1図7に示した実施例1は、上述した解決手段1〜8(出願当初の請求項1〜8)を具現化したものであり、図8に示した実施例2と、図9に示した実施例3と、図10に示した実施例4は、上述した解決手段9(出願当初の請求項9)を具現化したものである。
なお、それらの図示に際し従来と同様の構成要素には同一の符号を付して示したので、また、それらについて背景技術の欄で述べたことは以下の各実施例についても共通するので、重複する再度の説明は割愛し、以下、従来との相違点を中心に説明する。
【0051】
また、既述したように、以下の各実施例の説明においても、プログラムの内容を簡略表現にて記載する。すなわち、ウェブサーバ20にインストールされたプログラムの内容を説明する際、そのプログラムをウェブサーバ20が実行することによって具現化される処理やプロセスの内容を説明することで、プログラムの内容の説明を代替するので、ウェブサーバ20がプログラムに従って具体的な処理やプロセスを実行するのを、「プログラムにて…する」や、プログラムが「行う」とか単に「する」、などと記載する。
【実施例1】
【0052】
本発明の鉄道信号設備監視支援プログラムの実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図1は、鉄道信号設備監視支援プログラム40の概要構成を示す機能ブロック図であり、鉄道用監視装置10などウェブサーバ20以外の構成は簡略化している。
【0053】
また、図2は、関連情報リスト53のデータ構造とデータ例を示し、(a)がリスト全体のデータ構造、(b)が軌道回路の記号図とその関連情報に係る部分のデータ例、(c)が転てつ機および軌道回路の記号図とその転てつ機を対象にした関連情報に係る部分のデータ例、(d)が,信号機および内方軌道回路の記号図と,その信号機を対象にした関連情報に係る部分のデータ例と,その内方軌道回路を対象にした関連情報に係る部分のデータ例である。
【0054】
さらに、図3は、代用返送プログラム45や要求集約プログラム43の構成例を示すフローチャートであり、図4は、情報蓄積プログラム46や関連返送プログラム49更には同報返送プログラム44の構成例を示すフローチャートであり、図5は、蓄積更新プログラム47の構成例を示すフローチャートであり、図6は、関連要求プログラム48の構成例を示すフローチャートである。
【0055】
鉄道信号設備監視支援プログラム40は(図1参照)、既述した鉄道信号設備監視支援プログラム30を改造して機能を強化したものであり、やはり既述した鉄道用監視装置(10+20)のウェブサーバ20にインストールして使用されるようになっている。
鉄道信号設備監視支援プログラム40が既述の鉄道信号設備監視支援プログラム30と相違するのは、既述した情報要求代行プログラム31が新たな情報要求代行プログラム41になった点と、既述した二次応答処理プログラム33が新たな二次応答処理プログラム42になった点と、新たなプログラム47,48が追加された点と、新たなデータ51〜54がデータ保持メモリ34にデータ保持されるようになった点である。
【0056】
すなわち(図1参照)、鉄道信号設備監視支援プログラム40は、そのまま引き継がれた一次応答処理プログラム32と、既述の情報要求代行プログラム31に新たな要求集約プログラム43と代用返送プログラム45とが付加された情報要求代行プログラム41と、既述の二次応答処理プログラム33に新たな同報返送プログラム44と情報蓄積プログラム46と関連返送プログラム49とが付加された二次応答処理プログラム42と、新たな蓄積更新プログラム47と、新たな関連要求プログラム48とを備えている。
また、データ保持メモリ34には、新たな情報要求リスト51と蓄積情報リスト52と関連情報リスト53とがデータ保持されるようになっている。しかも、その関連情報リスト53のうちの一部が群状関連情報54に該当するものとなっている。
【0057】
既述したように、情報要求代行プログラム31は(情報要求代行手段)、携帯端末21(業務端末)から汎用通信回線を介して多数の検出器19,…,19のうち何れかの検出器19を対象にした情報要求が届くとそれを拠点端末14に引き渡すことで専用通信回線利用の順次ポーリング式通信での情報収集に向けて転送する処理を担い、一次応答処理プログラム32は(一次応答処理手段)、その転送に対する伝送集約装置13からの一次応答を待って二次応答の有無を判別する処理を担い、二次応答処理プログラム33は(二次応答処理手段)、その二次応答を待ってそれに含まれている設備状態情報を上記の汎用通信回線経由で要求元の携帯端末21へ返送する処理を担うようになっている。
【0058】
情報要求リスト51は、詳細な図示を割愛したが、多数のレコード(記録単位,登録単位)を連ねうるデータ群であり、リスト内の各レコードに、要求対象の検出器19の特定情報や要求受取時刻のタイムスタンプといった情報要求の内容と、その情報要求を出した携帯端末21を特定する要求元特定情報とを組データにして保持するようになっている。
蓄積情報リスト52は、これも詳細な図示を割愛したが、やはり多数のレコード(記録単位,登録単位)を連ねうるデータ群であり、リスト内の各レコードに、一つの検出器19について既に収集した設備状態情報と、収集時刻データとを組にして保持するようになっている。これらの情報要求リスト51と蓄積情報リスト52は、鉄道信号設備監視支援プログラム40の実行によって随時更新されるものである。
【0059】
関連情報リスト53は(図2参照)、やはり多数のレコード(記録単位,登録単位)を連ねうるデータ群であり、リスト内の各レコード53b,53c,53d,54c,54dに(図2(a)参照)、携帯端末21から届いた情報要求の対象になった或いは対象になりうる対象検出器を多数の検出器19,…,19のうちから一つ特定する情報である対象検出器Idと、その対象検出器について関連検出器として予め関連付けられている他の検出器を多数の検出器19,…,19のうちから一つ特定する関連検出器Idを関連付けの個数だけ並べたデータとを、組にして保持している。この関連付けは、対象検出器に係る鉄道信号設備を調べた後に関連検出器に係る鉄道信号設備も調べる頻度が高いといった関連性が両検出器の間に存在する場合や存在が予想される場合になされ、関連情報リスト53は、鉄道信号設備監視支援プログラム40の実行前か初期に設定されて、鉄道信号設備監視支援プログラム40の定常的な実行時には専ら参照されることになる。
【0060】
関連情報リスト53に含められるレコードの典型例を挙げると、軌道回路については、対象検出器が当該軌道回路に係るものであるときにはそれに隣接する軌道回路が関連検出器に係るものとされ、分岐路に係るレコード53bの場合(図2(b)参照)、対象検出器Idの欄には当該軌道回路に係る検出器19のId(識別情報)が設定され、分岐先が三つであるのに対応して三つの関連検出器Idの欄には隣接軌道回路1,2,3それぞれに係る検出器19,19,19のIdが設定される。このレコード53bは、対象検出器から関連検出器への一方向的な関係を規定したものとなっている。
【0061】
また、転てつ機については、対象検出器が転てつ機に係るものであるときにはその転てつ機の属する軌道回路が関連検出器に係るものとされ、そのレコード53cの場合(図2(c)参照)、対象検出器Idの欄には当該転てつ機に係る検出器のIdが設定され、通常は一つだけ設けられる又は規定される関連検出器Idの欄には当該軌道回路に係る検出器19のIdが設定される。しかも、この例では、転てつ機に続けて軌道回路を調べる頻度だけでなく軌道回路に続けて転てつ機を調べる頻度も高いとの想定から、逆向きのレコード54cも設けられて、対象検出器Idの欄には当該軌道回路に係る検出器のIdが設定され、関連検出器Idの欄には当該転てつ機に係る検出器19のIdが設定される。
【0062】
さらに、信号機については、対象検出器が信号機に係るものであるときにはその信号機の内方の軌道回路が関連検出器に係るものとされ、そのレコード53dの場合(図2(d)参照)、対象検出器Idの欄には当該信号機に係る検出器のIdが設定され、通常は一つだけ設けられる又は規定される関連検出器Idの欄には内方軌道回路に係る検出器19のIdが設定される。しかも、この例では、信号機に続けて内方軌道回路を調べる頻度だけでなく内方軌道回路に続けて信号機を調べる頻度も高いとの想定から、逆向きのレコード54dも設けられて、対象検出器Idの欄には内方軌道回路に係る検出器のIdが設定され、関連検出器Idの欄には当該信号機に係る検出器19のIdが設定される。
【0063】
このような転てつ機と信号機に係る関連情報については(図2(c),(d)参照)、転てつ機や信号機に係る対象検出器から軌道回路に係る関連検出器への一方向的な関係を規定したレコード53c,53dに加え、軌道回路に係る対象検出器から転てつ機や信号機に係る関連検出器への対向的な関係を規定したレコード54c,54dも、関連情報リスト53に含まれており、関連情報リスト53のうち該当レコード群53c,53d,54c,54dの群状関連情報54については、部分対象検出器と関連検出器との関連付けについて互いを入れ替えても関連付けが維持される群状関連が成立している。すなわち、転てつ機に係るものとその転てつ機の属する軌道回路に係るものとに群状関連が成立するとともに、信号機に係るものとその信号機の内方の軌道回路に係るものとにも群状関連が成立している。なお、レコード54c,54dについては、図示を割愛した他の関連検出器Idのアイテム(項目)欄に隣接軌道回路に係るものが設定されるのが望ましい。
【0064】
要求集約プログラム43は(要求集約手段,図3参照)、この例では、既述した情報要求代行プログラム31における情報要求の受付処理(ステップS12)と情報要求の転送処理(ステップS13)との間に挿入する態様で作成されている(ステップS431〜S433)。具体的には、携帯端末21から情報要求を受け付けた後(ステップS11,S12→ステップS431)、その情報要求の内容たとえば設備状態情報要求対象の検出器のId等と、その要求元の携帯端末21を特定するための特定情報などとを合わせて一レコード(記録単位,登録単位)を構成し、そのレコードを情報要求リスト51に加えることでデータ保持メモリ34に保持するようになっている(ステップS431)。
【0065】
それから、要求集約プログラム43は(図3参照)、情報要求リスト51を検索して、直前に情報要求リスト51へ付加したレコード以外で、それと同じ検出器を対象とした情報要求のレコードが存在しているか否かを調べる(ステップS432)。これにより、多数の検出器19,…,19のうち直前の情報要求が対象にしている検出器と同じ検出器を対象とする先行情報要求が情報要求リスト51に含まれているか否かが分かるので、含まれていないときには(ステップS432無)、情報要求代行プログラム31の転送処理へ移行するようになっている(ステップS13)。
【0066】
さらに、要求集約プログラム43は(図3参照)、同じ検出器を対象とする先行情報要求が情報要求リスト51に含まれているときには(ステップS432有)、携帯端末21へ「要求受付」を返送することは行うが(ステップS433)、情報要求代行プログラム31の転送処理(ステップS13)を飛ばして実行させないことで(ステップS433の下向き矢線を参照)、後行の重複する情報要求を情報要求代行プログラム41の転送対象から除外するようになっている。このように、要求集約プログラム43は情報要求代行プログラム31の一部を改変する態様で情報要求代行プログラム41に組み込まれている。
【0067】
同報返送プログラム44は(同報返送手段,図4参照)、二次応答処理プログラム33の一部を改変する態様で二次応答処理プログラム42に組み込まれている(ステップS441)。具体的には、伝送集約装置13から拠点端末14を介して二次応答が返送されて来て(ステップS31)、それが情報要求リスト51の検索にて先の情報要求の何れかに対応したものであれば(ステップS32,S33Yes)、それに含まれている設備状態情報を要求元の携帯端末21へ返送するが(ステップS34)、その一回の返送で直ちに二次応答処理プログラム42の処理を終えるのでなく、同じ検出器19に係る他の情報要求が情報要求リスト51に存在していれば(ステップS441Yes)、他の情報要求の要求元へも設備状態情報を返送し(ステップS34)、同じ検出器19に係る情報要求に総て返送してから二次応答処理プログラム42の処理を終えるようになっている(ステップS441No)。
【0068】
代用返送プログラム45は(代用返送手段,図3参照)、情報要求代行プログラム31の一部を改変する態様で情報要求代行プログラム41に組み込まれている(ステップS451〜S454)。具体的には、携帯端末21から情報要求を受け付けた後(ステップS11,S12→ステップS451)、その情報要求の対象の検出器19と同じ検出器19から収集・取得された二次応答のデータが蓄積情報リスト52に既に保存されているか否かを蓄積情報リスト52の検索にて調べ(ステップS451)、経過時間が短くて有効な応答データが蓄積情報リスト52に存在しているときには(ステップS451有,S452Yes)、要求元の携帯端末21に対して、「要求受付」を返送するとともに(ステップS453)、該当する応答データに含まれている設備状態情報を該当情報として返送するようになっている(ステップS454)。
【0069】
それから、更に、代用返送プログラム45は、その情報要求に係る検出器19を対象検出器とするレコードが関連情報リスト53に含まれており且つそのレコードによって関連検出器とされる検出器19に係る設備状態情報が蓄積情報リスト52に含まれているか調べ(ステップS455)、それが有るうちは(ステップS455有)、その設備状態情報を関連情報として、それも上記の情報要求の要求元の携帯端末21へ返送するようになっている(ステップS454)。
【0070】
そして、その後(ステップS455無)、代用返送プログラム45は、上述した要求集約プログラム43の処理や情報要求代行プログラム41の実処理部分など(ステップS431〜S13)を行うことなく代用返送プログラム45の処理ばかりか情報要求代行プログラム41の処理をも終えることで(ステップS454から出た矢線を参照)、携帯端末21から受け付けた情報要求を情報要求代行プログラム41の転送対象から即ちウェブサーバ20から拠点端末14への転送対象から除外するものとなっている。
【0071】
また、代用返送プログラム45は、携帯端末21から受けた情報要求の対象の検出器19と同じ検出器19から収集・取得された二次応答のデータが蓄積情報リスト52に既に保存されているか否かを蓄積情報リスト52の検索にて調べたときに(ステップS451)、該当する応答データが蓄積情報リスト52に存在していなかったときや(ステップS451無)、該当する応答データが蓄積情報リスト52に存在していても経過時間が長くて無効になっていたときには(ステップS452No)、代用返送プログラム45の処理を終えるようになっている(→ステップS431)。
【0072】
情報蓄積プログラム46は(情報蓄積手段,図4参照)、二次応答処理プログラム33の一部を改変する態様で二次応答処理プログラム42に組み込まれている(ステップS461)。具体的には、伝送集約装置13から拠点端末14を介して二次応答が返送されて来て(ステップS31)、それが情報要求リスト51の検索にて先の情報要求の何れかに対応したものであれば(ステップS32,S33Yes)、その応答データそのものか少なくともそれに含まれている設備状態情報と、収集時刻データとを組にして、一つのレコードを作成し、それを蓄積情報リスト52にデータ保持させるようになっている(ステップS461)。
【0073】
蓄積更新プログラム47は(蓄積更新手段,図4図5参照)、周期的に起動される主要部(図5ステップS471〜S474)と、上述した情報蓄積プログラム46への組み込み部とからなる(図4ステップS475)。
そして、起動される度に(図5参照)、収集後の経過時間が長くて無効になった応答データが蓄積情報リスト52に有れば(ステップS471有)、さらに、その応答データに係る検出器19への情報要求を処理中でなく且つ伝送集約装置13がビジーでもなくて(ステップS472No,S473No)、その情報要求を伝送集約装置13が拠点端末14経由で受け付けうる状態でもあれば、上述した無効になった応答データに係る検出器19への情報要求を新たに作成し、それを更新情報要求として拠点端末14を介して伝送集約装置13へ送信することで順次ポーリング式通信での情報収集に向けて送信するものとなっている(ステップS474)。
【0074】
これに対し、それ以外の場合は(ステップS471無,S472Yes,S473Yes)、今回の周期での更新情報要求処理を終え、処理すべきことが残っていれば次の周期での処理に委ねるようになっている。
また、上記の更新情報要求に応じた蓄積更新の処理は(図4参照)、情報蓄積プログラム46が蓄積情報リスト52にデータ保存するときに(ステップS461)、情報蓄積プログラム46に組み込まれたプログラム部分(ステップS475)によって、蓄積情報リスト52に既存の旧いデータが有ればそれを新しいデータで上書きすることで行われるようになっている。
【0075】
さらに、蓄積更新プログラム47は、上記の更新情報要求を情報要求リスト51に含ませることなく拠点端末14へ送信することで、その更新情報要求が二次応答処理プログラム42の返送対象から外れるようにしている。
なお、この蓄積更新プログラム47は、それまでに情報収集された設備状態情報について特に限定することなく旧くなったら更新するようになっているが、複数の携帯端末21から同じ設備機器に対する情報要求が続いている間などに蓄積更新処理が限定されるようにしても良く、その場合は、例えば蓄積情報リスト52の各レコードに要求頻度などのアイテム(項目)を設けて、それを情報要求の度に更新するようにすると良い。
【0076】
関連要求プログラム48は(関連要求手段,図6参照)、周期的に起動されるプログラムであり(ステップS481〜S486)、起動される度に、携帯端末21から届いた情報要求が蓄積情報リスト52に有って(ステップS481有)、更に、その情報要求に係る検出器19のIdが関連情報リスト53の何れかのレコードの対象検出器Id欄に有ると(ステップS482有)、該当するレコードの関連検出器Id欄のIdを関連情報リスト53から抽出することで、上記の対象検出器19に関連する他の関連検出器19を選定するようになっている(ステップS483)。
【0077】
それから、関連要求プログラム48は、上記の関連検出器19に係る情報要求を処理中でなく且つ伝送集約装置13がビジーでもなくて(ステップS484No,S485No)、その関連検出器への情報要求を伝送集約装置13が受け付けうる状態でもあれば、その情報要求を関連情報要求として拠点端末14を介して伝送集約装置13へ送信することで順次ポーリング式通信での情報収集に向けて送信するものとなっている(ステップS486)。しかも、その際、その関連情報要求を情報要求リスト51に含ませることなく拠点端末14を介して伝送集約装置13へ送信することで、その関連情報要求が二次応答処理プログラム42の返送対象から外れるようにしている。
【0078】
関連返送プログラム49は(関連返送手段,図4参照)、二次応答処理プログラム33の一部を改変する態様で二次応答処理プログラム42に組み込まれている(ステップS491〜S492)。具体的には、伝送集約装置13から拠点端末14を介して二次応答が返送されて来て(ステップS31)、それが情報要求リスト51の検索にて先の情報要求の何れかに対応したものであって(ステップS32,S33Yes)、更に、上記の二次応答および情報要求に係る検出器19を対象検出器とするレコードが関連情報リスト53に含まれており且つそのレコードによって関連検出器とされる検出器19に係る設備状態情報が蓄積情報リスト52に含まれていれば(ステップS491有)、その設備状態情報を関連情報として上記の情報要求の要求元の携帯端末21へ返送するようになっている(ステップS492)。
【0079】
この実施例1の鉄道信号設備監視支援プログラム40について、その使用態様と、それを搭載したウェブサーバ20及びそれが接続された鉄道用監視装置10の動作とを、図面を引用して説明する。
図7は、鉄道信号設備監視支援プログラム40を導入した鉄道用監視装置(10+20)の動作状態を示す通信ダイアグラムであり、既述した図12(b)と対比される。
【0080】
既述の例と同様(図12(b)参照)、ここでも(図7参照)、サイクルT1の間に、携帯端末21aから検出器19iへの情報要求と(矢付き実線を参照)、携帯端末21bから検出器19kへの情報要求と(矢付き一点鎖線を参照)、携帯端末21cから検出器19iへの情報要求とが(矢付き実線を参照)、その順で、ウェブサーバ20に届いた場合を想定し、そのときの通信状況を説明する。それに加え、ここでは(図7参照)、サイクルT4に、携帯端末21bから検出器19iへの情報要求と(矢付き実線を参照)、携帯端末21aから検出器19kへの情報要求とが(矢付き一点鎖線を参照)、ウェブサーバ20に届いた場合も想定し、そのときの通信状況も説明する。
【0081】
また、図示は割愛したが、関連情報リスト53又はそのうちの群状関連情報54によって検出器19mが検出器19kに対して予め関連付けられているものとする。
そうすると、サイクルT1に携帯端末21a,21b,21cから夫々検出器19i,19k,19iに向けてウェブサーバ20に送られて来た三つの情報要求は、ウェブサーバ20において、情報要求代行プログラム41(特に31部分)と要求集約プログラム43とによって、対象検出器19i,19iが重複しているけれども、携帯端末21に対しては受け付けられ、何れの情報要求も情報要求リスト51に含められてデータ保持される。
【0082】
これに対し、それら三つの情報要求のうち携帯端末21a,21bから来て先に届いた二つの情報要求は情報要求代行プログラム41(特に31部分)によって上記の受付とデータ保持に加え検出器19i,19kに向けて伝送拠点装置15へ転送されるが(矢付き実線と矢付き一点鎖線を参照)、三つの情報要求のうち携帯端末21cから来て最後に届いた三番目の情報要求は、要求先が検出器19iで一番目の情報要求と重複しているので、要求集約プログラム43によって拠点端末14ひいては伝送集約装置13への転送が抑えられる(図7のP1を参照)。そのため、一次応答が無くて、否定的な一次応答が有り得ないので、携帯端末21cについても、再要求を促すメッセージは表示されない。
【0083】
それから、関連要求プログラム48が起動されたとき、その処理によって、関連情報リスト53において検出器19kと関連付けられている検出器19mに向けた関連情報要求が作成され、その情報要求が伝送拠点装置15へ送信される(図7のP2を参照)。
そして、その後の例えばサイクルT2に、鉄道用監視装置10の専用通信回線を介する順次ポーリング式の通信にて、伝送拠点装置15から現場装置18iへ情報要求が送信され、それが検出器19iに転送されて、現場装置18iに設備状態情報が返送される(矢付き実線を参照)。
【0084】
また、やはり専用通信回線を介する順次ポーリング式の通信にて、例えば同じサイクルT2における別のアクセス時に(矢付き一点鎖線を参照)、伝送拠点装置15から現場装置18kへ情報要求が送信され、それが検出器19kに転送されて、現場装置18kに設備状態情報が返送される。
さらに、やはり専用通信回線を介する順次ポーリング式の通信にて、例えば同じサイクルT2における別のアクセス時に(矢付き二点鎖線を参照)、伝送拠点装置15から現場装置18mへも情報要求が送信され(図7のP3を参照)、それが検出器19mに転送されて、現場装置18mに設備状態情報が返送される。
【0085】
それから後の例えばサイクルT3に、検出器19iの設備状態情報が、専用通信回線を介する順次ポーリング式の通信にて現場装置18iから伝送拠点装置15へ上げられ、更に二次応答に含められてウェブサーバ20へ引き渡されたとする(太い矢付き実線を参照)。すると、その設備状態情報が、二次応答処理プログラム42(特に33部分)によって先の要求元の携帯端末21aに送信されるとともに(太い矢付き実線を参照)、情報蓄積プログラム46によって蓄積情報リスト52に含められ、更に、同報返送プログラム44によって後の要求元の携帯端末21cにも送信される(図7のP4の太い矢付き実線を参照)。こうして、携帯端末21aに遅れて情報要求を出した携帯端末21cにも、携帯端末21aとほぼ同時に即ち携帯端末21aより短い待ち時間で、所望の設備状態情報が表示される。
【0086】
また、例えばサイクルT3に、検出器19kの設備状態情報が、専用通信回線を介する順次ポーリング式の通信にて現場装置18kから伝送拠点装置15へ上げられ、更に二次応答に含められてウェブサーバ20へ引き渡されたとする(太い矢付き一点鎖線を参照)。そうすると、その設備状態情報が、二次応答処理プログラム42(特に33部分)によって、要求元の携帯端末21bに送信される(太い矢付き一点鎖線を参照)。さらに、検出器19mの設備状態情報も、同様にして現場装置18mから伝送拠点装置15へ上げられ(図7のP5を参照)、更にはウェブサーバ20へ引き渡されるが(太い矢付き二点鎖線を参照)、こちらの設備状態情報は、関連返送プログラム49によって携帯端末21bに送信される(太い矢付き二点鎖線を参照)。こうして、携帯端末21bには、直接要求した設備機器(検出器19k)の設備状態情報に加えて、それと予め関連付けられた他の設備機器(検出器19m)の設備状態情報も、速やかに表示される。
【0087】
その後、例えばサイクルT4に、検出器19iに向けた情報要求が携帯端末21bから送信されてウェブサーバ20に届くと(矢付き実線を参照)、検出器19iの設備状態情報が既に蓄積情報リスト52にデータ保持されているので、代用返送プログラム45によって、蓄積情報リスト52内の該当データが有効性の確認後に要求元の携帯端末21bに送信される(図7のP6の太い矢付き実線を参照)。また、検出器19kに向けた情報要求が携帯端末21aから送信されてウェブサーバ20に届くと(矢付き一点鎖線を参照)、検出器19kの設備状態情報に加えて関連検出器19mの設備状態情報も既に蓄積情報リスト52にデータ保持されているので、代用返送プログラム45によって、蓄積情報リスト52内で該当する二つのデータが有効性の確認後に要求元の携帯端末21aに送信される(図7のP7の太い一点鎖線と二点鎖線を参照)。こうして、蓄積済みの設備状態情報は順次ポーリング式の専用通信回線に負荷を掛けることなく速やかに表示される。
【0088】
なお、図7のダイアグラムにおける図示は割愛したが、蓄積更新プログラム47が周期的に起動されて、蓄積情報リスト52にデータ保持されている設備状態情報が更新される。具体的には、蓄積情報リスト52については収集後の経過時間が長くて無効になった応答データが蓄積情報リスト52に有り、専用通信回線での順次ポーリング式通信については情報収集が可能な状態であれば、該当する応答データを収集し直すための更新情報要求がウェブサーバ20から拠点端末14へ送信される。そして、それに応じて新たな応答データが拠点端末14からウェブサーバ20に返送されると、情報蓄積プログラム46の蓄積更新プログラム47組み込み部分によって、蓄積情報リスト52における該当データが更新される。こうして、蓄積情報リスト52のデータが有効なものに維持される。
【実施例2】
【0089】
本発明の鉄道信号設備監視支援プログラムの実施例2について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図8は、(a)が鉄道信号設備監視支援プログラム60の概要構成を示す機能ブロック図、(b)が群状関連情報リスト62の全体的なデータ構造、(c)が信号機と内方軌道回路とに係る部分の群状関連情報のデータ例である。
【0090】
この鉄道信号設備監視支援プログラム60が上述した実施例1の鉄道信号設備監視支援プログラム40と相違するのは(図8(a)参照)、プログラムに関して群状関連要求プログラム61が追加されている点と、データ保持メモリ34に関して群状関連情報リスト62が追加されている点である。
先ず要点を述べると、群状関連情報リスト62は、群状関連の成立する検出器群を定めた群状関連情報リストであり、上述した関連情報リスト53から群状関連情報54の部分を独立させてデータ構造を簡素化したようなものである。群状関連要求プログラム61は、関連情報リスト53に基づいて関連要求プログラム48と関連返送プログラム49と代用返送プログラム45とにおける該当機能を担うものである。
【0091】
詳述すると、群状関連情報リスト62は(図8(b)参照)、多数のレコード(記録単位,登録単位)を連ねうるデータ群であり、リスト内の各レコードに、多数の検出器19,…,19のうちから群状関連の成り立つ一群のものとして予め関連づけられた複数の群内検出器19,…,19のIdを並べたデータを保持している。この関連付けは、一群に属する何れかの群内検出器に係る鉄道信号設備を調べた後に同じ群に属する他の群内検出器に係る鉄道信号設備も調べる頻度が高いといった相互的な関連性が一群の検出器の間に存在する場合や存在が予想される場合になされる。具体例を挙げると(図8(c)参照)、信号機とその内方軌道回路の場合、当該信号機に係る検出器19のIdと、その内方軌道回路に係る検出器19のIdとが、何れも、同格の群内検出器Idとなり、該当するレコードの群内検出器Id欄に登録されている。
【0092】
群状関連要求プログラム61は、上述した関連要求プログラム48を群状関連情報リスト62に適合するよう改造したものなので、フローチャートは割愛したが、携帯端末21から届いた情報要求が蓄積情報リスト52に有って、更に、その情報要求に係る検出器19のIdが群状関連情報リスト62の何れかのレコードに有ると、該当するレコードにおける総ての群内検出器について情報要求が有ったのと同様の処理を行うようになっている。なお、代用返送プログラム45や、関連返送プログラム49も、繰り返しとなる詳細な説明は割愛するが、群状関連情報リスト62における該当レコードの全群内検出器について各々の担当処理を行うようになっている。
【実施例3】
【0093】
本発明の鉄道信号設備監視支援プログラムの実施例3について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図9は、(a)が鉄道信号設備監視支援プログラム70の概要構成を示す機能ブロック図、(b)が軌道回路と信号機の記号図、(c)が群状関連情報リスト62における該当部分のデータ例、(d)が展開前の関連情報リスト53における該当部分のデータ例、(e)が展開後の関連情報リスト53における該当部分のデータ例である。
【0094】
この鉄道信号設備監視支援プログラム70が上述した実施例1の鉄道信号設備監視支援プログラム40と相違するのは(図9(a)参照)、プログラムに関して群状関連情報展開プログラム71が追加されている点と、データ保持メモリ34に関して群状関連情報リスト62が追加されている点である。
群状関連情報リスト62は上述した実施例2のものと同じで良く、例えば信号機とその内方軌道回路の場合(図9(b)参照)、当該信号機に係る検出器19のIdとその内方軌道回路に係る検出器19のIdとが同格で該当レコードの群内検出器Id欄に登録される(図9(c)参照)。
【0095】
群状関連情報展開プログラム71は(展開手段)、やはりフローチャートは割愛したが、鉄道信号設備監視支援プログラム70の中では上述の各プログラム41〜61と異なり初期化ルーチンに位置づけられるものであり、鉄道信号設備監視支援プログラム70の実行開始時に一度実行されれば足りるようになっている。そして、実行されると、群状関連情報リスト62の各レコードについて、更に該当レコードの総てのアイテムについて、当該アイテムを対象検出器とし他のアイテムを関連検出器として関連付けの組データを作成し、それを関連情報リスト53に含めるようになっている。
【0096】
具体例を挙げると、当該信号機とその内方軌道回路とその左右の隣接軌道回路1,2とが設けられた線路について(図9(b)参照)、当該信号機に係る検出器19と内方軌道回路に係る検出器19とをそれぞれ群内検出器とする群状関連情報リスト62が初期設定されるとともに(図9(c)参照)、内方軌道回路に係る検出器19を対象検出器とし隣接軌道回路1,2に係る検出器19,19を関連検出器とし更に当該信号機に係る19を対象検出器とし内方軌道回路に係る検出器19を関連検出器とする関連情報リスト53が初期設定されていたとする(図9(d)参照)。
【0097】
そして、そのような群状関連展開前状態で、群状関連情報展開プログラム71が実行されると、群状関連情報リスト62が展開されて、そのうち既存のアイテムと重複しないものが関連情報リスト53に加えられる。当該信号機に係る検出器19を対象検出器とし内方軌道回路に係る検出器19を関連検出器とするアイテムは既に存在していて追加するまでのないので追加されないが、内方軌道回路に係る検出器19を対象検出器とし当該信号機に係る検出器19を関連検出器とするアイテムは追加されるので、それが群状関連展開後の関連情報リスト53には存在する(図9(e)参照)。
【0098】
このように、この実施例3にあっては初期化時に群状関連情報リスト62の内容を関連情報リスト53の群状関連情報54に拡張反映させることにより、また、上述した実施例2にあっては関連情報リスト53に加えて群状関連情報リスト62に基づいても随時関連情報を収集することにより、順次ポーリング式通信の専用通信回線の混雑を緩和するとともに携帯端末21へ情報返送を速やかに返送することができる。
しかも、関連情報リスト53による一方向的な関連付けだけでなく、双方向的・多方向的・相互的な群状関連を簡潔に設定できる群状関連情報リスト62も併用しうるようにしたことにより、的確な関連付けを漏れなく而も簡便に行うことができる。
【実施例4】
【0099】
本発明の鉄道信号設備監視支援プログラムの実施例4について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図10は、群状関連情報の更なる具体例であり、(a)が停車場構内の一部経路の記号図であり、(b)が二つの進路に係る群状関連情報のデータ例である。
【0100】
この鉄道信号設備監視支援プログラムが上述した実施例2,3の鉄道信号設備監視支援プログラム60,70と相違するのは、停車場構内の一部経路に関して(図10(a)参照)、その停車場構内にとられる進路に属する一連の設備機器について群状関連を成立させるレコードが群状関連情報リスト62に含まれている点である(図10(b)参照)。具体的には、二つの進路の一方についてはレコード621が作成され、二つの進路の他方についてはレコード622が作成され、何れのレコードにも、該当する進路に属する一連の設備機器に係る複数の検出器19,…,19のIdが登録される。
【0101】
詳述すると、群状関連情報リスト62のレコード621には、当該転てつ機が定位方向に切り替わっていて更に当該信号機1が赤信号以外の色の進行信号を現示したときに確定する進路1に属する一連の設備機器である隣接軌道回路1と当該信号機1と内方軌道回路1と内方軌道回路2と内方軌道回路1に属する当該転てつ機とに係る検出器19のIdが登録されている。
一方、群状関連情報リスト62のレコード622には、当該転てつ機が反位方向に切り替わっていて更に当該信号機2が進行信号を現示したときに確定する進路2に属する一連の設備機器である隣接軌道回路2と当該信号機2と内方軌道回路1と内方軌道回路2と内方軌道回路1に属する当該転てつ機とに係る検出器19のIdが登録されている。
【0102】
この例でも、群状関連情報リスト62のレコード621,622の夫々について、携帯端末21から届いた情報要求が蓄積情報リスト52に有って、更に、その情報要求に係る検出器19のIdが群状関連情報リスト62の何れかのレコードに有ると、該当するレコードにおける総ての群内検出器について情報要求が有ったのと同様の処理を行うのが基本であるが、この例では、その基本処理の実行を限定する機能が例えば群状関連要求プログラム61の改造等によって付加されており、その付加機能に係る群状関連活用条件という項目が各レコードに追加されており、その項目には群状関連活用条件の実態規定データを指すポインタが入っている(図10(b)参照)。
【0103】
進路1に係るレコード621の群状関連活用条件の項目の実態規定データには、当該信号機1が進行信号を現示していることと、当該転てつ機が定位方向に切り替わっていることという二つの条件が規定されている。
進路2に係るレコード622の群状関連活用条件の項目の実態規定データには、当該信号機2が進行信号を現示していることと、当該転てつ機が反位方向に切り替わっていることという二つの条件が規定されている。
【0104】
そして、本例の鉄道信号設備監視支援プログラムでは、携帯端末21からの情報要求に付随して又は可能であれば自発的な情報収集など何らかの手段によって群状関連活用条件の確認に必要な情報を取得して、群状関連活用条件が成立していることを確認することができたときに限って上述の基本処理を実行することにより、進路のように属する設備機器の多い群状関連情報を無条件に先行収集することの弊害を未然に防止することができるようにもなっている。
【0105】
[その他]
上記実施例では、検出器19が保持する設備状態情報について、簡明化のため一度の情報要求で総てが収集されるような場合を説明したが、検出器19によっては設備状態情報の要求と収集を一回で済ませられない機能上制約のため又は適宜な分割での要求に応じうる機能を持つため、一度の情報要求では一部の設備状態情報しか収集されない場合もある。例えば、定位側と反位側との二位置で転換状態を切り替える電気転てつ機の場合、定位側転換データと反位側転換データとが別個に情報要求の対象になりうる。そのような場合、両転換データを関連情報や群状関連情報として予め関連づけておくと良い。
【0106】
そのように、対象検出器とは別の他の検出器だけでなく、対象検出器と同一の検出器に係る残存部分の設備状態情報についても関連検出器として情報要求の対象にすることで、関連要求手段や関連返送手段さらには群状関連要求手段によって統一的かつ適切に処理される。また、上述の転換データのように予め残存部分が明確な場合は、群状関連情報54や群状関連情報リスト62で簡便かつ的確に関連付けできるが、先の情報要求によって残存部分が変動するような場合には、全設備状態情報の範囲を規定するデータを予め設定保持するとともに、それ等を調べて残存部分を確定するように関連要求手段等の機能を拡張するのも良い。
【0107】
上記実施例では、検出器19が保持する設備状態情報について、単に付設先の設備機器に係る設備状態情報としたが、最新の情報である現在情報だけでなく、ジャーナル情報と呼ばれる一連のタイムスタンプ付き履歴情報も保持される場合が多く、その場合、両者を一纏めにして取り扱うようにしても良く、区別して取り扱うようにしても良く、情報要求の際に情報種別を指定されたときには指定された情報だけ返送等するようにしても良い。
【0108】
上記実施例では、ウェブサーバ20が拠点端末14に接続される構成例を説明したが、ウェブサーバ20の接続先はそれに限られる訳でなく、本来の業務の妨げにならない設置場所が確保できれば、指令端末12や,伝送中央装置11,伝送集約装置13といった他の上位装置にウェブサーバ20を接続しても良い。また、ウェブサーバ20はそれらの上位装置11〜14と別体である必要が無く、それらの上位装置11〜14の何れかについてハードウェアを更新するとき等に、新規導入のコンピュータが高機能で余力があるような場合には、そのコンピュータに鉄道信号設備監視支援プログラム40をインストールして、ウェブサーバ20と上位装置11〜14とをハードウェア面では一体化しても良い。さらに、鉄道信号設備監視支援プログラム40が総て一台のコンピュータにインストールされている必要も無く、鉄道信号設備監視支援プログラム40を構成する各プログラム41〜71が複数の装置に分散してインストールされていても良い。
【0109】
上記実施例では、業務端末として携帯端末21を挙げたが、業務端末は、そのような無線利用の端末に限定される訳でなく、汎用通信回線に接続してウェブサーバ20に設備状態情報の要求を出すことができるものであれば、有線接続方式の端末であっても良い。
上記実施例では、情報要求リスト51や蓄積情報リスト52に含められたデータ(レコード,記録単位,登録単位)の消去について言及しなかったが、これは重要な要件に係る説明の簡明化のためであり、実用化に当たっては、処理済みのレコード(データ)や長時間経過後のレコードなど所定の条件を満たしたレコードは適宜な時期に各リストから取り除かれるように構成される。
【符号の説明】
【0110】
10…鉄道用監視装置、11…伝送中央装置(上位装置)、
12…指令端末(上位装置)、13…伝送集約装置(上位装置)、
14…拠点端末(上位装置)、15…伝送拠点装置、
17…集約装置、18…現場装置、19…検出器、
20…ウェブサーバ(上位装置)、21…携帯端末(業務端末)、
30…鉄道信号設備監視支援プログラム、
31…情報要求代行プログラム(情報要求代行手段)、
32…一次応答処理プログラム(一次応答処理手段)、
33…二次応答処理プログラム(二次応答処理手段)、
34…データ保持メモリ(データ保持手段)
40…鉄道信号設備監視支援プログラム、
41…情報要求代行プログラム(情報要求代行手段)、
42…二次応答処理プログラム(二次応答処理手段)、
43…要求集約プログラム(要求集約手段)、
44…同報返送プログラム(同報返送手段)、
45…代用返送プログラム(代用返送手段)、
46…情報蓄積プログラム(情報蓄積手段)、
47…蓄積更新プログラム(蓄積更新手段)、
48…関連要求プログラム(関連要求手段)、
49…関連返送プログラム(関連返送手段)、
51…情報要求リスト、52…蓄積情報リスト、
53…関連情報リスト、54…群状関連情報、
40…鉄道信号設備監視支援プログラム、
60…鉄道信号設備監視支援プログラム、
61…群状関連要求プログラム(群状関連要求手段)、62…群状関連情報リスト、
70…鉄道信号設備監視支援プログラム、
71…群状関連情報展開プログラム(展開手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13