(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来のDI加工装置の流体軸受では、下記の課題を有していた。
オリフィスは、例えば1mm未満の小さな内径の流路を有するものであり、異物やスラッジ等が堆積して、流路が詰まりやすい。このため、定期的にオリフィスを取り外し清掃する作業が必要であるが、清掃を行うべき適正なタイミングがわからなかった。
【0010】
具体的に、オリフィスの流路が詰まると、作製するDI缶の加工精度(周壁の厚さ精度)が確保できなくなるばかりか、ラムベアリングやラム軸に摩耗や損傷が生じるおそれがある。このため、オリフィスの清掃を高い頻度で行わざるを得ず、手間がかかっていた。なお、油の配管経路内からオリフィスを取り外して再び装着するには、配管自体を分解する必要があり、作業時間として例えば半日程度をも要する。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、オリフィスの流路に詰まりが生じたことを検知することができ、適正なタイミングでオリフィスの清掃を行うことができる流体軸受の異常検知装置及び異常検知方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、
カップ状体にDI加工を施して有底筒状のDI缶を成形するパンチスリーブと、前記パンチスリーブを先端に支持する主軸と、前記主軸をその中心軸方向に移動自在に軸支し、互いに離間して配置される一対の流体軸受
と、を備
えるDI加工装置に備えられる流体軸受の異常検知装置であって、軸受本体と、前記軸受本体に形成された軸受孔と、前記軸受孔の内周面に、該軸受孔の中心軸回りに互いに間隔をあけて開口する複数のポケットと、複数の前記ポケットに連通する複数の流路と、前記流路に着脱可能に配設されるオリフィスと、複数の前記ポケットに保持される流体の圧力を測定する複数の圧力センサーと、制御部と、を備え、前記制御部は、複数の前記圧力センサーが測定した圧力の測定値のうち、最大値と最小値との差が所定値以上となったときに、異常を検知することを特徴とする。
また、本発明の一態様は、
カップ状体にDI加工を施して有底筒状のDI缶を成形するパンチスリーブと、前記パンチスリーブを先端に支持する主軸と、前記主軸をその中心軸方向に移動自在に軸支し、互いに離間して配置される一対の流体軸受
と、を備
えるDI加工装置の、流体軸受の異常検知方法であって、軸受本体に形成された軸受孔の内周面に、該軸受孔の中心軸回りに互いに間隔をあけて複数のポケットを開口し、複数の前記ポケットに連通する複数の流路を設け、前記流路にオリフィスを着脱可能に配設し、複数の前記ポケットに保持される流体の圧力を測定する複数の圧力センサー、及び、制御部を設け、前記制御部は、複数の前記圧力センサーが測定した圧力の測定値のうち、最大値と最小値との差が所定値以上となったときに、異常を検知することを特徴とする。
【0013】
この流体軸受は、例えばハイドロスタティック軸受や静圧軸受等と呼ばれるものであり、主軸を軸支する軸受孔の内周面に、該軸受孔の中心軸回りに互いに間隔をあけて、油等の流体が供給されるポケットが複数開口している。ポケットの開口部は、主軸の外周面に対向配置され、これらのポケット及び主軸外周面により流体を保持可能な室が形成される。そして、ポケット(室)に保持された流体に圧力を加えることで、流体軸受は、流体圧によって軸受孔の内周面から主軸を離間させて(主軸を空中に浮かせて)支持する。
【0014】
本発明の流体軸受の異常検知装置及び異常検知方法によれば、複数のポケットに連通する各流路に、オリフィスが着脱可能に設けられている。また、各ポケットに保持される流体の圧力を測定する圧力センサーが設けられている。つまり、複数の圧力センサーによって、複数のポケットの流体圧を、それぞれ測定することができる。
【0015】
そして、これらの圧力センサーが測定した圧力の測定値のうち、最大値と最小値との差(圧力差)が所定値以上に大きくなったときに、制御部が異常を検知する。つまり、複数の圧力センサーが測定した各測定値同士の間の最大圧力差が、所定値以上となったときに、オリフィス詰まりが発生したものとして、異常と判断する。
【0016】
具体的に、複数のポケットの流路に設けられる各オリフィスのうち、いずれかのオリフィスの流路に詰まりが生じると、このオリフィスの流路が連通するポケットの流体圧を測定する圧力センサーの測定値に変化が生じて、各圧力センサーの測定値同士の間の圧力差が大きくなる。
そして本発明では、このように各ポケット同士の間で流体の圧力差が生じた場合に、圧力の最大値と最小値との差(最大圧力差)が所定値よりも小さければ異常とは判断せず、所定値以上に大きくなったときに、軸受孔の中心軸と、主軸の中心軸との同軸度が十分に確保できなくなったものとして(又はそのおそれがあるものとして)、異常と判断する。
【0017】
従って、上記所定値を適宜設定することにより、異常(オリフィス詰まり)を確実に検知して、オリフィスを適正なタイミングで清掃することができる。
つまり、従来のようにオリフィスを過度に(必要以上に)高い頻度で清掃して手間をかけることなく、DI加工装
置による加工精度を良好に維持でき、かつ、流体軸受や主軸に摩耗や損傷等が発生するようなことを防止できる。
【0018】
以上より本発明によれば、オリフィスの流路に詰まりが生じたことを検知することができ、適正なタイミングでオリフィスの清掃を行うことができる。
【0019】
また、本発明の一態様は、
カップ状体にDI加工を施して有底筒状のDI缶を成形するパンチスリーブと、前記パンチスリーブを先端に支持する主軸と、前記主軸をその中心軸方向に移動自在に軸支し、互いに離間して配置される一対の流体軸受
と、を備
えるDI加工装置に備えられる流体軸受の異常検知装置であって、軸受本体と、前記軸受本体に形成された軸受孔と、前記軸受孔の内周面に、該軸受孔の中心軸回りに互いに間隔をあけて開口する複数のポケットと、複数の前記ポケットに連通する複数の流路と、前記流路に着脱可能に配設されるオリフィスと、複数の前記ポケットに保持される流体の圧力を測定する複数の圧力センサーと、制御部と、を備え、前記制御部は、複数の前記圧力センサーが測定した圧力の測定値のうち、最小値が所定値以下となったとき、又は、最大値が所定値以上となったときに、異常を検知することを特徴とする。
また、本発明の一態様は、
カップ状体にDI加工を施して有底筒状のDI缶を成形するパンチスリーブと、前記パンチスリーブを先端に支持する主軸と、前記主軸をその中心軸方向に移動自在に軸支し、互いに離間して配置される一対の流体軸受
と、を備
えるDI加工装置の、流体軸受の異常検知方法であって、軸受本体に形成された軸受孔の内周面に、該軸受孔の中心軸回りに互いに間隔をあけて複数のポケットを開口し、複数の前記ポケットに連通する複数の流路を設け、前記流路にオリフィスを着脱可能に配設し、複数の前記ポケットに保持される流体の圧力を測定する複数の圧力センサー、及び、制御部を設け、前記制御部は、複数の前記圧力センサーが測定した圧力の測定値のうち、最小値が所定値以下となったとき、又は、最大値が所定値以上となったときに、異常を検知することを特徴とする。
【0020】
本発明の流体軸受の異常検知装置及び異常検知方法によれば、複数のポケットに連通する各流路に、オリフィスが着脱可能に設けられている。また、各ポケットに保持される流体の圧力を測定する圧力センサーが設けられている。つまり、複数の圧力センサーによって、複数のポケットの流体圧を、それぞれ測定することができる。
【0021】
そして、これらの圧力センサーが測定した圧力の測定値のうち、最小値が所定値以下に小さくなったとき、又は、最大値が所定値以上に大きくなったときに、オリフィス詰まりが発生したものとして、制御部が異常を検知する。
【0022】
具体的に、複数のポケットの流路に設けられる各オリフィスのうち、いずれかのオリフィスの流路に詰まりが生じると、このオリフィスの流路が連通するポケットの流体圧を測定する圧力センサーの測定値に変化が生じる。
そして本発明では、このように圧力センサーの測定値に変化が生じたときに、圧力の最小値が所定値よりも大きい場合、又は、圧力の最大値が所定値よりも小さい場合には、異常とは判断せず、圧力の最小値が所定値以下に小さくなった場合、又は、圧力の最大値が所定値以上に大きくなったときに、軸受孔の中心軸と、主軸の中心軸との同軸度が十分に確保できなくなったものとして(又はそのおそれがあるものとして)、異常と判断する。
【0023】
従って、上記の各所定値を適宜設定することにより、異常(オリフィス詰まり)を確実に検知して、オリフィスを適正なタイミングで清掃することができる。
つまり、従来のようにオリフィスを過度に(必要以上に)高い頻度で清掃して手間をかけることなく、DI加工装
置による加工精度を良好に維持でき、かつ、流体軸受や主軸に摩耗や損傷等が発生するようなことを防止できる。
【0024】
以上より本発明によれば、オリフィスの流路に詰まりが生じたことを検知することができ、適正なタイミングでオリフィスの清掃を行うことができる。
【0025】
上記流体軸受の異常検知装置において、複数の前記ポケットは、前記軸受孔の内周面に、前記中心軸回りに等間隔をあけて少なくとも3つ以上形成されていることが好ましい。
上記流体軸受の異常検知方法において、複数の前記ポケットを、前記軸受孔の内周面に、前記中心軸回りに等間隔をあけて少なくとも3つ以上形成することが好ましい。
【0026】
この場合、軸受孔の内周面に、該軸受孔の中心軸回りに等間隔をあけて少なくとも3つ以上のポケットが形成されているので、これらのポケットに保持される流体の圧力により、軸受孔の内周面から主軸を確実に離間させることができるとともに、同軸に配置しやすくなり、主軸を安定して軸支できる。
そして、3つ以上のポケットに保持された流体の圧力を、ポケットと同数の3つ以上の圧力センサーで測定することにより、異常検知の精度を高めることができ、上述した本発明の作用効果がより安定的に奏功される。
【0027】
上記流体軸受の異常検知装置において、前記軸受本体の前記軸受孔付近及び前記ポケットに保持される流体のうち、いずれかの温度を測定する温度センサーが備えられ、前記制御部は、前記温度センサーが測定した温度の測定値が所定値以上となったときに、異常を検知することが好ましい。
上記流体軸受の異常検知方法において、前記軸受本体の前記軸受孔付近及び前記ポケットに保持される流体のうち、いずれかの温度を測定する温度センサーを設け、前記制御部は、前記温度センサーが測定した温度の測定値が所定値以上となったときに、異常を検知することが好ましい。
【0028】
オリフィス詰まりが発生し、このオリフィスが配設された流路に対応するポケットの流体圧が低下すると、軸受孔の中心軸と、該軸受孔に軸支される主軸の中心軸との軸位置がずれていく。これらの軸間距離が大きくなっていくと、最終的には、軸受孔の内周面に対して主軸の外周面が接触する。
【0029】
上記流体軸受の異常検知装置及び異常検知方法によれば、軸受本体の軸受孔付近(軸受孔に接近配置された部分)及びポケットに保持される流体のうち、いずれかの温度を測定する温度センサーが設けられている。そして、温度センサーの測定値が所定値以上に大きくなったときに、制御部が異常を検知する。
つまり、軸受孔と主軸とが接触したときに、その接触抵抗(摩擦)により軸受孔付近やポケット内の流体の温度が上昇したことを、温度センサーが測定した温度の測定値に基づいて判断することができる。従って、上述した圧力センサーによる異常検知と相俟って、流体軸受の異常の検知をより確実に行うことができる。
【0030】
上記流体軸受の異常検知装置において、前記温度センサーは、前記軸受孔の内周面に開口する複数の前記ポケットに対応して、複数設けられることが好ましい。
上記流体軸受の異常検知方法において、前記温度センサーを、前記軸受孔の内周面に開口する複数の前記ポケットに対応して、複数設けることが好ましい。
【0031】
この場合、軸受孔の内周面に開口する複数のポケットに対応して、複数の温度センサーが設けられている。従って、オリフィス詰まりが発生し、これらのポケットのうち、特定のポケットに向けて主軸が接近し、軸受孔の内周面に接触した場合であっても、該ポケット近傍の温度上昇を、このポケットに対応する温度センサーにより精度よく測定することができる。従って、異常検知の精度が高められる。
【0032】
上記流体軸受の異常検知装置において、複数の前記流路の前記オリフィスよりも上流側に、流量計が備えられ、前記制御部は、前記流量計が測定した流量の測定値が所定の数値範囲外となったときに、異常を検知することが好ましい。
上記流体軸受の異常検知方法において、複数の前記流路の前記オリフィスよりも上流側に、流量計を設け、前記制御部は、前記流量計が測定した流量の測定値が所定の数値範囲外となったときに、異常を検知することが好ましい。
【0033】
この場合、複数の流路のオリフィスよりも上流側に、流量計が備えられており、流量計が測定した流量の測定値が所定の数値範囲外となったとき(適正な数値範囲内から上下いずれかに外れたとき)に、制御部が異常を検知する。
すなわち、例えば、オリフィス詰まりが複数のオリフィス全体に進行している場合や、流体の供給元圧の設定異常、リリーフ弁の故障などが生じた場合においては、流量計の測定値が、所定の数値範囲よりも小さくなったり大きくなったりするので、この測定値に基づいて異常を判断することができる。従って、異常の検知をより確実に行うことができる。
【0034】
上記流体軸受の異常検知装置において、前記軸受本体の前記流路に供給される流体の温度を測定する供給流体用温度センサーが備えられ、前記制御部は、前記供給流体用温度センサーが測定した温度の測定値が所定の数値範囲外となったときに、異常を検知することが好ましい。
上記流体軸受の異常検知方法において、前記軸受本体の前記流路に供給される流体の温度を測定する供給流体用温度センサーを設け、前記制御部は、前記供給流体用温度センサーが測定した温度の測定値が所定の数値範囲外となったときに、異常を検知することが好ましい。
【0035】
軸受本体の流路に供給される流体の温度が、該流体の種別に応じた所定の数値範囲外となったとき(適正な数値範囲内から上下いずれかに外れたとき)には、流体の粘性等に変化が生じて、所期する流体の機能(軸受孔の内周面から主軸を浮かせて、これらの摺動を潤滑する機能等)が安定して得られなくなるおそれがある。例えば、流路に供給される流体の温度が所定の数値範囲(の下限)より低い場合には、流体の粘性が増大して滑らかな摺動を促せなくなることがある。前記流体の温度が所定の数値範囲(の上限)より高い場合には、流体の粘性が低下してポケットから流出しやすくなり、流体による摺動機能や芯合わせ機能が安定しなくなることがある。また、流路に供給される流体の温度が所定の数値範囲(の上限)より高いと、流体軸受の金属部品が温度上昇しやすくなり、焼き付き等の原因にもなる。
【0036】
上記流体軸受の異常検知装置及び異常検知方法によれば、軸受本体の流路に供給される流体の温度を測定する供給流体用温度センサーが設けられており、該供給流体用温度センサーの測定値が所定の数値範囲外となったときに、制御部が異常を検知する。
従って、ポケットに保持される流体の機能を安定して発揮させることができるとともに、流体の機能が十分に発揮できなくなるおそれが生じたときには異常を検知して、軸受孔及び主軸の摩耗や損傷等を防止することができる。また、流体軸受の金属部品の焼き付き等を防止できる。
【0037】
上記流体軸受の異常検知装置において、少なくとも前記圧力センサーが測定した圧力の測定値を表示する表示部が備えられ、前記制御部が異常を検知したときに、異常を検知するまでの前記測定値の推移を、前記表示部に所定時間遡って表示可能であることが好ましい。
上記流体軸受の異常検知方法において、少なくとも前記圧力センサーが測定した圧力の測定値を表示する表示部を設け、前記制御部が異常を検知したときに、異常を検知するまでの前記測定値の推移を、前記表示部に所定時間遡って表示可能とすることが好ましい。
【0038】
この場合、少なくとも圧力センサーが測定した圧力の測定値を表示する表示部が備えられているので、圧力の測定値がどのような状況にあるか(高いか低いか)を、作業者が必要に応じて確認できる。
そして、制御部が異常を検知したときに、異常を検知するまでの測定値の推移を、表示部に所定時間遡って表示可能であるので、異常が発生した時に、たとえ作業者がその場に居合わせなくても、異常発生までの測定値の推移を遡って確認することができる。従って、異常がいつ発生したかを確認したり、異常発生箇所や原因を特定したりすることなどが可能になる。
【0039】
上記流体軸受の異常検知装置において、前記軸受本体と、該軸受本体の前記軸受孔に挿通された
前記主軸と、を相対的に移動させる駆動部が備えられ、前記制御部は、異常を検知したときに、前記駆動部を停止することが好ましい。
上記流体軸受の異常検知方法において、前記軸受本体と、該軸受本体の前記軸受孔に挿通された
前記主軸と、を相対的に移動させる駆動部を設け、前記制御部は、異常を検知したときに、前記駆動部を停止することが好ましい。
【0040】
この場合、制御部が異常を検知したときに、軸受本体と主軸とを相対移動させる駆動部を停止するので、加工装置の損傷や加工品のジャム(成形品詰まり)等を抑制できる。
【発明の効果】
【0041】
本発明の流体軸受の異常検知装置及び異常検知方法によれば、オリフィスの流路に詰まりが生じたことを検知することができ、適正なタイミングでオリフィスの清掃を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の一実施形態に係る流体軸受1、流体軸受1の異常検知装置10及び異常検知方法について、
図1〜
図6を参照して説明する。
本実施形態の流体軸受1及びその異常検知装置10は、カップ状体にDI加工を施してDI缶とするDI加工装置に備えられる。
【0044】
まず、カップ状体から作製されるDI缶について説明する。
DI缶とは、飲料等の内容物が充填、密封される缶体(2ピース缶やボトル缶)に用いられるものである。DI缶は、有底筒状をなしており、缶の周壁である缶胴(ウォール)と、缶の底壁である缶底(ボトム)とを有している。2ピース缶は、DI缶の開口端部に、円板状の缶蓋が巻き締められて作製される。ボトル缶は、DI缶にボトルネッキング加工が施された後、その開口端部にキャップが螺着されて作製される。なお、DI缶の「DI」とは、Drawing&Ironingの略称である。
【0045】
DI缶は、アルミニウム合金材料の板材から打ち抜いた円板状のブランクに、カッピング工程(絞り工程)及びDI工程(絞りしごき工程)を施すことにより、有底筒状に形成される。具体的にDI缶は、例えば2ピース缶の場合、板材打ち抜き工程、カッピング工程、DI工程、トリミング工程、印刷工程、塗装工程、ネッキング工程、ボトムリフォーム工程及びフランジング工程をこの順に経て、製造される。
【0046】
DI缶を製造する過程では、ブランクをカッピングプレスによって絞り加工(カッピング加工)し、カップ状体に成形する。つまりカップ状体は、上記カッピング工程において、ブランクからDI缶へ移行する過程で作製される成形中間体である。カップ状体は、DI缶よりも周壁の高さ(缶軸方向に沿う長さ)が小さく、底壁の直径が大きい有底筒状をなしている。
【0047】
次に、DI加工装置について説明する。
DI加工装置は、上記DI工程に用いられるものであり、カップ状体にDI加工(絞り(再絞り)しごき加工)を施して、DI缶に成形する。
【0048】
DI加工装置は、カップ状体が載置される受け座と、カップ状体を再絞り加工するための断面円形の貫通孔を有する一枚の再絞りダイと、この再絞りダイと同軸に配列される断面円形の貫通孔を有する複数枚(例えば3枚)のアイアニング・ダイ(しごきダイ)と、アイアニング・ダイと同軸とされ、各アイアニング・ダイの貫通孔の内部に嵌合可能とされ、ダイの中心軸方向に移動自在とされる円筒状又は円柱状のパンチスリーブと、このパンチスリーブの外側に嵌合する円筒状のカップホルダースリーブと、パンチスリーブを先端に支持するラム軸(主軸)と、ラム軸をその中心軸方向に移動自在に軸支する一対のラムベアリング1F、1R(流体軸受1)と、を備えている。
【0049】
上述した再絞りダイ、アイアニング・ダイ、パンチスリーブ及びカップホルダースリーブについては、例えば特開2007−216302号公報に記載されたものを用いることができる。
再絞りダイ、アイアニング・ダイ、パンチスリーブ、カップホルダースリーブ、ラム軸及びラムベアリングの各中心軸は、互いに同軸とされ、水平方向に延びて配置されている。
【0050】
DI加工装置によるカップ状体へのDI加工は、下記のように行われる。
受け座に載置されたカップ状体は、そのカップ軸(缶軸)を水平方向に延ばし、その開口部をパンチスリーブへ向けた状態で、パンチスリーブと再絞りダイとの間に配置される。
【0051】
このカップ状体に対して、カップホルダースリーブ及びパンチスリーブが前進移動する。そしてカップホルダースリーブが、再絞りダイの端面にカップ状体の底壁を押し付けてカップ押し付け動作を行いながら、パンチスリーブが、カップ状体を再絞りダイの貫通孔内に押し込んでいき、再絞り加工を施す。
【0052】
再絞り加工により、カップ状体よりも小径でカップ軸方向に沿う長さ(高さ)が大きいカップ状体が成形される。引き続き、このカップ状体をパンチスリーブで押し込んでいき、複数のアイアニング・ダイを順次通過させつつ徐々にしごき加工していく。つまり、カップ状体の周壁をしごいて該周壁を延伸させ、周壁高さを高くするとともに壁厚を薄くして、有底筒状のDI缶を成形する。このDI缶は、周壁がしごかれることで冷間加工硬化され、強度が高められる。
【0053】
しごき加工が終了したDI缶は、パンチスリーブがさらに前方に押し出して底部(缶底となる部分)をボトム成形金型に押圧することにより、この底部がドーム形状に形成される。
【0054】
次に、ラムベアリング1F、1R(流体軸受1)、ラムベアリング1F、1Rの異常検知装置10及び異常検知方法について説明する。
図1において、一対のラムベアリング1F、1Rは、水平方向に延びるラム軸(不図示)に対応して、水平方向に互いに離間して配置されている。これらのラムベアリング1F、1Rのうち、パンチスリーブに近い位置に配置されたものをフロントラムベアリング1Fといい、パンチスリーブに対してフロントラムベアリング1Fよりも離間して配置されたものをリアラムベアリング1Rという。
これらのラムベアリング1F、1Rは、ハイドロスタティック軸受や静圧軸受等と呼ばれる流体軸受1である。
【0055】
図2に示されるように、フロントラムベアリング1F及びその異常検知装置10は、軸受本体2と、軸受本体2に形成された軸受孔3と、軸受孔3の内周面に、該軸受孔3の中心軸O回りに互いに間隔をあけて開口する複数のポケット4と、複数のポケット4に連通する複数の流路28と、流路28に着脱可能に配設されるオリフィス5と、複数のポケット4に保持される流体の圧力を測定する複数の圧力センサー22と、制御部27と、を備えている。
また、流路28は、軸受本体2の内部に形成され、ポケット4に連通する第1流路11と、軸受本体2の内部に形成され、第1流路11が延在する方向に対して交差する向きに延びるとともに、第1流路11に連通する第2流路12と、を備えている。
【0056】
また、このフロントラムベアリング1Fは、第1流路11の延長線上に位置して軸受本体2の外面に開口する開口孔6と、開口孔6を塞ぐとともに、開口孔6に着脱可能に設けられた栓部7と、を備えている。
また、フロントラムベアリング1Fは、第1流路11に着脱可能に配設される筒状のオリフィスハウジング8を備えており、該オリフィスハウジング8内には、オリフィス5が装着される。つまりオリフィス5は、オリフィスハウジング8を介して、第1流路11に着脱可能に配設されている。
また、本実施形態のフロントラムベアリング1Fは、栓部7とオリフィスハウジング8とを一体に形成したボルト状体(取り付け筒体)9を備えている。
【0057】
軸受本体2は、本体部13と、軸受メタル部14と、を備えている。
図1に示されるフロントラムベアリング1Fにおいて、本体部13は、四角形板状をなす板状部と、該板状部の厚さ方向を向く両面(前後面)から軸受孔3の中心軸O(以下、ベアリング軸Oということがある)に沿ってそれぞれ突出する一対の筒状部と、を有する。
【0058】
図2において、軸受メタル部14は、筒状をなしており、本体部13をベアリング軸O方向に貫通する孔の内部に嵌合している。そして、軸受メタル部14をベアリング軸O方向に貫通する貫通孔が、ラム軸を軸支する軸受孔3とされている。つまり、軸受メタル部14の内周面が、フロントラムベアリング1Fの軸受孔3の内周面に相当する。
【0059】
軸受孔3の内周面には、ベアリング軸O回りの周方向に互いに間隔をあけて、ポケット4が複数形成されている。本実施形態では、軸受孔3の内周面に、ポケット4が周方向に等間隔をあけて少なくとも3つ以上形成されており、図示の例では4つ形成されている。
具体的には、軸受孔3の内周面のうち、上部、下部、及び一対の側部(左側部、右側部)にそれぞれポケット4が形成されており、これら4つのポケット4は、ベアリング軸O回りに(ベアリング軸Oを中心として)90°回転対称となる位置に配置されている。
【0060】
本実施形態の例では、ポケット4が、ラム軸の外周面に接近配置される凹状の開口部と、該開口部の底部中央に位置して軸受メタル部14の周壁を貫通する孔部と、を有している。
【0061】
各ポケット4には、油等の流体が保持される。詳しくは、ポケット4の開口部が、ラム軸の外周面に対向配置され、ポケット4及びラム軸の外周面により流体を保持可能な室が形成されて、この室内に流体が保持される。そして、ポケット4(室)に保持された流体に圧力を加えることで、フロントラムベアリング1Fは、流体圧によって軸受孔3の内周面からラム軸を離間させて(ラム軸を空中に浮かせて)支持する。
また、軸受孔3の内周面において、周方向に隣り合うポケット4同士の間には、ポケット4から流出した流体をベアリング外部に排出するための排出溝15が形成されている。
【0062】
軸受本体2の内部には、ベアリング外部からポケット4に流体を供給するための通路(流路28)として、第1流路11及び第2流路12が形成されている。軸受本体2の内部に形成された流路28には、該流路28を部分的に狭めるための後述するオリフィス5が配設される。流路28のうち、第1流路11が延在する方向と、第2流路12が延在する方向とは、互いに異なっており、これらの第1流路11、第2流路12同士は、互いに交差するように連通している。
【0063】
図2に示される例では、第1流路11が上下方向(縦方向)に延びており、第2流路12が左右方向(横方向)に延びていて、これらの流路11、12同士が、互いに直交するように接続している。
ただしこれに限定されるものではなく、第1流路11と第2流路12とは、例えば、互いの間に90°よりも大きい鈍角を形成するように交わっていてもよく、90°未満の鋭角を形成するように交わっていてもよい。
【0064】
本実施形態では、軸受孔3の内周面に開口する4つのポケット4に対応して、軸受本体2には4つの第1流路11(流路28)が形成されている。また、軸受本体2には、第2流路12が1つ形成されている。そして、4つの第1流路11のうち、上部ポケット4及び一対の側部ポケット4に連通する3つの第1流路11に対して、1つの第2流路12が接続している。
図2に示される例では、下部ポケット4に連通する第1流路11が、第2流路12に接続することなく軸受本体2の外面に開口している。
【0065】
本実施形態の例では、第1流路11が、ポケット4に開口する小径流路16と、小径流路16のポケット4とは反対側の端部に接続し、該小径流路16よりも内径が大きく形成された大径流路17と、を有している。
【0066】
小径流路16は、ポケット4の中央に配置された孔部に開口している。小径流路16のうちポケット4に接続する部分(流路先端部)は、該ポケット4から、ベアリング軸Oに直交する径方向の外側へ向けて延びている。
図2に示される例では、第2流路12に連通する3つの第1流路11のうち、上部ポケット4に連通する第1流路11の小径流路16が、該上部ポケット4から上方へ向けて延びている。また、一対の側部ポケット4に連通する一対の第1流路11の各小径流路16は、側部ポケット4から側方へ向けて延びた後、上方に向きを変えるように延びている。
【0067】
第1流路11の小径流路16の内径は、第2流路12の内径よりも小さくされている。具体的に、例えば、第2流路12の流路断面積は、該第2流路12に接続する複数の第1流路11における各小径流路16の流路断面積の和よりも大きくされている。
【0068】
大径流路17は、上下方向に延びている。
図2に示される例では、第2流路12に連通する3つの第1流路11における各大径流路17の下端部が、小径流路16にそれぞれ接続し、各大径流路17の上端部は、第2流路12に開口している。
また、大径流路17の内周面には、雌ネジ部が形成されている。
【0069】
本実施形態の例では、第2流路12が、軸受本体2を左右方向に貫通して形成されている。第2流路12の延在方向に沿う両端部のうち、一端部(
図2における右端部)は、軸受本体2の側面(外面)に開口しているとともに、この開口部分が流体を受け入れる流入口とされ、他端部(
図2における左端部)は、プラグ(栓)により閉塞されている。
【0070】
このフロントラムベアリング1Fでは、軸受本体2における第2流路12のベアリング軸O方向に沿う位置と、第1流路11のベアリング軸O方向に沿う位置とが、互いに同一である。つまり、ベアリング軸Oに垂直な1つの仮想平面内に、第1流路11及び第2流路12がともに配置されている。
【0071】
軸受本体2において、第1流路11の上方へ向けた延長線上に位置する部分には、第1流路11と同軸に配置された開口孔6が形成されている。図示の例では、開口孔6が、軸受本体2の外面に開口し、第2流路12を通して、第1流路11の大径流路17に連通している。具体的に本実施形態では、開口孔6が、第1流路11の延在方向に対応して上下方向に延びており、第1流路11の上方に位置する第2流路12を通して、第1流路11に連通している。また、開口孔6の上端は、軸受本体2の上面(外面)に開口し、開口孔6の下端は、第2流路12に開口している。
【0072】
開口孔6の内径は、後述するボルト状体9の軸部の外径よりも大きく、ボルト状体9の頭部の外径よりも小さい。従って、開口孔6内には、ボルト状体9の軸部を挿通可能であり、頭部は挿通不可である。
【0073】
図4(a)、(b)に示されるように、ボルト状体(取り付け筒体)9は、軸部と、該軸部よりも外径が大きい頭部と、を有している。
図2において、このボルト状体9が軸受本体2に装着されたときに、ボルト状体9の中心軸Cは、第1流路11の大径流路17の延在方向に沿って上下方向に延びて配置される。
【0074】
図4(a)において、ボルト状体9の軸部と頭部とは、中心軸Cを共通軸として互いに同軸に配置されている。
軸部は、ボルト状体9の中心軸C方向に沿って延びている。軸部は、オリフィス5が装着される筒状のオリフィスハウジング8と、頭部に連結される中実部18と、中実部18とオリフィスハウジング8とを接続する筒状の接続部19と、を有している。
【0075】
オリフィスハウジング8の外周面には、雄ネジ部が形成されている。また、オリフィスハウジング8の内周面には、雌ネジ部が形成されている。
図2において、オリフィスハウジング8の雄ネジ部が、大径流路17の雌ネジ部に螺着することにより、オリフィスハウジング8(及びボルト状体9)は、第1流路11に対して取り外し可能に装着される。つまり、軸受本体2にボルト状体9が取り付けられたときに、オリフィスハウジング8は、大径流路17内に配設される。
【0076】
本実施形態の例では、
図2に示されるように、オリフィスハウジング8内に配設されるオリフィス5が、筒状をなしている。オリフィス5には、該オリフィス5をその中心軸方向に貫通する貫通孔が形成されており、この貫通孔がオリフィス孔(絞り孔)とされている。オリフィス5は、オリフィスハウジング8に対して同軸に配置される。オリフィス5の外周面には、雄ネジ部が形成されており、該雄ネジ部がオリフィスハウジング8の雌ネジ部に螺着することにより、オリフィス5は、オリフィスハウジング8に取り外し可能に装着される。
【0077】
軸受本体2内においてオリフィス5は、オリフィスハウジング8が配設される位置に対応して配置される。具体的に、オリフィス5は、第1流路11のうちポケット4に開口する部分(小径流路16)と、第2流路12と、の間に位置する第1流路11の部分(大径流路17)に配設される。
オリフィス5のオリフィス孔の内径(オリフィス径)は、例えば1mm未満に設定される。軸受本体2の内部に形成された流路28のうち、オリフィス5に対応する部分は、流路断面積が最も小さくされている。
【0078】
図2に示される例では、オリフィス5の全長が、オリフィスハウジング8の下端から小径流路16の上端までの距離よりも、長くされている。具体的には、オリフィスハウジング8の下端面に対して、オリフィス5の下端面が、下方に突出して配置されており、オリフィスハウジング8へのオリフィス5のねじ込み量(オリフィスハウジング8の中心軸C方向に沿う該オリフィスハウジング8に対するオリフィス5の挿入長さ)が、第1流路11の延在する上下方向(上記中心軸C方向と同一の方向)に沿うオリフィスハウジング8の下端面から小径流路16の上端縁までの長さよりも、大きくされている。
また、オリフィス5の外径が、第1流路11の小径流路16の内径よりも大きくされている。
これにより、第1流路11の大径流路17内において、オリフィス5がオリフィスハウジング8から脱落するようなことが防止されている。
【0079】
図4(a)において、ボルト状体9の軸部の外径は、オリフィスハウジング8、中実部18、接続部19の順に小さくされている。
中実部18は、中実の軸状をなしている。
図2に示されるように、軸受本体2にボルト状体9が取り付けられたときに、中実部18は、開口孔6内に配設される。
【0080】
図2及び
図4(a)、(b)において、接続部19の外周面には、中心軸C回りに互いに間隔をあけて複数の連通孔20が開口している。接続部19においてこれらの連通孔20は、中心軸Cに直交する径方向に沿って延びており、互いに中心軸C回りに等間隔をあけて配置されているとともに、互いに中心軸C上で連通している。本実施形態の例では、接続部19の外周面に、連通孔20が4つ開口している。なお、接続部19の外周面に開口する連通孔20の数は、4つに限られるものではなく、例えば3つ以下や5つ以上であってもよい。また、これらの連通孔20と、オリフィスハウジング8の内部(オリフィス5が配設される貫通孔)とは、互いに連通している。
【0081】
図2に示されるように、軸受本体2にボルト状体9が取り付けられたときに、接続部19は、第2流路12内に配設される。そして、接続部19の連通孔20は、第1流路11と第2流路12とを連通する。具体的に、第2流路12に開口する連通孔20と、第1流路11の大径流路17とは、オリフィスハウジング8の貫通孔及びオリフィス5の貫通孔を通して互いに連通されており、これにより、第2流路12と第1流路11とが互いに連通している。
このように本実施形態では、有頂筒状をなすボルト状体9の内部を通して、第1流路11と第2流路12とが互いに連通する。
【0082】
軸受本体2にボルト状体9が取り付けられたときに、該ボルト状体9の頭部は、軸受本体2の開口孔6を塞いで軸受本体2の上面(外面)に当接する。つまり、ボルト状体9の頭部は、開口孔6に取り外し可能に配設されて該開口孔6を閉じる栓部7とされている。
図2に示される例では、ボルト状体9の頭部と、軸受本体2の上面との間に、環状のパッキン(シール部材)21が配設されている。
【0083】
なお、本実施形態では、フロントラムベアリング1Fが、栓部7とオリフィスハウジング8とを一体に形成したボルト状体(取り付け筒体)9を備えていることとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、開口孔6に装着される栓部7と、第1流路11に装着されるオリフィスハウジング8とは、互いに別体に設けられていてもよい。
【0084】
図1及び
図2において、本実施形態のフロントラムベアリング1Fは、ポケット4に保持される流体の圧力を測定する圧力センサー22と、軸受本体2の軸受孔3付近(軸受孔3に接近配置された部分)及びポケット4に保持される流体のうち、いずれかの温度を測定する温度センサー23と、を備えている。
また、DI加工装置におけるベアリング外部には、複数の流路28のオリフィス5よりも上流側に設けられ、該流路28に供給される流体の流量を測定する流量計24と、流体軸受1に対してラム軸(主軸)を移動させる駆動部25と、圧力センサー22、温度センサー23及び流量計24により測定された各測定値を表示するモニター(表示部)26と、制御部27と、が備えられる。
【0085】
圧力センサー22は、軸受孔3のポケット4からラム軸に作用する流体の圧力を測定する。具体的に、
図2において圧力センサー22は、軸受本体2の流路28のうち、ポケット4とオリフィス5との間に位置する第1流路11の部分(小径流路16)、及び、ポケット4のうち、いずれかの流体圧を測定する。つまり、圧力センサー22は、流路28を通して間接的にポケット4に保持される流体の圧力を測定するか、又は、直接的にポケット4に保持される流体の圧力を測定する。
【0086】
圧力センサー22は、複数のポケット4の数に対応して、軸受本体2に複数設けられている。本実施形態の例では、軸受孔3の内周面に4つのポケット4が開口しており、これに対応して、圧力センサー22が軸受本体2に4つ配設されている。
【0087】
具体的に、
図1及び
図2において、軸受本体2に取り付けられた複数の圧力センサー22には、上部ポケット4の流体圧を測定するものが1つ、一対の側部ポケット4に連通する各第1流路11の流体圧を測定するものが2つ、下部ポケット4の流体圧を測定するものが1つ、含まれる。
【0088】
本実施形態においては、温度センサー23が、軸受本体2の軸受孔3付近及びポケット4に保持される流体のうち、前記軸受孔3付近の温度を測定する。具体的には、温度センサー23が、軸受本体2のうち、軸受孔3を形成する軸受メタル部14の温度を測定する。本実施形態の例では、温度センサー23が、軸受メタル部14の外周面の温度を測定するように軸受本体2に配設されている。
【0089】
温度センサー23は、軸受孔3の内周面に開口する複数のポケット4に対応して、軸受本体2に複数設けられている。本実施形態の例では、軸受孔3の内周面に4つのポケット4が形成されており、これに対応して、温度センサー23が軸受本体2に4つ配設されている。また、温度センサー23としては、例えば熱電対が用いられる。
【0090】
詳しくは、軸受本体2に取り付けられた複数の温度センサー23には、軸受メタル部14のうち、上部ポケット4に対応する部分の温度を測定するもの(不図示)が1つ、一対の側部ポケット4に対応する各部分の温度を測定するものが2つ、下部ポケット4に対応する部分の温度を測定するものが1つ、含まれる。
【0091】
図2に示される例では、4つのポケットのうち、一対の側部ポケット4に対応して軸受本体2に設けられた一対の圧力センサー22及び一対の温度センサー23が、ベアリング軸Oに垂直な1つの仮想平面内に配置されている。また、下部ポケット4に対応して軸受本体2に設けられた温度センサー23も、上記仮想平面内に配置されている。
具体的には、軸受本体2に4つずつ設けられた圧力センサー22及び温度センサー23のうち、上記した2つの圧力センサー22及び3つの温度センサー23は、軸受本体2の本体部13における板状部に配置されており、上記以外の2つの圧力センサー22及び1つの温度センサー23は、本体部13における筒状部に配設されている。
【0092】
特に図示していないが、フロントラムベアリング1Fの内部又は外部には、軸受本体2の流路28に供給される油等の流体の温度(供給温度)を測定する供給流体用温度センサーが備えられている。
供給流体用温度センサーが、フロントラムベアリング1Fの内部において流体の温度を測定する場合には、該供給流体用温度センサーは、オリフィス5よりも上流側の、例えば第2流路12の流体の温度を測定するように配設される。また、供給流体用温度センサーが、フロントラムベアリング1Fの外部において流体の温度を測定する場合には、該供給流体用温度センサーは、例えば流量計24の下流側又は上流側の流体の温度を測定するように配設される。
【0093】
流量計24は、油等の流体を加圧して軸受本体2の流路28に供給する加圧ポンプ等の加圧流体供給源(不図示)と、軸受本体2の流路28と、の間の配管経路に設けられている。本実施形態の例では、流量計24は、1つのフロントラムベアリング1Fに対して、1つ設けられている。つまり、フロントラムベアリング1Fの4つの流路28に対して、これらの流路28の上流側に、1つの流量計24が設けられている。ただしこれに限定されるものではなく、例えば流量計24は、フロントラムベアリング1Fの複数のポケット4に対応して、複数設けられていてもよい。また、本実施形態では、流量計24がベアリング外部に設けられているが、例えば、ベアリングの外形が大きく流量計24を収容可能な場合には、軸受本体2の内部における流路28のオリフィス5よりも上流側に、流量計24を設けてもよい。
【0094】
図2において、加圧流体供給源から流量計24を通り、該流量計24から軸受本体2へ向けて流出した流体は、該軸受本体2の外部又は内部で分岐された流路内を通って、各ポケット4へと供給される。なお、
図2においては、流量計24から、上部ポケット4及び一対の側部ポケット4に連通する第2流路12へ向けた配管経路のみを図示しており、流量計24から、下部ポケット4に連通する第1流路11へ向けた配管経路については図示を省略している。
【0095】
駆動部25は、軸受本体2と、該軸受本体2の軸受孔3に挿通されたラム軸(主軸)と、を相対的に移動させる。本実施形態では、駆動部25が、一対のラムベアリング1F、1Rに対して、ラム軸をその中心軸方向(ベアリング軸O方向)に往復移動させる。
【0096】
図5に示されるように、モニター26には、少なくとも圧力センサー22が測定した圧力の測定値が表示される。本実施形態では、モニター26に、圧力センサー22が測定した圧力の測定値、温度センサー23が測定した温度の測定値、及び、流量計24が測定した流量の測定値(単位時間あたりの流体の流量)が表示される。
また、モニター26には、必要に応じて各測定値に関連するアラーム値(異常判定値)等が表示される。
【0097】
図5において、本実施形態では、モニター26には上記した各測定値以外に、各種のアラーム値及び上記以外の測定値等が表示される。具体的には、温度の上限値である温度上限アラーム値(所定値)、圧力の下限値である圧力下限アラーム値(所定値)、圧力の測定値のうちMAX値、MIN値、圧力差(MAX値−MIN値)、及び、圧力差の上限値である圧力差アラーム値(所定値)が表示される。
【0098】
なお、特に図示していないが、モニター26にはさらに、圧力の上限値である圧力上限アラーム値(所定値)が表示されてもよい。また、流量の適正な数値範囲のうち、上限値である流量上限アラーム値(所定値)及び下限値である流量下限アラーム値(所定値)が表示されてもよい。
また、フロントラムベアリング1Fに供給される油等の流体の温度(供給温度)、前記流体の温度の適正な数値範囲のうち、上限値である流体温度上限アラーム値(所定値)及び下限値である流体温度下限アラーム値(所定値)等が表示されてもよい。
【0099】
また、モニター26には、圧力センサー22、温度センサー23及び流量計24により測定した各測定値、並びに、圧力のMAX値、MIN値、圧力差等の各数値を、継時的な測定結果として示す複数種類のグラフや表(一覧表)が表示可能である。
なお、モニター26は、作業者が画面をタッチすることにより、所期する操作(例えば各種のデータ(記録した測定値、グラフ、表)を表示させる操作や、装置の設定操作等)を行うことが可能なタッチパネル等であってもよい。
【0100】
制御部27は、圧力センサー22、温度センサー23、流量計24、駆動部25及びモニター26等の各電気部品に、電気的に接続されている。制御部27は、圧力センサー22、温度センサー23及び流量計24が測定した各測定値を、所定時間にわたって記録することができ、また、モニター26に表示させることができる。
【0101】
そして、制御部27は、複数の圧力センサー22が測定した圧力の測定値のうち、最大値(MAX値)と最小値(MIN値)との差(上記圧力差。具体的には最大圧力差)が、所定値(圧力差アラーム値)以上となったときに、異常を検知する。
本実施形態では、圧力のMAX値とMIN値との差が、例えば0.50MPa以上となったときに、制御部27が異常を検知する。
【0102】
また、上記異常検知に代えて、又はこれとともに、制御部27は、複数の圧力センサー22が測定した圧力の測定値のうち、最小値(MIN値)が所定値(圧力下限アラーム値)以下となったとき、又は、最大値(MAX値)が所定値(圧力上限アラーム値)以上となったときに、異常を検知する。
本実施形態では、圧力のMIN値が、例えば2.50MPa以下となったときに、制御部27が異常を検知する。また、圧力のMAX値が、例えば9.0MPa以上となったときに、制御部27が異常を検知することとしてもよい。
【0103】
また、制御部27は、温度センサー23が測定した温度の測定値が所定値(温度上限アラーム値)以上となったときに、異常を検知する。詳しくは、複数の温度センサー23が測定した温度の各測定値のうち、最大値(MAX値)が所定値(温度上限アラーム値)以上となったときに、制御部27が異常を検知する。
本実施形態では、温度(のMAX値)が、例えば50.0℃以上となったときに、制御部27が異常を検知する。
【0104】
また、制御部27は、流量計24が測定した流量の測定値が所定の数値範囲外となったときに、異常を検知する。詳しくは、流量計24が測定した流量の測定値が、所定の数値範囲(予め設定した適正な数値範囲)の上限値(流量上限アラーム値)よりも大きくなったとき、及び、下限値(流量下限アラーム値)よりも小さくなったときのいずれかにおいて、制御部27は異常を検知する。
本実施形態では、流量の適正な数値範囲が、例えば2〜20L/minである。
【0105】
また、制御部27は、供給流体用温度センサー(軸受本体2の流路28に供給される流体の温度(供給温度)を測定する温度センサー)が測定した温度の測定値が所定の数値範囲外となったときに、異常を検知する。詳しくは、供給流体用温度センサーが測定した温度の測定値が、所定の数値範囲(予め設定した適正な数値範囲)の上限値(流体温度上限アラーム値)よりも大きくなったとき、及び、下限値(流体温度下限アラーム値)よりも小さくなったときのいずれかにおいて、制御部27は異常を検知する。
本実施形態では、軸受本体2の流路28に供給される流体の温度の適正な数値範囲が、例えば20〜50℃である。
【0106】
そして、制御部27が異常を検知したときには、異常を検知するまでの各測定値等(複数種類の測定値及び上記圧力差等)の推移を、モニター26に所定時間遡って表示することが可能である。
具体的に、制御部27は、異常を検知した後、各測定値等の記録を停止する。そしてモニター26に、例えば10分程度の時間を遡って、各測定値等について、折れ線グラフなどの波形や一覧表等によりデータを表示させる。
【0107】
また、制御部27は、異常を検知したときに、駆動部25を停止する。
具体的に、制御部27は、異常を検知したときに、少なくとも駆動部25を停止させ、かつ、例えばモニター26に異常を検知したことを表示させ、不図示のブザーを鳴らしたり、不図示のランプを点灯(明滅など)させたりする等によって、異常を検知したことを作業者に知らせる。
【0108】
図6に示されるものは、制御部27が、圧力センサー22の測定値等の異常を検知した場合に、その原因等を判断するためのフロー図の一例である。なお、このフロー図は、制御部27が異常を検知する以前において、モニター26に表示される圧力の測定値等に増減の変化が認められる場合にも、予め参照することができる。
【0109】
図6における上段は、流体の「圧力」の変化を場合分けして表している。
具体的には、例えば、圧力(の測定値)が、複数のポケット4全体に所定値(圧力上限アラーム値)以上に高くなった場合又は所定値(圧力下限アラーム値)以下に低くなった場合、圧力が、複数のポケット4のうち特定のポケット4について所定値(圧力上限アラーム値)以上に高くなった場合又は所定値(圧力下限アラーム値)以下に低くなった場合、及び、最大圧力差(MAX値−MIN値)が、所定値(圧力差アラーム値)以上に大きくなった場合、をそれぞれ表している。
【0110】
また、
図6における下段は、流体の「流量」の変化を場合分けして表している。
具体的には、上述した圧力の変化を場合分けした各ケースにおいて、例えば、流量(の測定値)が、高い場合(適正な数値範囲外であり、流量上限アラーム値よりも大きい場合)、適正な数値範囲の場合、低い場合(適正な数値範囲外であり、流量下限アラーム値よりも小さい場合)、をそれぞれ表している。
【0111】
そして、圧力に変化が生じた場合に、この圧力の測定値と流量の測定値との組合せによって、
図6に示される(I)〜(XIII)に応じて、下記のように原因を判断したり推定したりすることができる。
なお、実際には下記(I)〜(XIII)のすべての事例が起こり得るわけではないことから、異常の発生が考えにくい事例については「経験無し」としている。経験無しの事例が発生した場合は、装置を分解したり各構成要素を検査したりして、適宜原因を究明すればよい。
【0112】
(I)…流体の供給元圧の設定異常。リリーフ弁故障。
(II)…経験無し。
(III)…経験無し。
(IV)…経験無し。
(V)…経験無し。
(VI)…流体の供給元圧の設定異常。供給流体用のフィルタ詰まり。リリーフ弁故障。加圧ポンプ(加圧流体供給源)故障。
(VII)…経験無し。
(VIII)…オリフィス詰まり。
(IX)…オリフィス詰まり。
(X)…オリフィス内径異常(オリフィス孔の変形、拡大)。
(XI)…ラムベアリング内径異常(軸受孔の摩耗等による部分的な変形)。
(XII)…経験無し。
(XIII)…オリフィス詰まり。オリフィス内径異常(オリフィス孔の変形、拡大)。ラムベアリング内径異常(軸受孔の摩耗等による部分的な変形)。
【0113】
次に、
図1及び
図3に示されるリアラムベアリング1R、リアラムベアリング1Rの異常検知装置10及び異常検知方法について説明する。なお、前述したフロントラムベアリング1Fと同じ構成要素については詳細な説明を省略し、主として異なる点についてのみ、下記に説明する。
【0114】
リアラムベアリング1Rの軸受本体2は、その本体部13が直方体状をなしている。本体部13には、ラムベアリング1F、1Rの各軸受孔3同士をベアリング軸O上に同軸に位置合わせ(芯合わせ)するための調整ネジが複数配設されている。
【0115】
図3に示されるように、このリアラムベアリング1Rでは、軸受本体2における第1流路11のベアリング軸O方向に沿う位置と、第2流路12のベアリング軸O方向に沿う位置とが、互いに異なっている。つまり、第1流路11が配置されるベアリング軸Oに垂直な仮想平面と、第2流路12が配置されるベアリング軸Oに垂直な仮想平面とは、互いにベアリング軸O方向に離間する異なった面である。
【0116】
また、軸受本体2において開口孔6は、第2流路12を通ることなく、直接的に第1流路11の大径流路17に接続している。そして、開口孔6と第1流路11との接続部分に対して、第2流路12が、ベアリング軸O方向から接続しているとともに、第1流路11に連通する。
具体的に、第1流路11と第2流路12とが交差して接続する部分には、ボルト状体9における接続部19及びその連通孔20が配置されており、該連通孔20を通して、第1流路11と第2流路12とが連通している。
【0117】
このリアラムベアリング1Rにおいては、軸受孔3に形成される複数のポケット4のうち、所定の(1つの)ポケット4に対応して軸受本体2に設けられた圧力センサー22と温度センサー23とが、ベアリング軸O方向に互いに離間して配置されている。
【0118】
リアラムベアリング1Rに接続される流量計24としては、前述したフロントラムベアリング1Fに接続される流量計24とは、別体が用いられる。つまり、本実施形態の例では、DI加工装置に、各ラムベアリング1F、1R用として2つの流量計24が設けられている。
図2及び
図3に示される駆動部25、モニター26及び制御部27については、両ラムベアリング1F、1R共用であり、同一品(共通品)である。
【0119】
以上説明した本実施形態の流体軸受1(1F、1R)の異常検知装置10及び異常検知方法によれば、複数のポケット4に連通する各流路28に、オリフィス5が着脱可能に設けられている。また、各ポケット4に保持される流体の圧力を測定する圧力センサー22が設けられている。つまり、複数の圧力センサー22によって、複数のポケット4の流体圧を、それぞれ測定することができる。
【0120】
そして、これらの圧力センサー22が測定した圧力の測定値のうち、最大値と最小値との差(圧力差)が所定値以上に大きくなったときに、制御部27が異常を検知する。つまり、複数の圧力センサー22が測定した各測定値同士の間の最大圧力差が、所定値(圧力差アラーム値)以上となったときに、オリフィス詰まりが発生したものとして、異常と判断する。
【0121】
具体的に、複数のポケット4の流路28に設けられる各オリフィス5のうち、いずれかのオリフィス5の流路に詰まりが生じると、このオリフィス5の流路が連通するポケット4の流体圧を測定する圧力センサー22の測定値に変化が生じて、各圧力センサー22の測定値同士の間の圧力差が大きくなる。
そして本実施形態では、このように各ポケット4同士の間で流体の圧力差が生じた場合に、圧力の最大値と最小値との差(最大圧力差)が所定値よりも小さければ異常とは判断せず、所定値以上に大きくなったときに、軸受孔3の中心軸Oと、ラム軸の中心軸との同軸度が十分に確保できなくなったものとして(又はそのおそれがあるものとして)、異常と判断する。
【0122】
また本実施形態では、複数の圧力センサー22が測定した圧力の測定値のうち、最小値が所定値(圧力下限アラーム値)以下に小さくなったとき、又は、最大値が所定値(圧力上限アラーム値)以上に大きくなったときに、オリフィス詰まりが発生したものとして、制御部27が異常を検知する。
【0123】
具体的に、複数のポケット4の流路28に設けられる各オリフィス5のうち、いずれかのオリフィス5の流路に詰まりが生じると、このオリフィス5の流路が連通するポケット4の流体圧を測定する圧力センサー22の測定値に変化が生じる。
そして本実施形態では、このように圧力センサー22の測定値に変化が生じたときに、圧力の最小値が所定値よりも大きい場合、又は、圧力の最大値が所定値よりも小さい場合には、異常とは判断せず、圧力の最小値が所定値以下に小さくなった場合、又は、圧力の最大値が所定値以上に大きくなったときに、軸受孔3の中心軸Oと、ラム軸の中心軸との同軸度が十分に確保できなくなったものとして(又はそのおそれがあるものとして)、異常と判断する。
【0124】
従って、上記の各所定値を適宜設定することにより、異常(オリフィス詰まり)を確実に検知して、オリフィス5を適正なタイミングで清掃することができる。
つまり、従来のようにオリフィス5を過度に(必要以上に)高い頻度で清掃して手間をかけることなく、DI加工装置によるDI缶の加工精度を良好に維持でき、かつ、流体軸受1(1F、1R)やラム軸に摩耗や損傷等が発生するようなことを防止できる。
【0125】
以上より本実施形態によれば、オリフィス5の流路に詰まりが生じたことを検知することができ、適正なタイミングでオリフィス5の清掃を行うことができる。
【0126】
また本実施形態では、軸受孔3の内周面に、該軸受孔3の中心軸O回りに等間隔をあけて少なくとも3つ以上のポケット4が形成されているので、これらのポケット4に保持される流体の圧力により、軸受孔3の内周面からラム軸を確実に離間させることができるとともに、同軸に配置しやすくなり、ラム軸を安定して軸支できる。
そして、3つ以上のポケット4に保持された流体の圧力を、ポケット4と同数の3つ以上の圧力センサー22で測定することにより、異常検知の精度を高めることができ、上述した本実施形態の作用効果がより安定的に奏功される。
なお本実施形態では、軸受孔3の内周面に、該軸受孔3の中心軸O回りに等間隔をあけて4つのポケット4が形成されているので、装置の構造を複雑にし過ぎることなく、本実施形態の作用効果をより格別顕著なものとすることができる。
【0127】
また本実施形態では、制御部27が、温度センサー23が測定した温度の測定値が所定値(温度上限アラーム値)以上となったときに、異常を検知するので、下記の作用効果を奏する。
【0128】
すなわち、オリフィス詰まりが発生し、このオリフィス5が配設された流路28に対応するポケット4の流体圧が低下すると、軸受孔3の中心軸Oと、該軸受孔3に軸支されるラム軸の中心軸との軸位置がずれていく。これらの軸間距離が大きくなっていくと、最終的には、軸受孔3の内周面に対してラム軸の外周面が接触する。
【0129】
本実施形態の上記構成によれば、軸受本体2の軸受孔3付近(軸受孔3に接近配置された部分)及びポケット4に保持される流体のうち、いずれかの温度を測定する温度センサー23が設けられている。そして、温度センサー23の測定値が所定値以上に大きくなったときに、制御部27が異常を検知する。
つまり、軸受孔3とラム軸とが接触したときに、その接触抵抗(摩擦)により軸受孔3付近やポケット4内の流体の温度が上昇したことを、温度センサー23が測定した温度の測定値に基づいて判断することができる。従って、上述した圧力センサー22による異常検知と相俟って、流体軸受1(1F、1R)の異常の検知をより確実に行うことができる。
【0130】
また本実施形態では、軸受孔3の内周面に開口する複数のポケット4に対応して、複数の温度センサー23が設けられている。従って、オリフィス詰まりが発生し、これらのポケット4のうち、特定のポケット4に向けてラム軸が接近し、軸受孔3の内周面に接触した場合であっても、該ポケット4近傍の温度上昇を、このポケット4に対応する温度センサー23により精度よく測定することができる。従って、異常検知の精度が高められる。
【0131】
また本実施形態では、複数の流路28のオリフィス5よりも上流側に、流量計24が備えられており、流量計24が測定した流量の測定値が所定の数値範囲外となったとき(適正な数値範囲内から上下いずれかに外れたとき)に、制御部27が異常を検知する。
すなわち、例えば、オリフィス詰まりが複数のオリフィス5全体に進行している場合や、流体の供給元圧の設定異常、リリーフ弁の故障などが生じた場合においては、流量計24の測定値が、所定の数値範囲よりも小さくなったり大きくなったりするので(流量下限アラーム値よりも小さくなったり、流量上限アラーム値よりも大きくなったりするので)、この測定値に基づいて異常を判断することができる。従って、異常の検知をより確実に行うことができる。
【0132】
また本実施形態では、供給流体用温度センサーが測定した温度の測定値が所定の数値範囲外となったときに、制御部27が異常を検知するので、下記の作用効果を奏する。
【0133】
すなわち、軸受本体2の流路28に供給される流体の温度が、該流体の種別に応じた所定の数値範囲外となったとき(適正な数値範囲内から上下いずれかに外れたとき)には、流体の粘性等に変化が生じて、所期する流体の機能(軸受孔3の内周面からラム軸を浮かせて、これらの摺動を潤滑する機能等)が安定して得られなくなるおそれがある。例えば、流路28に供給される流体の温度が所定の数値範囲(の下限)より低い場合には、流体の粘性が増大して滑らかな摺動を促せなくなることがある。前記流体の温度が所定の数値範囲(の上限)より高い場合には、流体の粘性が低下してポケット4から流出しやすくなり、流体による摺動機能や芯合わせ機能が安定しなくなることがある。また、流路28に供給される流体の温度が所定の数値範囲(の上限)より高いと、流体軸受1の金属部品(軸受メタル部14など)が温度上昇しやすくなり、焼き付き等の原因にもなる。
【0134】
本実施形態の上記構成によれば、軸受本体2の流路28に供給される流体の温度を測定する供給流体用温度センサーが設けられており、該供給流体用温度センサーの測定値が所定の数値範囲外となったときに、制御部27が異常を検知する。
従って、ポケット4に保持される流体の機能を安定して発揮させることができるとともに、流体の機能が十分に発揮できなくなるおそれが生じたときには異常を検知して、軸受孔3及びラム軸の摩耗や損傷等を防止することができる。また、流体軸受1の金属部品の焼き付き等を防止できる。
【0135】
また本実施形態では、少なくとも圧力センサー22が測定した圧力の測定値を表示するモニター(表示部)26が備えられ、制御部27が異常を検知したときに、異常を検知するまでの測定値の推移を、モニター26に所定時間遡って表示可能であるので、下記の作用効果を奏する。
【0136】
すなわちこの場合、少なくとも圧力センサー22が測定した圧力の測定値を表示するモニター26が備えられているので、圧力の測定値がどのような状況にあるか(高いか低いか)を、作業者が必要に応じて確認できる。
そして、制御部27が異常を検知したときに、異常を検知するまでの測定値の推移を、モニター26に所定時間遡って表示可能であるので、異常が発生した時に、たとえ作業者がその場に居合わせなくても、異常発生までの測定値の推移を遡って確認することができる。従って、異常がいつ発生したかを確認したり、異常発生箇所や原因を特定したりすることなどが可能になる。
【0137】
なお、本実施形態では、モニター26に、上記圧力センサー22が測定した圧力の測定値の他、圧力のMAX値、MIN値、圧力差(MAX値−MIN値)、温度センサー23が測定した温度の測定値、及び、流量計24が測定した流量の測定値(単位時間あたりの流体の流量)が表示される。また、モニター26には、上述の各測定値等に関連するアラーム値(異常判定値)が表示される。さらに、上述の各測定値等を、継時的な測定結果として複数種類のグラフや表(一覧表)により表示可能である。
従って、作業者が必要に応じて各種のデータを確認することができる。また、異常が発生した場合には、異常がいつ発生したかを確認したり、異常発生箇所や原因を特定したりする作業がより精度よく行え、かつ容易になる。
【0138】
また本実施形態では、制御部27が異常を検知したときに、軸受本体2とラム軸とを相対移動させる駆動部25を停止するので、DI加工装置の損傷やワークのジャム(成形品詰まり)等を抑制できる。
【0139】
なお、本実施形態では、制御部27が、異常を検知したときに、少なくとも駆動部25を停止させ、かつ、例えばモニター26に異常を検知したことを表示させ、ブザーを鳴らしたり、ランプを点灯(明滅など)させたりする等によって、異常を検知したことを作業者に知らせる。従って、上述した作用効果を奏するとともに、DI加工装置を異常発生状態から早期に復帰させることが可能になる。
【0140】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0141】
例えば、前述の実施形態では、流体軸受1及びその異常検知装置10が、カップ状体にDI加工を施してDI缶とするDI加工装置に設けられることとしたが、
参考例ではこれに限定されるものではない。つまり、本発明の
参考例では、流体軸受及びその異常検知装置は、前述したDI加工装置以外の種々の装置(加工装置等)に設けることが可能であるとともに、前述同様に優れた作用効果を奏する。
【0142】
また、前述の実施形態では、一対のラムベアリング1F、1Rが、ラム軸(主軸)を中心軸O方向に移動自在(つまりスライド移動自在)に軸支することとしたが、
参考例ではこれに限定されるものではない。例えば、本発明をDI加工装置以外の装置に適用する場合など
の参考例において、一対のラムベアリング1F、1Rは、ラム軸をその中心軸O回りに回転移動自在に軸支することとしてもよい。この場合、駆動部25は、一対のラムベアリング1F、1Rに対して、ラム軸をその中心軸O回りに回転移動させる。
【0143】
また、前述の実施形態では、一対のラムベアリング1F、1Rが、水平方向に延びるラム軸に対応して、水平方向に互いに離間して配置されることとしたが、これに限定されるものではない。例えば
、一対のラムベアリング1F、1Rが、鉛直方向に延びるラム軸に対応して、鉛直方向に互いに離間して配置されていてもよい。
【0144】
また、前述の実施形態では、制御部27が、複数の圧力センサー22が測定した圧力の測定値(MAX値、MIN値、MAX値−MIN値)のいずれかに基づいて、異常を検知し、それ以外に下記の条件においても、異常を検知することとした。すなわち、温度センサー23が測定した温度の測定値が所定値以上となったとき、流量計24が測定した流量の測定値が所定の数値範囲外となったとき、及び、供給流体用温度センサーが測定した温度の測定値が所定の数値範囲外となったときにも、制御部27が異常を検知する。ただし本発明はこれに限定されるものではなく、制御部27は、少なくとも複数の圧力センサー22が測定した圧力の測定値(MAX値、MIN値、MAX値−MIN値)のいずれかに基づいて異常を検知すればよく、それ以外の上記条件においては異常を検知しなくてもよい。従ってこの場合、温度センサー23、流量計24及び供給流体用温度センサーは設けられていなくてもよい。
ただし、制御部27が、圧力以外の温度や流量等の条件によっても異常を検知することにより、本発明の作用効果がより格別顕著なものとなることから、好ましい。
【0145】
また、前述の実施形態では、少なくとも圧力センサー22が測定した圧力の測定値を含む各種のデータを表示可能なモニター(表示部)26が設けられることとしたが、モニター26は設けられていなくてもよい。
【0146】
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例及びなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。