(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851203
(24)【登録日】2021年3月11日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】転石地帯における地中配管の施工方法
(51)【国際特許分類】
F16L 1/028 20060101AFI20210322BHJP
【FI】
F16L1/028 J
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-5100(P2017-5100)
(22)【出願日】2017年1月16日
(65)【公開番号】特開2018-115676(P2018-115676A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2019年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】514219536
【氏名又は名称】あすか創建株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】内田 佳邦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 卓雄
(72)【発明者】
【氏名】小椋 裕次
(72)【発明者】
【氏名】平川 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】三好 守
(72)【発明者】
【氏名】上田 隆太郎
(72)【発明者】
【氏名】鴨下 裕介
【審査官】
伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−055902(JP,A)
【文献】
特開昭62−045891(JP,A)
【文献】
特開昭58−007038(JP,A)
【文献】
実開昭60−139896(JP,U)
【文献】
特開平07−097818(JP,A)
【文献】
特開2004−210493(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3196921(JP,U)
【文献】
中国特許出願公開第106320156(CN,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0286681(US,A1)
【文献】
米国特許第04537531(US,A)
【文献】
登録実用新案第3180394(JP,U)
【文献】
特開2001−234528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転石地帯における地中配管の施工方法であって、
形成する溝の両側に合わせて地盤にスリット状の切り込みを入れる、切り込み工程と、
両切り込み間の土および転石を取り出して溝を形成する、溝形成工程と、
形成した溝に配管を落とし込む、配管落とし込み工程と、
溝を埋め戻す、埋め戻し工程と、からなり、
前記配管は、鋼板からなる防護板を巻き付けた状態で前記溝に落とし込み、
前記切り込みの幅は、前記配管に巻き付けた防護板の径と略同幅であることを特徴とする、
転石地帯における地中配管の施工方法。
【請求項2】
請求項1に記載の転石地帯における地中配管の施工方法において、
前記切り込みは、円盤の外周にカーバイトチップを取り付けたロータリーカッターを高速回転させて入れることを特徴とする、転石地帯における地中配管の施工方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の転石地帯における地中配管の施工方法において、
前記土および前記転石の取り出しは、下部バケットと、上部可動フォークからなす、バケット付きチルトフォークによって行うことを特徴とする、転石地帯における地中配管の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中配管の施工方法であって、特に多数の転石がある転石地帯における地中配管の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤中に地中配管を施工する場合には、地盤をバックホウで掘削して溝を形成し、配管を落とし込んだ後に砂もしくは土にて埋め戻すことが一般的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図7のように多数の転石がある地帯で配管用の溝を掘削して配管しようとする場合、以下のような問題点がある。
(1)溝を形成予定の部分(a)にある転石は、バックホウの爪で起こしながらバケットに取り込んで排除するが、転石が噛み合っている場合や転石に手掛かりがない場合には、転石を起こして爪を立てることが困難で掘削に時間を要する。
(2)噛み合った転石を排除するためには、本来必要の無い、溝形成予定範囲外の転石まで排除する必要があり、実際には(b)のように幅広の掘削溝となり、掘削土量が増加し、埋め戻し土量も同様に増加する。
(3)噛み合った転石を排除するためにバックホウで無理な力を掛けたり揺すったりして転石同士の結合を緩めると、排除しようとしていた転石以外の転石に対する地盤からの拘束が緩み不安定となってしまう。
(4)転石が不安定となると、掘削後、配管の落とし込み中に落下し、作業員に当たる危険性がある。
(5)掘削中に不安定な転石が落下し、バックホウが転石と共に溝に落下するおそれがある。
(6)溝周辺の地盤が緩み、施工後に沈下するおそれがある。
(7)溝の側面にある転石が埋め戻しの転圧時に溝に落ち込み、配管に傷を付けるおそれがある。
【0004】
本発明は、溝内の転石を効率よく排除して地中配管を施工することができる、転石地帯における地中配管の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた本願の第1発明は、転石地帯における地中配管の施工方法であって、形成する溝の両側に合わせて地盤にスリット状の切り込みを入れる、切り込み工程と、両切り込み間の土および転石を取り出して溝を形成する、溝形成工程と、形成した溝に配管を落とし込む、配管落とし込み工程と、溝を埋め戻す、埋め戻し工程と、からなり、前記配管は、鋼板からなる防護板を巻き付けた状態で前記溝に落とし込
み、前記切り込みの幅は、前記配管に巻き付けた防護板の径と略同幅であることを特徴とする、転石地帯における地中配管の施工方法を提供する。
本願の第2発明は、第1発明の転石地帯における地中配管の施工方法において、前記切り込みは、円盤の外周にカーバイトチップを取り付けたロータリーカッターを高速回転させて入れることを特徴とする、転石地帯における地中配管の施工方法を提供する。
本願の第3発明は、第1発明又は第2発明の転石地帯における地中配管の施工方法において、前記土および前記転石の取り出しは、下部バケットと、上部可動フォークからなす、バケット付きチルトフォークによって行うことを特徴とする、転石地帯における地中配管の施工方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果の少なくとも一つを得ることができる。
(1)形成予定の溝の両側に合わせて切り込みを入れて転石を破砕切断してあるため、溝内の転石を効率よく除去でき、掘削効率が向上する。
(2)溝幅の外にある転石を排除する必要がなくなるため、掘削土量・埋め戻し土量を削減でき、工事に要する時間も削減できるためコストを大きく低減できる。
(3)転石を破砕切断するため、周囲の転石に対する地盤からの拘束が緩むことがなく、施工後に地盤が沈下するおそれがない。
(4)周囲の転石の緩みがないため、施工中に落下する危険がなく、安全に施工することができる。
(5)埋め戻しの転圧時、万が一周囲の転石が動いても、防護板により配管が傷つくおそれがない。
(6)落とし込み時に、切断された溝側面に配管が接触しても、防護板により配管が傷つくおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】転石地帯における地中配管の施工方法の施工図
【
図4】溝形成工程に使用するバケット付きチルトフォークの説明図
【
図7】従来の地中配管の施工方法における掘削溝の説明図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0009】
[1]転石地帯における地中配管の施工
本発明の転石地帯における地中配管の施工方法は、地盤中に多数の転石Sがある箇所において所定の深さに配管1を配置するためのものである。
本発明は、転石Sを破断切削して溝2を形成して配管1を落とし込み、土砂3により溝2を埋め戻すことにより、配管1を地盤中に配置する(
図1)。
【0010】
[2]施工手順
<1>切り込み工程
形成する溝2の幅に合わせて、両側に合わせて地盤にスリット状の切り込み21を2本入れる(
図2)。
2本の切り込み21の間隔は形成する溝2の幅であり、配管1の径と略同幅とする。
切り込み21は、円盤の外周にカーバイトチップを取り付けたロータリーカッターを高速回転させて切り込む。
ロータリーカッターにより切り込むため、形成する溝2の形状に合わせて転石Sを破断切削することができる。
【0011】
<2>溝形成工程
2本の切り込み21の間の土や転石Sを取り出して、溝2を形成する(
図3)。
転石Sはロータリーカッターにより破断切削されているため、溝2内の転石Sのみを取り出すことができ、掘削効率が向上する。
また、溝2内の転石Sのみを取り出すため、周囲の地盤を緩めることがない。このため、施工中に溝2が崩落する危険がなく、安全に施工することができる。
溝2内の転石Sは、建機4に取り付けた、下部バケット411と上部可動フォーク412からなるバケット付きチルトフォーク41により取り出す(
図4)。
配管1の径と略同幅の溝2内の転石Sのみを取り出すため、建機4は小型であり、周囲の地面を荒らすことがない。
バケット付きチルトフォーク41であれば、下部バケット411により溝2内の土も取り出すことができる。
【0012】
<3>配管落とし込み工程
溝形成工程により形成した溝2に配管1を落とし込む。
溝2の側面はロータリーカッターにより破断切削されているため、鋭利な角を持つ転石Sが露出しているおそれがあるが、配管1がポリエチレン配管の場合であっても、配管1に
図6のように鋼板からなる保護板5を巻き付けることにより、配管1が接触して傷つくおそれがない。
【0013】
<4>埋め戻し工程
配管1を落とし込んだ後、土砂3により溝2を埋め戻して転圧することにより
図1の状態となり、作業が完了する。埋め戻し土量は溝2の内部のみであるため、作業に要する時間も削減でき、コストも大きく低減できる。
転圧時、万が一溝2周囲の転石Sが動いても、防護板5により配管1が傷つくおそれがない。
また、溝2はロータリーカッターにより破断切削して形成するため、周囲の転石Sに対する地盤からの拘束が緩むことがなく、施工後に地盤が沈下するおそれがない。
【符号の説明】
【0014】
1 配管
2 溝
21 切り込み
3 土砂
4 建機
41 バケット付きチルトフォーク
411 下部バケット
412 上部可動フォーク
5 保護板
S 転石