(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851208
(24)【登録日】2021年3月11日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】水噴霧ヘッド
(51)【国際特許分類】
A62C 31/05 20060101AFI20210322BHJP
A62C 3/00 20060101ALI20210322BHJP
B05B 1/26 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
A62C31/05
A62C3/00 J
B05B1/26 Z
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-9850(P2017-9850)
(22)【出願日】2017年1月23日
(65)【公開番号】特開2018-117727(P2018-117727A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2020年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】栗本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】西村 弘紀
【審査官】
村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−301167(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0246572(US,A1)
【文献】
米国特許第06374920(US,B1)
【文献】
実開昭62−157566(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00−99/00
B05B 1/00− 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル開口の前方に散水方向を偏向するデフレクタが設けられているノズルを有する水噴霧ヘッドにおいて、
前記デフレクタは、前記ノズル開口から散水される水が衝突し、その流れを偏向して散水方向を偏向する偏向面として、前記ノズル開口に対向する第1の偏向面と、前記第1の偏向面の両側部に立設された一対の側面からなる第2の偏向面とを備え、
前記第1の偏向面と前記第2の偏向面とは、断面形状が略コ字状をなすように連続し、
前記第2の偏向面をなす一対の側面は何れも、基端側から先端側に行くに従って高さ方向の寸法が大きくなる形状を有し、
前記第2の偏向面をなす一対の側面は互いに、基端側から先端側に行くに従って幅方向の寸法が大きくなる間隔を形成するように対向し、
前記第2の偏向面をなす一対の側面は何れも、下端部が、前記ノズル開口が形成されるノズル先端部と平行になるように形成されており、前記デフレクタは、それら下端部の何れもが、前記ノズル開口が形成されるノズル先端部に接する状態で設けられていることを特徴とする水噴霧ヘッド。
【請求項2】
デフレクタが着脱自在であり、複数種類のデフレクタから選択してデフレクタを装着することで、複数種類の散水パターンに対応できることを特徴とする請求項1に記載の水噴霧ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、 先端部にデフレクタが設けられているノズルを有する水噴霧ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
道路トンネル(以下、単に「トンネル」と言う。)には、防災設備として、消火器や消火栓等の消火設備に加えて、水噴霧設備が設けられることがある。水噴霧設備は、トンネルの天井又は側壁上方等の高所に横方向(トンネルの長さ方向)に所定の間隔を空けて設置される複数の水噴霧ヘッドを備えており、火災発生時、それら水噴霧ヘッドから水を散水し、火勢の抑制及び天井面の保護、延焼の防止等をするために用いられる。
【0003】
そのような水噴霧設備において、水噴霧ヘッドは、トンネルの片側の側壁上方に設置されることが多く、その場合、ヘッドが設置される側の一方の側壁側から天井側を含めて他方の側壁側に至るまで横方向に所定の幅を形成しつつ均一に散水することができるように、近い領域に向けて散水する近投ノズルや、遠い領域に向けて散水する遠投ノズル等の散水距離や散水パターン等を異にする複数のノズルを組み合わせて有するタイプのものが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−36000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
なお、前記の特許文献1に記載の水噴霧ヘッドの場合、遠投ノズルとして、ノズル開口自体が偏向しているものが用いられているが(
図9参照)、一般的には、ノズル開口の前方に散水方向を偏向するデフレクタを設けたものも用いられている。なお、デフレクタは、散水パターンが所定以上の幅を維持しつつ、遠方まで均一に散水するために設けられている。
【0006】
ところで、トンネルにおいては、その経年劣化対策として既設の天井板が撤去される傾向にある。天井板が撤去されたトンネルに設置される水噴霧ヘッドの場合、天井側に防護すべき空間が増えることになるので、より高い位置まで散水できるものとする必要がある。
【0007】
また、近年新設のトンネルに設置される水噴霧ヘッドの場合、従来より低い位置への設置を要求されることがある。その要求に応えるには、従来より低い設置位置から、これまでと同様の放水距離が必要となり、結果的により遠い位置まで散水できるものとする必要がある。
【0008】
この発明は、上記の事情に鑑み、より高い位置まで散水することができると共に、より遠い位置まで散水することができる水噴霧ヘッドを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、ノズル開口の前方に散水方向を偏向するデフレクタが設けられているノズルを有する水噴霧ヘッドにおいて、前記デフレクタは、前記ノズル開口から散水される水が衝突し、その流れを偏向して散水方向を偏向する偏向面として、前記ノズル開口に対向する第1の偏向面と、前記第1の偏向面の両側部に立設された一対の側面からなる第2の偏向面とを備え
、前記第1の偏向面と前記第2の偏向面とは、断面形状が略コ字状をなすように連続し、前記第2の偏向面をなす一対の側面は何れも、基端側から先端側に行くに従って高さ方向の寸法が大きくなる形状を有し、前記第2の偏向面をなす一対の側面は互いに、基端側から先端側に行くに従って幅方向の寸法が大きくなる間隔を形成するように対向し、前記第2の偏向面をなす一対の側面は何れも、下端部が、前記ノズル開口が形成されるノズル先端部と平行になるように形成されており、前記デフレクタは、それら下端部の何れもが、前記ノズル開口が形成されるノズル先端部に接する状態で設けられていることを特徴とする水噴霧ヘッドである。
【0014】
また、この発明は、デフレクタが着脱自在であり、複数種類のデフレクタから選択してデフレクタを装着することで、複数種類の散水パターンに対応できることを特徴とする水噴霧ヘッドである。
【発明の効果】
【0015】
この発明においては、ノズル開口の前方に散水方向を偏向するデフレクタが設けられているノズルを有するものであるが、そのノズルにおいて、ノズル開口から散水されて横方向に向かう水の流れをデフレクタの第2の偏向面をなす一対の側面により前方向に向けて偏向することができる。それにより、前方向に散水される水の量を増やすことができ、より高い位置まで散水することができると共に、より遠い位置まで散水することができる。
【0016】
したがって、この発明によれば、より高い位置まで散水することができると共に、より遠い位置まで散水することができる水噴霧ヘッドを得ることができる。
【0017】
ここで、ノズル開口に対向するデフレクタの第1の偏向面は、従来と同様の形状とすることができ、その両側部の第2の偏向面以外の構成部分は従来と同様のものとすることができるが、その場合、散水分布全体としては、第2の偏向面により前方向に向けて散水される水の量が増えて、前方向の散水パターンが拡がる分、横方向に向けて散水される水の量が減って、横方向の散水パターンが狭くなる。しかしながら、設計上、デフレクタの第2の偏向面の形状や大きさ等を変えることで、前方向に向けて散水される水の量と横方向に向けて散水される水の量との配分を調節することは可能であり、横方向の散水パターンの狭くなる分を横に隣接する水噴霧ヘッドの横方向の散水パターンと重なる範囲内に調節することにより、前方向に向けて散水される水の量を増やしつつ、横方向に向けて散水される水の量を必要な範囲で確保することは可能である。すなわち、前方向の散水パターンを拡げつつ、横方向の散水パターンを必要な範囲で確保することは可能である。
【0018】
つまり、この発明によれば、横方向への散水パターンを必要な範囲で確保しつつ、より高い位置まで散水することができると共に、より遠い位置まで散水することができる水噴霧ヘッドを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明の水噴霧ヘッドの実施形態の一例を示した図であり、デフレクタが設けられている遠投ノズルのノズル開口が見える側を正面として示した図である。なお、図示の便宜上、近投ノズルのノズル開口が真下に向く角度で示しているが、トンネルの側壁に対しては、その近投ノズルのノズル開口が斜め下方に向く角度で設置されることになる。
【
図2】(a)が
図1の左側面図、(b)が同右側面図である。
【
図3】同上の水噴霧ヘッドにおけるデフレクタのみを拡大して示した図であり、上部偏向面(第1の偏向面)及び側部偏向面(第2の偏向面)が見える側を正面として示した図である。なお、図中、矢印は、上部偏向面(第1の偏向面)及び側部偏向面(第2の偏向面)により水の流れが偏向して散水される様子を示している。
【
図4】(a)が
図3の左側面図、(b)が同右側面図である。
【
図5】
図3と同様デフレクタのみを示した図であり、(a)が上部偏向面(第1の偏向面)及び側部偏向面(第2の偏向面)が見える側を上部偏向面(第1の偏向面)に対し垂直方向より見て示した図であり、(b)がそのD−D線矢視断面図である。
【
図6】トンネルの側壁に設置した際の水噴霧ヘッドからの散水パターンを側面視(側面パターン)で示すと共に、平面視(平面パターン)で示した散水パターン図であり、(a)が従来の水噴霧ヘッドによる場合のものを示しており、(b)がこの発明の水噴霧ヘッドによる場合のものを示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の水噴霧ヘッドの実施形態について、トンネルの防災設備の一つとして設置される水噴霧設備における複数種類のノズルを有する水噴霧ヘッドに適用する場合を例として、
図1乃至
図6に基づいて説明する。なお、この発明の水噴霧ヘッドは、ノズル先端部にデフレクタが設けられるものであれば、そのようなトンネルに設置される水噴霧ヘッドに限らず、種々の水噴霧ヘッドに適用することが可能である。また、この発明の水噴霧ヘッドは、ノズル先端部にデフレクタが設けられるものであれば、例えば、大空間に設置される放水型ヘッドとして用いられるものにも適用することが可能である。すなわち、この発明における水噴霧ヘッドとは、そのような放水型ヘッドとして用いられるものも含む概念のものである。
【0021】
ここで、この発明の水噴霧ヘッドについて詳細に説明をする前に、トンネルに設置される水噴霧設備ついて簡単に説明する。
【0022】
水噴霧設備は、トンネルの天井又は側壁上方に長さ方向(車両の走行方向)に所定の間隔を空けて設置される複数の水噴霧ヘッドを備えており、火災発生時、それら水噴霧ヘッドから霧状の水を散水して、火勢の抑制と延焼の防止等に用いられるものである。そして、水噴霧ヘッドは、一般に、トンネルの側壁上方の片側のみに設置されていることが多く、その場合、ヘッドが設置される側の一方の側壁側から天井側を含めて他方の側壁側に至るまで横方向に幅を形成しつつ均一に散水することができるように、近い領域に向けて散水する近投ノズルや、遠い領域に向けて散水する遠投ノズル等の散水距離や散水パターン等を異にする複数のノズルを組み合わせて有するタイプのものが用いられている。
【0023】
この発明の水噴霧ヘッドは、そのようなトンネルの側壁上方の片側のみに設置されるものにおいて、ノズル開口の前方に散水方向を偏向するデフレクタが設けられているノズルを有するタイプのものに適用することが可能なものである。
【0024】
図1及び
図2は、この発明の水噴霧ヘッドの実施形態の一例として、そのようなタイプの水噴霧ヘッドに適用する場合を例示するものである。同図に示したように、水噴霧ヘッド1は、1つのヘッド中に、上下二段に配置される近投ノズル2と遠投ノズル3の2つのノズルを有している。近投ノズル2は、下段に位置して、近い領域に向けて散水するものであり、ノズル開口が形成されるノズル先端部2aを散水区画に対し斜め下方に向けて設置されるものである。遠投ノズル3は、上段に位置して、近投ノズル2より遠い領域に向けて散水するものであり、ノズル開口3aが形成されるノズル先端部3bを散水区画に対し斜め上方に向けて設置されるものである。 そして、これら2つのノズルのうち、遠投ノズル3がノズル開口3aの前方にデフレクタ3cが設けられたものとなっている。
【0025】
そして、この発明の水噴霧ヘッド1は、遠投ノズル3のデフレクタ3cに特徴的な構成部分を備えている。
【0026】
すなわち、デフレクタ3cは、ノズル開口3aから散水される水が衝突し、その流れを偏向して散水方向を偏向する偏向面として、ノズル開口3aに所定角度で傾斜して対向する上部偏向面3d(第1の偏向面の一例)に加え、上部偏向面3dの横方向両側部に立設された左右一対の側面からなる側部偏向面3e,3e(第2の偏向面の一例)を備えている。
【0027】
このデフレクタ3cは、具体的には、
図3乃至
図5に示したように、支柱部3fの上部に設けられる天板部3gと、その天板部3gの横方向両側部に立設された左右一対の側板部3h,3hを有している。そして、天板部3gの内面として前記の上部偏向面3dが形成されており、側板部3h,3hの内面として前記の側部偏向面3e.3eが形成されている。なお、本実施形態の場合、上部偏向面3d及び側部偏向面3e,3eは何れも、平坦な面として形成されており、幅方向に略コ字状をなして連続するものとしている(
図5の(b)参照)。
【0028】
そして、遠投ノズル3において、デフレクタ3cは例えば前記のように構成されており、ノズル開口3aから散水される水Wは、上部偏向面3dに衝突して前方向(矢印W1)および横方向(矢印W2)に偏向する。横方向に広がるように偏向した水W2は、さらに側部偏向面3e、3eに衝突して、前方向に偏向する(矢印W3)。
【0029】
水噴霧ヘッド1は、前記のように構成されるデフレクタ3cが設けられている遠投ノズル3を有していることにより、その遠投ノズル3において、前記の通り、ノズル開口3aから散水されて上部偏向面3dに衝突して、横方向に向かう水の流れをデフレクタ3cの側部偏向面3e,3eにより前方向に向けて偏向することができる。それにより、前方向に向けて散水される水の量を増やすことができるので、前方向への水勢が増し、より高い位置まで散水することができると共に、より遠い位置まで散水することができる。
【0030】
ここで、デフレクタ3cにおいて、ノズル開口3aに対向するデフレクタ3cの上部偏向面3dは、従来型と同様の形状とすることができ、その両側部の側部偏向面3e,3e以外の構成部分は従来型と同様のものとすることができるが、その場合、散水分布全体としては、側部偏向面3e,3eにより前方向に向けて散水される水の量が増えて、前方向の散水パターンが拡がる(到達高さおよび到達距離が増す)分、横方向に向けて散水される水の量が減って、横方向の散水パターンが狭くなる。しかしながら、設計上、側部偏向面3e,3eの形状や大きさ等を変えることで、前方向に向けて散水される水の量と横方向に向けて散水される水の量との配分を調節することで必要な散水パターンを得ることは可能であり、横方向の散水パターンを隣接する水噴霧ヘッドの散水パターンと重なる最小限の範囲内に調節することにより、前方向に向けて散水される水の量を増やしつつ、横方向に向けて散水される水の量を必要な範囲で確保することは可能である。すなわち、前方向の散水パターンを拡げつつ、横方向の散水パターンを必要な範囲で確保することは可能である。
【0031】
したがって、この発明の水噴霧ヘッド1によれば、遠投ノズル3が例えば前記のような側部偏向面3e,3eを備えるデフレクタ3cが設けられているものであることにより、幅方向への散水パターンを必要な範囲で確保しつつも、より高い位置まで散水することができると共に、より遠い位置まで散水することができる。
【0032】
さらに、本実施形態の水噴霧ヘッド1における遠投ノズル3のデフレクタ3cについて詳細に説明する。
【0033】
本実施形態の場合、デフレクタ3cにおいて、側部偏向面3e,3eは何れも、上部偏向面3dの基端縁部3qと共に支柱部3fと連続する基端縁部3j,3jから上部偏向面3dの左右両側部に沿ってその散水方向前方(
図4の矢印A1方向)側の先端縁部3pよりも手前の位置(面取り形状の左右両隅部よりも手前の位置)まで延在しつつ、上部偏向面3d側の上端縁部3m,3mと、ノズル開口3a側の下端縁部3i,3iと、その散水方向前方(
図4の矢印A2方向)側の先端縁部3k,3kとから形成される略三角形の形状を有すると共に、その基端縁部3j,3j(基端側の一例)から上端縁部3m,3m及び下端縁部3i,3iに沿って先端縁部3k,3k(先端側の一例)に行くに従ってその高さ方向(
図4の矢印A3方向)の寸法が大きくなる形状を有するものとしている(
図3乃至
図5参照)。また、側部偏向面3e,3eは何れも、下端縁部3i,3iがノズル開口3aの形成されるノズル先端部3bの先端面と平行になるように形成されると共に、デフレクタ3cがノズル先端部3bの所定位置に設けられている状態で、下端縁部3i,3iがノズル先端部3bの先端面に接するように設けられるものとしている(
図1及び
図2参照)。つまり、デフレクタ3cは、側部偏向面3e,3eのある部分においては、それらによりノズル開口3aの正面側の側方空間を閉じるように設けられるものとしている共に、側部偏向面3e,3eのない部分(上部偏向面3dの先端縁部3p側の部分)においては、その側方空間を開放するように設けられるものとしている(
図1及び
図2参照)。設計上、この側部偏向面3e,3eにおける、基端縁部3j,3jから先端縁部3k,3kに至るまでの長さや形状を変えたり、上端縁部3m,3mから下端縁部3i,3iに至るまでの長さや形状を変えたりすることにより、前方向に向けて散水される水の量と横方向に向けて散水される水の量との配分を調節することが可能である。
【0034】
さらに、側部偏向面3e,3eは互いに、基端縁部3j,3j(基端側の一例)から先端縁部3k,3k(先端側の一例)に行くに従って幅方向の寸法が大きくなる角度間隔(上端縁部3m,3mが上部偏向面3d上になす角度間隔としてθ1)を形成して対向するものとしている(
図5の(a)参照)。また、側部偏向面3e,3eは互いに、上部偏向面3dと連続する上端縁部3m、3mから、上部偏向面3dの垂直方向に離間するにつれて幅方向の寸法が大きくなる角度間隔(
図5(a)のD−D線の部分における角度間隔としてθ2)を形成して対向するものとしている(
図5の(b)参照)。ただし、基端縁部3j,3j及び先端縁部3k,3kの部分においては、互いに平行となる間隔を形成して対向している(
図3参照)。設計上、この角度間隔θ1、θ2を変えることによっても、前方向に向けて散水される水の量と横方向に向けて散水される水の量との配分を調節することが可能である。
【0035】
ここで、水噴霧ヘッド1において、デフレクタ3cは、遠投ノズル3に対して着脱自在に設けられるものとしている。すなわち、デフレクタ3cは、詳細な図示は省略するが、支柱部3fが遠投ノズル3の外周部に所定位置に位置決めされた状態で外側からナット3nが螺着されることにより固定されるものとしている(
図1及び
図2参照) 。このようにデフレクタ3cを着脱自在とすることにより、散水パターンを異にする複数種類のデフレクタから選択してデフレクタを装着することができ、複数種類の散水パターンに対応することができる。また、デフレクタ3cは、側部偏向面3e,3e以外の構成部分は、この固定構造を含めて従来型と同様のものとすることができる。そのようにすることにより、製造時、装着するデフレクタとして、水噴霧ヘッドの設置高さに応じ、従来型のものとこの発明による新型のものとで適宜選択することが可能となり、また、既設の水噴霧ヘッドの交換等の必要が発生した際においても、安価に対応できる。
【0036】
この発明の水噴霧ヘッド1は、前記の通り、遠投ノズル3が例えば前記のような側部偏向面3e,3eを備えるデフレクタ3cが設けられているものであることにより、横方向への散水パターンを必要な範囲で確保しつつも、より高い位置まで散水することができると共に、より遠い位置まで散水することができるものであるが、これについては、
図6の(a)及び(b)に示した比較実験の結果によっても確認することができる。
【0037】
実験は、この発明による新型の水噴霧ヘッドとして、前記の水噴霧ヘッド1と同じ構成の水噴霧ヘッドを用意すると共に、従来型の水噴霧ヘッドとして、水噴霧ヘッド1とデフレクタ3cの側部偏向面3e,3eの有無のみを異にし、その他の構成部分を同様とした水噴霧ヘッドを用意し、それら2つの水噴霧ヘッドについて、ヘッドの取り付け高さ及び上下ノズル(遠投ノズル及び近投ノズル)からの散水量を同一として、それぞれの散水パターンを測定することによって行った。
【0038】
図6の(a)が従来型の水噴霧ヘッドからの散水パターンを示したものであり、同(b)が新型の水噴霧ヘッドからの散水パターンを示したものである。なお、図中、上段の側面パターンが前方向の散水パターンを示ししており、下段の平面パターンが横方向の散水パターンを示している。また、建築限界とは、トンネルにおける車両の安全な通行等を確保するために空間上に設けられる限界であり、トンネル内に設けられる各種設備はこの限界の範囲外に設けられることになる。
【0039】
同図に示される通り、(a)の従来型の水噴霧ヘッドによる散水パターンに比べ、(b)の新型の水噴霧ヘッドによる散水パターンは、平面パターン(横方向の散水パターン)については、より狭くなってはいるものの、側面パターン(前方向の散水パターン)については、高さ方向も含めて、より拡がっている。
【0040】
つまり、実験の結果は、この発明の新型の水噴霧ヘッドが、従来型の水噴霧ヘッドに比べて、より高い位置まで散水することができると共に、より遠い位置まで散水することができることを示している。
【0041】
以上、この発明の実施形態について詳細に説明したが、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0042】
例えば、側部偏向面3e,3eの先端縁部3k,3kは何れも、ノズル開口3aの中心軸と平行になるように形成されるものとしているが(
図1及び
図2参照)、その中心軸に対して傾斜するように形成されるものとしてもよく、その中心軸に対する角度を変えることによっても、前方向に向けて散水される水の量と横方向に向けて散水される水の量との配分を調節することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1:水噴霧ヘッド 2:近投ノズル 2a:ノズル先端部 3:遠投ノズル
3a:ノズル開口 3b:ノズル先端部 3c:デフレクタ
3d:上部偏向面 3e,3e:側部偏向面 3f:支柱部 3g:天板部
3h,3h:側板部 3i,3i:下端縁部 3j,3j:基端縁部
3k,3k:先端縁部 3m,3m:上端縁部 3n,3n:ナット
3p:先端縁部 3q:基端縁部