(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。なお、本実施形態では、数値範囲を示す「A〜B」はとくに断りがなければ、A以上B以下を表す。
【0012】
[環状オレフィン系樹脂組成物]
まず、本発明に係る実施形態の環状オレフィン系樹脂組成物について説明する。
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物は、環状オレフィン共重合体(A)と、芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)と、を含む。そして、芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の重量平均分子量(Mw)が500以上5000以下であり、芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の溶解度パラメータが18.0MPa
1/2以上21.0MPa
1/2以下である。さらに、環状オレフィン系樹脂組成物に含まれる環状オレフィン共重合体(A)および芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の合計を100質量部としたとき、環状オレフィン共重合体(A)の含有量が70質量部以上99質量部以下であり、芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の含有量が1質量部以上30質量部以下である。
【0013】
芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の含有量、重量平均分子量(Mw)および溶解度パラメータを上記範囲内に高度に制御することにより、環状オレフィン共重合体(A)と芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)との相溶性が良好になり、その結果、透明性の高い成形体が得られる。
【0014】
環状オレフィン共重合体(A)の含有量は70質量部以上99質量部以下であるが、得られる成形体の透明性および屈折率の性能バランスをより向上させる観点から、75質量部以上95質量部以下が好ましく、80質量部以上90質量部以下がより好ましい。
また、芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の含有量が1質量部以上30質量部以下であるが、得られる成形体の透明性および屈折率の性能バランスをより向上させる観点から、5質量部以上25質量部以下が好ましく、10質量部以上20質量部以下がより好ましい。
【0015】
また、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物中の環状オレフィン共重合体(A)および芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の合計含有量は、得られる成形体の透明性および屈折率の性能バランスをより向上させる観点から、当該環状オレフィン系樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは70質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以上100質量%以下であり、特に好ましくは90質量%以上100質量%以下である。
【0016】
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物において、当該環状オレフィン系樹脂組成を用いて厚み2mmの試験片を作製したとき、上記試験片の波長587.6nmにおける屈折率(nd)が好ましくは1.530以上であり、1.540以上であることがさらに好ましい。また1.580以下であることが好ましい。屈折率(nd)が上記範囲内であると、得られる光学部品の光学特性を良好に保ちつつ、厚みをより薄くすることができる。
【0017】
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物において、当該環状オレフィン系樹脂組成を用いて厚み2mmの試験片を作製したとき、上記試験片のアッベ数(νd)と波長587.6nmにおける屈折率(nd)とが、アッベ数(νd)を適切な値に制御しつつ屈折率(nd)を向上させる観点から、以下の式(1)を満たすことが好ましい。
また、アッベ数(νd)と屈折率(nd)とが以下の式(1)の関係を満たすと、得られる光学部品の光学特性を良好に保ちつつ、厚みをより薄くすることができる。
nd≧1.619−0.0015×νd (1)
【0018】
以下、各成分について具体的に説明する。
【0019】
(環状オレフィン共重合体(A))
本実施形態に係る環状オレフィン共重合体(A)は、環状オレフィンに由来する繰り返し単位を必須構成単位とする共重合体である。
本実施形態に係る環状オレフィン共重合体(A)を構成する環状オレフィン化合物は特に限定はされないが、例えば、国際公開第2006/0118261号の段落0037〜0063に記載の環状オレフィンモノマーを挙げることができる。
【0020】
本実施形態に係る環状オレフィン共重合体(A)は、下記一般式(II)で表される繰り返し単位、下記一般式(III)で表される繰り返し単位および下記一般式(IV)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の環状オレフィン由来の繰り返し単位(b)を含有することが好ましく、得られる成形体の透明性および屈折率の性能バランスを良好に保ちつつ耐熱性をさらに向上できたり、成形性を向上できたりする観点から、下記一般式(I)で表される少なくとも1種のオレフィン由来の繰り返し単位(a)と、下記一般式(II)で表される繰り返し単位、下記一般式(III)で表される繰り返し単位および下記一般式(IV)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の環状オレフィン由来の繰り返し単位(b)と、を含有することがより好ましい。
【0021】
【化5】
上記一般式(I)において、R
300は水素原子または炭素原子数1〜29の直鎖状または分岐状の炭化水素基を示す。
【0022】
【化6】
上記一般式(II)において、uは0または1であり、vは0または正の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0または1であり、wは0または1であり、R
61〜R
78ならびにR
a1およびR
b1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R
75〜R
78は互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。
【0023】
【化7】
上記一般式(III)において、xおよびdは0または1以上の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0または1であり、yおよびzは0、1または2であり、R
81〜R
99は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基若しくは炭素原子数3〜15のシクロアルキル基である脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基またはアルコキシ基であり、R
89およびR
90が結合している炭素原子と、R
93が結合している炭素原子またはR
91が結合している炭素原子とは、直接あるいは炭素原子数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またy=z=0のとき、R
95とR
92またはR
95とR
99とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。
【0024】
【化8】
上記一般式(IV)において、R
100、R
101は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1〜5の炭化水素基を示し、fは1≦f≦18である。
【0025】
(オレフィンモノマー)
本実施形態に係る環状オレフィン共重合体(A)の共重合原料の一つであるオレフィンモノマーは付加共重合して上記一般式(I)で表される構成単位を形成するものである。具体的には上記一般式(I)に対応する下記一般式(Ia)で表されたオレフィンモノマーが用いられる。
【0026】
【化9】
上記一般式(Ia)において、R
300は水素原子または炭素原子数1〜29の直鎖状または分岐状の炭化水素基を示す。上記一般式(Ia)で表されるオレフィンモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等が挙げられる。より優れた耐熱性、機械的特性および光学特性を有する成形体を得る観点から、これらのなかでも、エチレンとプロピレンが好ましく、エチレンが特に好ましい。上記一般式(Ia)で表されるオレフィンモノマーは2種類以上を用いてもよい。
本実施形態に係る環状オレフィン共重合体(A)を構成する構成単位の全体を100モル%としたとき、オレフィン由来の繰り返し単位(a)の割合が、好ましくは5モル%以上95モル%以下、より好ましくは20モル%以上90モル%以下、さらに好ましくは40モル%以上85モル%以下、特に好ましくは50モル%以上80モル%以下である。
なお、オレフィン由来の繰り返し単位(a)の割合は、
13C−NMRによって測定することができる。
【0027】
(環状オレフィンモノマー(b))
本実施形態に係る環状オレフィン共重合体(A)の共重合原料の一つである環状オレフィンモノマー(b)は付加共重合して上記一般式(II)、上記一般式(III)または上記一般式(IV)で表される環状オレフィン由来の繰り返し単位(b)を形成するものである。具体的には、上記一般式(II)、上記一般式(III)、および上記一般式(IV)にそれぞれ対応する一般式(IIa)、(IIIa)、および(IVa)で表される環状オレフィンモノマー(b)が用いられる。
【0028】
【化10】
上記一般式(IIa)において、uは0または1であり、vは0または正の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0または1であり、wは0または1であり、R
61〜R
78ならびにR
a1およびR
b1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基、または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R
75〜R
78は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。
【0029】
【化11】
上記一般式(IIIa)において、xおよびdは0または1以上の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0または1であり、yおよびzは0、1または2であり、R
81〜R
99は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基若しくは炭素原子数3〜15のシクロアルキル基である脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基またはアルコキシ基であり、R
89およびR
90が結合している炭素原子と、R
93が結合している炭素原子またはR
91が結合している炭素原子とは、直接あるいは炭素原子数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またy=z=0のとき、R
95とR
92またはR
95とR
99とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。
【0030】
【化12】
上記一般式(IVa)において、R
100、R
101は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1〜5の炭化水素基を示し、fは1≦f≦18である。
【0031】
共重合成分として、上述した一般式(Ia)で表されるオレフィンモノマー、一般式(IIa)、(IIIa)または(IVa)で表される環状オレフィンモノマー(b)を用いることにより、環状オレフィン共重合体(A)の溶媒への溶解性がより向上するため成形性が良好となり、製品の歩留まりが向上する。
【0032】
一般式(IIa)、(IIIa)または(IVa)で表される環状オレフィンモノマー(b)の具体例については国際公開第2006/0118261号の段落0037〜0063に記載の化合物を用いることができる。
【0033】
具体的には、ビシクロ−2−ヘプテン誘導体(ビシクロヘプト−2−エン誘導体)、トリシクロ−3−デセン誘導体、トリシクロ−3−ウンデセン誘導体、テトラシクロ−3−ドデセン誘導体、ペンタシクロ−4−ペンタデセン誘導体、ペンタシクロペンタデカジエン誘導体、ペンタシクロ−3−ペンタデセン誘導体、ペンタシクロ−4−ヘキサデセン誘導体、ペンタシクロ−3−ヘキサデセン誘導体、ヘキサシクロ−4−ヘプタデセン誘導体、ヘプタシクロ−5−エイコセン誘導体、ヘプタシクロ−4−エイコセン誘導体、ヘプタシクロ−5−ヘンエイコセン誘導体、オクタシクロ−5−ドコセン誘導体、ノナシクロ−5−ペンタコセン誘導体、ノナシクロ−6−ヘキサコセン誘導体、シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン誘導体、1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン誘導体、炭素数3〜20のシクロアルキレン誘導体が挙げられる。
【0034】
一般式(IIa)、(IIIa)または(IVa)で表される環状オレフィンモノマー(b)の中でも、一般式(IIa)で表される環状オレフィンが好ましい。
【0035】
上記一般式(IIa)で表される環状オレフィンモノマー(b)として、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン(ノルボルネンとも呼ぶ。)、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン(テトラシクロドデセンとも呼ぶ。)を用いることが好ましく、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセンを用いることがより好ましい。これらの環状オレフィンは剛直な環構造を有するため共重合体および成形体の弾性率が保持され易くなる利点がある。
【0036】
本実施形態に係る環状オレフィン共重合体(A)を構成する構成単位の全体を100モル%としたとき、環状オレフィンモノマー(b)由来の繰り返し単位(b)の割合が、好ましくは5モル%以上95モル%以下、より好ましくは10モル%以上80モル%以下、さらに好ましくは15モル%以上60モル%以下、特に好ましくは20モル%以上50モル%以下である。
【0037】
本実施形態に係る環状オレフィン共重合体(A)の分子量は特に限定されないが、135℃のデカリン中で測定される極限粘度[η]が、好ましくは0.03dl/g〜10dl/g、より好ましくは0.05dl/g〜5dl/g、さらに好ましくは0.10dl/g〜2dl/gを示す分子量である。
分子量が上記下限値以上であると、成形体の機械的強度を向上させることができる。また、分子量が上記上限値以下であると、成形性を向上させることができる。
【0038】
(芳香族環状構造を有するオリゴマー(B))
芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の重量平均分子量(Mw)は500以上5000以下であるが、得られる成形体の透明性および屈折率の性能バランスをより向上させる観点から、800以上4000以下が好ましく、1000以上3500以下がより好ましく、1500以上3000以下が特に好ましい。
ここで、芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の値である。
【0039】
芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の溶解度パラメータは18.0MPa
1/2以上21.0MPa
1/2以下であるが、得られる成形体の透明性および屈折率の性能バランスをより向上させる観点から、18.5MPa
1/2以上20.5MPa
1/2以下が好ましく、19.0MPa
1/2以上20.0MPa
1/2以下がより好ましい。
本実施形態において、溶解度パラメータはMaterials StudioのSynthiaモジュールを用いて計算したFedorsのパラメータである。
【0040】
本実施形態に係る芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)は、スチレン系化合物およびインデン系化合物から選ばれる少なくとも1種のモノマー由来の繰り返し単位を有することが好ましい。
このようなスチレン系化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−プロピルスチレン、α−イソプロピルスチレン、α−t−ブチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、4−イソプロペニルトルエン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノフルオロスチレン、4−フェニルスチレン等が挙げられる。
このようなインデン系化合物としては、例えば、インデン、メチルインデン、エチルインデン、プロピルインデン、ブチルインデン等が挙げられる。
本実施形態に係る芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)は、前述のスチレン系化合物またはインデン系化合物と共重合可能な他の単量体由来の繰り返し単位をさらに有していてもよい。
【0041】
本実施形態に係る芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)において、透明性および屈折率をより向上させる観点から、スチレン系化合物およびインデン系化合物から選ばれる少なくとも1種のモノマー由来の繰り返し単位の含有量が、芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは70質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは80質量%以上100質量%以下である。
芳香族ビニル化合物の重合方法には格別な制限はなく、公知の方法に従って行なうことができる。
【0042】
本実施形態に係る芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の軟化点は、得られる成形体の耐熱性を向上させる観点から、80℃以上であることが好ましく、95℃以上であることがより好ましい。
【0043】
(その他の成分)
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物には、必要に応じて、耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、塩酸吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、天然油、合成油、ワックス、有機または無機の充填剤等を本発明の目的を損なわない程度に配合することができ、その配合割合は適宜量である。
【0044】
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物は、環状オレフィン共重合体(A)および芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)を、押出機およびバンバリーミキサー等の公知の混練装置を用いて溶融混練する方法;環状オレフィン共重合体(A)および芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)を共通の溶媒に溶解した後、溶媒を蒸発させる方法;貧溶媒中に環状オレフィン共重合体(A)および芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の溶液を加えて析出させる方法;等の方法により得ることができる。
【0045】
[成形体および光学部品]
次に、本発明に係る実施形態の成形体について説明する。
本実施形態に係る成形体は本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物を含んでいる。
本実施形態に係る成形体は本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物を含むため、透明性および屈折率の性能バランスに優れている。そのため像を高精度に識別する必要がある光学系において、光学部品として好適に用いることができる。光学部品とは光学系機器等に使用される部品であり、具体的には、fθレンズ、撮像レンズ、センサーレンズ、プリズム、導光板等が挙げられる。
【0046】
本実施形態に係る成形体を光学用途に使用する場合、光線を透過させることが必須であるので、光線透過率が良好であることが好ましい。光線透過率は用途に応じて分光光線透過率または全光線透過率により規定される。
【0047】
全光線、あるいは複数波長域での使用が想定される場合、全光線透過率が良いことが必要であり、反射防止膜を表面に設けていない状態での全光線透過率は85%以上、好ましくは88〜93%である。全光線透過率が85%以上であれば必要な光量を確保することができる。全光線透過率の測定方法は公知の方法が適用でき、測定装置等も限定されないが、例えば、ASTM D1003に準拠して、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物を厚み3mmのシートに成形し、ヘーズメーターを用いて、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物を成形して得られるシートの全光線透過率を測定する方法等が挙げられる。
【0048】
また、特定波長域のみで利用される光学系、例えば、レーザー光学系の場合、全光線透過率が高くなくても、該波長域での分光光線透過率が良ければ使用することができる。この場合、使用波長における、反射防止膜を表面に設けていない状態での分光光線透過率は好ましくは85%以上、さらに好ましくは86%〜93%である。分光光線透過率が85%以上であれば必要な光量を確保することができる。また、測定方法および装置としては公知の方法が適用でき、具体的には分光光度計を例示することができる。
【0049】
また、本実施形態に係る成形体は、450nm〜800nmの波長の光の光線透過率に優れる。
なお、光学部品として用いる場合、公知の反射防止膜を表面に設けることにより、光線透過率をさらに向上させることができる。
【0050】
本実施形態に係る成形体は、球状、棒状、板状、円柱状、筒状、チューブ状、繊維状、フィルムまたはシート形状等の種々の形態で使用することができる。
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物を成型して成形体を得る方法としては特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。その用途および形状にもよるが、例えば、押出成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、真空成形、パウダースラッシュ成形、カレンダー成形、発泡成形等が適用可能である。これらの中でも、成形性、生産性の観点から射出成形法が好ましい。また、成形条件は使用目的、または成形方法により適宜選択されるが、例えば射出成形における樹脂温度は、通常150℃〜400℃、好ましくは200℃〜350℃、より好ましくは230℃〜330℃の範囲で適宜選択される。
【0051】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何等制限されるものではない。
【0053】
<実施例1〜5および比較例1〜4>
各実施例および比較例において、各種物性は下記の方法によって測定または評価し、得られた結果を表1に示した。
【0054】
(環状オレフィン系樹脂組成物の評価)
[樹脂組成物の調製]
各成分を表1の配合量で東洋積製作所製ラボプラストミルを用いて溶融混練し、環状オレフィン樹脂組成物を得た。
【0055】
[試験片の作製]
プレス成形機を用いて、上記で得られた樹脂組成物を成形し、試験片を作製した。
【0056】
[透明性]
得られた厚み0.5mmの試験片の内部ヘイズを測定し、以下の基準で透明性をそれぞれ評価した。
内部ヘイズは、ヘイズ計(日本電色工業社製NDH−20D)を用い、ベンジルアルコール中でそれぞれ測定した。
◎:内部ヘイズが1.0%未満
〇:内部ヘイズが1.0%以上3.0%未満
×:目視で試験片が白濁しているもの、または内部ヘイズが3.0%以上
【0057】
[屈折率]
屈折率計(島津製作所社製KPR−200)を用いて、厚み2mmの試験片の波長587.6nm、25℃における屈折率(nd)を測定した。
【0058】
[アッベ数]
ASTM D542に準拠して、アッベ屈折計を用いて、厚み2mmの試験片の25℃におけるアッベ数(νd)を測定した。
【0059】
以下に、実施例および比較例で用いた成分を示す。
【0060】
[環状オレフィン系重合体]
A−1:エチレンと環状オレフィン(テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン)との共重合体(エチレン含量:65mol%、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン含量:35mol%、極限粘度[η]:0.46dl/g)
ここで、上記の環状オレフィン共重合体(A))は、国際公開第2008/068897号の実施例に記載の合成例に準じた方法により合成した。
A−2:環状オレフィンの単独重合体(日本ゼオン社製、ZeonexE48R)
【0061】
[環状オレフィン系重合体以外の成分]
B−1:芳香族環状構造含有オリゴマー(重量平均分子量:2000、溶解度パラメータ:19.3MPa
1/2)
B−2:芳香族環状構造含有オリゴマー(重量平均分子量:2105、溶解度パラメータ:19.6MPa
1/2)
B−3:芳香族環状構造含有オリゴマー(重量平均分子量:2590、溶解度パラメータ:19.7MPa
1/2)
B−4:ポリスチレン(重量平均分子量:35000、溶解度パラメータ:20.1MPa
1/2)
【0062】
[合成例1:芳香族環状構造含有オリゴマー(B−1)の合成]
攪拌翼を備えた実容量1270mlのオートクレーブに、α−メチルスチレンおよび脱水精製したトルエンの混合物(容量比:モノマーの合計/トルエン=1/1)と、脱水精製したトルエンで10倍希釈したボロントリフロライドフェノラート錯体(フェノール1.7倍当量)とを連続的に供給し、反応温度を5℃で重合反応させた。このとき、触媒量は全モノマーに対し0.20wt%の割合とし、モノマーの供給量が1.0リットル/時間となるように原料を供給した。引き続き、この反応混合物を2段目のオートクレーブに移送し、5℃で重合反応を続けさせた後、1段目と2段目のオートクレーブ中での合計滞留時間が2時間になった所で、連続的に反応混合物を排出し、滞留時間の3倍となった所で1リットルの反応混合物を採取し、重合反応を終了させた。重合終了後、採取した反応混合物に1規定のNaOH水溶液を添加し、触媒残さを脱灰した。更に得られた反応混合物を多量の水で5回洗浄した後、エバポレーターで溶媒および未反応モノマーを減圧留去して、芳香族環状構造含有オリゴマー(B−1)を得た。得られた芳香族環状構造含有オリゴマー(B−1)は、重量平均分子量Mw=2000であった。
【0063】
[合成例2:芳香族環状構造含有オリゴマー(B−2)の合成]
攪拌翼を備えた実容量1270mlのオートクレーブに、イソプロペニルトルエン、インデンおよび脱水精製したトルエンの混合物(容量比:モノマーの合計/トルエン=1/1)と、脱水精製したトルエンで10倍希釈したボロントリフロライドフェノラート錯体(フェノール1.7倍当量)とを連続的に供給し、反応温度を5℃で重合反応させた。このとき、イソプロペニルトルエンとインデンの重量比は50/50、触媒量は全モノマーに対し0.20wt%の割合とし、モノマーの供給量が1.0リットル/時間となるように原料を供給した。引き続き、この反応混合物を2段目のオートクレーブに移送し、5℃で重合反応を続けさせた後、1段目と2段目のオートクレーブ中での合計滞留時間が2時間になった所で、連続的に反応混合物を排出し、滞留時間の3倍となった所で1リットルの反応混合物を採取し、重合反応を終了させた。重合終了後、採取した反応混合物に1規定のNaOH水溶液を添加し、触媒残さを脱灰した。更に得られた反応混合物を多量の水で5回洗浄した後、エバポレーターで溶媒および未反応モノマーを減圧留去して、芳香族環状構造含有オリゴマー(B−2)を得た。得られた芳香族環状構造含有オリゴマー(B−2)は、重量平均分子量Mw=2105であった。
【0064】
[合成例3:芳香族環状構造含有オリゴマー(B−3)の合成]
攪拌翼を備えた実容量1270mlのオートクレーブに、α−メチルスチレン、スチレンおよび脱水精製したトルエンの混合物(容量比:モノマーの合計/トルエン=1/1)と、脱水精製したトルエンで10倍希釈したボロントリフロライドフェノラート錯体(フェノール1.7倍当量)とを連続的に供給し、反応温度を5℃で重合反応させた。このとき、α−メチルスチレンとスチレンの重量比は63/37、触媒量は全モノマーに対し0.11wt%の割合とし、モノマーの供給量が1.0リットル/時間となるように原料を供給した。引き続き、この反応混合物を2段目のオートクレーブに移送し、5℃で重合反応を続けさせた後、1段目と2段目のオートクレーブ中での合計滞留時間が2時間になった所で、連続的に反応混合物を排出し、滞留時間の3倍となった所で1リットルの反応混合物を採取し、重合反応を終了させた。重合終了後、採取した反応混合物に1規定のNaOH水溶液を添加し、触媒残さを脱灰した。更に得られた反応混合物を多量の水で5回洗浄した後、エバポレーターで溶媒および未反応モノマーを減圧留去して、芳香族環状構造含有オリゴマー(B−3)を得た。得られた芳香族環状構造含有オリゴマー(B−3)は、重量平均分子量Mw=2590であった。
【0065】
[重量平均分子量]
ここで、環状オレフィン系重合体以外の成分の重量平均分子量は、GPC測定により測定し、標準ポリスチレン換算値として求めた。GPC測定は以下の条件で行った。
装置:GPC HLC−8320(東ソー株式会社製)
溶剤:テトラヒドロフラン
カラム:TSKgel G7000×1、TSKgel G4000×2、TSKgel G2000×1(何れも東ソー社製)
流速:1.0ml/分
試料:20mg/mL テトラヒドロフラン溶液
温度:室温
[溶解度パラメータ]
環状オレフィン系重合体以外の成分の溶解度パラメータは、Materials StudioのSynthiaモジュールを用いて計算したFedorsのパラメータを採用した。
【0066】
【表1】
【0067】
以上のように、実施例1〜5で得られた環状オレフィン系樹脂組成物により構成された成形体(シート)は透明性および屈折率の性能バランスに優れていた。一方、芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の含有量が多い比較例1や、芳香族環状構造を有するオリゴマー(B)の代わりにポリスチレンを含む比較例2の成形体は透明性が悪く、透明性および屈折率の性能バランスに劣っていた。