特許第6851332号(P6851332)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851332
(24)【登録日】2021年3月11日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】硬さ測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/42 20060101AFI20210322BHJP
【FI】
   G01N3/42 Z
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-8289(P2018-8289)
(22)【出願日】2018年1月22日
(65)【公開番号】特開2019-128181(P2019-128181A)
(43)【公開日】2019年8月1日
【審査請求日】2019年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】390000011
【氏名又は名称】JFEアドバンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】藤原 信悟
(72)【発明者】
【氏名】藤原 郁久
【審査官】 佐々木 龍
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−284734(JP,A)
【文献】 特開2014−038089(JP,A)
【文献】 特開平04−042036(JP,A)
【文献】 米国特許第04132224(US,A)
【文献】 特開2002−005822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00−3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
一部が前記本体部に固定された軸部材と、
前記軸部材に取り付けられ、前記軸部材の長手方向に交差する方向に延びる圧子と
を備え
前記軸部材の径方向外側に配置され、側壁において、開口と、前記開口に隣接したねじ孔とを有する筒状の第1規制部材をさらに備え、
前記圧子は、前記開口を通じて前記側壁から突出し、
前記ねじ孔から前記第1規制部材の径方向外側に突出した突出部が設けられ、
前記突出部と前記ねじ孔との間にはねじ構造が構成され、前記突出部の突出量は前記ねじ構造によって可変である、硬さ測定装置。
【請求項2】
前記突出部は球形状である、請求項1に記載の硬さ測定装置。
【請求項3】
前記ねじ孔は、前記第1規制部材が延びる方向において前記本体部とは反対側の端部に設けられている請求項1または請求項2に記載の硬さ測定装置。
【請求項4】
前記第1規制部材の径方向外側に配置された筒状の第2規制部材をさらに備える、請求項から請求項3のいずれか1項に記載の硬さ測定装置。
【請求項5】
前記第2規制部材の側壁の厚みは、一定でない、請求項に記載の硬さ測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬さ測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧子を被測定物に押しつけることによって生じるくぼみの大きさから硬さを測定する方法が知られている。この評価される硬さには、ビッカース硬さ、ヌープ硬さ、またはブリネル硬さなどがある。また、圧子を被測定物に押しつけることによって生じるくぼみの深さから硬さを測定する方法も知られている。この評価される硬さには、ロックウェル硬さなどがある。
【0003】
硬さを測定するためには、一定の力で圧子を被測定物に押しつける必要がある。例えば、特許文献1には、一定の力で圧子を被測定物に押しつけることのできる荷重印加機構を備える測定装置が開示されている。この硬さ測定装置は、荷重印加機構として、レバーを介して圧子に荷重を印加するレバー機構を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−157049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなレバー型の荷重印加機構では、レバーの変形を防止して一定の力を確保する必要がある。そのため、レバーを高剛性化する必要があり、レバーが大型化する傾向にある。また同様に、レバーを軸支するための高剛性の回動機構も必要となり、レバーの支持部も大型化する傾向にある。大型化したレバーの支持部近傍に圧子が取り付けられているため、狭小空間で硬さを測定することができない。具体的には、例えば細い管体の内面の硬さなどを測定することができない。
【0006】
本発明は、狭小空間において硬さを測定できる硬さ測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
本体部と、
一部が前記本体部に固定された軸部材と、
前記軸部材に取り付けられ、前記軸部材の長手方向に交差する方向に延びる圧子と
を備える硬さ測定装置を提供する。
【0008】
この構成によれば、軸部材の一部が固定されているため、圧子を被測定物に押しつけた際に軸部材が固定部を支点として撓む。そのため、この撓みによる反力を試験荷重とすることができる。よって、簡単な構造で試験荷重を発生させることができる。ここでの固定とは、単に位置が固定されるだけでなく回動もしないように固定されることをいう。また、圧子が軸部材の長手方向に交差する方向に延びているため、軸部材の長手方向以外に圧子を押し付ける構成となっている。従って、狭小空間での測定が可能となり、例えば、軸部材を細い管体などに挿入し、その内面に圧子を押し付けることで細い管体の内面の硬さを測定することができる。
【0009】
前記硬さ測定装置は、前記軸部材の径方向外側に配置され、側壁に開口を有する筒状の第1規制部材をさらに備え、
前記圧子は、前記開口を通じて前記側壁から突出していてもよい。
【0010】
この構成によれば、圧子を被測定物に押しつけたとき、圧子が穴部に収容されるまで軸部材が撓む。即ち、圧子が第1規制部材に収容されると、被測定物と第1規制部材の側壁が当接し、軸部材にそれ以上の力が付加されなくなる。そのため、軸部材に一定の力を付加でき、軸部材の撓み量を規定できる。軸部材の撓み量が規定されるため、撓みに対する反力も規定される。従って、一定の力で圧子を押し付けることができ、即ち試験荷重を安定させることができる。
【0011】
前記圧子に隣接した位置に、前記第1規制部材の前記側壁から径方向外側に突出した突出部が設けられていてもよい。
【0012】
この構成によれば、圧子を被測定物に押しつけたとき、被測定物が突出部に当接するまで軸部材が撓む。従って、被測定物の当接部位をノーズピースの側面ではなく突出部とすることができるため、当接位置を正確に設計するのが容易となる。従って、圧子の突出量を正確かつ容易に規定できる。
【0013】
前記第1規制部材の突出部はねじ構造を有し、前記突出部の突出量は前記ねじ構造によって可変であってもよい。
【0014】
この構成によれば、ねじ構造という簡易な構造で第1規制部材の突出部の突出量を簡単かつ確実に調整できる。
【0015】
前記硬さ測定装置は、前記第1規制部材の径方向外側に配置された筒状の第2規制部材をさらに備えてもよい。
【0016】
この構成によれば、圧子を被測定物に押しつけたとき、被測定物が突出部と第2規制部材に当接するまで軸部材が撓む。従って、前述と同様に一定の力で圧子を押し付けることができ、試験荷重を安定させることができる。特に、第2規制部材の厚みを規定することで、容易に圧子の突出量を規定できる。
【0017】
前記第2規制部材の側壁の厚みは、一定でなくてもよい。
【0018】
この構成によれば、第2規制部材の姿勢を変更し、圧子が延びる方向の第2規制部材の厚みを調整することで、圧子突出量を容易に調整できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、軸部材の一部が固定されているため、軸部材の撓みによる反力を試験荷重として安定した測定を可能にし、圧子が軸部材の長手方向に交差する方向に延びているため、硬さ測定装置を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る硬さ測定装置の斜視図
図2】硬さ測定装置の縦断面図
図3】硬さ測定装置の測定前の部分拡大断面図
図4】硬さ測定装置の測定中の部分拡大断面図
図5】硬さ測定装置の測定前の部分拡大断面図
図6】硬さ測定装置の測定中の部分拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0022】
図1は、一実施形態に係る硬さ測定装置1の斜視図である。また、図2は、硬さ測定装置1の縦断面図である。硬さ測定装置1は、ユーザが把持する部分である基端部(本体部)10と、基端部10から延びる先端部20とを備える。
【0023】
基端部10は、円柱状の外形を有し、先端部20よりも太い径を有する。基端部10は、有底円筒状のキャップ11と、キャップ11の内部に配置され、先端部20に向かって先細り形状を有する概ね円筒状の留め具12とを備える。
【0024】
先端部20は、被測定物に押し付けられる圧子21と、圧子21が取り付けられた軸部材22と、軸部材22の径方向外側に配置されたノーズピース(第1規制部材)23と、ノーズピース23の径方向外側に配置された外筒(第2規制部材)24とを備える。以降、図2に示すように、軸部材22が延びる方向(軸部材22の長手方向)をX方向と称する。
【0025】
圧子21は、先端が尖った形状を有し、例えば超硬合金製である。圧子21は、軸部材22の一端にてX方向に直交して取り付けられている。以降、図2に示すように、圧子21が延びる方向、即ち尖った先端が向いた方向をY方向と称する。ただし、圧子21が延びる方向(Y方向)は、X方向に直交する方向に限定されず、X方向に交差する方向であり得る。具体的には、Y方向は、X方向から任意の角度で傾斜した方向であってもよい。
【0026】
本実施形態では、軸部材22は、硬さ測定装置1の概ね全長にわたってX方向に延びる円柱状である。軸部材22の材質は例えば鋼鉄製であり、軸部材22は形状および材料特性からY方向における撓み量と反力との関係が既知のものが使用される。軸部材22の一端には前述のように圧子21が取り付けられており、他端は基端部10内で終端している。また、軸部材22には、円板状のつば部22aが設けられている。つば部22aは、後述するように基端部10にて支持されている。
【0027】
ノーズピース23は概ね有底円筒状であり、その側壁にはX方向に延びるスリット状の開口23aが形成されている。開口23aを通じてノーズピース23の側壁からは圧子21が径方向外側へ突出している。ノーズピース23のX方向における一端部にはフランジ部23bが形成されている。フランジ部23bは、基端部10のキャップ11内に挿入され、キャップ11によって支持されている。また、フランジ部23bには、留め具12が挿入されている。フランジ部23bと留め具12によって、軸部材22のつば部22aが支持されている。これにより、軸部材22の一部(つば部22a)は、基端部10に対して固定される。ここでの固定とは、単に位置が固定されるだけでなく回動もしないように固定されることをいう。また、ノーズピース23の他端部にはねじ構造が設けられている。具体的には、ノーズピース23の他端部にはねじ孔23cが設けられており、ねじ孔23cにはスクリュ25が挿入されている。スクリュ25は、Y方向において、一端に球形部(突出部)25aを有し、他端に六角穴25bが形成されている。従って、ユーザは、六角レンチ等を使用してスクリュ25を回転させることで、スクリュ25をY方向に移動させることができる。これにより球形部25aの突出量を調整できる。
【0028】
外筒24は概ね円筒状であり、側壁の厚みは一定でない。外筒24のX方向における一端部には、フランジ部24aが形成されている。フランジ部24aは、ノーズピース23ないしキャップ11に載置されている。外筒24の他端部は圧子21よりも基端部10側で終端し、外筒24の他端部から軸部材22とノーズピース23が延出している。また、外筒24は、固定されておらず、X方向回りに回転可能であり、さらに言えば着脱可能でもある。
【0029】
図3は硬さ測定装置1の測定前の部分拡大断面図であり、図4は硬さ測定装置1の測定中の部分拡大断面図である。図3,4を参照して、硬さ測定装置1の寸法関係および使用方法について説明する。
【0030】
本実施形態では、圧子が延びる方向(Y方向)において、ノーズピース23の外面と、外筒24の内面とが揃えられている。Y方向において、外筒24の板厚tと、球形部25aのノーズピース23の側壁からの突出量d1とは、同じに設定されている(t=d1)。外筒24の板厚は、tminからtmaxまで連続的に変化しており、外筒24をX方向まわりに回転させることでY方向の板厚tをtminからtmaxの範囲で調整できる。図示の例では、t=tminの姿勢で外筒24を配置している。また、球形部25aの突出量d1は、前述のようにねじ構造によって可変である。本実施形態では、圧子21の突出量d2は、外筒24からの突出量ないし球形部25aからの突出量によって規定される。球形部25aの突出量d1と外筒24の板厚tが可変であることから圧子21の突出量d2も可変である。
【0031】
硬さ測定装置1を使用して硬さを測定する際、ユーザは基端部10を把持し、先端部20の圧子21を被測定物に押し付ける。硬さ測定装置1は、特に細い管体の内面の硬さを測定するのに適している。細い管体の内面の硬さを測定する場合、先端部20を管体内に挿入し、管体の内面に圧子21を押し付ける。軸部材22が撓み、圧子21が距離d2移動されると、圧子21が収容され、被測定物が球形部25aと外筒24の側面の両方に同時に接触する。換言すれば、本実施形態では、被測定物が球形部25aと外筒24の側面との両方に同時に接触するように、球形部25aの突出量d1と、外筒の板厚tとが同じに設定されている。このようにして、圧子21を被測定物に押しつけることで、被測定物にくぼみが形成され、くぼみの大きさないし深さに基づいて被測定物の硬さを測定する。
【0032】
図5,6には、外筒24を図3,4の状態から回転させ、Y方向における外筒24の板厚tを変更した場合の状態の硬さ測定装置1が示されている。ここでは、球形部25aの突出量d1は変更されていない。このように、球形部25aの突出量d1と板厚tとは必ずしも一致していなくてもよい。このとき、圧子21の突出量d2は、外筒24の先端と球形部25aの頂点とを結ぶ直線Lからの突出量によって規定される。
【0033】
本実施形態の硬さ測定装置1によれば、次のような利点がある。
【0034】
軸部材22の一部(つば部22a)が基端部10に固定されているため、圧子21を被測定物に押しつけた際に軸部材22がつば部22aを支点として撓む。そのため、この撓みによる反力を試験荷重とすることができる。よって、簡単な構造で試験荷重を発生させることができる。また、圧子21が軸部材22の長手方向に直交する方向に延びているため、軸部材22の長手方向以外に圧子21を押し付ける構成となっている。従って、狭小空間での測定が可能となり、例えば、軸部材22を細い管体などに挿入し、その内面に圧子21を押し付けることで細い管体の内面の硬さを測定することができる。
【0035】
また、圧子21を被測定物に押しつけたとき、被測定物が球形部25aに当接するまで軸部材22が撓む。従って、被測定物の当接部位をノーズピース23の側面ではなく球形部25aとすることができるため、当接位置を正確に設計するのが容易となる。従って、圧子21の突出量d2を正確かつ容易に規定できる。
【0036】
また、ねじ構造という簡易な構造でスクリュ25の突出量d1を簡単かつ確実に調整できる。
【0037】
また、圧子21を被測定物に押しつけたとき、被測定物が球形部25aと外筒24に当接するまで軸部材22が撓む。被測定物が球形部25aと外筒24に当接すると、軸部材22にそれ以上の力が付加されなくなる。そのため、軸部材22に一定の力を付加でき、軸部材22の撓み量を規定できる。軸部材22の撓み量が規定されるため、撓みに対する反力も規定される。従って、一定の力で圧子を押し付けることができ、即ち試験荷重を安定させることができる。
【0038】
また、外筒24を回転させて姿勢を変更し、圧子が延びる方向(Y方向)の外筒24の厚みtを調整することで、圧子21の突出量d2を容易に調整できる。
【0039】
以上より、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、軸部材22、ノーズピース23、および外筒24のX方向断面は、円形に限定されず、矩形、六角形等、様々であり得る。
【0040】
また、上記実施形態では、ユーザが把持する部分(本体部)を基端部10として硬さ測定装置1の基端に設けたが、これに限定されず、ユーザが把持する部分(本体部)は任意の位置に設けられてもよく、例えば中央部に設けられてもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、硬さ測定装置1は外筒24とスクリュ25を備えるが、これらの構成は必須ではない。具体的には、外筒24とスクリュ25を取り外した状態で、圧子21を被測定物に押しつけると、圧子21がノーズピース23に収容されるまで軸部材22が撓む。即ち、圧子21がノーズピース23に収容されると、被測定物とノーズピース23の側壁が当接し、軸部材22にそれ以上の力が付加されなくなる。そのため、前述のように一定の力で圧子を押し付けることができ、即ち試験荷重を安定させることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 硬さ測定装置
10 基端部(本体部)
11 キャップ
12 留め具
20 先端部
21 圧子
22 軸部材
22a つば部
23 ノーズピース(第1規制部材)
23a 開口
23b フランジ部
23c ねじ孔
24 外筒(第2規制部材)
24a フランジ部
25 スクリュ
25a 球形部
25b 六角穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6