(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851356
(24)【登録日】2021年3月11日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】2つの金属材料間の溶接又は粉体の焼結にレーザーを用いる方法、PEM燃料電池用バイポーラプレートの製造のための使用
(51)【国際特許分類】
B23K 26/70 20140101AFI20210322BHJP
H01M 8/0206 20160101ALI20210322BHJP
H01M 8/0228 20160101ALI20210322BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20210322BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
B23K26/70
H01M8/0206
H01M8/0228
H01M8/10 101
B22F3/105
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-201650(P2018-201650)
(22)【出願日】2018年10月26日
(65)【公開番号】特開2019-115928(P2019-115928A)
(43)【公開日】2019年7月18日
【審査請求日】2019年3月5日
(31)【優先権主張番号】1760478
(32)【優先日】2017年11月8日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510225292
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジー アトミック エ オ ゼネルジー アルテルナティブ
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】ルドヴィク ルイヨン
【審査官】
金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−229515(JP,A)
【文献】
特開2012−224919(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0248076(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0207146(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0158116(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/70
B22F 3/105
H01M 8/0206
H01M 8/0228
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの金属プレート(2,3)を溶接するための方法であって、以下の工程:
a.レーザービーム(F)の1以上の発振波長において透明な中実プレート(10)を、溶接されるべき前記2つの金属プレート間の1以上の接触ゾーン(4)とレーザー(L)との間に配置する工程、 a2.前記2つの金属プレートに対して、溶接されるべき該1以上の接触ゾーンにおいて該2つの金属プレートを互いに向き合うように圧力を加える工程、
b.上記透明なプレートを通して、レーザービームを発振して、該1以上の接触ゾーンにおける該2つの金属プレートの溶接を行う工程
を含み、
工程a2の圧力の印加が、溶接されるべき2つの金属プレートの一方と直接接触している透明なプレートによって行われる、前記方法。
【請求項2】
工程bの前に、該1以上の接触ゾーンを不活性化する工程a1をさらに含んでおり、不活性化が中性ガス、好ましくはアルゴン及び/又は窒素によって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程bが、上記透明なプレートに対して実質的に垂直なレーザービームによって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程bが、溶接されるべき該1以上の接触ゾーンに対して実質的に垂直なレーザービームによって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
使用される透明なプレートに用いられる材料が、以下の材料:ガラス、ポリマー、透明セラミック又は吸収を制限するためにドープされている透明セラミック(イッテルビウムドープ酸化スカンジウム)から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
金属プレート間の接触ゾーンによって画定されるチャネル内を不活性化ガスが循環する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法を、燃料電池向け、特にプロトン交換膜燃料電池向けのバイポーラプレートの製造に、使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーによる、金属材料間の溶接並びに1種以上の粉体の焼結の分野に関する。
【0002】
本発明は、特に、複雑な経路を辿って行う必要のある金属部材間の溶接又は1種以上の粉体の焼結を容易にするとともに、溶接線/点又は焼結ゾーンの酸化を防ぐことを目的とする。
【0003】
対象とされる主な用途は、波形又はリブ付き金属プレートの、峡部波形のレベル又は峡部波形の尖端部のレベルでの溶接に関するものであり、該プレートの波形又はリブは、溶接すると、流体循環用の密閉チャネルを内部に画定する。これらは、燃料電池又は高温電解槽のスタック、典型的にはプロトン交換膜燃料電池(PEMFC)のスタックの一部を構成するいわゆるバイポーラプレートとすることができる。
【0004】
この主な用途、特にPEMFC用途に関連して説明するが、本発明は、集成すべき材料の連続性を生じさせることを目的として、1種以上の金属材料を加熱或いはさらには局所的に溶融するために高エネルギーレーザーを用いる任意の用途に適用される。
【背景技術】
【0005】
プロトン交換膜燃料電池PEMFCは、水素と酸素の触媒反応によって化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換する電気化学装置である。PEM燃料電池は、複数のセルの直列のスタックを含む。各セルで発生する電圧は典型的には0.7V程度であるが、それらを積み重ねることによって、高レベルの供給電圧、例えば約100V程度の供給電圧を発生させることができる。
【0006】
さらに具体的には、PEM燃料電池は、膜電極接合体すなわちMEAを各々含む単位セル又は基本ユニットを含んでおり、MEAは燃料電池の電気化学的心臓部をなす。各MEAは、プロトンを選択的に透過させることができる電解質ポリマー膜と、この膜の両側でアノードとカソードを形成する触媒層とからなる。
【0007】
このように、膜によってアノード区画とカソード区画とを分離することができる。触媒層は一般にカーボン凝集体に担持された白金ナノ粒子からなる。
【0008】
MEAの両側には、電気伝導性を与えるとともに、反応ガスを均一に導入し、生成した水を除去するために、通常はグラファイト繊維(カーボンクロス、フェルトなど)からなるガス拡散層(カーボンクロス、フェルトなど)すなわちGDLが配置される。
【0009】
アノードでは、次式に示すように、触媒に吸着した水素の分解によってプロトンH
+と電子e
−が生成する。
H
2→2H
++2e
−
【0010】
プロトンは、ポリマー膜を透過して、カソードで酸素と反応する。カソードでのプロトンと酸素との反応によって、次式に示すように、水が生成し、熱を発生する。
O
2+4H
++4e
−→2H
2O
【0011】
上述の通り、PEMFCは、基本ユニットのスタック、したがって2枚のプレート間に配置された複数のMEAを含むことがあり、これらのプレートは電流の通過及びガスの流れを担保する必要がある。この種のスタックでは、隣接する2つの基本ユニットは概して1枚の同じプレートによって分離され、その一方の面は第1のMEAのカソード区画と接触し、他方の面は第2のMEAのアノード区画と接触しており、さらに正確にいうとガス拡散層と接触している。このため、PEMFCのプレートは一般に「バイポーラプレート」と呼ばれる。
【0012】
このように、バイポーラプレートは、以下に挙げる事項を含む幾つかの機能を果たす。
・収集した電流の輸送及び異なる基本ユニット間の電気的接続;
・ガス(H
2、O
2又は空気)の分配、及びその内部に設けられたチャネル及び/又はオリフィスを介しての、カソードで生成した水の除去;
・アノードとカソードの間の不透性分離;
・冷却液を流すことによるセルの温度調節;
・様々なユニットセルのアノードで生成した電子の収集;
・MEAの耐久性を確保するための機械的支持。
【0013】
具体的には、コスト、全体的寸法及び性能の理由から、これらの機能は、PEMFC用のバイポーラプレートが一般に金属で作られていることに反映されている。
【0014】
さらに正確には、バイポーラプレートは、一般に、成形後に溶接又は接着などの手段によって互いに接合される2枚の薄い金属プレート又はシートからなる。
【0015】
溶接又は接着工程では、これら2枚のシート間の接触を所定の圧力に維持する必要があり、溶接の場合には、溶接継手で起こり得る酸化を抑制するために不活性化を用いる必要がある。
【0016】
図1は、この種のバイポーラプレート1であって、溝20,30;21,31がそれぞれ形成された2枚の同一の金属プレート2,3からなるバイポーラプレート1を示す。
【0017】
これらのプレート2,3は、継手4によって組み立てられる。得られるアセンブリは、溝20,30によってそれぞれ水素H
2及び酸素O
2の循環用チャネル5,6が画定され、溝21,31は伝熱流体Cの循環用チャネル7を内部に画定する。
【0018】
レーザー溶接は、燃料電池のバイポーラプレートの2枚の薄いプレート/シートを組み立てるための最も費用対効果の高い方法であると考えられている(非特許文献1)。
【0019】
カプセル封入が十分に制御されていれば、これらのシートは重ね溶接される(非特許文献2)。米国特許第5096518号にも、このようなカプセル封入の必要性について記載されている。
【0020】
カプセル封入が制御されていれば、高エネルギーレーザーのビームによって、どちらのプレートにも穿孔せずに、金属−金属接触面を融合させることができる。
【0021】
これらのプレートのカプセル封入は様々な方法で行うことができ、シートの両側に一種の万力を形成するために外部圧力プレートが常用されたり、或いは負圧を生じさせてシート同士を把持してそれらを物理的に保持する。
【0022】
図2は、圧力プレート8,9によるシート2,3のカプセル封入を伴うレーザー溶接Lを示す。
【0023】
下側プレート8は基盤として機能し、その上に集成すべきシート2,3が配置される。
【0024】
上側プレート9は、シート2,3を、それらの表面間の接触力を継手4が形成されるレベルに維持する圧力で挟持する。
【0025】
図2から分かる通り、プレート9には、所要の継手ゾーン4に連続又はスポット溶接シームをもたらすため、レーザーLのビームFがアクセスできるように複数の貫通開口90が設けられている。これらの継手ゾーンは、それらの形状及び/又はアクセスし易さが複雑になりかねない。継手ゾーンは、例えば、チャネル5,6,7間のガス供給用開口の周縁のゾーン又はシート2,3の外周縁のゾーンなどであることがある。
【0026】
こうした金属と金属の接触を維持するために圧力プレート9を用いる溶接方法には、幾つかの短所がある。
【0027】
第一に、定義上、圧力プレートは複数の貫通開口を設けて製造する必要がある。
【0028】
この圧力プレートの厚さはレーザー装置の焦点距離によって制限されるので、これらの開口によって圧縮応力に不均一さが生じてしまい、その結果、状況(典型的には大面積バイポーラプレートの場合)によっては、集成すべき2枚のシートを溶接中に接触状態に保つ力が局所的に不十分になってしまうことがある。
【0029】
さらに、これらの開口はできるだけ小さくしなければならないので、不活性化によって酸化を抑制するのが難しい。実際、圧力プレートの開口を通して不活性化ガスを送る不活性化システムは、従前、
図2に矢印で示すように、溶接レーザーを支持するノズルに取り付けられている。そのため、開口を通してガスを送り込みにくいので、溶接部を不活性化するのは非常に困難である。
【0030】
圧力プレートに形成される開口は、溶接装置の製造コストを増大させ、バイポーラプレートの様々な幾何形状、ひいては溶接されるべき種々の入り組んだ複雑なゾーンに対応した多数の設計を必要とする。
【0031】
ある既存の代替案は、もっと局所的な把持、すなわち作成すべき各継手のレベルで局所的に接触を維持するための解決策を用いて、溶接を数工程で実施することからなる。この解決策には、集成すべきシートの全面を溶接して所望のバイポーラプレートを得るには、レーザービームの停止、並びに構成及び圧力プレートを変更するための介在が必要とされるという短所がある。
【0032】
米国特許第7009136号には、負圧によってプレート/シート間の接触を維持する方法が提案されている。すなわち、プレート同士の2つの境界面間に部分真空を生じさせるが、それらの内部空間は冷却液の回路を画定する。このような部分真空によって、2枚のプレート/シートをそれらの金属−金属接触面のレベルで互いに引き寄せ合うようにすることができる。プレート/シートは次いでレーザーによってこれらの接触面のレベルで互いに溶接される。この方法は、複数の貫通開口をもつ圧力プレートの短所をなくす限りにおいて、有益であると思われる。
【0033】
しかし、実際には、バイポーラプレートの周縁部及び供給開口の位置にクランプ装置を設けずに、多数の穴を含むプレート/シート間に負圧を発生させること及びそれらを真空系に接続することは困難である。
【0034】
さらに、成形後に、金属プレート/シートが数多くの内部機械応力を含み、バイポーラプレートの中央ゾーンで顕著な撓みを生じることが判明した。この顕著な撓みは、負圧の作用だけではなくすのが難しいことが判明した。
【0035】
燃料電池に関しては、得られたバイポーラプレートを、想定される溶接部が局所的であるのと同様に、局所的に焼結される粉体で好適にコートしてもよい。これらの粉体は金属又はセラミックとし得る。例えば、特定の継手による酸化からバイポーラプレートを保護するためのコーティングを堆積させることが有益であることがある。不透性とするために、コーティングは緻密でなければならず、そのため焼結する必要がある。コーティングは金属でも、セラミック(ZrO
2、Al
2O
3)でもよい。
【0036】
金属粉体の焼結の分野では、金属に基づく3次元(3D)部品の製造にレーザーを用いることが知られている。金属粉体の連続層での3Dプリンティングはレーザーによって実施される。このプロセスは、製造中に部品が溶融するのを避けるため、粉体を焼結させるチャンバー全体をアルゴン及び/又は窒素で不活性化することを含む。この装置は高価であり、必ずしもあらゆる種類の部品に適しているわけではない。
【0037】
以上から明らかな通り、特に圧力プレート又は真空系を備える従前のレーザー溶接装置の短所を克服するために、燃料電池用、特にPEM燃料電池用のバイポーラプレートの溶接を実施するための解決策を改良することが必要とされている。
【0038】
また、特にレーザーを用いて上述の金属プレートをコートするための、粉体の焼結のための解決策を改良することも必要とされている。
【0039】
一般的には、金属−金属又は金属−セラミック接合部/継手を製造するための溶接/焼結解決策であって、実施が容易で、効果的で、安価で、かつ不活性化と両立し得るものを提案することが必要とされている。
【0040】
本発明の目的は、これらのニーズに少なくとも部分的に応えることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0041】
【特許文献1】米国特許第5096518号
【特許文献2】米国特許第7009136号
【非特許文献】
【0042】
【非特許文献1】Marcinkoski J, James BD, Kalinoski JA,Podolski W, Benjamin T, Kopasz J. "Manufacturing process assumptions, usedin fuel cell system cost analyses." J Power Sources 196, 2011, 5282-5292
【非特許文献2】Cazes, "Welding with high-energy beams:electron beam and laser." Techniques de l'Ingenieur 1994, B7, 740
【発明の概要】
【0043】
この目的のために、本発明は、2つの金属材料を溶接する又は1種以上の粉体を焼結するための方法であって、以下の工程:
a.レーザービームの1以上の発振波長において透明な中実プレートを、溶接されるべき金属材料間の1以上の接触ゾーン又は1種以上の粉体の1以上の焼結ゾーンとレーザーとの間に配置する工程、
b.上記透明なプレートを通して、レーザービームを発振して、該1以上の接触ゾーンにおける該材料の溶接又は該1以上の焼結ゾーンにおける1種以上の粉体の焼結を行う工程
を含む方法に関する。
【0044】
このように、本発明は、溶接用又は焼結用レーザーの1以上の波長に対して透明で、そのビームを溶接又は焼結すべきゾーンに送ることができる、開口のないプレートに上記レーザーを通すことから基本的になる。
【0045】
実施は簡単であるが、このような解決策に想到した者はいなかった。
【0046】
この透明プレートは、溶接継手の酸化又は焼結すべき粉体の酸化を防ぐために不活性化ガスを循環させることができる閉じ込め容積を簡単かつ安価に作り出すことができる。
【0047】
波形及び/又はリブ付きの金属シート/プレート同士の溶接に適用する場合、特に燃料電池用のバイポーラプレートの製造の場合、本発明は従前の方法に比べて幾多の長所を有しており、その中でも特に以下の点を挙げることができる。
・溶接されるべき各接触ゾーンにレーザービームを通すための複数の開口を作るための不透明圧力プレートの複雑な機械加工が不要になること;
・金属−金属接触を促進するのに最適な状態の応力が、溶接されるべきゾーンの近傍で、局所的に得られること;
・溶接経路又は幾何形状による制約を受けることなく、透明プレートを様々な幾何形状のプレート/シートに対して所望通り使用できること。
【0048】
好適な実施形態では、本方法は、工程bの前に、1以上の接触ゾーン又は1以上の焼結ゾーンを不活性化する工程a1をさらに含んでおり、不活性化は中性ガス、好ましくはアルゴン及び/又は窒素によって実施される。
【0049】
好ましくは、工程bは、透明プレートに対して実質的に垂直なレーザービームによって実施される。
【0050】
さらに好ましくは、工程bは、溶接されるべき1以上の接触ゾーン又は1以上の焼結ゾーンに対して実質的に垂直なレーザービームによって実施される。
【0051】
使用される透明プレートに用いられる材料は、好適には、以下の材料:ガラス、ポリマー、
透明セラミック又は吸収を制限するため
にドープされてい
る透明セラミック(イッテルビウムドープ酸化スカンジウム)
から選択し得る。
【0052】
2枚の金属プレート間の溶接の場合、本方法は、好ましくは、工程bの前、及び該当する場合には工程a1の前に、2枚の金属プレートに対して、溶接されるべき1以上の接触ゾーンにおいて
該2つの金属プレートを互いに向き合うように圧力を加える工程a2を含む。
【0053】
工程cの圧力の印加は、溶接されるべき2枚の金属プレートの一方と直接接触している透明プレートによって行うことができる。
【0054】
好適には、金属プレート間の接触ゾーンによって画定されるチャネル内を不活性化ガスが循環する。
【0055】
本発明は、また、燃料電池向け、特にプロトン交換膜燃料電池(PEMFC)向けのバイポーラプレートを製造するための上述の方法の使用に関する。
【0056】
本発明は、最後に、プレート上に焼結コーティングを製造するための上述の方法の使用に関する。
【0057】
本発明の他の利点及び特徴は、添付の図面と併せて、例示を目的として記載された本発明の詳細な説明を参照することによって、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】
図1は、溶接継手を有するPEM燃料電池用バイポーラプレートの概略断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のバイポーラプレートを製造するための従来技術のレーザー溶接装置の概略断面図である。
【
図3】
図3は、
図1のバイポーラプレートを製造するための本発明に係るレーザー溶接装置の概略断面図である。
【
図4】
図4は、
図3のバイポーラプレートの表面に焼結コーティングを形成するための本発明に係るレーザー焼結装置の概略断面図である。
【
図5】
図5は、焼結金属部品を製造するための本発明に係るレーザー焼結装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
分かり易くするため、
図1〜
図5では、溶接装置及びPEM燃料電池のバイポーラプレートの構成要素で、従来技術と本発明で同じ構成要素には、同じ符号を用いた。
【0060】
なお、従来技術及び本発明に係る様々な構成要素は、分かり易く示したもので、正確な縮尺によるものではない。
【0061】
圧力プレートに関して言及される「上側」及び「下側」という用語は、溶接されるべきプレートが水平に配置され、レーザービームが垂直に配置される構成において考慮されるべきものである。
【0062】
図1及び
図2については、背景技術の欄で既に詳しく説明したので、以下では説明しない。
【0063】
図3は、圧力プレート8,10による、集成すべきシート2,3のカプセル封入を伴うレーザー溶接Lを示す。
【0064】
下側プレート8は基盤として機能し、その上に集成すべきシート2,3が配置される。
【0065】
中実な上側プレート10は、シート2,3を、それらの表面間の接触力を継手4が形成されるレベルに維持する圧力で挟持する。
【0066】
図3から分かる通り、本発明に係る中実プレート10は、溶接レーザーLの波長に対して透明である。そのため、従来技術のプレート9とは対照的に、この中実プレート10には、輪郭のはっきりした複数の開口を設ける必要はない。
【0067】
このように、所要の継手ゾーン4に連続又はスポット溶接シームをもたらすため、レーザーLのビームFはプレート10の任意の箇所でプレート10を透過することができる。これらの継手ゾーンは、それらの形状及び/又はアクセスし易さが複雑であってもよい。継手ゾーンは、例えば、チャネル5,6,7間のガス供給用開口の周縁のゾーン又はシート2,3の外周縁のゾーンなどであってもよい。
【0068】
好適には、溶接中、レーザーLのビームFは、透明プレート10及び溶接ゾーン4に対して垂直に向けられる。これによって、プレート10に用いられる材料の屈折率に関する設計上の制約を回避することができ、ビームFの方向の変化を避けることができる。
【0069】
透明プレート10は、ガラス、アクリル系のポリマー又はセレン化亜鉛(ZnSe)型のセラミックからなるものとし得る。セラミックは、レーザービーム光の吸収を制限するためにドープされていてもよい(イッテルビウムドープ酸化スカンジウム)。
【0070】
プレート10の屈折率は好適には1のオーダーである。
【0071】
開口のない透明プレート10は、基盤を形成するプレート8と共に、容易に気密にすることができる内部空間を画定できる。こうして、この空間には、
図3に示すように、窒素又はアルゴンなどの不活性化ガスGを充填することができる。溶接ゾーン4は、循環する不活性化ガスG中に完全に浸漬され、プレート2,3及び8,10によって画定されるチャネル内に閉じ込められる。
【0072】
図4は、本発明に係る開口のない透明プレート10を用いる他の実施形態を示す。
【0073】
プレート10は容器11を密閉し、不活性化ガスGが注入される空間を形成する。
【0074】
容器11は、バイポーラプレート1と、焼結コーティング12が得られるように該プレートの表面に堆積された金属粉体Pとを収容する。
【0075】
レーザーLのビームFは、任意の箇所で透明プレート10を透過して、焼結すべき粉体の非常に正確なゾーンの粉体に到達し、こうしてプレート1の表面に均一な焼結コーティング12を得ることができる。
【0076】
図5は、
図4と同様の容器と本発明に係る開口のない透明プレート10とから焼結金属部品を得る別の方法を示す。
【0077】
レーザーLのビームFは、任意の箇所で透明プレート10を透過して、焼結すべき粉体の非常に正確なゾーンで粉体Pに到達し、所望の形状の金属部品を得ることができる。
【0078】
本発明の技術的範囲内で、本発明の他の変形及び利点を達成することができる。
【0079】
例えば、バイポーラプレートを得るための溶接の実施に際して、レーザーの波長に対して透明なプレートは、2枚の金属プレートを溶接されるべきゾーンで接触状態に保つための圧力プレートとしても役立つが、透明プレートがこのような圧力を加える機能をもたず、この機能を他の手段で与えることも十分に想定される。
【0080】
本発明は、以上の実施例に限定されるものではなく、特に、例示していない変形例において、例示した複数の例の特徴を組合せることができる。