(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記1つ以上の信号強度フィルタは、空気または肺組織に対応するボクセルを除去する第1のフィルタまたは移動している組織に対応するボクセルを除去する第2のフィルタの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
位相コントラストMRI位相誤差補正
【0003】
ボリューム測定位相コントラスト核磁気共鳴画像(4DPC MRI)は、周期運動及び血流のデータを取得する技術として有望である。しかし、この技術の有用性には限界があった。MRIの取得中の補償されていない渦電流に関連していると推定される位相オフセット誤差に対処する方法が存在しないためである。ボリュームデータ内の位相オフセット誤差に対処する技術は、平面2次元PC−MRIからそのまま流用される技術に頼ってきた。
【0004】
2次元位相コントラストMRIは、血管内血流の定量化のためのデータを取得するのに一般的に用いられる画像化方法である。現在の臨床診療では、これは、測定対象血管の軸に対して垂直に方向づけられた2次元平面を得ることにより行われる。心臓周期の複数の位相にわたって、速度の平面通過(through-plane)成分の画像が得られる。このデータからボリューム測定血流測定値を得るために、測定対象血管の輪郭によって画定された領域全体で平面通過速度成分が合計される。これらの測定値には位相オフセット誤差が生じる(1,2)が、この平面データにおいて位相オフセット誤差を補正することは容易ではない。
【0005】
位相オフセットは、補償されていない渦電流に関連していると推定され、血流の測定値に誤差を生じさせるおそれがある。これらの誤差を補正するための1つの方法は、スライス面内の静止組織の被選択領域から速度成分を手動で減算することである。この方法は、最も簡単に行うことができるので最も広く用いられているが、(a)人手を介する必要があり、(b)位相誤差の空間依存性を完全には考慮していないために、この第1の方法には限界がある。これらの誤差を補正するための別の提案方法は、静止ファントムで測定された誤差の減算である(3)。しかし、この第2の方法は、多大な労力を要するものであり、MRIスキャナでの収集時間を倍増させることから、臨床環境での使用は現実的でない。第3の提案方法は、位相オフセット補正のための自動計算法を利用することであり、最も単純なものは、次式で表される線形2次元モデルを利用する。
【数1】
【0006】
このモデルのパラメータ(c
0,c
x,c
y)は、各画像データ面における静止組織から得られたデータを用いて、通常は最小二乗回帰法により推定される(4)。その結果得られた位相オフセットモデルf(x,y)は、その後、速度画像の各ピクセルから減算される。
【0007】
他にもいくつかの2次元モデルが提唱されている。それらは、次式で表される。
【数2】
ここで、n及びmは非負整数である。このモデルファミリーは、n及びmがともに1に設定されたときには上記の線形モデルを含むが、より詳細な空間的変化をモデリングするために高次項を追加することもできる。高次項の追加が可能ではあるが、高次項のモデリング及び減算が全体の精度を向上させないであろうことが従来の研究において示唆されている(5)。
【0008】
ボリューム測定位相コントラストMRIは、単一平面の代わりにデータのボリューム全体を取得し、3次元ベクトル場、すなわち各ボクセルについてのベクトルエンコード動き(vector encoding motion)を分解する関連MRI技術である。速度の各成分は、空間に依存し得る渦電流関連位相オフセットの影響を受けるので、血流の定量化に誤差を生じさせる可能性がある。このデータを補正するための典型的な方法は、ここでもやはり次式で表されるモデルを用いることである。
【数3】
【0009】
このモデルは、撮像ボリューム内の各データ面において各血流方向に別々に適用することができ、通常は、データの各時間位相にも別々に適用される。この手法は、各同期時点(gated time-point)についての各データスライスに対して別々のモデルをもたらす。このようなデータのスライス毎、位相毎のモデリングは、必要以上に、予測がつかないほどに一貫性がないので、本願出願人は、本明細書において、本発明により位相オフセット誤差の補正を行うための新たな、より信頼性のある方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
位相コントラストMRIデータにおけるバックグラウンド位相誤差の正確なモデルを計算するために、静的軟部組織を代表する画像ボクセルを正確に特定することが不可欠である。本願出願人は、以下の画像フィルタの組合せを用いることにより、静的軟部組織の正確な特定を可能にする。
1.解剖(マグニチュード)画像の信号強度に基づくフィルタ。
2.ボクセルが「空気または肺」を表す可能性を反映するスコアに基づくフィルタ。
3.ボクセルが「血液または移動している組織」を表す可能性を反映するスコアに基づくフィルタ。
【0025】
取得した画像データにはある程度のノイズがつきものであるので、静止組織における高信号の持続性を生かすことは、多くの場合に有用である。本願出願人は、各時間位相における各画像をそれと同じ時間位相における信号によってフィルタリングするのではなく、全ての時間的な時点にわたって最大信号強度に基づいてフィルタを適用する。ユーザは、その後、非静止組織を抑制するために最適な信号強度閾値を選択することができる。
【0026】
信号強度フィルタは有用であるが、これらのフィルタ単独では、静的軟部組織を代表するボクセルを分離するには不十分である。さらに、画像データから、静止組織を代表するボクセルを特に選択することができる1つの計算値を決めることは困難である。代わりに、本願出願人は、概念的に直感で理解できる画像フィルタであって、(a)「空気または肺」及び(b)「血液」または「移動している組織」を除去するために用いることができ、解剖(マグニチュード)画像データ及び速度(位相)画像データに基づいて計算される画像フィルタを定義する。
【0027】
「空気または肺」フィルタを計算するために、本願出願人は、「空気または肺」を通常は表す大部分のピクセルに共通な幾つかの特徴を特定した。これらのボクセルは、通常、(a)低いマグニチュード信号強度、(b)速度場における高い局所的相対的空間的変化、及び(c)速度場における低い局所的コヒーレンスを有する。従って、本願出願人は、空間内の各位置における「空気または肺」フィルタの集計スコアを計算する関数を定義することができる。
【数4】
ここで、mはマグニチュード(解剖)画像強度を表し、vは位相(速度)ベクトル場を表し、a(m)は、ボクセルが信号強度単独に基づく「空気または肺」であることの相対的確率の推定値を表し、
【数5】
であり、これは、各位置におけるマグニチュード画像の信号強度m
0及び任意のパラメータm
min、m
max、p
minに基づいて計算される。関数b(v)は、速度場における相対的な局所的空間的変化を表し、
【数6】
であり、これは、各位置における速度
【数7】
に基づいて計算される。関数c(v)は、速度場における局所的コヒーレンスの距離(metric)を表し、
【数8】
であり、これは、隣接ボクセル
【数9】
の、局所的コヒーレンスの任意の重みw
iを掛けた加重和として計算される。ここで、v
0は、画像ボリューム内の現在の位置における速度であり、
【数7】
は、各隣接ボクセルにおける速度である。
【0028】
「血液または移動している組織」フィルタを計算するために、本願出願人は、これらの物質を表す大部分のボクセルに共通な特徴も同様に特定した。これらのボクセルは、通常、(a)速度場における高い速度、(b)時間データのフーリエ変換における特徴的な性質、及び(c)速度場における高い局所的コヒーレンスを有する。多くの場合、これらのボクセルは、解剖(マグニチュード)画像上における高信号も有するが、これは、静脈造影剤の使用に応じて変化し得る。従って、本願出願人は、空間内の各位置において「血液または移動している組織」フィルタの集計スコアを計算する関数を定義することができる。
【数10】
ここで、mは、マグニチュード(解剖)画像強度を表し、vは、位相(速度)ベクトル場を表す。関数a(v)は、速度場内の各位置における時間データのフーリエ変換に基づくスコアを表す。
【数11】
これは、各位置における時間経過に伴う速度
【数12】
及び任意のパラメータb
min,b
max,p
minに基づいて計算される。関数b(v)
【数13】
は、各位置における速度の周波数成分の加重和として計算される。最初と最後の周波数成分を除いて、「血液」を代表するボクセルは、通常、周波数領域の始めと終わりにおいて高い値を有するが、中間では低い値を有する。それゆえ、
【数14】
に対する有用な重み付け方式は、(0,1,1,1,1,−1,−1,−1,−1,−1,−1,−1,1,1,1,0)のように見えるであろう。関数c(v)は、この場合もやはり、既により詳細に説明した通り、速度場における局所的コヒーレンスの距離(metric)を表す。
【数8】
【0029】
折り返されていない静止組織の適切なサブボリュームが選択されたら、このデータサブセットを用いて、撮像ボリューム全体にわたって渦電流に関連した位相オフセットのモデルを計算することができる。本願出願人は、このデータのボリューム測定の3次元性を十分に活用するために使用可能なモデルのファミリーを具体的に定義する。すなわち、
【数15】
である。ここで、n、m、lは非負整数であり、
【数16】
は、互いに独立した多項式関数
【数17】
【数18】
【数19】
である。
【0030】
このファミリーの最も単純な使用可能モデルは3次元の要素毎の線形モデルであり、本願出願人は通常、1.5Tスキャナから得られるボリューム測定位相コントラストMRIデータにこのモデルを適用する。
【数20】
【0031】
この渦電流モデルファミリーには、次式で表されるサブファミリーが含まれる。
【数21】
これらは、交差項を除外することによって導き出すことができ、それにより、画像軸と一致しない渦電流関連位相誤差のモーメントを十分に特徴付けないモデルが与えられる。前述の式(2)との類似性によって、この単純化されたが不十分と思われるモデルは、同等に
【数22】
の如く表される。
【0032】
ここで提唱されている3次元モデルのパラメータの推定は、撮像ボリュームの全域で静止組織から得られたデータを用いて、最小二乗回帰により行うことができる。しかし、静的ボクセルの特定は不完全であり、1つの時間位相において別の時間位相よりも問題になる場合がある。従って、本願出願人は、全ての時点に対して1つの最適な3次元モデルを計算することを選択する。
【0033】
全時点にわたって平均的なモデルを作成するための効率的な方法は幾つかある。第1の方法は、各時点において3次元モデルのパラメータを個々に計算し、次に、各係数の平均を計算することにより、最終的なモデルに達することである。全時点にわたる係数の分散は、不確実性の有用な測定基準であり得る。第2の方法は、ボリューム内の各静的ボクセルについて全時点にわたって平均位相を適合させることによって3次元モデルのパラメータを計算することである。この方法は、位相測定の異常値を平均する傾向があるであろうが、そうでなければ最小二乗回帰を不当に推進する恐れがある。この方法は、第1の方法よりも僅かに正確である可能性が高い。しかし、この方法を用いてこのモデルの係数の不確実性の度合いの評価を得ることは、より困難である。第3の方法は、全時点にわたって静的ボクセルデータを用いて最小二乗回帰を行うことにより、1つのモデルに達することである。これは、最も多くのメモリを必要とする方法であり、これら3つの選択肢のうちで潜在的に精度が最も低い。
【0034】
本願出願人が本明細書において提供するモデル及び方法は、個々の撮像面の代わりに撮像ボリュームを用いて3次元位相オフセットモデルのパラメータを定義することによって、従来の方法と容易に区別することができる。この新しい方法は、幾つかの利点を有する。3次元モデルは、スライス方向における空間的変化を明確に補正するので、全スライスにわたって位相オフセットの変化を予測可能な方法で補正することができる。従って、この方法は、静止組織を分類する際の誤差に対する感受性が低い。この点をさらに検証するために、各画像スライスに様々な量の静止組織が存在し得ることを考慮することは価値がある。例えば、胸部中間部においては、腹部や胸部上部よりもかなり少ない画像ボクセルが静止組織を表すことになる。ボリューム測定手法を用いることにより、腹部及び胸部上部から得られたデータを用いて胸部中間部における位相誤差に関する情報を得ることができる。
【0035】
本願出願人が適用したモデリング手法はまた、ほぼ利用されなくなった位相誤差の別の特性をうまく利用する。渦電流が各時間位相に等しく影響を及ぼすはずであることを認識することにより、本願出願人は、モデルの精度をさらに向上させるために各時間位相から得られたデータを統合するモデリング手法を選択する。この重要な仮定は、過去の方法において説明されてこなかった。
【0037】
高次元ボリューム測定位相コントラストMRIの解剖データ及びベクトル場データの時間効率の良い判読を促すために、得られた取得情報を組み合わせ、それを、判読する医師がすぐに理解できるように表示することが不可欠である。そのような大量の情報が取得され、スライスが薄すぎる場合には読み取る者(リーダー)にとって医用画像を判読することが困難であることもあるので、いくつかの既存のソフトウェアパッケージによって実現されてきたような、画像ボリューム内で任意の厚さのスラブにわたって複数の種類の平均化(ビーム和(ray sum)、最大強度投影法、最小強度投影法、表面レンダリング)を行う機構を提供することが重要である。これは通常、医用画像界において「ボリュームレンダリング」と呼ばれている。
【0038】
ボリューム測定位相コントラストMRIデータの最適利用のために、解剖学的な詳細情報を完全には覆い隠さない方法でベクトル場データをこれらのレンダリングされた解剖画像に重ね合わせることも必要である。重ね合わせの望ましい程度は、検査やユーザによって大きく異なり得る。従って、本願出願人は、本明細書において、重ね合わせられたベクトル場データの不透明度の動的制御を可能にするユーザインタフェース機構を提供する。本願出願人による実施形態では、これを、可変幅及び開始位置を有しかつユーザによる制御が可能なスライドバーにより行うことができる。スライドバーの開始位置は最小不透明度o
minを定め、スライドバーの終了位置は最大不透明度o
maxを定め、0から1の間の数をとる。
【0039】
医用画像から得られるデータに色を割り当てるための一般的な方策は、伝達関数を適用することである。そのような伝達関数のパラメータは、可変幅及び開始位置を有するスライドバーを用いることにより制御することができるので、色c
iをその速度
【数23】
に基づいて各ボクセルに割り当てることができる。
【数24】
【0040】
速度データがスライドバーの開始位置v
minの下方に位置するとき、領域の最小値における色が割り当てられる。速度データがスライドバーの終了位置v
maxの上方に位置するとき、領域の最大値における色が割り当てられる。中間の値は、任意のカラースケールに沿って補間される。
【0041】
ベクトル場データの全てが等しく情報を提供するわけではないことを認識することが重要である。実際に、ベクトル場データの表示が過剰であると、見る者の気を散らせたり、撮像ボリューム内の医学的に重要な特徴部を覆い隠したりしかねない。従って、本願出願人は、本明細書において、データのマスキング及び半透明性を用いて高品質速度データの被視認性を上げるための特定のメカニズムを提供するものであり、そのパラメータは、ユーザによる制御が可能である。ユーザにより制御されるこれらの機能は、高品質で診断上重要なベクトル場データを強調する一方で、低品質ベクトル場データを抑制することができる。現時点で本願出願人が実装する2つの例示的なマスクは、
・信号の大きさのみに基づくマスク,m
i
・信号の大きさと速度の積に基づくマスク,
【数25】
である。
【0042】
これらのマスクの各々について、スライドバーは、可変幅及び開始位置を有し、ユーザによる制御が可能である。ソース画像値がスライドバーの開始位置の下方に位置するときには、速度データは十分に半透明であり、ディスプレイ上では見えない。ソース画像値がスライドバーの終了位置の上方に位置するときには、速度データは最大不透明度に設定される。ソース画像値が中間に位置するときには、速度データは部分的に透明であり、不透明度レベルは最小不透明度と最大不透明度(o
min,o
max)間で線形補間された。
【0043】
速度場をデータ面に重ね合わせることは極めて簡単であるが、全ボリュームにわたってこの融合を最良に行う方法は、直感で理解できるものではない。複数平面の再構成可視化中に解剖データ上の速度場の不透明度を調整するスライドバー制御との整合性を保つために、本願出願人は、ボリュームレンダリングされた解剖画像に対するボリュームレンダリングされたベクトル場の不透明度オーバーレイを制御するために用いることができるように、各ボリュームレンダリング投影に見られるピーク信号の大きさの実行タブ(running tab)を提供する。
【数26】
【数27】
【0044】
本願出願人は、さらに、このボリュームレンダリング・ベクトル場融合問題に対処すると同時にベクトル場における病理学的特徴を強調する具体的な方法を考案した。多くの病的状態が高速血流を示すことを認識することが重要である。従って、本願出願人は、この高速データの被視認性を上げるための速度重み付けの使用方法を提供する。解剖データのためのボリュームレンダリングパイプラインにおいては通常は複数の繰り返しが行われるので、本願出願人は、高速データの不透明度に大きく重み付けする同様の一連の繰り返しを提供し、α
iを任意の所与の位置における局所的速度不透明度と定義する。
【数28】
ここで、wは、重み付け係数(通常は4以上の値)を表し、r
iは、領域[0,1]に合わせて調整された速度を表し、
【数29】
によって与えられる。
【0045】
ボリュームレンダリングの各繰り返しステップにおいて、局所的速度不透明度α
iは、要約した色ベクトル
【数30】
を決定するのに役立ち、該ベクトルは、
【数31】
として計算される。ここで、要約した速度不透明度
【数32】
は、
【数33】
によって繰り返し更新される。
【0046】
ボリューム測定位相コントラストMRIデータの高次元性のおかげで、本願出願人は、このデータの判読の効率を最適化するために立体的3D可視化技術を利用することが有用であると考える。この可視化方法を提供することにより、解剖ノイズ及び速度ノイズの被視認性を被表示ボリューム全体に分散させ、ノイズがデータ中の重要な診断の詳細を分かりにくくすることを防止することができる。この技術をレンダリングパイプラインに取り入れると同時に診断ソフトウェアのインタフェースに対する影響を最小限に抑えるのに最適な方法は、直ちにはっきりと理解されるわけではない。従って、本願出願人は、本明細書において、ユーザによる介入を最小限に抑えて立体的視覚化を可能にする特定のパイプラインを提供する。
1.ユーザが、1回のボタンクリックにより立体的視覚化を有効/無効にする。
2.ユーザが、瞳孔間隔(IOD)制御を操作することにより、立体的視覚化の振幅を調整する。
3.コンピュータが、IODパラメータに基づいて各眼に対する個別の視野を作成する。
【0047】
立体的視覚化が可能になったとき、固定視野距離d及びIODパラメータiodに基づいて各眼からの個別の視野の向きを直接計算することができる。これら2つのパラメータから角度の付いた投影を求める方法は複数あるが、本願出願人は、1つの方法として次の方法を提供する。
1.各眼に対する視野角
【数34】
を計算する。右眼についてはθ
r=+θ
e、左眼についてはθ
l=−θ
eである。
2.表示面の中心
【数35】
から眼の位置
【数36】
を計算する。
【数37】
3.レンダリングされた画像内の各位置に関して、眼の位置と画像の位置との差に基づいて眼投影ベクトル(eye projection vector)を計算する。
4.その後、各眼投影ベクトルに沿って、既に説明したように固定厚さのスラブのボリュームレンダリングを行うことができる。
【0049】
本願出願人は、心臓及び血管の定量的評価に必要とされる最も重要な診断タスクの1つが、ベクトル場を測定するために用いることができる特定の撮像面の正確な配置であることを見つけ出した。適切な可視化ツールがない場合にはこれらの撮像面の配置は極めて困難であるので、このタスクの実行には、上記した可視化手法が不可欠である。これらの撮像面を正確に配置することのみならず、それを最小限のユーザ労力または対話式処理で行うことが重要である。
【0050】
上記したベクトル場融合可視化手法とともに、本願出願人は、最適撮像面の初期配置及び向きについての、1回のボタンクリックによる対話式の方法を提供する。1回のボタンクリックイベント時に、ディスプレイ上のポインタの位置は撮像面の中央を指定する。次に、当該位置またはその近傍におけるベクトル場の値を用いて、撮像面の向き(法線ベクトル)を指定することができる。換言すれば、1回のクリックイベントによって画定される撮像面は、
【数38】
を満たす全ての点
【数39】
として描写することができる。ここで、
【数40】
は前記画像におけるポインタの位置であり、
【数41】
は当該位置におけるベクトル場の値である。この最初の位置及び向きが定まったら、撮像面の再位置合わせまたは再方向合わせを、他の撮像面上に現れるマーカ及び相互参照線を用いて行うことができる。
【0051】
心臓及び血管の総合評価に必要な別の重要なタスクは、動的(移動している)撮像面の配置である。ユーザにとってデータの複数の時点にわたってそのような撮像面の位置及び向きを指定する最良の方法が何であるかは、直ちにはっきりと理解されるわけではない。よって、本願出願人は、本明細書において、動的撮像面を指定するのに必要な労力を最小限に抑える手順を提供する。この手順により、ユーザは、動的撮像面を最大限指定するための一連のステップを行うことができる。
1.ユーザが、特定の位置及び向きを有する最初の静的撮像面を配置する。
2.ユーザが、データセット内の別の時点へ移動する。
3.ユーザが、この新しい時点で撮像面の再位置合わせ及び再方向合わせを行う。
4.コンピュータが、ユーザ指定の撮像面間で線形補間された法線ベクトル及び位置を有する中間の時点に対して、中間の撮像面を自動的に作成する。
5.コンピュータが、動的に指定された撮像面にデータを自動的に表示する。
6.ステップ2〜5を繰り返す。
【0052】
可視化による心内構造物及び血管のセグメンテーション
【0053】
ユーザが静的または動的撮像面を指定したら、任意の所与の構造物または測定対象血管の境界を画定すること、すなわち「セグメンテーション」が必要である。これは通常、取得したデータの全ての時点に対して測定対象構造物の境界を画定するために膨大なユーザ入力を必要とする。この多くの時間を必要とすることになりかねない労力を最小限に抑えるために、一例において、本願出願人は、或る構造物の境界が具体的に画定される中間の時点で、自動補間を用いる。任意の数の閉多角形補間方法を用いることができる。これにより、所与の構造物の境界を最大限に画定するための手順を簡略化することができる。
1.コンピュータが、ユーザによって前もって指定された撮像面においてデータの表示を作成する。
2.ユーザが、測定対象構造物(すなわち、大動脈、肺動脈)の周りに境界を引く。
3.ユーザが、データセット内の別の時点へ移動する。
4.コンピュータが、ユーザによって前もって指定された撮像面において境界を前記画像に重ね合わせたデータの表示を作成する。
5.ユーザが、測定対象構造物の周りの境界を引くかまたは更新する。
6.コンピュータが、中間の時点についての補間された境界を自動的に作成する。
7.必要に応じて、ステップ3〜6を繰り返す。
【0054】
ボリューム測定位相コントラストMRI取得時に取得した解剖データ及びベクトル場データはともに、血管及び心内構造物の適切な境界に関する詳細情報を与えることができる。本願出願人は、これら両データが互いに独立して情報を提供するが、速度場融合レンダリングがこれらの解剖構造物のセグメンテーション精度の向上にも役立ち得ることを認識した。このような理由で、本願出願人は、上記した色及びベクトルの融合のレンダリング方法を用いることにより、セグメンテーションの精度をさらに向上させる。このことは、これらの融合画像上で直接ユーザがセグメンテーションを行えるようにすることによって可能にされる。
【0055】
融合画像は、セグメンテーションに非常に役立つが、色伝達関数が動きの方向性を包含していない場合には特に、元となる画像データ内でアーチファクトを隠すことができる。このことは、ベクトル場データに位相エイリアシングが存在するときには特に問題である。アーチファクトの存在は、血流の測定精度にマイナスの影響を及ぼしかねない。位相(速度)エイリアシングの存在を強調するために、本願出願人は、最近傍(ニアレスト・ネイバー)レンダリングされた複数の画像を同時に表示する。これにより、ユーザはアーチファクトの存在を容易に検出し、データの別の平面を選択することにより、定量化を行うことができる。
【0056】
本願出願人は、色及び速度の融合のレンダリング及び隣接(side-by-side)最近傍補間が、判読する医師がエイリアシングを迅速に特定するのに役立ち得ることを発見したが、これらの別々の画像を見る過程は、ボリューム測定位相コントラストイメージングデータの判読及びセグメンテーションの効率を低下させる可能性が高い。従って、本願出願人は、特定の色伝達関数により分かりにくくされてしまう場合がある方向情報を封じ込める(encapsulating)さらなる別の方法を提供する。ここまで説明したレンダリングされた画像の上に矢印を重ね合わせることによって、この方向情報を基本的なデータセットについてのユーザの理解に迅速かつより効率的に組み入れることができる。本願出願人は、ソフトウェアインタフェースの単純さを維持するために、重ね合わせられる矢印に関して以下の一連の要件を与える。
1.速度ベクトルの長さに比例する矢印の長さ及び/または大きさ。
2.色オーバーレイのマスキングを決定する制御と類似または同一の制御を用いて決定される矢印のマスキング。
3.色オーバーレイの不透明度を決定する制御と類似または同一の制御を用いて決定される矢印の不透明度。
【0057】
ユーザにとって望ましい位置及び撮像面においてセグメンテーションが行われたら、コンピュータは、ベクトル場から得られる任意の数の値を容易に計算することができる。それには、ボリューム測定の血流のみならず、渦度、せん断応力、圧力及び乱流の定量化も含まれ、これらは、ナビエ・ストークス方程式を用いて速度ベクトル場から計算することができる。
【0058】
ランドマークベースの従来の心臓平面の可視化
【0059】
ボリューム測定位相コントラストMRIから得られたデータの判読に従事することになる医師にとって、大量のデータのフリーハンドでの対話式ナビゲーションは難題となる場合がある。従って、これらの判読を行う医師によりよく知られている従来の撮像断面画像を獲得するための追加の直感で理解できるメカニズムを提供することが重要である。従来の心臓MRIの取得中、これらの従来の撮像断面画像(左室二腔像及び右室二腔像、左室三腔像及び右室三腔像、四腔像、左室短軸像及び右室短軸像)の指定は、通常、他の平面において画像に重ね合わせられた基準線を平行移動及び回転させることによって、MRIスキャナ上で行われる。この過程は、ボリューム測定CTまたはMRIデータ内で平面を配置するためのソフトウェアにおいてミラーリングを行うことができるが、依然として多大な時間を必要とする。さらに、この手法により、変化する心臓の向きをトラッキングすることができる動的断面画像を示すことは不可能である。従って、本願出願人は、時間分解したランドマークのユーザ指定によって可能になる別の手法を提供する。
1.ユーザが、画像上の或る位置にラベルを付ける(すなわち、左室心尖部、右室心尖部、僧帽弁、三尖弁、大動脈弁、肺動脈弁、前乳頭筋、後乳頭筋)
2.コンピュータが、当該位置を表す画像データの上に重ね合わせられたマーカ(すなわち、Y)を表示する。このマーカは、ユーザが別の位置に移動させることができる。
3.ユーザが、データセット内の別の時点へ移動する。
4.ユーザが、マーカの位置を別の位置に変更する。
5.コンピュータが、表示を更新することにより新しい位置を反映させる。
6.コンピュータが、マーカを明示した全ての中間の時点について、マーカの位置を自動的に補間する。
7.必要に応じて、ステップ3〜6を繰り返す。
【0060】
十分な一連のランドマークが明示されたら、これらの位置に基づいて特定の心臓像が自動的に計算され得る。例えば、左室三腔像は、3つの点、すなわち、左室心尖部、僧帽弁の中心及び大動脈弁の中心によって画定することができる。これらの位置の各々は時間とともに変化するので、心臓のMRI、CTまたはECHOに通常用いられる従来の静的平面の向きは、心臓周期中に心臓の軸が著しく変化する場合には特に、準最適であり得る。この問題を克服するために、本願出願人は、時間分解したランドマークを用いて心臓像の動的平面を指定する。これらの心臓像の動的平面は、各時点における各ランドマークの位置に従って平行移動及び回転する。例えば、左室三腔像の場合、各時点における動的平面は、
【数42】
を満たす全ての点
【数38】
として描写することができる。ここで、
【数43】
は、大動脈弁の位置であり、
【数44】
は、左室心尖部の位置であり、
【数45】
は、僧帽弁の位置である。
【0061】
本願出願人は、従来の撮像面上にいくつかのランドマークの位置を正確に配置することが場合によっては困難であることを認識している。しかし、適切な心臓像が得られたら、これらのランドマークの手動調整をユーザは遙かに容易に行うことができる。一例では、本願出願人は、以下の手順を用いて心臓像を微調整する。
1.コンピュータが、上記のランドマークに基づいて最初の心臓像を表示する。
2.コンピュータが、これらの心臓像に重ね合わせられたマーカを表示する。
3.ユーザが、これらの心臓像のうちの1つにおいてマーカの位置を変更する。
4.コンピュータが、変更したマーカの位置に依存する全ての心臓像を自動的に更新する。
5.コンピュータが、マーカを明示した全ての中間の時点について、マーカの位置を自動的に補間する。
6.コンピュータが、影響を及ぼした時点について、変更したマーカの位置に依存する全ての心臓像を自動的に更新する。
8.ユーザが、データセット内の別の時点へ移動する。
9.必要に応じて、ステップ1〜8を繰り返す。
【0062】
心臓MRIから得られた心室ボリュームの定量化には、心室壁と内腔の間の境界を一貫して画定することが必要である。これは、心室壁と内腔との間のコントラスト差の質のみならず、どの1つの画像表示面にも容易に現れないであろう解剖構造物の3次元レジストレーションに依存する不正確な技術である。その上、あらゆる時点またはスライスの別々のセグメンテーションが必要である場合には、ユーザが境界を特定することは多くの時間を必要とする行為でもある。代わりに、一例において、本願出願人は、より一貫した信頼できる心室の境界のセグメンテーションを可能にする一連の手順を用いる。
1.コンピュータが、短軸及び長軸(二腔、三腔、四腔)像の各々を、これらの心臓像に重ね合わせられたランドマークマーカとともに表示する。
2.ユーザが、測定対象構造物(すなわち心室壁)の周りに境界を引く。
3.ユーザが、データセットにおける別の時点またはスライスを選択する。
4.コンピュータが、短軸及び長軸(二腔、三腔、四腔)像の各々及びこれらの心臓像に重ね合わせられたランドマークマーカ及び特定された境界の表示を更新する。
5.ユーザが、測定対象構造物(すなわち心室壁)の周りの境界を引くかまたは更新する。
6.コンピュータが、中間の時点及び/またはスライスについての補間された境界を自動的に作成する。
7.必要に応じて、ステップ3〜6を繰り返す。
【0063】
2以上のスライスにおいて、測定対象構造物の境界のセグメンテーションが指定されたら、当該構造物のボリュームの推定値を、各境界内に含まれる面積A
jと、セグメンテーション(通常は短軸)を行うために用いたスライス間の間隔Δ
jとの関係に基づいて、容易に計算することができる。例えば、最も簡単な場合には、リーマン和を計算することによってボリュームVの推定値を求めることができる。
【数46】
【0064】
本発明の態様は、スタンドアロン型パッケージとしてのコンピュータシステムあるいは画像装置または画像システムと一体化したコンピュータシステムによって実行可能な、コンピュータによって実現されるソフトウェア、モジュールまたはパイプラインであり得る。