特許第6851364号(P6851364)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6851364ポックスウイルスにおける発現を増強するためのプロモーター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851364
(24)【登録日】2021年3月11日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】ポックスウイルスにおける発現を増強するためのプロモーター
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/863 20060101AFI20210322BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20210322BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   C12N15/863 ZZNA
   C12N15/12
   C07K14/47
【請求項の数】14
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2018-500943(P2018-500943)
(86)(22)【出願日】2016年7月28日
(65)【公表番号】特表2018-521651(P2018-521651A)
(43)【公表日】2018年8月9日
(86)【国際出願番号】IB2016001183
(87)【国際公開番号】WO2017021776
(87)【国際公開日】20170209
【審査請求日】2019年6月10日
(31)【優先権主張番号】62/199,681
(32)【優先日】2015年7月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509296443
【氏名又は名称】バヴァリアン・ノルディック・アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】デルケイレ・アラン
(72)【発明者】
【氏名】リ・ゼンジ
(72)【発明者】
【氏名】ラウントリー・リャン
【審査官】 松浦 安紀子
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第101775410(CN,A)
【文献】 米国特許第05670367(US,A)
【文献】 中国特許出願公開第102321637(CN,A)
【文献】 特表2007−508327(JP,A)
【文献】 特表2010−519904(JP,A)
【文献】 特表2012−524075(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/043535(WO,A1)
【文献】 Clin Cancer Res., 2012, Vol.18, pp.3868-3879
【文献】 Oncotarget, 2014, Vol.6, pp.4853-4862
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/WPIX(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベクターにおけるコード配列の発現のための発現カセットであって、
a)プロモーターを含み、かつ以下:
(i)配列識別番号:9に記載の核酸配列または配列識別番号:9に対して少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列、
(ii)配列識別番号:9の部分配列であって、配列識別番号:4、配列識別番号:5、配列識別番号:6、配列識別番号:7または配列識別番号:8である前記部分配列
(iii)10個以下のヌクレオチドの付加、挿入または欠失によって配列識別番号:9に記載の配列と異なっている配列
(iv)10個以下のヌクレオチドの付加、挿入または欠失によって配列識別番号:6に記載の配列と異なっている配列、および
(v)配列識別番号:6に対して少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列、
から選択される核酸配列であって前記プロモーターは、ポックスウイルスプロモーターとして活性であり、及び/またはポックスウイルス感染細胞において活性である核酸配列、ならびに
b)前記プロモーターに作動可能に連結される、ブラキウリタンパク質をコードする異種コード配列、
を含む、発現カセット。
【請求項2】
前記ブラキウリタンパク質が、L254V突然変異を含む、請求項1に記載の発現カセット。
【請求項3】
配列識別番号:11及び配列識別番号:13からなる群から選択される核酸配列を含んでなる、請求項1に記載の発現カセット。
【請求項4】
配列識別番号:18または配列識別番号:19に対して少なくとも90%の配列同一性を有するブラキウリ融合タンパク質をコードする核酸を含む、請求項1に記載の発現カセット。
【請求項5】
配列識別番号:19または配列識別番号:47に記載の配列を有するブラキウリ融合タンパク質をコードする核酸を含む、請求項1に記載の発現カセット。
【請求項6】
配列識別番号:11、13、18〜19、22〜23、26〜27、30〜31、34〜35、38〜39、42〜43、46〜47、50〜51、54〜55、58〜59、62〜63、66〜67、70及び71からなる群から選択される配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するブラキウリ融合タンパク質をコードする核酸配列を含む、請求項1に記載の発現カセット。
【請求項7】
配列識別番号:72または配列識別番号:73に対して少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列を含む、請求項1に記載の発現カセット。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の発現カセットを含む、ポックスウイルスベクター。
【請求項9】
前記ポックスウイルスが痘ウイルスである、請求項8に記載のポックスウイルスベクター。
【請求項10】
前記ポックスウイルスベクターがMVA−BNである、請求項8に記載のポックスウイルスベクター。
【請求項11】
ベクターにおけるコード配列の発現のための方法であって、
a)プロモーターを含み、かつ以下:
(i)配列識別番号:9に記載の核酸配列または配列識別番号:9に対して少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列、
(ii)配列識別番号:9の部分配列であって、配列識別番号:4、配列識別番号:5、配列識別番号:6、配列識別番号:7または配列識別番号:8である前記部分配列
(iii)10個以下のヌクレオチドの付加、挿入または欠失によって配列識別番号:9に記載の配列と異なっている配列
(iv)10個以下のヌクレオチドの付加、挿入または欠失によって配列識別番号:6に記載の配列と異なっている配列、および
(v)配列識別番号:6に対して少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列、
から選択される核酸配列を含む発現カセットであって、前記プロモーターがポックスウイルスプロモーターとして活性であり、及び/またはポックスウイルス感染細胞において活性である発現カセットを準備すること;および
b)前記プロモーターを、ブラキウリタンパク質をコードする異種コード配列に作動可能に連結すること;および
c)前記プロモーターおよび前記コード配列をベクターに組み込むこと;
を含む方法。
【請求項12】
前記ベクターが、オルソポックスウイルス及びアビポックスウイルスから選択されるウイルスベクターである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ベクターが、MVA−BNであるオルソポックスウイルスである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アビポックスウイルスが鶏痘ウイルスである、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポックスウイルス、特に、鶏痘ウイルス及びカナリーポックスウイルス(canarypoxvirus)などのアビポックスウイルスにおけるタンパク質発現の1つまたはそれ以上の新規プロモーターに関する。本発明は、さらに、上記プロモーターを含むポリヌクレオチド、特に、上記プロモーター及び発現される核酸を含むポリヌクレオチド;上記を含むベクター;上記構成を含む宿主細胞;及び上記のいずれかを含む組成物に関する。さらに本発明は、1つまたはそれ以上のプロモーターに作動可能に連結される1つまたはそれ以上の新規ポリペプチドに関する。より特には、1つまたはそれ以上の新規ポリペプチドは、ブラキウリ(Brachury)タンパク質と関連する。
【背景技術】
【0002】
組換型ポックスウイルスは、感染性生物、より最近では、腫瘍に対するワクチンとして使用されている。Mastrangelo et al.J Clin Invest.2000;105(8):1031−1034。これらのポックスウイルス群の2つ、アビポックスウイルス及びオルソポックスウイルスは、腫瘍闘病において効果があることが示され、かつ可能性のあるがん治療に関連する。同上。
【0003】
1つの代表的なアビポックスウイルスの種、鶏痘は、鶏痘ウイルスは哺乳動物の細胞に入り、そしてタンパク質を発現するが、自己複製が不成功となるため、ヒト投与のための安全な媒体であることが示された。Skinner et al.Expert Rev Vaccines.2005 Feb;4(1):63−76。さらに、発現のための媒体としての鶏痘ウイルスの使用は、がん、マラリア、結核、AIDS及びエボラに対するワクチンの多数の臨床試験において評価されている。同上。
【0004】
鶏痘などの組換型ポックスウイルスは、p97、HER−2/neu、p53及びETAなどのいくつかの感染性疾患及び腫瘍随伴遺伝子を含めて、広範囲の挿入遺伝子を発現するために使用されている(Paoletti,et al.,1993)。最近調査されている1つの代表的な腫瘍抗原は、ブラキウリ(Brachyury)(「T」としても知られる)である。
【0005】
ブラキウリは、マウスにおいて、劣性致死でもある優性短尾突然変異体として識別され;同種接合T/T胎児は、後部中胚葉形成不全のために妊娠中期に死亡する(Chesley,J.Exp.Zool.,70:429−459,1935)。マウスブラキウリ遺伝子は、ヒトなどの他の種における相同体と同様にクローン化された(Herrmann et al.,Nature(Lond.),343:617−622,1990)。マウスブラキウリのヒト相同体の発現は、妊娠14〜15週におけるヒト流産胎児の脊索残遺物、髄核において、RT−PCRによって検出された(Edwards et al.,Genome Res.,6:226−233,1996)。
【0006】
ブラキウリは、一般に、中胚葉細胞分化の認識のために価値のある標識であることが証明されている(Herrmann et al.,Trends Genet.,10:280−286,1994)。例えば、胎児自身における発現は別として、ブラキウリは、生体外において、中胚葉細胞系列に沿って分化する特定のマウスEC及びES細胞系の分化の間に活性化されると報告されている(例えば、Bain et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,223:691−694,1996を参照のこと)。ヒトにおいては、ブラキウリは、奇形がん腫(Gokhele et al.,Cell Growth and Differentiation 11:157−62,2000)、脊索腫(Vujovic et al.,J.Pathol.2:157−65,2006)及び血管芽腫(Glasker et al.,Cancer Res.66:4167−4172,2006)において発現されることが示されている。
【0007】
より最近では、ブラキウリを発現するポックスウイルスが、腫瘍に対する活性免疫療法薬として有効である可能性があることが記載されている(WO 2014/043535を参照のこと)。
【0008】
活性免疫療法薬及びワクチンを含め、感染症及びがん治療を改善するための、明らかに実質的に未だ対処されていない医学的要求が存在する。上記に基づき、当該技術において、活性免疫療法薬において使用される、ブラキウリなどの抗原の発現を改善するための要求が存在する。本発明は、この要求を満たすものである。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、ポックスウイルスの一部として組み込まれたコード配列及び抗原の発現の増強を随伴する、1つまたはそれ以上のプロモーター、核酸、発現カセット、組換型ペプチド及び組換型ポックスウイルスを提供する。
【0010】
本発明の一態様において、
a.配列識別番号:1〜10及び77のいずれか1つに対して少なくとも70%の同一性を有する核酸配列を含むプロモーターと、
b.プロモーターに作動可能に連結されるコード配列と
を含み、コード配列の発現がプロモーターによって制御される、発現カセットが提供される。
【0011】
本発明のさらなる態様において、発現カセットは、その中のコード配列の増強された発現のために、ウイルスまたはプラスミドなどのベクターの一部として組み込まれることが可能である。好ましくは、発現カセットは、限定されないが、オルソポックスウイルス及びアビポックスウイルスなどのポックスウイルスの一部である。より好ましくはは、発現カセットは、鶏痘ウイルスなどのアビポックスウイルスである。なおさらなる態様において、発現カセットは、ポックスウイルスのゲノムにおいて自然に存在する発現カセットではない。
【0012】
さらなる態様において、a)配列識別番号:1〜10からなる群から選択される核酸配列、b)配列識別番号:1〜10及び77のいずれか1つの部分配列、またはc)配列識別番号:1〜10及び77のいずれか1つの誘導配列を含むか、またはそれからなる、1つまたはそれ以上のプロモーターであって、上記誘導が、1つまたはそれ以上の置換、欠失及び/または挿入を有し、かつ上記誘導配列が、ポックスウイルスプロモーターとして活性であり、及び/またはポックスウイルス感染細胞において活性である、プロモーターが提供される。
【0013】
なおさらなる態様において、本発明は、配列識別番号:18〜19、22〜23、26〜27、30〜31、34〜35、38〜39、42〜43、46〜47、50〜51、54〜55、58〜59、62〜63、66〜67、70及び71からなる群から選択される、1つまたはそれ以上の新規ブラキウリタンパク質をコード化する1つまたはそれ以上の核酸配列を含む。なおさらなる態様において、本発明は、配列識別番号:16〜17、20〜21、24〜25、28〜29、32〜33、36〜37、40〜41、44〜45、48〜49、52〜53、56〜57、60〜61、64〜65、68及び69からなる群から選択される、1つまたはそれ以上の新規核酸配列を含む。
【0014】
なおさらなる態様において、本発明は、
a.配列識別番号:1〜10及び77のいずれか1つに対して少なくとも70%の同一性を有する核酸配列を含むプロモーターと、
b.プロモーターに作動可能に連結されるコード配列と
を含み、コード配列が、i)配列識別番号:11、13、18〜19、22〜23、26〜27、30〜31、34〜35、38〜39、42〜43、46〜47、50〜51、54〜55、58〜59、62〜63、66〜67、70及び71からなる群から選択される、ブラキウリタンパク質をコード化する核酸、またはii)配列識別番号:12、14〜17、20〜21、24〜25、28〜29、32〜33、36〜37、40〜41、44〜45、48〜49、52〜53、56〜57、60〜61、64〜65、68及び69からなる群から選択される核酸のいずれか1つに対して少なくとも70%の同一性を有する核酸、のいずれかを含み、コード配列の発現がプロモーターによって制御される、発現カセットを含む。
【0015】
本発明のさらなる目的及び利点は、以下の記載において一部、明らかにされるであろう。そして一部は、記載から明白であるか、または本発明の実施によって習得され得る。本発明の目的及び利点は、特に添付の請求項で指摘された要素及び組合せを使用することによって理解され、かつ達成されるであろう。
【0016】
上記の一般的な説明及び以下の詳細な説明の両方は、模範、かつ説明のみであって、そして請求として本発明を限定するものではないことは理解される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】非組換型ウイルスFPV−WT、または組換型ウイルスFPV−mBN343A、FPV−mBN344AもしくはFPV−mBN345Aによって感染されたヒト樹状細胞(DC)中のブラキウリタンパク質の発現を示す。実施例1に詳述されるように、ウサギモノクロナル抗ブラキウリ抗体を使用して、ウエスタンブロット分析を実行した。
図2】非組換型ウイルスMVA−WTもしくはFPV−WT、または組換型ウイルスMVA−ブラキウリ−TRICOM、FPV−mBN249B、FPV−mBN281Aクローン32、FPV−mBN281Aクローン35、FPV−mBN343A、FPV−mBN344A、FPV−mBN345A、FPV−mBN354AまたはFPV−mBN355Aによって感染されたヒト樹状細胞(DC)中のブラキウリタンパク質の発現を示す。実施例2に詳述されるように、ウサギモノクロナル抗ブラキウリ抗体を使用して、ウエスタンブロット分析を実行した。
図3】実施例2に詳述されるように、非組換型ウイルスMVA−WTもしくはFPV−WT、または組換型ウイルスMVA−ブラキウリ−TRICOM、FPV−mBN249B、FPV−mBN281Aクローン32、FPV−mBN281Aクローン35、FPV−mBN343A、FPV−mBN344A、FPV−mBN345A、FPV−mBN354AまたはFPV−mBN355Aによって感染されたヒト樹状細胞(DC)のウエスタンブロット分析からのGAPDHに対するブラキウリタンパク質の相対的発現を示す。
図4】実施例3に記載されるように、それぞれのタンパク質に特異的な蛍光標識抗体を使用するフローサイトメトリーによって評価される、組換型ウイルスMVA−ブラキウリ−TRICOM、FPV−mBN249B、FPV−mBN343AまたはFPV−mBN345Aによって感染されたCMMT細胞(アカゲザル乳房腫瘍細胞系)中のブラキウリ及びTRICOMタンパク質の発現を示す。
図5】実施例3に記載されるように、フローサイトメトリーによって評価される、組換型ウイルスMVA−ブラキウリ−TRICOM、FPV−mBN249B、FPV−mBN343AまたはFPV−mBN345Aによって感染されたCMMT細胞(アカゲザル乳房腫瘍細胞系)中のブラキウリタンパク質の発現レベルの中央値を示す。
図6】実施例4に記載されるように、フローサイトメトリーによって評価される、組換型ウイルスFPV−mBN345Bによって感染されたCMMT細胞(アカゲザル乳房腫瘍細胞系)中のブラキウリ及びTRICOMタンパク質の発現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、配列識別番号:1〜10及び77に提示されるプロモーター配列が、腫瘍抗原ブラキウリの発現を増強するという驚くべき決定に基づく。図1〜6に示され、かつ本明細書中により詳細に記載されるように、本発明のプロモーターを使用する場合、ブラキウリ抗原の発現が増強される。プロモーター及びブラキウリ抗原が、組換型ポックスウイルスの一部として使用される場合、発現はさらに増強される。
【0019】
少なくとも1つの態様において、本開示の種々の実施形態は、PrS及びワクシニアウイルス40k(VV−40K)などの周知のワクシニアプロモーターを使用する、ブラキウリタンパク質の不十分な発現レベルの結果として生じた。ブラキウリ発現レベルを増強する試みにおいて、本発明者らは、種々のワクシニアプロモーター及び随伴タンパク質(例えば、VV−40k、I3など)及びFPVにおけるいずれかの可能な相同体も分析した。発明者らは、いくつかのFPV相同体配列が、以前に発見されたことを理解した。例えば、Zantinge,J Gen Virol.1996 Apr;77(Pt 4):603−14 and Gene FPV 088 at NCBI Reference Sequence:NP_039051.1,Afonso,C.L et al.,J.Virol.74(8),3815−3831(2000)を参照のこと。
【0020】
ブラキウリ発現を増強する最初の試みにおいて、NCBI参照配列:NP_039051.1における遺伝子FPV088の可能なプロモーター領域が、発明者らによってブラキウリと共に構成され、試験されたが、望ましくないプロモーター結果が得られた(例えば、mBN344Aにおける図1及び2を参照のこと)。発明者らは、遺伝子FPV088のORFからのヌクレオチドの付加によって、次のプロモーターを作成したが、同様に望ましくない結果が得られた(例えば、mBN354Aにおける図1及び2を参照のこと)。本発明者らは、遺伝子FPV088のORFからのヌクレオチドのさらなる付加によって、さらなる構成を作成した。これは、本明細書に記載され、かつ例示されるように、腫瘍抗原ブラキウリの発現を増強する。
【0021】
したがって、種々の実施形態において、本発明は、限定されないが、プラスミド、組換型ウイルスなどの発現ベクターにおけるコード配列及び/または核酸の発現を増強するための、1つまたはそれ以上の核酸配列、核酸配列を含む1つまたはそれ以上のプロモーター、核酸を含む1つまたはそれ以上の発現カセット、1つまたはそれ以上のペプチド及び/またはペプチド配列に関する。さらなる実施形態において、本発明は、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の核酸配列、プロモーター、発現カセット及び/またはペプチド及び/またはペプチド配列を含む、1つまたはそれ以上の組換型ポックスウイルスに関する。
【0022】
さらに、本発明の種々の実施形態において、ブラキウリポリペプチドをコード化する1つまたはそれ以上の核酸配列が提供される。一実施形態において、ブラキウリポリペプチドをコード化する1つまたはそれ以上の核酸は、配列識別番号:11、13、18〜19、22〜23、26〜27、30〜31、34〜35、38〜39、42〜43、46〜47、50〜51、54〜55、58〜59、62〜63、66〜67、70及び71からなる群から選択される。本発明によるブラキウリポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列は、配列識別番号:12、14〜17、20〜21、24〜25、28〜29、32〜33、36〜37、40〜41、44〜45、48〜49、52〜53、56〜57、60〜61、64〜65、68及び69からなる群から選択される。
【0023】
定義
本明細書で使用される場合、文脈上明白に他が示されない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は、複数形も含む。したがって、例えば、「エピトープ」への言及は、1つまたはそれ以上のエピトープを含み、かつ「方法」への言及は、本明細書に記載の方法に対して変更または置き換え可能である、当業者に既知の同等のステップ及び方法への言及を含む。
【0024】
他が明記される場合を除き、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、シリーズの全ての要素を示すものとして理解される。当業者は、本明細書に記載された本発明の特定の実施形態への多くの同等物を認識するか、または通常以上の実験を使用しないことを確認することができるであろう。そのような同等物は、本発明によって含まれるように意図される。
【0025】
本明細書及びそれに続く請求項全体で、文脈上が別のことを必要としない限り、「comprise(含む)」という用語、ならびに「comprises(含む)」及び「comprising(含む)」などの変形は、明記された整数またはステップ、あるいは整数またはステップの群を含むが、いずれかの他の整数またはステップ、あるいは整数またはステップの群を排除しないことを暗示するものとして理解されるであろう。本明細書で使用される場合、「comprising(含む)」は、「containing(含有する)」または「including(含む)」という用語で、あるいは時には、使用される場合、「having(有する)」という用語で代用することができる。上記用語(comprising(含む)、containing(含有する)、including(含む)、having(有する))のいずれも、あまり好ましくはないが、本発明の態様または実施形態に関して本明細書中で使用される場合はいつでも、「consisting of(からなる)」という用語で代用することができる。本明細書で使用される場合、「consisting of(からなる)」は、請求要素において明記されないいずれの要素、ステップまたは成分も排除する。本明細書で使用される場合、「consisting essentially of(から本質的になる)」は、請求の基本的かつ新規特徴に本質的に影響を与えない材料またはステップを排除しない。
【0026】
本明細書で使用される場合、複数の列挙された要素の間の結合語「及び/または」は、個々及び組合せの選択肢の両方を含むことが理解される。例えば、2つの要素が「及び/または」によって結合される場合、第1の選択肢は、第2要素を含まない第1の要素の適用性を意味する。第2の選択肢は、第1の要素を含まない第2の要素の適用性を意味する。第3の選択肢は、第1及び第2の要素の適用性を意味する。これらの選択肢のいずれか1つが、意味の範囲内に含まれると理解され、したがって、本明細書で使用される用語「及び/または」の必要条件を満たす。選択肢の2つ以上の同時の適用性も、意味の範囲内に含まれると理解され、したがって、用語「及び/または」の必要条件を満たす。
【0027】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」という用語は、例えば、促進される遺伝子のコード領域からのRNAの合成に関与するタンパク質転写因子及びポリメラーゼによって認識され、かつ結合される、特定のDNA配列要素を含有する、発現される核酸の配列の上流に位置する核酸(通常、DNA)の調節領域を意味する。プロモーターは、典型的に、問題の遺伝子に隣接しているため、プロモーターにおける位置は、特定の遺伝子に対してDNAの転写が開始する転写の開始部位に対して指定される(すなわち、上流の位置は、−1から数えられる負の数であり、例えば、−100は、100塩基対上流の位置である)。したがって、プロモーター配列は、位置−1までヌクレオチドを含み得る。しかしながら、+1の位置からのヌクレオチドは、プロモーターの一部ではなく、すなわち、この点に関して、翻訳開始コドン(ATGまたはAUG)はプロモーターの一部ではないことは留意されなければならない。したがって、配列識別番号:1〜10及び77は、本発明のプロモーターを含むポリヌクレオチドである。
【0028】
本明細書で使用される場合、コード配列、核酸、タンパク質及び/または抗原の発現レベルに関して使用される場合、「enhancing(増強する)」または「enhanced(増強した)」という用語は、PrSまたはVV−40kなどの当該技術において既知の1種またはそれ以上のプロモーターを随伴する場合及び/またはその一部としてのコード配列、核酸、タンパク質及び/または抗原の発現レベルに対しての、1種またはそれ以上のプロモーター、発現カセット、核酸、タンパク質及びベクターを随伴する場合及び/またはその一部としてのコード配列、核酸、タンパク質及び/または抗原の発現における増加を意味する。
【0029】
本明細書で使用される場合、配列識別番号:1〜10及び77に提示されるヌクレオチド配列と「本質的に同じ発現特徴」を有するヌクレオチド配列は、産生された組換型タンパク質の量によって測定された場合、配列識別番号:1〜10及び77のプロモーター活性の少なくとも70%、好ましくは、少なくとも80%、さらにより好ましくは、少なくとも90%を示すであろう。問題のプロモーター配列が、配列識別番号:1〜10及び77のいずれかと「本質的に同じ発現特徴」を有するか否かは、本出願の実施例1〜4に明らかにされた方法を使用して、当業者によって容易に決定され得る。本発明によるプロモーターは、好ましくは、ポックスウイルスプロモーター、好ましくは、アビポックスウイルスプロモーターとして活性であるか、またはポックスウイルス感染細胞、好ましくは、アビポックスウイルス感染細胞においてプロモーターとして活性である。アビポックスウイルスは、好ましくは、鷄痘ウイルスである。「痘疹ウイルスプロモーターとして活性」とは、プロモーターが、上記ウイルスによる細胞の感染後に、痘疹ウイルスと作動可能に連結する遺伝子の発現を導くことが可能であることを意味する。細胞は、好ましくは、ポックスウイルスの後期及び/または初期及び/または初期/後期発現を可能にする細胞である。「ポックスウイルス感染細胞において活性なプロモーター」は、プロモーターがポックスウイルスゲノムの一部ではなく、例えば、プラスミドまたは線形ポリヌクレオチドあるいは非ポックスウイルスゲノムの一部である状況も含む。そのような状況において、プロモーターを含む細胞がポックスウイルスゲノムを含む場合、例えば、細胞がポックスウイルスに感染している場合、本発明によるプロモーターは活性である。これらの状況下、ウィルスRNAポリメラーゼは、本発明によるプロモーターを識別し、そしてプロモーターに関連する遺伝子/コード配列の発現が活性化する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「配列識別番号:1〜10及び77に提示される核酸から誘導される」という用語は、配列識別番号:1〜10及び77のヌクレオチド配列が、明示されるヌクレオチド改質、例えば、少なくとも1つのヌクレオチド付加、欠失、置換及び/または反転をもたらすための基礎として考慮されることを意味する。「誘導」という用語は、既知の方法、例えば、エラープローンPCRによって、配列識別番号:1〜10及び77に対応する物理的配列を実際に改質することの可能性を含む。「誘導」という用語は、インシリコで配列識別番号:1〜10及び77の配列に改質を行うこと、次いで、そのようにして決定された配列を物理的核酸として合成することの可能性を追加的に含む。例えば、「誘導」という用語は、例えば、配列識別番号:1〜10及び77の出発配列を改質することにおけるハイブリッド形成安定性及びいずれかの二次核酸構造の可能性に関しての核酸配列の分析のために、いずれかの周知のコンピュータプログラムを使用することの可能性を含む。好ましくは、配列識別番号:1〜10及び77の核酸に、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1つ以下のヌクレオチドが付加されて、欠失されて、置換されて、及び/または反転された。さらに、少なくとも1つのヌクレオチドの付加、挿入または欠失は、発現される核酸の開始コドンに生じるべきではない。
【0031】
本明細書で使用される場合、「expressed(発現した)」、「express(発現する)」、「expression(発現)」などの用語は、対象となる配列の転写のみ、ならびに翻訳及び転写の両方を意味する。したがって、DNAの形態で存在する核酸の発現に関して、この発現に起因する産物は、(発現される配列の転写のみから得られる)RNAまたは(発現される配列の転写及び翻訳の両方から得られる)ポリペプチド配列であり得る。したがって、「発現」という用語は、RNAとポリペプチド産物の両方が上記発現から得られて、そして同一共有環境において一緒に残存することの可能性も含む。例えば、mRNAがポリペプチド産物へのその翻訳の後に存在し続ける場合、これは事実である。
【0032】
本明細書で使用される場合、「発現カセット」という用語は、典型的に、クローン化及び/または転換のために使用されるベクターまたは組換型ウイルスの一部として定義される。発現カセットは、典型的に、a)1つまたはそれ以上のコード配列(例えば、タンパク質及び/または抗原をコード化するオープンリーディングフレーム(ORF)、遺伝子、核酸)、ならびにb)1つまたはそれ以上のコード配列の発現を制御する配列を含む。さらに、発現カセットは、通常、真核生物においてポリアデニル化部位を含有する3’未翻訳領域を含み得る。
【0033】
「組換型」という用語は、自然界に生じないか、または自然界に見出されない配列の別のポリヌクレオチドに結合した半合成または合成由来のポリヌクレオチドまたはポリペプチドを意味する。
【0034】
本発明の一態様は、配列識別番号:1〜10及び77との少なくとも70%、好ましくは、75%、80%、85%、90%または95%の同一性を有し、かつ配列識別番号:1〜10及び77と本質的に同じ発現特徴を有す核酸を有するプロモーターを含む。
【0035】
本明細書に記載される核酸配列に関する「パーセント(%)配列相同性または同一性」は、いずれの保存的置換も配列同一性の一部として考慮せずに、必要であれば、最大パーセント配列同一性を達成するために、配列を整列し、ギャップを導入した後、参照配列(すなわち、それが誘導される核酸配列)におけるヌクレオチドと同一である候補配列におけるヌクレオチドの百分率として定義される。ヌクレオチド配列同一性または相同性のパーセントを決定する目的のための整列は、例えば、BLAST、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公に入手可能なコンピュータ・ソフトウェアを使用して、当業者の範囲内である様々な方法で達成可能である。当業者は、比較される配列の全長上での最大整列を達成するために必要ないずれのアルゴリズムも含めて、整列を測定するための適切なパラメータを決定することができる。
【0036】
例えば、核酸配列のための適切な整列は、Smith及びWaterman、(1981),Advances in Applied Mathematics 2:482−489の局所的相同性アルゴリズムによって提供される。このアルゴリズムは、Dayhoff,Atlas of Protein Sequences and Structure,M.O.Dayhoff ed.,5 suppl.3:353−358,National Biomedical Research Foundation,Washington,D.C.,USAによって開発され、かつGribskov(1986),Nucl.Acids Res.14(6):6745−6763によって標準化されたスコアリングマトリックスを使用することによって、アミノ酸配列に適用することができる。配列の同一性パーセントを決定するためのこのアルゴリズムの代表的な実施は、「BestFit」実用新案で、Genetics Computer Group(Madison,Wis.)によって提供される。この方法のデフォルトパラメータは、Wisconsin Sequence Analysis Package Program Manual,Version 8(1995)(Genetics Computer Group,Madison,Wis.から入手可能)に記載されている。本発明に関連する同一性パーセントを確立する好ましい方法は、John F.Collins及びShane S.Sturrokによって開発され、かつIntelliGenetics,Inc.(Mountain View,Calif)によって流通された、University of Edinburghによって著作権を取られたプログラムのMPSRCHパッケージを使用することである。このセットのパッケージから、スコアリングテーブル(例えば、12のギャップオープンペナルティー、1のギャップエクステンションペナルティー及び6のギャップ)に対してデフォルトパラメータを使用して、Smith−Watermanアルゴリズムを利用することができる。生じたデータから、「Match」値は「配列同一性」を反映する。配列間の同一性パーセントまたは類似性を算出するための他の適切なプログラムは、一般に、当該技術において既知であり、例えば、別の整列プログラムは、デフォルトパラメータで使用されるBLASTである。例えば、次のデフォルトパラメータを使用して、BLASTN及びBLASTPを使用可能である:遺伝コード=標準;フィルター=なし;ストランド=両方;カットオフ=60;エクスペクト=10;マトリックス=BLOSUM62;記述=50配列;ソート=ハイスコア;データベース=非冗長性、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS translations+Swiss protein+Spupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は、次のインターネットアドレスで見ることができる:http://http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/。
【0037】
プロモーター及び核酸配列
一実施形態において、本開示は、配列識別番号:1〜10及び77からなる群から選択される核酸配列を含む。
【0038】
別の実施形態において、本開示は、配列識別番号:1〜10及び77からなる群から選択される核酸との少なくとも70%の同一性を有し、かつ配列識別番号:1〜10及び77からなる群から選択される核酸配列と本質的に同じ発現特徴を有する核酸配列を含む。さらなる実施形態において、配列識別番号:1〜10及び77からなる群から選択される核酸との少なくとも75%、80%、85%、90%または95%の同一性を有し、かつ配列識別番号:1〜10及び77からなる群から選択される核酸配列と本質的に同じ発現特徴を有する核酸配列が提供される。
【0039】
なおさらなる実施形態において、配列識別番号:1〜10及び77のヌクレオチド配列と比較して、少なくとも1つのヌクレオチド付加、欠失、置換及び/または反転を含む、配列識別番号:1〜10及び77に提示される核酸から誘導されるヌクレオチド配列を有し、かつ配列識別番号:1〜10及び77の核酸と本質的に同じ発現特徴を有する核酸が提供される。
【0040】
なおさらなる実施形態において、配列識別番号:1〜10及び77からなる群から選択される核酸配列に対してハイブリッド化が可能であるヌクレオチド配列を有し、かつ配列識別番号:1〜10及び77からなる群から選択される核酸配列と本質的に同じ発現特徴を有する核酸が提供される。
【0041】
本発明の一態様において、
a)配列識別番号:1〜10及び77からなる群から選択される核酸配列またはその部分配列;
b)(a)のヌクレオチド配列と比較して、少なくとも1つのヌクレオチド付加、欠失、置換及び/または反転を含む、(a)に提示される核酸から誘導されるヌクレオチド配列を有し、かつ(a)の核酸と本質的に同じ発現特徴を有する核酸;
c)(a)の核酸との少なくとも70%の同一性を有し、かつ(a)の核酸と本質的に同じ発現特徴を有する核酸配列;ならびに
d)(a)、(b)または(c)の核酸配列に対してハイブリッド化が可能であり、かつ(a)の核酸と本質的に同じ発現特徴を有する核酸、
e)核酸配列が245までのヌクレオチドを含む、配列識別番号:3、4、5、6、7、8または9を含む核酸配列
からなる群から選択される、コード及び/または遺伝子配列の発現を増強するためのプロモーターが提供される。
【0042】
本発明のさらなる態様は、(a)、(b)または(c)の核酸配列に対してハイブリッド化が可能であり、かつ(a)の核酸と本質的に同じ発現特徴を有する核酸に関する。「ハイブリッド化が可能」という用語は、(a)、(b)または(c)の核酸のいずれの部分も、別のDNA配列へのハイブリッド化が可能であり、(a)の核酸と本質的に同じ発現特徴を有するいずれのDNA配列の検出及び単離が可能となる条件でのハイブリッド化を意味する。ハイブリッド化は厳密な条件下で実行され;条件が厳密であるほど、部分的に補足的な配列が分離する可能性が高く、すなわち、より高い厳密性がハイブリッド化の可能性を低下させる。実際に、「厳密な条件」という用語は、高温(例えば、65℃)及び/または低塩濃度(例えば、0.1×SSC)によるハイブリッド化条件を意味する。温度の増加及び/または塩濃度の減少によって、厳密性は低下する。厳密な条件下で、配列間に少なくとも70%、または好ましくは、少なくとも75%、80%、85%、90%もしくは95%の同一性がある場合のみ、ハイブリッド化が生じるであろう。ハイブリッド化は、Ausubel et al.(2002)Short Protocols in Molecular Biology Vol.15th ed.Canadaに提示されるように実行可能である。
【0043】
好ましくは、本発明のプロモーター及び/または核酸は、245または242ヌクレオチドまでであり、かつそれを含む長さを有する。また、本発明のプロモーター及び/または核酸は、232または215ヌクレオチドまでであり、かつそれを含む長さを有する。より好ましくは、本発明のプロモーターは、212,200ヌクレオチドまでであり、かつそれを含む長さ、または195ヌクレオチドまでであり、かつそれを含む長さ、または183ヌクレオチドまでであり、かつそれを含む長さ、または170もしくは167ヌクレオチドまでであり、かつそれを含む長さを有する。一実施形態において、上記で提示される(b)、(c)または(d)の核酸は、約50〜250ヌクレオチド、約60〜220ヌクレオチド、約70〜200ヌクレオチド、約80〜190ヌクレオチド、または約90〜180ヌクレオチドを含む。
【0044】
あるいは、配列識別番号:1〜10及び77のいずれか1つにおいて定義される配列の部分配列であり得る、これらのプロモーターの誘導体を使用することは、本発明の範囲内である。「配列識別番号:1〜10及び77のいずれか1つによる配列の部分配列」という用語は、プロモーターとして、特に、FPVなどのオルソポックスウイルスにおける、またはFPVなどのオルソポックスウイルス感染細胞においてプロモーターとしてなお活性である、配列識別番号:1〜10及び77のいずれか1つのより短いフラグメントを指す。
【0045】
様々な実施形態において、配列識別番号:9の代表的な部分配列は、配列識別番号:2〜8から選択される。一態様において、配列識別番号:4または5は、配列識別番号:9の好ましい部分配列である。別の態様において、配列識別番号:8の部分配列としては、配列識別番号:2〜7が含まれ、配列識別番号:7の部分配列としては、配列識別番号:2〜6が含まれ、配列識別番号:6の部分配列としては、配列識別番号:2〜5が含まれ、配列識別番号:5の部分配列としては、配列識別番号:2−4が含まれ、配列識別番号:6の部分配列としては、配列識別番号:2〜5が含まれ、配列識別番号:5の部分配列としては、配列識別番号:2〜4が含まれ、配列識別番号:4の部分配列としては、配列識別番号:2〜3が含まれ、かつ配列識別番号:3の部分配列としては、配列識別番号:2が含まれる。
【0046】
配列識別番号:1〜10及び77のいずれか1つのヌクレオチド配列またはその部分配列を含むか、またはそれからなるプロモーターの誘導体は、配列識別番号:1〜10及び77の配列のいずれか1つに対して、1つまたはそれ以上のヌクレオチド置換、欠失及び/または挿入を有する配列であることも可能である。本発明による誘導体は、プロモーターとして、特に、オルソポックスウイルス及び/またはアビポックスウイルスウイルス感染細胞におけるオルソポックスウイルス及び/またはアビポックスウイルスプロモーターとして、より好ましくは、アビポックスウイルス感染細胞におけるアビポックスウイルスプロモーターとして、なお活性である。本発明による誘導体において、欠失、置換及び挿入が、1つの配列において組み合わされていてもよい。
【0047】
好ましくは、誘導体は、本明細書に記載の配列識別番号:1〜10及び77の配列のいずれか1つまたはその部分配列と比較した場合、少なくとも40%、より好ましくは、少なくとも60%、なおより好ましくは、少なくとも80%、最も好ましくは、少なくとも90%の相同性を有する。
【0048】
ブラキウリタンパク質
本発明のいくつかの態様において、本明細書に記載の種々のプロモーターの合成の結果として、発明者らは、1つまたはそれ以上の組換型ブラキウリタンパク質を生成したことを決定した。特に、1つまたはそれ以上の組換型ブラキウリタンパク質は、1つまたはそれ以上の本発明のプロモーターとブラキウリタンパク質との組合せの結果として生じる融合タンパク質である。1つまたはそれ以上の組換型ブラキウリタンパク質は、ワクチン、医薬または他の治療組成物の一部として有用となる可能性があることが予想される。
【0049】
したがって、種々の態様において、本発明は、1つまたはそれ以上の合成及び新規組換型ブラキウリタンパク質、及び/または組換型ブラキウリタンパク質をコード化する合成及び新規核酸を含む。
【0050】
一実施形態において、ブラキウリタンパク質をコード化する核酸に対して少なくとも70%の同一性を有し、上記ブラキウリタンパク質が、配列識別番号:18〜19、22〜23、26〜27、30〜31、34〜35、38〜39、42〜43、46〜47、50〜51、54〜55、58〜59、62〜63、66〜67、70及び71からなる群から選択される、1つまたはそれ以上の核酸配列が提供される。追加的な実施形態において、ブラキウリタンパク質をコード化する核酸に対して少なくとも75%、80%、85%、90%または95%の同一性を有し、上記ブラキウリタンパク質が、配列識別番号:18〜19、22〜23、26〜27、30〜31、34〜35、38〜39、42〜43、46〜47、50〜51、54〜55、58〜59、62〜63、66〜67、70及び71からなる群から選択される、1つまたはそれ以上の核酸が提供される。
【0051】
本発明の種々の他の実施形態において、配列識別番号:18〜19、22〜23、26〜27、30〜31、34〜35、38〜39、42〜43、46〜47、50〜51、54〜55、58〜59、62〜63、66〜67、70及び71からなる群から選択される、1つまたはそれ以上のブラキウリタンパク質が提供される。さらなる実施形態において、配列識別番号:18〜19、22〜23、26〜27、30〜31、34〜35、38〜39、42〜43、46〜47、50〜51、54〜55、58〜59、62〜63、66〜67、70及び71からなる群から選択されるペプチドとの少なくとも70%の同一性を有する、1つまたはそれ以上のブラキウリタンパク質が提供される。なおさらなる実施形態において配列識別番号:18〜19、22〜23、26〜27、30〜31、34〜35、38〜39、42〜43、46〜47、50〜51、54〜55、58〜59、62〜63、66〜67、70及び71、からなる群から選択されるペプチドとの少なくとも75%、80%、85%、90%または95%の同一性を有するペプチドが提供される。
【0052】
別の実施形態において、ブラキウリタンパク質をコード化する1つまたはそれ以上の核酸配列であって、配列識別番号:16〜17、20〜21、24〜25、28〜29、32〜33、36〜37、40〜41、44〜45、48〜49、52〜53、56〜57、60〜61、64〜65、68及び69からなる群から選択される核酸配列が提供される。
【0053】
他の実施形態において、配列識別番号:16〜17、20〜21、24〜25、28〜29、32〜33、36〜37、40〜41、44〜45、48〜49、52〜53、56〜57、60〜61、64〜65、68及び69からなる群から選択される核酸との少なくとも70%の同一性を有し、かつ配列識別番号:16〜17、20〜21、24〜25、28〜29、32〜33、36〜37、40〜41、44〜45、48〜49、52〜53、56〜57、60〜61、64〜65、68及び69からなる群から選択される核酸配列と本質的に同じ発現特徴を有する、1つまたはそれ以上の核酸配列が提供される。さらなる実施形態において、配列識別番号:16〜17、20〜21、24〜25、28〜29、32〜33、36〜37、40〜41、44〜45、48〜49、52〜53、56〜57、60〜61、64〜65、68及び69からなる群から選択される核酸との少なくとも75%、80%、85%、90%または95%の同一性を有し、かつ配列識別番号:16〜17、20〜21、24〜25、28〜29、32〜33、36〜37、40〜41、44〜45、48〜49、52〜53、56〜57、60〜61、64〜65、68及び69からなる群から選択される核酸配列と本質的に同じ発現特徴を有する、核酸配列が提供される。
【0054】
好ましい実施形態において、配列識別番号:16〜17、20〜21、24〜25、28〜29、32〜33、36〜37、40〜41、44〜45、48〜49、52〜53、56〜57、60〜61、64〜65、68及び69からなる群から選択される、1つまたはそれ以上の核酸配列が提供される。
【0055】
発現カセット
さらなる実施形態によると、本発明は、本発明による1つまたはそれ以上のプロモーター及び/またはブラキウリ組換型タンパク質及び/または核酸を含む発現カセットに関する。
【0056】
一実施形態において、配列識別番号:1〜10からなる群から選択される核酸との少なくとも70%の同一性を有するプロモーターと、配列識別番号:11、13、18〜19、22〜23、26〜27、30〜31、34〜35、38〜39、42〜43、46〜47、50〜51、54〜55、58〜59、62〜63、66〜67、70及び71からなる群から選択されるブラキウリペプチドをコード化する核酸とを含む発現カセットが提供される。別の実施形態において、配列識別番号:1〜10及び77からなる群から選択されるプロモーターと、配列識別番号:12、14〜17、20〜21、24〜25、28〜29、32〜33、36〜37、40〜41、44〜45、48〜49、52〜53、56〜57、60〜61、64〜65、68及び69からなる群から選択されるブラキウリペプチドをコード化する核酸とを含む発現カセットが提供される。
【0057】
好ましい実施形態において、配列識別番号:72〜76からなる群から選択される核酸配列との少なくとも70%の相同性を有する核酸配列を含む発現カセットが提供される。さらなる実施形態において、配列識別番号:72〜76からなる群から選択される核酸との少なくとも75%、80%、85%、90%または95%の同一性を有する核酸配列を含む発現カセットが提供される。
【0058】
より好ましい実施形態において、配列識別番号:72を含む発現カセットが提供される。
【0059】
より好ましい実施形態において、配列識別番号:73を含む発現カセットが提供される。
【0060】
より好ましい実施形態において、配列識別番号:74を含む発現カセットが提供される。
【0061】
組換型ポックスウイルス
さらなる実施形態によれば、本発明による核酸、プロモーター、組換型タンパク質及び/または発現カセットは、ベクターの一部であり得る。「ベクター」という用語は、当業者に既知のいずれのベクターも意味する。ベクターは、pBR322などのプラスミドベクターまたはpUC系のベクターであることができる。より好ましくは、ベクターは組換型ウイルスである。本発明に関して、「ウイルス」または「組換型ウイルス」という用語は、ウィルスゲノムを含む感染性ウイルスを意味する。この場合、本発明の核酸、プロモーター、組換型タンパク質及び/または発現カセットは、それぞれの組換型ウイルスのウィルスゲノムの一部である。組換型ウィルスゲノムはパッケージ化され、そして得られた組換型ウイルスは、細胞及び細胞系の感染のため、特に、ヒトを含む生体動物の感染のために使用することができる。本発明によって使用され得る典型的な組換型ウイルスは、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはアデノ随伴ウイルス2(AAV2)に基づくベクターである。ポックスウイルスベクターが最も好ましい。
【0062】
いくつかの実施形態において、本発明による核酸、プロモーター、ポリペプチド及び発現カセットは、好ましくは、ポックスウイルスプロモーターとして活性であるか、またはポックスウイルス感染細胞においてプロモーターとしてで活性である。ポックスウイルスは、好ましくは、アビポックスウイルスまたはオルソポックスウイルスである。より好ましくは、ポックスウイルスは、アビポックスウイルスである。
【0063】
「アビポックスウイルス」という用語は、鶏痘ウイルス、カナリーポックスウイルス(Canarypoxvirus)、アンコポックスウイルス(Uncopoxvirus)、ミナポックスウイルス(Mynahpoxvirus)、ピジョンポックスウイルス(Pigeonpoxvirus)、プシタシンポックスウイルス(Psittacinepoxvirus)、クワイルポックスウイルス(Quailpoxvirus)、ピーコックポックスウイルス(Peacockpoxvirus)、ペンギンポックスウイルス(Penguinpoxvirus)、スパローポックスウイルス(Sparrowpoxvirus)、スターリングポックスウイルス(Starlingpoxvirus)及びターキーポックスウイルス(Turkeypoxvirus)などのいずれのアビポックスウイルスも意味する。好ましいアビポックスウイルスは、カナリーポックスウイルス及び鶏痘ウイルスである。
【0064】
カナリーポックスウイルスの例は、Rentschler株である。ALVACと呼ばれるプラーク精製カナリーポックス株(米国特許第5,766,598号明細書)は、American Type Culture Collection(ATCC)受入料番号VR−2547で、ブダペスト条約の条件下でデポジットされた。別のカナリーポックス株は、Institute Merieux,Inc.から入手可能な、LF2 CEP 524 24 10 75として指定される市販のカナリーポックスワクチン株である。
【0065】
鷄痘ウイルスの例は、株FP−1、FP−5、TROVAC(米国特許第5,766,598号明細書)及びPOXVAC−TC(米国特許第7,410,644号明細書)である。FP−1は、1日齢ニワトリでワクチンとして使用されるように改質されたDuvette株である。この株は、O DCEP 25/CEP67/2309 October 1980として指定される市販の鶏痘ウイルスワクチン株であって、そしてInstitute Merieux,Inc.から入手可能である。FP−5は、American Scientific Laboratories(Division of Schering Corp.),Madison,Wis.,United States Veterinary License No.165,serial No.30321から入手可能なニワトリ胚由来の市販の鶏痘ウイルスワクチン株である。
【0066】
特定の実施形態において、組換型FPVは、配列識別番号:1〜10及び77からなる群から選択される核酸配列を含む。種々の追加的な実施形態において、組換型FPVは、配列識別番号:72〜76から選択される核酸配列を含む発現カセットを含む。より好ましい実施形態において、組換型FPVは、配列識別番号:72、73及び74から選択される核酸配列を含む発現カセットを含む。
【0067】
他の実施形態において、組換型FPVは、配列識別番号:11、13、18〜19、22〜23、26〜27、30〜31、34〜35、38〜39、42〜43、46〜47、50〜51、54〜55、58〜59、62〜63、66〜67、70及び71からなる群から選択されるブラキウリ抗原をコード化する核酸を含む。さらなる実施形態において、組換型FPVは、配列識別番号:11、13、18〜19、22〜23、26〜27、30〜31、34〜35、38〜39、42〜43、46〜47、50〜51、54〜55、58〜59、62〜63、66〜67、70及び71からなる群から選択されるブラキウリペプチドを含む。さらなる実施形態において、組換型FPVは、配列識別番号:12、14〜17、20〜21、24〜25、28〜29、32〜33、36〜37、40〜41、44〜45、48〜49、52〜53、56〜57、60〜61、64〜65、68及び69からなる群から選択される核酸を含む。最も好ましい実施形態において、組換型FPVは、配列識別番号:18〜19、22〜23、26〜27、30〜31、34〜35、38〜39、42〜43、46〜47、50〜51、54〜55、58〜59、62〜63、66〜67、70及び71からなる群から選択されるブラキウリペプチド及び/または配列識別番号:16〜17、20〜21、24〜25、28〜29、32〜33、36〜37、40〜41、44〜45、48〜49、52〜53、56〜57、60〜61、64〜65、68及び69からなる群から選択される核酸を含む。
【0068】
本開示の種々の他の実施形態において、組換型ポックスウイルスは、限定されないが、ワクシニアウイルス、改質ワクシニアウイルスAnkara(MVA)またはMVA−BNなどのオルソポックスウイルスである。
【0069】
ワクシニアウイルス株の例は、Temple of Heaven、Copenhagen、Paris、Budapest、Dairen、Gam、MRIVP、Per、Tashkent、TBK、Tom、Bern、Patwadangar、BIEM、B−15、Lister、EM−63、New York City Board of Health、Elstree、Ikeda及びWRである。好ましいワクシニアウイルス(VV)株は、Wyeth(DRYVAX)株(米国特許第7,410,644号明細書)である。別の好ましいVV株は、MVA(Sutter,G.et al.[1994],Vaccine 12:1032−40)である。別の好ましいVV株は、MVA−BNである。
【0070】
本発明の実施において有用であり、かつブダペスト条約の必要条件に従ってデポジットされたMVAウィルス株の例は、1994年1月27日にデポジッション番号ECACC 94012707で、European Collection of Animal Cell Cultures(ECACC),Vaccine Research and Production Laboratory,Public Health Laboratory Service,Centre for Applied Microbiology and Research,Porton Down,Salisbury,Wiltshire SP4 0JG,United Kingdomにデポジットされた株、MVA 572及び2000年12月7日にECACC 00120707でデポジットされたMVA 575である。番号V00083008でEuropean Collection of Cell Cultures(ECACC)で2000年8月30日にデポジットされたMVA−BN及びその誘導体は、追加的な代表的株である。
【0071】
MVA−BNは、そのより高い安全性(複製可能性が低い)のため好ましいが、全てのMVAは本発明に適切である。本発明の実施形態によれば、MVA株は、MVA−BN及びその誘導体である。MVA−BN及びその誘導体は、参照によって本明細書に組み込まれる、PCT/EP01/13628に記載されている。
【0072】
一実施形態において、本発明は、がん治療のための組換型オルソポックスウイルス、好ましくは、ワクシニアウイルス(VV)、Wyeth株、ACAM1000、ACAM2000、MVAまたはMVA−BNを含む。組換型オルソポックスウイルスは、オルソポックスウイルス中への異種配列の挿入によって生成される。
【0073】
特定の実施形態において、MVAは、番号V00083008でEuropean Collection of Cell Cultures(ECACC)において2000年8月30日にデポジットされたMVA−BNであり、かつ参照によって本明細書に組み込まれる国際PCT公開WO2002042480号(米国特許第6,761,893号明細書及び米国特許第6,913,752号明細書も参照)に記載されている。
【0074】
特定の実施形態において、組換型MVAは、MVA−BNの誘導体である。そのような「誘導体」は、デポジットされた株(ECACC No.V00083008)と本質的に同じ複製特徴を示すが、そのゲノムの1つまたはそれ以上の部分における差異を示すウイルスを含む。デポジットされたウイルスと同じ「複製特徴」を有するウイルスは、CEF細胞及び細胞系においてデポジットされた株と同様の増幅比で複製するウイルス、HeLa、HaCat及び143B;ならびに生体内で、例えば、AGR129遺伝子導入マウスモデルにおいて決定されるものと同様の複製特徴を示すウイルスである。
【0075】
特定の実施形態において、組換型オルソポックスウイルスは、配列識別番号:1〜10及び77からなる群から選択される核酸を含む。種々の追加的な実施形態において、組換型オルソポックスウイルスは、配列識別番号:72〜76から選択される核酸配列を含む発現カセットを含む。より好ましい実施形態において、組換型オルソポックスウイルスは、配列識別番号:72、73及び74から選択される核酸配列を含む発現カセットを含む。
【0076】
他の実施形態において、組換型オルソポックスウイルスは、配列識別番号:11、13、18〜19、22〜23、26〜27、30〜31、34〜35、38〜39、42〜43、46〜47、50〜51、54〜55、58〜59、62〜63、66〜67、70及び71からなる群から選択されるブラキウリ抗原をコード化する核酸を含む。さらなる実施形態において、組換型オルソポックスウイルスは、配列識別番号:12、14〜17、20〜21、24〜25、28〜29、32〜33、36〜37、40〜41、44〜45、48〜49、52〜53、56〜57、60〜61、64〜65、68及び69からなる群から選択される核酸を含む。より好ましい実施形態において、組換型オルソポックスウイルスは、配列識別番号:18〜19、22〜23、26〜27、30〜31、34〜35、38〜39、42〜43、46〜47、50〜51、54〜55、58〜59、62〜63、66〜67、70及び71からなる群から選択されるブラキウリペプチド及び/または配列識別番号:16〜17、20〜21、24〜25、28〜29、32〜33、36〜37、40〜41、44〜45、48〜49、52〜53、56〜57、60〜61、64〜65、68及び69からなる群から選択される核酸を含む。
【0077】
本発明による発現カセットまたはプロモーターをウイルスゲノム中に、特に、ポックスウイルスのゲノム中に、最も好ましくは、オルソポックスウイルス及び/またはFPVのゲノム中に挿入することができる方法は、当業者に既知である。例えば、本発明による発現カセットまたはプロモーターまたはその誘導体は、相同組換えによってポックスウイルスのゲノム中に挿入され得る。これを目標として、本発明による発現カセットまたはプロモーターまたはその誘導体が挿入されたポックスウイルスゲノムの領域に対して相同的であるヌクレオチドストレッチによって両側を挾まれた、本発明による発現カセットまたはプロモーターまたはその誘導体を含む核酸を、CEFまたはBHK細胞などの許容細胞系中に形質移入する。細胞は、ポックスウイルスによって感染され、そして感染細胞において、核酸及びウィルスゲノムの間で相同組換えが生じる。あるいは、最初に、ポックスウイルスで細胞を感染させ、次いで、感染細胞中に核酸を形質移入することも可能である。再び、細胞中で組換えが生じる。次いで、組換型ポックスウイルスは、従来技術で既知の方法によって選択される。組換型ポックスウイルスの構成は、この特定の方法に限定されない。その代わり、当業者に既知のいずれの適切な方法も、この目的のために使用されてよい。
【0078】
本発明による発現カセットまたはプロモーターは、ウイルスまたはウィルスベクターのいずれかの適切な部分中に、特に、ウイルスゲノム中に導入されてよい。オルソポックスウイルス及びアビポックスウイルスの場合、挿入は、ウィルスゲノムの非本質的部分中に、またはウィルスゲノムの遺伝子間領域中にされてよい。「遺伝子間領域」という用語は、好ましくは、コード配列を含まない2つの隣接遺伝子間に位置するウィルスゲノムのそれらの部分を意味する。ウイルスがオルソポックスウイルス及びアビポックスウイルスである場合、挿入は、ウィルスゲノムの欠失部位にされてもよい。「欠失部位」という用語は、自然発生オルソポックスウイルスまたはアビポックスウイルスのゲノムに対して欠失したウィルスゲノムのそれらの部分を意味する。しかしながら、ニワトリ胚線維芽細胞(CEF細胞)などの少なくとも1つの細胞培養系において増幅及び増殖が可能である組換型を入手することが可能である限り、発現カセットがウイルスゲノム中のいずれにも挿入され得ることは本発明の範囲内であるため、挿入部位は、オルソポックスウイルス及びアビポックスウイルスゲノムのこれらの好ましい挿入部位に制限されない。
【0079】
本発明によるプロモーターは、すでにベクターの一部である遺伝子、例えば、オルソポックスウイルス及び/またはアビポックスウイルスのゲノムを発現するために使用されてもよい。そのような遺伝子は、ウィルスゲノムの天然由来部分であり得るか、またはすでにベクター中に挿入された外来遺伝子であり得る。これらの場合、本発明によるプロモーターは、ベクター中で遺伝子の上流に挿入され、その発現はプロモーターによって制御される。
【0080】
ワクチン及び/または組成物
さらなる実施形態によると、本発明は、ワクチンまたは医薬剤としての本発明によるベクターに関する。より一般的に、本発明は、本発明による発現カセット、DNAまたはベクターを含むワクチンまたは医薬組成物に関する。ワクチンまたは医薬組成物を動物またはヒト体内に投与することができる方法は、当業者に既知である。DNA及び組換型プラスミドベクターの場合、DNA及びベクターは、注射によって単純に投与することができる。ワクチンまたは組成物が、オルソポックスウイルスまたはアビポックスウイルス、特に、組換型MVAまたは組換型FPVなどの組換型ウイルスである場合、それは、当業者の知識に従って、例えば、静脈内、筋肉内、鼻腔内、皮内または皮下投与によって、動物またはヒト体内に投与されてもよい。投与されたウイルスの量についてのさらなる詳細が以下に示される。
【0081】
医薬組成物またはワクチンは、一般に、本発明によるプロモーター、発現カセットまたはベクターに加えて、1種またはそれ以上の薬学的に許容可能及び/または認可された担体、添加剤、抗生物質、防腐剤、アジュバント、希釈剤及び/または安定剤を含み得る。そのような補助物質は、水、食塩水、グリセロール、エタノール、浸潤または乳化剤、pH緩衝物質などであることが可能である。適切な担体は、典型的に、タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、脂質凝集体などの大型の、代謝の遅い分子である。
【0082】
医薬組成物またはワクチンの調製のために、本発明によるDNA、発現カセットまたはベクター、特に、組換型MVAまたは組換型FPVなどの組換型オルソポックスウイルスまたはアビポックスウイルスは、生理学的に許容可能な形態に変換される。MVA及びFPVに関して、これは、種痘のために使用されるポックスウイルスワクチンの調製の経験に基づいて実行可能である(Stickl,H.et al.[1974]Dtsch.med.Wschr.99,2386−2392に記載されるとおり)。例えば、精製されたウイルスを、約10mM Tris、140mM NaCl pH7.4で配合された5×10 TCID50/mlの滴定量を用いて、−80℃で貯蔵した。ワクチンショットの調製のために、例えば、本発明による組換型ウイルスの10〜10粒子を、アンプル中、好ましくはガラスアンプル中で、2%ペプトン及び1%ヒトアルブミンの存在下、リン酸−緩衝食塩水(PBS)中でフリーズドライさせる。代わりに、ワクチンショットは、配合物中のウイルスの段階的フリーズドライによって製造することができる。この配合物は、生体内投与に適切である、マンニトール、デキストラン、糖質、グリシン、ラクトースまたはポリビニルピロリドンなどの追加的な添加剤、酸化防止剤または不活性ガスなどの他の添加剤、安定剤または組換型タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)を含有することができる。フリーズドライのために適切な配合物を含有する典型的なウイルスは、10mM トリス緩衝液、140mM NaCl、18.9g/lのデキストラン(MW36000〜40000)、45g/lのスクロース、0.108g/lのL−グルタミン酸一カリウム塩一水和物pH7.4を含む。次いで、ガラスアンプルを密封し、そして数カ月間、4℃から室温で貯蔵することができる。しかしながら、必要性がない限り、アンプルは好ましくは−20℃未満の温度で貯蔵される。
【0083】
ワクチン接種または治療のために、凍結乾燥物またはフリーズドライ生成物を0.1〜0.5mlの水溶液、好ましくは、水、生理食塩水またはトリス緩衝液中に溶解して、全身的または局所的のいずれかで、すなわち、非経口的、筋肉内または他のいずれかの熟練の開業医に既知の投与経路によって投与することができる。投与モード、用量及び投与の数は周知の様式で同業者によって最適化されることができる。
【0084】
1つまたはそれ以上の実施形態において、本発明は、さらに、本発明による核酸、プロモーター、組換型タンパク質及び/または発現カセットを標的細胞中に導入することを含む、治療の目的のためにヒト細胞などの標的細胞にコード配列を導入する方法に関する。代表的なヒト標的細胞は、樹状細胞などの抗原提示細胞(APC)、マクロファージ及び線維芽細胞、腫瘍細胞などの他の非APCを含むことができる。
【0085】
本発明は、さらに、本発明による組換型ウイルスによる宿主細胞の感染、それに続く、適切な条件下での感染宿主細胞の培養、さらに、上記宿主細胞によって産生されたペプチド及び/またはタンパク質及び/またはウイルスの単離及び/または濃縮を含む、ペプチド、タンパク質及び/またはウイルスを産生するための方法に関する。本発明によるウイルスを産生、すなわち、増幅することが意図される場合、細胞は、ウイルスが複製可能である細胞である必要がある。ポックスウイルス、特にMVAに関して、適切な細胞はCEF(ニワトリ胚線維芽細胞)またはBHK(ベビーハムスター腎臓)細胞である。鶏痘ウイルスなどのアビポックスウイルスに関して、適切な細胞はCEFまたはCED(ニワトリ胚真皮)細胞を含む。本発明による組換型ウイルスによってコード化されたペプチド/タンパク質を産生することが意図される場合、細胞は、組換型ウイルスベクターによって感染可能であり、かつウイルスコード化タンパク質/ペプチドの発現を可能にするいずれの細胞であってもよい。
【0086】
本発明は、さらに、本発明による発現カセット、核酸、プロモーター、組換型タンパク質及び/または発現カセットDNAによる形質移入、それに続く、ポックスウイルスによる細胞の感染を含む、ペプチド、タンパク質及び/またはウイルスの産生方法に関する。感染宿主細胞は、適切な条件下で培養される。さらなるステップは、上記宿主細胞によって産生されたペプチド及び/またはタンパク質及び/またはウイルスの単離及び/または濃縮を含む。ポックスウイルスによって細胞を感染するステップは、細胞の形質移入のステップの前または後に実行されてよい。
【0087】
本発明は、さらに、本発明による核酸、プロモーター、組換型タンパク質及び/または発現カセットを含む細胞に関する。特に、本発明は、本発明による組換型ウイルスによって感染した細胞に関する。
【実施例】
【0088】
以下の実施例は、本発明をさらに例証する。提供された実施例が、技術の適用性を限定するものとして決して解釈されないことを当業者は理解するであろう。
【0089】
実施例1:組換型鶏痘ウイルスで感染させたヒトDCにおけるブラキウリの発現
ブラキウリタンパク質の発現を識別するために、2.5の感染多重度(MOI)において、ヒト樹状細胞(DC)を陽性対照ウイルスである、ブラキウリ及びTRICOMを含む組換型MVAで感染させた。ヒトDCを、本開示によるブラキウリ発現カセット及びTRICOMを含む陰性対照非組換型鶏痘(FPV−WT)または組換型鷄痘ウイルス株でも感染させた。(表1でより詳細に記載される)FPV−WT、FPV−mBN343A、FPV−mBN344A及びFPV−mBN345Aを含む、それぞれのFPV株を使用して、20のMOIでDCを感染させた。FPVブラキウリ発現は、ウサギモノクロナル反ブラキウリ抗体で実行されたウエスタンブロット分析によって検出された。ハウスキーピングタンパク質グリセルアルデヒド3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)も、負荷対照としてウエスタンブロット分析によって検出された。
【表1】
【0090】
結果を図1に示す。ブラキウリの発現は、FPV−mBN343A及びFPVmBN345組換型FPVで検出されたが、FPV−mBN344A組換型FPVを使用した場合、検出されなかった。ブラキウリ発現は、MVA−ブラキウリ−TRICOMでも検出された。同様の試料負荷は、GAPDH発現によっても実証された。
【0091】
実施例2:組換型鶏痘ウイルスで感染させたヒトDCにおけるブラキウリの発現
ブラキウリタンパク質の発現−レベルを、異なるプロモーターを用いてブラキウリを発現する追加の組換型FPV株の間でも比較した。ヒト樹状細胞(DC)を、ブラキウリ及びTRICOMを含む陽性対照組換型MVA及び陰性対照非組換型株MVA−WTによって、5のMOIで感染させた。ヒトDCを、本開示によるブラキウリ発現カセット及びTRICOMを含む組換型FPV(例えば、FPV−mBN343A、FPV−mBN344A、FPV−mBN345A、FPV−mBN354A、FPV−mBN355A、表1を参照のこと)によっても感染させた。ヒトDCを、ワクシニアウイルス(VV)−40kプロモーターまたはPrSプロモーターのいずれかを有するブラキウリ発現カセットを含む組換型鶏痘ウイルス(FPV)によって、さらに感染させた。非組換型FPV−WT株は、陰性対照として使用した。全てのFPVは、40のMOIで使用された。ブラキウリ発現は、ウサギモノクロナル抗ブラキウリ抗体によって実行されたウエスタンブロット分析によって検出された。GAPDHも、負荷対照として検出された。
【0092】
結果を図2に示す。ブラキウリの発現は、FPV−mBN343A及びFPV−mBN345A組換型FPVで検出されたが、FPV−mBN344A及びFPV−mBN354A組換型FPVを使用した場合、検出されなかった。より特に、ブラキウリを促進するVV−40kまたはPrSプロモーターを有する組換型FPV(すなわち、FVP−mBN281A、FVP−mBN249B)に関して、ブラキウリの発現はより低レベルで検出された。陰性対照(非感染DC、MVA−WTまたはFPV−WT)では、ブラキウリ発現は検出されなかった。同様の試料負荷は、GAPDH発現によっても実証された。
【0093】
実施例2に示されるウエスタンブロットからのブラキウリ発現レベルは、細胞間で同等のレベルで発現されることが予想されるハウスキーピング遺伝子GAPDHの発現に対して標準化された。ブラキウリ及びGAPDHバンドのそれぞれの強度を測定し、そして同一試料内でのブラキウリ及びGAPDHバンド間の比率を算出した。
【0094】
結果を図3に示す。FPV構成の間で、GAPDHと比較してブラキウリの最も高い発現は、FPV−mBN355Aで感染させたDCにおいて検出された。中程度の相対的ブラキウリ発現は、FPV−mBN343AまたはFPV−mBN345Aで感染させたDCにおいて検出された。最も低い相対的ブラキウリ発現は、ブラキウリを促進するVV−40kまたはPrSプロモーターを有する組換型FPV(すなわち、FVP−mBN281A、FVP−mBN249B)から検出された。ブラキウリの最も高い相対的発現は、陽性対照ウイルスMVA−ブラキウリ−TRICOMによる感染から観察され;陰性対照試料においては、ブラキウリ発現は検出されなかった。したがって、組換型FPV菌株の間で、ブラキウリのより優れた発現は、FPV−mBN355、FPV−mBN345またはFPV−mBN344プロモーターからのブラキウリ発現を促進させるベクターによって誘導された。
【0095】
実施例3:組換型鶏痘ウイルスで感染させたCMMT細胞中のブラキウリ及びTRICOMの発現
ブラキウリ及びTRICOMタンパク質の発現は、それぞれのタンパク質に対して特異的である蛍光標識抗体を使用するフローサイトメトリーによっても評価された。CMMT細胞(アカゲザル乳房腫瘍細胞系)を、ブラキウリ及びTRICOMを含む陽性対照組換型MVAで、または本開示によるブラキウリ発現カセット及びTRICOMを含む組換型FPV(例えば、FPV−mBN343A、FPV−mBN345A)で、またはブラキウリを促進するPrSプロモーターを有する組換型FPV(FVP−mBN249B)で感染させた。細胞を1未満のMOIで感染させ、非感染及び感染細胞の混合物を分析した。非感染CMMT細胞は、陰性対照として使用された。
【0096】
FACS試料は、BD LSRIIまたはFortessaで入手され、そしてBD FACSDIVAソフトウェア(BD Bioscience,San Jose,CA)またはFlowJo(TreeStar Inc.,Ashland,OR)を使用して分析された。
【0097】
結果を図4に示す。ブラキウリ及び3種のTRICOMタンパク質(CD80、CD54及びCD58)に関して検出されたシグナルの棒グラフをプロットし、そして陽性シグナルが検出されたところでゲートを描写した(黒線)。FPV構成の間で、(x軸に沿ってシグナルにおいて最も大きいシフトによって示される)ブラキウリの最も高い発現は、FPV−mBN343AまたはFPV−mBN345Aで感染させたCMMT細胞で検出された。最も低いブラキウリ発現は、ブラキウリを促進するPrSプロモーターを有する組換型FPV(すなわち、FVP−mBN281A、FVP−mBN249B)から検出された。TRICOMタンパク質の同様の発現レベルは、FPV構成の間で検出された。ブラキウリ及びTRICOMタンパク質の発現は、陽性対照ウイルスMVA−ブラキウリ−TRICOMによる感染からも観察された。
【0098】
感染細胞のブラキウリの発現レベルを定量化するために、蛍光強度(MFI)中央値を、図4でゲートされたブラキウリ−陽性細胞に関して算出した。
【0099】
結果を図5に示す。FPV構成の間で、最も高いブラキウリMFIは、FPV−mBN343AまたはFPV−mBN345Aで感染させたCMMT細胞で検出された。最も低いブラキウリMFIは、ブラキウリを促進するPrSプロモーターを有する組換型FPV(FVP−mBN249B)から検出された。全ての試験された構成の最も高いブラキウリMFIは、陽性対照ウイルスMVA−ブラキウリ−TRICOMで感染させた細胞であった。したがって、感染CMMT細胞におけるブラキウリの発現レベル中央値は、PrSプロモーターよりもFPV−mBN345またはFPV−mBN344プロモーターからのブラキウリ発現を促進させるベクターの方が高かった。
【0100】
実施例4:FPV−mBN345Bからのブラキウリの発現
最初に組換型FPV−mBN345A株を生成するために使用される薬剤選択カセットは、臨床開発に適切な組換型ベクターを生成するために除去された。これは、薬剤選択なしにニワトリ胚線維芽細胞(CEF)上でウイルスを継代培養し、個々のクローンをプラーク精製して、そしてPCR及びDNA配列決定によって選択カセットが不足するクローンを識別することによって達成された。これによって、I3+15aaプロモーター及びTRICOMによって促進されたブラキウリ発現カセットを含むが、薬剤選択カセットを含まないFPV−mBN345Bの産生が得られた。
【0101】
FPV−mBN345Bからのブラキウリ及びTRICOMタンパク質の発現は、細胞の部分集合を感染させるために0.625のMOIで、または全ての細胞を感染させるために40のMOIで、FPV−BN345Bによってそれらを感染することによって、CMMT細胞において確認された。
【0102】
結果を図6に示す。ブラキウリ及び3種のTRICOMタンパク質(CD80、CD54及びCD58)に関して検出されたシグナルの棒グラフをプロットした。赤線は、0.625のMOIで感染させた試料に関するものであり、青線は、40のMOIで感染させた試料に関する。未感染細胞は陰性対照として使用された(黒線)。0.625のMOIにおいて、ブラキウリ及び3種のTRICOMタンパク質の発現は、非感染細胞からより高いピークの右側にシフトしたピークとして検出された。40のMOIにおいて、ブラキウリ及びTRICOMの発現は、全ての細胞において、非感染細胞の右側にシフトしたピークとして検出された。
【0103】
本発明の他の実施形態は、本明細書に開示された本発明の明細及び実施の考察から、当業者に明白であろう。明細書及び実施例は代表としてのみ考慮されることが意図され、本発明の真の範囲及び精神は、請求項によって示される。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1. a.配列識別番号:1〜10及び77のいずれか1つに対して少なくとも70%の同一性を有する核酸配列を含むプロモーターと、
b.前記プロモーターに作動可能に連結されるコード配列と
を含み、前記コード配列の発現が前記プロモーターによって制御される、コード配列の発現のための発現カセット。
2.前記プロモーターが、配列識別番号:1〜10及び77のいずれか1つに対して少なくとも75%、80%、85%または90%の同一性を有する核酸配列を含む、上記1に記載の発現カセット。
3.前記プロモーターが、配列識別番号:1〜10及び77のいずれか1つに対してハイブリッド化が可能である核酸配列から選択される、上記1〜2に記載の発現カセット。
4.ポックスウイルスのゲノムにおいて自然に存在する発現カセットではない、上記1〜3に記載の発現カセット。
5.前記プロモーターが、配列識別番号:4及び配列識別番号:5のいずれか1つに対して少なくとも70%の同一性を有する核酸配列を含む、上記1〜4に記載の発現カセット。
6.前記プロモーターが、配列識別番号:4及び配列識別番号:5からなる群から選択される核酸配列を含む、上記1〜4に記載の発現カセット。
7.前記プロモーターが、配列識別番号:9またはその部分配列である、上記1〜4に記載の発現カセット。
8.前記部分配列が、配列識別番号:4及び5から選択される、上記7に記載の発現カセット。
9.前記コード配列が、少なくとも1つの(a)治療タンパク質またはペプチド、抗原、抗原性エピトープ、アンチセンスRNA、腫瘍随伴抗原もしくはエピトープ、あるいはリボザイムに対してコード化する、上記1〜8に記載の発現カセット。
10.前記コード配列が、少なくとも1つの腫瘍随伴抗原(TAA)に対してコード化する、上記1〜8の発現カセット。
11.前記コード配列が、少なくとも1つの、CEA、MUC−1、PAP、PSA、HER−2、サバイビン、チロシン関連タンパク質1(tyrp1)、チロシン関連タンパク質2(tyrp2)、ブラキウリ抗原またはその組合せから選択されるTAAに対してコード化する、上記1〜10に記載の発現カセット。
12.前記コード配列が、ブラキウリ抗原に対してコード化する、上記1〜11に記載の発現カセット。
13.前記ブラキウリ抗原が、ブラキウリL254Vである、上記12に記載の発現カセット。
14.前記コード配列が、配列識別番号:11及び配列識別番号:13からなる群から選択されるブラキウリ抗原をコード化する核酸配列を含んでなる、上記12に記載の発現カセット。
15.前記コード配列が、配列識別番号:12、配列識別番号:14及び配列識別番号:15からなる群から選択される、上記12に記載の発現カセット。
16.前記コード配列が、配列識別番号:11、13、18〜19、22〜23、26〜27、30〜31、34〜35、38〜39、42〜43、46〜47、50〜51、54〜55、58〜59、62〜63、66〜67、70及び71からなる群から選択されるブラキウリ抗原に対してコード化する核酸を含む、上記1〜11に記載の発現カセット。
17.前記コード配列が、配列識別番号:13、18〜19、22〜23、26〜27、30〜31、34〜35、38〜39、42及び43からなる群から選択されるブラキウリ抗原に対してコード化する核酸を含む、上記1〜11に記載の発現カセット。
18.前記コード配列が、配列識別番号:26〜27、30〜31、38〜39、42及び43からなる群から選択されるブラキウリ抗原に対してコード化する核酸を含む、上記1〜11に記載の発現カセット。
19.前記コード配列が、配列識別番号:24〜25、28〜29、36〜37、40及び41からなる群から選択される核酸に対して少なくとも70%の同一性を有する核酸を含む、上記1〜11に記載の発現カセット。
20.前記コード配列が、配列識別番号:25もしくは29またはその部分配列に対して少なくとも70%の同一性を有する核酸を含む、上記1〜11に記載の発現カセット。
21.前記コード配列が、配列識別番号:12、14〜17、20〜21、24〜25、28〜29、32〜33、36〜37、40〜41、44〜45、48〜49、52〜53、56〜57、60〜61、64〜65、68及び69からなる群から選択される核酸に対して少なくとも70%の配列同一性を有する核酸を含む、上記1〜11に記載の発現カセット。
22.配列識別番号:72〜76からなる群から選択される核酸を含む、発現カセット。
23.配列識別番号:72、配列識別番号:73及び配列識別番号:74からなる群から選択される核酸を含む、発現カセット。
24.配列識別番号:1〜10及び77からなる群から選択される核酸配列または配列識別番号:1〜10及び77のいずれか1つの誘導配列を含むか、またはそれからなる、コード配列の発現を増強するためのプロモーターであって、前記誘導が、1つまたはそれ以上の置換、欠失及び/または挿入を有し、かつ前記誘導配列が、ポックスウイルスプロモーターとして活性であり、及び/またはポックスウイルス感染細胞において活性である、プロモーター。
25.配列識別番号:1〜10及び77またはその部分配列からなる群から選択される核酸配列を含むか、またはそれからなる、コード配列の発現を増強するためのプロモーター。
26.配列識別番号:9またはその部分配列に対して少なくとも70%の同一性を有する核酸配列を含むか、またはそれからなる、コード配列の発現を増強するためのプロモーター。
27.前記部分配列が、配列識別番号:3〜8からなる群から選択される、上記26に記載のプロモーター。
28.配列識別番号:18〜19、22〜23、26〜27、30〜31、34〜35、38〜39、42〜43、46〜47、50〜51、54〜55、58〜59、62〜63、66〜67、70及び71またはその部分配列からなる群から選択されるブラキウリ抗原に対してコード化する核酸に対して少なくとも70%の同一性を有する、合成核酸。
29.16〜17、20〜21、24〜25、28〜29、32〜33、36〜37、40〜41、44〜45、48〜49、52〜53、56〜57、60〜61、64〜65、68及び69またはその部分配列からなる群から選択される、合成核酸。
30.18〜19、22〜23、26〜27、30〜31、34〜35、38〜39、42〜43、46〜47、50〜51、54〜55、58〜59、62〜63、66〜67、70及び71またはその部分配列からなる群から選択される、合成タンパク質。
31.上記1〜23に記載の発現カセット、上記24〜27に記載のプロモーター、上記28〜29に記載の核酸及び/または上記30に記載のタンパク質を含む、ベクター。
32.プラスミドである、上記31に記載のベクター。
33.組換型ウイルスである、上記31に記載のベクター。
34.前記組換型ウイルスがポックスウイルスである、上記33に記載のベクター。
35.前記ポックスウイルスがアビポックスウイルスである、上記34に記載のベクター。
36.前記アビポックスウイルスが鷄痘ウイルスである、上記35に記載のベクター。
37.前記発現カセットが、前記ポックスウイルスゲノムの欠失部位に挿入される、上記31〜36に記載のベクター。
38.前記発現カセットが、前記ポックスウイルスゲノムの遺伝子間領域に挿入される、上記31〜35に記載のベクター。
39.オルソポックスウイルスである、上記33〜34に記載のベクター。
40.前記オルソポックスウイルスが、ワクシニアウイルス、改質Ankara Virus(MVA)またはMVA−BNから選択される、上記39に記載のベクター。
41.a)上記1〜23のいずれか一項に記載の発現カセット、b)上記24〜27のプロモーター、c)上記28〜29の核酸、d)上記30のタンパク質またはe)上記31〜40のいずれか一項に記載のベクターを含む、ワクチン、薬剤または医薬組成物。
42.a)上記1〜23のいずれか一項に記載の発現カセット、b)上記24〜27のプロモーター、c)上記28〜29の核酸、d)上記30のタンパク質またはe)上記31〜40のいずれか一項に記載のベクターを含む、細胞。
43.a)上記1〜23のいずれか一項に記載の発現カセット、b)上記24〜27のプロモーター、c)上記28〜29の核酸またはd)上記31〜40のいずれか一項に記載のベクターを、標的細胞に導入することを含む、標的細胞中にコード配列を導入する方法。
44.a)上記1〜23のいずれか一項に記載の発現カセット、b)上記24〜27のプロモーター、c)上記28〜29の核酸またはd)上記31〜40のいずれか一項に記載のベクターによる宿主細胞の感染を含む、ペプチド、タンパク質またはウイルスを製造する方法。
45. a.a)上記1〜23のいずれか一項に記載の発現カセット、b)上記24〜27のプロモーター、c)上記28〜29の核酸を含む、発現ベクターまたはウイルスを提供すること;及び
b.前記発現ベクターまたはウイルスに、前記発現カセット、前記プロモーターまたは前記核酸の発現に寄与する条件を受けさせること
を含む、核酸を発現する方法。
46.薬剤、好ましくは、ワクチンの調製における、a)上記1〜23のいずれか一項に記載の発現カセット、b)上記24〜27のプロモーター、c)上記28〜29の核酸、d)上記30のタンパク質またはe)上記31〜40のいずれか一項に記載のベクターの使用。
47.核酸を発現するための、a)上記1〜23のいずれか一項に記載の発現カセット、b)上記24〜27のプロモーター、c)上記28〜29の核酸、d)上記30のタンパク質またはe)上記31〜40のいずれか一項に記載のベクターの使用。
48.薬剤、好ましくは、ワクチンとして使用するための、a)上記1〜23のいずれか一項に記載の発現カセット、b)上記24〜27のプロモーター、c)上記28〜29の核酸、d)上記30のタンパク質またはe)上記31〜40のいずれか一項に記載のベクター。
49.コード配列を標的細胞中に導入する方法において使用するための、a)上記1〜23のいずれか一項に記載の発現カセット、b)上記24〜27のプロモーター、c)上記28〜29の核酸またはd)上記31〜40のいずれか一項に記載のベクター。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]