【文献】
EDWARDS, Thomas G. et al,Approaches to Mon-Glasses-Based 3D Displays,SMPTE ANNUAL TECH CONFERENCE & EXPO,2009年10月 1日,pages 1-16
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マルチビーム回折格子が、前記光導波路の表面に隣接する湾曲した回折フィーチャを含み、前記湾曲した回折フィーチャが、前記光導波路の表面において互いに離間した複数の溝および複数のリッジのうちの一方を含む、請求項1または2に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ。
前記非ゼロ伝搬角が、前記複数の光線の発出パターンを前記ユーザに向かって傾斜させるように設定される、請求項6に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ。
前記マルチビーム回折格子のアレイのマルチビーム回折格子が、湾曲した回折フィーチャを有するチャープ回折格子を含む、請求項11に記載のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム。
【発明を実施するための形態】
【0007】
特定の実施例および実施形態は、上述の図面に示す特徴に加えて、またはそれらの代わりに、他の特徴を有する。以下、それらの特徴およびその他の特徴について、上記の図面を参照して説明する。
【0008】
本明細書に記載する原理による実施例および実施形態は、ユーザ
の場所(location)または「ヘッドトラッキング」を利用するマルチビューまたは3次元(3D)画像ディスプレイを提供する。本明細書に記載する原理による実施形態は、マルチビューディスプレイを利用して、ユーザの
場所に応じてマルチビュー画像によって表現されるシーンの様々なビューの様々なセットを提供することができる。特に、ユーザが第1の
位置(position)に位置しているときに、1次ビューのセットを提供することができる。このビューの1次セットは、ある視野角内でユーザにマルチビュー画像を提供するように構成される。さらに、ユーザが第2の
位置に移動するとき、または第2の
位置に位置しているときに、ビューの拡張セットを提供することができる。拡張ビューセットは、1次ビューおよび2次ビューのサブセットを含む。2次ビューは、ビューの1次セットの角度範囲に角度的に隣接するが実質的にその角度範囲の外にあるシーンの視方向または視像方向を表す。ユーザの異なる
場所に対応する異なるビューセットを提供することにより、表示されているマルチビュー画像の有効視野(FOV)角を増大させることができる。FOV角を増大させることにより、例えば斜めの角度でマルチビュー画像を見るときに起こる可能性があるマルチビューまたは3次元(3D)画像の知覚のいわゆる「ジャンプ」または「反転視」を低減または緩和することができる。
【0009】
様々な実施形態では、ヘッドトラッキングによって、ユーザの
位置または
場所をマルチビューディスプレイに提供することができる。すなわち、ユーザの
場所は、ユーザの頭部の
場所をトラッキングすることによって決定または推測することができる。したがって、限定を目的とするわけではないが、説明を容易にするために、本明細書に記載する実施形態を、例えばヘッドトラッキングを利用する「ヘッドトラッキング」マルチビューディスプレイ、システム、および方法と呼ぶこともある。
【0010】
本明細書では、「マルチビューディスプレイ」は、マルチビュー画像の様々なビューを様々な視像方向で提供するように構成された電子ディスプレイまたはディスプレイシステムとして定義される。
図1Aは、本明細書に記載する原理による実施形態による、1実施例のマルチビューディスプレイ10を示す斜視図である。
図1Aに示すように、マルチビューディスプレイ10は、見る対象のマルチビュー画像を表示するスクリーン12を含む。マルチビューディスプレイ10は、このマルチビュー画像の様々なビュー14を、スクリーン12に対する様々な視像方向16に提供する。視像方向16は、スクリーン12から様々な異なる主要角度方向に延びる矢印として示してあり、様々なビュー14は、それらの矢印(すなわち視像方向16を示す矢印)の終端に網掛けした多角形として示してあり、また、4つのビュー14と4つの視像方向16しか示していないが、全て例示を目的としてものであり、限定を目的としたものではない。なお、
図1Aでは様々なビュー14がスクリーンの上方にあるものとして示してあるが、マルチビュー画像がマルチビューディスプレイ10に表示されたとき、これらのビュー14は、実際にはスクリーン12上、またはスクリーン12の近傍に見えることに留意されたい。ビュー14をスクリーン12の上方に示しているのは、単に説明を簡略にするためであり、これらの視像方向16のうち特定のビュー14に対応する各視像方向からマルチビューディスプレイ10を見ていることを表すためのものである。
図1Aは、また、「2次ビュー14’」も示している。図示の2次ビュー14’は、ビュー14(すなわちビュー14の1次セット)の角度範囲に角度的に隣接するが実質的にその角度範囲の外にある、このシーンの視点を表す、すなわち2次視像方向16’を有する。
【0011】
マルチビューディスプレイの視像方向、すなわち視像方向に対応する方向を有する光線は、一般に、本明細書の定義では角度成分{θ、φ}で与えられる主要角度方向を有する。角度成分θは、本明細書では、光線の「高度成分」または「仰角」と呼ぶ。角度成分φは、光線の「方位成分」または「方位角」と呼ぶ。定義では、仰角θは、垂直平面(例えばマルチビューディスプレイスクリーンの平面に対して直交する面)内の角度であり、方位角φは、水平面(例えばマルチビューディスプレイスクリーン平面に対して平行な面)内の角度である。
図1Bは、本明細書に記載する原理による実施形態による、実施例におけるマルチビューディスプレイの視像方向(例えば
図1Aの視像方向16)に対応する特定の主要角度方向を有する光線20の角度成分{θ、φ}の図示である。さらに、光線20は、本明細書の定義では、特定の点から発出される、または放射する。すなわち、定義では、光線20は、マルチビューディスプレイ内の特定の原点に関連付けられた中心放射線を有する。
図1Bは、光線(または視像方向)の原点Oも示している。
【0012】
さらに、本明細書では、「マルチビュー画像」および「マルチビューディスプレイ」という用語で使用する「マルチビュー」という用語は、様々な視点を表す、またはその複数のビューのうちのビュー間で角度のばらつきを含む複数のビューとして定義される。さらに、本明細書では、「マルチビュー」という用語は、本明細書の定義では、2つを超える異なるビュー(すなわち最低で3つのビューであり、一般的には3つを超えるビュー)を明示的に含む。したがって、本明細書で利用する「マルチビューディスプレイ」は、シーンまたは画像を表すために異なるビューを2つしか含まない立体視ディスプレイとは明示的に区別される。ただし、マルチビュー画像およびマルチビューディスプレイは本明細書の定義では2つを超えるビューを含むが、マルチビュー画像は、それらのマルチビュービューのうちの2つのみ(すなわち各眼あたり1つのビュー)を一度に見るように選択することにより、画像の立体視対として見る(すなわちマルチビューディスプレイ上で)ことができる。
【0013】
「マルチビューピクセル」は、本明細書では、マルチビューディスプレイの同様の複数の異なるビューのそれぞれの「ビュー」ピクセルを表すサブピクセルのセットとして定義される。特に、マルチビューピクセルは、マルチビュー画像の様々なビューのそれぞれのビューピクセルに対応する、またはマルチビュー画像の様々なビューのそれぞれのビューピクセルを表す、個々のサブピクセルを有することができる。さらに、マルチビューピクセルのサブピクセルは、本明細書の定義では、各サブピクセルが様々なビューのうちの対応するビューの所定の視像方向と関連付けられるので、いわゆる「方向ピクセル」である。さらに、様々な実施例および実施形態によれば、マルチビューピクセルのサブピクセルによって表される様々なビューピクセルは、様々なビューのそれぞれにおいて、等価な、または少なくとも実質的には同様の
場所または座標を有することができる。例えば、第1のマルチビューピクセルは、マルチビュー画像の様々なビューのそれぞれにおいて{x
1、y
1}に位置するビューピクセルに対応する個々のサブピクセルを有することがあり、第2のマルチビューピクセルは、様々なビューのそれぞれにおいて{x
2、y
2}に位置するビューピクセルに対応する個々のサブピクセルを有することがある、などである。
【0014】
いくつかの実施形態では、マルチビューピクセル中のサブピクセルの数が、マルチビューディスプレイのビューの数と等しいことがある。例えば、マルチビューピクセルは、64個の異なるビューを有するマルチビューディスプレイと関連付けられた64個のサブピクセルを提供することがある。別の例では、マルチビューディスプレイがビューの8×4アレイ(すなわち32個のビュー)を提供し、マルチビューピクセルが、32個のサブピクセル(すなわち各ビュー当たり1つ)を含むこともある。さらに、それぞれの異なるサブピクセルは、例えば上記の例では64個の異なるビューに対応する、または32個の異なるビューに対応する視像方向のうちの異なる1つに対応する関連する方向(すなわち光線の主要角度方向)を有することができる。さらに、いくつかの実施形態によれば、マルチビューディスプレイのマルチビューピクセルの数は、マルチビューディスプレイのビュー中の「ビュー」ピクセル(すなわち選択されたビューを構成するピクセル)の数と実質的に等しいことがある。例えば、ビューが640×480個のビューピクセル(すなわち640×480ビュー解像度)を含む場合には、マルチビューディスプレイは、307200個のマルチビューピクセルを有することができる。別の例では、ビューが100×100個のビューピクセルを含む場合には、マルチビューディスプレイは、総数で10000(すなわち100×100=10000)個のマルチビューピクセルを含むことができる。
【0015】
本明細書では、「光導波路」は、全反射を用いてその内部で光を誘導する構造として定義される。特に、光導波路は、光導波路の動作波長で実質的に透明なコアを含むことができる。「光導波路」という用語は、一般に、全反射を利用して光導波路の誘電体材料とその光導波路を取り囲む材料または媒質との間の界面で光を誘導する、誘電体光学導波路を指す。定義では、全反射のための条件は、光導波路の屈折率が光導波路材料の表面に隣接する周囲の媒質の屈折率より大きいことである。いくつかの実施形態では、全反射をさらに促進するために、光導波路は、上述の屈折率の差に加えて、またはその代わりに、コーティングを含むこともできる。このコーティングは、例えば反射性コーティングとすることができる。光導波路は、これらに限定されるわけではないが、平板導波路またはスラブ導波路、およびストリップ導波路のうちの一方または両方を含むいくつかの光導波路のうちの任意のものにすることができる。
【0016】
さらに、本明細書では、「平板光導波路」など光導波路に用いられるときの「平板」という用語は、「スラブ」導波路と呼ばれることもある、区分的または微分的に平面状の層またはシートとして定義される。特に、平板光導波路は、その光導波路の頂面および底面(すなわち対向する表面)によって画定される2つの実質的に直交する方向に光を誘導するように構成された光導波路として定義される。さらに、本明細書の定義では、頂面および底面は互いに分離されており、少なくとも微分的な意味では実質的に互いに平行であることがある。すなわち、平板光導波路の任意の微分小区画内では、頂面と底面は実質的に平行である、または同一平面状にある。
【0017】
いくつかの実施形態では、平板光導波路は、実質的に平坦であり(すなわち平面に制限され)、したがって、平板光導波路は、平面光導波路である。他の実施形態では、平板光導波路は、1つの次元、または2つの直交する次元に湾曲していてもよい。例えば、平板光導波路を1つの次元に湾曲させて、円筒形の平板光導波路を形成することもできる。ただし、いかなる湾曲も、光導波路内で全反射が維持されて光を誘導することを保証するのに十分に大きな曲率半径を有する。
【0018】
本明細書では、「回折格子」は、一般に、その回折格子に入射する光の回折をもたらすように配置された複数のフィーチャ(すなわち回折フィーチャ)として定義される。いくつかの実施例では、複数のフィーチャは、周期的または準周期的に配置されることがある。例えば、回折格子は、1次元(1D)アレイに配置された複数のフィーチャ(例えば材料表面の複数の溝またはリッジ)を含むことがある。他の例では、回折格子は、フィーチャの2次元(2D)アレイとすることもできる。回折格子は、例えば材料表面のバンプまたは穴の2Dアレイとすることもできる。
【0019】
したがって、本明細書の定義では、「回折格子」は、その回折格子に入射する光の回折をもたらす構造である。光が光導波路から回折格子に入射すると、それによりもたらされる回折または回折的散乱は、回折格子が回折によって光導波路から光を外へ結合することができる(the diffraction grating may couple light out of the light guide by diffraction)という「回折結合(diffractive coupling)」を生じることがあるので、この回折または回折的散乱は、「回折結合」と呼ばれることもある。回折格子は、また、回折によって(すなわち回折角で)、光を方向変更する、または光の角度を変化させる。特に、回折の結果として、回折格子を出る光は、一般に、回折格子に入射した光(すなわち入射光)の伝搬方向とは異なる伝搬方向を有する。回折による光の伝搬方向の変化を、本明細書では、「回折的方向変更」と呼ぶ。したがって、回折格子は、回折格子に入射した光を回折的に方向変更する回折フィーチャを含む構造であると理解することができ、光が光導波路から入射した場合に、回折格子は、回折により光を光導波路の外へ結合する(diffractively couple out)こともできる。
【0020】
さらに、本明細書の定義では、回折格子のフィーチャは、「回折フィーチャ」と呼ばれ、材料表面(すなわち2つの材料の間の境界)にある、材料表面内にある、材料表面上にある、のうちの1つまたは複数である可能性がある。この表面は、例えば光導波路の表面であることもある。回折フィーチャは、これらに限定されるわけではないが、表面の、表面中の、または表面上の、溝、リッジ、穴、およびバンプのうちの1つまたは複数など、光を回折させる様々な構造のうちのいずれを含むこともできる。例えば、回折格子は、材料表面中の複数の実質的に平行な溝を含むこともある。別の例では、回折格子は、材料表面から隆起する複数の平行なリッジを含むこともある。回折フィーチャ(例えば溝、リッジ、穴、バンプなど)は、これらに限定されるわけではないが、正弦波形プロフィル、方形プロフィル(例えばバイナリ型回折格子)、3角形プロフィル、および鋸歯形プロフィル(例えばブレーズド回折格子)のうちの1つまたは複数を含む、回折をもたらす様々な断面形状またはプロフィルのうちのいずれを有することもできる。
【0021】
本明細書に記載する様々な実施例によれば、回折格子(例えば、以下で述べるようにマルチビーム回折格子の回折格子)を利用して、光を光線として光導波路(例えば平板光導波路)から回折的に散乱させる、または外部結合することができる。特に、局所的に周期的な回折格子の、または局所的に周期的な回折格子によって提供される、回折角θ
mは、数式(1)で与えることができる。
【0022】
【数1】
ここで、λは、光の波長であり、mは、回折次数であり、nは、光導波路の屈折率であり、dは、回折格子のフィーチャ間の距離または間隔であり、θ
1は、回折格子への光の入射角である。簡潔にするために、数式(1)は、回折格子が光導波路の表面に隣接しており、光導波路の外部の材料の屈折率が1に等しい(すなわちn
out=1である)ものと仮定している。一般に、回折次数mは、整数で与えられる。回折格子によって生成される光線の回折角θ
mは、回折次数が正である(例えばm>0である)場合には、数式(1)で与えることができる。例えば、回折次数mが1に等しい(すなわちm=1である)ときには、1次の回折がもたらされる。
【0023】
図2は、本明細書に記載する原理による実施形態による、実施例における回折格子30を示す断面図である。例えば、回折格子30は、光導波路40の表面上に位置することがある。さらに、
図2は、入射角θ
1で回折格子30に入射する光線20を示している。光線20は、光導波路40内の誘導光(例えば誘導光線)である。また、
図2には、入射光線20の回折の結果として回折格子30によって回折的に生成されて外部に結合される外部結合光線50も示されている。外部結合光線50は、数式(1)で与えられる回折角θm(または本明細書では「主要角度方向」)を有する。回折角θmは、例えば回折格子30の回折次数「m」に対応することがある。
【0024】
本明細書の定義では、「マルチビーム回折格子」は、複数の光線を含む光を生成するバックライトまたはディスプレイの構造または要素である。さらに、マルチビーム回折格子によって生成される複数の光線の光線は、本明細書の定義では、互いに異なる主要角度方向を有する。特に、定義では、複数の光線のうちの1つは、その複数の光線のうちの別の光線とは異なる所定の主要角度方向を有する。さらに、この複数の光線は、ライトフィールドを表すことができる。例えば、複数の光線は、実質的に円錐形の空間領域に制限されることがある、またはその複数の光線の様々な主要角度方向を含む所定の角度幅を有することがある。したがって、これらの光線の合計の所定の角度幅(すなわち複数の光線)が、ライトフィールドを表すことができる。
【0025】
様々な実施形態によれば、この複数の光線の様々な光線の様々な主要角度方向は、回折格子のピッチまたは間隔と、マルチビーム回折格子に入射する光の伝搬方向に対するそれぞれの光線の原点におけるマルチビーム回折格子の回折フィーチャの配向または回転との組合せによって決定される。さらに、マルチビーム回折格子によって生成される光線は、本明細書の定義では、
図1Bを参照して上述したように、角度成分{θ、φ}で与えられる主要角度方向を有する。
【0026】
本明細書では、「コリメータ」は、光を
コリメートするように構成された実質的に任意の光学デバイスまたは装置として定義される。例えば、コリメータは、これらに限定されるわけではないが、コリメートミラーまたは反射器、コリメートレンズ、あるいはそれらの様々な組合せを含む可能性がある。いくつかの実施形態では、コリメート反射器を含むコリメータは、放物曲線または放物形を特徴とする反射表面を有することがある。別の例では、コリメート反射器は、成形放物線状反射器を含むことがある。「成形放物線状」とは、その成形放物線状反射器の湾曲した反射表面が、所定の反射特性(例えば
コリメーション度)を実現するように決定されるように「真の」放物曲線から逸脱していることを意味する。コリメートレンズは、球形表面(例えば両凸球面レンズ)を含むことがある。
【0027】
様々な実施形態によれば、コリメータによって提供される
コリメーション量は、実施形態によって所定の程度または量において変化することがある。さらに、コリメータは、2つの直交する方向(例えば垂直方向および水平方向)の一方または両方に
コリメーションを提供するように構成することができる。すなわち、コリメータは、いくつかの実施形態によれば、光の
コリメーションを提供する2つの直交する方向のうちの一方または両方の形状を含むことがある。
【0028】
本明細書では、「光源」は、光の源(例えば光を生成して発出するように構成された発光体)として定義される。例えば、光源は、起動時またはオン時に光を発出する発光ダイオード(LED)などの発光体を含むことがある。特に、本明細書では、光源は、これらに限定されるわけではないが、発光ダイオード(LED)、レーザ、有機発光ダイオード(OLED)、ポリマー発光ダイオード、プラズマ型発光体、蛍光灯、白熱灯、および実質的に任意のその他の光源などのうちの1つまたは複数を含む、実質的に任意の発光体である、またはそうした実質的に任意の発光体を含むことができる。光源によって生成される光は、色を有することもある(すなわち特定の波長の光を含むこともある)し、あるいはある範囲の波長(例えば白色光)を含むこともある。いくつかの実施形態では、光源は、複数の発光体を含むことがある。例えば、光源は、そのうちの少なくとも1つの発光体が、そのうちの少なくとも1つの他の発光体が生成する光の色または波長とは異なる色すなわち波長を有する光を生成する、複数の発光体のセットまたはグループを含むことがある。これらの異なる色は、例えば原色(例えば赤、緑、青)を含むことがある。
【0029】
さらに、本明細書で使用する冠詞「a」は、特許技術におけるその通常の意味、すなわち「1つまたは複数」の意味を有するものと意図されている。例えば、「マルチビーム回折格子」は、1つまたは複数のマルチビーム回折格子を意味し、したがって「このマルチビーム回折格子」も、本明細書では「この(1つまたは複数の)マルチビーム回折格子」を意味している。また、本明細書で「頂」、「底」、「上側」、「下側」、「上」、「下」、「前」、「後」、「第1」、「第2」、「左」、または「右」について言及している場合、それらはいずれも、本明細書では限定を意図しているわけではない。本明細書では、値に対して用いられるときの「約」という用語は、一般に、その値を生じるために使用される機器の許容範囲内を意味するか、あるいは、特に明示的に指定がない限り、プラスマイナス10%、プラスマイナス5%、またはプラスマイナス1%を意味する可能性がある。さらに、本明細書で使用される「実質的に」という用語は、大部分、ほぼ全て、全て、または約51%から約100%の範囲内の量を意味する。さらに、本明細書における実施例は、例示のみを目的としたものであり、限定のためではなく、説明のために示したものである。
【0030】
本明細書に記載する原理のいくつかの実施形態によれば、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイが提供される。
図3は、本明細書に記載する原理による実施形態による、実施例におけるヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100を示す断面図である。ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100は、シーンの複数のビューをマルチビュー画像すなわち表示マルチビュー画像として提供するように構成される。特に、この複数のビューは、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100によって、対応する複数の視像方向に提供される。
図3では、視像方向、すなわち複数のビューは、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100から延びる様々な角度方向を指す矢印102で示されている。
【0031】
様々な実施形態によれば、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100によって提供される複数のビューは、1次ビューのセットを含む。例えば、
図3の実線矢印102’は、1次ビューのセット、すなわち1次ビューの方向のセットを表すことができる。ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100によって提供される複数のビューは、さらに、2次視像方向に2次ビューを含む。例えば、
図3の破線矢印102’’は、2次ビューまたは2次視像方向を表すことができる。様々な実施形態によれば、本明細書の定義では、2次ビューは、1次ビューのセットの角度範囲に角度的に隣接するがその角度範囲の実質的に外にある、シーンの視点または視像方向を表す。特に、2次ビューは、本明細書の定義では、1次ビューセットによって画定される角度範囲、例えば
図3の実線矢印102’によって画定される角度範囲の外部にある視野角を有する視像方向に対応する。いくつかの実施形態では、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100は、複数の2次ビューを提供することができる。様々な実施形態によれば、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100は、1次ビューセットまたはビューの拡張セットのいずれかを選択的に提供するように構成される。ビューの拡張セットは、2次ビューと、1次ビューセットのビューのサブセットとを含む。
【0032】
図3を参照すると、図示のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100は、マルチビーム回折格子型バックライト110を含む。マルチビーム回折格子型バックライト110は、様々な主要角度方向を有する複数の光線112を提供するように構成される。特に、光線112は、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100の、すなわちヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100によって表示されるマルチビュー画像の、様々な視像方向に対応する、様々な主要角度方向を有することができる。例えば、
図3の矢印102は、マルチビーム回折格子型バックライト110によって提供される光線112、すなわち様々な視像方向に対応する光線112の様々な主要角度方向を表すこともできる。
【0033】
さらに、
図3に示すように、複数の光線112は、第1のセットの光線112’と、第2のセットの光線112’’とを含む。
図3では、第1のセットの光線112’は、実線矢印(すなわち実線矢印102’)を用いて示され、第2のセットの光線112’’は、破線矢印(すなわち破線矢印102’’)を用いて示されている。第1のセットの光線112’は、1次ビューのセットの視像方向に対応する主要角度方向を有する複数の光線の光線112を表す。第2のセットの光線112’’は、例えば、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100の様々な2次視像方向に対応する主要角度方向を有する複数の光線の光線112を表す。
【0034】
図3に示すヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100は、ライトバルブアレイ120をさらに含む。様々な実施形態では、これらに限定されるわけではないが、液晶ライトバルブ、電気泳動ライトバルブ、およびエレクトロウェッティングに基づくライトバルブのうち1つまたは複数を含む、様々な異なるタイプのライトバルブのいずれでも、ライトバルブアレイ120のライトバルブとして利用することができる。
【0035】
ライトバルブアレイ120は、複数の光線112を変調して、シーンのビューをマルチビュー画像として提供するように構成される。特に、ライトバルブアレイ120は、光線112を変調し、1次ビューセットと2次ビューを含む拡張ビューセットとを選択的に提供するように構成される。様々な実施形態によれば、1次ビューセットを提供するか、拡張ビューセットを提供するかの選択は、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100のユーザまたは見ている人の
場所に基づく。例えば、ビューセットの選択は、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100に対するユーザの頭部の
場所に基づくことがある。ビューセットの選択は、例えばプロセッサ(例えばグラフィックプロセッサユニット)またはそれに類する回路の指示下で、ライトバルブアレイ120のドライバ(例えばドライバ回路)によって制御することができる。
【0036】
図4Aは、本明細書に記載する原理による実施形態による、実施例におけるヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100を示す断面図である。
図4Bは、本明細書に記載する原理による実施形態による、別の実施例における
図4Aのヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100を示す断面図である。
図4Aおよび
図4Bに示すヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100は、例えば
図3について上述したように、マルチビーム回折格子型バックライト110と、ライトバルブアレイ120とを含む。特に、
図4Aは、ビュー102aの1次セットを選択的に提供するように構成されたヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100を示している。
図4Bは、ビュー102bの拡張セットを選択的に提供するように構成されたヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100を示している。
図4Aは、第1の
場所Aにいるユーザ(またはユーザの頭部)も示し、
図4Bは、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100に対して第2の
場所Bにいるユーザまたはユーザの頭部も示している。ユーザ(またはユーザの頭部)の
場所または
位置は、例えば本明細書でさらに説明するように、トラッキング可能である、またはトラッキングされている。
【0037】
図3を参照して上述したように、様々なビュー、すなわち1次ビューセット102aおよび拡張ビューセット102bの両方の視像方向は、矢印102で表してある。具体的には、
図4Aおよび
図4Bでは、実線矢印102’は、1次ビューセット102aのビューすなわち視像方向を表し、破線矢印102’’は、例えば拡張ビューセット102b内の2次ビューすなわち2次視像方向を表している。さらに、
図4A〜
図4Bでは、様々なビューまたは視像方向は、左から右に向かって順番に大きくなる文字で特定され、文字「a」は第1のビューを表し、文字「b」は第2のビューを表す、というようになっている。図示のように、
図4Aでは、1次ビューセット102aは、「a」から「h」で標識された8個のビューを含む。2次ビューは、
図4Bでは、このシーンの9番目のビューを表し、「i」で標識されている。
【0038】
図4Aに示すように、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100は、ユーザが第1の
位置Aに位置しているときには、1次ビューセット102a(すなわち「a」から「h」で標識された実線矢印102’)を選択的に表示することができる。第1の
位置Aは、例えば実質的にヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100の前方の領域とすることができる。ユーザが第1の
位置Aにいるときには、ユーザは、例えばヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100によって表示されるシーンの「通常」マルチビュー画像(例えば「3D画像」)を見ることができる。特に、「通常」または前向きマルチビュー画像は、
図4Aに示すように「a」から「h」で標識されたビューを含む1次ビューセット102aを含むように定義される。
【0039】
図4Bに示すように、ユーザが第2の
位置Bに位置しているときには、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100は、拡張ビューセット102bを選択的に表示することができる。特に、
図4Bは、第2の
位置Bに移動した、または位置しているユーザを示している。第2の
位置「B」は、
図4Bに示すように、例えば、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100の片側に実質的にずれている(すなわち「オフサイド」である)ことがある。拡張ビューセット102bは、図示のように、1次ビューセット102aのビューのうちの7つ(すなわち実線矢印102’「b」〜「h」)のサブセットと、ユーザのオフサイド
場所の方向の2次ビュー「i」(すなわち「i」で標識された破線矢印102’’)とを含む。拡張ビューセット102bは、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100に対するオフサイドユーザ
場所からマルチビュー画像のビューが見えやすくなるように、1次ビューのサブセット(すなわち「a」以外のサブセット)および2次ビューiの両方を含む。
【0040】
特に、本明細書に記載する原理によれば、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100は、2次ビュー(すなわち「b」から
位置Bの方向の「i」)を拡張ビューセット102bに含めた結果として、ユーザが第2の
位置Bにいるときに、1次ビューセット102aに存在する視点(
位置A)以外の視点(すなわち2次ビューで表される視点)からマルチビュー画像内のシーンの一部分を見ることができるようにする。さらに、本明細書に記載する原理によれば、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100によって提供される2次ビューを含めることにより、ユーザが例えばヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100の「通常」視野角または前向き視野角の実質的に外部の角度からマルチビュー画像を見るときに発生する可能性があるいわゆる「ジャンプ」を低減する、または実質的に解消することもできる。なお、本明細書では、ユーザの
場所を第1の
位置および第2の
位置に関連して説明しているが、本明細書に記載する原理の範囲は、ユーザ(すなわちユーザの頭部)の2つの
位置のみに限定されるわけではないことに留意されたい。本明細書の原理の範囲は、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100のユーザの任意数の異なる
位置を含むものとして意図されている。
【0041】
本明細書に記載する原理の様々な実施形態によれば、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100は、実質的にいかなるマルチビーム回折格子型バックライトでも含む
ことができる。特に、様々な実施形態によれば、マルチビュー画像の様々な視像方向に対応する様々な主要角度方向を有する複数の光線112を提供するように構成されたマルチビーム回折格子を有する任意のバックライトを使用することができる。例えば、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100は、以下で述べるように、光導波路と複数のマルチビーム回折格子とを含むマルチビーム回折格子型バックライト110を含むことがある。
【0042】
図5は、本明細書に記載する原理による実施形態による、実施例におけるマルチビーム回折格子型バックライト110を含むヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100を示す断面図である。
図5に示すマルチビーム回折格子型バックライト110は、互いに異なる主要角度方向を有する複数の外部結合光線112を(例えばライトフィールドとして)提供するように構成される。特に、示すように、提供される複数の外部結合光線112は、様々な実施形態によれば、マルチビーム回折格子型バックライト110から離れるように、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100のそれぞれの視像方向に対応する様々な主要角度方向に向けられる。さらに、上述のように、外部結合光線112をライトバルブアレイ120(やはり図示してある)のライトバルブを使用して変調して、3Dコンテンツを有する情報のマルチビュー画像としての表示を容易にすることができる。
【0043】
図5に示すように、マルチビーム回折格子型バックライト110は、光導波路114を含む。光導波路114は、いくつかの実施形態によれば、平板光導波路とすることができる。光導波路114は、光を、その光導波路114の長さに沿って、例えば太字矢印103で示す方向を有する誘導光104として誘導するように構成される。光導波路114は、例えば光学導波路として構成される誘電体材料を含むことができる。誘電体材料は、誘電体光学導波路を取り囲む媒質の第2の屈折率より大きい第1の屈折率を有することができる。この屈折率の差は、光導波路114の1つまたは複数の導波モードに応じて誘導光104の全反射を促進するように設定される。
【0044】
いくつかの実施形態では、光導波路114は、光学的に透明な誘電体材料の延展された実質的に平面状のシートを含むスラブまたは平板光学導波路とすることができる。様々な実施例によれば、光導波路114の光学的に透明な材料は、これらに限定されるわけではないが、様々な種類のガラス(例えばシリカガラス、アルミノケイ酸アルカリガラス、ホウケイ酸ガラスなど)のうちの1つまたは複数、1つまたは複数の実質的に光学的に透明なプラスチックまたはポリマー(例えばポリメタクリル酸メチルまたは「アクリルガラス」、ポリカーボネートなど)、あるいはそれらの組合せなど、様々な誘電体材料のうちのいずれかを含む、またはいずれかで構成することができる。いくつかの実施例では、光導波路114は、光導波路114の表面(例えば頂面および底面の一方または両方)の少なくとも一部分の上にクラッディング層(図示せず)をさらに含むことがある。いくつかの実施例によれば、クラッディング層を使用して、全反射をさらに促進することができる。
【0045】
さらに、いくつかの実施形態によれば、光導波路114は、光導波路114の第1の表面114’(例えば「前」面または側)と第2の表面114’’(例えば「後」面または側)の間で非ゼロ伝搬角で誘導光104を誘導するように構成される。誘導光104は、光導波路114の第1の表面114’と第2の表面114’’の間で非ゼロ伝搬角で反射または「バウンド」することによって伝搬することができる(ただし伝搬方向は太字矢印103が示す伝搬方向である)。いくつかの実施形態では、様々な色の光を含む誘導光104の複数の光線を、様々な色に固有の非ゼロ伝搬角のそれぞれ対応する角度で、光導波路114によって誘導することができる。なお、図示を簡潔にするために、非ゼロ伝搬角は、
図5には示していないことに留意されたい。
【0046】
本明細書で定義する「非ゼロ伝搬角」は、光導波路114の表面(例えば第1の表面114’または第2の表面114’’)に対する相対的な角度γである。さらに、非ゼロ伝搬角は、本明細書に記載する原理によれば、ゼロより大きく、かつ光導波路114内の全反射の臨界角未満である。例えば、誘導光104の非ゼロ伝搬角は、約10度から約50度の間とすることができ、いくつかの例では約20度から約40度の間とすることができ、あるいは約25度から約35度の間とすることができる。例えば、非ゼロ伝搬角は、約30度とすることができる。他の例では、非ゼロ伝搬角は、約20度、または約25度、または約35度とすることができる。さらに、特定の実施態様では、その非ゼロ伝搬角が光導波路114内の全反射の臨界角未満になるように選択されている限り、特定の非ゼロ伝搬角を(例えば任意に)選択することができる。
【0047】
光導波路114内の誘導光104は、非ゼロ伝搬角(例えば約30〜35度)で光導波路114に導入または結合する(coupled into)ことができる。レンズ、ミラーまたはそれに類する反射器(例えば傾斜コリメート反射器)、およびプリズム(図示せず)のうちの1つまたは複数によって、例えば非ゼロ伝搬角で光を誘導光104として光導波路114の入力端部に結合する(coupling … into)のを容易にすることができる。誘導光104は、光導波路114に結合される(coupled into)と、一般に入力端部から離れることができる方向(例えば
図5のx軸に沿った向きの太字矢印103で示す方向)に光導波路114に沿って伝搬する。
【0048】
さらに、光を光導波路114に結合することによって生成される誘導光104すなわち誘導光線は、いくつかの実施形態によれば、
コリメート光線であることがある。本明細書では、「
コリメート光」または「
コリメート光線」は、一般に、その放射線がその光線(例えば誘導光104)内で互いに実質的に平行である光線として定義される。さらに、
コリメート光線から発散または散乱する光放射線は、本明細書の定義では、
コリメート光線の一部とはみなされない。いくつかの実施形態では、マルチビーム回折格子型バックライト110は、上述のようにレンズ、反射器またはミラーなどのコリメータ(例えば傾斜コリメート反射器)を含んで、例えば光源からの光を
コリメートすることができる。いくつかの実施形態では、光源がコリメータを含む。光導波路114に供給される
コリメート光は、誘導される
コリメート光線である。
【0049】
図5に示すように、マルチビーム回折格子型バックライト110は、光導波路の全長に沿って互いに離間した複数のマルチビーム回折格子116をさらに含む。特に、この複数のマルチビーム回折格子のマルチビーム回折格子116は、有限の間隔で互いに分離されており、光導波路の全長に沿って個々の別個の要素を表している。すなわち、本明細書の定義では、この複数のマルチビーム回折格子のマルチビーム回折格子116は、有限(すなわち非ゼロ)の要素間距離(例えば有限の中心間距離)に従って互いに離間している。さらに、この複数のマルチビーム回折格子のマルチビーム回折格子116は、一般に交差したり重なり合ったりするなどして互いに接触しない。すなわち、この複数のマルチビーム回折格子の各マルチビーム回折格子116は、一般に、別個のものであり、他のマルチビーム回折格子116から分離している。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、この複数のマルチビーム回折格子のマルチビーム回折格子116は、1次元(1D)アレイまたは2次元(2D)アレイのいずれかで配置されることがある。例えば、この複数のマルチビーム回折格子116は、線形の1Dアレイとして配置することができる。別の例では、この複数のマルチビーム回折格子116は、長方形の2Dアレイまたは円形の2Dアレイとして配置することができる。さらに、このアレイ(すなわち1Dまたは2Dアレイ)は、いくつかの例では、一定または一様なアレイとすることができる。特に、マルチビーム回折格子116間の要素間距離(例えば中心間距離または間隔)は、アレイ全体にわたって実質的に一様または一定にすることができる。他の例では、マルチビーム回折格子116間の要素間距離は、アレイを横切る方向および光導波路114の全長に沿った方向の一方または両方で変化することもある。
【0051】
本明細書に記載する原理によれば、複数のマルチビーム回折格子のマルチビーム回折格子116は、誘導光104の一部分を複数の外部結合光線112として外部結合するように構成される。特に、
図5は、外部結合光線112を、光導波路114の第1の表面(または前面)114’から離れる向きに示す複数の発散する矢印として示している。
【0052】
図5に示すように、マルチビーム回折格子型バックライト110は、いくつかの実施形態では、光源118をさらに含むことがある。光源118は、非ゼロ伝搬角で光導波路114内を誘導される光を提供するように構成される。特に、光源118は、光導波路114の入口表面または端部(入力端部)に隣接して位置することがある。様々な実施形態では、光源118は、例えば上述したように、これらに限定されるわけではないが、1つまたは複数の発光ダイオード(LED)またはレーザ(例えばレーザダイオード)など、実質的に任意の光の源を含むことができる。いくつかの実施形態では、光源118は、特定の色で表される狭帯域スペクトルを有する実質的に単色の光を生成するように構成された発光体を含むことができる。特に、単色光の色は、特定の色空間または色モデル(例えば赤/緑/青(RGB)色モデル)の原色とすることができる。他の実施形態では、光源118は、実質的に広帯域または多色の光を提供するように構成された実質的に広帯域の光源であることもある。例えば、光源118は、白色光を提供することができる。いくつかの実施形態では、光源118は、異なる色の光を提供するように構成された複数の異なる発光体を含むことがある。これらの異なる発光体は、その異なる色の光のそれぞれに対応する、誘導光104の異なる色固有の非ゼロ伝搬角を有する光を提供するように構成することができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、光源118は、コリメータをさらに含むことがある。コリメータは、光源118の発光体のうちの1つまたは複数から実質的に
コリメートされていない光を受光するように構成されることがある。コリメータは、この実質的に
コリメートされていない光を
コリメート光に変換するようにさらに構成される。特に、いくつかの実施形態では、コリメータは、非ゼロ伝搬角を有し、所定の
コリメーション因子に従って
コリメートされた
コリメート光を提供することができる。さらに、様々な色の発光体を利用するときには、コリメータは、様々な色固有の非ゼロ伝搬角のうちの1つまたは両方を有し、かつ様々な色固有の
コリメーション因子を有する
コリメート光を提供するように構成することができる。コリメータは、上述のように、
コリメート光線を光導波路114に伝達して誘導光104として伝搬するようにさらに構成される。
【0054】
図6Aは、本明細書に記載する原理による実施形態による、実施例におけるマルチビーム回折格子116を備えるマルチビーム回折格子型バックライト110の一部分を示す断面図である。
図6Bは、本明細書に記載する原理による別の実施形態による、実施例におけるマルチビーム回折格子を備えるマルチビーム回折格子型バックライト110の一部分を示す断面図である。
図6Cは、本明細書に記載する原理による実施形態による、実施例におけるマルチビーム回折格子を含む
図6Aまたは
図6Bのいずれかのマルチビーム回折格子型バックライトの一部分を示す斜視図である。
図6Aに示すマルチビーム回折格子116は、限定ではなく例示を目的として、光導波路114の表面に溝を含む。
図6Bは、光導波路の表面から突出するリッジを含むマルチビーム回折格子116を示している。複数の光線112(すなわち回折的に外部結合された光線)および太字矢印103で示す方向に伝搬する誘導光104も、
図6Aから
図6Cに様々に示してある。
【0055】
図6Aから
図6Cに示すように、マルチビーム回折格子116は、チャープ回折格子である。特に、
図6Aから
図6Bに示すように、マルチビーム回折格子116の第1の端部116’における回折フィーチャ116aの方が、第2の端部116’’における回折フィーチャ116aより、互いに接近している。さらに、図示の回折フィーチャ116aの回折間隔dは、第1の端部116’から第2の端部116’’に向かって変化する。いくつかの実施例では、マルチビーム回折格子116のチャープ回折格子は、距離とともに線形に変化する回折間隔dのチャープを有する、または示すことがある。したがって、マルチビーム回折格子116のチャープ回折格子は、「線形チャープ」回折格子と呼ばれることもある。
【0056】
別の実施例(図示せず)では、マルチビーム回折格子116のチャープ回折格子は、回折間隔dの非線形チャープを示すことがある。チャープ回折格子を実現するために使用することができる様々な非線形チャープは、これらに限定されるわけではないが、指数チャープ、対数チャープ、あるいは別の実質的に不均一または無作為ではあるが単調に変化するチャープを含む。これらに限定されるわけではないが、正弦波形チャープあるいは三角形または鋸歯形チャープなどの非単調チャープを利用することもできる。これらのタイプのチャープのいずれかの組合せを、マルチビーム回折格子116で利用することもできる。
【0057】
例示を目的として
図6Cに示すように、マルチビーム回折格子116は、チャープであり、かつ湾曲している、光導波路114の表面内の、表面における、または表面上の回折フィーチャ116a(例えば溝またはリッジ)を含む(すなわち、マルチビーム回折格子116は、図示のように湾曲したチャープ回折格子である)。光導波路114内を誘導される誘導光は、
図6C(ならびに
図6Aおよび
図6B)の太字矢印103が示すように、マルチビーム回折格子116および光導波路114に対する入射方向を有する。また、光導波路114の表面でマルチビーム回折格子116から離れる向きの複数の外部結合光線112または発出光線112も示してある。図示の光線112は、複数の異なる所定の主要角度方向に発出される。特に、発出光線112のこれらの異なる所定の主要角度方向は、図示のように、方位角および仰角が両方とも異なる(例えばライトフィールドを形成する)。
【0058】
様々な実施形態によれば、回折フィーチャ116aの既定のチャープおよび回折フィーチャ116aの湾曲の一方または両方が、発出光線112のそれぞれの複数の異なる所定の主要角度方向の原因となることがある。例えば、回折フィーチャの湾曲により、マルチビーム回折格子116内の回折フィーチャ116aは、光導波路114内を誘導される誘導光104の入射方向に対して様々な配向を有することがある。特に、マルチビーム回折格子116内の第1の点または
場所における回折フィーチャ116aの配向は、誘導光の入射方向に対する別の点または
場所における回折フィーチャ116aの配向と異なることがある。外部結合光線112または発出光線112については、いくつかの実施形態によれば、光線112の主要角度方向{θ、φ}の方位角成分φは、光線112の原点における(すなわち入射誘導光104が外部結合される点における)回折フィーチャ116aの方位配向角φ
fによって決定される、またはこれに対応することがある。したがって、マルチビーム回折格子116内の回折フィーチャ116aの様々な配向により、少なくともそれぞれの方位成分φについては異なる主要角度方向{θ、φ}を有する様々な光線112が生成される。
【0059】
特に、回折フィーチャ116aの湾曲に沿った異なる点では、湾曲した回折フィーチャ116aに関連するマルチビーム回折格子116の「基礎回折格子」が、異なる方位配向角φ
fを有する。「基礎回折格子」とは、複数の湾曲していない回折格子の回折格子が重なり合って、マルチビーム回折格子116の湾曲した回折フィーチャ116aを生じることを意味する。したがって、湾曲した回折フィーチャ116aに沿った所与の点において、湾曲は、湾曲した回折フィーチャ116aに沿った別の点における方位配向角φ
fとは一般に異なる特定の方位配向角φ
fを有する。さらに、この特定の方位配向角φfが、その所与の点から発出される光線112の主要角度方向{θ、φ}の対応する方位成分φを
生じる。いくつかの実施例では、回折フィーチャ116a(例えば、溝、リッジなど)の湾曲は、円の一部を表すこともある。この円は、光導波路の表面と同一平面であることがある。他の実施例では、この湾曲は、例えば、光導波路の表面と同一平面の楕円または別の湾曲形状の一部を表すこともある。
【0060】
他の実施例(図示せず)では、マルチビーム回折格子116は、「区分的に」湾曲した回折フィーチャ116aを含むことがある。特に、回折フィーチャ116aが、それ自体は実質的に平滑または連続的な湾曲を示さないが、マルチビーム回折格子116内のその回折フィーチャ116aに沿った異なる点で、その回折フィーチャ116aが依然として誘導光104の入射方向に対して異なる角度に配向されていることがある。例えば、回折フィーチャ116aは、複数の実質的に直線的な区間を含む溝であり、各区間が、隣接する区間とは異なる配向を有することもある。また、様々な実施形態によれば、これらの区間の異なる角度が、湾曲(例えば円の一部)に近いこともある。さらに他の実施例では、回折フィーチャ116aは、特定の湾曲(例えば、円、楕円、または双曲線型の湾曲)に近づくことなく、単にマルチビーム回折格子116内の異なる
場所において誘導光の入射方向に対して異なる配向を有するだけであることもある。
【0061】
いくつかの実施形態では、誘導光の非ゼロ伝搬角が、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100の複数の光線112の発出パターンを調節するように設定することができる。特に、非ゼロ伝搬角は、発出パターンをユーザに向かって傾斜させる(または選択的に向ける)ように設定することができる。例えば、第1の非ゼロ伝搬角は、第1の
位置Aのユーザに向かって実質的に向けられた光線112の発出パターンを提供するように構成することができ、第2の非ゼロ伝搬角は、例えば
図4Aから
図4Bを参照して上述したように、第2の
位置Bのユーザに向かって発出パターンを向けるように構成することができる。
図7Aから
図7Bは、ヘッドトラッキング発出パターンの別の例を与える図である。
【0062】
図7Aは、本明細書に記載する原理による実施形態による、実施例におけるヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100を示す断面図である。
図7Bは、本明細書に記載する原理による実施形態による、別の実施例における
図7Aのヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100を示す断面図である。
図7Aおよび
図7Bは、マルチビームバックライトの光導波路内の誘導光の異なる非ゼロ伝搬角に基づく外部結合光線112の異なる発出パターンの例を示している。
図7Aから
図7Bでは、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100は、マルチビーム回折格子型バックライト110、およびライトバルブアレイ120を含む。いくつかの実施形態では、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100は、
図5を参照して上述したヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100と実質的に同様である。例えば、マルチビーム回折格子型バックライト110は、
図7Aから
図7Bに示すように、破線で描写する発出パターンを有する複数の光線112をライトバルブアレイ120に提供するように構成される。
【0063】
図7Aでは、ユーザは、ライトバルブアレイ120またはヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100の中心の実質的に前方にある(すなわちその中心に対して中心に位置する)第1の
位置Aに位置している。ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100からの発出パターンは、第1の
位置Aのユーザを実質的に(例えば傾斜なしで)指すように構成される。例えば、マルチビーム回折格子型バックライト110の光導波路114内の誘導光104は、第1の非ゼロ伝搬角γ
1で伝搬して、
図7Aに示すように、発出パターンを第1の
位置Aに向ける、または方向付けることができる。
【0064】
図9Bでは、ユーザは、
位置Aと比較してライトバルブアレイ120またはヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100の中心の片側に(例えば傾斜角で)実質的にずれている(すなわちその中心に対して中心に位置していない)第2の
位置に移動している、または位置している。
図9Bに示す複数の光線112の発出パターンは、第1の
位置Aに関する発出パターンと比較して傾斜しているので、第2の
位置Bのユーザを実質的に指すように構成される。この例では、光導波路114内の誘導光104は、第2の非ゼロ伝搬角γ
2で伝搬して、
図7Bに示すように、第2の
位置Bに向かって発出パターンに傾斜を与えることができる。
【0065】
様々な実施形態では、第1の
位置Aに向けられた発出パターンは、1次ビューセット(すなわち誘導光の第1の非ゼロ伝搬角γ
1によって提供される1次ビューセット)に対応する光線112’の第1のセットを含む。さらに、第2の
位置Bに向かって傾斜した傾斜発出パターンは、1次ビューセットに対応する光線112’の第1のセットのサブセットと、2次ビュー(すなわち誘導光の第2の非ゼロ伝搬角γ
2によって提供される2次ビュー)に対応する光線112’’とを含むことができる。この傾斜発出パターンは、上述の、拡張ビューセットを表すことができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、マルチビーム回折格子型バックライト110は、誘導光104の伝搬方向(すなわち太字矢印103)に対して直交する光導波路114を通る方向の光に対して実質的に透明になるように構成される。特に、いくつかの実施形態では、光導波路114および離間した複数のマルチビーム回折格子116が、光が光導波路114、具合的には第1の表面114’および第2の表面114’’の両方を通過することを可能にする(例えば
図5参照)。透明度は、少なくとも部分的には、マルチビーム回折格子116の比較的小さなサイズ、およびマルチビーム回折格子116の比較的大きな要素間間隔の両方によって高めることができる。
【0067】
本明細書に記載する原理のいくつかの実施形態によれば、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステムが提供される。このヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステムは、シーンを表す3D画像またはマルチビュー画像を提供する、または「表示する」ように構成される。特に、マルチビュー画像は、そのマルチビュー画像に関連付けられた複数の異なる「ビュー」として提供される。この異なるビューが、例えば、表示されているマルチビュー画像中に情報の「裸眼」(例えば自動立体視)表現を提供することができる。さらに、様々な実施形態によれば、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステムのユーザの異なる
場所または
位置(例えば頭部の
場所)に対して異なるビューのセットを提供することができる。
【0068】
図8は、本明細書に記載する原理による実施形態による、実施例におけるヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム200を示すブロック図である。ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム200は、異なる視像方向の異なるビューに従ってマルチビュー画像を表示するように構成される。特に、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム200から発出される光線を使用して、マルチビュー画像を表示し、この光線は、異なるビューのピクセル(すなわち異なるビューピクセル)に対応することができる。異なるビュー、すなわち異なる視像方向は、
図8では、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム200から出る矢印202として示してある。以下で述べるように、矢印202は、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム200から発出される光線も表している。
【0069】
図8に示すヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム200は、マルチビュー回折格子型マルチビューディスプレイ210を含む。マルチビーム回折格子型マルチビューディスプレイ210は、シーンの複数のビュー(例えば矢印202)をマルチビュー画像として提供するように構成される。様々な実施形態によれば、この複数のビューは、シーンの1次ビューのセットと、この1次ビューセットに角度的に隣接するシーン視点
を表す2次ビューとを含む。本明細書で述べているように、2次ビュー(またはいくつかの実施形態では複数の2次ビュー)を1次ビューセットのビューのサブセットと組み合わせて、拡張ビューセットを提供することができる。さらに、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム200の1次ビューセット、2次ビューセット、および拡張ビューセットは、いくつかの実施形態によれば、上述したヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100に関連して上述した対応するビューセットおよびビューと実質的に同様であることがある。
図8では、1次ビューは、実線矢印202’で示してあり、2次ビューは、破線矢印202’’で示してある。
【0070】
いくつかの実施形態では、マルチビーム回折格子型マルチビューディスプレイ210は、いくつかの実施形態によれば、上述のヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100と実質的に同様であってよい。例えば、マルチビーム回折格子型マルチビューディスプレイ210は、複数のビューの異なる視像方向に対応する異なる主要角度方向を有する複数の発出または回折外部結合された光線を提供するように構成されたマルチビーム回折格子型バックライトを含むことができる。マルチビーム回折格子型マルチビューディスプレイ210は、例えば複数の外部結合光線を変調して複数のビューを提供するように構成されたライトバルブアレイをさらに含むこともある。さらに、マルチビーム回折格子型マルチビューディスプレイ210は、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100に関連して上述した光源118などの光源をさらに含むこともある。
【0071】
これらの実施形態のいくつかによれば、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム200のマルチビーム回折格子型バックライトは、上述のマルチビーム回折格子型バックライト110と実質的に同様であってよい。例えば、マルチビーム回折格子型バックライトは、光導波路の長さに沿った伝搬方向に光を誘導するように構成された光導波路を含むことがあり、光導波路の長さに沿って互いに離間したマルチビーム回折格子のアレイをさらに含むこともある。マルチビーム回折格子アレイのマルチビーム回折格子は、誘導光の一部分を、異なる主要角度方向を有する複数の外部結合光線として光導波路から回折外部結合するように構成することができる。マルチビーム回折格子アレイのマルチビーム回折格子は、マルチビーム回折格子116と実質的に同様であってよく、光導波路は、例えば光導波路114と実質的に同様であってよい。
【0072】
再度
図8を参照すると、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム200は、ヘッドトラッカ220をさらに含む。ヘッドトラッカ220は、マルチビーム回折格子型マルチビューディスプレイ210に対するユーザの
位置を決定するように構成される。第1の決定された
位置では、マルチビーム回折格子型マルチビューディスプレイ210は、1次ビューのセットを提供するように構成される。さらに、第2の決定された
位置では、マルチビーム回折格子型マルチビューディスプレイ210は、2次ビューと、1次ビューセットのビューのサブセットとを含む拡張ビューセットを提供するように構成される。
図8に示すように、ヘッドトラッカ220は、一点鎖線で示すマルチビーム回折格子型マルチビューディスプレイ210の前方の領域222のユーザ(例えばユーザの頭部)の
場所をトラッキングするように構成することができる。「の前方」は、マルチビーム回折格子型マルチビューディスプレイ210の発光表面または画像ビュースクリーンに隣接していることを意味する。
【0073】
様々な実施形態によれば、ヘッドトラッキング(すなわちユーザの
位置のトラッキング)を提供する様々なデバイス、システム、および回路のうちのいずれでも、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム200のヘッドトラッカ220として利用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ヘッドトラッカ220は、マルチビーム回折格子型マルチビューディスプレイ210のビュースクリーンに対してユーザの画像を取り込むように構成されたカメラを含むことがある。さらに、ヘッドトラッカ220は、マルチビーム回折格子型マルチビューディスプレイ210のビュースクリーンに対して取り込まれた画像内のユーザの
位置を決定するように構成された画像プロセッサ(または画像プロセッサとしてプログラムされた汎用コンピュータ)を含むこともある。決定された
位置は、例えば、上述した第1の決定された
位置Aおよび第2の決定された
位置Bのうちの一方に対応することもある。マルチビーム回折格子型マルチビューディスプレイ210のビュースクリーンに対するユーザの
位置は、これらに限定されるわけではないが、例えば画像認識またはパターンマッチングなどの様々な技術を使用して、取り込まれた画像から画像プロセッサが決定することができる。ヘッドトラッカ220の出力を使用して、マルチビーム回折格子型マルチビューディスプレイ210の動作(例えばライトバルブアレイによる光線の変調)を修正することができる。例えば、決定されたユーザの
位置を、マルチビーム回折格子型マルチビューディスプレイ210のプロセッサおよびライトバルブドライバ(例えばドライバ回路)のうちの一方または両方に提供して、マルチビーム回折格子型マルチビューディスプレイ210からの発出パターンをユーザの
位置に対応するように調整することもできる。ヘッドトラッカ220の実施態様のその他の例は、これらに限定されるわけではないが、KINECT(登録商標)オブジェクトトラッキングシステムなど、様々な2次元(2D)および3次元(3D)オブジェクトトラッキングシステムのうちの任意のものを含み得る。KINECT(登録商標)は、米国ワシントン州RedmondのMicrosoft社の登録商標である。
【0074】
上述のように、いくつかの実施形態では、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム200のマルチビーム回折格子型マルチビューディスプレイ210は、光源をさらに含むこともある。光源は、マルチビーム回折格子型マルチビューディスプレイ210のための光の源として作用するように構成される。特に、これらの実施形態のいくつか(
図8には図示せず)では、光源は、非ゼロ伝搬角で光導波路に光を提供するように構成される。いくつかの実施形態では、光源は、ヘッドトラッカ220からの入力に応答して、マルチビーム回折格子型マルチビューディスプレイ210から発出される光の発出パターンをユーザに向かって傾斜させるようにさらに構成されることもある。発出パターンの傾斜、すなわち発光の「傾斜角」は、これらの実施形態では、ヘッドトラッカ220によって決定されたユーザの
位置に対応する。例えば、光源は、マルチビーム回折格子型バックライトの光導波路を照明するために使用される光源であることもある。光源から提供される光導波路内を伝搬する光の角度が、マルチビーム回折格子型バックライトから発出される光線の傾斜角を決定することもある。この発出角の傾斜により、いくつかの実施形態によれば、2次ビューの生成を容易にする、または強化することもできる。
【0075】
本明細書に記載する原理の他の実施形態によれば、ヘッドトラッキングを利用したマルチビュー表示動作の方法が提供される。
図9は、本明細書に記載する原理による実施形態による実施例におけるヘッドトラッキングを利用したマルチビュー表示動作の方法300を示す流れ図である。
図9に示すように、ヘッドトラッキングを利用したマルチビュー表示動作の方法300は、マルチビューディスプレイを使用してシーンの複数のビューを提供するステップを含む。様々な実施形態によれば、この複数のビューは、シーンの1次ビューのセットと、その1次ビューセットに角度的に隣接するシーン視点を表す2次ビューとを含む。
【0076】
複数のビューを提供するステップ(310)で使用されるマルチビューディスプレイは、光導波路に光学的に結合されたマルチビーム回折格子アレイを含む。いくつかの実施形態では、マルチビューディスプレイは、いくつかの実施形態でヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム200に関連して上述したマルチビーム回折格子型マルチビューディスプレイ210と実質的に同様であってもよい。さらに、いくつかの実施形態では、マルチビーム回折格子アレイのマルチビーム回折格子は、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100に関連して上述したマルチビーム回折格子116と実質的に同様であってもよい。例えば、マルチビーム回折格子は、チャープ回折格子を含むこともある。マルチビーム回折格子は、例えば、湾曲した回折フィーチャを有することもある。
【0077】
いくつかの実施形態では、マルチビューディスプレイは、さらに光導波路を含む。これらの実施形態では、複数のビューを提供するステップ(310)は、光導波路の長さに沿った伝搬方向に光を誘導するステップを含むことがある。光導波路は、例えば平板光導波路とすることができる。これらの実施形態では、マルチビーム回折格子アレイは、光導波路に光学的に結合される。複数のビューを提供するステップ(310)は、マルチビーム回折格子を使用して誘導光の一部分を光導波路の外部に回折的に結合して、マルチビューディスプレイの異なる視像方向にそれぞれ対応する異なる主要角度方向を有する複数の外部結合光線を提供するステップをさらに含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、複数のビューを提供するステップ(310)は、複数のライトバルブを使用して外部結合光線を変調して、シーンの複数のビューをマルチビュー画像として提供するステップをさらに含む。例えば、マルチビューディスプレイは、複数のライトバルブをさらに含むこともある。ライトバルブは、例えば、マルチビーム回折格子アレイを備える光導波路の表面に隣接してアレイ状に配列することができる。ライトバルブは、いくつかの実施形態では、上述したヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100のライトバルブアレイ120のライトバルブと実質的に同様であってもよい。いくつかの実施形態では、この複数のライトバルブのライトバルブは、例えば液晶ライトバルブを含むこともある。
【0079】
図9に示すように、ヘッドトラッキングを利用したマルチビュー表示動作の方法300は、マルチビューディスプレイに対するユーザの
位置を決定するステップ(320)と、決定したユーザの
位置に応じてユーザに対して表示または提供するビューセットを選択するステップとをさらに含む。様々な実施形態によれば、1次ビューセットは、決定されたユーザの第1の
位置に対して選択され、拡張ビューセットは、決定されたユーザの第2の
位置に対して選択される。本明細書の定義では、拡張ビューセットは、2次ビューと、1次ビューセットのビューのサブセットとを含む。マルチビューディスプレイは、ヘッドトラッキングを利用したマルチビュー表示動作の方法300による決定した
位置およびビュー選択に従って、1次ビューセットおよび拡張ビューセットを提供する。
【0080】
換言すれば、マルチビュー表示動作の方法300は、マルチビューディスプレイに対する(あるいはマルチビューディスプレイのスクリーン、またはマルチビューディスプレイによって提供されるビューに対する)ユーザの
位置を決定する(320)。マルチビュー表示動作の方法300は、ユーザが第1の
位置にいると決定されるか第2の
位置にいると決定されるか(320)に応じて、1次ビューセットまたは拡張ビューセットを選択的に提供する。特に、ユーザが第1の
位置(例えばマルチビューディスプレイの前方)にいると決定されたときには、マルチビューディスプレイは、1次ビューのセットを提供する。さらに、ユーザが第2の
位置にいる(例えばマルチビューディスプレイの片側に実質的にずれている)と決定された(320)ときには、マルチビューディスプレイは、2次ビューを含む拡張ビューセットを提供する。したがって、マルチビューディスプレイは、決定(320)したユーザの
位置に応じて1次ビューセットまたは拡張ビューセットを含むように提供(310)した複数のビューを適合または調整する。
【0081】
いくつかの実施形態では、ユーザの
位置を決定するステップ(320)は、ヘッドトラッカを使用することを含む。これらの実施形態のいくつかでは、ヘッドトラッカは、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム200のヘッドトラッカ220と実質的に同様であってよい。例えば、ヘッドトラッカは、カメラおよび画像プロセッサを含むことがある。この例では、ユーザの
位置を決定するステップ(320)は、カメラを用いてユーザの画像を取り込むステップと、画像プロセッサを用いて取り込んだ画像内のユーザの
場所を確立するステップとを含むことがある。様々な実施形態によれば、この確立される
場所が、決定(320)される
位置である。例えば、確立される
場所は、決定された第1の
位置および決定された第2の
位置のうちの一方に対応することがある。
【0082】
いくつかの実施形態(図示せず)では、マルチビュー表示動作の方法300は、マルチビューディスプレイから発出される光の発出パターンを、ユーザの決定された
位置に対応するように傾斜させる(または選択的に向ける)ステップをさらに含む。発出パターンは、例えば1次ビューセットまたは拡張ビューセットなど、特定のビューのセットに対応する光線を含むことがある。発出パターンは、決定された第1の
位置のユーザに実質的に向くように、または決定された第2の
位置のユーザに実質的に向くように傾斜させることができる。いくつかの実施形態では、発出パターンの傾斜は、マルチビューディスプレイの光導波路内の光の非ゼロ伝搬角を選択的に制御することによって行うことができる。例えば、第1の非ゼロ伝搬角は、第1の
位置のユーザに実質的に向けられた光線の発出パターンを提供することがあり、第2の非ゼロ伝搬角は、第2の
位置のユーザに実質的に向蹴られた発出パターンを提供することがある。上述のように、ユーザの
位置を決定する(320)ことができ、したがって、非ゼロ伝搬角の制御または選択は、例えばヘッドトラッカの出力を用いて行うことができる。さらに、いくつかの実施形態では、マルチビューディスプレイから発出される光の発出パターンを傾斜させるステップは、光源およびコリメータの一方または両方を使用して、光をそれぞれの非ゼロ伝搬角で光導波路に誘導光として提供することを含む。いくつかの例では、光源は、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ100に関連して上述した光源118と実質的に同様である。
【0083】
以上、マルチビーム回折格子型ディスプレイを利用して1次ビューのセットおよび拡張ビューセットの両方をユーザに提供する、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイ、ヘッドトラッキングマルチビューディスプレイシステム、およびヘッドトラッキングを利用したマルチビュー表示動作の方法の実施例および実施形態について説明した。上述の実施例は、単に本明細書に記載する原理を表現する多数の具体的な実施例のうちの一部の例示に過ぎないことを理解されたい。当業者なら、以下の特許請求の範囲によって定義される範囲を逸脱することなく、多数のその他の構成を容易に考案することができることは明らかである。