(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851375
(24)【登録日】2021年3月11日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】移動中の自動車両の電池の非接触充電方法および対応するシステム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20210322BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20210322BHJP
H02J 50/90 20160101ALI20210322BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20210322BHJP
B60L 53/122 20190101ALI20210322BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20210322BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J50/40
H02J50/90
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
B60L53/122
H02M7/48 A
【請求項の数】24
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-523399(P2018-523399)
(86)(22)【出願日】2016年10月24日
(65)【公表番号】特表2019-502342(P2019-502342A)
(43)【公表日】2019年1月24日
(86)【国際出願番号】FR2016052755
(87)【国際公開番号】WO2017081382
(87)【国際公開日】20170518
【審査請求日】2019年7月8日
(31)【優先権主張番号】1560694
(32)【優先日】2015年11月9日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ルドー, セルジュ
(72)【発明者】
【氏名】ケリエレ, アントワーヌ
【審査官】
早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−143131(JP,A)
【文献】
特表2015−532080(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/053108(WO,A1)
【文献】
特開2006−209983(JP,A)
【文献】
特表2015−512235(JP,A)
【文献】
特開2012−182975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J50/00−50/90
H02J7/00−7/12
H02J7/34−7/36
H02J5/00
H02M1/00−1/44
H02M7/42−7/98
H04B5/00−5/06
H05B6/12
H05B6/48−6/50
H05B6/66−6/68
H05B11/00
B60L1/00−3/12
B60L7/00−13/00
B60L15/00−58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振回路とインバータ(OND)とを備える一次回路(CP)から自走車両(VEH)の電池(BAT)の非接触充電用に設計された二次回路(CS)に電力を伝達する方法であって、電気出力が、地中に配設された一次コイル(BP)と、前記車両(VEH)に搭載されて運ばれ、前記電池(BAT)に接続された二次コイル(BS)との間の誘導によって伝達され、前記方法が、
前記一次コイル(BP)をDC電源バス(BAC)に接続する前記一次回路(CP)の前記インバータ(OND)のスイッチングセル(K1、K2、K3およびK4)のスイッチング周波数を制御するステップ(E6)と、
前記一次コイル中の電流(Ie)の測定ステップ(E2)と、
前記電流(Ie)の信号のフィルタリングステップ(E3)と、
前記電流(Ie)と前記一次回路の前記共振回路の端子間の電圧(Ve)との間の位相シフト(φM)の測定ステップ(E4)と、
予め測定した前記位相シフト(φM)を使用する前記一次回路(CP)の閉ループ周波数制御ステップ(E5)と
を含む方法において、
前記一次回路(CP)の前記スイッチング周波数の初期化ステップ(E1)であって、前記スイッチング周波数が初期スイッチング周波数になるように初期化し、前記初期化されたスイッチング周波数で前記スイッチングセルを制御することにより、前記電流(Ie)の前記信号の所定の半周期にわたる前記位相シフト(φM)の符号を固定するように設計された、前記一次回路(CP)の前記スイッチング周波数の初期化ステップ(E1)
をさらに含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記方法の前記ステップが、前記電流(Ie)の前記信号の各周期において実行されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィルタリングステップ(E3)が、
高周波アナログフィルタリングステップと、
前記フィルタリングされた信号の符号の変化の検出ステップと
を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記位相シフト(φM)の測定が、前記所定の半周期内で実行されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記位相シフト(φM)の測定が、前記所定の半周期内の前記一次回路(CP)の前記電流(Ie)の符号の変化(D0)によってトリガされることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記位相シフト測定ステップ(E4)が、前記一次回路(CP)の発電機モードにおける動作領域内で実行されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記位相シフト(φM)の前記測定が、前記電流(Ie)の前記符号の変化(D0)と前記電圧のスイッチングの次の立ち上がりエッジとの間の期間の測定から生じることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記初期化ステップ(E1)において、前記一次回路の前記セル(K1、K2、K3およびK4)の前記スイッチング周波数が、所定の最大共振周波数よりも高い周波数で印加されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記一次回路(CP)の前記閉ループ周波数制御ステップ(E5)が、前記位相シフト測定ステップ(E4)から生じる前記測定された位相シフト(φM)の関数として前記一次回路の前記セル(K1、K2、K3およびK4)の次のスイッチング周波数を計算するステップを含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記一次回路の前記セル(K1、K2、K3およびK4)の前記次のスイッチング周波数を計算する前記ステップが、前記セルの電流スイッチング周波数と、前記位相シフト測定ステップ(E4)から生じる前記位相シフトの角度の正弦を乗じた利得とを合計することであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記電力の伝達が、所定の周波数閾値において停止されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記電力の伝達が、所定の電流閾値において停止されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
一次回路(CP)を備える、電力を伝達するシステムであって、前記一次回路(CP)が、共振回路とインバータ(OND)とを備え、前記システムは、地中に配設された前記共振回路の一次コイル(BP)と、車両(VEH)に搭載されて運ばれ、前記車両(VEH)の電池(BAT)に接続された二次コイル(BS)との間の誘導によって電気出力を伝達するように設計され、前記システムは、
前記一次コイル(BP)をDC電源バス(BAC)に接続する前記一次回路(CP)の前記インバータ(OND)のスイッチングセル(K1、K2、K3およびK4)のスイッチング周波数を制御する手段と、
前記一次コイルの電流(Ie)を測定する手段と、
前記電流(Ie)の信号をフィルタリングするフィルタリング手段と、
前記電流(Ie)と前記共振回路の端子間の電圧(Ve)との間の位相シフト(φM)を測定する位相シフト測定手段と、
前記位相シフト測定手段によって測定された前記位相シフト(φM)を使用する前記一次回路(CP)の閉ループ周波数制御の手段と
を備える、システムにおいて、
前記一次回路(CP)の前記スイッチング周波数を初期化する手段であって、前記スイッチング周波数が初期スイッチング周波数になるように初期化し、前記初期化されたスイッチング周波数で前記スイッチングセルを制御することにより、前記電流(Ie)の前記信号の所定の半周期にわたる前記位相シフト(φM)の符号を固定するように設計された、前記一次回路(CP)の前記スイッチング周波数を初期化する手段
をさらに備えることを特徴とする、システム。
【請求項14】
前記システムの前記手段が、前記電流(Ie)の前記信号の各周期において作動することを特徴とする、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記フィルタリング手段が、
高周波アナログフィルタリング手段と、
前記フィルタリングされた信号のヒステリシスによる比較手段と
を備えることを特徴とする、請求項13または14に記載のシステム。
【請求項16】
前記位相シフト測定手段(φM)が、前記所定の半周期内で作動することを特徴とする、請求項13から15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記位相シフト測定手段(φM)が、前記所定の半周期内で前記一次回路(CP)の前記電流(Ie)の符号の変化(D0)を検出する手段によって作動されることを特徴とする、請求項13から16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記位相シフト測定手段(φM)が、前記一次回路(CP)の発電機モードにおける動作領域において作動することを特徴とする、請求項13から17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記位相シフト測定手段(φM)が、前記電流(Ie)の前記符号の変化(D0)と前記電圧のスイッチングの次の立ち上がりエッジとの間の期間を測定する手段を使用することを特徴とする、請求項13から18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記一次回路の前記セル(K1、K2、K3およびK4)の前記スイッチング周波数を初期化する前記手段が、所定の最大共振周波数よりも高い周波数で前記周波数を初期化するように設計されることを特徴とする、請求項13から19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記一次回路(CP)の閉ループ周波数制御の前記手段が、前記一次回路の前記セル(K1、K2、K3およびK4)の次のスイッチング周波数を計算する手段を備え、前記計算する手段の入力が、前記位相シフト測定手段から生じる前記位相シフト(φM)であることを特徴とする、請求項13から20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記一次回路の前記セル(K1、K2、K3およびK4)の前記次のスイッチング周波数を計算する前記手段が合計手段を備え、前記合計手段の入力が、前記セルの電流スイッチング周波数、ならびに、利得と、前記位相シフト測定手段(φM)から生じる前記位相シフトの角度に適用された正弦関数との乗算の結果であることを特徴とする、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
所定の周波数閾値において前記電力の伝達を停止させる手段を備えることを特徴とする、請求項13から22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
所定の電流閾値において前記電力の伝達を停止させる手段を備えることを特徴とする、請求項13から22のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車および電気の分野に関する。より正確には、本発明は、自走車両の電池の非接触充電方法に関し、電気エネルギーは、地中に配設された一次コイルと、車両に搭載されて運ばれ、変換段階を介して車両の電池に接続された二次コイルとの間の誘導によって伝達される。
【背景技術】
【0002】
非接触充電方法により、整流段階を介して駆動電池に接続された、少なくとも1つの二次コイルを装備した車両は、一次コイルおよび関連するインバータがその表面の下に配置されている道路上を車両が駆動される間、充電されることが可能になる。
【0003】
車両が移動しているときの非接触充電の現在の解決策は、その実施を簡単にし、長い道路への供給を行う単一のインバータに対処するため、非常に長いループに基づくものである。これらのデバイスは、それを従来の道路使用者の車両に適用することが充電の専用レーンを要するという主要な欠点を提示するので、指定レーンまたは軌道を走行する長い車両(例えばバス、路面電車)に特に適している。実際に、こうしたデバイスは、健康および安全性リスクを提示することがある、一次ループ自体の抵抗加熱による損失および車両の外側の高レベルの放射とあいまって、放射界が車両の駆動系部分を加熱することがあるループの長さが非常に大きいことに起因した高い損失を示す。したがって、小さなループの原理は、非接触充電だけの専用ではない道路レーンで駆動される民生用および実用電気自動車用の非接触充電の開発の枠組みにおいて好ましい。これらの制約は、非接触充電システムの一次回路が、誘導によって再充電することができないものを含む、任意の種類の道路車両と共存できることを要する。別の要件は磁気放射に関し、この磁気放射は、磁界放射限界を満足させるために、また、シャーシの金属部分において誘導されたフーコー電流のため充電の効率を大幅に低下させる磁界に、シャーシの金属部分をさらすことを回避するために、車両の下部シャーシと地面との間の限定された容積内に依然として抑えなければならない。最終要件は、システムが動的モードおよび静的モードの両方において非接触充電が可能になることである。これらの要求を満足させるために、小さなループは、誘導再充電システムを装備した車両がその上にあるときのみ給電されなければならず、経過時間、したがって、ループの上の電力供給の時間をわずか20msまで低減することができる、高速の高速道路上を含む、満足のいく効率を保証するために、ループは、一次コイルと二次コイルとの間に十分な動的結合を提供することができなければならない。
【0004】
小さなループを使用する非接触充電システムはすでに知られているが、上記の要件にまだ適合しない。したがって、サーペンタイン(登録商標)システムは、位置センサを用いて、車両の下に位置している地中の一次ループを識別し、次いで、前記一次ループは、継電器を介して電源に接続される。このシステムは、おおよそ20km/hの低速度だけで動作し、結合効率には有利でない結合の変動に適応する変動率をまったく有さない。
【0005】
従来技術から、以下の文献が知られている。文献FR2988234B1は、「トラッキング」のデジタル手段を使用した非接触充電方法を開示しており、「トラッキング」とは、所与の位置に対する最良の伝達を得るための回路の共振周波数の探索と定義される。「トラッキング」の目的は、電流と、一次回路の電圧の第1高調波との間のゼロ位相シフトによって電力の最適伝達を保証することにある。知られている解決策は、トランジスタのスイッチングによる損失を大幅に低減するために、結合器の磁気回路における鉄損がないことによる高い品質係数を有する共振回路を利用することである。このために、いくつかの代替案が存在する。すなわち、トランジスタの作動およびターンオフがゼロ電流で起きる共振周波数での動作、または共振周波数よりも高い周波数での動作、すなわち、ターンオフ時に損失がある「ゼロ電圧スイッチング」を表すZVS、または共振周波数よりも低い周波数での動作、すなわち、作動時に損失がある「ゼロ電流スイッチング」を表すZCSのいずれかである。この文献に説明される「トラッキング」は、とりわけ、位相シフトを計算するステップと、位相シフトの符号を判定するステップと、いくつかの電気的期間にわたって起きる増分戦略を利用する閉ループ制御ステップとを含む。したがって、この「トラッキング」手段は、電流と電圧との間の位相シフトの制御がより高速である必要がある移動中の充電に必要な動的性能に適合しない。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的の1つは、非接触充電専用でない道路レーンにおいて駆動される民生用および実用電気自動車用の非接触充電方法を提供することによって従来技術の欠点を、少なくとも部分的に克服することにある。
【0007】
このために、本発明は、共振回路とインバータとを備える一次回路から自走車両の電池の非接触充電用に設計された二次回路に電力を伝達する方法を提供し、電気出力は、地中に配設された一次コイルと、前記車両に搭載されて運ばれ、前記電池に接続された二次コイルとの間の誘導によって伝達され、前記方法は、
− 一次コイルをDC電源バスに接続する一次回路の前記インバータのスイッチングセルを制御するステップと、
− 一次コイル中の電流の測定ステップと、
− 前記電流の信号のフィルタリングステップと、
− 前記電流と一次回路の共振回路の端子間の電圧との間の位相シフトの測定ステップと、
− 予め測定した位相シフトを使用する前記一次回路の閉ループ周波数制御ステップと
を含み、
前記方法が、
一次回路の前記周波数の初期化ステップであって、このように初期化された前記周波数の関数として、前記電流の信号の所定の半周期にわたる前記位相シフトの符号を固定するように設計された、一次回路の前記周波数の初期化ステップ
をさらに含むことを特徴とする。
【0008】
本発明により、位相シフトの符号が知られるものとなり、これにより前記符号を判定するステップが不要になり、したがって、エネルギーを伝達する方法を、閉ループ制御のより高速の動的性能とともに得ることが可能になる。
【0009】
1つの有利な特徴によれば、前記方法の前記ステップは、前記電流の信号の各周期において実行される。この全波制御は、制御設定点がリフレッシュされる周期が前記共振回路の周期で印加されるので、超高速であり、移動中の充電に適応される。
【0010】
別の有利な特徴によれば、前記フィルタリングステップは、
− 高周波アナログフィルタリングステップと、
− フィルタリングされた信号の符号の変化の検出ステップと
を含む。これらのステップにより、ハードウェア要素による雑音のフィルタリングと、ヒステリシス付きソフトウェア比較器を使用した、フィルタリングされた信号のソフトウェア処理とが可能になる。この相補性は、ハードウェア構成要素の数を低減し、クリーンな電流信号によって提供された符号の変化の堅牢な検出を保証する。
【0011】
別の有利な特徴によれば、前記位相シフト測定は、前記所定の半周期内で実行され、このことにより、前記位相シフトがその符号が知られている時間ウィンドウ内で測定されることが可能になる。
【0012】
別の有利な特徴によれば、前記位相シフト測定は、前記所定の半周期内の一次回路の電流の符号の変化によってトリガされる。この特徴の利点は、実施するのがより複雑である勾配の変化の識別を必要とする最大または最小と対照的に、クリーンな信号の符号の変化が識別しやすいので適用レベルにある。
【0013】
別の有利な特徴によれば、前記位相シフト測定ステップは、前記車両の前記電池の充電モードに対応する、一次回路の発電機モードにおける動作領域において実行される。
【0014】
別の有利な特徴によれば、位相シフトの前記測定は、電流の前記符号の変化と電圧のスイッチングの次の立ち上がりエッジとの間の期間の測定から生じる。この特徴の利点は、とりわけ、その実施の容易さである。
【0015】
別の有利な特徴によれば、前記初期化ステップにおいて、一次回路のセルのスイッチング周波数は、所定の最大共振周波数よりも高い周波数で印加される。この特徴は、電源投入時に、「ゼロ電圧スイッチング」を表すZVSモードとも呼ばれる、電圧より前に電流を用いる動作を保証する。ZVSモードの利点は、2要素からなる。すなわち、一方では、厳密なゼロ位相シフトよりもより容易に実施され、他方では、ターンオフ時の損失が、MOSFETまたはIGBTの種類のトランジスタなどの構成要素の開発により非常に低く、そこに、コンデンサがドレインとソース(またはコレクタとエミッタ)との間に、2つの間の損失をさらに低減するためにしばしば追加される。実際に、共振周波数よりも低いスイッチング周波数に対応する他の並行モードは、「ゼロ電流スイッチング」を表すZCSモードと呼ばれ、ダイオードが同様の開発を受けていないので、損失の同じ減少を受けなかった作動による損失を示す。
【0016】
別の有利な特徴によれば、一次回路の前記閉ループ周波数制御ステップは、前記位相シフト測定ステップから生じる前記測定された位相シフトの関数として一次回路のセルの次のスイッチング周波数を計算するステップを含む。この特徴により、一次コイルに対して移動中の車両の位置の関数として変動する伝達された電力の結合に自動適応する制御が可能になる。有利には、この特徴は、とりわけ、その地上高にかかわらず、この方法が任意の種類の車両に適応できることから生じる。さらに、閉ループ制御は、積分調整器を使用して離散時間計算から、または瞬時連続時間計算から生じることができる。
【0017】
別の有利な特徴によれば、一次回路のセルの次のスイッチング周波数を計算する前記ステップは、セルの電流スイッチング周波数と、前記位相シフト測定ステップから生じる前記位相シフトの角度の正弦を乗じた利得とを合計することである。有利には、正弦関数の非線形性により、位相シフトの増大に伴い、ますます高くなる収束率が可能になる。
【0018】
別の有利な特徴によれば、前記電力の伝達は、所定の周波数閾値において停止される。この特徴は、車両およびその地上高にかかわらず、最良効率における電力の最適伝達を保証する。実際に、この特徴により、車両に搭載されて運ばれる受信ループが良好な効率(静的充電と同様の、言い換えれば、おおよそ90%)で確実に伝達するには離れすぎた場合に、放射体ループからの電力の伝達を休止させるために条件を固定することが可能になる。
【0019】
有利には、前記電力の伝達は、所定の電流閾値において停止される。この代替案は、電力計算を必要とせずに最良効率における電力の伝達も保証する。
【0020】
本発明は、一次回路を備える、電力を伝達するシステムにも関し、前記一次回路は、共振回路とインバータとを備え、前記システムは、地中に配設された共振回路の一次コイルと、車両に搭載されて運ばれ、車両の電池に接続された二次コイルとの間の誘導によって電気出力を伝達するように設計され、前記システムは、
− 一次コイルをDC電源バスに接続する一次回路の前記インバータのスイッチングセルを制御する手段と、
− 一次コイルの電流を測定する手段と、
− 前記電流の信号をフィルタリングする手段と、
− 前記電流と共振回路の端子間の電圧との間の位相シフトを測定する手段と、
− 前記測定手段によって測定された位相シフトを使用する前記一次回路の閉ループ周波数制御の手段と
を備え、
前記システムが、
一次回路の前記周波数を初期化する手段であって、前記初期化手段によって初期化された前記周波数の関数として、前記電流の信号の所定の半周期にわたる前記位相シフトの符号を固定するように設計された、一次回路の前記周波数を初期化する手段
をさらに備えることを特徴とする。
【0021】
有利には、前記システムの前記手段は、前記電流の信号の各周期において作動する。
【0022】
前記フィルタリング手段は、好ましくは、
− 高周波アナログフィルタリング手段と、
− フィルタリングされた信号のヒステリシスによる比較手段と
を備える。
【0023】
有利には、前記位相シフト測定手段は、前記所定の半周期内で作動される。
【0024】
この場合も有利には、前記位相シフト測定手段は、前記所定の半周期内で一次回路の電流の符号の変化を検出する手段によって作動される。
【0025】
好ましくは、前記位相シフト測定手段は、一次回路の発電機モードにおける動作領域内で作動される。
【0026】
有利には、前記位相シフト測定手段は、電流の前記符号の変化と電圧のスイッチングの次の立ち上がりエッジとの間の期間を測定する手段を使用する。
【0027】
この場合も有利には、一次回路のセルのスイッチング周波数を初期化する前記手段は、所定の最大共振周波数よりも高い周波数で前記周波数を初期化するように設計される。
【0028】
有利には、一次回路の閉ループ周波数制御の前記手段は、一次回路のセルの次のスイッチング周波数を計算する手段を備え、計算する手段の入力が、前記位相シフト測定手段から生じる前記位相シフトである。
【0029】
好ましくは、一次回路のセルの次のスイッチング周波数を計算する前記手段は合計手段を備え、合計手段の入力が、セルの電流スイッチング周波数、ならびに、利得と、前記位相シフト測定手段から生じる前記位相シフトの角度に適用された正弦関数との乗算の結果である。
【0030】
有利には、前記システムは、所定の周波数閾値において前記電力の伝達を停止させる手段を備える。
【0031】
代替案として、前記システムは、所定の電流閾値において前記電力の伝達を停止させる手段を備える。
【0032】
このシステムは、本発明による方法の利点に類似した利点を提供する。
【0033】
他の特徴および利点は、図を参照して説明した1つの好ましい実施形態を読むと明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明による誘導によるエネルギー伝達を用いる電気道路の概略図である。
【
図2】地中のループと上に位置した車両との間で電力を伝達するシステムの本発明による一例を示す図である。
【
図3】本発明による方法のステップの流れ図である。
【
図4】本発明による、システムの一次回路の共振回路の端子間の正の位相シフトを示す動作の場合の、システムの一次回路の共振回路の端子間の電圧の、一次回路の端子間の電流の、およびシステムのスイッチングセルの位置のタイミング図である。
【
図5】一次回路の共振回路の端子間で測定された位相シフトの関数として前記システムの動作モードの変動を示すグラフである。
【
図7】これらのコイルの間の結合の関数として伝達された電力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、地中のループまたは一次コイルBPが関連したインバータONDとともに示される、本発明による誘導によるエネルギーの伝達を用いる電気道路の概略図を示す。一次コイルBPは、地中に統合されたDC電源バスBACによって給電される。移動中の電気自動車またはハイブリッド車VEHが一次コイルBPの上に位置し、一次コイルBPと、車両VEHの電池に接続された車両VEHの二次コイルBSとの間の電力の伝達が示される。高速道路上を走行しているとき、一次ループBPの上の車両によって経過された時間(+/−50%のシフトの限度内で)は、20msよりも短い可能性がある。
【0036】
本発明の好ましい実施形態によれば、
図2は、地中のループBPと、上に位置した車両VEHとの間で電力を伝達するシステムSYSを示す。システムSYSは、
− とりわけ、初期化、フィルタリングおよび制御手段を含む、電子制御ユニットCPUと、
− ユニットCPUに接続された電流センサCAPと、
− インバータONDと一次コイルBPを備えた一次共振回路とを備える地中の一次回路CPと
を備える。車両VEHに搭載されて、
− 車載整流器REDと二次コイルBSを備えた共振二次回路とを備える二次回路CSと、
− 二次回路CSが接続される駆動電池BATと
が配置される。一次回路CPは、地中に統合されたDC電源バスBACによって供給される。電圧V
DCは、インバータONDの端子間の電源電圧である。スイッチングセルK1、K2、K3およびK4は、例においてMOSFETまたはIGBTの種類のトランジスタであり、その制御によって一次回路CPの周波数が決まる。Veは一次共振回路の電圧であり、Ieは一次コイルBP中を流れる電流である。別の実施形態において、文献FR2998427B1に示されるものなど、いくつかの一次ループに対して単一の電子制御ユニットがあり得る。
【0037】
図3は、本発明による電力を伝達する方法のステップの流れ図であり、
− E1:一次回路CPの前記周波数の初期化ステップであって、このように初期化された前記周波数により前記電流Ieの信号の所定の半周期にわたる前記位相シフトの符号を固定するように設計された、一次回路CPの前記周波数の初期化ステップと、
− E2:一次コイルBP中の電流Ieの測定ステップと、
− E3:前記電流Ieのフィルタリングステップと、
− E4:前記電流Ieと、一次共振回路の端子間の電圧Veとの間の位相シフトの測定ステップと、
− E5:前に測定した位相シフトを使用する前記一次回路CPの閉ループ周波数制御ステップと、
− E6:ループをステップE2に戻す、一次コイルBPをDC電源バスBACに接続する一次回路CPの前記インバータONDのトランジスタK1、K2、K3およびK4の制御ステップと
のシーケンシングを表す。本発明の好ましい実施形態によれば、ステップE1からE6のこのシーケンシングは、前記電流Ieの信号の各周期において実行される。
【0038】
初期化ステップE1は、「トラッキング」の開始時に一次回路の初期スイッチング周波数を固定し、ZVSモードは、損失を制限するためにZCSモードよりも優先される。共振周波数よりも高い動作の周波数を確実にするために高電源投入周波数が選択されるが、それでもまだ、所定の閾値によって限定された周波数範囲に属する。1つの好ましい実施形態において、以下のループの電源の始動中の変動率の移行相を最小限に抑えるループ間の移行を行うために、一次コイルのインバータは、その制御周波数を以下のコイルのインバータに供給してから電源を切る。測定ステップE2は、一次コイルBP中を流れる電流を測定する電流センサCAPを用いて実行される。測定された信号は、信号処理回路からなるフィルタリングステップE3の入力であり、
− 任意の顕著な位相遅延を加えることなく雑音を除去するために、典型的には、測定すべき電流の周波数よりも10倍高い通過帯域を用いる、高周波アナログフィルタリングステップと、
− 典型的には、スイッチングが新たな設定点計算期間をトリガする(典型的には、タスクE4、E5、およびE6を担当するユニットCPUの外部割り込みによる)ヒステリシス付きの比較器を用いた電流の符号の検出ステップと
を含む。フェーズE4の間、割り込みをマスキングする追加のデジタルフィルタリングステップを加えることもできる。
【0039】
実際に、一次コイル中を流れる電流Ieのフィルタリングは、後の位相シフトの測定ステップE4が前記フィルタリングされた電流信号Ieを入力として使用するので、不可欠である。したがって、一次共振回路の電圧と電流との間の位相シフト角の測定は、
図4のタイミング図に示す、前記フィルタリングされた電流Ieのゼロ(符号の変化)D0の通過および電圧のスイッチングK1K4の次の立ち上がりエッジを分離する期間の測定から生じる。このタイミング図は、時間の関数として、
− 破線によるトランジスタK2およびK3の位置とともに、実線によるトランジスタK1およびK4の位置と、
− 破線による前記電流の符号の変化の二値信号とともに、実線による一次コイル中を流れるフィルタリングされた電流Ieと、
− 一次回路の共振回路の電圧Veと
を示す。ZVS発電機モードにおける初期化を所与として(車両VEHの電池BATを充電する必要があるので)、測定された位相シフトは正であり、一次コイル中を流れる電流Ieは、一次回路の共振回路の電圧Veの第1高調波より前にある。トランジスタK1、K2、K3およびK4の制御により、前記電圧Veの信号の形が生成される。
【0040】
前記フィルタリングステップE3により、一次共振回路の電圧と電流との間の位相シフトの測定は、位相シフト測定ステップE4が一次コイル中を流れる電流IeのゼロD0の通過の検出を利用するので、堅牢である。位相シフトφMの測定は、前記電流IeのゼロD0の通過と、電圧のスイッチングK1K4の次の立ち上がりエッジとを分離する期間の測定から直接生じる。したがって、インバータONDは、前記電流IeのゼロD0の通過により、前記位相シフトを測定する前記ステップE4、したがって、来る期間のトランジスタのスイッチングの制御をトリガする割り込みが生成されるように、システムによって時間が調整される。
【0041】
以下の閉ループ周波数制御ステップE5は、測定ステップE4から生じる前記位相シフト角を入力として使用する。
図5は、ステップE4の間に測定された位相シフトの関数として、電力を伝達するシステムの動作モードの変動を示す。前記位相シフト角の正弦および余弦の符号は、現在の動作モード、すなわち、発電機または受信機、ZVSまたはZCSを決定する。さらに、測定されたゼロの位相シフトを維持するように前記トランジスタを制御することは実際には非常に難しいので、ゼロに近いわずかに正の位相シフトが好ましく、これはZVSモードに対応し、ゼロ電圧におけるスイッチング動作を確実にし、したがって、スイッチング動作中のダイオードの逆回復を回避する。したがって、本発明による好ましい実施形態は、位相シフトの信号が正である半周期の境界を示す斜線付きのエリアで示すZVS発電機モードである。このエリアは、中心共振周波数よりも高い周波数に対応する。モードZVSのこの選択は、電源投入による初期化ステップE1において、インバータONDが最大共振周波数よりも高い周波数でスイッチングされる必要があることを正当化する。したがって、ZVSモードでの動作は、過渡信号中でも保証され、したがって、1つの動作モードを固定することにより位相シフトの符号を探索するステップをなくすことによって、効率的な動的「トラッキング」が可能になる。閉ループ制御ステップE5は、その目的がZVS発電機モードにおける共振にできるだけ近い動作を保証することにあるが、その好ましい実施形態において、前記位相シフト角の正弦のゼロ値を探索することである単純な手段に基づく。次いで、インバータONDによって適用すべき周波数制御は、1つの計算ステップから別の計算ステップへの正弦の値によって直接補正される。すなわち、
周波数
n+1=周波数
n+K
*sin(位相シフト角)
ここで、Kは使用された周波数の範囲のおよび所望の変動率ダイナミクスの関数として求めた係数である。それにもかかわらず、前記閉ループ制御ステップE5の周波数の計算のこの単純な例は、独自ではなく、前記位相シフトの関数としての積分調整器を同様に良好に使用することができる。車両VEHの充電および位置の変動は、変動率ダイナミクスに比較して十分に遅く、これは、これらの変動中のゼロの位相シフトを保存するのに実質的に瞬時である。
【0042】
閉ループ制御の目的は、ZVS発電機モードでの共振にできるだけ近く保持することにあるが、所定の閾値によって限定された範囲内にも保持しなければならない。したがって、前記閉ループ制御ステップE6の終わりに得た周波数が前記範囲の外側にある場合、電力の伝達は休止される。実際に、小さなループの使用における最後の大きな難題は、移動中の車両VEHをその速度を低減しなくても良好な効率で充電できることである。しかし、伝達される電力は、いくつかの要因による。すなわち、
− トランジスタK1、K2、K3およびK4のスイッチング周波数、
− 一次コイル中を流れる電流Ieと一次共振回路の電圧Veとの間の位相シフト、
− 放射コイルBPと受信コイルBSと間の磁気結合に対応する、これらのコイルの位置合わせ。
したがって、
図6の一次コイルBPと二次コイルBSとの位置合わせされた位置(最良結合)の共振曲線(電流および電圧がゼロ位相シフトを有する)は、40から50cm(静的充電に適合する標準)のコイルおよび10から15cmの地上高の場合、トランジスタK1、K2、K3およびK4のスイッチング周波数の関数としてワットで表す伝達された電力Psを示す。この例において、共振周波数は、おおよそ85kHz(静的モードの標準が85kHzの周波数に向かって収束するので静的充電にも適切)であり、中心共振周波数のいずれかの側のマージンで限定される最小効率を保証する周波数の範囲を制限する所定の周波数閾値は、ここで、80および100kHzに対応する。調整器の出力が前記周波数閾値を超える場合、2つのことを意味し得る。すなわち、
− 受信コイルがない:この場合、位相シフトは90°に近い。これらの2つの条件は電力の伝達を停止させる基準を構成する。
− 充電によって消費された電力が非常に低い:この場合、位相シフトは、90°よりもわずかに小さく、停止条件は、考慮に入れるためには、90°よりもわずかに小さい値で較正されなければならない。
【0043】
伝達された電力Psによる結合の影響も示すために、
図7は、破線で示す最大結合を有する共振曲線と、実線による半分だけ低減された結合を有する共振曲線とを比較する。実際に、コイルがオフセットされるとき、言い換えれば、コイル間の結合が減少するとき、関連した共振曲線はシフトする。同様に、本発明の好ましい実施形態において使用される基準値(10から15cm)よりも高い地上高を有する車両VEHの場合、結合は低いが、それにもかかわらず、一次および二次コイルの相対位置のより制限された範囲内の電力Psの伝達が可能になる。
【0044】
さらに、いくつかの共振周波数が存在することがあるので、トランジスタK1、K2、K3およびK4の制御の周波数範囲を限定するこれらの所定の周波数閾値が、変動率に必要とされ、インバータONDの動作の範囲に属さなければならない。
【0045】
代替案として、電力の伝達を停止させるための前記閾値は、例えば前記電流Ieの最大電流の20%に対応する閾値を考慮することによって、一次コイル中を流れる所定の電流閾値Ieでよい。これらの伝達可能な電流または最小電力閾値は、これを超えることが電力の伝達を停止させるための基準を構成し、最小効率を保証することが可能になるように、共振回路の特性の関数として較正される。
【0046】
移動中であるとき変動する結合にもかかわらず常にできるだけ共振に近づけるために、方法の閉ループ制御ステップE5が、他に対して1つのループの相対位置におけるこの変動の関数として、電源の周波数を一次ループBPに適応させ、計算された周波数が所与の周波数閾値を上回り次第電力の伝達を停止させることによって最小効率を保証する。
【0047】
最後に、最終のトランジスタの制御ステップE6は、先行するステップE5において計算された周波数を入力として使用し、周波数をトランジスタK1、K2、K3およびK4の制御によって共振回路の電圧Veに適用する。
【0048】
したがって、本発明の電力を伝達する方法およびシステムは、全波ZVS制御を保証し、言い換えれば、出力電流の周波数は、次の期間にわたるトランジスタK1、K2、K3およびK4のスイッチング周波数を決定し、共振周波数に迅速に収束し、したがって、静的非接触充電の必要性だけでなく、非専用レーンにおいて通常速度で走行する車両VEHの動的非接触充電の要求も満足させる。さらに、前記方法は、サービス電池の充電にも適用可能である。