(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記第2組成物が、1の重合性基を有しかつイソシアネート基を有さない化合物、ポリマー成分又はこれらの組み合わせをさらに含有する請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の2液混合型接着剤。
上記第3化合物のイソシアネート基のモル数の上記第2化合物のヒドロキシ基及び第1化合物のアミノ基の合計モル数に対する比が1以上である請求項8、請求項9又は請求項10に記載の2液混合型接着剤。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<2液混合型接着剤>
当該2液混合型接着剤は、組成物(I)と組成物(II)とを備える。当該2液混合型接着剤は、組成物(I)と組成物(II)とを混合することで、組成物(II)中のイソシアネート基及び重合性基を有する[C]化合物が、組成物(I)中の[A]錯体を構成するイソシアネート基に付加反応する基(X)を有する化合物(a)と反応(脱保護反応)し、その結果、オルガノボラン、及び化合物(a)と[C]化合物との反応生成物(以下、「脱保護反応生成物(p)」ともいう)が生じる。この脱保護反応生成物(p)は重合性を有しており、例えば生成したオルガノボランを重合開始剤として重合するものであり、加えて、例えばオルガノボランから形成されたラジカルにより被着材との結合等も形成されて接着が進行する。
【0010】
当該2液混合型接着剤は、[A]錯体と[B]化合物とを含有する組成物(I)及び[C]化合物と[D]脱水剤とを含有する組成物(II)を備えることで保存安定性及び接着強度に優れる。当該2液混合型接着剤が上記構成を有することで上記効果を奏する理由については必ずしも明確ではないが、例えば以下のように推察することができる。すなわち、従来の2液混合型接着剤において、イソシアネート基及び重合性基を有する[C]化合物のイソシアネート基は、空気中等から来る水分と反応し易く、経時的に消失すると考えられる。また、組成物(I)に重合性化合物等が含有される場合、重合性化合物の重合性基等と化合物(a)の基(X)とが反応することで、[A]錯体が変質し、経時的に消失する。これらの結果、[C]化合物と、[A]錯体を構成するイソシアネート基に付加反応する基(X)を有する化合物(a)とが反応することによるオルガノボランの生成速度が経時的に低下するため、保存安定性が低くなっていると考えられる。本発明では、このイソシアネート基の消失を、組成物(II)中に[D]脱水剤を共存させることによって抑制し、また、組成物(I)中に、[A]錯体を、重合性基を有さない[B]化合物を用いて希釈することにより、これらの経時的な変質を抑制することができ、保存安定性を向上させることができたと考えられる。
【0011】
当該2液混合型接着剤は、組成物(I)及び組成物(II)以外に[A]錯体又は[C]化合物を含有しない他の組成物をさらに備え、3液以上の混合型接着剤としてもよい。
【0012】
以下、組成物(I)及び組成物(II)について説明する。
【0013】
<組成物(I)>
組成物(I)は、[A]錯体と[B]化合物とを含有する。また、組成物(I)は、本発明の効果を損なわない範囲において、[A]成分及び[B]成分以外の他の成分を含有していてもよい。組成物(I)は、組成物(II)の項で後述する1の重合性基を有する化合物(以下、「[E]重合性化合物」ともいう)、[F]ポリマー成分等を含有してもよいが、組成物(I)は、[A]錯体を構成する化合物(a)と反応し、当該2液混合型接着剤の保存安定性を低下させる重合性基を有する化合物を実質的に含有しないことが好ましい。[E]重合性化合物及び[F]ポリマー成分は、重合性基等を有しており、組成物(I)は、これらの成分を実質的に含有しないことが好ましい。以下、各成分について説明する。
【0014】
[[A]錯体]
[A]錯体は、オルガノボラン及び化合物(a)に由来する錯体である。化合物(a)は、イソシアネート基に付加反応する基(X)を有する。[A]錯体は、通常オルガノボランと、このオルガノボランに化合物(a)の基(X)が配位結合等して形成され、化合物(a)は、オルガノボランの重合開始能を抑制している。オルガノボランは、1又は複数の化合物(a)と相互作用することにより[A]錯体を形成することができる。
【0015】
(オルガノボラン)
上記オルガノボランは、ボランの水素原子を有機基で置換した化合物である。「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。上記オルガノボランとしては、例えば下記式(1)で表される化合物等が挙げられる。
【0017】
上記式(1)中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、炭素数1〜20の1価の有機基である。
【0018】
上記R
1、R
2及びR
3で表される炭素数1〜20の1価の有機基としては、例えば炭素数1〜20の1価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素−炭素間に2価のヘテロ原子含有基を有する基(α)、上記炭化水素基及び基(α)が有する水素原子の一部又は全部を1価のヘテロ原子含有基で置換した基等が挙げられる。
【0019】
上記炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、例えば炭素数1〜20の1価の鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0020】
上記炭素数1〜20の1価の鎖状炭化水素基としては、例えば
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基などが挙げられる。
【0021】
上記炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基等のシクロアルキル基;
シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、ノルボルネニル基、トリシクロデセニル基等のシクロアルケニル基などが挙げられる。
【0022】
上記炭素数6〜20の1価の芳香族炭化水素基としては、例えば
フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基;
ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
【0023】
上記1価及び2価のヘテロ原子含有基が有するヘテロ原子としては、例えば酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子等が挙げられる。
【0024】
上記2価のヘテロ原子含有基としては、例えば−O−、−CO−、−NR’−、−S−、−CS−、−SO−、−SO
2−、−POR’
2−、−SiR’
2−、これらを組み合わせた基等が挙げられる。R’は、炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
【0025】
上記1価のヘテロ原子含有基としては、例えば−OH、−COOH、−NH
2、−CN、−NO
2、−SH等が挙げられる。
【0026】
上記オルガノボランとしては、高い重合開始能、安定性及び入手容易性の観点から、上記式(1)のR
1〜R
3が炭化水素基である化合物が好ましく、トリアルキルボランがより好ましく、トリメチルボラン、トリエチルボラン、トリプロピルボラン及びトリブチルボランがさらに好ましく、トリエチルボランが特に好ましい。
【0027】
(化合物(a))
化合物(a)は、基(X)を有する化合物である。基(X)は、イソシアネートに付加反応する基である。化合物(a)は、組成物(I)と組成物(II)を混合した時点で、組成物(II)が含有する[C]化合物が有するイソシアネート基と反応する。
【0028】
基(X)としては、例えばヘテロ原子に結合する活性水素を有する基(以下、「基(X1)」ともいう)等が挙げられる。このようなヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子等が挙げられる。
【0029】
基(X1)としては、例えば
窒素原子に結合する活性水素を有する基として、アミノ基(−NH
2)、一置換アミノ基(−NH
2の水素原子の1つを炭化水素基で置換したもの)等が、
酸素原子に結合する活性水素を有する基として、例えばヒドロキシ基等が、
硫黄原子に結合する活性水素を有する基として、例えばスルファニル基等が、
リン原子に結合する活性水素を有する基として、例えばホスフィノ基(−PH
2)、一置換ホスフィノ基(−PH
2の水素原子の1つを炭化水素基で置換したもの)等が挙げられる。
【0030】
アミノ基を有する化合物として、例えば
メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、アニリン、エタノールアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン等のモノアミン;
1,2−ジアミノエタン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、1,4−ビス[1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、1,3−ビス[1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、4,7,10−トリオキサトリデカン−1,13−ジアミン、4,9−ジオキサドデカン−1,12−ジアミン、3,6,9−トリオキサウンデカン−1,11−ジアミン等のジアミン;
1,2,3−トリアミノプロパン、1,2,4−トリアミノブタン、1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、1,3,5−トリアミノベンゼン等のトリアミンなどが挙げられる。
【0031】
一置換アミノ基を有する化合物としては、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、ジエタノールアミン等が挙げられる。
【0032】
ヒドロキシ基を有する化合物としては、例えば
メタノール、エタノール等のモノアルコール;
エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール等のジオール;
グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオールなどが挙げられる。
【0033】
スルファニル基を有する化合物としては、例えばメルカプタン、エタンチオール等のモノチオール;
エタンジチオール、ブタンジチオール等のジチオールなどが挙げられる。
【0034】
ホスフィノ基を有する化合物としては、例えばエチルホスフィン、ブチルホスフィン等のモノホスフィン;
ジホスフィノエタン、ジホスフィノブタン等のジホスフィンなどが挙げられる。
【0035】
一置換ホスフィノ基を有する化合物としては、例えばジエチルホスフィン、ジブチルホスフィン等が挙げられる。
【0036】
化合物(a)が有する基(X)の数としては、1個でもよく、2個以上でもよいが、2個以上が好ましく、2〜4個がより好ましく、2個及び3個がさらに好ましく、2個が特に好ましい。基(X)の数を上記範囲とすることで、化合物(a)と[C]化合物とから、複数の重合部位を有する脱保護反応生成物(p)が形成される結果、硬化速度がより向上し、また得られる重合体が3次元架橋構造を有するため、接着強度をより向上させることができる。
【0037】
基(X)としては、脱保護反応をより容易にし、接着強度をより高める観点から、アミノ基、一置換アミノ基、スルファニル基、ホスフィノ基及び一置換ホスフィノ基が好ましく、アミノ基及び一置換アミノ基がより好ましく、アミノ基がさらに好ましい。
【0038】
化合物(a)としては、[C]化合物との脱保護反応をより容易にし、接着強度をさらに高める観点から、アミノ基を含む化合物が好ましく、ジアミン及びトリアミンがより好ましく、ジアミンがさらに好ましく、炭素数2〜4のジアミノアルカンがさらに特に好ましく、1,3−アミノプロパンが最も好ましい。
【0039】
上記[A]錯体における化合物(a)のオルガノボランに対するモル比の下限としては、0.5が好ましく、0.7がより好ましく、0.9がさらに好ましく、1が特に好ましく、1.8がより特に好ましく、2.5がさらに特に好ましく、3.5が最も好ましい。上記モル比の上限としては、8が好ましく、7がより好ましく、6がさらに好ましく、5.5が特に好ましい。上記モル比を上記範囲とすることで、[A]錯体の安定性をより向上させることができ、その結果、当該2液混合型接着剤の保存安定性をより向上させることができる。
【0040】
組成物(I)の調製に用いた化合物(a)のオルガノボランに対するモル比の下限としては、0.5が好ましく、0.7がより好ましく、0.9がさらに好ましく、1が特に好ましく、1.8がより特に好ましく、2.5がさらに特に好ましく、3.5が最も好ましい。上記モル比の上限としては、8が好ましく、7がより好ましく、6がさらに好ましく、5.5が特に好ましい。上記モル比を上記範囲とすることで、[A]錯体の安定性をより向上させることができ、その結果、当該2液混合型接着剤の保存安定性をより向上させることができる。
【0041】
組成物(I)における[A]錯体の含有量の下限としては、当該2液混合型接着剤の接着強度をより高める観点から、0.1質量%が好ましく、1質量%がより好ましく、5質量%がさらに好ましく、10質量%が特に好ましい。上記含有量の上限としては、当該2液混合型接着剤の取扱容易性の観点から、70質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、40質量%がさらに好ましく、30質量%が特に好ましい。[A]錯体は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0042】
[[B]化合物]
[B]化合物は、希釈剤としての重合性基を有さない化合物である。すなわち、[B]化合物は、組成物(I)における[A]錯体を希釈するための成分である。[B]化合物は、重合性基を有さないことで、[A]錯体における化合物(a)と反応することが抑制され、その結果、組成物(I)における保存安定性を維持することができる。
【0043】
組成物(I)における[B]化合物の含有量の下限としては、30質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、60質量%がさらに好ましく、70質量%が特に好ましい。上記含有量の上限としては、99.9質量%が好ましく、99質量%がより好ましく、95質量%がさらに好ましく、90質量%が特に好ましい。
【0044】
[B]化合物の[A]錯体に対する質量比の下限としては、0.5が好ましく、1がより好ましく、1.5がさらに好ましく、2がさらに好ましい。上記質量比の上限としては、100が好ましく、10がより好ましく、5がさらに好ましい。
【0045】
[B]化合物としては、重合性基を有さない化合物であれば用いることができ特に限定されないが、例えば炭化水素化合物、極性基を有する化合物等が挙げられる。また、[B]化合物は、低分子化合物、オリゴマー及びポリマーのいずれであってもよい。
【0046】
炭化水素化合物としては、例えばアルカン、オレフィンオリゴマー、ポリオレフィン等が挙げられる。
【0047】
極性基を有する化合物としては、上記炭化水素化合物の1又は複数の炭素−炭素間に極性基を含む化合物、上記炭化水素化合物の1又は複数の水素原子を極性基で置換した化合物等が挙げられる。
【0048】
極性基としては、例えばヘテロ原子を有する基等が挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0049】
ヘテロ原子を有する極性基としては、例えば
ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシル基、エーテル基、カルボニル基等の酸素原子含有基;
アミノ基、置換アミノ基、イミノ基等の窒素原子含有基;
スルファニル基、アルキルスルファニル基、スルファンジイル基等の硫黄原子含有基;
ホスフィノ基、置換ホスフィノ基等のリン原子含有基;
シリル基、置換シリル基等のケイ素原子含有基;
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子含有基などが挙げられる。
【0050】
[B]化合物としては、[A]錯体の溶解性及び[A]錯体の安定化の観点から、極性基を有する化合物が好ましく、酸素原子含有基を有する化合物がより好ましく、ヒドロキシ基を有する化合物がさらに好ましい。[B]化合物がヒドロキシ基を有する化合物である場合、組成物(I)と組成物(II)とを混合した際、[B]化合物が[C]化合物のイソシアネート基に付加反応して、[B]化合物が接着層の重合体中に取り込まれることができ、その結果、接着層の強度がより向上し、接着強度をより高めることができる。また、この場合、[B]化合物が[C]化合物のイソシアネート基に付加反応して、カーバメート基(−NH−CO−O−)を形成し、その結果、接着層の柔軟性を向上させることができる。
【0051】
上記ヒドロキシ基を有する化合物が有するヒドロキシ基の数としては、1であるモノオール化合物でも、2以上であるポリオール化合物でもよいが、[B]化合物が接着層の重合体の主鎖中に取り込まれることができ、その結果、接着層の強度がさらに向上し、接着強度をさらに高めることができる観点から、ポリオール化合物が好ましい。ポリオール化合物が有するヒドロキシ基の数の下限としては、2が好ましく、3がより好ましい。上記ヒドロキシ基の数の上限としては、例えば20である。
【0052】
ポリオール化合物としては、例えば
エチレングリコール、プロピレングリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等のアルカンジオール;
1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールプロパン等のアルカントリオール;
ペンタエリスリトール等のアルカンテトラオール;
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール;
下記式(B−1)で表されるポリプロピレングリコールの両末端エチレングリコール付加物、ポリテトラメチレングリコールの両末端エチレングリコール付加物等のポリアルキレングリコール含有ポリオール;
下記式(B−2)で表されるビスフェノールAのプロピレングリコール付加物、ビスフェノールAのエチレングリコール付加物等のビスフェノール含有ポリオール;
ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリオール等のポリエステルポリオール;
ポリカーボネートジオール、ポリカーボネートポリオール等のポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
【0054】
上記式(B−1)中、a、b及びcは、それぞれ独立して、1〜200の整数である。
【0056】
上記式(B−2)中、p及びqは、それぞれ独立して、1〜200の整数である。
【0057】
ビスフェノールAのプロピレングリコール付加物の市販品としては、例えばニューポールBP−2P、同BP−23P、同BP−3P、同BP−5P(以上、三洋化成工業社)等が挙げられる。ビスフェノールAのエチレングリコール付加物の市販品としては、例えばニューポールBPR−20NK、同BPE−20T、同BPE−40、同BPE−60、同BPE−100、同BPE−180(以上、三洋化成工業社)等が挙げられる。
【0058】
[B]化合物がヒドロキシ基を有する化合物であり、化合物(a)がアミノ基を有する化合物である場合、[B]化合物のヒドロキシ基及び化合物(a)のアミノ基の合計モル数に対する[C]化合物のイソシアネート基のモル数の比の下限としては、0.5が好ましく、1がより好ましく、1.5がさらに好ましい。上記比の上限としては、例えば10である。上記比を上記範囲とすることで、[B]化合物を接着層の重合体中に効果的に取り込まれるので、接着層の強度がさらに高まり、その結果、接着強度をさらに高めることができる。
【0059】
[B]化合物の分子量の下限としては、接着層の強度をより高める観点から、100が好ましく、300がより好ましく、500がさらに好ましく、1,000が特に好ましい。上記分子量の上限としては、10,000が好ましく、8,000がより好ましく、6,000がより好ましく、5,000がさらに好ましい。[B]化合物が、オリゴマー等で分子量分布を有する場合、分子量としては、例えば数平均分子量である。[B]化合物は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0060】
[その他の成分]
組成物(I)は、上記[A]及び[B]成分以外の他の成分として、例えば可塑剤、無機充填剤、着色剤、金属塩、重合禁止剤等を含有していてもよい。これらの他の成分は、それぞれ1種又は2種以上を含有していてもよい。
【0061】
可塑剤としては、例えばジブチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル;ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等の非芳香族二塩基酸エステル;ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート等の安息香酸エステルなどが挙げられる。
【0062】
無機充填剤としては、例えばアルミナ、シリカ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
【0063】
着色剤としては、例えばカーボンブラック等が挙げられる。
【0064】
金属塩は、当該2液混合型接着剤のポットライフ調整のために含有させることができる。上記金属塩としては、例えば臭化銅(II)、塩化銅(II)、銅(II)2−エチルヘキサノエート等が挙げられる。
【0065】
重合禁止剤としては、例えばヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0066】
<組成物(II)>
組成物(II)は、[C]化合物と、[D]脱水剤とを含有する。組成物(II)は、[E]重合性化合物及び/又は[F]ポリマー成分を含有することが好ましく、本発明の効果を損なわない範囲において、[C]〜[F]成分以外のその他の成分を含有していてもよい。以下、各成分について説明する。
【0067】
[[C]化合物]
[C]化合物は、イソシアネート基及び重合性基を有する化合物である。[C]化合物は、組成物(I)の[A]錯体を構成する化合物(a)と脱保護反応して脱保護反応生成物(p)を形成する化合物であり、この脱保護反応生成物(p)は重合性を有する。上述したように、当該2液混合型接着剤の使用時に、組成物(I)と組成物(II)を混合することで、[C]化合物のイソシアネート基に、[A]錯体の化合物(a)のイソシアネート基に付加反応する基(X)が反応して、脱保護反応生成物(p)とオルガノボランとが生じ、このオルガノボランの重合開始能により、脱保護反応生成物(p)が重合することにより接着が進行する。
【0068】
上記重合性基としては、例えば
ビニル基、アリル基、スチリル基、(メタ)アクリロイル基等の炭素−炭素二重結合含有基;
エチニル基、プロパギル基等の炭素−炭素三重結合含有基などが挙げられる。これらの中で、重合性が高く、硬化速度をより高めることができる観点から、炭素−炭素二重結合含有基が好ましく、(メタ)アクリロリル基がより好ましい。
【0069】
[C]化合物が有するイソシアネート基の数としては、脱保護反応をより容易にする観点から、1〜3が好ましく、1及び2がより好ましく、1がさらに好ましい。
【0070】
[C]化合物が有する重合性基の数としては、形成される脱保護反応生成物(p)の重合速度をより高める観点から、1〜3が好ましく、1及び2がより好ましく、1がさらに好ましい。
【0071】
[C]化合物が有するイソシアネート基の数と重合性基の数の組み合わせとしては、イソシアネート基の数が1及び2かつ重合性基の数が1及び2が好ましく、イソシアネート基及び重合性基の数が共に1が好ましい。
【0072】
[C]化合物としては、例えば
イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート等のイソシアナトアルキル(メタ)アクリレートなどの脂肪族イソシアネート;
イソシアナトシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソシアナトノルボルニル(メタ)アクリレート等のイソシアナトシクロアルキル(メタ)アクリレート等などの脂環族イソシアネート;
スチリルイソシアネート、イソシアナトフェニル(メタ)アクリレート等の芳香族イソシアネート;
ジイソシアネートと、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの付加物などのイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート;
イソシアナトブテン、イソシアナトペンテン、イソシアナトヘキセン等のイソシアネート基を有するアルケンなどが挙げられる。
【0073】
[C]化合物としては、そのイソシアネート基が、化合物(a)の基(X)による付加反応が起こり易いものが好ましい。当該2液混合型接着剤は、このような反応性の高い[C]化合物を用いることで、有機スズ化合物等の付加反応の触媒を使用することを要しない。このような[C]化合物としては、脂肪族イソシアネート、芳香族イソシアネート等が挙げられる。
【0074】
[C]化合物としては、脂肪族イソシアネート及び芳香族イソシアネートが好ましく、脂肪族イソシアネートがより好ましく、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートがさらに好ましく、イソシアナトアルキル(メタ)アクリレートが特に好ましく、イソシアナトエチル(メタ)アクリレートがさらに特に好ましい。
【0075】
組成物(II)における[C]化合物の含有量の下限としては0.1質量%が好ましく、1質量%がより好ましく、3質量%がさらに好ましく、5質量%が特に好ましい。上記含有量の上限としては、40質量%が好ましく、20質量%がより好ましく、15質量%がさらに好ましく、10質量%が特に好ましい。[C]化合物の含有量を上記範囲とすることで、当該2液混合型接着剤の保存安定性及び接着強度をさらに高めることができる。
【0076】
[C]化合物のイソシアネート基の化合物(a)の基(X)に対するモル比の下限としては、0.5が好ましく、0.7がより好ましく、1がさらに好ましく、1.5が特に好ましい。上記モル比の上限としては、6が好ましく、4がより好ましく、3がさらに好ましく、2.5が特に好ましい。上記モル比を上記範囲とすることで、当該2液混合型接着剤の保存安定性及び接着強度をさらに高めることができる。
【0077】
化合物(a)がジアミンの場合、イソシアネート基のジアミンに対するモル比の下限としては、1が好ましく、1.3がより好ましく、1.5がさらに好ましく、1.7が特に好ましい。上記モル比の上限としては、3が好ましく、2.7がより好ましく、2.5がさらに好ましく、2.3が特に好ましい。上記モル比を上記範囲とすることで、当該2液混合型接着剤の保存安定性及び接着強度をさらに高めることができる。[C]化合物は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0078】
[[D]脱水剤]
[D]脱水剤は、物質中に存在する水分を除去することができる物質をいう。従って、組成物(II)は[D]脱水剤を含有することにより、貯蔵中に系外から混入する水分を除去することができる。
【0079】
[D]脱水剤としては、無機脱水剤、有機脱水剤等が挙げられる。
【0080】
無機脱水剤としては、例えば
ゼオライト3A、ゼオライト4A、ゼオライト5A等のゼオライト;
無水塩化カルシウム、無水硫酸ナトリウム、無水硫酸カルシウム、無水塩化マグネシウム、無水硫酸マグネシウム、無水炭酸カリウム、無水硫化カリウム、無水亜硫化カリウム、無水亜硫酸ナトリウム、無水硫酸銅等の無水無機塩;
シリカゲル、アルミナ、シリカアルミナ、活性白土等が挙げられる。
【0081】
有機脱水剤としては、例えば
オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルトギ酸プロピル等のオルトギ酸エステル;
オルト酢酸メチル、オルト酢酸エチル、オルト酢酸プロピル等のオルト酢酸エステル;
オルトプロピオン酸メチル、オルトプロピオン酸エチル等のオルトプロピオン酸エステル等のカルボン酸オルトエステル;
ベンズアルデヒドジメチルアセタール、アセトアルデヒドジメチルアセタール、ホルムアルデヒドジメチルアセタール、アセトンジメチルアセタール、アセトンジベンジルアセタール、ジエチルケトンジメチルアセタール、ベンゾフェノンジメチルアセタール、ベンジルフェニルケトンジメチルアセタール、シクロヘキサノンジメチルアセタール、アセトフェノンジメチルアセタール、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4,4−ジメトキシ−2,5−シクロヘキサジエン−1−オンアセタール、ジメチルアセトアミドジエチルアセタール等のアセタール化合物;
ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物;
メチルシリケート、エチルシリケート等のシリケート化合物などが挙げられる。
【0082】
[D]脱水剤としては、接着層の強度をより高めることができ、その結果、接着強度をより高めることができる観点から、無機脱水剤が好ましく、ゼオライトがより好ましい。また、ゼオライトの中で、保存安定性をより高める観点から、ゼオライト3A及びゼオライト5Aが好ましく、ゼオライト3Aがより好ましい。
【0083】
組成物(II)中の[D]脱水剤の含有量の下限としては、0.1質量%が好ましく、0.4質量%がより好ましく、0.8質量%がさらに好ましく、2質量%が特に好ましく、2.5質量%がさらに特に好ましい。上記含有量の上限としては、15質量%が好ましく、11質量%がより好ましく、8質量%がさらに好ましく、6質量%が特に好ましい。[D]脱水剤の含有量を上記範囲とすることで、保存安定性と接着強度とをバランスよく両立させることができる。
【0084】
[D]脱水剤の[C]化合物に対する質量比の下限としては、0.05が好ましく、0.1がより好ましく、0.3がさらに好ましく、0.5が特に好ましい。上記質量比の上限としては、2が好ましく、1.5がより好ましく、1がさらに好ましく、0.8が特に好ましい。[D]脱水剤の[C]化合物に対する質量比を上記範囲とすることで、保存安定性と接着強度とをバランスよく両立させることができる。[D]脱水剤は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0085】
[[E]重合性化合物]
[E]重合性化合物は、1の重合性基を有しかつイソシアネート基を有さない化合物である。当該2液混合型接着剤は、組成物(II)が[E]重合性化合物を含有することで、接着層の強度をより向上することができ、その結果、接着強度をより向上させることができる。
【0086】
重合性基としては、例えば
ビニル基、アリル基、スチリル基、(メタ)アクリロイル基等の炭素−炭素二重結合含有基;
エチニル基、プロパギル基等の炭素−炭素三重結合含有基などが挙げられる。これらの中で、重合性により優れる観点から、炭素−炭素二重結合含有基が好ましく、(メタ)アクリロリル基がより好ましい。
【0087】
[E]重合性化合物としては、例えば
ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、デセン、ドデセン等のオレフィン;
スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン等のスチレン化合物;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリル酸ビニル等のカルボン酸ビニル;
塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン;
メチルビニルケトン、メチルビニルエーテル等のビニル化合物;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;
シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカン−イル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデカン−イル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート、シクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキセニル(メタ)アクリレート、トリシクロデセン−イル(メタ)アクリレート等のシクロアルケニル(メタ)アクリレートなどの脂環を有する(メタ)アクリレート;
フェニル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート等のアリール(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のアリールオキシアルキル(メタ)アクリレートなどの芳香環を有する(メタ)アクリレート;
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等のヘテロ原子含有(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート化合物;
(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド化合物;
(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0088】
これらの中で、重合性により優れる観点から、(メタ)アクリレート化合物が好ましい。その中で、当該2液混合型接着剤の臭気低減の観点及び後述する[F]ポリマー成分を溶解させる観点から、ヘテロ原子含有(メタ)アクリレートが好ましく、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートがより好ましい。接着層への柔軟性付与の観点から、アルキル(メタ)アクリレートが好ましく、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましい。[E]重合性化合物は、1種又は2種以上用いてもよい。
【0089】
組成物(II)が[E]重合性化合物を含有する場合、組成物(II)における[E]重合性化合物の含有量の下限としては、10質量%が好ましく、30質量%がより好ましく、40質量%がさらに好ましく、50質量%が特に好ましい。上記含有量の上限としては、90質量%が好ましく、80質量%がより好ましく、75質量%がさらに好ましく、70質量%が特に好ましい。上記含有量を上記範囲とすることで、接着層の強度をより向上させ、その結果、接着強度をさらに向上させることができる。
【0090】
[[F]ポリマー成分]
組成物(II)は、当該2液混合型接着剤の初期接着強度の向上及び粘度調整、接着層の硬化収縮抑制等の観点から、[F]ポリマー成分を含有することが好ましい。
【0091】
[F]ポリマー成分としては、ポリマーであれば特に限定されず、例えばポリオレフィン、ポリスチレン、スチレン共重合体、ポリ(メタ)アクリレート、ポリジエン、アクリル共重合体、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等も用いることができる。さらに、[F]ポリマー成分としては、これらのポリマーの構造を含む共重合体も好適に用いることができる。
【0092】
上記ポリオレフィンとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。
【0093】
上記ポリスチレンとしては、例えばポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)等が挙げられる。
【0094】
上記スチレン共重合体としては、例えばスチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)等が挙げられる。
上記ポリ(メタ)アクリレートとしては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0095】
上記ポリジエンとしては、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン等が挙げられる。
【0096】
上記アクリル共重合体としては、例えば複数種の(メタ)アクリル酸エステル単位を有する重合体、ブチル(メタ)アクリレート−アクリロニトリル共重合体等が挙げられる。
上記熱可塑性エラストマーとしては、例えばSBS(スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体)、SEBS(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体)、SIS(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体)、SEPS(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体)等の共役ジエン系共重合体の未水素添加体、これらの水素添加体などが挙げられる。
【0097】
これらの中で、より適度な粘度を有する観点から、熱可塑性エラストマー及びポリ(メタ)アクリレートが好ましく、熱可塑性エラストマーがより好ましい。
【0098】
[F]ポリマー成分としては、重合部位を有するものが好ましい。[F]ポリマー成分が重合部位を有することで、[F]ポリマー成分と脱保護反応生成物(p)等とが共重合し、その結果、上述の初期接着強度の向上、粘度調整及び硬化収縮抑制をより効果的に行うことができる。上記重合部位としては、例えばポリマー主鎖中の炭素−炭素二重結合、ポリマーの側鎖又は末端が有する重合性基等が挙げられる。重合部位を有する[F]ポリマー成分としては、例えば共役ジエン系共重合体の未水素添加体が挙げられる。これらの中でも、より適度な粘度を有する観点から、SBSが好ましい。
【0099】
[F]ポリマー成分としては、ポリマー粒子であってもよく、粒子を形成していないポリマーであってもよい。組成物(II)は、[F]ポリマー成分として、ポリマー粒子を含有することが好ましい。組成物(II)がポリマー粒子を含有することで、当該2液混合型接着剤は、接着層の柔軟性をより向上させることができる。また、組成物(II)は、[F]ポリマー成分として、ポリマー粒子と粒子を形成していないポリマーとを含有することがより好ましい。組成物(II)がポリマー粒子と粒子を形成していないポリマーとを両方含有することで、当該2液混合型接着剤は、接着層の柔軟性をさらに向上させることができる。
【0100】
上記ポリマー粒子を形成する[F]ポリマー成分としては、ポリオレフィン、ポリスチレン、スチレン共重合体、ポリ(メタ)アクリレート、ポリジエンアクリル共重合体及びこれらのポリマーの構造を含む共重合体が好ましく、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリジエン及びこれらのポリマーの構造を含む共重合体がより好ましい。
【0101】
上記ポリマー粒子の平均粒子径の下限としては、0.005μmが好ましく、0.01μmがより好ましく、0.05μmがさらに好ましく、0.1μmが特に好ましい。上記平均粒子径の上限としては、1μmが好ましく、0.8μmがより好ましく、0.6μmがさらに好ましく、0.4μmが特に好ましい。
【0102】
上記ポリマー粒子としては、例えば単一粒子、コア−シェル構造を有する粒子(コア−シェル粒子)等が挙げられる。これらの中で、コア−シェル粒子が好ましい。上記ポリマー粒子としてコア−シェル粒子を用いることで、当該2液混合型接着剤は、接着層の柔軟性をさらに向上させることができる。このようなコア−シェル粒子の市販品としては、例えばカネカ社の「カネエースM−511」、「同M−521」、「同M−570」、「同M−711」、JSR社の「FX602P」、「FX501」、日本ゼオン社の「ゼオンF351」等が挙げられる。
【0103】
[F]ポリマー成分としてポリマー粒子を含有している場合、[F]ポリマー成分中の上記ポリマー粒子の含有率の下限としては、10質量%が好ましく、15質量%がより好ましく、20質量%がさらに好ましく、25質量%が特に好ましい。上記含有率の上限としては、70質量%が好ましく、60質量%がより好ましく、50質量%がさらに好ましく、45質量%が特に好ましい。上記ポリマー粒子の含有率を上記範囲とすることで、当該2液混合型接着剤は、接着層の柔軟性と接着強度とを共に高めることができる。
【0104】
上記粒子を形成していない[F]ポリマー成分としては、スチレン共重合体、ポリ(メタ)アクリレート、ポリジエン、熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂及びウレタン樹脂が好ましく、熱可塑性エラストマーがより好ましく、SBSがより好ましい。
【0105】
組成物(II)が[F]ポリマー成分を含有する場合、組成物(II)における[F]ポリマー成分の含有量の下限としては、1質量%が好ましく、5質量%がより好ましく、8質量%がさらに好ましく、10質量%が特に好ましい。上記含有量の上限としては、60質量%が好ましく、45質量%がより好ましく、35質量%がさらに好ましく、30質量%が特に好ましい。[F]ポリマー成分の含有量を上記範囲とすることで、初期接着強度の向上及び粘度調整、接着層の硬化収縮抑制等をより効果的に行うことができる。
【0106】
[その他の成分]
組成物(II)は、上記[C]〜[F]成分以外のその他の成分として、例えば架橋性化合物、可塑剤、無機充填剤、着色剤、金属塩、重合禁止剤等を含有していてもよい。これらのその他の成分は、それぞれ1種又は2種以上を含有していてもよい。
【0107】
(架橋性化合物)
上記架橋性化合物は、2以上の重合性基を有しかつイソシアネート基を有さない化合物である。組成物(II)に架橋性化合物を含有させることで、接着層の伸び率をより高めることができる。
【0108】
上記架橋性化合物が有する重合性基としては、例えば[E]重合性化合物が有する重合性基として例示したもの等が挙げられる。これらの中で、接着強度をより向上できる観点から、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0109】
上記架橋性化合物が有する重合性基の数としては、接着強度をより向上できる観点から、2〜4が好ましく、2及び3がより好ましく、2がさらに好ましい。
【0110】
上記架橋性化合物としては、例えば
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の鎖状グリコール系架橋性化合物;
トリシクロデカンジイルジ(メタ)アクリレート等の脂環式グリコール系架橋性化合物;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のトリメチロールプロパン系架橋性化合物;
ビスフェノールAビス(ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート)等のビスフェノール系架橋性化合物;
トリ(N−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等のイミド系イソシアヌレート系架橋性化合物;
下記式(2)で表される化合物等のウレタン系架橋性化合物;
下記式(3)で表される化合物等の末端ビスマレイミド変性のポリイミド系架橋性化合物などが挙げられる。
【0112】
上記式(2)中、mは、1〜20の整数である。
上記式(3)中、nは、1〜20の整数である。R
4及びR
5は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキレン基である。Ar
1は、炭素数6〜20のアリーレン基である。nが2以上の場合、複数のR
4は同一でも異なっていてもよく、複数のAr
1は同一でも異なっていてもよい。
【0113】
上記架橋性化合物としては、脂環式グリコール系架橋性化合物が好ましく、トリシクロデカンジイルジ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0114】
組成物(II)が架橋性化合物を含有する場合、組成物(II)における架橋性化合物の含有量としては、接着強度をより向上させる観点から、0.1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましく、2質量%がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、20質量%が好ましく、15質量%がより好ましく、12質量%がさらに好ましく、10質量%が特に好ましい。
【0115】
組成物(II)のその他の成分としての可塑剤、無機充填剤、着色剤、金属塩及び重合禁止剤についての説明、好ましいものについては、組成物(I)における他の成分の場合と同様である。
【0116】
<2液混合型接着剤の調製方法>
当該2液混合型接着剤は、例えば[A]錯体、[B]化合物及び必要に応じて他の成分を混合することにより組成物(I)を調製し、また別途、[C]化合物、[D]脱水剤並びに必要に応じて[E]重合性化合物、[F]ポリマー成分及びその他の成分を混合することにより組成物(II)を調製することにより得ることができる。
【0117】
<2液混合型接着剤の使用方法>
当該2液混合型接着剤は、公知の方法により使用することができる。接着操作の際に、まず、組成物(I)と組成物(II)とを混合する。
【0118】
組成物(I)に対する組成物(II)の使用量の質量比の下限としては、1が好ましく、3がより好ましく、5がさらに好ましく、9が特に好ましい。上記質量比の上限としては、30が好ましく、20がより好ましく、15がさらに好ましく、12が特に好ましい。各組成物の使用量の質量比を上記範囲とすることで、当該2液混合型接着剤における[B]化合物の使用量をより適度に低減することができ、その結果、接着強度をより高めることができる。また、当該2液混合型接着剤を、既存又は市販のカートリッジを用いて吐出させ、スタティックミキサーで混合するシステムで用いることができ、作業性をより高めることができる。
【0119】
次に、得られた混合物を被着材の一方に塗布した後、塗布した混合物に他方の被着材を密着させるように重ねること等により、接着を行うことができる。
【0120】
上記混合物を、両方の被着材に塗布した後、これらの塗布した混合物どうしを密着させるようにしてもよい。被着材としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)等の樹脂材料;ステンレス鋼(SUS)、溶融亜鉛メッキ鋼(SGHC)、電着鋼(ED)等の金属材料などが挙げられ、これらのうちの同種又は異種のものを用いることができ、樹脂材料どうし、金属材料どうし及び樹脂材料−金属材料の接着を行うことができる。両被着材の間に形成される接着層の厚みの下限としては、0.01mmが好ましく、0.05mmがより好ましく、0.1mmがさらに好ましい。上記厚みの上限としては、5mmが好ましく、3mmがより好ましく、1mmがさらに好ましい。
【実施例】
【0121】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0122】
<2液混合型接着剤の調製>
2液混合型接着剤の組成物(I)及び組成物(II)の調製に用いた各成分を以下に示す。
【0123】
[[A]錯体]
TEB−DAP:BASFジャパン社の「TEB−DAP」(テトラエチルボランと、ジアミノプロパンとに由来する錯体)
【0124】
[[B]化合物]
BP5P:三洋化成工業社の「ニューポールBP−5P」(水酸基価:211)
【0125】
[[C]化合物]
MOI:昭和電工社の「カレンズMOI」(2−イソシアナトエチルメタクリレート)
【0126】
[[D]脱水剤]
ゼオライト5A:ユニオン昭和社の「モレキュラーシーブ5A」
ゼオライト3A:ユニオン昭和社の「モレキュラーシーブ3A」
【0127】
[[E]重合性化合物]
THFMA:共栄社化学社の「ライトエステルTHF」
2EHMA:共栄社化学社の「ライトエステルEH」
【0128】
[[F]ポリマー成分]
SBS:JSR社の「TR2787」
M521:カネカ社の「カネエースM−521」(コア−シェル粒子)
【0129】
[実施例1](2液混合型接着剤(E−1)の調製)
【0130】
(組成物(I)の調製)
[A]錯体としてのTEB−DAP2.5質量部と、[B]化合物としてのBP5P7.5質量部とをプラスチック製容器中に入れて混合させ、組成物(I−1)を調製した。
【0131】
(組成物(II)の調製)
攪拌機を備えたセパラブルフラスコに、[E]重合性化合物としてのTHFMA50.5質量部並びに[F]ポリマー成分としてのSBS16.8質量部及び9.9質量部のM521を40℃のオイルバス中で3時間撹拌し、SBSを完全に溶解させ、M521を均一に分散させた。次いで、[C]化合物としてのMOI7.6質量部、[D]脱水剤としてのゼオライト5A0.5質量部及び[E]重合性化合物としての2EHMA14.7質量部を加えてさらに1時間撹拌して混合した後、2時間減圧脱泡して組成物(II−1)を調製した。
【0132】
[実施例2〜8及び比較例1](2液混合型接着剤(E−2)〜(E−8)及び(CE−1)の調製)
(組成物(I))
組成物(I)としては、実施例1で調製した組成物(I−1)を用いた。
【0133】
(組成物(II))
下記表1に示す種類及び含有量の各成分を用いた以外は、実施例1の組成物(II−1)の調製と同様にして、組成物(II−2)〜(II−8)及び(CII−1)を調製した。表1中の「−」は、該当する成分を用いなかったことを示す。
【0134】
[比較例2](2液混合型接着剤(CE−2)の調製)
(組成物(I))
[A]錯体としてのTEB−DAP2.5質量部と、[E]重合性化合物としてのTHFMA7.5質量部とをプラスチック製容器中に入れて混合させ、組成物(CI−1)を調製した。
【0135】
(組成物(II))
組成物(II)としては、実施例7で調製した組成物(II−7)を用いた。
【0136】
【表1】
【0137】
<評価>
上記調製した各2液混合型接着剤を用い、下記方法に従って、接着強度測定用試験片を作製し、下記剪断試験により接着強度(剪断強度)を測定し、評価した。
【0138】
[剪断強度の測定]
(試験片作製方法)
2枚の被着材(それぞれ縦2.5cm×横10cm)を準備し、それぞれ接着剤を塗布する直前に、アセトンを含んだ紙ワイパー(日本製紙クレシア社の「キムワイプ」)で表面の汚れを除去した。次に、組成物(I)と組成物(II)とをバッグ混合法により混合した。すなわち、ポリエチレン製の袋に、組成物(I)と組成物(II)とを(I):(II)=1:10の質量比になるようそれぞれ秤量し、袋を封じた後、均一に混合するため、手のひらの上で転動させることにより、1分間混合した。次いで、袋の隅をハサミでカットし、混合された接着剤を、被着材の一方の1.25cm四方の部分に均一に塗布した。接着剤の厚みを一定にするため、直径0.25mmのガラスビーズを挟んでから、他方の被着材を上に重ねて、試験片を作製した。
【0139】
(剪断試験方法)
上記作製した試験片について、接着部の引張剪断強度を、引張試験機(島津製作所社の「オ−トグラフAG5000B」)を使用してJIS−K6850に準拠して測定した。測定条件は、温度:23℃、チャック間距離:110mm、テストスピード:5mm/分とした。
【0140】
[接着強度及び保存安定性]
上記調製した実施例1〜8並びに比較例1及び2の2液混合型接着剤について、貯蔵温度を5℃、25℃及び40℃のそれぞれとし、貯蔵日数が0日(組成物の調製直後)、14日、30日、60日及び90日のそれぞれにおいて、また、被着材として、ガラス繊維補強ポリプロピレン/ガラス繊維補強ポリプロピレン(GFPP/GFPP)又は電着鋼/電着鋼(ED/ED)の場合の接着強度(剪断強度)の測定を行った。また、破壊モードを目視により評価した。破壊モードは、A:界面破壊、B:基材破壊、C:凝集破壊であったことをそれぞれ示す。評価結果を表2〜11にそれぞれ示す。
【0141】
2液混合型接着剤の保存安定性は、貯蔵温度が高い場合でも、貯蔵日数が長い場合の接着強度の低下が小さいほど、良好であると評価される。実施例1、実施例5及び比較例1の表中の「未硬化」は、組成物(I)と組成物(II)とを混合しても硬化せず、保存安定性が不良であることを示す。また、比較例2の表中の「CI−1硬化」は、組成物(CI−1)が保存中に単独で硬化し、保存安定性が不良であることを示す。
【0142】
【表2】
【0143】
【表3】
【0144】
【表4】
【0145】
【表5】
【0146】
【表6】
【0147】
【表7】
【0148】
【表8】
【0149】
【表9】
【0150】
【表10】
【0151】
【表11】
【0152】
表2〜11の結果から、組成物(I)に[A]錯体に加えて[B]化合物を含有させ、組成物(II)に[C]化合物に加えて[D]脱水剤を含有させた本発明の2液混合型接着剤は、保存安定性及び接着強度に優れることが示された。