特許第6851387号(P6851387)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴィジランス ヘルス イメージング ネットワーク インコーポレイテッドの特許一覧

特許6851387全身参照画像に基づく複数のMRI画像の歪み補正
<>
  • 特許6851387-全身参照画像に基づく複数のMRI画像の歪み補正 図000002
  • 特許6851387-全身参照画像に基づく複数のMRI画像の歪み補正 図000003
  • 特許6851387-全身参照画像に基づく複数のMRI画像の歪み補正 図000004
  • 特許6851387-全身参照画像に基づく複数のMRI画像の歪み補正 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851387
(24)【登録日】2021年3月11日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】全身参照画像に基づく複数のMRI画像の歪み補正
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20210322BHJP
【FI】
   A61B5/055 376
   A61B5/055 311
   A61B5/055 332
【請求項の数】22
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-542177(P2018-542177)
(86)(22)【出願日】2016年2月12日
(65)【公表番号】特表2019-508125(P2019-508125A)
(43)【公表日】2019年3月28日
(86)【国際出願番号】CA2016050132
(87)【国際公開番号】WO2017136914
(87)【国際公開日】20170817
【審査請求日】2018年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】518157780
【氏名又は名称】ヴィジランス ヘルス イメージング ネットワーク インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Vigilance Health Imaging Network Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ラジパウル アッタリワラ
【審査官】 伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0244823(US,A1)
【文献】 米国特許第05614827(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0168517(US,A1)
【文献】 国際公開第2007/113992(WO,A1)
【文献】 特開2008−086748(JP,A)
【文献】 特開平08−275929(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/155461(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00 − 24/14
G01R 33/28 − 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴イメージングシステムを用いて被検対象の全体画像を形成する複数の一部分の少なくとも1つの参照画像を1回の処理で取得するステップと、
前記少なくとも1つの参照画像に基づいて磁場不均質性分布を求めるステップと、
前記磁場不均質性分布に基づいて、前記被検対象の前記複数の一部分の各々の補正磁場に関する情報を含む補正磁場マップを記憶するステップと、
前記磁気共鳴イメージングシステムによって、前記被検対象の前記複数の一部分の各々にそれぞれ対応する複数の画像を取得するステップと、
前記複数の画像の各々の取得中に、前記被検対象の各対応する一部分について前記補正磁場マップによって指定された補正磁場を印加するステップと、
を有する方法。
【請求項2】
前記方法はさらに、
前記複数の画像に基づいて合成画像を生成するステップ
を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記補正磁場は、前記参照画像から特定される磁場不均質性を補正するように構成されている、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記方法はさらに、
前記不均質性分布に基づいて参照画像に係る補正磁場に関する情報を求めるステップ
を有する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記磁気共鳴イメージングシステムを用いて参照画像を取得するステップはさらに、
前記磁気共鳴イメージングシステムによって生成される勾配磁場の第1の勾配エコー重み付けを用いて第1の参照画像を取得するステップと、
第2の勾配エコー重み付けを用いて第2の参照画像を取得するステップと、
を有する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記方法はさらに、
前記第1の参照画像と前記第2の参照画像との間の位相差に基づいて磁場不均質性を求めるステップと、
前記磁場不均質性に基づいて前記補正磁場マップを生成するステップと、
を有する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの非一時的なコンピュータ可読媒体であって、
前記コンピュータ可読媒体は、計算システムによって実行されるときに当該計算システムに、
磁気共鳴イメージング装置を用いて被検対象の全体画像を形成する複数の一部分の1つまたは複数の参照画像を1回の処理で取得させ、
前記1つまたは複数の参照画像に基づいて磁場不均質性分布を求めさせ、
前記磁場不均質性分布に基づいて、前記被検対象の前記複数の一部分の各々の補正磁場に関する情報を含む補正磁場マップを記憶させ、
前記磁気共鳴イメージングシステムを用いて前記被検対象の前記複数の一部分の各々にそれぞれ対応する複数の画像を取得させ、
前記被検対象の前記複数の一部分の前記複数の画像の各々の取得中に、当該被検対象の一部分について前記補正磁場マップによって指定された補正磁場であって、前記磁気共鳴イメージングシステムの1つまたは複数の補正コイルによって生成された補正磁場を印加させ、
前記複数の画像に基づいて合成画像を生成させる、
ための実行可能な指令を用いて符号化されている、少なくとも1つの非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項8】
前記少なくとも1つの非一時的なコンピュータ可読媒体はさらに、前記計算システムによって実行されるときに当該計算システムに、
前記磁場不均質性分布に基づいて前記補正磁場を求めさせる、
ための指令を有する、請求項7記載の少なくとも1つの非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項9】
前記少なくとも1つの非一時的なコンピュータ可読媒体はさらに、前記計算システムによって実行されるときに当該計算システムに、
少なくとも前記磁場不均質性分布と、前記補正磁場と、前記1つまたは複数の参照画像と、前記複数の画像とを記憶させる、
ための指令を有する、請求項8記載の少なくとも1つの非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項10】
前記被検対象の前記1つまたは複数の参照画像は、前記複数の画像より低解像で取得される、
請求項7記載の少なくとも1つの非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項11】
前記計算システムに前記複数の画像に基づいて合成画像を生成させるための指令はさらに、当該計算システムに当該複数の画像を組み合わせてスティッチングさせるためのものである、
請求項7記載の少なくとも1つの非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項12】
前記参照画像は、人体の画像を含み、
前記複数の画像の各々は、前記人体の各一部分の画像を含む、
請求項7記載の少なくとも1つの非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項13】
前記人体の各一部分は、器官を含む、
請求項12記載の少なくとも1つの非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項14】
各対応する制御信号の受信に応答して各磁場を生成する主コイルおよび複数の補正コイルを備えた磁気共鳴イメージングシステムと、
前記磁気共鳴イメージングシステムに結合された計算システムと、
を備えたシステムであって、
前記計算システムは、前記磁気共鳴イメージングシステムへ制御信号を供給するように構成されており、
前記制御信号は、前記磁気共鳴イメージングシステムに、
前記主コイルによって生成された磁場を使用して患者の身体の全身画像を形成する複数の一部分を含む1つまたは複数の参照画像を1回の処理で取得させ、
前記患者の複数の部分画像の各々の取得中に、前記主コイルが主磁場を生成しているときに、前記複数の補正コイルのうち少なくとも1つによって、前記1つまたは複数の参照画像の前記複数の一部分の各一部分に基づいて求められた補正磁場を印加させ、
前記複数の部分画像に基づいて前記患者の合成画像を生成させる
ためのものである、システム。
【請求項15】
前記磁気共鳴イメージングシステムはさらに、前記1つまたは複数の参照画像の取得中に、それぞれ異なる勾配エコー重み付けの勾配磁場を生成するように構成された勾配磁気コイルを備えている、
請求項14記載のシステム。
【請求項16】
前記計算システムは、前記1つまたは複数の参照画像に基づいて磁場不均質性分布を求め、少なくとも前記不均質性分布に基づいて前記補正磁場を求める
ように構成されている、
請求項14記載のシステム。
【請求項17】
前記計算システムはさらに、前記1つまたは複数の参照画像と、前記不均質性分布と、前記補正磁場と、前記複数の部分画像とを記憶するように構成されたメモリを備えている、
請求項16記載のシステム。
【請求項18】
前記磁気共鳴イメージングシステムはさらに、前記複数の部分画像の各々の取得中に前記不均質性分布に基づいて前記複数の補正コイルを制御するように構成された補正コイルコントローラを備えている、
請求項16記載のシステム。
【請求項19】
患者の全身の前記1つまたは複数の参照画像が、当該患者の前記複数の部分画像より低解像で取得される、
請求項14記載のシステム。
【請求項20】
前記補正磁場は、前記磁場不均質性分布の解析によって特定される所定の調和を補正するように構成されている、
請求項1記載の方法。
【請求項21】
前記補正磁場は、前記磁場不均質性分布の解析によって特定される所定の調和を補正するように構成されている、
請求項8記載の少なくとも1つの非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項22】
前記補正磁場は、前記磁場不均質性分布の解析によって特定される所定の調和を補正するように構成されている、
請求項14記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
磁気イメージングは、患者分析についての採択を増加させ続けている。その画像によって、臨床医は患者の内部構造を撮像し、処置の推奨を行うことができる。しかし、磁気イメージングは典型的には、問題部位が分離された後に使用されるか、または少なくとも、何らかの事前診断に基づいて問題部位が特定された後に使用される。磁気イメージングはターゲットが定まっている状況では有用であるが、全身磁気イメージングは、全身画像を取得する際に生じる種々の問題に部分的に起因して、未だ大幅な調整を必要とする。たとえば、撮像装置の能力と撮像シーケンス自体とに部分的に起因して生じ得る歪みが、磁気イメージング技術を悩ませている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
発明の概要
一般的に、方法およびシステムを包含する技術を記載する。一例の方法は、磁気共鳴イメージングシステムを用いて被検対象の少なくとも1つの参照画像を取得するステップと、少なくとも1つの参照画像に基づいて、被検対象の複数の各一部分の補正磁場に関する情報を含む補正磁場マップを記憶するステップと、磁気共鳴イメージングシステムによって、被検対象の各一部分にそれぞれ対応する複数の画像を取得するステップと、複数の各画像の取得中に、被検対象の各対応する一部分について補正磁場マップによって指定された補正磁場を印加するステップとを有することができる。
【0003】
一例のコンピュータプログラムは、少なくとも1つの非一時的なコンピュータ可読媒体を備えており、コンピュータ可読媒体は、計算システムによって実行されるときに当該計算システムに、磁気共鳴イメージング装置を用いて被検対象の1つまたは複数の参照画像を取得させ、1つまたは複数の参照画像に基づいて、被検対象の複数の一部分の補正磁場に関する情報を含む補正磁場マップを記憶させ、磁気共鳴イメージングシステムを用いて被検対象の複数の一部分の複数の画像を取得させ、被検対象の複数の一部分の複数の各画像の取得中に、当該被検対象の一部分について補正磁場マップによって指定された補正磁場であって、磁気共鳴イメージングシステムの1つまたは複数の補正コイルによって生成された補正磁場を印加させ、複数の画像に基づいて合成画像を生成させる実行可能な指令を用いて符号化されている。
【0004】
一例のシステムは、各対応する制御信号の受信に応答して各磁場を生成する主コイルおよび複数の補正コイルを備えた磁気共鳴イメージングシステムと、磁気共鳴イメージングシステムに結合された計算システムとを備えている。計算システムは磁気共鳴イメージングシステムへ制御信号を供給するように構成することができ、制御信号は磁気共鳴イメージングシステムに、主コイルによって生成された磁場を使用して患者の身体の1つまたは複数の参照画像を取得させ、患者の複数の各部分画像の取得中に、主コイルが主磁場を生成しているときに、複数の補正コイルのうち少なくとも1つによって、1つまたは複数の参照画像の各一部分に基づいて求められた補正磁場を印加させ、複数の部分画像に基づいて患者の合成画像を生成させるものである。
【0005】
上記の概要は単なる例示に過ぎず、いかなる限定も意図したものではない。図面および以下の詳細な説明を参照すれば、上記の例示の側面、実施形態および特徴の他にさらなる側面、実施形態および特徴が明らかになる。
【0006】
添付の図面を参照して、以下の説明と添付の特許請求の範囲とを読むことにより、本願の開示対象の上記および他の特徴がより完全に明らかとなる。本図面は、本願開示対象の一部の例を示しているに過ぎないため、本願開示対象の範囲を限定するものとみなしてはならないとの理解の下で、添付図面を使用して本願開示対象をさらに具体的かつ詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本願にて開示する少なくとも一部の実施形態の配置構成のシステムの概略図である。
図2】本願開示対象の少なくとも一部の実施形態の配置構成の、被検対象のイメージング方法の一例を示す図である。
図3】本願開示対象の歪みの無い全身MR画像を生成するように構成された一例の計算装置を示すブロック図である。
図4】本願開示対象の歪みの無い全身MR画像を生成するための指令を記憶するように構成された一例のコンピュータプログラム製品を示すブロック図である。
【0008】
これらは全て、本願開示対象の少なくとも一部の実施形態の構成となっている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
以下の詳細な説明においては、添付の図面を参照しており、本図面はその一部を構成する。図面中、同様の符号は典型的には、文脈から特段の事情が明らかでない限りは、同様の構成要素を示している。詳細な説明、図面および特許請求の範囲に記載されている例示的な実施例は、本発明を限定することを意図したものではない。本願にて開示されている主題の思想および範囲から逸脱することなく、他の例を使用することができ、また、他の変更を行うことができる。本願開示対象の、本願にて一般化して記載された側面および図面に詳解されている側面は、幅広い種々の構成で配置、置換、組み合わせ、分離および設計することができ、これら種々の構成は全て、本願に暗黙的に包含されるものであることが、容易に理解することができる。
【0010】
本願開示対象は、特に、全身参照画像に基づく複数のMRI画像の歪み補正全般に関する方法、システム、製品、デバイスおよび/または装置に及ぶ。全身参照画像に基づいて複数のMRI画像の歪み補正を行うための一例の方法は、磁気共鳴イメージングシステムを用いて被検対象の少なくとも1つの参照画像を取得するステップと、少なくとも1つの参照画像に基づいて、被検対象の複数の各一部分の補正磁場に関する情報を含む補正磁場マップを記憶するステップと、磁気共鳴イメージングシステムによって、被検対象の各一部分にそれぞれ対応する複数の画像を取得するステップと、複数の各画像の取得中に、被検対象の各対応する一部分について補正磁場マップによって指定された補正磁場を印加するステップと、を有することができる。
【0011】
以下の説明および実施例全体を通じて、本発明の例示的な説明は、診断および/または処置のための空間的精度が高い全身MR画像の生成について記載されている場合があるが、本発明の実施例は、複数の部分要素画像のスティッチングを要する実際に全てのイメージング装置から高い空間的精度の合成画像を生成するために適用することができると解すべきものである。
【0012】
図1は、本願にて開示する少なくとも一部の実施形態の配置構成のシステム100の概略図である。図1は、計算システム106に結合された磁気共鳴イメージングシステム102を示している。磁気共鳴イメージングシステム102は、患者170を配置するための台172を備えることができる。これによって患者を、磁気共鳴イメージングシステム102の孔の中へ輸送することができる。磁気共鳴イメージングシステムは、主コイル150と、たとえばコイル155等の1つまたは複数の勾配コイルと、たとえばコイル160等の1つまたは複数のRFコイルと、たとえばコイル165等の1つまたは複数の補正コイルとを備えることができる。計算システム106は少なくとも、プロセッサ108およびメモリ110を備えることができ、メモリ110は補正磁場マップ112を保有することができる。図1に示されている種々の構成要素は単なる例であり、構成要素を除外し、構成要素を組み合わせ、および、構成要素を置換することを含めた他の態様は全て、想到し得る範囲内である。
【0013】
磁気共鳴イメージング(MRI)システム102は、当該MRIシステム102の孔の中に位置する患者に1つまたは複数の磁場を供給することができる。MRIシステム102は一般的に、被検対象を受容するように構成された孔と、1つまたは複数のMRI画像を生成するために孔内に磁場を供給するためのコイルとを備えることができる。MRIシステム102は、MRI画像を生成するために十分な磁場を生成するための主コイル150を備えることができる。MRIシステム102はまた、孔の全部または一部にRF磁場を供給するための、たとえばコイル160等のRFコイルを備えることもできる。一部の実施例においては、RFコイルは、磁場を供給するために使用されるコイルを収容する器具と同一の器具に組み込むことができ、および/または、磁場を供給するために使用される他のコイルと一体とすることができる。一部の実施例においては、孔にRFエネルギーを供給するために配置された別体の装置にRFコイルを設けることができる。図1にはRFコイル160の一部のみの断面が示されており、他の実施例においては、他の幾何形態、断面および位置が可能である。MRIシステム102はまた、孔を通じて勾配磁場を供給するために配置された、たとえばコイル155等の1つまたは複数の勾配コイルを備えることもできる。図1には勾配コイル155の一部のみの断面が示されており、他の実施例においては、他の幾何形態、断面および位置が可能である。
【0014】
MRIシステム102は、たとえばコイル165等の1つまたは複数の補正コイルを備えることができる。補正コイルは、孔内に、磁場の不揃いを補償することができる磁場を供給することができる。この不揃いは、たとえば患者自身によって生じ得るものである。図1には補正コイル165の一部のみの断面が示されており、他の実施例においては、他の幾何形態、断面および位置が可能である。さらに一部の実施例においては、補正コイル165を含めた補正コイルのうち1つまたは複数を、本願にて記載されている他のコイルのうち1つまたは複数と統合することができる。
【0015】
一般的に、本願にて記載されている技術においては、全ての被検対象を撮像することができ、これには人間(成人および子供を含む)ならびに動物(畜牛、馬、犬および猫)が含まれるが、これらは限定列挙ではない。
【0016】
本願にて記載されているイメージングにおいて使用される主磁場強度は、一般的に0.5〜3Tの範囲とすることができるが、他の磁場強度を使用することもできる。
【0017】
一般的には、被検対象をMRIシステムの孔内に配置して孔内に磁場を供給すると、被検対象中のプロトンの磁気モーメントが磁場の方向に沿って配向され得る。被検対象を撮像するときには、磁気共鳴イメージングシステムのRFコイルによってRFパルスを送ることができる。このRFパルスは、プロトンの平衡状態の方向からプロトンの磁気モーメントを傾斜させる作用を有し得る。その後、磁気モーメントは磁場まわりに歳差運動をしながら平衡状態に戻り、これによってRFコイルにRF応答信号が誘起される。一般的に、人体は大量の水分子を含むとみなすことができ、各水分子は2つのプロトンを有し、一般的にこのプロトンがRF応答信号を支配する。コイルに誘起されたRF応答信号は、プロトンが励起後に平衡状態に戻るのに要した時間、たとえば弛緩時間と関連付けることができる。弛緩時間の方は、患者内の局所周囲に依存することができ、たとえば組織構造、組織密度等に依存することができ、これによって、被検対象全体の画像コントラストの明らかな変化が生じる。
【0018】
受信されたRF応答信号は、それ自体では、空間的情報を何ら提供することができない。というのも、RF応答信号は、被検対象内の全ての位置からの寄与を有し得るからである。被検対象の3D画像を生成するためには、RF応答の空間周波数成分(たとえばkx,ky,kz)を測定して、フーリエ変換によって、空間的位置に関連付けることができる。
【0019】
一部の実施例においては、MRIシステム102は、所与の空間的方向において線形に変化し得る付加的な勾配磁場を生成することができる。勾配磁場は一部の実施例においては、読出し中ではなくRFパルス印加中に印加することができる。RFパルスは、勾配値の僅かな範囲内の被検対象中のプロトンの共鳴周波数に相当する周波数を選択的に励起するように構成することができる。この選択的な励起によって、被検対象の有限の厚さの2Dスライスに由来する信号、たとえばアキシャルスライス、サジタルスライスまたはコロナルスライスに由来する信号を生成することができる。2D逆フーリエ変換を使用して、スライスの画素値を生成することができる。複数の異なる位置において複数の連続したスライスを取得して融合することにより、患者のスライスごとの3D表現を生成することができる。
【0020】
一部の実施例においては、生成された磁場といずれかの勾配磁場とを可能な限り均質にすることが望ましい場合がある。不均質であると、MRI画像に空間的歪みが生じる原因となる可能性があり、これは、使用されるRFパルスシーケンスに依存し得る。不均質性の中には、被検対象固有となり得るものもある。かかる被検対象固有の不均質性が被検対象ごとに変わり得るのは、患者がそれぞれ、その解剖学的構造に基づいて磁場感受性の特有の空間的歪みを有するからである。かかる被検対象ごとのばらつきによって、被検対象ごとに磁場の空間的歪みの特有のパターンが生じ得る。被検対象固有の磁場歪みは、一般的に、シミングと呼ばれる技術によって補正することができる。これは、付加的なコイル(たとえば、補正コイル165等の補正コイル)を使用して補正磁場を、たとえばシミング磁場を生成することができ、一部の実施例においては、たとえば患者の解剖学的構造に起因して生じ得る主磁場の不均質性を補正するために、この補正磁場を供することができる。
【0021】
よって、磁気共鳴イメージングシステム102は少なくとも、孔内にMRI画像を生成するために十分な磁場を供給するように構成された、たとえば主磁気コイル150等の第1の磁気コイルを備えることができる。たとえば、実質的に孔の長さ全体にわたって患者を包囲するように主磁気コイルを設けることができる。さらに、たとえば図1のコイル155および160等のRFコイルおよび/または勾配コイルを使用して、MRI撮像用の磁場を生成することもできる。磁気共鳴イメージングシステム102はさらに、被検対象の存在下で主コイル、(1つもしくは複数の)RFコイルおよび/または(1つもしくは複数の)勾配コイルによって生成された磁場の不均質性を低減または消失させることができる付加的な磁場を孔内に生成できる、たとえばコイル165等の1つまたは複数の付加的なコイル(たとえば補正コイル)を備えることができる。補正コイルと主コイルおよび/または他のコイルとの組み合わせで生成された磁場は主磁場に加わると、被検対象の存在下で、たとえば複合磁場等、均質な磁場(または均質性が改善された磁場)を生成することができる。
【0022】
補正コイルは、異なる強度、異なる球面調和関数および/または異なる周波数の複数の磁場を生成するために個別に制御することができる1つまたは複数の個別のコイルを含むことができる。一部の実施形態においては、補正コイルのうち一部の補正コイルを超電導コイルとすること、たとえば、5〜20個のコイルをMRIクライオスタット内に配置したものとすることができ、および/または、一部の補正コイルを抵抗性とすること、たとえば、勾配コイルと共に常温で搭載したものとすることができる。一部の実施形態においては、微小のバイアスオフセット電流を印加することによって勾配コイル自体を補正コイルとして使用することができる。一部の実施形態においては、少なくとも5つの付加的な抵抗性コイルを使用し、これには、個別のワイヤ巻線の列または円筒状の銅板にエッチングしたものの列が含まれる。一部の実施形態においては、複数の環形のアキシャルコイルおよび/または鞍型の横断コイルの組み合わせを使用して補正コイルを実現することができる。一部の実施形態においては、補正コイルはマトリクスコイルを含むことができ、これは一部の実施例においては、補正の精度および効率を改善することができる。一部の実施形態においては、主磁場を生成するための主コイル、指向性の勾配磁場を生成するための勾配コイル、および、補正磁場を生成するための補正コイルを、MRIシステム102と一体不可分とすることができる。一部の実施形態においては、RFコイルを孔内に配置することもでき、または、一部の事例においては、被検対象に近接して配置することができる可動の装置に配置することができる。この可動の装置は一部の実施例においては、より高い信号雑音比を達成するために使用することができるものである。一部の実施例においては、(1つまたは複数の)主磁気コイルと補正コイルとは、MRIシステム102の孔内へ各自の磁場を供給するように独立して制御されることができる。一部の実施形態においては、補正コイルによって生成された磁場が主コイルによって供給された磁場と相互作用して、患者の存在に起因する主コイルの磁場の不均質性を低減または消失させることができる。
【0023】
たとえば、主磁場と少なくとも1つの補正磁場との組み合わせによって生成される複合磁場が、主磁場単独の場合より均質となることができる。これは特に、孔内に被検対象が存在する場合に当てはまる。
【0024】
計算システム106は、1つまたは複数の処理ユニット(たとえばプロセッサ108)とメモリ110とを備えることができる。メモリは、本願にて記載されている機能を果たすための実行可能な指令によって符号化することができ、この機能は、たとえば、1つまたは複数の参照画像に基づいて補正磁場マップを記憶して補正磁場情報をMRIシステム102へ供給する機能、または、補正磁場マップによって指定された補正磁場を用いてMRIシステム102を動作させる機能等である。一部の実施例においては、メモリを補正磁場マップ112自体によって符号化することができる。計算システム106は、1つまたは複数の制御信号をMRIシステム102へ供給することができる。制御信号は、有線接続または無線接続を用いて供給することができる。計算システム106は、被検対象の撮像中に特定の補正磁場を印加するための制御信号をMRIシステム102へ供給することができる。補正磁場は、補正磁場マップの参照値に基づいて特定することができ、この参照値はメモリ110に記憶することができる。補正磁場マップは、被検対象の参照画像(たとえば全身画像)に基づくことができる。被検対象の参照画像を取得して、当該被検対象の各一部分を後で撮像するための補正磁場マップを生成するためにこの参照画像を使用することにより、一部の実施例においては、その後の撮像をより効率的にすることができる。たとえば、補正磁場マップは、患者の長さ方向における各位置で使用される補正磁場を提示することができ、これらの補正磁場をその後の患者の全身撮像中に使用することができる。一部の実施例においては、補正磁場マップは患者の長さ方向における特定の一部分(たとえば特定の部位、器官、組織)に使用される補正磁場を提示することができる。患者の当該一部分を撮像する際には、適切な補正磁場を使用することができる。これによって、一部の実施例においては、被検対象の撮像対象の一部分の画像を先に撮って補正磁場を計算してからその後に、他のいずれかの撮像対象の一部分についてプロセスを繰り返す前に補正磁場を使用して当該被検対象の当該一部分を撮像する必要性を回避することができる。これに代えて、1つの補正磁場マップを参照画像(たとえば全身参照画像)から生成することができ、その後に被検対象の一部または全部を撮像するための補正磁場を生成するためにこの1つの補正磁場マップにアクセスすることができる。補正磁場に係る制御信号をMRIシステム102へ供給するために使用される計算システム106は、MRI画像を取得するようにMRIシステム102を動作させるために使用される計算システムと同一のものとすることが可能でありまたは同一のものとしないことが可能であると解すべきである。
【0025】
一部の実施例においては、身体の撮像対象部位ごとに1つの参照画像を用いるのではなく1つの参照画像を用いることが利点を奏し得る。一部の実施例においては、かかる手法は全スキャン時間を約10〜15%削減することができる。たとえば、約12シーケンスを含み得る全身スキャンに60分かかっていたものを、全身スキャンにかかる時間を50分にすることができる。約3〜4シーケンスを含み得る脊椎スキャンの場合、一部の実施例においては、スキャンに30分かかっていたものを25分にすることができる。
【0026】
動作中に、計算システム106(および/または他の計算システム)は、MRIシステム102の孔内に位置する被検対象の1つまたは複数の参照画像を取得するように、当該MRIシステム102を制御することができる。一部の実施例においては、参照画像を取得しているときに、被検対象を孔内において連続的または離散的に直線移動させることができる。
【0027】
1つまたは複数の参照画像は低解像の画像とすることができ、その後、計算システム106によってより高解像の画像を撮る際に補正磁場を供給するためにこの低解像の画像を使用することができる。参照画像を計算システム106によって解析して当該参照画像中の不均質性分布を特定し、不均質性を低減または消失させるために補正磁場を計算することができる。この補正磁場は、1つの参照画像の複数の各一部分に対応する補正磁場を記憶可能な補正磁場マップに記憶することができる。一部の実施形態においては、MRIシステム102の座標系に従って、マスタ参照画像の一部分と補正磁場情報とを関連付けることができる。たとえば、補正磁場マップは補正磁場情報をMRIシステム102の座標とマッピングすることができる。たとえば、補正磁場マップ112を球面調和関数の式で記述することができる。球面調和関数は複数の基底関数の総和を表すことができ、その各基底関数は、補正磁場における基底関数の強さを記述する対応する係数をそれぞれ有する。よって、補正磁場マップ112は各基底関数の係数を含むことができる。対応する補正磁場の完全な分布は、全ての基底関数と補正磁場マップに記憶された当該基底関数の各係数とを乗算することによって復元することができる。MRIシステム102の特定の座標を撮像する際に、補正磁場マップのうち、これに関連付けられた補正磁場を使用することができる。一部の実施例においては、補正磁場マップは補正磁場情報を被検対象の特徴(たとえば部位、領域、器官、組織)とマッピングすることができる。これらの特徴を撮像する際に、MRIシステム102は補正磁場マップに表されている適切な補正磁場を適用することができる。
【0028】
一部の実施形態においては、計算システム106(および/または他の計算システム)は、患者の高解像の部分画像列を取得するようにMRIシステム102を制御することができ、この部分画像列は、補正磁場マップの各対応する一部分に基づいて補正コイルによって印加される補正磁場を用いて取得することができる。
【0029】
プロセッサ108は、たとえば、1つまたは複数の処理コアをそれぞれ備えた1つまたは複数の中央処理ユニット(CPU)を用いて具現化することができる。プロセッサ108はたとえば、メモリ110に記憶されたソフトウェア(たとえば実行可能な指令)を用いてタスクを実行することができる。さらに、プロセッサ108は補正磁場を計算して補正磁場マップを記憶させることもできる。
【0030】
メモリ110は、一般的に、本願にて記載されている機能を実行するための指令を符号化することができる、揮発性メモリまたは不揮発性メモリを含めた全ての電子記憶装置とすることができる。メモリ110は、さらに、MRIシステム102によって取得された画像を補正磁場マップと共に記憶することもできる。たとえば、メモリ110は、1つまたは複数の参照画像と、補正磁場マップと、補正磁場マップ112に基づく補正磁場を用いて撮られた1つまたは複数の連続画像とを記憶することができる。
【0031】
計算システム106は、補正磁場情報を、MRIシステム102の補正コイルへ供給することができる。たとえば、MRIシステム102は画像を取得するときに、補正磁場マップから、1つまたは複数の参照画像の対応する一部分に基づく補正磁場情報を受け取ることができる。さらに、計算システム106はMRIシステム102の複数の補正コイルを制御することができ、これら複数の補正コイルはMRIシステム102と一体不可分とすることができ、または、MRIシステム102の孔内に位置することができる。一般的に、補正コイルは次の画像取得中に主磁場の磁場不均質性を補償することができる。計算システムは、補正コイルに電流を流してMRIシステム102の孔内に所望の補正磁場を誘起させる制御信号を、補正コイルへ供給することができる。
【0032】
一例の動作においては、1つまたは複数の参照画像をMRIシステム102によって取得してメモリ110に記憶することができる。この1つまたは複数の参照画像は、患者の全身の画像とすることができる。たとえば、人間の患者の撮像は当該患者の全身の1つまたは複数の参照画像の取得、たとえば頭部からつま先までの1つまたは複数の参照画像の取得を含むことができる。一部の実施例においては、身体の一部のみを参照画像のために撮像することができる(たとえば、つま先から腰部まで、腰部から頭部まで)。
【0033】
1つまたは複数の参照画像は、冠状面スライス、矢状面スライスおよび軸位面スライスとして、または任意の方向からの投影像として、視覚的に提示することができる。また、たとえば、本願にて記載されている補正磁場を使用して撮られる次の画像の視野および配置を特定するために、1つまたは複数の参照画像を使用することもできる。
【0034】
参照画像において不均質性を解析することができる手法は種々存在する。たとえば、エコー時間がそれぞれ異なる複数の勾配エコー画像を収集して、その後にマスタ参照画像間の位相差から補正磁場を計算することによって、不均質性をマッピングすることができる。一部の実施例においては、より高速の取得を可能にするため、複数の異なる方向において勾配エコー画像の「ペンシル」プロファイルを収集することができる。
【0035】
一部の実施形態においては、2つの参照画像を、それぞれ異なる勾配エコー重み付けで取得することができる。それぞれ異なる勾配エコー重み付けで取得された2つの参照画像により、計算システム106は2つの参照画像間の位相差Δφを求めることができる。この位相差から、計算システムは数式Δφ/(γΔTE)によって磁場不均質性を求めることができる。同式中、Δφは2つの参照画像間の位相差であり、TEはエコー時間であり、γは磁気回転比である。一部の実施例においては、低次の球面調和関数を用いて磁場歪みを大局的に高精度で補正することができない場合がある。かかる実施例においては、磁場補正情報はスライスごとの情報を含むことができ、たとえば、3D画像全体にわたってではなく2D画像を含むことができる。
【0036】
計算システムは、1つまたは複数の参照画像に基づいて1つまたは複数の不均質性分布を求めて、不均質性を低減および/または消失させるように当該参照画像の一部分に対応した補正磁場を含む補正磁場マップを生成することができる。この1つまたは複数の不均質性分布および/または補正磁場マップは、完全な分布として記憶するか、または、分布の縮小次元表現として記憶することができる。一部の実施形態においては、計算システム106は、球面調和解析を用いて不均質性分布の調和成分を解析することにより、たとえば、補正磁場情報を求め、および/または、補正磁場マップを生成することができる。計算システム106は、不均質性分布における不所望の調和成分を特定し、この不所望の調和成分を低減および/または消失させるように、補正磁場を計算することができる。たとえば、補正磁場情報は、不所望の調和成分ごとに補償磁場を生成するための情報を含むことができる。一部の実施形態においては、不所望の各調和成分を補償するために、MRIシステム102の複数の補正コイルのうち、各対応する補正コイルを使用することができる。不均質性情報および/または補正磁場マップは、メモリ110に記憶することができ、および/または、計算システム106がアクセス可能な他の記憶装置に記憶することができる。
【0037】
一部の実施形態においては、データ量を低減するため、または、分布の平滑化を助けるため、他のパラメータもしくは関数で不均質性情報および/または補正磁場マップを表現することができる。一部の実施形態においては、完全なデータを維持するか、または、データを球面調和関数として表現する。他にも、データをフーリエ成分、主成分、独立成分、圧縮データとして、または、他のデータ縮小技術で表現することができる。たとえば、ローパスフィルタ、畳み込みカーネル、データ当てはめ、または、当該分野において公知の他の技術を用いて、データをさらに平滑化することもできる。
【0038】
被検対象の1つまたは複数の参照画像を取得した後、補正磁場マップに記憶された補正磁場に相当する補正磁場を用いて、当該被検対象の複数の画像を取得することができる。補正磁場を用いて取得される複数の画像は、1つまたは複数の参照画像より高解像で取得することができる。補正磁場を用いて取得される複数の画像は一部の実施例においては、合成されて患者の全身の画像となるものとすることもできる。たとえば複数の各画像は、患者の特定の部分ボリュームを表すことができ、たとえば胴部、頭部、脚等を表すことができる。画像の取得中、計算システム106は、主磁場に加わったときに撮像対象の一部分における磁場をほぼ均質にする補正磁場を生成するための制御信号を、MRIシステム102の補正コイルへ供給することができる。計算システム106は、部分画像の患者の一部分に相当する、メモリ110に記憶された補正磁場情報を使用することができる。一部の実施形態においては、計算システム106は、磁場が可能な限り均質になることを保証する、各個別の補正コイルに流れる電流の各最適な調整を発見するために、最適化アルゴリズムを使用することができる。一部の実施形態においては、最適化プロセスに重要でない一部の領域を最適化に含まないことが可能である。一部の実施形態においては、重要領域への重み付けを、低重要性の領域より重くすることができる。一部の実施例においては、複数の連続画像をメモリ110に記憶することができる。
【0039】
このようにして、先行の参照画像から得られた補正磁場マップによるそれぞれ異なる補正磁場を用いて撮られる複数の画像を、被検対象から取得することができる。参照画像は、1つの被検対象の複数の領域を含むことができる。複数の領域の連続画像は、補正磁場マップによって示されるそれぞれ異なる磁場を利用することができる。これによって、一部の実施例においては、被検対象の一部分ごとに参照画像を撮り、補正磁場を計算して、当該補正磁場を用いて被検対象の当該一部分を撮像することを不要とすることができる。これに代えて、1つまたは複数の参照画像を使用して、被検対象の複数の一部分に適用することができる補正磁場マップを生成し、MRIシステムが連続画像の取得中に、この補正磁場マップに従って複数の異なる一部分ごとに異なる補正磁場を使用して被検対象の複数の一部分を撮像するため、当該補正磁場マップにアクセスすることができる。
【0040】
補正磁場の存在下で画像を取得した後、一部の実施例においては、計算システム106はこの複数の画像を組み合わせてスティッチングすることによって、患者の合成画像を生成することができ、たとえば全身MRI画像を生成することができる。この合成画像は、空間的歪みを有意に有しないことが可能であり、よって、一部の実施例においては、この合成画像を診断および処置の基礎とすることができる。
【0041】
図2は、本願開示対象の少なくとも一部の実施形態の配置構成の、被検対象のイメージング方法200の一例を示す図である。一例の方法は、ブロック202,204,206,208,210,212,214および/または216のうち1つまたは複数によって示されている1つまたは複数の作業、機能または活動を含むことができる。ブロック202〜216において記載されている動作は、たとえば計算装置またはこれに類する構成の何らかの他のコントローラのコンピュータ可読媒体等のコンピュータ可読媒体に記憶されたコンピュータ実行可能な指令の実行(たとえば、本願にて記載されている1つまたは複数のプロセッサによる実行)に応答して実施することができる。
【0042】
一例のプロセスは、「少なくとも1つの参照画像を取得する」と記載したブロック202をもって開始することができる。ブロック202の次に、「不均質性分布を求める」と記載したブロック204を実施することができる。ブロック204の次に、「補正磁場を求める」と記載したブロック206を実施することができる。ブロック206の次に、「補正情報を記憶する」と記載したブロック208を実施することができる。ブロック208の次に、「対応する補正磁場を印加しながら第1の画像を取得する」と記載したブロック210を実施することができる。ブロック210の次に、「対応する補正磁場を印加しながら第2の画像を取得する」と記載したブロック212を実施することができる。ブロック212の次に、「対応する補正磁場を印加しながら第nの画像を取得する」と記載したブロック214を実施することができる。そして、ブロック214の次に、「第1、第2から第nまでの画像を組み合わせて合成画像を生成する」と記載したブロック216を実施することができる。
【0043】
上記の一例の方法に含まれるブロックは、例示のためのものである。一部の実施形態においては、これらのブロックを別の順序で実施することができる。一部の他の実施形態においては、複数のブロックを無くすことができる。さらに他の実施形態においては、複数のブロックを分割してブロックを増加すること、複数のブロックに他のブロックを追加すること、または、複数のブロックを組み合わせてより少数のブロックにすることが可能である。これらの特定のブロックの他の変形態様も想到することができ、かかる変形態様には、ブロックの順序の変更、分割するまたは組み合わせて他のブロックにするブロックの内容の変更等が含まれる。一部の実施例においては、それぞれ異なる勾配エコー重み付けを用いて2つの参照画像を取得することができ、この2つの参照画像から、これらの異なる勾配エコー重み付けに起因して生じる2つの参照画像の角度差に少なくとも部分的に基づいて、補正情報を求めることができる。
【0044】
ブロック202は、「少なくとも1つの参照画像を取得する」と記載されている。少なくとも1つの参照画像の取得は、患者の全身の低解像のMR画像の取得を含むことができる。たとえば、参照画像を取得するために粗設定を使用して患者をMRIシステム102によって撮像することができる。一部の実施形態においては、磁場不均質性の測定を支援するために2つ以上の参照画像を取得することができる。
【0045】
ブロック204は、「不均質性分布を求める」と記載されている。不均質性分布を求めるためには、少なくとも1つの参照画像を解析することによって、画像内の不均質性の空間的分布を求めることができる。この不均質性は、被検対象の解剖学的構造に起因して生じ得るものである。不均質性分布は、少なくとも1つの参照画像に基づく患者の磁場歪みマップに基づくことができる。一部の実施形態においては、エコー時間がそれぞれ異なる複数の勾配エコー画像を収集し、勾配エコー画像をマッピングして、勾配エコー画像間の位相差に基づき不均質性を求めることにより、不均質性分布を求めることができる。
【0046】
ブロック206は、「補正磁場を求める」と記載されている。補正磁場を求めるためには、球面調和解析を使用して不均質性分布の調和成分を解析することができる。球面調和解析は、少なくとも1つの参照画像における不所望の調和成分(たとえば閾値高調波を上回る調和成分、たとえば2次、3次、4次、またはより高次の高調波等)を特定し、補償磁場を生成するために補正コイルにどのように通電し得るかを特定することができる。補正磁場は、印加されたときに不所望の調和成分を相殺することができる磁場とすることができる。
【0047】
ブロック208は、「補正情報を記憶する」と記載されている。この記憶される補正情報(たとえば補正磁場マップ)は、少なくとも1つの参照画像と、不均質性分布と、求められた補正磁場とを含むことができる。たとえば、補正情報を図1のメモリ110に記憶することができる。補正磁場マップは、各補正磁場と被検対象の特定の部位(たとえば被検対象に沿った距離、イメージングシステムの座標系、被検対象の特徴、解剖学的構造、器官)とを関連付けるものとすることができる。
【0048】
ブロック210は、「対応する補正磁場を印加しながら第1の画像を取得する」と記載されている。補正磁場マップに表されている、被検対象の少なくとも一部分に適した補正磁場を印加しながら、当該一部分の第1の画像を取得することができる。この補正磁場を生成するために、補正磁場制御信号をイメージングシステムの1つまたは複数の補正コイルへ供給することができる。
【0049】
ブロック212は、「対応する補正磁場を印加しながら第2の画像を取得する」と記載されている。第2の画像の取得は、第1の画像の取得と実質的に同様に行うことができる。しかし、第2の画像を取得する際に使用される補正磁場は、補正磁場マップに含まれる、当該第2の画像で撮像される被検対象の一部分に関連付けられた情報に基づくことができる。
【0050】
ブロック214は、「対応する補正磁場を印加しながら第nの画像を取得する」と記載されている。第nの画像の取得は、第1の画像の取得と実質的に同様に行うことができる。しかし、第nの部分画像を取得する際に使用される補正磁場は、補正磁場マップに含まれる、当該第nの画像で撮像される被検対象の一部分に関連付けられた情報に基づくことができる。取得される画像の数は、各画像がどの程度の大きさかによって定まることができ、たとえば、被検対象のサイズに対する当該被検対象の一部分の相対的な大きさによって定まることができる。よって、取得される画像の数は一部の実施例においては、患者の全身を撮像するために必要な数とすることができる。
【0051】
ブロック216は、「第1、第2から第nまでの画像を組み合わせて合成画像を生成する」と記載されている。被検対象の合成画像を生成するため、一部の実施例においては、n個の画像を組み合わせ、たとえばスティッチングすることによって、当該被検対象の全身の高解像のMRI画像を生成することができる。また、補正磁場を患者全身の1つの参照画像に基づかせることにより、画像間の不整合および歪みを低減または消失させて、歪みの無い全身MRI画像を得ることができ、これは定性的評価を支援することができる。
【0052】
図3は、本願開示対象の歪みの無い全身MR画像を生成するように構成された一例の計算装置300を示すブロック図である。非常に基本的な構成301においては、計算装置300は典型的には1つまたは複数のプロセッサ310とシステムメモリ320とを備えている。プロセッサ310とシステムメモリ320との間の通信のためにメモリバス330を使用することができる。
【0053】
所望の構成に依存して、プロセッサ310は、マイクロプロセッサ(μP)、マイクロコントローラ(μC)、デジタル信号処理プロセッサ(DSP)、またはこれらの任意の組み合わせも含めた任意の種類とすることができるが、これらは限定列挙ではない。プロセッサ310は、レベル1キャッシュ311およびレベル2キャッシュ312等の1つ複数のキャッシュレベルと、プロセッサコア313と、レジスタ314とを備えることができる。プロセッサコア313の例には、算術論理装置(ALU)、浮動小数点装置(FPU)、デジタル信号処理コア(DSPコア)、または、これらの任意の組み合わせを含むことができる。一例のメモリコントローラ315をプロセッサ310と共に使用することも可能であり、または、一部の実装においては、メモリコントローラ315をプロセッサ310の内部の一部とすることもできる。
【0054】
所望の構成に依存して、システムメモリ320は、揮発性メモリ(たとえばRAM等)、不揮発性メモリ(たとえばROM、フラッシュメモリ等)、または、これらの任意の組み合わせを含めた任意の種類とすることができるが、これらは限定列挙ではない。システムメモリ320はオペレーティングシステム321と、1つまたは複数のアプリケーション322と、プログラムデータ324とを備えることができる。アプリケーション322はイメージングプロシージャ323を有することができ、このイメージングプロシージャ323は、本願にて記載されているようにMRI画像を生成するように構成されている。プログラムデータ324は補正情報を含むことができ、これは、1つもしくは複数の参照画像、不均質性分布情報、補正磁場情報(たとえば補正磁場マップ)、複数の画像、および/または、全身MRI画像プロシージャを実施するために使用可能な他の情報とすることができる。一部の実施形態においては、本願にて記載されているどのプロシージャも実行することができるように、アプリケーション322はオペレーティングシステム321上にてプログラムデータ324と共に協働するように構成することができる。ここで説明した基本的な構成は、図3においては、基本的構成301の破線内の構成要素によって示されている。
【0055】
計算装置300は、さらに他の構成または機能、ならびに、基本的構成301と任意の必要な装置およびインタフェースとの間の通信を容易にするための他のインタフェースを備えることができる。たとえば、記憶装置インタフェースバス341を介して、基本的構成301と1つまたは複数の記憶装置350との間で行われる通信を容易にするために、バス/インタフェースコントローラ340を使用することができる。記憶装置350は、リムーバブル記憶装置351、ノンリムーバブル記憶装置352、または、これらの組み合わせとすることができる。リムーバブル記憶装置およびノンリムーバブル記憶装置の例には、一部のみを挙げると、たとえばフレキシブルディスクドライブおよびハードディスクドライブ(HDD)等の磁気ディスクデバイス、たとえばコンパクトディスク(CD)ドライブまたはデジタル多目的ディスク(DVD)ドライブ等の光学ディスクドライブ、ソリッドステートドライブ(SSD)、および、テープドライブが含まれる。コンピュータ記憶媒体の例には、情報を記憶するための任意の手法または技術によって実現された揮発性および不揮発性、リムーバブルおよびノンリムーバブル媒体、たとえばコンピュータ可読指令、データ構造、プログラムモジュール、またはその他のデータを含むことができる。
【0056】
システムメモリ320、リムーバブル記憶装置351およびノンリムーバブル記憶装置352は全て、コンピュータ記憶媒体の例である。コンピュータ記憶媒体には、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリもしくは他のメモリ技術、CD‐ROM、デジタル多目的ディスク(DVD)もしくは他の光学記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置もしくは他の磁気記憶装置、または、所望の情報を記憶するために使用することができる他の任意の媒体であって、計算装置300によってアクセスすることができる他の任意の媒体が含まれるが、これらは限定列挙ではない。かかるコンピュータ記憶媒体はいずれも、計算装置300の一部とすることができる。
【0057】
計算装置300は、種々のインタフェース装置(たとえば出力インタフェース、周辺インタフェース、および通信インタフェース)からバス/インタフェースコントローラ340を介して基本的構成301への通信を容易にするためのインタフェースバス342を備えることもできる。出力装置360の例には、グラフィックス処理ユニット361と、オーディオ処理ユニット362とが含まれ、これらは、1つまたは複数のA/Vポート363を介してディスプレイまたはスピーカ等の種々の外部装置へ伝送するように構成することができる。周辺インタフェース370の例には、シリアルインタフェースコントローラ371またはパラレルインタフェースコントローラ372が含まれ、これらは、1つまたは複数のI/Oポート373を介して、たとえば入力装置等の外部装置(たとえばキーボード、マウス、ペン、音声入力装置、タッチ入力装置等)、または他の周辺装置(たとえばプリンタ、スキャナ等)と通信するように構成することができる。通信装置380の例にはネットワークコントローラ381が含まれ、このネットワークコントローラ381は、1つまたは複数の通信ポート382を介してネットワーク通信リンクを経由して行われる1つまたは複数の他の計算装置390との通信を容易にするように構成することができる。
【0058】
ネットワーク通信リンクは、通信媒体の一例であり得る。通信媒体は、典型的には、搬送波もしくは他の搬送メカニズム等の変調されたデータ信号中のコンピュータ可読指令、データ構造、プログラムモジュール、または、他のデータによって具現化することができ、通信媒体は、任意の情報搬送媒体を含むことができる。「変調されたデータ信号」とは、当該信号中に情報を符号化するように設定または変化した、当該信号の特性のうち1つまたは複数を含む信号であり得る。たとえば通信媒体には、有線ネットワークまたは直接有線接続等の有線媒体、および、音響、無線周波数(RF)、マイクロ波、赤外線(IR)および他の無線媒体等の無線媒体が含まれ得るが、これらは限定列挙ではない。ここで使用されている「コンピュータ可読媒体」との用語は、記憶媒体および通信媒体の双方を含み得る。
【0059】
計算装置300は、上述の機能のいずれかを備えたスモールフォームファクタ可搬(または移動型)の電子装置の一部、たとえば、携帯電話機、パーソナルデータアシスタント(PDA)、パーソナルメディアプレーヤ装置、ワイヤレスウェブ閲覧装置、パーソナルヘッドセット装置、特定用途装置、または、ハイブリッド装置等の一部として実装することができる。計算装置300は、また、ラップトップコンピュータもしくは非ラップトップ型コンピュータの構成の双方を含むパーソナルコンピュータとして実現することもできる。
【0060】
図4は、本願開示対象の歪みの無い全身MR画像を生成するための指令を記憶するように構成された一例のコンピュータプログラム製品400を示すブロック図である。コンピュータ可読媒体406、コンピュータ記録可能媒体408、コンピュータ通信媒体410、またはこれらの組み合わせとして具現化することができ、または、これを含む信号保持媒体402は、上記のプロセスの全部または一部の実行を処理ユニットにさせることができるプログラミング指令404を記憶する。この指令はたとえば、プロセスに、磁気共鳴イメージング装置を用いて被検対象の1つまたは複数の参照画像を取得させ、1つまたは複数の参照画像に基づいて、被検対象の複数の一部分の補正磁場に関する情報を含む補正磁場マップを記憶させ、磁気共鳴イメージングシステムを用いて被検対象の複数の一部分の複数の画像を取得させ、被検対象の複数の一部分の複数の各画像の取得中に、磁気共鳴イメージングシステムの1つまたは複数の補正コイルによって、当該被検対象の一部分について補正磁場マップによって指定された補正磁場を生成させて、当該補正磁場を印加させ、複数の画像に基づいて合成画像を生成させるための1つまたは複数の実行可能な指令を含むことができる。
【0061】
本願の開示対象は、本願にて記載された特定の実施例に限定すべきものではなく、この特定の実施例は種々の側面の例示として意図したものである。当業者に明らかであるように、その思想および範囲から逸脱することなく、多くの改良および実施例を実施することができる。当業者が上記説明を読めば、ここで挙げられた方法および装置の他にも、本願開示対象の範囲に包含される機能的に等価の方法および装置が明らかである。かかる改良および実施例は、添付の特許請求の範囲に属することが意図されている。本願開示対象は、添付の特許請求の範囲に認められる均等範囲全部共々、添付の特許請求の範囲の用語によってのみ限定されるべきものである。本願開示対象は、特定の手法、試薬、成分組成または生体システムに限定されないと解すべきであり、これらはもちろん変わり得る。また、ここで使用される用語は、特定の実施例を説明するためだけのものであると解すべきであり、本発明を限定することを意図したものではない。
【0062】
本願における実質的に全ての複数形および/または単数形の用法に関しては、文脈および/または出願に適している場合には、当業者は複数形を単数形に読み替えることができ、および/または、単数形を複数形に読み替えることができる。このような種々の単数形/複数形の入れ替えは、明確化のためにここで明示的に述べている場合がある。
【0063】
当業者であれば、一般的に本願において使用されている用語、特に添付の特許請求の範囲(たとえば添付の特許請求の範囲の本体部)において使用されている用語は、一般的に「オープン」な用語(たとえば、「含む」との用語は「含むが限定列挙ではない」と解すべきであり、「有する」との用語は「最低限有する」と解すべきであり、「含む」との用語は「含むが限定列挙ではない」と解すべきである、等)であると解される。
【0064】
さらに当業者であれば、導入されているクレーム記載事項の特定の数が意図されている場合には、かかる意図は、クレームにおいて明示的に記載されるものであり、かかる記載事項が無い場合には、かかる意図は、存在しないと解される。たとえば、理解を助けるために、以下の添付の特許請求の範囲は、クレーム記載事項を導入するために「少なくとも1つの」および「1つまたは複数の」との導入句の使用を含むことがある。しかし、同一のクレームが導入句「1つまたは複数の」または「少なくとも1つの」と、たとえば「1つの(“a”または“an”)」等の不定冠詞とを含む場合であっても、上述の句の使用は、不定冠詞「1つの(“a”または“an”)」によるクレーム記載事項の導入が、当該導入されたクレーム記載事項を含むいずれかの特定のクレームを、かかる1つの事項のみを含む実施例に限定することを暗示すると解してはならず(たとえば、「1つの(“a”および/または“an”)」は「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」と解すべきである)、これは、クレーム記載事項を導入するために使用される定冠詞を使用する場合にも当てはまる。さらに、導入されたクレーム記載事項の特定の数が明示的に記載される場合であっても、当業者であればかかる事項は、少なくとも、当該記載された数を意味すると解すべきことを認識することができる(たとえば、他の修飾子無しで単に「2つの事項」と言った場合には、これは、少なくとも2つの事項または2つ以上の事項を意味する)。
【0065】
さらに、「A,BおよびC等のうち少なくとも1つ」に類する慣用句が使用される事例においては、一般的にかかる構文は、当業者が当該慣用句を理解することができる意味を意図したものである(たとえば「A,BおよびCのうち少なくとも1つを備えたシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびB、AおよびC、BおよびC、および/または、A,BおよびC等を備えたシステムを含むが、かかるシステムに限定されない)。「A,BまたはC等のうち少なくとも1つ」に類する慣用句が使用される事例においては、一般的にかかる構文は、当業者が当該慣用句を理解することができる意味を意図したものである(たとえば「A,BまたはCのうち少なくとも1つを備えたシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびB、AおよびC、BおよびC、および/または、A,BおよびC等を備えたシステムを含むが、かかるシステムに限定されない)。また、当業者であれば、実際に2つ以上の選択的な用語を提示するいかなる選言的な用語および/または文言も、明細書中であるか、または特許請求の範囲中であるか、または図面中であるかにかかわらず、当該用語のうちいずれか1つ、当該用語のいずれか、または当該用語の双方を含む可能性を包含していると解すべきであることが理解することができる。たとえば「AまたはB」との文言は、「A」または「B」または「AおよびB」の可能性を含むと解される。
【0066】
さらに、本願開示対象の複数の構成または側面がマーカッシュ群によって記載されている場合、当業者であれば、本願開示対象はマーカッシュ群のいずれかの個々の要素としても、またはマーカッシュ群の要素のサブグループとしても記載されていると認識することができる。
【0067】
当業者であれば、たとえば書面での説明を提供するため等のあらゆる全ての目的のために、本願にて開示されている全ての範囲は、当該範囲の全ての任意の可能な部分範囲または当該部分範囲の組み合わせも含むと解される。掲げられている範囲は、全て十分に記載しており、かつ、当該範囲を少なくとも2等分、3等分、4等分、5等分、10等分等に分割することができることが、容易に認識することができる。非限定的な例として、本願で説明した各範囲は、3等分したものの下部分と中間部分と上部分とに容易に分割することができる。また、当業者が理解することができるように、「〜に及ぶ」、「少なくとも」、「〜より大」、「〜より小」およびこれらに類するもの等の用語は全て、記載されている数を含み、また、上述のように部分範囲に順次分割することができる範囲をいう。最後に、当業者であれば、1つの範囲は各個々の要素を含むと理解することができる。よって、たとえば1〜3個の項目を有する群は、1個の項目、2個の項目または3個の項目を有する群を意味する。1〜5個の項目を有する群も同様に、1個、2個、3個、4個または5個の項目を有する群を意味し、以下同様である。
【0068】
上記の詳細な説明は、ブロック図、フローチャートおよび/または実施例を用いて装置および/またはプロセスの種々の実施例を説明し、かかるブロック図、フローチャートおよび/または実施例は1つまたは複数の機能および/または動作を含むが、当業者であれば、かかるブロック図、フローチャートまたは実施例における各機能および/または各動作は、幅広いハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの実際に全ての組み合わせによって、個別および/または共同で具現化することができることを理解することができる。一実施例においては、本願で記載されている主題の幾つかの一部分は、特定用途集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタル信号処理プロセッサ(DSP)、または他の集積形式によって実装することができる。しかし、当業者であれば、本願で記載されている実施例の一部の側面は、その全部または一部を、集積回路で、1つもしくは複数のコンピュータ上で実行される1つもしくは複数のコンピュータプログラムとして(たとえば、1つもしくは複数のコンピュータシステム上で実行される1つもしくは複数のプログラムとして)、1つもしくは複数のプロセッサ上で実行される1つもしくは複数のプログラムとして(たとえば、1つもしくは複数のマイクロプロセッサ上で実行される1つもしくは複数のプログラムとして)、ファームウェアとして、または、これらの実際に任意の組み合わせとして、等価的に実装することができること、ならびに、ソフトウェアおよび/またはファームウェアのためのコードを書くことおよび/または回路を設計することは、本願開示内容に照らして当業者の知識の範囲内で十分に行うことができることを、認識することができる。たとえば、速度および精度が重要であるとユーザが判断した場合、ユーザは、主にハードウェアおよび/またはファームウェア手段を選択することができ、フレキシビリティが重要である場合、ユーザは、主にソフトウェア実装を選択することができ、または、さらに他に代替的に、ユーザは、ハードウェア、ソフトウェアおよび/またはファームウェアの何らかの組み合わせを選択することもできる。
【0069】
さらに当業者は、本願にて記載されている主題のメカニズムがプログラム製品として種々の形式で頒布することができること、および本願にて記載されている主題の詳解例が、実際に頒布を行うために使用される信号保持媒体の特定の種類如何にかかわらず適用可能であることに想到することができる。信号保持媒体の例には、記録可能型媒体、たとえばフロッピーディスク、ハードディスクドライブ、コンパクトディスク(CD)、デジタルビデオディスク(DVD)、デジタルテープ、コンピュータメモリ等、ならびに、伝送型媒体、たとえばデジタルおよび/またはアナログ通信媒体(たとえば光ファイバケーブル、導波路、有線通信リンク、無線通信リンク等)が含まれるが、これらは限定列挙ではない。
【0070】
当業者は、上記のように装置および/またはプロセスを記述して、その後、工業的経験を用いて、かかる記述がなされた装置および/またはプロセスをデータ処理システムに組み込むことは、当該分野において通常であることを認識することができる。すなわち、本願にて記載されている装置および/またはプロセスの少なくとも一部は、合理的な量の実験を経てデータ処理システムに組み込むことができる。当業者は、典型的なデータ処理システムは一般的に、システムユニット筐体、映像表示装置、たとえば揮発性および不揮発性メモリ等のメモリ、たとえばマイクロプロセッサおよびデジタル信号処理プロセッサ等のプロセッサ、たとえばオペレーティングシステム、ドライバ、グラフィカルユーザインタフェースおよびアプリケーションプログラム等の計算エンティティ、たとえばタッチパッドもしくはタッチスクリーン等の1つもしくは複数のインタラクション装置、および/または、フィードバックループと制御モータとを有する制御システム(たとえば、位置および/または速度のセンシングのためのフィードバック、構成要素および/または量の移動および/または調整を行うための制御モータ)のいずれか1つまたは複数を備えていることを、認識することができる。典型的なデータ処理システムは、市場で入手可能なあらゆる適した構成要素、たとえば、データ計算/通信および/またはネットワーク計算/通信システムにおいて典型的に見られる構成要素を用いて、実装することができる。
【0071】
本願にて記載されている主題は、異なる他の構成要素に包含された、またはこれに接続された、異なる構成要素を示していることがある。このように記載されたアーキテクチャは単なる一例であり、実際には、同一の機能を達成する多くの他のアーキテクチャを実装することができると解すべきである。コンセプト上は、同一の機能を達成するための構成要素の配置は全て、当該所望の機能を達成することができるように有効に「関連付けられている」といえる。よって、ここで特定の機能を達成するために組み合わされたどの2つの構成要素も、アーキテクチャまたは介在構成要素にかかわらず、当該所望の機能を達成するように互いに「関連付けられている」ということができる。同様に、このように関連付けられたどの2つの構成要素も所望の機能を達成するように互いに「動作可能に接続」または「動作可能に結合」されているということもでき、このように関連付けられることができるどの2つの構成要素も、所望の機能を達成するために互いに「動作可能に結合可能」であるということもできる。動作可能に結合可能の具体的な例には、物理的に嵌め合わせ可能および/または物理的にインタラクションする構成要素、および/または、無線インタラクション可能および/または無線インタラクションする構成要素、および/または、論理的にインタラクションするおよび/または論理的にインタラクション可能な構成要素が含まれるが、これらは限定列挙ではない。
【0072】
本願においては、種々の側面および実施例を開示したが、当業者であれば他の側面および実施例も明らかである。本願にて開示された種々の側面および実施例は詳解のためのものであり、本発明を限定することを意図したものではなく、真の範囲および思想は、以下の特許請求の範囲によって示されている。
図1
図2
図3
図4