(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここに開示及び主張されるものは、コインサイズ及びコイン形の皮下に埋め込むことができる電気鍼治療デバイス(IEAD)で使用する好適な電極構成及び配向である。好適な電極構成(複数可)は、IEADのハウジング上に配置されるか又は内部に組み込まれる。
【0014】
IEADは、選択された鍼治療部位(又は他の標的神経/組織位置)に直接隣接する又は選択された鍼治療部位での非常に小さな切開(例えば、2〜3cmの長さ)を介して埋め込まれるよう適合される。このようにして、電極は、所望の標的部位に位置及び固定され、ここで、標的部位は、ここでは単に「ツボ」と称することがある。ツボは、治療を必要とする患者の生理的又は健康状態を緩和する又は良い効果を与えることが知られているものをベースに選択することができる。刺激パルスは、特定の刺激レジメンに従い、非常に低いデューティサイクルで選択されたツボにEAデバイスによって印加される。この刺激レジメンは、患者に効果的な電気治療(EA)又は電気刺激(ES)治療を提供するように設計される。
【0015】
ここに記載される電極の特徴は、所望のツボ又は他の標的組織位置に又はその近くに存在するよう皮下に配置した際に、電極から小さな電場が発せられるよう電気的に通電されるとき、このような電場によって、小さな電流の流れが標的部位を囲む身体組織内に生じることである。最適に設計された電極では、この電流は、可能な限り多くの標的神経線維を次々と活性化させる。そのとき、このような神経線維の活性化によって、最大の治療効果を達成することができる。最小の電力消費量及び最小の臨床副作用で、このような所望の神経線維の活性化を最適に達成するために、神経線維の方向性及び電極への接近は、電極の設計において考慮しなければならない要因である。
【0016】
自己完結型でコインサイズの埋め込み型刺激装置は、患者の状態又は病気を順調に治療するために、特定の標的組織部位(例えば、一以上のツボ)で又は近くで患者に埋め込まれる。IEADは、刺激装置のハウジングの一体部分を最もよく形成する電極を介して、特定の刺激レジメンに従い、非常に低いデューティサイクルで電気刺激パルスを印加する。ある実施形態では、このような電極は、非常に短いリードを介してIEADのハウジングに密接に結合してもよい。完全な自己完結型のために、IEADは、唯一の電源として、小型の薄い主要バッテリを組み込み、例えば、市販のコイン形バッテリを組み込む。IEADハウジング内にハウジングされる特別な回路によって、数年の期間にわたり特定の刺激レジメンを実行するようIEADの動作が管理される。従って、IEADは、一旦埋め込まれれば、これまで鍼治療又は外部印加電気鍼でのみ治療可能であった特定の状態及び病気を治療する、目立たず、針のない、長持ちで、簡潔及び効果的なメカニズムを提供する。
【0017】
IEADハウジングに装着される又はIEADハウジングの一部を形成する電極を介して低いレベルの刺激を印加するIEADの能力は、ほとんどの場合、どれほどよく、このような電極を対象の標的組織位置(複数可)及びこのような標的位置に関連する組織及び神経へ向けて印加する刺激を集中させることができるかである。本開示は、この目標を達成する技術及び手法に関する。
【0018】
神経線維の方向性が
図1に示され、ここでは、ヒト身体の皮膚組織100の三次元スケッチが示されている。皮膚組織100は、皮膚の外側層又は表皮104及び真皮106を含む。表皮104の上面102は、可視可能でさらにヒト身体周囲の環境に曝されている皮膚層を備える。表皮の多くは、ケラチンにより含浸させた死細胞を備える。真皮106は、表皮の下にある生体組織の厚い層である。真皮は、毛細血管、リンパ管、感覚末梢神経、汗腺及び髪ダクト、毛包、皮脂線及び平滑筋繊維内のゆるい結合から主に構成される。本開示の目的では、用語「皮下に」は、「皮膚の下」の何らかを広く称し、本開示の文脈で多くの場合は、真皮106の下を意味する。そのため、皮下組織は、ゆるい結合の組織であり、多くの場合、真皮106下に位置する脂肪である。
【0019】
さらに
図1を参照すると、個々の神経線維108のグループが、神経線維110の束を形成するよう共に集められていることが分かる。この神経線維110の束は、真皮106の下に位置し、一般的には、皮膚の表面102に平行に走る。一部の個々の神経線維108は、各々の遠端部近くで、束110から離れて、皮膚表面に向かう方向又は他の行き先に拡張している。従って、これらの神経は、各々の遠端部又はその近くで、皮膚の表面に直交して走っている。
【0020】
従って、
図1に示すように、神経線維束110の方向性は、皮膚の表面102に平行であり、一方、個々の神経108の方向性は、主に皮膚の表面に平行で、皮膚102の表面に概して直交する一部の個々の神経線維の比較的短い部分を有する。
【0021】
カソードの刺激によって、電極面に対して接線方向又は平行に走る神経線維が好適に活性化される。これは、電極面に対して放射状又は垂直に走る神経線維を好適に活性化するアノードの刺激とは対照的である。上述のように、皮膚表面102へ又は近くへ進む個々の神経線維108は、一般的に、真皮106へ上向きに湾曲する前に、皮下空間109に対して平行に又は上方を走る。同様に、皮下空間109内の神経線維108は、組織のより深い層へ深く湾曲する前に、この空間109に対して平行に走る。
【0022】
そのため、ここに記載する小型のコインサイズのIEADのような皮下に配置され埋め込まれるデバイスの電極設計の第1の態様として、カソード及びアノード電極の表面は、最適に構成及び配置する必要があることが分かる。これらの電極表面は、小型の薄くコインサイズの埋め込み型デバイスにおいて、好適には、デバイスのハウジング上に又は一体部分として形成される。ほとんどの埋め込み型組織刺激デバイスで一般的であるカソードの刺激を使用する場合、及び、特定の標的又はツボで又は近くで可能な限り多くの神経を活性化させるよう電極の構成を最適化させる場合、デバイス下方の組織と同様にデバイス上方の皮膚層の最も近くにカソード電極を位置させることが有益である。さらに、これらの表面が覆われたカソードから離れた神経の幾らかの反りは、電気的に活性化するために要求される閾値電流を低減する。従って、アノードへの露出は、神経線維が電極表面に対して主に垂直である場合、デバイスの端に制限すべきである。
【0023】
電極設計の第2の態様は、電極のサイズに関連して神経線維を近接させることである。カソード又はアノードの両方のケースにおける活性化は、神経線維の軸に沿って印加される電場電位の2次の空間微分の大きさに依存することは注目に値する。連続してフラットな平坦電極による一様な電場は、例えば、印加される電流に関わらず、全ての方向で、神経線維を活性化しないゼロ及び理論的にゼロである電圧の2次の空間微分を生じさせる。従って、この点において理想的な電極は点源であり、これは、神経線維が電極表面に近づくにつれて、電場電位の2次の空間微分が最大化するためである。
【0024】
これは、導電率ρによる一様な容積導体の半径Rの球状の電極コンタトにより、数学的に比較的容易に理解することができる。電極表面での電流Iにおける電場電位Vは、以下のようになる。
【数1】
【0025】
表面に垂直な電圧の2次の空間微分は、以下のようになる。
【数2】
【0026】
式(2)は、(r方向として定義される)放射状又は電極の表面に垂直な方向に整列した神経の活性化関数である。より小さい電極半径を有する電極の表面近くの神経線維ほど、活性化関数がより大きくなることが明らかである。表面の接線方向の電圧の2次の空間微分は、以下のようになる。
【数3】
【0027】
式(3)は、(x方向として定義される)電極の表面の接線方向又は電極の表面に整列した神経の活性化関数である。符号が負であることは、カソード電流又は負電流Iに対して活性化関数が正になることを意味する。これによって、電極に平行に走る神経が、カソードの刺激によってどのように最適に脱分極するかが表される。繰り返すが、より小さい電極半径を有する表面の神経線維ほど、活性化関数がより大きくなることが分かる。
【0028】
論理的に、電極コンタクトがより小さいほど、通常、電気的に活性化した組織での効果は大きくなる。これは、非球状の電極コンタクトにも適用される。しかしながら、実際には、電極の最小サイズは、より小さく従ってより高いインピーダンスの電極を通じて電流を駆動する刺激装置に安定して注入できる最大電流密度及び利用可能なコンプライアンス電圧によって制限される。
【0029】
所望の標的位置に配置される電気刺激装置の最適な電極構成に再び戻ると、最適な電極構成は以下の形式を取ることがわかる:(i)小さいカソードを皮膚に平行なデバイスの表面上側及び下側上に配置し、(ii)小さいアノードを皮膚に垂直なデバイスの端に配置する。この最適な電極構成は
図2に示され、ここで、カソード電極210aは、コインサイズのデバイスハウジング200の上面及び/又は下面上に形成され(
図2では、ハウジングの下面は図示されていないことに留意する)、一方で、アノード電極220は、ハウジング200の端又は周囲の周りの薄いリング電極として形成されている。
【0030】
アノードとカソードとの間の距離があまりに近すぎる場合、分流が発生することがある。カソードの表面がより大きいほどカソードの端が必然的にアノードリングにより近くなる場合にのみ、分流が表面に加えられる。従って、電極構成の最適化では、電極のサイズは、所望の電流密度を使用する際の電極材料へのダメージを防ぐこと(これは、電極領域があまりに小さい場合に起こる傾向がある)及びカソードの端がアノードリングにあまりに近くなる際の分流を防ぐこと(これは、電極領域があまりに大きい場合に起こる傾向がある)を考慮しなければならない。
【0031】
電極構成の設計のさらなる態様は、このようなデバイスのハウジング200の表面上で最適に電極コンタクトの間隔を空ける方法である。
図2、3及び3Aに描写する簡単な実施形態では、デバイスハウジング200の上部及び下部の中央にある単一の小さいカソード210a及び210bと、デバイス200の周囲の周りの薄いリングアノード電極220がある。これらの電極コンタクトの表面領域は、電極の腐食及び/又は組織ダメージがない安全な刺激のために最小化される。316LVMスレンレス鋼のような電極材料は、例えば0.3〜0.4マイクロクーロン/mm
2まで、刺激パルス中に安全に注入されるだろう(注意:クーロンは電荷の基本的な測定量であり、アンペア(A)で測定される電流の基本的な測定量は、電荷が流れるレート又は1秒あたりのクーロンで定義される)。
【0032】
さらに、
図3及び
図3Aにさらに描写されるように、好適なハウジング200は、薄く円盤状(ここでは「コイン形」とも称する)であり、直径D2を有する。円盤状のハウジングの上面及び下面上に位置するカソード電極210a及び210bは、直径D1を有する。ハウジングは、H1の厚さを有する。従って、アノード電極220は、基本的には、約H1の幅又はH1より少し小さい幅(例えば、H1より0.2〜0.4mm小さい幅)及び約D2の直径を有するリング形状の電極である。構成の1つでは、円盤状のハウジングの直径D2は、23〜25mmであり、一方、カソード電極表面領域D1の直径は、2〜10mmの範囲にすることができる。円盤状のハウジング200の高さH1又は厚さは、典型的には、1.4〜2.5mmの範囲である。デバイスを所望の薄くコイン形状にするためには、H1とD2の比率は、0.12又はそれ未満に維持するのが最もよい。
【0033】
デバイスハウジング200は、最小の安全電極コンタクト領域より大きい表面領域を有して、アノードに対するカソードの間隔が分流を避けるのに十分となるようにすべきであり、これにより、
図4に描写するような、複数のコンタクトにわたり同一の電極表面領域に配置されるよう使用される良好な電極構成になる。
図4に示すように、カソード電極210aは、ハウジング200の上面及び/又は下面にわたり配置される複数のより小さいカソード電極コンタクト212を備える(
図4にはハウジング200の下面が図示されないが、下面は
図4に図示される上面と実質的に同一のものであることに再び留意する)。同様に、アノード電極220は、ハウジング200の周辺端の周りに配置される複数のより小さいアノード電極コンタクト222を備える。
【0034】
図4に示す電極構成では、デバイスハウジング200の表面領域のより多くの電極に、活性化する機能が好適に分散されつつ、最も高い電流密度を使用する能力及び各電極コンタクトでの最も高い活性化機能の可能性を保持する。
【0035】
同一極性コンタクトにおける典型的な中央に対する中央の間隔は、活性化機能におけるギャップを最小化するために、好適には、個々の電極直径の2倍未満すべきである。逆極性コンタクトの間隔は、分流を最小化するために、個々のコンタクト直径の少なくとも2倍にすべきである。個々のコンタクト直径及び間隔は、最も高い利用可能な電流密度で表面領域の可能な限り多くに電極コンタクトを配置させるような要求に応じて、選択することもできる。
【0036】
例として、IEADが4ミリアンペア(mA)までの振幅で0.5ミリ秒(msec)の維持時間を有する電気パルスを順次搬送するよう設計されている場合(つまり、各パルスで搬送されるパルス電荷は、0.5msec×4mA=2マイクロクーロンである)、そのとき、2マイクロクーロン÷0.3マイクロクーロン/mm
2=6.7mm
2である電極コンタクト表面領域は、電極材料として316LVMステンレス鋼を使用することが要求されるだろう。このような電極表面領域は、
図5の左側に示すような、上面及び下面上で2mmの直径を有する2つの円盤カソードコンタクトを用いて実現することができる。代替的に、各カソードコンタクトは、
図5の右側に示すような、直径0.25mmを有し、中央と中央が0.5mmの間隔である約68のコンタクトに広がる。どちらの電極構成も同一の合計表面領域を達成するが、約68のコンタクトを有する構成は(
図5の右側に示す)、電極に近い神経に印加することができる活性化機能の領域がおおよそ4倍に増える。
【0037】
316LVMステンレス鋼(度々、ここでは単に「316SS」又は「316ステンレス鋼」と称する)は、より高い電流振幅が所望又は要求される場合、理想的な電極材料とはならないことに留意する。ステンレス鋼316SSでは、電荷の注入容量が約0.3〜0.4μC/mm
2に制限される。対照的に、白金は、2〜3μC/mm
2の注入容量を有し、これは、316SSのほぼ10倍である。そのため、大きい電流振幅が要求される場合、最も良い電極材料は、白金である。
【0038】
以下の表1は、ミリアンペア(mA)で表示される多様な振幅(I)で0.5ミリ秒(ms)の幅(PW)を有する電流の刺激パルスにおいて、316ステンレス鋼(SS)及び白金(Pt)における電極直径(D)及び電極数(N)を比較する。表には、各パルスで搬送されるパルス電荷(Q)が含まれ、マイクロクーロン(μC)で表示される。さらに表1には、「カラーコード」が含まれ、これにより、示すどの電極サイズが、示す電極の表面領域、電流振幅及びパルス幅に要求される電荷を供給することが可能であるかを表示する。「緑」のカラーコードは、電荷を安全に注入できることを示す。「黄」のカラーコードは、限界状態を示し、「赤」のカラーコードは、許容される制限より上の電荷レベルであることを示す。従って、表1から分かるように、直径4mmを有する単一のステンレス鋼電極では、電極を通じて注入される最大電流は、約5μC又はパルス幅0.5msで10mAである。
【0040】
図5の右側に示すようなカソード電極構成を有するこのようなデバイスのさらなる高性能化は、個々のコンタクト212を選択的にON又はOFFにすることを可能にすることである。所定の電流振幅では、この選択的なON又はOFFによって、全活性化コンタクトが最大電流密度及び最大活性化機能の大きさで動作することが可能になる。活性化コンタクトは、最大範囲を提供するようデバイス表面にわたり配置される。例えば、電流振幅が50%に低減される場合、コンタクトが1つおきにONする。プログラマブルな個々のコンタクトの別の使用によっても、活性化機能を調整することができ、標的部位(例えば、ツボ)周りの特定の領域に集中させることができる。
【0041】
電極構成のさらなる高性能化は、要求される異なる電流を管理する必要性に応じたコンタクトのグループにおいて、個々の電圧又は電流源を有することである。例えば、デバイスの上面上のカソード(複数可)によって、1つの振幅で刺激することができ、その一方で、デバイスの下面上のカソード(複数可)によって、別の振幅で刺激することができる。
【0042】
電極構成のさらなる高性能化は、
図6に示すような、増加する直径を有する同心のカソードリング電極のアレイを有することである。このような構成(これは、円盤状のハウジング200の上面及び下面の両方に配置すること、又は、上面又は下面の単に1つに配置することができる)によって、所望の標的ツボの中央に電場を維持しつつ、カソード電極表面領域が電流振幅に応じて変化することが可能になる。
【0043】
上述から明らかであるように、電極のサイズは、電極表面を介して流れる電流量に基づいて選択するのみではなく、電極が使用される目的機能に応じても選択すべきである。つまり、デバイスに非常に近い繊維又は組織を活性化するために、多くの小さい直径のコンタクトを有することは理論的に利点があるが、遠くにある神経のような単一の標的組織位置のために多くの小さなコンタクトを有することには利点がない。加えて、局所的な皮下の繊維を活性化するよう意図されるデバイスは、デバイスの上面及び下面の両方に電極を有する方がよい。しかしながら、電極からある距離にある単一の標的組織位置を刺激するよう意図されるデバイスは、
図11に関連して後述するように、電極下に位置する所望の刺激部位に刺激を集中できるよう、デバイスの下面のみに電極を有する方がよい。
【0044】
従って、まとめると、ある用途では、広い表面領域電極を使用するのが最もよく、他の用途では、小さい表面領域電極を使用するのが最もよい。時には、刺激装置の上面及び下面の両方の電極を使用するのが最もよく、時には、下面のみの電極を使用するのが最もよい(この場合、「下面」は、電極から数ミリメートル以上離れたところに位置する標的組織位置に直面する面である)。多くが、刺激の目的及び標的組織位置が電極表面からどの程度離れているかに依存する。
【0045】
図6は、ツボ又は他の標的位置の中央に電場を維持しつつ、電極表面領域を電流振幅に応じて変化させる1つの好適な技術を描写する。内側の円形電極260は、最も低い電流振幅で活性化する。刺激電流の振幅が増加するのに従い、追加のリング電極が活性化する。従って、例えば、I1、I2、I3、…I9の増加する電流振幅が使用される場合(ここで、I1<I2<I3<I4…<I9)、そのとき、内側の円形電極260は、最も低い振幅の刺激電流I1で使用される。電流I2が使用される場合、そのとき、円形電極260及びリング電極262が使用される。電流I3が使用される場合、そのとき、円形電極260及びリング電極262及び264が使用される。電流I4が使用される場合、そのとき、円形電極260及びリング電極262、264及び268が使用される。電流I5が使用される場合、そのとき、円形電極260及びリング電極262、264、268及び270が使用される。この処理を続けることで、円形電極260及びリング電極262、264、268、270、272、274、276及び278が組み合わされる最大電流I9が使用されるまで、次の値に電流が増加すると一以上のリング電極が追加される。
【0046】
電流密度を最大化させるために利用可能な電極表面領域のセグメント又は部分のみを選択的に使用する能力及び刺激電流に刺激組織をより活性化させる能力を
図7に図式的及び機能的に示す。
図7に示すように、上カソード電極210aは、4つの別々のカソード部分212a、212b、212c及び212dにセグメント化されたものとして示される。これらの別々のセグメント又は部分は、それぞれ、プロセッサ216で制御され機能的に示される上カソードスイッチ214aを介して、別個に通電(ONに)することができる。プロセッサ216(
図6には単に機能的に示される)は、特定の刺激レジメンに従って刺激パルスの流れの生成(刺激セッション中の典型的な刺激波形を示す
図8を参照及び典型的な刺激セッション頻度を示す
図8Aを参照)を可能にするIEADの動作に要求される全ての制御信号を提供する。刺激レジメンは、上カソード電極210aを通じて流れる刺激電流の所望の密度を得るために、4つのカソード電極セグメントの1つ又はそれらの全て(又はそれらの2つ、又はそれらの3つ)を通電させることを含むことができる。
【0047】
同様に、下カソード電極210bは、4つの別々のカソード部分212a、212b、212c及び212dにセグメント化されたものとして示される。これらの別々のセグメント又は部分は、プロセッサ216で制御され機能的に示される下カソードスイッチ214bを介して、別個に通電(ONに)することができる。そのため、プロセッサ216からの信号は、通電するセグメント又はカソード電極210bの部分を選択的に制御することができ、これにより、下カソード電極210bを介して流れる刺激電流の所望の電流密度の達成が可能になる。
【0048】
リングアノード電極220は、同様に、より小さな部分又はセグメント220a、220b、220c及び220dに分割することができる。これらのセグメントは、1つのセグメントをON及び3つをOFF、2つをON及び2つをOFF、3つをON及び1つをOFF又は4つ全てをONするように、アノードスイッチ218で別個に通電することができる。このようにして、アノード電極220を通じて流れる刺激電流の所望の密度を達成することができる。
【0049】
図7に示すような上及び下カソード電極210a及び210bのセグメント並びに
図7に示すようなアノード電極220のセグメントは、例示的なものであり限定ではないことに留意されたい。つまり、各カソード電極の4つのセグメントが示されているが、実際には、これは、セグメントの任意の数又は例えば
図4及び5に示すようなより小さいカソード電極のアレイの任意の数又は例えば
図6に示すような同心のリングカソード電極の任意の数にすることができる。同様に、アノードリング電極220の4つのセグメント又は別々の部分220a、220b、220c及び220dが示されているが、例えば
図4に示すように、採用するアノードセグメントの数は任意であってよい。要点は、上及び下カソード電極210a及び210bの両方並びにアノード電極220が、通電させる電極の表面領域のセグメント又は部分を制御することで(この場合、「通電」は、プロセッサ制御回路216により制御し、電流が電極を通じて流れるように電気的にONになることを意味する)、より小さい電極表面領域に選択的に電気的に分割され得ることである。この特徴によって、刺激電流に存在する電流密度のより良い管理が可能になり、さらにこれにより、刺激電流で活性化される身体組織のより良い制御が可能になる。
【0050】
ここに開示されるIEADの好適な構成は、約22〜24mmの直径、約2.2〜2.5mmの厚さを有するコインサイズのハウジング内部にEAデバイスの電極構成要素を配置することである。このサイズ及び形状は、多くのツボ又は他の標的組織位置近くの埋め込みに適しており、ここで、所望の標的組織は、典型的には、IEADが埋め込まれる位置下約3〜6mmの間である。IEAD内の回路は、
図8及び8Aに図式的に示されるように、電荷のバランスがとれた単相の刺激パルスの一連を連続的に生成するよう構成される。
図8に示すように、このような刺激パルスは、1〜60分の持続時間T3(好適には約30分)を有する刺激セッション中に1〜5Hzの周波数(つまり、期間T2は、200〜1000msecの範囲で変化する)で、2〜25mAの間のパルス振幅A1、パルス幅(PW)又は0.2〜0.8msec(200〜800μsec)の間のT1を有する。刺激セッションは、
図8Aに示すように、時間T4を超えない頻度で適用され、ここで、T4は、例えば、毎日1回以下及び隔週1回以上とすることができる(好適には、毎週1回)。
【0051】
例として、電気鍼治療を用いて治療できる症状の1つに、高血圧がある。高血圧は、例えば患者の手首近くの前腕部に位置するツボPC6に針を挿入することにより、伝統的な鍼治療又はEA治療を用いて効果的に治療することができる(ツボPC6の位置の詳細な説明は、上記で参照によりここに組み込まれる「WHO標準的な経穴の位置 2008」を参照されたい)。高血圧の治療の目的において電気鍼刺激の印加のためにツボPC6が選択される理由の1つは、なぜなら、正中神経がこの位置にあり、EAデバイスが埋め込まれる場所(皮膚表面下の2〜3mm)下の約5〜6mmとなるためである。これは、このツボに伝統的な鍼治療又は電気鍼を適用することから得られる高血圧の良好な治療に利点があるということのみではなく、治療のために正中神経の良好な電気刺激が得られる利点があるということを意味する。
【0052】
刺激デバイスが埋め込まれる下の5〜6mmに存在する標的組織の正中神経又は他の標的組織位置を効果的に刺激するために、アノードとカソードの中央と中央の間隔は、少なくともこの量の2倍又は約10〜12mmとするのが最良である。このケースでない場合は、そのとき、アノードとカソードとの間の分流は、あまりに大きくなってしまうことがある。好適には、この基準は、直径22〜24mmのデバイスの端で放射状のリングアノード電極220を有することにより(例えば
図2、3及び3Aを参照)、十分満たされる。
【0053】
要約すると、上面、下面及び上面と下面を接続する周縁端を有するコインサイズ及びコイン形のハウジングが含まれる好適な埋め込み型電気鍼デバイス(IEAD)がここに記載される。好適な電極構成は、ハウジングの表面上に存在する又はハウジングの表面の一体部分を形成する電極を有する。1つの好適な電極構成は、カソードとして機能する上面及び/又は下面上の電極と、アノードとして機能するハウジングの周縁端上の電極とを有する。カソード電極は、ある構成では、セグメント又はより小さいカソード電極のアレイに分割され、これにより、カソード電極表面領域を通じて流れる刺激電流の密度を調整する便利なメカニズムを提供するよう、各々又はグループで選択的にON又はOFFにすることができる。アノード電極は、最も簡単な形状は周縁端の表面上のリング電極であり、同様に、ある構成では、周縁端の周りで間隔が保たれるより小さいアノード電極のセグメント又はアレイに分割することができる。電流密度を選択的に制御することで及びアノード電極とカソード電極との間の間隔を空けることで、電極の腐食及び分流を最小限にする最適な刺激電流を生成することができ、さらに、EAデバイスが患者の身体に埋め込まれた際に、EAデバイスを囲む身体組織へ所望の範囲又は所望の浸透深さの刺激電流を成し得ることができる。
【0054】
ここに開示される埋め込み型デバイスの1つの構成は、患者の特定の組織位置に埋め込まれるよう適合されるEAデバイスとして特徴付けることができる。EAデバイスは、(i)ハウジング、(ii)ハウジング上に又はハウジングの一体部分として形成される少なくとも1つのカソード電極及びアノード電極、及び、(iii)ハウジング内部に存在し、かつ少なくとも1つのカソード電極及び少なくとも1つのアノード電極に電気的に結合される刺激回路を含む。刺激回路は、所定の刺激レジメンに従い、少なくとも1つのカソード電極及び少なくとも1つのアノード電極を介して身体組織に搬送される刺激パルスを生成するよう構成され、つまり、設計又はプログラムされる。好適な構成では、少なくとも1つのカソード電極が、ハウジングの上面及び/又は下面上に存在し、さらに活性化のための最適な表面領域を利用し、ここで、ここで使用される「活性化」は、電極をONにするために、電極(又は電極表面領域の所定の部分)をEAデバイスハウジング内に存在する刺激回路に電気的に接続することに関する(電極が刺激回路に電気的に接続されないときは反対にOFFになる)。活性化のための「最適な表面領域」は、電極の腐食又は分流の発生を生じさせることなく所望の電流密度が電極表面領域を通じて流れることを可能にする電極表面領域を備える。
【0055】
ここに開示されるEAデバイスの別の構成は、患者の特定の標的組織位置(例えば、ツボ)に埋め込まれるよう適合されるIEADとして特徴付けることができる。IEADは、コインサイズ及びコイン形状であり、上面、下面及び上面と下面を接続する周縁端を有する。少なくとも1つのカソード電極及び少なくとも1つのアノード電極が、IEADハウジングの表面上に又は一体部分として形成される。典型的には、少なくとも1つのカソード電極は、ハウジングの上面又は下面上にあり、少なくとも1つのアノード電極は、ハウジングの周縁端表面上にある。刺激回路がハウジングの内部に存在し、少なくとも1つのカソード電極及び少なくとも1つのアノード電極を刺激回路に電気的に結合する接続手段が採用される。刺激回路は、所定の刺激レジメンに従って、少なくとも1つのカソード電極及び少なくとも1つのアノード電極を通じて、ハウジングを囲む身体組織に搬送される、電流の電荷のバランスがとれた単相の刺激パルスを生成する。少なくとも1つのカソード電極は、電極腐食を生じることなく所望の電流密度がそのカソード電極を通じて流れることを可能にするのに十分広い表面領域を有する。さらに、電流の刺激パルスが身体組織へ所望の距離だけ浸透する前に、少なくとも1つのカソード電極と少なくとも1つのアノード電極との間で分流が発生するのを防ぐよう、少なくとも1つのカソード電極は、少なくとも1つのアノード電極から十分離れて配置される。
【0056】
ここに開示されるEAデバイスのさらなる別の構成は、IEADの動作の方法として特徴付けることができる。その方法を使用するIEADは、ハウジング上に実装される又はハウジングの一体部分として形成される少なくとも2つの電極を有するハウジングを含む。刺激回路は、ハウジング内に存在し、少なくとも2つの電極に選択的に結合する。刺激回路は、所定の周波数、強度及びパルス幅の刺激パルスを生成する。これらの刺激パルスは、所定の刺激レジメンに従い、少なくとも2つの電極に印加される。EAデバイスを動作させる方法は、次の(i)〜(iii)を含む:(i)少なくとも2つの電極の1つをカソード電極として構成し、さらにハウジングの上部及び/又は下部上にカソード電極を配置し、(ii)少なくとも2つの電極の他をアノード電極として構成し、さらにアノード電極をハウジングの周縁端上に配置し、及び、(iii)T4分毎に一回の頻度でT3分続く刺激セッション中に単相電気刺激をアノード電極及びカソード電極に印加し、この刺激セッション中では、T1ミリ秒(msec)のパルス幅を有する単相刺激パルスが、T2msec毎に一回の頻度でカソード電極及びアノード電極を介して印加される。この方法に従えば、T1の値は0.1msecと0.6msecとの間であり、T2は200msecと1000msecとの間であり、T3は10分と60分との間であり、さらにT3/T4の比率は0.05以下である。
【0057】
次に、埋め込み型電気鍼デバイス(IEAD)の特別な例を、
図9〜22の記載に関連して説明する。この説明が提示される。この説明は、網羅的であることを意図するものではなく、又は、開示された任意の正確な形態に本発明を制限することを意図するものではない。多くの修正及び変形が、ここに提示される教示に照らして可能である。
【0058】
好適には、この特別な例に関連して記載されるIEADによって、少なくとも5オームの内部インピーダンスを有する小型の薄いコイン形タイプのバッテリで電力供給される、埋め込み型、自己完結型、コインサイズ及びコイン形状のデバイスが提供される。記載されるデバイスは、電気鍼(EA)デバイス又はIEADとしての使用を意図して説明するが、他の類似する組織刺激用途においても使用できることに留意されたい。さらに、好適なEAデバイスはリードがないが、ある用途では、所望の組織位置で正確に電極を正しく配置するために短いリードが要求されてもよい。
【0059】
この特別な例では、EAデバイスは、ハウジングの表面に搭載又は接続される2つの電極コンタクトを含み、この2つの電極は、ハウジングの片側に中央カソード電極及びカソードを囲む環状のアノード電極を含む。好適な実施形態では、アノード環状電極は、コイン形ハウジングの周縁端の周りに配置されるリング電極である。従って、好適なEAデバイスには、リードがない。これは、リードがない又はリードの遠端部で所望の刺激部位に位置し固定しなければならない電極がないことを意味する。さらに、なぜならリードがないため、刺激装置に戻り接続されるリードのパスを提供するために要求される(ほとんどの電気刺激装置では通常要求される)、身体組織又は血管を通じたトンネリングがない。
【0060】
この例のEAデバイスは、非常に小さい切開を介して埋め込まれるよう適合され、切開は、例えば、2〜3cm未満の長さで、例えば患者の識別された健康状態を緩和する又は効果を与えることが公知の鍼部位(「ツボ」)である選択された標的組織部位に直接隣接する。結果として、EAデバイスは埋め込むことが容易である。さらに、EAデバイスのほとんどの実施形態は対称的である。これは、間違ってデバイスが埋め込まれることがないことを意味する(医師がデバイスを上下反対に埋め込まない限りであり、この場合に評価をすることは困難である)。要求されることの全ては、切開を切って、埋め込みポケットを形成し、切開を介して位置にデバイスをスライドさせることである。一旦、埋め込みポケットが準備されれば、埋め込みは、スロットにコインをスライドさせるのと同様に容易である。このような埋め込みは、通常、外来患者設定又は医院において10〜20分未満で完了することができる。より少量の局所麻酔の使用のみが要求される。埋め込み処置において、想定される重大又は重要な合併症はない。要求又は所望される場合、EAデバイスは簡単及び迅速に外稙することができる。
【0061】
EAデバイスは、自己完結型である。EAデバイスは、動作電力の全てを提供する主要バッテリを含む。このような主要バッテリは、5オームより大きい高インピーダンスを有する。このような高インピーダンスを考慮して、EAデバイスは、バッテリ制御回路を含み、これにより、バッテリの出力電圧における過度の電圧ドロップを防ぐために、主要バッテリから引き出される瞬間的な電流を制限する。このようなバッテリ制御回路は、デバイスが数年にわたり意図する機能を実行することを可能にするよう、EAデバイスにより搬送される電力を慎重に管理する。
【0062】
一旦、EAデバイスが患者に埋め込まれると、患者は、刺激セッション中にデバイスが刺激パルスのバーストを搬送する際に感じるだろう僅かなうずきを除き、デバイスがあることさえ分からないだろう。さらに、一旦埋め込まれれば、患者はそれについて忘れてしまう可能性がある。従わなければならない複雑なユーザ指示もない。ONするだけである。何のメンテナンスも要求されない。さらに、患者がEAデバイスを停止させるすなわちオフさせたり、刺激強度を変えたりしたければ、彼又は彼女は、例えば外部の磁石を使用することによって、そうすることができる。
【0063】
EAデバイスは数年間動作することができる。なぜなら、EAデバイスは非常に効率的に設計されているからである。EAデバイスで選択された標的刺激部位(例えば、ツボ)に印加される刺激パルスは、特定の刺激レジメンに従い、非常に低いデューティサイクルで印加される。刺激レジメンでは、少なくとも10分、典型的には30分及びまれに60分より長い刺激セッション中で、EA刺激が印加される。しかしながら、これらの刺激セッションは、非常に低いデューティサイクルで発生する。1つの好適な治療レジメンでは、例えば、30分の持続時間を有する刺激セッションが、毎週一回、患者に対して適用される。刺激レジメン及び刺激が印加されるよう選択されたツボは、患者の医学的状態の治療において効果及び効率的なEA刺激を提供するよう設計及び選択される。
【0064】
EAデバイスは、ほとんどの埋め込み型医学的デバイスと比較すると、比較的、製造が容易であり、使用される部品が少ない。これは、デバイスの信頼性を高めるだけでなく製造コストを低く維持し、並びに、患者により手頃な価格のデバイスを提供することを可能にする。
【0065】
動作において、デバイスは、安全に使用することができる。恐ろしい故障モードが引き起こされることがない。なぜなら、デバイスが非常に低いデューティサイクルで動作し(つまり、デバイスはONというよりもOFFである)、発生する熱がほとんどないためである。ONであるときも、発生する熱の量は、1mW未満であり、容易に放熱される。EAデバイス内部の部品又は回路が故障した場合でも、デバイスは、単に作動を停止するだろう。必要であれば、そのとき、EAデバイスは、容易に外稙することができる。
【0066】
EAデバイスの設計に含まれる主な特徴は、主要電力源として市販のバッテリを使用することである。EAデバイスに使用される好適な市販のバッテリは、小型の薄い円盤状のバッテリであり、「コイン形」バッテリとして知られており、例えば、パナソニックの3V CR1612 リチウムバッテリ又はそれらと同等なものである。このようなコイン形バッテリは、近年のほとんどのハンドヘルド電子デバイスにおいて、非常に一般的に使用されており、容易に利用可能である。
【0067】
バッテリには、多くのサイズがあり、また、多様な構成及び材料が採用されている。しかしながら、発明者及び出願人が自覚する限りでは、このようなバッテリは、上述の埋め込み型医療デバイスには、うまく使用されていなかった。これは、なぜなら、それらの内部インピーダンスは、デバイスのバッテリが可能な限り長くなるように、消費電力を慎重に監視及び管理する必要がある埋め込み型医療デバイス内での実質的な使用にはあまりに高いか、常にそう考えられてきたためである。さらに、高内部インピーダンスのため、バッテリの出力電圧の低下(瞬間的なバッテリ電流における突然のサージによって引き起こされる)によって、デバイス性能への妥協が生じることがある。加えて、他の能動的な埋め込み型治療に要求される電力は、度々の取り換えなしでこのようなコイン形によって提供することができる電力よりも、はるかに大きい。
【0068】
ここに開示されるEAデバイスは、有利には、電力監視及び電力管理回路を採用し、これにより、これまでに起こることから、バッテリの瞬間的な電流における突然のサージ又は結果として生じるバッテリ出力電圧のドロップを防ぎ、従って、EAデバイスの性能を妥協することなく、EAデバイスの主要バッテリとして、市販されており、非常に薄いものであり、高出力インピーダンスであり、比較的低い容量であり、小型の円盤状(又は「コイン形」)である、全てのバッテリを使用することが可能になる。結果として、例えば200mAhより大きい大容量及び、例えば5オーム未満の内部インピーダンスをEAデバイスが指定する代わりに、これは、より厚いバッテリを要求する及び/又は市販のコイン形バッテリの使用が除外されるが、本発明のEAデバイスは、例えば60mAh未満の比較的低い容量、例えば5オームより大きく典型的には100オームを超える高バッテリインピーダンスを有するバッテリを採用することができる。
【0069】
好適には、EAデバイス内に用いられる電力監視、電力管理並びにパルス生成及び制御回路は、比較的簡単な設計であり、市販の集積回路(IC)又は特定用途集積回路(ASIC)に、必要に応じて別個部品を補うことで、容易に作成することができる。言い換えれば、EAデバイス内に採用される電子回路は、複雑なもの又は高価なものである必要がなく、簡単で安価なものである。これにより、手頃なコストで患者にデバイスを製造及び提供することがより容易になる。
【0070】
ここで使用されるような「環状」、「周」、「外接」、「周囲」、又は、単一の電極又は単一の電極アレイ又は複数の電極又は複数の電極アレイ(ここで、語句「単一の電極又は単一の電極アレイ」又は「複数の電極又は複数の電極アレイ」は、それぞれ、ここでは「単一の電極/アレイ」又は「複数の電極/アレイ」と称する)を記載するために使用する類似の用語は、単一の電極/アレイ又は複数の電極/アレイの形状を円状又は円筒状に制限することなく、別の電極のようなポイント又は物体を囲む又は包含する、電極/アレイの形状又は構成を参照する。言い換えれば、ここで使用される、電極/アレイの「環状」(又は電極/アレイの「周」、又は電極/アレイの「外接」、又は電極/アレイの「周囲」)は、多くの形状があり、例えば、卵型、多角形、星空、波状及び円形又は円筒形を含む同様のものがある。
【0071】
例えば公称の直径23mmのような、機械的寸法と共に使用される場合の「公称」又は「約」は、プラスマイナス(+/−)5%以下の寸法に関連する許容誤差があることを意味する。従って、公称23mmの寸法は、23mm+/−1.15mm(0.05×23mm=1.15mm)の寸法を意味する。
【0072】
バッテリ電圧を特定するために使用する際の「公称」は、特定及び販売されるバッテリによる電圧である。それは、典型的な状態下でバッテリから得られると期待される電圧であり、バッテリセルの化学に基づく。最も新しいバッテリは、公称電圧よりも僅かに大きい電圧を生成するだろう。例えば、新しい公称3ボルトのリチウムコインサイズバッテリの測定値は、3.0ボルトより大きな測定値となり、例えば、正しい状態下で、最大3.6ボルトの測定値となるだろう。温度が化学反応に影響を与えるため、新しい暖かいバッテリは、冷たいものより、より大きな最大電圧を有するだろう。例えば、ここで使用するような、「公称3ボルト」バッテリ電圧は、バッテリが新品の場合、3.6ボルトより高い電圧となることがあるが、典型的には、測定されるときにバッテリに加えられている負荷(つまり、バッテリからどの程度電流が引き出されたか)及びバッテリの使用期間に応じて、2.7ボルトから3.4ボルトの間になる。
【0073】
図9を参照すると、小型の埋め込み型電気鍼デバイス(IEAD)100が斜視図に示されている。IEAD100は、度々、埋め込み型電気鍼刺激装置(IEAS)とも称されることがある。
図9に示すように、IAD100は、円盤又はコインの外観を有し、表側106(これは、「カソード側」とも表示される)、後側(「皮膚側」とも称される)102(皮膚側は
図1では図示せず)及び端側104を有する。
【0074】
ここで使用されるように、IEAD100の「表」側106は、標的刺激ポイント(例えば、所望のツボのような、標的組織位置)に直面するように位置する側であり、ここで、IEADが埋め込まれた際にEA刺激が実行される。「後」側102は、表側とは反対側であり、また、標的刺激ポイントから最も離れており、IEADが埋め込まれた際、通常、患者の皮膚に最も接近する側である。IEADの「端」側104は、表側106から後側102を接続又は接合する側である。
図1では、IEAD100は、表側102及び端側104の一部を示すように向けられている。
【0075】
この出願を通じて、用語「IEAD100」、「IEADハウジング100」、「ボトムケース124」、「缶124」又は「IEADケース124」又は同様の用語は、EAデバイスのハウジング構造を説明するために使用される。ある例では、これらの用語が交換可能に使用されるかのように表示されることがある。しかしながら、文脈によって、これらの用語が意味するものが決定される。特に
図17の描写で示されるように、「缶」又は「器物」を備えるボトムケース124があり、ここで、IEAD100の部品は、IEAD100の製造中に、まずは配置されて組み立てられる。全ての部品が組み立てられボトムケース124に内に配置されると、カバープレート122は、IEADの密閉して封じられたハウジングを形成するために、ボトムケース124に溶接される。カソード電極110は、ボトムケース124の外側(これは、デバイスの表側106である)に装着され、リングアノード電極120は、ボトムケース124の端側104の周囲の絶縁層129に沿って装着される。最終的に、IEADハウジング全体は、アノードリング電極120の外側面及びカソード電極110の外側面を除き、シリコーン形成層125によって覆われる。
【0076】
図9に示すIEAD100の実施形態では、IEAD100の表側106の中央に位置するカソード電極110及びアノード電極120の2つの電極を利用する。アノード電極120は、IEAD100の端側104の周囲に固定されるリング電極である。
図9では図示せず、
図17の説明に関連して後述するが、絶縁材料層129は、ハウジングの端側104又はケース124からアノードリング電極120を電気的に絶縁する。
【0077】
さらに、
図9に図示しないが、IEAD100の機械的設計の主な特徴は、IEAD100の内部に保持されるリング電極120と電子回路との間が、電気的な接続によって確保されていることである。
図15、15A、15B及び17の説明に関連して以下でより詳細に説明するが、この電気的な接続は、ケース124の端部分に形成される凹部内に固定される放射状の貫通接続ピンを用いて確保される。
【0078】
アノード電極と電気的な接触を確保する貫通接続ピンとは対照的に、カソード電極110との電気的な接続は、IEADケース124の表面106にカソード電極110を単に形成又は装着させることによって確保される。ケース124は、導電性金属から作成される。ケース全体124がカソードとして機能することを防ぐために(これは、アノード及びカソード電極間に発生する電場をより良く制御するために行う)、IEADハウジング全体は、アノードリング電極120の外側面及びカソード電極110の外側面を除き、シリコーン形成層125によって覆われる(
図17参照)。
【0079】
ここに記載するような中央カソード電極及びリングアノード電極を使用する一つの利点は、電極の構成が対称的になることである。つまり、埋め込む際に、外科医又は医療関係者が行う埋め込み手術において、(
図9〜17に示す実施形態において)デバイスの表側106であるIEAD100のカソード側が、EA刺激を受信する標的組織位置に直面することを確認することのみが要求される。加えて、IEADは、電気鍼(EA)刺激を受信するように所望のツボ又は他の標的組織位置に対して埋め込む必要がある。IEAD100の方向は、さもなければ、重要ではない。
【0080】
図10は、例示的な標的組織位置90(例えば、ツボ)の位置を示し、ここでは、
図9のIEADが、患者の特定の病気又は症状の治療のために埋め込まれている。このような標的位置90は、ここに開示されるタイプのIEADが埋め込まれるツボ又は他の標的組織位置の多種多様な代表例である。
【0081】
標的組織位置90に埋め込まれたIEAD100は、概して
図11に示され、IEAD100を埋め込む方法が、
図10に示されている。
図11は、肢体80又は他の身体組織の断面図を示し、ここで、標的組織位置90は、IEAD100を用いてEA治療を受けるものとして識別されたものである。(
図10に示す)切開84は、組織80において、例えば標的組織位置90から10〜15mmの短距離に作られる。切開でツボに最も近い皮膚を持ち上げることによって、スロット84(例えば、肢体又は他の身体組織に平行に形成される)が形成され、必要に応じて、外科医はツボの位置の皮膚の下にポケットを形成する。IEAD100は、上側102を皮膚に最も近くなるようにし(従って「皮膚側」とも称する)、その後、皮膚表面上の標的組織位置90の下にIEADの中央を位置させるようにして、スロット84を介しポケットへスライドされる。IEAD100を配置すると、切開又はスロット84は縫合若しくは閉じられ、電気鍼(EA)刺激が所望される標的組織位置90の皮膚80の下にIEAD100が残される。
【0082】
これに関し、標的刺激ポイントは、概して皮膚の表面上に存在するように描写及び図表に典型的に示される「ツボ」により識別されているが、皮膚の表面は、実際の標的刺激ポイントではないということに留意されたい。むしろ、このような刺激は、「ツボ」として識別される皮膚表面上の位置に皮膚を介して針を挿入する手動操作を含むかどうか、又は、このような刺激は、皮膚表面上のツボの位置下の所定の深さに組織を介して刺激電流を流すように合せられる電場を介して印加される電気刺激を含むかどうかで、刺激される実際の標的組織ポイントは皮膚下の深さd2に位置し(
図11参照)、この深さは特定のツボの位置に応じて変化する。標的組織ポイントに刺激が適用されると、このような刺激は、患者の状態又は病気に効果を与える。この理由は、例えば神経、腱、筋肉又は他の種類の組織のような、標的組織位置又は標的組織位置の近くには、患者が体験する状態又は病気の治療に順調に貢献するように、印加される刺激に反応する何かがあるためである。
【0083】
図11は、選択された標的組織位置90での皮膚下の中央及びツボ軸線92上に位置するように埋め込まれたIEAD100の断面図を示す。通常、ほとんどの患者において、IEAD100は、皮膚下の約2〜4mmの深さd1に埋め込まれる。IEADの上(皮膚)側102は、患者の皮膚80に最も近い。IEADの下(カソード)側106には、中央カソード電極110が存在し、皮膚から最も遠い。なぜなら、カソード電極110がIEADの下の中央にあり、さらになぜなら、標的ツボ90が位置する皮膚上の位置の下の中央になるようにIEAD100が埋め込まれるため、カソード110は、ツボ軸線92上の中央になる。
【0084】
さらに、
図11は、ツボ90及びツボ軸線92を囲む身体組織内で生成される電場勾配線88を示す(注意:ここでの目的では、特定のツボにEA刺激を提供する基準を設ける際、位置としてツボが示される皮膚表面上の位置下の約d2の深さにEA刺激が提供されることが理解される)。
図11に示すように、電場勾配線は、ツボ軸線92と一致する又はツボ軸線92に近い線に沿って最も強くなる。従って、環状の電極120によって囲まれた中央に位置する電極110を含む対称的な電極構成を使用する主な利点の一つによって、埋め込み位置内でのIEADの正確な方向は、重要ではないことが分かる。1つの電極が所望の標的位置に対して中央であり、かつ他の電極(例えば、環状の電極)が第1の電極を囲む限り、強い電場勾配が、ツボ軸線に合せて生成される。これによって、ツボ軸線92に沿って(又は非常に近くに)EA刺激電流の流れが生じ、標的位置90下の深さd2での組織内に所望のEA刺激がもたらされる。
【0085】
図12は、IEAD100の「表」(又は「カソード」)側106の平面図を示す。
図12に示すように、カソード電極110は、表側の中央にある円形電極のような外観であり、直径D1を有する。IEADハウジングは、直径D2及び全体の厚さ又は幅W2を有する。これらの図に示す好適な実施形態では、D1は約4mm、D2は約25mm及びW2は2mm強(2.2mm)である。デバイスを好適な薄くコインサイズ形状にするために、W2/D2の比率は0.12以下にすべきである。
【0086】
図12Aは、IEAD100の側面図を示す。リングアノード電極120は、
図12Aで最もよく示されるように、約1.0mmの幅W1又はIEADの幅W2の約1/2の幅W1を有する。
【0087】
図13は、IEAD100の「後」(又は「皮膚」)側102の平面図を示す。例えば後の
図15A及び
図15Bの説明から明らかであるように、IEAD100の後側は、ボトムケース124の場所に一度で溶接されるカバープレート122を備え、ボトムケース124は、電子回路全て及び他の部品を有し、ハウジングの内部に配置される。
【0088】
図13Aは、
図13の線A―Aに沿って得られるIEAD100の断面図である。この断面図では、リングアノード電極120に装着された貫通接続ピン130の遠端部を含む貫通接続ピン130を見ることができる。さらに、この断面図では、円盤状のコイン形バッテリ132を含み、多様な電極構成を搭載する電子アセンブリ133を見ることができる。
図13Aは、密閉して封じられたIEADハウジングを形成するために、どのようにカバープレート122がボトムケース124に溶接又は結合されるかをさらに示す。
【0089】
図14は、電子部品をそれらに配置させる前及び「皮膚側」カバープレート122で密閉される前の、貫通接続ピン130を含むIEADケース124の斜視図を示す。ケース124は、蓋のない浅い「缶」と同様であり、その周囲に短辺を有する。代替的に、ケース124は、直径D2及び高さ(又は幅)W2を有し(ここで、W2はD2よりかなり小さい)、一端で閉口し及び他端で開口した非常に短い円筒と見ることもできる(注意:医療デバイス産業では、埋め込まれたデバイスのハウジングは、度々、「缶」と称される)。貫通接続ピン130は、壁内に形成される凹部140の底で、ケース124の壁部分を貫通する。貫通接続ピン130を保持するこの凹部140の使用は、本発明の主な特徴である。なぜなら、この使用によって、カバープレート122がケース124に溶接されるとき、ケース124上への負荷となる熱衝撃及び残留溶解ストレスから、貫通接続アセンブリの温度に敏感な部分(過度の熱や機械的衝撃により破損する恐れのある部分)が守られるためである。
【0090】
図14Aは、IEADケース124の側面図であり、ケース124の両側に形成される環状のリム126を示す。一旦、リング電極120がケース124の端周りに位置付けされれば、リングアノード電極120は、これらのリム126間に固定される(このリング電極120は、ほとんどの構成において、アノード電極として使用される。そのため、ここでは、リング電極120は、度々、リングアノード電極と称される。しかしながら、所望する場合、リング電極をカソード電極として採用することもできることに留意されたい)。シリコーン絶縁層129(
図7参照)は、リングアノード電極120の後側とケース124の周縁端との間に配置され、この場合、リングアノード電極120は、ケース124の端周りに配置される。
【0091】
図15は、
図14の斜視図において示される空のIEADケース124の平面図を示す。凹部キャビティ140の外線は
図15に見られ、貫通接続ピン130も
図15に見ることができる。凹部キャビティ140の下端は、ケース124の端から内側に放射状に距離D5で位置する。一実施形態では、距離D5は、約2.0〜2.5mmの間である。貫通接続ピン130は、正に固体ワイヤの一部であり、
図15に示され、ケース124から上方の凹部キャビティ140へ外側に放射状に延長し、さらに、凹部キャビティ140からケース124の中央の方へ内側に放射状に延長する。遠端部(凹部の上方に延びる)がアノードリング電極120に接続(溶接)される際に(溶接より前にリング電極120の孔を貫通する)及び貫通接続ピン130の近端部が電子アセンブリ133の出力端に接続される際に、この貫通接続ピン130の長さは、必要に応じてトリミングされる。
【0092】
図15Aは、
図15の断面線A−Aに沿って得られる
図15のIEADハウジング124の断面図を描写する。
図15Bは、
図15Aの線Bで囲まれた部分の拡大図又は詳細を示す。
図15A及び
図15Bを一緒に参照すると、貫通接続ピン130が絶縁材料136内に嵌め込まれ、絶縁材料136は直径D3を有することが分かる。貫通接続ピンアセンブリ(このピンアセンブリは、絶縁材料136に嵌め込まれるピン130の組み合わせを備える)は、直径D4を有する凹部140の底に形成される開口部又は孔の周囲の肩部上に存在する。
図15A及び
図15Bに示す実施形態において、直径D3は0.95−0.07mmであり、ここで、−0.07mmは許容誤差である(従って、許容誤差を考慮すると、直径D3は0.88〜0.95mmの範囲であってよい)。直径D4は0.80mmであり、許容誤差は−0.06mmである(従って、許容誤差を考慮すると、直径D4は、0.74〜0.80mmの範囲であってよい)。
【0093】
貫通接続ピン130は、好適には、純白金99.95%で作られる。絶縁材料136に好適な材料は、ルビー又はアルミナである。IEADケース124及びカバー122は、好適には、チタンから作られる。貫通接続ピン130、ルビー/アルミナ絶縁体及びケース124を含む貫通接続アセンブリは、金ロウでユニットとして密閉され封じられる。代替的に、活性金属ロウを使用することもできる(活性金属ロウは、メタライゼーションすることなく金属をセラミックに接合させることを可能にさせるロウ付け方式である)。
【0094】
封じられたIEADハウジングの密閉性は、医療デバイス産業において共通に実施される、ヘリウムリーク試験を用いてテストされる。ヘリウムリーク率は、1気圧の圧力で、1×10
−9STD cc/秒を超えるべきではない。ケースからピンの抵抗(これは、DC100ボルトで少なくとも15×10
6オームであるべきである)、絶縁破壊の回避又は60HzにおけるAC実効値(RMS)400ボルトでピンとケースとの間のフラッシュオーバ及び熱衝撃を検証するために、他の試験を実施した。
【0095】
図14A、15、15A及び15Bに示す貫通接続アセンブリで提供される一つの重要な利点は、貫通接続ピン130、ルビー絶縁体136及び(ケース材料124に形成される)凹部キャビティ140から作られる貫通接続アセンブリを、IEADケース124の内部にIEAD100の他の部品を配置させる前に、製造及び組み立てができることである。この利点によって、IEADデバイスの製造は大いに容易になる。
【0096】
次に、
図15C及び
図15Dを参照して、ケース124で複数の貫通接続ピンの使用を示すある代替的な実施形態を説明する。例えば、
図4、5及び7に示すようなセグメント化された電極を利用するとき、複数の貫通接続ピンの使用が必要になることがある。このような2つの実施形態が示される。
図15Cに示される第1の代替的な実施形態では、複数の凹部キャビティ140が、ケース124に形成される。つまり、
図15Cに示すように、
図15Cに示すケースの方向によれば、第1の凹部キャビティ140aはケースの左側にあり(時計の約11:00の位置)、第2の凹部キャビティ140bはケースの中間にあり(時計の約12:00の位置)及び第3の凹部キャビティ140cはケースの右側にある(時計の約1:00の位置)。これら複数の凹部キャビティ140a、140b及び140cの各々は、絶縁材料136と共に各自の凹部キャビティの底を貫通して開口する各貫通接続ピン130を有する。最初に組み立てられるとき、各貫通接続ピン130は、ケース124の周縁端を超えて外側に放射状に延長する遠端部131を有する。遠端部131を電極に接続させるために、必要に応じて、遠端部131は、適した長さにトリミングすることができる。同様に、各貫通接続ピン130の近端部129’は、ケース124の中央の方へ内側に放射状に延長する。近端部129’を電子アセンブリ133又はケース124内の他の位置上の適した位置に接続させるために、要求に応じて、この近端部129’は、同様にトリミングすることができる。
【0097】
図15Dに示す第2の代替的な実施形態では、複数の貫通接続ピン130は、単一の凹部キャビティ141の底の各開口部を通して配置される。各絶縁材料136と共にこのような2つの貫通接続ピン130が
図15Dに図示されているが、この数は単なる例示である。
【0098】
次に、
図16を参照すると、電子アセンブリ133の斜視図が示されている。電子アセンブリ133は、多層プリント回路(PC)基板138又は同等の取り付け構造を有し、これによって、バッテリ132及び多様な電子部品134が搭載される。このアセンブリは、
図14及び
図15のハウジング124の空である底の内部に嵌め合うように適合される。
【0099】
図16A及び
図16Bは、それぞれ、
図16に示す電子アセンブリ133の平面図及び側面図を示す。意図する機能を実行するためにIEAD100に要求される回路機能を成し得るよう、電子部品は、共に組み立てられ接続される。
【0100】
図17は、全IEAD100の分解図を示し、主な構成部品を示す。
図17に示すように、IEAD100は、右から始まり左へ進むと、カソード電極110、リングアノード電極120、絶縁層129、ボトムケース124(IEADハウジングの「缶」部分であり、ケースの一部として形成される凹部140の底の開口部を貫通する貫通接続ピン130を有するが、ここでは、貫通接続ピン130は、ルビー絶縁体136で絶縁され、金属ケース124と電気的に接触しない)、電子アセンブリ133(PC基板138上に搭載されるバッテリ132及び多様な電子部品134を有する)及びカバープレート122を有する。組み立て工程の最終ステップの1つにおいて、カバープレート122は、レーザビーム溶接又は同様の工程を用いて、ボトムケース124の端に溶接される。
【0101】
IEADアセンブリに含まれる他の部品は、
図17に必ずしも図示又は識別されていないが、電子アセンブリ133のバッテリ132とPC基板138を結合するための及びケース124の底内部に電子アセンブリ133を結合させるための接着パッチを有する。組み立て処理中にバッテリ132を高温に曝すのを防ぐために、導電性エポキシを使用して、バッテリ端とPC基板138を接続する。導電性エポキシの硬化温度は125℃であるため、以下の処理を使用することができる:(a)まず、バッテリのないPC基板にバッテリ端のリボンの導電性エポキシを硬化し、(b)その後、室温硬化シリコーンを使用してPC基板にバッテリを付け、(c)レーザタックによって、リボンとバッテリの接続を溶接する。
【0102】
また、
図17では、PC基板138に接続される貫通接続ピン130の近端部及びケース124に接続されるPC基板のグランドパッドも図示しない。当該分野で公知な他の接続方法を使用することもできるが、これらの接続を作成する好適な方法は、導電性エポキシ及び導電性リボンを使用することである。
【0103】
さらに、
図17では、アノードリング電極120及び円形カソード電極110を除く、IEAD100全体の表面全てを覆うために使用されるシリコン形成層125が示される。射出形成処理とシリコーンLSR(硬化温度120℃)を使用するオーバ形成処理は使用することができないが、オーバ形成処理は、これを成し得るために使用する。使用することができるオーバ形成処理は、以下の工程を含む:(a)型の内側の室温硬化シリコーン(RTV)を用いてシリコーンジャケットを成形し、ケース上にジャケットを付け、さらに室温で硬化させ、(b)PEEK又はテフロン(登録商標)型に室温硬化シリコーンを注入する(シリコーンはテフロン(登録商標)又はPEEK材料に貼り付かない);又は(c)電極表面をコーティングしないようにマスクしつつ、室温硬化シリコーンでIEAD100を浸漬塗布する(注意:PEEKは、高温で保持される優れた機械的及び化学的抵抗特性を有する、よく知られた半結晶質熱可塑性である)。
【0104】
組み立ての際、アノード電極がケース124に短絡しないように、絶縁層129がリングアノード電極120の直下に配置される。アノード電極への電気的な接続は、貫通接続ピン130の遠端部を通じるもののみである。カソード電極110との電気的な接触は、ケース124を介して作られる。しかしながら、アノードリング電極及び円形カソード電極110を除くIEAD100全体はシリコーン形成層125でコーティングされているため、IEAD100により生成される全ての刺激電流は、アノードの露出面とカソードの露出面との間を流れなければならない。
【0105】
ここに記載される好適な構成では、IEADハウジングの端の周囲に配置されるリングアノード電極120及びIEADケース124のカソード側の中央に配置される円形カソード電極110を使用しているが、このような配置は逆にすることができ、つまり、リング電極をカソードとし、円形電極をアノードとすることができることに留意されたい。
【0106】
さらに、電極の位置及び形状は、
図9及び12〜17に関連して上述した好適な一実施形態に示されるものとは、異なる構成であってもよい。例えば、リングアノード電極120は、デバイスの縁周囲に配置させる必要はなく、このような電極は、中央電極を囲むために、IEADの表側又は後側上に配置する別の形状(例えば、円形又は楕円形)を想定する平坦周電極であってもよい。さらに、ある実施形態では、アノード電極及びカソード電極の表面は、凸状表面を有していてもよい。
【0107】
ここでは、円形又は短円筒形状のハウジング(コイン形と称され又は「器物」とも称される)を組み込む、一つの好適な実施形態が開示されているが、本発明は、ケース124(これは「器物」とも称される)及びそれに関連するカバープレート122が円形であることを要求しない。ケースは、正に、楕円形状、長方形状(例えば、角が滑らかな四角形)、多角形状(例えば、六角形状、八角形状、五角形状)、ボタン形状(より滑らかな特徴の凸状上部又は底部)デバイスであってもよい。これらの代替的な形状又は他の何れも、組立中に過度の熱から貫通接続アセンブリを保護し、さらに薄いデバイスの製造、埋め込み及び使用に関連してここに記載される利益を提供することを可能にするのと同様に、本発明で使用する電子回路及び電源を収容する屈強でコンパクトで薄いケースを提供するために使用される本発明の基本的な原理を可能にするだろう。例えば、デバイスが、比較的薄さ(例えば、約2〜3mm以下の厚さL2)を維持し、かつL2/L1の比率が0.12以下程度となる最大線形寸法L1(ここで、L1及びL2は、一般的に互いに直交する平面内で測定され、約25mm以上である)を有さない限り、そのとき、デバイスは、選択された標的組織位置(複数可)が位置する組織領域上のポケットに容易に埋め込むことができる。ケースの縁周囲の壁に凹部(ここで、凹部は、密閉溶接される縁の壁から、安全な熱距離程度で、ハウジングのケースの壁又は端に効果的に移され、ここに、貫通接続アセンブリを搭載することができる)がある限り、本発明の原理を適用する。
【0108】
さらに、ここに記載されるIEADの好適な構成は、その1つの表面上で通常4mmの直径を有する円形の中央電極を利用しているが、このような中央電極は必ずしも円形である必要はない。それは、楕円形状、多角形状又は他の形状にすることができ、この場合、サイズは、その最大幅で最もよく規定され、概して、約7mmより大きくはならない。
【0109】
最終的に、電極配置は、幾らか修正することができ、本発明の所望の特性を達成することができることに留意されたい。例えば、上記に示すように、本発明を使用する好適な電極構成の1つは、対称的な電極構成を利用し、例えば、第2の極性の中央電極を囲む第1の極性の環状電極を利用する。このような対称的な電極構成では、埋め込み型EAデバイスを、刺激する選択標的組織位置での身体組織に関連して不適切な方向に埋め込むおそれがない。しかしながら、対称的ではない電極構成も使用することができ、本発明の治療効果の少なくとも一部を達成することができる。
【0110】
次に、
図18〜22を参照して、例示的なIEAD100内に採用される回路の電気的設計及び動作を説明する。このような回路によって、長い期間にわたり唯一の動作電力源として、比較的安価で、薄く高インピーダンスのコイン形タイプのバッテリを、IEAD内の主要バッテリ(非充電式)として採用することが可能になる。
【0111】
図18は、ここに開示された教示に従って作られた埋め込み型電気鍼デバイス(IEAD)100の機能ブロック図を示す。
図18に示すように、IEAD100は、バッテリ電圧V
BATを有する埋め込み型の主要バッテリ215を使用する。好適な一実施形態では、この主要バッテリ215は、パナソニックで製造されるCR1612のような、公称出力電圧3Vを有するリチウムバッテリを備える。さらに、IEAD100内には、ブースト変換回路200、出力回路202及び制御回路210が含まれる。主要バッテリ215、ブースト変換回路200、出力回路202及び制御回路210は、密閉して封じられたハウジング124内に全て収容される。
【0112】
この出願の目的において、「主要」バッテリは非充電式バッテリを意味することに注意する。充電式バッテリ内で使用される化学及び構造は、非充電式バッテリ内で使用されるものとは異なる。非充電式バッテリは、ほぼ同一の公称出力電圧を有する充電式バッテリよりも、より小型に、特により薄く作製することができる。さらに、充電式バッテリを使用する埋め込み型デバイスの内部には追加回路が要求され、これにより、追加スペースが取られ、言うまでもなく、埋め込まれたデバイス内の充電式バッテリに再充電の電力を結合するために、外部再充電回路を使用しなければならない。なぜなら、ここに開示されるIEADデバイスの主な特徴の一つは、小型の特に薄いコイン形のハウジング内にパッケージすることであるため、さらになぜなら、主な特徴の他がIEAD回路を簡単かつ非侵襲的に維持することであるため、従って、主要バッテリ(再充電式バッテリではない)が使用される。
【0113】
制御回路210で制御されて、IEAD100の出力回路202は、所定の刺激レジメンに従い、それぞれ、貫通接続端子206及び207を通じて電極E1及びE2に搬送される刺激パルスのシーケンスを生成する。DC(直流)電流が患者の身体組織に流れ込むことを防ぐために、貫通接続端子206及び207の少なくとも1つと直列に接続される結合容量C
Cを採用する。
【0114】
図8及び8Aの説明に関連して以下でより完全に説明するように、所定の刺激レジメンは、典型的には、各刺激セッション中で、固定振幅A1(これは、電圧又は電流で表示することができる)、固定パルス幅T1(例えば、0.5ミリ秒)及び固定周波数f1(例えば、2Hz)(この場合、周波数f1は)を有する刺激パルスの連続的な流れを含む。刺激セッションは、刺激レジメンの一部として、持続時間T3を有し、非常に低いデューティサイクルで生成され、例えば、毎週1回30分で行われる。刺激セッションの頻度は、T4分毎に1回で発生する。例えば、刺激セッションの持続時間が30分又はT3=30分である場合、T4は、T3分継続する刺激セッションがどの程度(又はどの低頻度)発生するかを規定する。典型的には、時間T4は、少なくとも24時間(これは、1440分)であり、20、160分(2週間)の長さであってもよく、典型的には、10,080分(1週間)程度である。他の刺激レジメンを使用することもでき、他の刺激レジメンでは、例えば、固定周波数よりむしろ、刺激セッション中の刺激パルスのための可変周波数を使用する。さらに、刺激セッションの発生率を変化させることができ、例えば、T4は、特に起動に例えば1日の短さから開始し、1又は2週間にわたり例えば14日の長さまで徐々に増えていく。
【0115】
ここに記載される特別な例では、電極E1及びE2は、ハウジング124の一体部分を形成する。つまり、電極E2は、カソード電極E1を囲む周アノード電極を備える。カソード電極E1は、ここに記載される実施形態では、ケース124に電気的に接続される(これにより、貫通接続端子206の作成は不要になる)。電極E1及びE2を介して標的組織位置(例えば、選択されたツボ)に搬送される刺激パルスは、
図18の右下隅近くの波形図に示すように、ゼロボルトグランド(GND)基準と比較して、負の刺激パルスとなる。
【0116】
従って、
図18に記載される実施形態では、刺激パルス中、電極E2はアノード又は正(+)電極として機能し、電極E1はカソード又は負(−)電極として機能することが分かる。
【0117】
主要バッテリ215は、EAデバイス100で要求される動作電力の全てを提供する。十分な振幅(例えば、−V
Aボルト)の刺激パルスを効率的に生成するために、バッテリ電圧V
BATは、出力回路を含むEAデバイスの回路で要求される最適電圧ではない。刺激パルスの振幅V
Aは、典型的には、バッテリ電圧V
BATよりも何倍も大きい。これは、振幅V
Aの刺激パルスを生成するために、バッテリ電圧を「ブーストする」又は高める必要があることを意味する。このような「ブースト」は、ブースト変換回路200を使用して行われる。つまり、入力電圧V
BATを得て、IEAD100が意図される機能を実行するために出力回路202で要求される別の電圧(例えば電圧V
OUT)に変換することが、ブースト変換回路200の機能である。
【0118】
図18に示すIEAD100及び
図9〜17に関連して上述したようなペッケージングは、患者の状態又は病気を順調に治療するために、特定のツボで又は近くで、患者に埋め込むことができる小型の自己完結型でコインサイズの刺激装置を有利に提供する。コインサイズの刺激装置は、刺激装置のハウジングの一体部分を形成する電極を通じて、特定の刺激レジメンに従い、非常に低いレベル及び低いデューティサイクルで電気刺激パルスを有利に生成して印加する。コインサイズの刺激装置内部の小型のコイン形タイプのバッテリは、バッテリが典型的に例えば5オームより大きくしばしば150オーム又はそれ以上の高さになる比較的高バッテリインピーダンスを有するという要因に関わらず、刺激装置が数年の期間にわたり特定の刺激レジメンを実行するのに十分なエネルギーを提供する。従って、一旦埋め込まれたコインサイズの刺激装置は、鍼治療又は電気鍼治療で長い間治療されてきた特定の症状及び病気を治療するために、目立たず、針がなく、長持ちで、安全で、簡潔及び効率的なメカニズムを提供する。
【0119】
ブースト変換集積回路(IC)は、典型的に、実際の出力電圧V
OUTと設定ポイント出力との間の差又はフィードバック信号に比例するようにして、電源から電流を引き出す。この方法で動作する代表的なブースト変換回路を
図19に示す。ブースト変換器の起動において、実際の出力電圧が設定ポイント出力電圧と比較して低いとき、電源から引き出される電流は、かなり大きくなる。残念ながら、バッテリが電源として使用される際、バッテリは、バッテリから引き出される電流に比例して内部電圧損失(バッテリの内部インピーダンスによって生じる)を有する。これは、起動において又は瞬間的な高出力電流において、ブースト変換器から要求される大きな電流がある際の電圧条件下で生じる可能性がある。過電流及び電圧条件下との関連は、埋め込まれた電気鍼デバイスの望ましくない挙動又は動作寿命の低減につながる可能性がある。
【0120】
図19に示す例示的なブースト変換回路では、バッテリは、簡単な直列抵抗を有する電圧源としてモデル化されている。
図19に示す回路を参照すると、直列抵抗R
BATが小さい(5オーム以下)とき、ブースト変換器の入力電圧V
IN、出力電圧V
OUT及びバッテリから引き出される電流I
BATは、典型的に、
図19Aに示す波形のようになり、ここで、横軸は時間、左縦軸は電圧、右縦軸は電流である。
【0121】
図19Aの波形を参照すると、ブースト変換器の起動(10ms)の際、入力電圧V
INには〜70mVのみのドロップがあり、バッテリから引き出される70mAの電流がある。同様に、電気鍼治療パルスに要求される瞬間的な出力電流は、〜40mVの入力電圧ドロップを与え、バッテリから〜40mAを引き出す。
【0122】
しかしながら、不利にも、より高い内部インピーダンス(例えば、160オーム)を有するバッテリは、出力電圧の大きなドロップなしに、1ミリアンペア又はその程度の電流を出力することはできない。この問題は、
図19Bに示すタイミング波形図に描写される。
図19Aのように、
図19Bにおいて、横軸は時間、左縦軸は電圧、右縦軸は電流である。
【0123】
図19Bに示すように、より高い内部インピーダンスの結果として、起動中及び電気鍼治療刺激パルスに関連する瞬間的な出力電流負荷中に、バッテリ端子(V
IN)での電圧は、2.9Vからブースト変換器(〜1.5V)の最小入力電圧まで引き落とされる。出力電圧V
OUTに生じるドロップは、制御されない発振回路を除き、何れのタイプの回路においても許容されない。
【0124】
また、ブースト変換回路で使用されるバッテリは、簡単な直列抵抗として
図19にモデル化されているが、バッテリインピーダンスは、内部設計、バッテリ電極表面領域及び異なるタイプの電気化学的反応から発生する可能性があることに留意されたい。バッテリインピーダンスへのこれらの寄与全てによって、バッテリから引き出される電流が増加するにつれて、バッテリ端子でのバッテリ電圧を減少させる。
【0125】
ここに開示されるタイプの適切に小型の薄い埋め込み型電気鍼デバイス(IEAD)では、小型の薄いデバイスを確保するために、低コストに抑えるために及び/又は低い自己放電率を有するために、より高いインピーダンスのバッテリを使用することが所望される。また、バッテリ内部インピーダンスは、典型的に、バッテリが放電するにつれて高まる。これにより、新しいバッテリが許容できる低い内部インピーダンスを有する場合であっても、デバイスのサービス寿命が制限される可能性がある。従って、長期間にわたり意図する機能を確実に実行するために、ここに記載されるIEADにおいては、バッテリのV
INから引き出される瞬間的な電流の管理を可能にするブースト変換回路の回路設計が要求される。このような電流の管理は、バッテリの内部インピーダンスが、瞬間的に高出力電流が要求される際のブースト変換回路の出力電圧V
OUTのポンピングに応じて、刺激パルスが生成される際の発生に応じて、V
INを容認し難いほど低いレベルにドロップさせることを防ぐために要求される。
【0126】
この要求される電流管理を提供するために、ここに開示されるIEAD100は、
図20に示すような又はそれと同等の電子回路を採用する。
図9に示すものと同様に、
図20の回路は、バッテリ、ブースト変換回路200、出力回路230及び制御回路220を有する。制御回路220は、バッテリから引き出される瞬間的な電流を制限するために、ブースト変換回路200のON及びOFFのデューティサイクルのために使用されるデジタル制御信号を生成する。つまり、デジタル制御信号は、パルスでブースト変換器を短時間ONにし、その後、バッテリから大きな電流が引き出される前に、ブースト変換器をシャットダウンさせる。このようなプッシングと併せて、入力電圧V
INのリップルを低減するために、入力容量C
Fが使用される。容量C
Fは、ブースト変換器がONとなる短時間の間、瞬間的な高い電流を供給し、その後、ブースト変換器がOFFとなる期間中に、バッテリからよりゆっくりと充電される。
【0127】
上述したブースト変換回路200のON及びOFFのデューティサイクルへのデジタル制御信号の使用の変形として、(独立した制御回路220を使用することなく)ブースト変換器200自身内でデジタル制御を生成できるようにすることがある。この変形によれば、その他の回路で要求される事前決定されたレベルをバッテリ電圧が下回る度に、ブースト変換回路200は、それ自身をシャットダウンする。例えば、マキシム(Maxim)から市販されているMAX8570ブースト変換器ICは、印加される電圧が2.5Vを下回る度に、シャットダウンする。これは、(制御回路210内で使用される)マイクロプロセッサ及び他の回路の動作の維持を保証するのに十分に高い電圧である。従って、入力電圧が2.5ボルト下にドロップすると直ぐに、ブースト変換回路はシャットダウンし、これにより、バッテリから引き出される瞬間的な電流が制限される。ブースト変換器がシャットダウンするとき、バッテリから引き出される瞬間的なバッテリ電流のかなりの量が直ぐに低減し、これにより、入力電圧が高くなる。マイクロプロセッサ(例えば、後述する
図21に示す回路U2)及び/又はブースト変換器で使用される他の回路がブースト変換器をONに戻す時であると決定するまで、ブースト変換器はシャットダウンを維持する。一旦、ONすると、再び入力電圧が2.5ボルト下にドロップするまで、ブースト変換器はONを維持する。このパターンを続けることで、ブースト変換器は、短時間でON及びより長時間でOFFし、これにより、バッテリから引き出される電流の量を制御及び制限する。
【0128】
図20に示す回路では、ブースト変換回路200で生成される出力電圧V
OUTは、設定点又はブースト変換回路200のフィードバック端子に印加される基準電圧V
REFで設定されることに留意されたい。
図20に示す構成では、V
REFは、出力電圧V
OUTに比例し、R1及びR2の抵抗分割網により決定される。
【0129】
出力回路230の一部として
図20に示すスイッチS
P及びS
Rは、制御回路220で制御される。これらのスイッチは、負荷R
LOADに印加されるEA刺激パルスを形成するために、選択的に開閉される。刺激パルスが発生する前に、結合容量C
Cの回路側が出力電圧V
OUTまで充電されるように、スイッチS
Rは十分に長く閉じる。C
Cの組織側は、電極E2で0ボルトに保持され、これにより、接地基準に保持される。その後、刺激パルス間のほとんどの時間で、両方のスイッチS
P及びS
Rは開いたままとなり、結合容量C
Cの両端に現れる出力電圧V
OUTとほぼ同等の電圧となる。
【0130】
刺激パルスの先端で、スイッチS
Pは閉じ、これにより、負荷R
LOADの両端に現れる負電圧−V
OUTが直ぐに生じ、電極E1での電圧がほぼ−V
OUTにドロップし、刺激パルスの先端が生成される。この電圧は、所望のパルス幅と比較して長いRC(抵抗―容量)時定数での制御に応じて、0ボルトへの減衰を開始する。パルスの後端で、電極E1での電圧が大きく減衰する前に、スイッチS
Pは開き、スイッチS
Rは閉じる。この動きによって、電極E1での電圧は(相対的に言うと)直ぐに0ボルトに戻り、これにより、パルスの後端が規定される。スイッチS
Rが閉じれば、容量C
C及び抵抗R
3の値で設定される時定数により制御される期間内に、結合容量C
Cの回路側の電荷をV
OUTに戻し充電することが可能になる。結合容量C
Cの回路側がV
OUTまで充電されると、その後、スイッチS
Rは開き、次の刺激パルスが生成されるまで、両方のスイッチS
P及びS
Rは、開いたままになる。その後、刺激パルスが負荷の両端に印加される度にこの処理が繰り返される。
【0131】
従って、IEAD100内で使用される電子回路の一実施形態では、
図20に示されるように、制御信号でシャットダウンできるブースト変換回路200が採用される。制御信号は、理想的には、制御回路220(これは、マイクロプロセッサ又は同等の回路の使用で実現することができる)で生成されるデジタル制御信号である。制御信号は、ブースト変換回路200の低圧側(接地側)に印加される(
図20では「シャットダウン」端子として識別される)。容量C
Fは、制御信号がブースト変換回路の動作を有効にする短いON時間の間、瞬間的な電流を供給する。そして、制御信号がブースト変換回路を無効にする比較的長いOFF時間中に、容量C
Fはバッテリにより再充電される。
【0132】
図20に示す実施形態の変形では、入力電圧が所定の閾値(例えば、2.5V)を下回る度に、それ自身をシャットダウンさせるブースト変換回路200が使用される。例えば期間信号によって出力電圧V
OUTが事前に規定された閾値を下回ることが示される度及び/又は事前に規定された期間が最後の刺激パルスが生成されてから事前に規定された期間が経過する度に、ブースト変換器で使用される他の回路がブースト変換器をONに戻す時を決定するまで、ブースト変換器は、シャットダウンを維持する。
【0133】
図20に示す回路の実施形態の好適な回路実装の1つを
図21に提示される概略図に示す。つまり、
図21の概略図に描写される回路は、
図20に示す機能的な回路に関連して説明した機能の全てを実行する。加えて、
図21に示す回路は、
図20の機能ブロック図から明らかに必要な他の幾つかの機能だけでなく、
図21に示すIEAD回路の全体的な実用及び機能に寄与する特徴も提供する。
【0134】
図21に示すIEAD回路の主な部品として使用される5つの集積回路(IC)がある。集積回路U1は、ブースト変換回路であり、
図19及び20に関連して上述したブースト変換回路200の機能を実行する。
【0135】
さらに
図21を参照すると、集積回路U2は、マイクロコントローラICであり、
図18に関連して上述した制御回路210の機能及び
図20に関連して上述した制御回路220の機能を実行するために使用される。この目的における好適なICの1つとして、テキサス・インスツルメント(Texas Instruments)で作製されたMSP430G24521マイクロコントローラチップがある。このチップは、8KBのフラッシュメモリを有する。マイクロコントローラに含まれるメモリがあるということは重要であり、なぜなら、それによって、選択された刺激レジメンに関連するパラメータを規定及び格納することが可能になるためである。ここに記載されるEAデバイスの利点の1つは、
図8及び8Aのタイミング波形図及びそれらの添付の説明から明らかである5つのパラメータだけで規定することができる刺激レジメンを提供することである。これによって、単純明快に実行するマイクロコントローラのプログラミング機能が可能になる。
【0136】
マイクロコントローラU2は、主に、多過ぎる瞬間的な電流がバッテリV
BATから引き出されるのを防ぐために、ブースト変換器をシャットダウンするデジタル信号を(使用するとき)生成する機能の実行や、IEAD100内の消費電力の制御及び管理に関連する他の機能を実行する。マイクロコントローラU2は、所望のパルス幅及び周波数での刺激パルスの生成も制御する。それは、刺激セッションに関連する期間をさらに記録し、つまり、刺激セッションが始まるとき及び終わるときを記録する。
【0137】
マイクロコントローラU2は、刺激パルスの振幅も制御する。これは、プログラマブル電流源U3で生成される電流の値を調整することで行われる。一実施形態では、U3は、電圧制御電流源ICを用いて実現される。このような電圧制御電流源では、プログラム電流は、固定抵抗R5の両端に現れるプログラム電圧で設定され、つまり、U3の「OUT」端子に現れる電圧で設定される。一方、このプログラム電圧は、U3の「SET」端子に印加される電圧で設定される。つまり、プログラム電流源U3は、「OUT」端子での電圧を、「SET」端子に印加される電圧と等しくなるように設定する。そのとき、抵抗R5を介して流れるプログラム電流は、「SET」端子での電圧をR5で割るオームの法則によって設定される。「SET」端子での電圧が変化するため、「OUT」端子でのR5を介して流れる電流は変化し、さらにこの電流は、負荷R
LOADを介して流れる電流と基本的に同等である閉じたスイッチM1を介して引き込まれる電流と、基本的に同等になる。そのため、抵抗R5の両端電圧で設定されるような、抵抗R5を介して流れる電流が何であっても、基本的に、負荷R
LOADを介して流れる電流と同等になる。従って、マイクロプロセッサU2が、「AMPSET」と表示される信号線で、U3の「SET」端子での電圧を設定し、これが、負荷R
LOADを介して流れる電流を制御する。いかなる場合でも、ブースト変換器で生成されるV
OUTを超える負荷R
LOADの両端に現れる電圧パルスの振幅が、スイッチU5及び電流源U3にわたり、低い電圧にドロップすることはない。
【0138】
IEAD100で使用される回路、例えば
図20又は21に示す回路又はそれと同等のものは、負荷R
LOADを介して流れる刺激電流を制御するためのある手段を有することが重要であり、ここで負荷R
LOADは、刺激すべき標的組織位置(例えば、ツボ)での又はその周囲での患者の組織インピーダンスとして特徴付けられる負荷である。この組織インピーダンスは、典型的に、約300オームから2000オームの範囲で変化することがある。さらに、それは、一人の患者から別の患者への変化のみではなく、時間経過と共に変化する。そのため、この可変負荷R
LOADを介して流れる電流を制御する必要がある。この方法を達成する1つの方法は、時間経過と共に組織インピーダンスにおいて生じる変化に関わらず、組織負荷を介して同一の電流を流すために、刺激電圧に対して刺激電流を制御することである。電圧制御電流源U3の使用は、
図21に示すように、この要求を満たす1つの方法である。
【0139】
さらに
図21を参照すると、第4の集積回路U4がマイクロコントローラU2に接続されている。
図21に示す実施形態では、集積回路U4は、電磁場センサであり、これにより、外部生成される(非埋め込みである)電磁場の存在を検知することが可能になる。この出願の目的において、「電磁」場は、磁場、無線周波(RF)磁場、光フィールド及び同様のものである。電磁場センサは、例えば、例えばピックアップコイル又はRF検知器の無線センシング要素、フォトン検知器、磁場検知器及び同様のものといった、様々な形態を取ることができる。磁場センサが電磁場センサU4として採用されるとき、磁場が外部制御デバイス(ECD)240の使用によって生成され、この外部制御デバイス(ECD)240は、例えば、磁場の存在又は不存在を経て、磁場センサU4と無線通信を行う(磁場又は磁場を使用しない場合の他のタイプの場は、波線242で
図21に記号によって示される)。最も簡単な形態では、ECD240は、単なる磁石であり、磁場の変調は、この磁石をIEADに近づける又は離すようにして配置又は移動させることで達成される。センサの他のタイプ(非磁場)を採用するとき、ECD240は、使用するセンサで検知されるべき適切な信号又は場を生成する。
【0140】
ECD240の使用によって、IEAD100を埋め込んだ後(又は埋め込む前)、ある簡単なコマンドを用いて、IEAD100を制御する方法が患者又は医学関係者に提供され、これは、例えば、IEADをONにし、IEADをOFFにして、1増分で刺激パルスの振幅を高め、1増分で刺激パルスの振幅を減らす等である。簡単なコード体系を、1つのコマンドを別のコマンドから区別するために使用することができる。例えば、コード体系の1つとして、時間ベースがある。つまり、第1のコマンドは、異なる時間長で、IEAD100近く及びIEAD100内に含まれる磁場センサU4の近くの磁石を保持することにより伝達される。例えば7秒間未満で少なくとも2秒間、IEAD上で磁石を保持する場合に、第1のコマンドが伝達される。例えば18秒間未満で少なくとも11秒間、IEAD上で磁石を保持する場合、第2のコマンドが伝達される等である。
【0141】
より高性能の磁場コード体系を、IEAD100の動作パラメータをマイクロコントローラチップ102に伝達するために使用することができる。例えば、コンピュータで制御される電磁場を用いて、各刺激セッション中に使用されるEA刺激パルスのパルス幅、周波数及び振幅を事前に設定することができる。さらに、刺激セッションの頻度を事前に設定することも可能である。加えて、これらのパラメータをデフォルト値にリセットするために、マスターリセット信号をデバイスに送信することも可能である。これらの同一動作パラメータ及びコマンドは、有効寿命中に所望又は要求されるパラメータの変化に応じて、何時でもIEAD100に対し再送することができる。
【0142】
図20に示す機能的な回路の動作を通じて含まれない
図21の回路の使用及び動作に関連する追加機能は、ブースト変換器U1の出力端子でのショットキーダイオードD4の組み込みと、
図20に示すスイッチS
R及びS
Pと同一機能を基本的に実行する第5の集積回路(IC)U5の組み込みである。
【0143】
ショットキーダイオードD4は、ブースト変換回路U1で生成される出力電圧V
OUTの絶縁を補助する。これは、バッテリ電圧V
BATの4倍又は5倍の大きさで出力電圧V
OUTを提供するよう選択及び動作するブースト変換回路U1の用途において重要である。例えば、
図21の回路を設計する実施形態では、出力電圧V
OUTは、3ボルトのみの公称バッテリ電圧を有するバッテリを用いて、公称15ボルト(及び25ボルトの高さが可能)になるように設計される。
【0144】
図21に示す回路における第5の集積回路U5の組み込みは、説明のように、スイッチの機能を実行するために用いられる。より具体的には、
図21に示す集積回路U5は、単極/双投(SPDT)スイッチとして機能する。多数の市販のICをこの機能のために使用することができる。例えば、アナログ・デバイセズ社(Analog Devices Incorporated)(ADI)からの利用可能なADG1419ICを用いることができる。このような集積回路U5では、端子「D」は、スイッチの共通端子として機能し、端子「SA」及び「SB」は、スイッチの選択出力端子として機能する。端子「IN」及び「EN」は、スイッチの位置を制御する制御端子である。従って、U5の「IN」端子に接続されるPULSE線上に信号があるとき、SPDTスイッチU5は、「D」端子と「SB」端子を接続し、SPDTスイッチU5は、カソード電極E1とプログラマブル電流源U3を効率的に接続する。この接続によって、プログラマブル電流源U3のSET端子に印加される制御電圧AMPSETで設定されるプログラム電流が、抵抗R5を介して流れるようになり、これにより次に、電極E1とE2との間に存在する負荷R
LOADを介して基本的に同一の電流が流れるようになる。PULSE線上に信号が存在しないとき、SPDTスイッチU5は、カソード電極E1と抵抗R6を効率的に接続し、これにより、結合容量C12及びC13にブースト変換回路U12で提供される電圧V
OUTを再充電することが可能になる。
【0145】
IEAD100内で使用される回路実装を示す
図21の概略図には、ブースト変換回路U1自身内で生成されるデジタル制御信号を用いてON及びOFFが変調されるブースト変換回路U1が含まれる。この実装によれば、上記で説明したように、その他の回路で要求される事前決定されたレベルをバッテリ電圧が下回る度に、ブースト変換回路200は、それ自身をシャットダウンする。例えば、
図21に示す実施形態では、ブースト変換回路U1は、マキシムから市販されているMAX8570ブースト変換IC又は同様のものを用いて実行される。この特徴は、印加される電圧VBATが2.5Vを下回る度に、ブースト変換ICがシャットダウンすることである。有利には、2.5ボルトのバッテリ電圧は、マイクロコントローラ集積回路U2及びIEAD100の動作に関連する他の回路の動作の維持を確保するのに十分高い。
【0146】
従って、動作において、バッテリ電圧が2.5V下にドロップすると直ぐに、ブースト変換回路U1はシャットダウンし、これにより、バッテリから引き出される瞬間的な電流が制限される。ブースト変換器U1がシャットダウンすると、バッテリから引き出される瞬間的なバッテリ電流のかなりの量が直ぐに低減し、これにより、バッテリ電圧V
BATが高くなる。
【0147】
バッテリ電圧V
BATが高くなると、ブースト変換回路U1は、マイクロコントローラU2によってブースト変換回路が再びONになる時が決定されるまで、シャットダウンを維持する。このONは典型的に2つの方法の何れかで引き起こされる:(1)次の刺激パルスの搬送の直ぐ前に、ON信号をシャットダウン「SD」端子やブースト変換回路U1の信号線243に印加する方法;又は、(2)ブースト変換回路U1のフィードバック端子FBで検出されるバッテリ電圧V
BATが十分に高くなると直ぐに、ブースト変換回路U1内の回路が自動的に再びONになる方法である。ONになると、出力電圧V
OUTが、マイクロコントローラU2によってスイッチ回路U5のIN端子に次のPULSEを印加する際に、所望の振幅の出力刺激パルスを生成するようスイッチ回路U5及び電流源回路U3が要求する電圧レベルに立ち上がることが可能になる。
【0148】
一旦、ONになると、再び入力電圧が2.5ボルト下にドロップするまで、ブースト変換器はONを維持する。このパターンを続けることで、ブースト変換器は、短時間でON及びより長時間でOFFし(典型的には、ブースト変換回路U1のこのON/OFF動作に関連するデューティサイクルは、約0.01以下である)、これにより、バッテリから引き出される電流の量が制御及び制限される。U1のこのON/OFF動作は、バッテリ電圧V
BATが、ブースト変換回路U1を除きIEAD100の全ての重要な回路(主に、マイクロコントローラU2の回路)の動作を許容するのに、十分な高さを常に維持することを保証する。
【0149】
好適な実装では、
図21に用いられるマイクロコントローラ回路U2は、テキサス・インストゥルメント(Texas Instruments)から市販されているMSP430G2452IRSA16マイクロコントローラ又は同様のマイクロコントローラである。電流源回路U3は、リニアテクノロジー(Linear Technology)から市販されているLT3092プログラマブル電流源又はそれと同様のものを備える。センサ回路U4は、村田製作所(Murata)から市販されているAS−M15SA−R磁場センサ又はそれと同様のものを備える。そして、スイッチ回路U5は、アナログ・デバイセズ社から市販されているADG1419BCPZ単極双投アナログスイッチ又はそれと同様のものを備える。
【0150】
図21に示す回路実装で提供される別の機能又は強化は、
図21の回路で生成される出力刺激パルスに見られる望ましくない先端の過渡を、除去又は少なくとも最小限にすることに関する。このような先端の過渡の発生の除去又は軽減への解決は、プログラマブル電流源回路U3の入力端子INにN−MOSFETトランジスタQ1を挿入することによって行われる。このスイッチQ1は、出力電流及び/又は負荷抵抗の変化に対し電流源U3の両端電圧をより一定に保持する「カスコード」段として機能する。
図21に描写するようなこのN−MOSFETスイッチQ1のカスコード段のような使用によって、刺激パルスの先端の過渡が低減され、なぜなら、Q1に見える容量が、電流源回路U3に容量が見える際の容量よりも小さくなるためである。
【0151】
図21の回路で提供される別の機能又は強化は、低いパルス振幅(例えば、3mA未満)でプログラマブル電流源U3を起動させるときに見られる遅延を対処することである。IEADの典型的な電流刺激の出力は、15〜25mA程度である。例えば1.5〜3mAのはるかに小さい振幅の電流刺激が使用されるとき、このより小さい振幅パルスを決定する制御信号は、15〜25mAのより典型的な刺激振幅を決定するために使用されるものよりも、はるかに小さくなる。このような小さい制御信号は、トリガポイントTRIGと刺激パルスの先端253との間の遅延t
Dの長さとなる。この問題を対処するために、ショットキーダイオードD5が、マイクロコントローラ回路U2上の出力ポートから、電流源回路U3の入力ポートINに接続される。
図21の回路の好適な実装では、このショットキーダイオードD5は、フェアチャイルドセミコンダクター(Fairchild Semiconductor)から市販されているBAT54XV2DKRダイオード又はそれと同様のものを用いて実現される。このダイオードD5は、パルスの開始時に電流を調整する前に遅延t
Dを少なくするため、パルス振幅が低いときに回路U3の準備又は「キックスタート」のために使用される。このダイオードD5の使用によって、パルス特性を大きく変えることなく、
図21に「KICKER」と表示される信号線上で、パルス開始時に、マイクロコントローラU2がU3を直接駆動することが可能になる。
【0152】
IEAD100の動作及び使用は、刺激セッション中に使用される第1の事前設定された刺激パラメータで始まる。
図8及び8Aは、EA刺激パルスを生成するためにIEADによって使用されるEA刺激パラメータを説明するタイミング波形図を示す。
図8に示すように、基本的には、刺激セッションに関連する5つのパラメータがある。時間T1は、刺激パルスの持続時間(又はパルス幅)を決定する。時間T2は、1つの刺激パルスの開始と次の刺激パルスの開始との間の時間を決定する。従って、時間T2は、刺激パルスの周波数に関連する周期を決定する。刺激パルスの周波数は、1/T2に等しい。T1/T2の比率は、かなり低く、例えば、0.03未満であり、典型的には0.01未満である。刺激セッションの持続時間は、期間T3で決定又は規定される。刺激パルスの振幅は、振幅A1で決定される。この振幅は、電圧又は電流の何れかで表すことができる。
【0153】
図8Aは、タイミング波形図であり、好適な刺激レジメンに従って投与される刺激セッションの様子を示す。
図8Aは、持続時間T3の幾つかの刺激セッションを示し、刺激が発生する頻度を示す。従って、刺激レジメンは、1つの刺激セッションの開始から次の刺激セッションの開始を設定する期間T4を有する。従って、T4は、刺激セッションの周波数の周期であり、刺激セッションの周波数は、1/T4と等しくなる。
【0154】
選択された標的刺激位置に刺激を印加して身体組織への所望の効果の達成を可能にするために、初期期間は、典型的には2週間より長くない期間を採用することができ、ここで、刺激セッションの期間T4は、変化させてもよい。初期期間後、刺激セッションは、T4の固定値を用いて患者に対して定期的に適用される。例えば、初期期間後、刺激セッションは、毎週2回(つまり、T4=5,040分)未満で、隔週1回(つまり、T4=20,160分)以上とする。
【0155】
初期期間中にT4の値を変化させることができ、1つの実装に従えば、EAデバイスの回路に簡単なアルゴリズムを採用することにより、適切な方法でT4の値を変化させる。例えば、起動時は、期間T4を最小値T4(min)に設定することができる。その後、時間の経過に応じて、T4が所望の値T4(final)に達するまで、T4の値を徐々に増加させることができる。
【0156】
例として、初期期間中に、T4(min)が1日であり、かつT4(final)が7日である場合、T4の値は、一旦、刺激セッションが開始すれば、次のように変化することができる:第1の刺激セッションと第2の刺激セッションとの間の持続時間ではT4=1日であり、その後、第2の刺激セッションと第3の刺激セッションとの間の持続時間ではT4=2日であり、その後、第3の刺激セッションと第4の刺激セッションとの間の持続時間ではT4=4日であり、さらにその後、第4の刺激セッション後、引き続く全ての刺激セッション間の持続時間では最終的にT4=7日になる。
【0157】
上記段落で説明したように、簡単な2倍するアルゴリズムを用いて最小値から最大値へT4の値を増加させるよりむしろ、強化は、セッションの持続時間及び間隔を規定するテーブルを使用することで行われ、これにより、セッション間隔を第1週又は等に対して自動的により短くすることができる。例えば、1日後に第1の30分のセッションを搬送することができる。第2の30分は、2日後に搬送することができる。第3の30分は、4日後に搬送することができる。最終的に、7日後、引き続く全てのセッションでは、第4の30分のセッションを搬送することができる。
【0158】
トリガされたセッションが完全に搬送された場合、次のテーブルの入力に治療スケジュールは進む。
【0159】
別の強化は、引き続きトリガされたセッションが完全に搬送される場合、初期設定の振幅のみ有効になることである。例えば、第1のセッションが磁石アプリケーションで中断される場合、デバイスは、シェルフモード(Shelf Mode)に戻る。このようにして、第1のセッションは、通常、臨床医設定で生じるトリガセッションである。
【0160】
プログラムされるセッションテーブル内の振幅及び箇所の値は、それらが変更されるとき不揮発性メモリに格納される。これによって、デバイスがリセットされることで、治療スケジュールの再設定及び振幅を再プログラムする必要を避ける。
【0161】
例として、刺激レジメンを規定するために使用するパラメータの好適な組み合わせの1つは、以下のとおりである。
T1=0.5ミリ秒
T2=1000ミリ秒
T3=30分
T4=7日(10,080分)
A1=20ボルト(1KΩに対して)又は20ミリアンペア(mA)
【0162】
特定の症状又は病気の治療のための各パラメータの許容範囲による、パラメータの好適な組み合わせの別の例は、以下のとおりである。
T1=0.1〜2.0ミリ秒(ms)
T2=67〜1000ミリ秒(15Hz〜1Hz)
T3=10〜60分
T4=1,440〜20,160分(1日〜2週)
A1=1〜25mA
【0163】
刺激レジメンのために及び刺激レジメン内で使用する刺激パラメータの範囲のために上記に示した値は、単なる例示であることを強調する。使用することができる他の刺激レジメン及びこれらのパラメータの各々のために使用することができる値の範囲は、特許請求の範囲において規定される。
【0164】
本発明で使用するパラメータとして特許請求の範囲で提示される値の範囲は、数か月の慎重な調査及び研究の後に選択したものであり、任意のものではないことを強調する。例えば、デューティサイクルを設定するT3/T4の比率は、非常に低くなるように慎重に選択され、例えば、0.05より大きくならない。この大きさの低いデューティサイクルを維持することは、埋め込み型刺激装置の分野において他人が試みてきたものに対し、大きな変化を示す。非常に低いデューティサイクルのみが、バッテリ自身を小型に(コイン形サイズに)することを可能にし、続いて、IEADハウジングを非常に小型にすることを可能にし、これにより、リードなしで使用するのに理想的に適したIEADが作られ、従って、IEADを所望の刺激部位(例えば、ツボ)に埋め込むことを比較的容易にするが、刺激セッションの頻度及び持続時間を制限する。
【0165】
刺激セッションの頻度及び持続時間を制限することは、本発明の主な要素であり、なぜなら、ある治療は、患者の症状の急速な変化を目的とする大用量の刺激(又は他の治療)を用いて迅速及び強く行うよりも、時間に対してゆっくりと念入りに行うことが最良であると認識されるためである。さらに、治療をゆっくり念入りに行うことは、伝統的な鍼治療法とより一致する(これは、上述のように、2500年にわたる経験に基づく)。加えて、このゆっくり及び念入りという条件付けは、持続的な治療効果を生み出すために要求される中枢神経系の改造のためのタイムスケールと一致する。従って、出願は、適用される多くの即時かつ強制的なアプローチとは反対に、従来技術の電気刺激装置にはほとんどない、ゆっくり念入りなアプローチの治療レジメンに基づく。
【0166】
一旦、刺激レジメンが規定され、かつそれに関連するパラメータがマイクロコントローラ回路U2のメモリに事前設定されれば、IEAD100の埋め込む準備はできる。埋め込みは、通常、簡単な手順であり、例えば、
図10及び11の説明に関連して上述される。
【0167】
埋め込みの後、所望の刺激レジメン又は刺激パラダイムが実行されるようIEADをONにしなければならず、若しくは制御しなければならない。好適な一実施形態では、IEADハウジングの密閉後の何れの時間と同様に埋め込み後のIEADの制御は、
図22の状態図に示すように実行される。
図22に示す各円は、マイクロコントローラU2(
図21)の動作「状態」を示す。
図22に示すように、コントローラU2は、6つの状態の1つにおいてのみ動作する:(1)「振幅設定」状態、(2)「シェルフモード」状態、(3)「トリガセッション」状態、(4)「スリープ」状態、(5)「OFF」状態、及び、(6)「自動セッション」状態。「自動セッション」状態は、刺激レジメンを規定する事前にプログラムされたパラメータを用いて、刺激レジメンを自動的に実行する状態である。
【0168】
シェルフモードは、出荷前のIEADが置かれる低電力状態である。埋め込み後、コマンドは、磁石アプリケーションを経て生成される。磁石アプリケーションは、外部磁石、典型的には、小さいハンドヘルド円筒磁石を意味し、IEADが埋め込まれる位置上に配置される。その位置に磁石があれば、磁場センサU4は、磁石の存在を検知し、磁石の存在をコントローラU2に通知する。
【0169】
「シェルフモード」状態から、磁石アプリケーションを10秒間(M.10s)実行すると、IEADは「振幅設定」状態になる。「振幅設定」状態中では、ゼロ振幅でパルスを生成することから、刺激は動作を開始し、患者が快適なレベルに到達したことを示すまで、パルスの振幅は5秒毎に増加する。その後、磁石は、振幅を設定するために外される。
【0170】
磁石が外され、かつ振幅が非ゼロ
である場合、デバイスは続けて「トリガセッション」に入り、そして、患者は初期治療を受ける。振幅がゼロ
の間の「振幅設定」中に磁石が外される場合、デバイスはシェルフモードに戻る。
【0171】
セッション時間(Ts)が経過してデバイスが「スリープ」状態に入った後、トリガセッションは終了し、刺激は停止する。トリガセッション(M)中に磁石が印加された場合、セッションは、中止され「OFF」状態になる。「OFF」状態中に磁石を10秒間持ち続けた場合、記載のようにゼロ振幅から始まるレベルの刺激で、「振幅設定」状態に入る。
【0172】
OFF状態中に磁石を10秒内に外した場合
、デバイスはスリープ状態に入る。スリープ状態から、デバイスは、セッション間隔時間が有効期間(T
I)になると、自動セッション状態に自動的に入る。自動セッションによって、セッション時間(T
S)の間、設定振幅で刺激パルスが搬送され、デバイスはスリープ状態に戻る。この実施形態では、一旦、自動セッションが開始されれば、完全な治療セッションが搬送されるために、磁石は効力を有さない。
【0173】
スリープ状態中では、磁石を継続して30秒(D)間印加しなく、かつ磁石を印加するウインドウが20〜25秒間で、さらにその後、磁石を外す場合(M.20:25s)、トリガセッションが開始される。磁石のウインドウを逃した場合(つまり、磁石を外すのが早すぎる又は遅すぎる場合)、30秒のデバウンス期間(D)が始まる。デバウンスがアクティブになると、トリガセッションが開始される前の30秒間は、磁石を検出することができない。
【0174】
デバイスがスリープ状態である間、セッション間隔タイマが実行される。デバイスがシェルフモードからウェイクアップされると、セッション間隔タイマは初期化され、さらに各セッションが完全に搬送された後、セッション間隔タイマはリセットされる。従って、磁石アプリケーションによるトリガセッションの中断では、タイマはリセットされず、トリガセッションは完全に搬送されなければならない。
【0175】
外部で生成される磁場制御コマンド又は他の外部で生成されるコマンド信号の機能として、
図22に示す多様な状態を設定する回路は、マイクロコントローラU2(
図21)である。このようなプロセッサタイプの回路は、プログラムで指示されるように動作するプログラマブル回路である。プログラムは、しばしば、「コード」として称され、又は、プロセッサ回路が従う処理のシーケンスである。「コード」は、多くの形式を採用することができ、当業者に公知の多くの異なる言語及びフォーマットで書くことができる。IEADが想定する状態を提示し、さらに、
図22の状態図に示すような、1つの状態から別の状態へ移行するために適用される制御コマンドを提示すれば、当業者は、
図22に示すようなIEADの状態を制御するためのマイクロコントローラU2(
図21)の適切なコードを書くことができる。
【0176】
以上のように、添付の図面を参照して、様々な例示的な実施形態を説明した。しかしながら、特許請求の範囲に係る発明の範囲を逸脱することなく、多様な修正及び変形をそれらに基づき行うことができ、さらに追加の実施形態が実装できることが明らかであろう。例えば、ここに記載された一実施形態のある特徴は、ここに記載された別の実施形態の特徴と組み合わせる又は置き換えることができる。従って、説明及び描写は、限定的意味ではなく、例示として捉えるべきであり、開示された形式を包括すること又は開示された形式に発明を制限することを意図しない。多くの修正及び変形が上記の教示に照らして可能である。従って、ここに開示される発明(複数可)は、特定の実施形態及びそれらの用途によって説明されているが、当業者は、特許請求の範囲に記載される発明の範囲を逸脱することなく、多数の修正及び変形を行うことが可能である。