特許第6851433号(P6851433)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851433
(24)【登録日】2021年3月11日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】高耐性で化学強化可能なガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 10/10 20060101AFI20210322BHJP
   C03C 10/08 20060101ALI20210322BHJP
   C03C 10/04 20060101ALI20210322BHJP
   C03B 17/06 20060101ALI20210322BHJP
   C03B 18/02 20060101ALI20210322BHJP
   C03B 15/14 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   C03C10/10
   C03C10/08
   C03C10/04
   C03B17/06
   C03B18/02
   C03B15/14
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2019-126143(P2019-126143)
(22)【出願日】2019年7月5日
(65)【公開番号】特開2020-7216(P2020-7216A)
(43)【公開日】2020年1月16日
【審査請求日】2019年7月5日
(31)【優先権主張番号】10 2018 116 460.2
(32)【優先日】2018年7月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ フォザリンガム
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ナス
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル シュヴァル
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ミクス
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ ダールマン
【審査官】 長谷川 真一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2017−525636(JP,A)
【文献】 特表2015−501280(JP,A)
【文献】 特開2011−093792(JP,A)
【文献】 特開2017−061404(JP,A)
【文献】 特表2015−502899(JP,A)
【文献】 特表2015−529182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00−14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスを構成する以下の相:
【表1】
を特徴とする組成を有する、ガラス。
【請求項2】
少なくとも0.1モル%のケイ酸亜鉛二ナトリウム割合を有する、請求項1記載のガラス。
【請求項3】
前記ガラス中の更なる成分の割合が最大でも3モル%である、請求項1または2に記載のガラス。
【請求項4】
前記ガラスを構成する以下の相:
【表2】
を特徴とする組成を有する、請求項1からまでのいずれか1項記載のガラス。
【請求項5】
215未満の耐酸性指数、最大105mg/(dm3h)のISO 695に従った除去速度および/または4〜8ppm/KのCTEを有する、請求項1からまでのいずれか1項記載のガラス。
【請求項6】
前記ガラスの50μモルを1リットルの中性水に溶解した後、最大でも9.1のpH値が得られる、請求項1からまでのいずれか1項記載のガラス。
【請求項7】
器または板ガラスの製造のための、請求項1からまでのいずれか1項記載のガラスの使用。
【請求項8】
医薬容器の製造のための、請求項7に記載のガラスの使用。
【請求項9】
厚さ2mm未満の薄板ガラスの製造のための、請求項7に記載のガラスの使用。
【請求項10】
厚さ1mm未満の薄板ガラスの製造のための、請求項7に記載のガラスの使用。
【請求項11】
次の工程:
− ガラス原料を溶融する工程、
− 得られたガラスを冷却する工程
を有する、請求項1からまでのいずれか1項記載のガラスの製造方法。
【請求項12】
次の工程:
ウンドロー法、オーバーフローフュージョン法、リドロー法、フローティング法または管引き上げ法によって、形成されたガラス物品を製造する工程
を有する、請求項11記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学強化性と、非常に良好な耐アルカリ性および耐酸性、耐加水分解性ならびに所望の熱膨張係数とを兼ね備えたガラスおよびガラス製品に関する。そのようなガラスの製造方法およびそれらの使用もまた本発明によるものである。
【0002】
従来技術
化学強化可能なガラスは、多くの用途、特に医薬品包装またはタッチセンシティブディスプレイ(「タッチパネル」)の分野における用途に必要とされている。一般的に、ある一定の熱膨張係数が依然として求められており、化学強化性ゆえに一般に多数のナトリウムイオンが存在するにもかかわらず、耐アルカリ性、耐加水分解性および耐酸性に関して妥協してはならない。耐化学性を評価するために、数多くの規則および規準が存在し、特に耐アルカリ性についてはISO 695、耐加水分解性についてはISO 719/720、ならびに耐酸性についてはISO 1776およびDIN 12116が適用される。
【0003】
独国特許出願公開第102015116097号明細書(DE102015116097)、米国特許第9783453号明細書(US9783453)、米国特許第2015030827号明細書(US2015030827)、米国特許第9701580号明細書(US9701580)、米国特許第9156725号明細書(US9156725)、米国特許第9517967号明細書(US9517967)、米国特許第201450911号明細書(US2014050911)、米国特許第9822032号明細書(US9822032)、米国特許第2015147575号明細書(US2015147575)、米国特許第2015140299号明細書(US2015140299)、国際公開第15031427号(WO15031427)、米国特許第2017320769号明細書(US2017320769)、国際公開第17151771号(WO17151771)、米国特許第2016251255号明細書(US2016251255)は、タッチパネルの分野での使用を目的としたガラスを教示している。ただし、そこに記載されているガラスは、化学強化性に関して、構成相としてガラス様アルバイト(曹長石)(12.5モル%のNaO、12.5モル%のAl、75モル%のSiO)の大部分を主に強調し、化学強化性に好ましい影響を与えることができる他の相の余地をほとんど残していない。
【0004】
主成分としてのガラス様アルバイトの選択は、このガラス系におけるナトリウムイオンの高い移動度に基づくものであり、これがナトリウムとカリウムとの交換による化学強化時に大きな交換深さ(典型的には30〜50μm)を可能にする(一方で鉱物のアルバイトもナトリウムイオンの高い移動度を有する)。表面近くの層の強化の程度は、この移動度ではなく、出発ガラス中のナトリウム濃度に依存する。
【0005】
アルバイトガラス中のナトリウムイオンの高い移動度はアルミニウムの高い割合と結び付いており、高いアルミニウム割合が耐酸性を大幅に低下させるので、アルバイトガラスに加えて、大きなナトリウム移動度を保証するナトリウム源、例えばケイ酸亜鉛二ナトリウム(Dinatriumzinksilicat)も用いることに意味がある。
【0006】
課題
従来技術は、化学強化性と良好な耐化学性とを兼ね備えたガラスを欠いている。さらに、これらのガラスは所望の熱膨張特性を有するべきである。そのうえ、これらのガラスは最新の管引き上げ法(Rohrzugfertigungsverfahren)または板ガラスドロー法(Flachglasziehverfahren)で製造可能であるべきである。
【0007】
この課題は、特許請求の範囲の主題によって解決される。
【0008】
発明の説明
この課題は、化学量論的ガラス、つまり、結晶と同じ化学量論比で存在し、それらの特性が−文献中でNMR測定等によって多くの例を用いて調べられているように−いずれの場合もガラスおよび結晶の集合体(Baugruppen)の同一のトポロジーゆえに非常に類似していると想定され得るガラスの適切な組合せによって解決される。このために、その混合物が本発明による課題の解決に適した挙動を達成可能にする化学量論的ガラスが選択される。本出願では、これらの化学量論的ガラスは「構成相」とも呼ばれる。
【0009】
ガラスを構成相ごとに記述することは新しい着想ではない。ベースガラスを示すことによって、ガラスの化学構造についての結論を引き出すことができる(Conradt R:“Chemical structure,medium range order,and crystalline reference state of multicomponent oxide liquids and glasses”,in Journal of Non−Crystalline Solids,Volumes 345−346,15 October 2004,Pages 16−23を参照されたい)。
【0010】
本発明は、第一の実施形態では、以下のガラス構成相によって特徴付けられる組成を有するガラスに関し、この構成相によって定義されるこのベース系は、本発明により所与の組成範囲によって制限される:
【表1】
【0011】
ベース系は、単純酸化物ではなく、それぞれ示される構成相を明示的に指す。しかしながら、構成相の課題設定および選択から、これらの構成相の空間での有利な解決策を可能にするために、ガラスは最大でも12.5モル%のAlを含有することが好ましいことになる。したがって、酸化物組成への変換後に12.5モル%を超えるアルミナを有するガラスは、本発明の一部ではないことが有利である。
【0012】
さらに、本発明によるガラスは、以下に示される構成相の組成または単純酸化物の組成と式的な関係にある更なる条件を満たすことを意図している。
【0013】
構成相で示された組成と単純酸化物で示された組成との両方の種類の関係が互いに使用されるので、最初に両方の組成データの相互変換のための変換マトリックスを示す。
【0014】
構成相の組成の単純酸化物の組成への変換およびその逆の変換
構成相の組成は、変換を目的として、以下のように正規化された式で示される:
【表2】
【0015】
組成データ(モル%)へのこれらの組成物の変換は、以下の単純酸化物・・・
【表3】
・・・に関して、ここに示されるマトリックスを使って行われる。モル%の組成データは、ベースガラスに関して右からマトリックスへの列ベクトルとして乗算される:
【表4】
【0016】
マトリックスへの列ベクトルの乗算の結果として、モルパーセントにおけるガラスの組成が得られる。
【0017】
逆に、モルパーセントにおける組成は、それぞれの逆マトリックスを介してベースガラス組成に容易に変換することができる。当然ながら、変換時にベースガラスに負の値を与えないベースガラス組成のみが本発明によるものと見なされる。
【0018】
本発明の課題に関する構成相およびそれらの選択の意義
組成は、ガラス構成相に関して本明細書に記載されている範囲内で選択される。当然ながら、ガラス構成相そのものはガラス生成物中で結晶質ではなく非晶質である。しかしながら、これは、非晶質状態の構成相が結晶質状態とは全く異なる集合体を有することを意味しない。上述したように、集合体のトポロジー、つまり、例えば、周囲の酸素原子に関与するカチオンの配位、またはこれらのカチオンと周囲の酸素原子との間の結合の配位と強度に起因する原子間距離は同程度である。それゆえ、本発明のガラスの多くの特性は、特に本発明による性能および本発明により克服された問題を説明するために、構成相を使って十分に説明することができる(これに関しては、上記に示したConradt R.を参照されたい)。当然ながら、化学量論比のみがベースガラスの対応する集合体の形成を可能にする限り、対応する結晶を使用するだけでなく、通常のガラス原料も使用してガラスを製造することができる。
【0019】
相の選択は、イオン輸送への適合性またはイオン輸送への有益な影響ならびに耐加水分解性および熱膨張へのそれらの影響に鑑みて行われる。以下において、計算方法は、これらのパラメーターが構成相の所与の組成からどのように計算され得るのかに関して示される。これらの計算方法は、構成相の選択と、これらの構成相からなる本発明によるガラスのまさに組成の選択の両方において重要である。
【0020】
ISO 719/720に従った耐加水分解性およびISO 695に従った耐アルカリ性の両方は、ヒドロキシルイオンの攻撃に対するガラスの耐性を本質的に含む。ISO 695の場合、アルカリ液中のヒドロキシルイオンの濃度は、0.5モル/lの水酸化ナトリウムおよび0.25モル/lの炭酸ナトリウムを有する緩衝溶液を使用することによって決定される。ISO 719/720の場合、ガラスが中性水に加えられ、そのpH値が最初に5.5に調整される(メチルレッド指示薬溶液による調査)が、ガラスの溶解によって非常に急速にアルカリ性範囲に移動する。その結果、ガラス中に含まれる弱酸(または酸無水物)、とりわけケイ酸、およびpHが9〜10の範囲の強アルカリ液(例えば水酸化ナトリウム)の緩衝液が得られる(Susanne Fagerlund,Paul Ek,Mikko Hupa und Leena Hupa:On determining chemical durability of glasses,Glass Technol.:Eur.J.Glass Sci.Technol.A,December 2010,51(6),235−240を参照されたい)。緩衝液のpHを決定づけるのは、弱酸のpKa値である。得られる緩衝液のpH値は、ガラスタイプに依存するだけでなく、溶解の進行と共に増加し、ヒドロキシルイ オンの濃度を決定する。これらのヒドロキシルイオンによってもたらされる溶解は、耐アルカリ性測定の時と同じメカニズムに従って生じる。
【0021】
ガラスに耐アルカリ性および耐加水分解性の両方の性質を持たせるために、まず第一にISO 695に従った試験における除去速度を低い値に設定しなければならない。第二にISO 719/720に従った試験中に生じるpH値と、試験水溶液への一定量のガラス溶解を制限しなければならない。試験の過程でこのpH値が高くなるほど、正のフィードバック効果の危険性が高くなる:pHが高くなるにつれて、除去速度が高くなり、水溶液中での除去量が増えるにつれてまた、そのpH値は高くなる。
【0022】
耐化学性ガラス(ISO 719に準拠した加水分解クラスHGB IまたはISO 720に準拠した加水分解クラスHGA I)は、典型的には試験中に除去を被り、これは水溶液中で100μモル以下のガラスをもたらし、その除去は小さければ小さいほど、完全に除去される部分は少なくなる。
【0023】
ガラスの比較は固定された条件に当てはめなければならないので、ここで、関連するpHとして、完全に除去されたと思われる50μモルのガラスの中性水への溶解後に生じるpHを定義する。
【0024】
本発明により好ましいガラスは、pHが9.1未満、好ましくは9.05未満、特に好ましくは9.0未満であるものである。
【0025】
本発明により好ましくは、ISO 695に従った除去速度は、最大105mg/(dm3h)であり、好ましくは最大100mg/(dm3h)、特に好ましくは95mg/(dm3h)、非常に好ましくは最大90mg/(dm3h)、最も好ましくは最大85mg/(dm3h)である。これは、本発明のガラスについて式(2)および(3)を使って計算することができる除去速度を指す。
【0026】
第一の上記の値ですら、ISO 695に準拠したアルカリクラス2と3の間の範囲をクラス幅の半分よりも大きく下回る。この間隔は、式(2)と(3)の予測精度に許容範囲がある場合でもクラス3までの大きな安全間隔を保つために意図的に大きく選択される。
【0027】
熱膨張係数は、本発明によれば、好ましくは4〜8ppm/K、好ましくは4.5〜7ppm/K、特に好ましくは4.8〜6.5ppm/Kである。これは、本発明のガラスについて式(8)を用いて計算することができるCTEの値である。
【0028】
DIN12116に準拠した酸中の除去速度に関して、これは、本発明によるガラスにおいて、酸クラス3以下の下記に定義される指数<200に対応し、除去速度は、指数>215で急速に増加し、一部ではクラス3と4の間にある除去値の範囲よりも数桁高くなる。その間には遷移領域がある。本発明により好ましいのは、<200、好ましくは<199、特に好ましくは<198、非常に好ましくは<197、さらにより好ましくは<196、最も好ましくは<195の指数を有するガラスである。
【0029】
耐加水分解性試験における水溶液中のpH値の計算
水溶液中のpH値の計算は、単純酸化物の組成データに基づいている。ガラス成分の希薄溶液中で、対応するカチオンは高度に酸化された水酸化物に変換される(表5を参照されたい)。これらの水酸化物のHまたはOHの放出は、それぞれの場合において対応するpKaまたはpKb値によって記載される。
【0030】
pH値については、室温(25℃)に冷却した後に1リットルの水溶液中に50μモルを溶解した後に存在する値を適用する。
【0031】
【表5】
)Pure Appl.Chem.,1969,Vol.20,No.2,pp.133−236,176番;本文献中「G40」で表される出典からの値
)R.H.Byrne,Inorganic speciation of dissolved elements in seawater:the influence of pH on concentration ratios,Geochem.Trans.3(2)(2002)11−16.
)David W.Hendricks,Water Treatment Unit Processes:Physical and Chemical,CRC Taylor and Francis,Boca Raton,London,New York,2006,S.307;本文献中「4」、「5」、「11」、「12」で表される出典からの値
)Artur Krezel,Wolfgang Maret,The biological inorganic chemistry of zinc ions,Archives of Biochemistry and Biophysics (2016),S.1−17
)水酸化バリウムと同様に(Pure Appl.Chem.,1969,Vol.20,No.2,pp.133−236,12番)、全てのアルカリ土類金属MについてM(OH)→M(OH)+OHがいかなる場合にも完全に進行することを前提とする;この最初の解離では、pKb値としてこの表で発生するpKbの最大値、すなわち水酸化カリウムの値を想定する。
)Pure Appl.Chem.,1969,Vol.20,No.2,pp.133−236,115番;本文献中「S74」で表される出典からの値
)Pure Appl.Chem.,1969,Vol.20,No.2,pp.133−236,18番;本文献中「D9」で表される出典からの値
10)Pure Appl.Chem.,1969,Vol.20,No.2,pp.133−236,178番;本文献中「G26」で表される出典からの値
11)Pure Appl.Chem.,1969,Vol.20,No.2,pp.133−236,164番;本文献中「K2」で表される出典からの値
12)Pure Appl.Chem.,1969,Vol.20,No.2,pp.133−236,180番;本文献中「G26」で表される出典からの値
13)Pure Appl.Chem.,1969,Vol.20,No.2,pp.133−236,12番;本文献中「D7」で表される出典からの値
【0032】
pH値は、所与の組成で、異なる濃度[...]について方程式系を解くことによって出される(pKaとpKbには上記の値を用いる)。
【0033】
方程式系 (1)
1.[HSiO−−][H]/[HSiO]=10−pka
2.[HSiO][H]/[HSiO]=10−pka
3.[HSiO−−]+[HSiO]+[HSiO]=50(μモル/l)SiO2
4.[Zr(OH)][H]/[Zr(OH)]=10−pka
5.[Zr(OH)][H]/[Zr(OH)]=10−pka
6.[Zr(OH)]+[Zr(OH)]+[Zr(OH)]=50(μモル/l)ZrO2
7.[Al(OH)][H]/[Al(OH)]=10−pka
8.[Al(OH)][H]/[Al(OH)]=10−pka
9.[Al(OH)]+[Al(OH)]+[Al(OH)]=50(μモル/l)Al2O3
10.[ZnOH][H]/[Zn++]=10−pka
11.[Zn(OH)][H]/[ZnOH]=10−pka
12.[Zn(OH)][H]/[Zn(OH)]=10−pka
13.[Zn(OH)−−][H]/[Zn(OH)]=10−pka
14.[ZnOH]+[Zn++]+[Zn(OH)]+[Zn(OH)]+[Zn(OH)−−]=50(μモル/l)ZnO
15.[MgOH][OH]/[Mg(OH)]=10−pkb
16.[Mg++][OH]/[MgOH]=10−pkb
17.[MgOH]+[Mg(OH)]+[Mg++]=50(μモル/l)MgO
18.[CaOH][OH]/[Ca(OH)]=10−pkb
19.[Ca++][OH]/[CaOH]=10−pkb
20.[CaOH]+[Ca(OH)]+[Ca++]=50(μモル/l)CaO
21.[SrOH][OH]/[Sr(OH)]=10−pkb
22.[Sr++][OH]/[SrOH]=10−pkb
23.[SrOH]+[Sr(OH)]+[Sr++]=50(μmol/l)SrO
24.[BaOH][OH]/[Ba(OH)]=10−pkb
25.[Ba++][OH]/[BaOH]=10−pkb
26.[BaOH]+[Ba(OH)]+[Ba++]=50(μmol/l)BaO
27.[Na][OH]/[NaOH]=10−pkb
28.[Na]+[NaOH]=50(μモル/l)Na2O
29.[K][OH]/[KOH]=10−pkb
30.[K]+[KOH]=50(μモル/l)K2O
31.[OH][H]=10−14
32.2[HSiO−−]+[HSiO]+[Zr(OH)]+[Al(OH)]+2[Zn(OH)−−]+[Zn(OH)]+[OH]=[Zr(OH)]+[Al(OH)]+2[Zn++]+[ZnOH]+2[Ba++]+[BaOH]+2[Sr++]+[SrOH]+2[Ca++]+[CaOH]+2[Mg++]+[MgOH]+[Na]+[K]+[H
【0034】
方程式1〜31は平衡条件であり、式32は電気的中性条件である。
【0035】
方程式系は、例えばWolfram Research Inc.のMATHEMATICAなどの慣用の数学コードの1つを用いて明確に解くことができる。MATHEMATICAは解決策のリストを提供するが、そのうちの1つだけが、全ての濃度は正の値を有していなければならないという必要な追加条件を満たす。
【0036】
pH値は、定義により[H]の負の10進対数として出される。さらに、室温でpka+pkb=14であることに留意する。
【0037】
ISO 695に従った耐アルカリ性の計算
本発明は、トポロジー的考察により構成されたパラメーターおよびISO 695に従って試験中に測定された除去速度との間の驚くべきことに発見された関係に基づいている。
【0038】
トポロジー的考察の本質は、例えば独国特許出願公開第102014119594号明細書(DE 10 2014 119 594 A1)に詳細に記載されているように、隣接する原子への結合によって原子に課される制約を数えることである。これらの制約は、一方では原子間距離(「距離拘束」)に、他方では結合角度(「角度拘束」)に関する。1個の原子にr個の隣接原子がある場合(r=配位数)、これらの隣接原子に対するrの距離拘束から、この距離拘束が2つの結合相手の間で均等に分配されるのであれば、これらの原子に割り当てられるべきr/2の距離拘束が結果として生じる。これらの隣接原子間の結合角から、それぞれの角度の頂点における考察される原子により、この原子に割り当てられるべき更なる2r−3の角度拘束が結果として生じる。
【0039】
独国特許出願公開第102014119594号明細書(DE 10 2014 119 594 A1)には、距離および角度拘束の計算時に、全ての条件に単結合強度による重み付けおよび角度拘束のそれぞれの共有結合度による再度の追加の重み付け(酸素−カチオン−酸素の角度に由来するもののみ:カチオン―酸素−カチオンの角度に属する拘束は無視される)を行う方法が記載されている。重み付け係数は、それぞれが単結合強度またはケイ素−酸素結合の共有結合度で除算することによって正規化されるので、石英ガラスの場合、1原子当たり(端数処理した)1.333333333(すなわち4/3)の距離拘束および(端数処理した)1.666666667(すなわち5/3)の角度拘束の数が生じる。これは、独国特許出願公開第102014119594号明細書(DE 10 2014 119 594 A1)に記載されているように、単純に距離および角度拘束を全て数えて、ケイ素−酸素−ケイ素の角度の角度拘束を無視した場合、石英ガラスのトポロジーの直接分析に対応する。
【0040】
このように、石英ガラスは1原子当たり「3」の拘束数を持ち、これは1原子あたりの自由度の数に正確に対応する。つまり、石英ガラスは、1原子当たりの自由度が全くない(または現実的には非常に小さい)ことになり、これは示差熱量測定ガラス転移における石英ガラスの小さいcジャンプに対応する(R.Bruening,“On the glass transition in vitreous silica by differential thermal analysis measurements”,Journal of Non−Crystalline Solids 330 (2003)13−22を参照されたい)。
【0041】
他の酸化物ガラスについては、一般的に、1原子当たりの距離および角度拘束の数に対して、(端数処理した)1.333333333(4/3)および1.666666667(5/3)よりもそれぞれ低い値が与えられている。それに応じて、違いは1原子当たりの距離および角度自由度の数である。角度自由度では、関連する角度拘束が全て1つの平面内にある角度を指すのか(三角配位)、そうでないのか(四面体またはそれ以上の配位)をさらに区別することができる。後者は、ここでは3D角度拘束と呼ばれる;それに応じて3D角度自由度として(端数処理した)1.666666667(4/3)との差。
【0042】
驚くべきことに、1原子当たりの3D角度自由度の数と、耐アルカリ性クラスに関してガラスの状況を推定することができるISO 695テストの除去速度rとの間には関係が見出される。特にアルカリ含有量の高いガラスへの適用性を考慮して最適化され、様々なガラスでテストされたこの関係は、次の式によって示される:
【数1】
【0043】
「c」は、mg/(dm3h)の次元を有する定数である。数値は163.9である。「f」は、1原子当たりの3D角度自由度の数である。「c’」は、1.8の値の無次元定数である。指数「6」は、経験的に見出されたものである。Λは、光学塩基度である。
【0044】
係数N/NSiO2は、上記の蓋然性を考慮した原子団から1モルに変換するために用いられる。Nは、1モル当たりの原子の数である。NSiO2は、石英ガラス1モル当たりの原子の数(すなわち3N、Nアボガドロ数)であり、この表現を正規化するのに用いられる。この係数をあまり誤差のない定数に設定し、狭い範囲のガラスファミリー内でのみ移動する場合は、この定数を前係数「c」に引き込むことが可能である。係数M/MSiO2は、上記の原子対価を質量対価に換算するために用いられる。Mはモルの質量である。MSiO2は、1モルの石英ガラスの質量(すなわち60.08g)であり、この表現を正規化するために用いられる。この係数もあまり誤差のない定数に設定し、狭い範囲のガラスファミリー内でのみ移動する場合は、この定数を前係数「c」に引き込むことが可能である。
【0045】
除去速度と3D角度自由度の数との間の関係は、上述のとおり、経験的に見出されているが、OHイオンのガラスへの侵入の速度は、ガラスのエントロピーに依存するという事実に鑑みて妥当と思われる。係数(0.9483333−Λ)は、プロセスの速度とは関係がなく、ガラスがアルカリ液に溶解する間に起こる酸−塩基反応の推進力(Triebkraft)と関係がある。
【0046】
本発明によるガラスは上記の構成相の組合せを有するので、1原子当たりの3D角度自由度の数の計算には、各構成相について最初にそれらを数値的に示すことが好都合である。以下が適用される:
【表6】
【0047】
数値は、独国特許出願公開第102014119594号明細書(DE 10 2014 119 594 A1)に示される方法に従って計算されており、この場合、全てのカチオンに対する角度自由度の数が計算されており、具体的には独国特許出願公開第102014119594号明細書(DE 10 2014 119 594 A1)に示されているとおりである(ただし該文献中ではホウ素およびアルミニウムについてのみ);さらに、カチオン−酸素化合物のイオン化度は、独国特許出願公開第102014119594号明細書(DE 10 2014 119 594 A1)からの式(8)によるのではなく、Alberto Garcia,Marvon Cohen,First Principles Ionicity Scales,Phys.Rev.B 1993からの式(3)に従って計算されている。このために、それぞれのカチオンの配位数についての情報がさらに必要であり、それに関しては、上記に示したConradtに従って、それぞれの構成相における配位数を用いる(カチオンがいくつかの配位数で生じる場合、異なる配位数の割合に従って平均化される)。上記の配位数は、文献から導き出され、アルバイトについては、American Mineralogist,Volume 61,pages 1213−1225,1976,American Mineralogist,Volume 62,pages 921−931,1977,American Mineralogist,Volume 64,pages 409−423,1979,American Mineralogist,Volume 81,pages 1344−1349,1996から、これらの出典を見ればSiおよびAlが4重配位され、Naが5重配位されていると考えられる:SiOについては、ケイ素の4重配位が一般的に知られていると思われる。オーソクレース(正長石)については:Canadian Mineralogist,Volume 17 pages 515−525,1979から、この出典を見ればアルミニウムが4重配位され、カリウムが9重配位され、ケイ素が4重配位されていると考えられる;ウォラストナイト(珪灰石)については:Mineralogical Society of America,Special Paper 1,pages 293−302,1963から、この出典を見ればケイ素が4重配位され、カルシウムが6重配位されていると考えられる:エンスタタイト(頑火輝石)については:Canadian Mineralogist Vol.37,pp.199−206,1999から、この出典を見ればケイ素が4重配位され、マグネシウムが6重配位されていると考えられる;パラケルディシット(Parakeldyshit)については:Acta Chemica Scandinavia,1997,51,259−263から、この出典を見ればケイ素が4重配位され、ジルコニウムが6重配位され、ナトリウムが8重配位されていると考えられる;ナルサルスカイト(Narsarsukit)については:American Mineralogist 47(1962),539から、この出典を見ればケイ素が4重配位され、チタンが6重配位され、ナトリウムが7重配位されていると考えられる;ケイ酸亜鉛二ナトリウムについては:Acta Cryst.(1977),B33,1333−1337から、この出典を見ればケイ素および亜鉛が4重配位され、ナトリウムが7重配位されていると考えられる;コージエライト(菫青石)については:American Mineralogist,Volume 77,pages 407−411,1992から、この出典を見ればケイ素およびアルミニウムが4重配位され、マグネシウムが6重配位されていると考えられる;ケイ酸ストロンチウムについては:Acta Cryst.C53,pages 534−536,1997から、この出典を見ればケイ素が4重配位され、ストロンチウムが8重配位されていると考えられる:ケイ酸バリウムについては:Wolfram Hempel:Struktureigenschaftsbeziehungen in Erdalkalisilikat basierenden Leuchtstoffen,Dissertation,Physik,Universitaet Augsburg,2007から、この出典を見ればケイ素が4重配位され、バリウムが8重配位されていると考えられる。
【0048】
完成したガラスの1原子当たりの3D角自由度fを求めるための計算規則は次のようになる:
【数2】
[式中、cは、考察されるガラス組成物中のi番目の構成相のモル分率であり、zは、i番目の構成相中の構成単位当たりの原子の数(またはi番目の構成相中の1モル当たりの原子の数;この場合、N、Nアボガドロ数の単位における)であり、fは、i番目の構成相における1原子当たりの角度自由度の数である。「n」は構成相の数である]。
【0049】
M/MSiO2を求めるための計算規則は次のようになる:
【数3】
[式中、cは、考察されるガラス組成物中のi番目の構成相のモル分率であり、Mは、対応するモル質量であり、「n」は構成相の数である]。
【0050】
N/NSiO2を求めるための計算規則は次のようになる:
【数4】
[式中、cは、考察されるガラス組成物中のi番目の構成相のモル分率であり、zは、i番目の構成相中の構成単位当たりの原子の数(またはi番目の構成相中の1モル当たりの原子の数;この場合、N、Nアボガドロ数の単位における)であり、「n」は構成相の数である]。
【0051】
係数(0.9483333−Λ)は、以下の考察によって溶解の推進力と関係している。ガラスが「酸性」であるほど、この推進力は高く、すなわち酸無水物の割合が高いほど、塩基無水物の割合が低い。これの定量的尺度は光学塩基度である(C.P.Rodriguez,J.S.McCloy,M.J.Schweiger,J.V.Crum,A,Winschell,Optical Basicity and Nepheline Crystallization in High Alumina Glasses,Pacific Northwest National Laboratories,PNNL 20184,EMSP−RPT 003,prepared for the US Department of Energy under contract DE−AC05−76RL01830を参照されたい)。光学塩基度が低いほど、推進力は高い。「推進力ゼロ」となるのは、酸−塩基反応が完了した物質の場合である。後者の場合、ガラスが、メタケイ酸ナトリウム、つまり固体として存在する全てのケイ酸ナトリウムとして、最も高いナトリウム含有量を有するものの化学量論を有すると特に仮定する(メタケイ酸ナトリウムは水溶液中でのみ発生する)。その光学塩基度は、それを計算するための以下に記載される方法に従って、ちょうど0.9483333であり、つまり、上記係数(0.9483333−Λ)の構築によってゼロになる値である。
【0052】
光学塩基度Λを、C.P.Rodriguez,J.S.McCloy,M.J.Schweiger,J.V.Crum,A,Winschell,Optical Basicity and Nepheline Crystallization in High Alumina Glasses,Pacific Northwest National Laboratories,PNNL 20184,EMSP−RPT 003,prepared for the US Department of Energy under contract DE−AC05−76RL01830からのセクションB.1.6および表B.1に記載の係数Λχav(LiおよびXueに従った光学塩基度)を用いて式B.1に従って計算する。単純酸化物の表に1つの係数しか示されていない場合、これが使用される。単純酸化物の表にいくつかの係数が示されている場合、構成相中のそれぞれのカチオンの配位数と一致するものが使用される。上記のベース系では、これは酸化アルミニウムおよび酸化マグネシウムの場合にのみ必要である。アルミニウムはベース系の全ての構成相中で4重配位されて存在し、対応して上記に示したConradtも想定し、配位数4の酸化アルミニウムについて表B.1に示された係数ΛICPの値も使用される。マグネシウムはベース系の唯一のマグネシウム含有構成相中で6重配位されて存在しているので、配位数6の酸化マグネシウムについて表B.1に示された係数Λχavの値も使用される。
【0053】
耐酸性
驚くべきことに、耐酸性も、容易に計算される指数を用いて推定することができる。この背景にある考察の出発点は、ケイ酸塩ガラス中のイオン移動度に関するアンダーソンとスチュアートの理論である(O.L.Anderson,D.A.Stuart,Calculation of Activation Energy of Ionic Conductivity in Silica Glasses by Classical Methods,Journal of the American Ceramic Society,Vol.37,No.12(1954),573−580を参照されたい)。その理論に従って、ケイ酸塩、したがって酸化物ガラス中のカチオンの移動の活性化エネルギーは、周囲の酸素イオンとの克服すべき静電的相互作用と、ケイ酸塩網目構造の一方のメッシュから他方のメッシュに移り変わるときに克服すべき機械的抵抗とに依存する。1つ目に挙げた寄与は、考察されるカチオンの電荷数にクーロンの法則に従って比例し、誘電率に反比例し、2つ目に挙げた寄与は、せん断弾性率および考察されるカチオンの直径が網目構造のメッシュ幅を超える程度の二乗に比例する。1つ目に挙げた寄与のおかげで、一般的に、一価カチオンのみが移動可能になり、アルミニウムのような多価カチオンは固定される。
【0054】
高濃度の酸と接触すると、ISO 1776またはDIN 12116によれば、6N塩酸は異なる。この場合、プロトンまたはヒドロニウムイオンがガラス中に拡散し、表面に電気二重層を形成し、酸浴中に塩化物イオンが残る。ISO 1776に従って行われた測定からの溶出液の分析において、この電気二重層は、それゆえに接触する電場がそれぞれのカチオンと周囲の酸素イオンとの静電相互作用を補償することができるほどに形成されるので、高い電荷数のイオンも移動できるようになる(上記の二重層の電場の力の影響、ならびに考察されるカチオンの静電相互作用は、その電荷数に依存する;それゆえ、前者は後者を補償することができる)。
【0055】
これは、同じ実験条件(ISO 1776のもの)の下で、無アルカリディスプレイガラスを離れるアルミニウムイオンのほうが、ソーダ石灰ガラスを離れるナトリウムイオンよりもかなり多いという結果につながり得る。他方で、同じ実験条件下ではまた、ホウケイ酸ガラスのホウ素原子のほうが、アルミノシリケートガラスのアルミニウム原子よりも少ない。これは、アルミニウムまたはナトリウムの場合よりも、塩酸と反応する、他の電気陰性度の値に応じてホウ素またはケイ素の著しく低い傾向を考慮することによって理解することができる。酸化ナトリウムと塩酸との反応は、強塩基または強塩基無水物と強酸との反応であり、アルミニウムは中間で両性として存在し、酸化ホウ素または酸化ケイ素は弱酸の無水物である。
【0056】
カチオンがガラス複合体を離れる傾向は、Alberto Garcia,Marvon Cohen,First Principles Ionicity Scales,Phys.Rev.B 1993からの式(3)に従って計算する、対応するカチオン−酸素化合物のイオン化度の程度によって決定することができる。
【0057】
このために、それぞれのカチオンの配位数についての情報がさらに必要であり、それに関しては、上記に示したConradtに従って、それぞれの構成相における配位数を用いる(カチオンがいくつかの配位数で生じる場合、異なる配位数の割合に従って平均化される)。上記の配位数は、文献から導き出され、アルバイトについては、American Mineralogist,Volume 61,pages 1213−1225,1976,American Mineralogist,Volume 62,pages 921−931,1977,American Mineralogist,Volume 64,pages 409−423,1979,American Mineralogist,Volume 81,pages 1344−1349,1996から、これらの出典を見ればSiおよびAlが4重配位され、Naが5重配位されていると考えられる:SiOについては、ケイ素の4重配位が一般的に知られていると思われる。オーソクレース(正長石)については:Canadian Mineralogist,Volume 17 pages 515−525,1979から、この出典を見ればアルミニウムが4重配位され、カリウムが9重配位され、ケイ素が4重配位されていると考えられる;ウォラストナイト(珪灰石)については:Mineralogical Society of America,Special Paper 1,pages 293−302,1963から、この出典を見ればケイ素が4重配位され、カルシウムが6重配位されていると考えられる:エンスタタイト(頑火輝石)については:Canadian Mineralogist Vol.37,pp.199−206,1999から、この出典を見ればケイ素が4重配位され、マグネシウムが6重配位されていると考えられる:パラケルディシット(Parakeldyshit)については:Acta Chemica Scandinavia,1997,51,259−263から、この出典を見ればケイ素が4重配位され、ジルコニウムが6重配位され、ナトリウムが8重配位されていると考えられる;ナルサルスカイト(Narsarsukit)については:American Mineralogist 47(1962),539から、この出典を見ればケイ素が4重配位され、チタンが6重配位され、ナトリウムが7重配位されていると考えられる;ケイ酸亜鉛二ナトリウムについては:Acta Cryst.(1977),B33,1333−1337から、この出典を見ればケイ素および亜鉛が4重配位され、ナトリウムが7重配位されていると考えられる;コージエライト(菫青石)については:American Mineralogist,Volume 77,pages 407−411,1992から、この出典を見ればケイ素およびアルミニウムが4重配位され、マグネシウムが6重配位されていると考えられる;ケイ酸ストロンチウムについては:Acta Cryst.C53,pages 534−536,1997から、この出典を見ればケイ素が4重配位され、ストロンチウムが8重配位されていると考えられる:ケイ酸バリウムについては:Wolfram Hempel: Struktureigenschaftsbeziehungen in Erdalkalisilikat basierenden Leuchtstoffen,Dissertation,Physik,Universitaet Augsburg,2007から、この出典を見ればケイ素が4重配位され、バリウムが8重配位されていると考えられる。
【0058】
化合物のイオン化度(Paulingに従ったイオン化度、Alberto Garcia,Marvon Cohen,First Principles Ionicity Scales,Phys.Rev.B 1993からの式(3)(上記を参照されたい)に従って計算)にカチオンの価数または原子価を乗じると、カチオンが網目構造を離れることによって引き起こされる網目構造の破壊を表す指数が得られる。カチオンの原子価は、電気的中性の理由からカチオンを置き換えなければならないヒドロニウムイオンの数を示す。各ヒドロニウムイオンはガラス中の1.5個の酸素架橋を破壊し、これは酸攻撃時に観察されるゲル化をもたらす(例えばT.Geisler,A.Janssen,D.Scheiter,T.Stephan,J.Berndt,A.Putnis,Aqueous corrosion of borosilicate glass under acidic conditions:A new corrosion mechanism,Journal of Non−Crystalline Solids 356(2010)1458−1465を参照されたい)。
【0059】
それぞれの指数と1モルのガラス中の考察されるカチオンのモル数との乗算および全てのカチオンにわたる加算は、ガラスへの酸攻撃が最初に引き起こす網目構造破壊の程度の指標となる。特に、そのつど構成相から製造されるガラスの指数を突き止める。ガラスの分解が構成相にある場合、モル百分率で示されるそれぞれの構成相の割合に、後者の指数の相を乗じ、引き続き全ての構成相にわたって加算される。
【0060】
注目すべきことに、既に上記で説明したとおり、DIN 12116に従った酸のクラスとの明確な関係がある;指数範囲190〜210では、酸クラスは1から4に急激に増加する。その結果、可能な限り小さい指数が望ましい。
【0061】
本発明によるベースガラス系の構成相について、指数kが以下の表にまとめられているので、本発明によるガラスの指数は次式に従って計算することができる:
【数5】
【0062】
式中、nは構成相の数であり、cはそれぞれのモル分率(モルパーセント/100)である。
【0063】
【表7】
【0064】
熱膨張係数
驚くべきことに、所望の範囲内の熱膨張係数の位置も、非常に単純な計算規則によっても表すことができる。これは平均結合強度によるものである。
【0065】
文献から、熱膨張係数は、例えば金属の場合、結合エネルギー(または「原子間ポテンシャル井戸の深さ」)に反比例することが知られている(例えばH.Foell,Skript zur Vorlesung “Einfuehrung in die Materialwissenschaft I”,Christian Albrechts−Universitaet Kiel,pp.79−83を参照されたい)。
【0066】
酸化物ガラスの簡単なイメージでは、カチオンはそれぞれ周囲の酸素原子によって形成されたポテンシャル井戸に配置され、周囲の酸素原子への異なる単結合の結合強度の合計をその深さとして、つまり、中心のカチオンおよび周辺の酸素原子を持つポテンシャル井戸に相互作用エネルギー全体を集中させたものとして想定する。それにより、逆の場合を考慮する必要がもはやなくなる:酸素原子はいくつかの異なる種類のカチオンの間に位置する可能性があるため、分析がより困難になる可能性があるが、これは逆に純粋に酸化物ガラスでは起こり得ない。これらの値は、例えば独国特許出願公開第102014119594号明細書(DE 10 2014 119 594 A1)において表にまとめられている:
【表8】
【0067】
Ti、Zr、Sr、BaおよびZnに関するこれらの値は、独国特許出願公開第102014119594号明細書(DE 10 2014 119 594 A1)から得られるものではないが、そこに引用されている出典を用いて、そこに記載されているのと全く同じ方法に従って計算されている。
【0068】
上記の構成相からのガラスの組成、それぞれの相に含まれる異なるカチオンの数、およびカチオンごとに上で表にしたポテンシャル井戸深さから、平均ポテンシャル井戸深さを算出することができる:
【数6】
【0069】
式中、mは、発生するカチオン型の数であり、Epot,jは、上で表にしたj番目のカチオン型に関するポテンシャル井戸深さであり、zj、iは、i番目の構成相におけるj番目のカチオン型のカチオンの数である。jに関する合計は以下の表にまとめている:
【表9】
【0070】
この平均結合強度は、例えば金属の場合のように(上記で示したH.Foellを参照されたい)、熱膨張係数に反比例の関係にある。いくつかの関連しているガラスを評価すると、次の式が得られる:
【数7】
【0071】
結合強度は融点に反比例するので、融点と膨張係数との間にも逆比例が当てはまる(これに関しても上記で示したH.Foellを参照されたい)。融点は非化学量論的ガラスについては明確に定義されていないので、一般的に融点と呼ばれる温度(粘度は100dPas)と膨張係数との間には傾向に従った関係だけがある。これに関して、本発明によるガラスは確実に溶融される。
【0072】
良好な溶融性に対する要求は、可能な限り高い熱膨張係数を示唆しているが、それとは逆に、場合によっては必要な熱後処理時における可能な限り低い熱応力に対する要求は、可能な限り低い熱膨張係数を示唆している。2つの要件の組み合わせは、膨張係数または平均ポテンシャル井戸深さに関して、ここで好ましい中間範囲をもたらす。
【0073】
化学強化性
最適な交換性を確保するために、本発明によるガラスの酸化ナトリウム含有量は、好ましくは3モル%〜12モル%である。これは、組成物を対応する酸化物組成に変換した後のこの酸化物のモル分率を指す。
【0074】
さらに、熱膨張係数との関係から高い交換性を確保するためには、熱膨張係数の高い値が求められている(Journal of Non−Crystalline Solids 455(2017)70−74を参照されたい)。熱膨張係数に関する上記の説明から読み取られるように、これは特にアルカリ金属またはアルカリ土類金属イオンの添加によって増大する。これは、同様に耐アルカリ性に関する上記の説明から読み取られるように、アルカリ性媒体への溶解における推進力との関係から、高いアルカリ耐性にもつながる。しかしながら、これはまた、上記の規則に従って決められたpH値の増大にもつながり、そのことによりまた耐加水分解性が低下する。
【0075】
それゆえ、本発明によれば、一方では熱膨張係数の1000倍(ppm/K)と、他方ではpH値とISO 695に従って計算されたアルカリ性媒体中の除去速度(mg/(dm3h))の積との商が、少なくとも7.75、好ましくは少なくとも8、好ましくは少なくとも8.25、特に好ましくは少なくとも8.5、非常に好ましくは少なくとも8.75、さらにより好ましくは少なくとも9、最も好ましくは少なくとも9.25であるガラスが好ましい。これらは、いずれの場合も、熱膨張係数、pH値およびISO 695に従った除去速度の計算値である。
【0076】
適切な構成相の選択
アルバイト
本発明のガラスにおいて構成相として表されるベースガラスは、アルバイトガラスである。理想的なアルバイト(NaAlSi)は、その構造が骨格内で可動性のナトリウムイオンを有するSiO−およびAlO四面体の骨格からなることに基づき高いナトリウム拡散率を有することが知られている(Geochimica et Cosmochimica Acta,1963,Vol.27,pp.107−120を参照されたい)。それゆえ、ある割合のアルバイトガラスは、高いナトリウム移動度に寄与し、これはイオン交換ひいてはガラスの化学強化性を促進する結果になる。さらに高いナトリウム拡散率を有するネフェリン(霞石)(カリウムを含まない人工変種:NaAlSiO)と比較して、アルバイトは、はるかに低い融点(1100〜1120℃)という利点を有し、これはガラスの溶融性を改善する。
【0077】
アルバイトの量が少なすぎると、ナトリウムのカリウムへの交換に関してイオン交換性または化学強化性が損なわれる。純粋なアルバイトガラスは、おそらく最適な化学強化性を有するであろうが、要求される耐化学性、特に耐酸性に関しては満足のいくものではないであろう。本発明によれば、1モルのアルバイトは、1モルの(NaO・Al・6SiO)/8を意味すると理解される。
【0078】
本発明によるガラス中のアルバイトの割合は、少なくとも20モル%かつ最大でも60モル%である。本発明によるガラス中の好ましい割合は、少なくとも25モル%、少なくとも30モル%、少なくとも35モル%、または特に好ましくは少なくとも40モル%である。有利には、アルバイトの含有量は、最大56モル%または最大50モル%までである。
【0079】
全ての成分は、水酸化物として、耐加水分解性の測定においてpH値に影響を及ぼす。水酸化アルミニウムは、中性水溶液および弱アルカリ液には難溶性である;しかしながら、溶解度限界は、耐加水分解性の測定において生じる濃度をはるかに超えている。
【0080】
オーソクレース
可能性としてある分離傾向を抑えるために、第二の相として、アルバイトのカリウム類似体であるオーソクレースが加えられる。1モルのオーソクレースは、1モルの(KO・Al・6SiO)/8を意味すると理解される。
【0081】
本発明によるガラス中のオーソクレースの割合は、0モル%〜最大でも20モル%である。本発明によるガラス中の好ましい割合は、最大でも15モル%、最大でも10モル%、または好ましくは最大でも5モル%である。特定の実施形態では、オーソクレースの割合は、少なくとも1モル%、好ましくは少なくとも2モル%である。他の好ましい実施形態では、ガラスはオーソクレースを含まない。特に、いくつかの好ましい実施形態では、オーソクレースの含有量は、エンスタタイトの含有量を超えない。
【0082】
全ての成分は、水酸化物として、耐加水分解性の測定においてpH値に影響を及ぼす。
【0083】
パラケルディシット
更なるナトリウム伝導相として、パラケルディシットが添加される。結晶として、パラケルディシットは、ケイ素四面体とジルコニウム八面体の三次元網目構造であり、その間のボイドに8重配位のナトリウム原子がある。このゼオライト様の緩い(ナトリウムの非常に高い配位数)構造はイオン移動度を支持する。構造的に関連したカリウム類似体、キビンスカイト(Khibinskit)が存在するので、ナトリウムをカリウムと交換することも可能である(G.Raabe,M.H.Mladeck,Parakeldyshit from Norway,Canadian Mineralogist Vol.15,pp.tO2−lO7(1977)を参照されたい)。
【0084】
これは、イオン交換中にナトリウムイオンおよびカリウムイオンを迅速に移動させるのに有利である。ナトリウムをカリウムと交換したときの張力の増大は、緩い網目構造のためにかなり低い;しかしながら、上記の用途のために、高い強化よりも大きな交換深さを達成することがより重要である(イオン交換時の交換深さがスクラッチなどの可能性としてある表面損傷の深さよりも大きい場合にのみ、強化はその目的を果たす)。
【0085】
含有ジルコニウムは、耐加水分解性の測定にとって重要である。水酸化ジルコニウムは水溶液中および弱アルカリ液中で沈殿するが、特定の濃度から初めて沈殿し、これは耐加水分解性測定では達成されない。そのpk値のために、これにはpH低下効果がある。
【0086】
1モルのパラケルディシットは、1モルの(NaO・ZrO・2SiO)/4を意味すると理解される。本発明によるガラス中のパラケルディシットの割合は0〜20モル%である;上限は、ジルコニウムに関連した失透問題を考慮して選択される。好ましくは、本発明によるガラス中のパラケルディシットの割合は、最大でも15モル%、最大でも10モル%、または特に好ましくは最大でも5モル%である。特定の実施形態では、パラケルディシットの割合は、少なくとも1モル%、好ましくは少なくとも2モル%である。他の好ましい実施形態では、ガラスはパラケルディシットを含まない。特に、いくつかの好ましい実施形態では、パラケルディシットの含有量は、エンスタタイトの含有量を超えない。
【0087】
ナルサルスカイト
結晶として、ナルサルスカイトは、ケイ素四面体とチタン八面体の三次元網目構造であり、その間のボイドに7重配位のナトリウム原子がある。この構造はイオン移動度を支持する(D.R.Peacor,M.J.Buerger,The Determination and Refinement of the Structure of Narsarsukite,NaTiOSi10,American Mineralogist Vol.67,5−6 pp.539−556 (1962)を参照されたい)。カリウム類似体が存在するので(K.Abraham,O.W.Floerke,and K.Krumbholz,Hydrothermaldarstellung und Kristalldaten von KTiSi,KTiSi11,KTiSi15,KZrSi und KO・4SiO・HO,Fortschr.Mineral 49(1971),5−7を参照されたい)、ナトリウムをカリウムと交換することも可能である。
【0088】
含有チタンは、水溶液およびアルカリ液中で二酸化チタンとして沈殿し、耐加水分解性の測定に影響を及ぼさない。
【0089】
1モルのナルサルスカイトは、1モルの(NaO・TiO・4SiO)/6を意味すると理解される。本発明によるガラス中のナルサルスカイトの含有量は0〜20モル%である。本発明によるガラス中の好ましい割合は、最大でも10モル%、最大でも5モル%、最大でも3モル%、最大でも2モル%または最大でも1モル%である。特定の実施形態では、ガラスはナルサルスカイトを含まなくてもよく、特に、ナルサルスカイトの含有量は、ウォラストナイトおよび/またはエンスタタイトの含有量よりも少なくてよい。
【0090】
ケイ酸亜鉛二ナトリウム
結晶として、ケイ酸亜鉛二ナトリウムは、ケイ素四面体と亜鉛四面体の三次元網目構造であり、その間のボイドに少なくとも7重配位のナトリウム原子がある。この構造はイオン移動度を支持する(K.−F.Hesse,F.Liebau,H.Boehm,Disodiumzincosilicate,NaZnSi,Acta.Cryst.B33(1977),1333−1337を参照されたい)。カリウム類似体が存在するので(W.A.Dollase,C.R.Ross II,Crystal Structure,of KZnSi,Zeitschrift fuer Kristallographie 206(1993),25−32を参照されたい)、カリウムをナトリウムと交換することが容易に可能であるが、大きなボイドは、イオン交換値の構造の大きな「膨張」を示唆するものではないので、表面で高い圧縮強化が所望される場合には、ケイ酸亜鉛二ナトリウムの割合は制限されていなければならない。
【0091】
含有亜鉛は、両性水酸化亜鉛として、耐加水分解性の測定においてpH値にほとんど影響を及ぼさない。中性水溶液には難溶性である;しかしながら、溶解度限界は、耐加水分解性の測定において生じる濃度をはるかに超えている。
【0092】
1モルのケイ酸亜鉛二ナトリウムは、1モルの(NaO・ZnO・3SiO)/5を意味すると理解される。本発明によるガラス中のケイ酸亜鉛二ナトリウムの含有量は0%〜40%である。
【0093】
本発明によるガラス中の好ましい割合は、少なくとも0.1モル%、少なくとも1モル%、少なくとも2モル%、少なくとも5モル%、または特に好ましくは少なくとも10モル%である。好ましい実施形態では、含有量は、最大19モル%、最大18モル%、最大17モル%、または最大15モル%である。
【0094】
コージエライト
コージエライトは、それ自体は無アルカリであるが、それにも関わらず、その構造および低い充填密度のために高いナトリウム移動度を有し、これはコージエライトガラスセラミックの脆化現象から知られている(Ceramics International 22(1996)73−77を参照されたい)。
【0095】
まさにアルカリを含まないというだけで、コージエライトは−上述の各相とは対照的に−大きな膨張係数に寄与せず、これは関連する耐熱負荷性の減少のために望ましくない。
【0096】
これらの有利な特性のために、コージエライトも構成相に取り込まれ、ここで、1モルのコージエライトは、1モルの(2MgO・2Al・5SiO)/9を意味すると理解される。本発明によるガラス中のコージエライトの含有量は0〜20%である。
【0097】
本発明によるガラス中の好ましい割合は、最大でも15モル%、または好ましくは最大でも10モル%である。特定の実施形態では、コージエライトの割合は、少なくとも1モル%、好ましくは少なくとも2モル%である。他の好ましい実施形態では、ガラスはコージエライトを含まない。特に、いくつかの好ましい実施形態では、コージエライトの含有量は、ケイ酸亜鉛二ナトリウムの含有量を超えない。
【0098】
エンスタタイト、ウォラストナイト、ケイ酸ストロンチウム、ケイ酸バリウム
コージエライトに含まれるアルミニウムは、ナトリウムの移動性を促進する効果があるという利点を有するが、同時にまた酸感受性を増大させるという欠点も有する。したがって、その寄与が膨張係数を平均値にシフトするが、アルミニウムを含まない相も加えられる。このために、アルカリ土類ケイ酸塩、すなわちエンスタタイト(ここで、1モルのエンスタタイトは、1モルの(MgO・SiO)/2を意味すると理解される)、ウォラストナイト(ここで、1モルのウォラストナイトは、1モルの(CaO・SiO)/2を意味すると理解される)、ケイ酸ストロンチウム(ここで、1モルのケイ酸ストロンチウムは、1モルの(SrO・SiO)/2を意味すると理解される)、およびケイ酸バリウム(ここで、1モルのケイ酸バリウムは、1モルの(BaO・SiO)/2を意味すると理解される)が選択される。
【0099】
本発明によるガラス中の割合は、エンスタタイトについて0%〜20%ならびにケイ酸ストロンチウム、ケイ酸バリウムおよびウォラストナイトについて0%〜10%である。
【0100】
エンスタタイトの好ましい割合は、1〜15モル%、2〜10モル%、または特に好ましくは4〜8モル%である。好ましくは、エンスタタイトの割合は、少なくともウォラストナイトの割合と同じくらい高く、かつ/または少なくともパラケルディシットの割合と同じくらい高い。
【0101】
ウォラストナイトの好ましい割合は、最大でも8モル%、最大でも6モル%、最大でも5モル%、または特に好ましくは最大でも4モル%である。特定の実施形態では、ウォラストナイトの割合は、少なくとも1モル%、好ましくは少なくとも2モル%である。他の実施形態では、ガラスはウォラストナイトを含まない。特に、いくつかの好ましい実施形態では、ウォラストナイトの含有量は、エンスタタイトの含有量を超えない。好ましくは、ウォラストナイトとコージエライトの割合の合計は、1〜20モル%、2〜15モル%、または特に好ましくは3〜12モル%の範囲である。好ましくは、ウォラストナイトとコージエライトの割合の合計に対するアルバイトの割合の比は、1〜30、2〜20、または特に好ましくは3〜16の範囲である。
【0102】
ケイ酸ストロンチウムの好ましい割合は、最大でも8モル%、最大でも5モル%、または好ましくは最大でも2モル%である。特定の実施形態では、ケイ酸ストロンチウムの割合は、少なくとも1モル%、好ましくは少なくとも1.5モル%である。他の実施形態では、ガラスはケイ酸ストロンチウムを含まない。特に、いくつかの好ましい実施形態では、ケイ酸ストロンチウムの含有量は、ウォラストナイトの含有量を超えない。
【0103】
ケイ酸バリウムの好ましい割合は、最大でも5モル%、最大でも2モル%、または特に好ましくは最大でも1モル%である。特定の実施形態では、ガラスはケイ酸バリウムを含まなくてもよく、特にケイ酸バリウムの含有量は、ウォラストナイトおよび/またはエンスタタイトの含有量よりも少なくてよい。
【0104】
特に好ましくは、ガラスは、ナルサルスカイトおよび/またはケイ酸バリウムを含まない。
【0105】
二酸化ケイ素
膨張係数の低下および耐化学性の3つの変種全てに対する有利な効果を考慮して、純粋な二酸化ケイ素が加えられる。本発明によるガラス中の割合は0%〜40%である。
【0106】
二酸化ケイ素の好ましい割合は、10〜35モル%、または特に好ましくは15〜30モル%である。
【0107】
好ましくは、アルバイト、二酸化ケイ素およびケイ酸亜鉛二ナトリウムの割合の合計は、少なくとも50モル%、少なくとも60モル%または少なくとも70モル%である。
【0108】
好ましくは、二酸化ケイ素の割合に対するケイ酸亜鉛二ナトリウムの割合の比は、0.1〜2.0、または0.2〜1.5、または好ましくは0.3〜1.0の範囲である。
【0109】
更なる成分
既に述べた成分に加えて、ガラスは、本明細書で「残分」と呼ばれる更なる成分を含有してもよい。本発明によるガラスの残分の割合は、適切なベースガラスを慎重に選択することによって設定されるガラス特性を乱さないために、有利には最大でも3モル%である。特に、個々の酸化物、特に二酸化リチウムの含有量は、有利には<1モル%に制限される。特に好ましい実施形態では、ガラス中の残分の割合は、最大でも2モル%、より好ましくは最大でも1モル%または最大でも0.5モル%である。残分は、本明細書に記載のベースガラスに含まれない酸化物を特に含む。したがって、残分は、SiO、Al、ZrO、TiO、ZnO、MgO、CaO、SrO、BaO、NaOまたはKOを特に含まない。
【0110】
本明細書においてガラスが成分もしくは構成相を含まないか、または特定の成分または構成相を含まないとされる場合、この成分または構成相は、せいぜいガラス中の不純物として存在し得ることを意味する。これは、実質的な量で添加されていないことを意味する。実質的でない量は、本発明によれば、300ppm(モル)未満、好ましくは100ppm(モル)未満、特に好ましくは50ppm(モル)未満、最も好ましくは10ppm(モル)未満の量である。本発明のガラスは、鉛、ヒ素、アンチモン、ビスマスおよび/またはカドミウムを特に含まない。
【0111】
式中で残分は生じない。pH値の式を除いて、全ての公式は、構成相からなる割合が100%になるように与えられている。pH値の式において、残分は無視されている。
【0112】
酸化物組成に変換後、本発明のガラス中のBの含有量は、好ましくは4モル%未満、さらに好ましくは3モル%未満、さらに好ましくは2モル%未満、さらに好ましくは1モル%未満、さらに好ましくは0.5モル%未満である。特に好ましくは、ガラスはBを含まない。
【0113】
酸化物組成に変換後、本発明のガラス中のPの割合は、好ましくは4モル%未満、より好ましくは3モル%未満、さらにより好ましくは2モル%未満、さらにより好ましくは1モル%未満、さらにより好ましくは0.5モル%未満である。特に好ましくは、ガラスはPを含まない。
【0114】
酸化物組成への変換後、本発明のガラス中のKOのモル分率に対するAlのモル分率の比は、好ましくは少なくとも1、さらに好ましくは少なくとも1.1である。
【0115】
酸化物組成への変換後、本発明のガラス中のLiOの割合は、好ましくは最大でも4モル%、さらに好ましくは最大でも3モル%、さらに好ましくは最大でも2モル%、さらに好ましくは最大でも1モル%以下、さらに好ましくは最大でも0.5モル%である。特に好ましくは、ガラスはLiOを含まない。
【0116】
酸化物組成への変換後、本発明のガラス中のフッ素の割合は、好ましくは最大でも4モル%、さらに好ましくは最大でも3モル%、さらに好ましくは最大でも2モル%、さらに好ましくは最大でも1モル%、さらに好ましくは最大でも0.5モル%である。特に好ましくは、ガラスはフッ素を含まない。
【0117】
好ましいガラス組成
好ましい実施形態は、上述のベース系の範囲で、所望の熱膨張および所望のナトリウム濃度の規準値から生じる。
【0118】
本発明による課題の解決策は、規準値を維持しながら、アルカリ性媒体中での低い除去速度(上記のISO 695を参照されたい)、低いpH値および高い耐酸性の組合せを達成することである。これは上記式(1)〜(6)を使って行われる。本明細書において、耐酸性指数、ISO 695に従った除去速度、CTEおよび/またはpH値について言及する場合、他に明記されない限り、それらは常に計算値を意味する。
【0119】
好ましい組成は、ガラスを構成する以下の相によって特徴付けられる:
【表10】
【0120】
製造
本発明のガラスの、以下の工程を有する製造方法も、本発明によるものである:
− ガラス原料を溶融する工程、
− 任意に、溶融ガラスからガラス物品、特にガラス管を形成する工程、
− ガラスを冷却する工程
を有する。
【0121】
ガラスの形成は、引き上げ法、特に管引き上げ法または板ガラスの引き上げ法を含み得る。冷却は、冷却剤、例えば冷却液を使用した能動的な冷却であり得るか、または受動冷却によって実施することができる。
【0122】
使用およびガラス物品
ガラスに加えて、ガラスから形成されたガラス物品、例えばガラス管および容器(ボトル、アンプル、カートリッジ、注射器など)、ならびに化学強化用のガラスの使用およびガラス管および医薬品容器、特に一次包装の製造用の使用も、本発明によるものである。ガラス物品は、医薬製品の包装手段として、特に液体用の容器として使用することを好ましくは意図している。これらの使用の範囲で、耐加水分解性および耐アルカリ性が特に重要である。
【0123】
従来技術からの比較例
比較例1〜31
比較例1〜31は、米国特許第9718721号明細書(US9718721)の中でガラスA−EEと呼ばれる例である。米国特許第9718721号明細書(US9718721)は、耐化学性および耐機械性が改善されたアルカリ土類金属アルミノケイ酸塩ガラスを教示している。これらのうち、G、I、J、Q〜V、X、DD、EEは、≧1%のLiOを含み、本発明によらない。他の例は、次の組成を有する:
【表11】
【0124】
構成相への変換から、組成物A〜C、H、N〜P、W、AA〜CCのいずれも本発明によるベース系に含まれないことがわかる。この構成相への変換からさらに、米国特許第9718721号明細書(US9718721)においてD、F、K〜Mで示される例が本発明によるベース系に含まれることがわかる。EはDと同じである。
【0125】
【表12】
【0126】
計算した特性は次のとおりである:
【表13】
【0127】
比較例32〜55
比較例32〜55は、米国特許第8753994号明細書(US 8753994)の中でガラスA〜O、1〜9と呼ばれる例である。米国特許第8753994号明細書(US 8753994)は、良好な耐化学性および耐機械性を有するガラスを教示している。例7〜9は、≧1%のBを含み、本発明によるものではない。他の例は、次の組成を有する:
【表14】
【表15】
【0128】
構成相への変換から、組成物A〜O、2〜6のいずれも本発明によるベース系に含まれないことがわかる。この構成相への変換からさらに、米国特許第8753994号明細書(US 8753994)において1で示される例が本発明によるベース系に含まれることがわかる。
【0129】
【表16】
【0130】
計算した特性は次のとおりである:
【表17】
【0131】
比較例56〜95
比較例56〜95は、欧州特許出願公開第2876092号明細書(EP2876092)の中でガラス1〜40と呼ばれる例である。例1〜30、32、35〜40は、≧1%のBを含み、本発明によるものではない。他の例は、次の組成を有する:
【表18】
【0132】
構成相への変換から、組成物31、33のいずれも本発明によるベース系に含まれないことがわかる。組成物34は95.1%のみとして報告されている;残分の4.9%は特定されていない。
【0133】
比較例96〜137
比較例96〜137は、国際公開第2014196655号(WO2014196655)の中でガラス1〜42と呼ばれる例である。例1〜34、38〜42は、≧1%のLiOを含み、本発明によるものではない。例35は、≧1%のBを含み、本発明によるものではない。他の例は、次の組成を有する:
【表19】
【0134】
構成相への変換から、組成物36、37のいずれも本発明によるベース系に含まれないことがわかる。
【0135】
比較例138〜141
比較例138〜141は、独国特許出願公開第102013114225号明細書(DE102013114225)の中でガラスA1〜A4と呼ばれる実施例である。A2〜A3は、≧1%のFを含み、本発明によるものではない。他の例は、次の組成を有する:
【表20】
【0136】
構成相への変換から、組成物A1、A4のいずれも本発明によるベース系に含まれないことがわかる。
【0137】
比較例142〜167
比較例142〜167は、独国特許出願公開第102009051852号明細書(DE102009051852)の中でガラスB1〜B5、V1〜V4、G1〜G17と呼ばれる例である。B4は、≧1%のFを含み、本発明によるものではない。V1〜V4、G1、G3、G6、G7、G9、G12、G14は、ナトリウムを含まず、本発明によるものではない。他の例は、次の組成を有する:
【表21】
【0138】
構成相への変換から、組成物B3、G2、G4、G5、G11、G17のいずれも本発明によるベース系に含まれないことがわかる。この構成相への変換からさらに、独国特許出願公開第102009051852号明細書(DE102009051852)の中でB1、B2、B5、G10、G13、G15、G17で示される例が本発明によるベース系に含まれることがわかる。
【0139】
【表22】
【0140】
計算した特性は次のとおりである:
【表23】
【0141】
比較例168〜183
比較例168〜183は、独国特許出願公開第102015116097号明細書(DE102015116097)の中でガラス1〜8、V1〜V8と呼ばれる例である。上記の例は、次の組成を有する:
【表24】
【0142】
構成相への変換から、組成物3、5〜7、V2〜V5、V7のいずれも本発明によるベース系に含まれないことがわかる。この構成相への変換からさらに、独国特許出願公開第102015116097号明細書(DE102015116097)の中でB1、2、4、8、V1、V6、V8で示される例が本発明によるベース系に含まれることがわかる。
【0143】
【表25】
【0144】
計算した特性は次のとおりである:
【表26】
【0145】
本発明の実施例
【表27】
【0146】
計算した特性は次のとおりである:
【表28】
【0147】
従来技術と比較して、本発明のガラスは、特に非常に良好な耐アルカリ性および耐酸性と非常に良好な耐加水分解性との両方を有することにより、耐化学性の点で特徴付けられる。