(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補修部材(45)及び前記反転ゴム部材(48)を反転させながら送り出すときに、前記補修部材(45)と前記反転ゴム部材(48)との間に高圧流体を閉じ込めることを含む請求項1記載の排水取付管の補修方法。
前記支持面及び前記平板部材(62)を、前記第2フィルム部材(47)の長さ方向の一端部から他端部に向けて下り傾斜するように傾斜させることを含む請求項3記載の排水取付管の補修方法。
【背景技術】
【0002】
各家庭内には汚水桝が設置されており、汚水桝と道路下面の下水道本管とは、地中に埋設された排水取付管により連通されている。排水取付管は、経年変化による老朽化、外的荷重、或いは地震等によって破損、及び継目のずれや開離等が生じることがあり、このような排水取付管における破損等に伴い、排水取付管への地下水や土砂の流入、又は排水取付管を流れる汚水の地中への流出等が生じる。このため、破損等が生じた排水取付管の補修・改築が必要となる。
【0003】
排水取付管の補修・改築を行う方法の1つとして、排水取付管を掘り起こすことなく非開削で排水取付管の補修を行うことが知られている。このような非開削で排水取付管の補修を行う補修方法の一例が、特開2001−30357号公報(特許文献1)に記載されている。
【0004】
特許文献1に記載されている補修方法について、
図15を参照しながら簡単に説明する。
特許文献1の補修方法では、先ず、補修部材81と反転ゴム部材82とを準備する。特許文献1で準備される補修部材81は、筒状の基布部と、基布部の内周側に配される内側シート(内側フィルム)と、基布部の外周側に配される外側シート(外側フィルム)とを備えた3層構造の筒状体である。基布部は、編織物又は不織布等の布材に合成樹脂を含浸させて形成されている。この補修部材81の一端部と反転ゴム部材82の一端部とは、接続紐83によって連結されている。
【0005】
補修部材81等の準備を行うとともに、反転機91を現場に設置する。また、補修部材81及び反転ゴム部材82を反転ガイド92に装着し、その反転ガイド92の基端部を反転機91に接続する。更に、反転ガイド92の先端部を、補修を行う排水取付管100の入口部に近接する位置に配置する。
【0006】
次に、反転ガイド92内の補修部材81と反転ゴム部材82との間に高圧空気aを供給して封入する。また、反転機91内に高圧空気Aを供給するとともに、反転機91の巻芯に巻き付けられている反転ロープ84を徐々に繰り出す。これにより、反転ゴム部材82と補修部材81とを反転させながら、
図15に示したように排水取付管100に挿入し、更に、排水取付管100内に進入させることによって、補修部材81を排水取付管100の全体に挿通させる。
【0007】
このとき、補修部材81と反転ゴム部材82との間に高圧空気aが封入された状態を維持しながら、補修部材81の先導部分が排水取付管100内を奥に向けて進んで行く。このため、例えば排水取付管100に湾曲した部分又は屈曲した部分が設けられている場合でも、補修部材81は、高圧空気a及び高圧空気Aの圧力によって排水取付管100の湾曲部分又は屈曲部分を通り抜けることができる。それによって、湾曲部分又は屈曲部分を有する排水取付管100の全体に、補修部材81を容易に挿通させることができる。
【0008】
補修部材81を排水取付管100の全体に挿通させた後、反転ガイド92に設けられているバルブ部93において、高圧空気Aにおける反転機91側の流路と排水取付管100側の流路とを遮断する。更に、排水取付管100側の流路における反転ゴム部材82内を所定の加圧状態に維持する。これにより、反転ゴム部材82で補修部材81を排水取付管100の内周面に向けて圧接させた状態で、補修部材81の基布部に含浸させた合成樹脂を硬化させることができる。
【0009】
合成樹脂の硬化後、排水取付管100から反転ゴム部材82と、反転させた補修部材81の外側シートとを引き出して回収することにより、排水取付管100の補修作業が完了する。これにより、破損等が生じている排水取付管100の内周面の全体に、硬化した補修部材81が連続して設けられるため、排水取付管100内への地下水や土砂の流入、及び、排水取付管100を流れる汚水の地中への流出を防止できる。
【0010】
このような特許文献1の補修方法によれば、直線的に埋設された排水取付管の補修だけでなく、湾曲部分又は屈曲部分を有する排水取付管の補修を行うことができる。また、補修部材81が反転ゴム部材82で加圧された状態で、補修部材81の基布部に含浸させた合成樹脂が硬化するため、硬化した基布部の内周面を、流水障害を生じさせ難い滑らかな面に形成できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1の補修方法では、排水取付管100内に反転させて進入させる補修部材81が、前述したように、内側シート、合成樹脂を含浸させる基布部、及び外側シートの3層構造の筒状体により形成されている。このような補修部材81の基布部に合成樹脂を含浸させる場合には、筒状の内側シートと筒状の外側シートの間の基布部が配されている狭いリング状の空間部分に合成樹脂を注入し、更に、その合成樹脂が注入された補修部材81を例えば2つのローラー間に通すことによって、合成樹脂を基布部に浸み込ませる作業が行われる。
【0013】
しかし、合成樹脂を狭い空間部分に注入し、その狭い空間部分内に合成樹脂を行き渡らせるようにして基布部に含浸させるため、含浸させた合成樹脂に空気が入り易くなることや、含浸斑が生じ易くなることなどの欠点があった。このように合成樹脂に空気が入ったり、含浸斑が生じたりすると、排水取付管内で硬化させた補修部材の強度を低下させることや、基布部の内周面の平滑性を低下させることがある。このため、従来では、合成樹脂に空気が入ることや斑が生じることを防ぐために、合成樹脂を注入した補修部材を人手で揉むことや、2つのローラー間に複数回通すこと等の作業を行うことによって合成樹脂を基布部に均一に含浸させている。しかし、このような作業には、多くの時間と労力が必要とされていた。
【0014】
また、補修部材を2つのローラー間に通す際には、ローラーを回転させながら補修部材をローラーの下流側から引っ張ることがある。このとき、補修部材が部分的に延びて薄くなる可能性があり、その結果、合成樹脂を硬化させた後の基布部の強度に影響を与えることが考えられる。
【0015】
更に、特許文献1の補修方法の場合、反転機91を地上に設置できるものの、反転機91に接続する反転ガイド92の先端部を、前述したように、排水取付管100の入口部に近接する位置に配置することが必要とされる。従って、排水取付管100の埋設位置や埋設状態によっては、反転ガイド92の設置に時間を要することがあった。
【0016】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、補修部材の準備において合成樹脂を含浸させるときに空気の入り込みや含浸斑などを生じさせ難くすることが可能であり、また、排水取付管の補修を従来よりも簡便に、また安定した品質で行うことが可能な排水取付管の補修方法と、その補修方法で用いられる含浸装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明により提供される排水取付管の補修方法は、地中に埋設されている排水取付管を補修する補修方法であって、高圧流体を内部空間に供給可能な反転機を設置すること、前記反転機を用いて、筒状の第1フィルム部材を反転させながら送り出すことにより、前記第1フィルム部材を前記排水取付管の全体に挿通させること、合成樹脂が含浸した筒状の基布部と、前記基布部の外側に配される筒状の第2フィルム部材とにより形成される補修部材を準備すること、前記補修部材の少なくとも一部を筒状の反転ゴム部材内に挿入するとともに、前記補修部材の一端部と前記反転ゴム部材の一端部とを接続すること、前記反転機を用いて、前記補修部材及び前記反転ゴム部材を反転させながら送り出すことにより、前記補修部材及び前記反転ゴム部材を、前記排水取付管内に挿通させた前記第1フィルム部材の内側に挿入すること、前記補修部材及び前記反転ゴム部材を、前記第1フィルム部材内に進入させて前記排水取付管の全体に挿通させるとともに、前記補修部材を前記排水取付管の内周面に向けて圧接させること、前記補修部材を圧接させた状態で、前記基布部に含浸させた前記合成樹脂を硬化させること、及び、前記合成樹脂の硬化後、前記反転ゴム部材及び前記第2フィルム部材を前記排水取付管から引き抜くことを含むことを主要な特徴とするものである。
【0018】
本発明に係る排水取付管の補修方法は、前記補修部材及び前記反転ゴム部材を反転させながら送り出すときに、前記補修部材と前記反転ゴム部材との間に高圧流体を閉じ込めることを含むことが好ましい。
【0019】
また本発明の補修方法は、前記補修部材の準備において、前記基布部を前記第2フィルム部材内に収容すること、前記基布部が収容された前記第2フィルム部材内に前記合成樹脂を注入すること、前記合成樹脂が注入された前記第2フィルム部材を、支持台の平坦な支持面に載置するとともに、前記第2フィルム部材の上に平板部材を重ねること、前記平板部材上に押圧ローラーをセットし、前記支持面と前記押圧ローラーとによって前記第2フィルム部材及び前記平板部材を挟持するとともに、前記第2フィルム部材及び前記平板部材に押圧力を加えること、及び、前記第2フィルム部材及び前記平板部材に前記押圧力を加えた状態で、前記押圧ローラーを前記第2フィルム部材の長さ方向の一端部から他端部まで移動させることによって、前記基布部に前記合成樹脂を含浸させることを含むことが好ましい。
【0020】
この場合、本発明の補修方法は、前記支持面及び前記平板部材を、前記第2フィルム部材の長さ方向の一端部から他端部に向けて下り傾斜するように傾斜させることを含むことが好ましい。
【0021】
次に、本発明により提供される含浸装置は、筒状の基布部が筒状のフィルム部材内に収容された補修部材の前記基布部に合成樹脂を含浸させる含浸装置であって、平坦な支持面を備える支持台と、前記支持面に平行に重ねることが可能な平板部材と、前記支持面に重ねた前記平板部材上にセットされる押圧ローラーと、前記支持面に対する前記押圧ローラーの高さ位置を調整可能な調整部と、高さ位置が調整された前記押圧ローラーを前記平板部材上で移動可能な移動部とを有することを主要な特徴とするものである。
【0022】
本発明の含浸装置において、前記支持台は、前記支持面及び前記平板部材を所定の方向に傾斜させることが可能なチルト機構を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る排水取付管の補修方法では、高圧流体を内部空間に供給可能な反転機を設置し、例えばその反転機の一部に筒状の第1フィルム部材の端部が固定された状態で、反転機の高圧流体を利用して第1フィルム部材を反転させながら送り出すことにより、第1フィルム部材を、補修を行う排水取付管内に挿入する。更に、第1フィルム部材の送り出しを続けることにより、第1フィルム部材を排水取付管の全体に挿通させる。
【0024】
また、上述のような第1フィルム部材の挿通作業を行うとともに、合成樹脂が含浸した筒状の基布部と、基布部の外側に配される筒状の第2フィルム部材とを備える補修部材を準備する。このとき、本発明の補修部材は、特許文献1の補修部材とは異なり、筒状の基布部と筒状の第2フィルム部材の2層構造の筒状体により形成されている。このため、基布部に合成樹脂を含浸させる場合、外側シートとなる第2フィルム部材の大きな内部空間部分に合成樹脂を注入して基布部に含浸できる。それにより、合成樹脂を基布部に浸み込ませる作業を、例えば特許文献1の場合に比べて容易に且つ短時間で行うことができる。また、例えば特許文献1の場合に比べて、合成樹脂に空気の入り込みや斑などを生じさせ難くすることが可能となる。
【0025】
続いて、準備した補修部材の少なくとも一部を筒状の反転ゴム部材内に挿入するとともに、補修部材の一端部と反転ゴム部材の一端部とを接続する。そして、反転機及び反転機に接続される部分(例えば反転ガイド)の少なくとも一方に、互いに接続された補修部材及び反転ゴム部材を収容するとともに、補修部材の他端部と反転ゴム部材の他端部とを所定の位置(例えば、反転機に接続された反転ガイドの所定の位置)に固定する。続いて、補修部材の他端部と反転ゴム部材の他端部とが固定された状態で、反転機に供給される高圧流体を利用して補修部材及び反転ゴム部材を反転させながら送り出すことにより、補修部材及び反転ゴム部材を、排水取付管内に挿通させた第1フィルム部材の内側に挿入する。
【0026】
更に続けて、反転機に供給される高圧流体を利用することにより、補修部材と反転ゴム部材とを、第1フィルム部材内に進入させ、排水取付管の全体に亘って第1フィルム部材内に挿通させる。また、補修部材及び反転ゴム部材を挿通させるとともに、反転ゴム部材内の高圧流体の圧力によって、補修部材を排水取付管の内周面に向けて圧接させる。そして、補修部材を排水取付管に圧接させた状態で、基布部に含浸させた合成樹脂を硬化させる。これにより、排水取付管の内周面の全体に、硬化した基布部を備えた補修部材(補修管)が連続して形成される。
基布部の合成樹脂が硬化した後、反転ゴム部材及び第2フィルム部材を排水取付管から引き抜く。これにより、排水取付管の補修作業が終了する。
【0027】
上述のような本発明の補修方法で排水取付管の補修を行うことによって、基布部に合成樹脂を含浸させるときに合成樹脂に空気の入り込みや斑などが発生することを抑制し、合成樹脂の含浸作業を上述したように容易に且つ短時間で行うことができる。これにより、合成樹脂の含浸作業の効率化及び合理化を図ることができる。
【0028】
また本発明では、補修部材及び反転ゴム部材を排水取付管内に導入する前に、筒状の第1フィルム部材を排水取付管に挿通させるため、その排水取付管に対して補修作業を行えるか否かの確認を事前に行うことができる。例えば補修作業が可能な排水取付管であれば、その後の作業を円滑に安定して行うことができる。また、補修作業が不能な排水取付管であれば、その他の補修作業で対応することを早い段階で判断することができるため、補修作業の効率化を図ることができる。
【0029】
更に、筒状の第1フィルム部材を排水取付管に事前に挿通させているため、その第1フィルム部材内に補修部材及び反転ゴム部材を進入させることによって、例えば特許文献1の場合のように反転機に接続する反転ガイドの先端部を排水取付管の入口部に近接する位置に配置する必要がなくなり、作業負担を軽減できる。
【0030】
以上のように、本発明では、補修部材及び反転ゴム部材の反転作業を行う前の準備作業(基布部への合成樹脂の含浸作業や、反転機及び反転ガイドの設置作業等)をより簡便に行うことが可能となり、その結果、排水取付管の補修を安定した品質で、また、従来よりも簡便に行うことができる。
【0031】
上述のような本発明の補修方法では、補修部材及び反転ゴム部材を反転させながら送り出すときに、補修部材と反転ゴム部材との間に高圧流体を封入する。これによって、排水取付管が湾曲した部分や屈曲した部分を有する場合でも、排水取付管の全体に亘って補修を行うことが可能となる。
【0032】
また、本発明の補修方法では、補修部材の準備において、先ず、基布部を第2フィルム部材内に収容し、その第2フィルム部材内に合成樹脂を注入する。続いて、合成樹脂が注入された第2フィルム部材を、支持台の平坦な支持面に載置するとともに第2フィルム部材の上に平板部材を重ね、その後、平板部材上に押圧ローラーをセットすることによって、支持面と押圧ローラーとによって第2フィルム部材及び平板部材を挟持するとともに、第2フィルム部材及び平板部材に押圧力を加える。更に、第2フィルム部材及び平板部材に押圧力を加えた状態で、押圧ローラーを第2フィルム部材の長さ方向の一端部から他端部まで移動させることによって、基布部に合成樹脂を含浸させる。このように基布部への合成樹脂の含浸作業を行うことによって、空気の入り込みや斑などが発生することをより効果的に抑制して合成樹脂を基布部に均一に含浸させることができる。またこの場合、従来のような2つのローラーを回転させながら補修部材をローラーの下流側から引っ張るような作業は行われないため、補修部材が部分的に延びて薄くなるといった不具合が生じることを防止でき、合成樹脂を硬化させた後の基布部が、所要の強度を安定して有することができる。
【0033】
またこの場合、本発明の補修方法では、支持面及び平板部材を、第2フィルム部材の長さ方向の一端部から他端部に向けて下り傾斜するように傾斜させることができる。これにより、基布に対して合成樹脂を効率的に含浸させることができ、また、合成樹脂の空気の入り込みや斑などの発生を更に効果的に抑制できる。
【0034】
次に、本発明により提供される含浸装置は、筒状の基布部が筒状のフィルム部材内に収容された補修部材の基布部に合成樹脂を含浸させる含浸装置であって、平坦な支持面を備える支持台と、支持面に平行に重ねることが可能な平板部材と、支持面に重ねた平板部材上にセットされる押圧ローラーと、支持面に対する押圧ローラーの高さ位置を調整可能な調整部と、高さ位置が調整された押圧ローラーを平板部材上で移動可能な移動部とを有する。
【0035】
このような構造を有する補修部材の含浸装置であれば、空気の入り込みや斑などが発生することを効果的に抑制して合成樹脂を基布部に均一に含浸させることができる。また、従来のような2つのローラーを回転させながら補修部材をローラーの下流側から引っ張るような作業が行われないため、補修部材が部分的に延びて薄くなるといった不具合が生じることを防止できる。
【0036】
また、本発明の含浸装置において、支持台は、支持面及び平板部材を所定の方向に傾斜させることが可能なチルト機構を備える。これにより、基布に対して合成樹脂を効率的に含浸させることができ、また、合成樹脂の空気の入り込みや斑などの発生を更に効果的に抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。例えば本実施形態では、宅内汚水桝から下水道本管にかけて埋設されて連結した排水取付管(下水道取付管)を補修する場合について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0039】
本実施形態では、
図1に模式的に示したように宅内汚水桝2と下水道本管3との間に埋設された排水取付管1を補修する方法(工程)について説明する。本実施形態で排水取付管1を補修して更生する場合、先ず、事前調査工程として、カメラを用いて施工箇所の確認、障害物の確認等を行い、例えば障害物が存在する場合は障害物の除去等の作業を行う。
【0040】
事前調査工程を行うとともに、補修工程を適切に実施可能な位置に反転機10を設置する。本実施形態で用いる反転機10は、
図1に示したように、耐圧気密構造のドラム形態を備えた反転機本体部11と、反転機本体部11の下端部から延出するとともに反転機本体部11の内部空間に連通する接続部12と、反転機本体部11の上端部に配される作業用の開閉部(開閉ハッチ部)13と、図示しないコンプレッサー(加圧流体供給部)が接続される高圧流体供給部14と、反転機本体部11の一方の側面部に配される操作部15とを有する。反転機10の操作部15を、例えば
図1の紙面における反時計回り方向又は時計回り方向に回転させることにより、反転機本体部11の内部に設けられた巻芯部16(
図4及び
図5を参照)を反時計回り方向又は時計回り方向に回転させることができる。それによって、その巻芯部16に例えば後述する第1フィルム部材41又は反転ロープ42を巻き付けること、又は巻芯部16に巻かれている第1フィルム部材41又は反転ロープ42を巻き出して、接続部12から送り出すことができる。
【0041】
また、本実施形態の反転機10は、反転機10の移動及び高さ調節が可能なようにハンドリフター17に載置されている。このハンドリフター17は、車輪が取着されている台車部17aと、台車部17aから延びるハンドル部17bと、台車部17aに対して昇降可能なテーブル部17cとを有しており、ハンドリフター17のテーブル部17cに反転機10が固定されている。
【0042】
本実施形態の反転機10に対し、
図4に示したように、長尺の筒状体である合成樹脂製の第1フィルム部材41を装着する。なお本発明において、第1フィルム部材41の材質は特に限定されない。本実施形態の第1フィルム部材41は、補修する排水取付管1の管径と略同じ直径又は少し大きい直径を有するとともに、排水取付管1の長さよりも長く形成されている。
【0043】
この第1フィルム部材41の一端部を、反転機10の巻芯部16に巻かれる反転ロープ42(
図4には不図示)の端部に接続し、反転機10の操作部15を回転させることによって反転ロープ42及び第1フィルム部材41を反転機10の巻芯部16に巻き付ける。また、第1フィルム部材41の他端部を、反転機10の接続部12における開口側端部の外周面に折り返して、接続部12の外周面に固定する。これにより、第1フィルム部材41が反転機10に装着される。
【0044】
反転機10に第1フィルム部材41を上述のように装着して第1フィルム部材41を反転機10から送り出す準備が整った後、図示しないコンプレッサーを稼働させて高圧流体供給部14から反転機本体部11の内部空間に高圧流体を供給する。本発明において、「流体」には、空気又はガス等の気体、及び水等の液体が含まれる。本実施形態の場合、高圧流体として、コンプレッサーから供給される圧縮された空気(以下、「圧縮空気」ともいう)が用いられる。
【0045】
反転機本体部11内に圧縮空気を供給するとともに、反転機10の操作部15を回転させることによって、巻芯部16に巻き付けられている第1フィルム部材41及び反転ロープ42を徐々に巻き出す。これによって、反転機10の接続部12から、第1フィルム部材41を反転させながら徐々に送り出すことができる。
【0046】
反転機10の接続部12から送り出される第1フィルム部材41は、作業者によって、排水取付管1の宅内汚水桝2側の開口部(入口部)に誘導され、その開口部から排水取付管1内に挿入される。更に、第1フィルム部材41が反転機10の接続部12から反転しながら送り出されることにより、第1フィルム部材41が、
図1に示したように排水取付管1内に深く進入し、更に、排水取付管1の下水道本管3側の開口(出口)まで到達することによって、第1フィルム部材41を排水取付管1の全体に挿通させることができる。
【0047】
このとき、第1フィルム部材41は、排水取付管1を越えて、下水道本管3に突き出るように排水取付管1に挿通させることが好ましい。それにより、排水取付管1の破損部等からの水の浸入を第1フィルム部材41で阻止できるため、後述するように基布部46に含浸させた合成樹脂を硬化させるときに、外部から浸入する水等に起因して合成樹脂の硬化不良が生じることを防止できる。
【0048】
第1フィルム部材41を排水取付管1の全体に挿通させた後、例えば第1フィルム部材41内の圧縮空気の圧力を利用して第1フィルム部材41と反転ロープ42の接続を解除する。その後、反転機10の操作部15を回転させて巻芯部16に反転ロープ42を巻き付けることにより、反転ロープ42を排水取付管1から抜き出す。また、反転機10に接続させている第1フィルム部材41の他端部を反転機10から外し、その第1フィルム部材41の他端部を地表に保持する。
【0049】
また本実施形態では、上述のような第1フィルム部材41を排水取付管1に挿通させる作業と並行して、補修部材45を準備する作業を行う。補修部材45は、
図8及び
図9に示すように、合成樹脂を含浸させる円筒状の形状を備えた基布部46と、その基布部46の外側に配される円筒状の形状を備えた合成樹脂製の第2フィルム部材47とを有しており、第2フィルム部材47は、基布部46を内側に包み込むように収容している。すなわち、補修部材45は、円筒状の基布部46と円筒状の第2フィルム部材47とにより形成される2層構造の筒状体である。なお、
図8及び
図9では、基布部46に合成樹脂を含浸させる前の補修部材45を示している。
【0050】
本実施形態において、補修部材45の基布部46及び第2フィルム部材47は、特許文献1に記載されている「布材51」及び「外側フィルム52」と実質的に同様に形成されている。例えば本実施形態の基布部46は、ポリエステル繊維等の合成繊維又はガラス繊維を用いて円筒状に形成される編織物又は不織布からなり、適度な柔軟性を備える。また、円筒状の基布部46は、排水取付管1と略同じ長さ及び直径を有する。円筒状の第2フィルム部材47は、基布部46よりも長く形成されるとともに、基布部46を内側に収容可能な直径を有する。なお本発明において、基布部46及び第2フィルム部材47の材質は特に限定されない。
【0051】
この補修部材45の準備作業では、第2フィルム部材47の内側に基布部46を挿入した後、第2フィルム部材47に収容された基布部46に液体の合成樹脂を含浸させることによって、補修部材45を作製する。このとき、基布部46に含浸させる液体の合成樹脂には、常温にて所定時間(例えば2時間〜2時間30分)で硬化するように設定されたビニールエステル樹脂(又はポリエステル樹脂)が用いられる。なお本発明において、基布部46に含浸させる合成樹脂は、特に限定されず、自然硬化、熱硬化、又は光硬化等により硬化可能な合成樹脂を用いることが可能である。
【0052】
本実施形態において基布部46に合成樹脂を含浸させる作業は、
図10に模式的に示した含浸装置60を用いて行われる。
図10に示した含浸装置60は、平坦な支持面を備える支持台61と、支持面に重ねられる平板部材62と、押圧ローラー63と、押圧ローラー63の高さ位置を調整するとともに押圧ローラー63を移動させることが可能な左右一対のローラー制御部64とを有する。本実施形態において、含浸装置60は、5m程度の長さの基布部46が収容された第2フィルム部材47に含浸を行うことが可能な大きさを有しており、含浸装置60を上方側から見たときの支持面は、一方の方向(長さ方向)に長い矩形の形状を呈する。
【0053】
含浸装置60の支持台61は、第2フィルム部材47を支持する支持部(載置部)61aと、支持部61aの角部から垂設される4本の脚部61bと、脚部61bを補強する補強部61cとを備えている。この支持部61aの上面は、基布部46を載置して支持する平坦な支持面となる。
図10に示した状態では、支持部61aの支持面は水平に保持されている。また、支持部61aの幅方向における少なくとも一方の側縁部には、下方に突出する複数の歯を備えたラック部61dが支持部61aの長さ方向に沿って設けられている。
【0054】
4本の脚部61bにおいて、長さ方向の一方側に配される2つ一組の脚部61bの下端部には車輪が取り付けられており、長さ方向の他方側に配される2つ一組の脚部61bの下端部はステイとして形成されている。このため、含浸装置60の長さ方向の他方側を持ち上げることにより、含浸装置60を2つの車輪で移動させることが可能となる。
【0055】
また、この含浸装置60には、支持部61aの支持面が長さ方向の一端部(又は他端部)から他端部(又は一端部)に向けて下り傾斜するように、支持部61aにおける長さ方向の一端部の高さを調節可能なチルト機構65が、長さ方向の一方側に配される2つ一組の脚部61bにそれぞれ設けられている。また、長さ方向の他方側に配される2つ一組の脚部61bと支持台61とは、当該一組の脚部61bに対して支持台61が回転可能に連結されている。
【0056】
含浸装置60の平板部材62は、アルミニウム合金製の薄い矩形状の平板により形成されている。この平板部材62は、一定の厚さをもって形成されており、押圧ローラー63から、ある程度の荷重を受けても変形しない強度を備える。なお、平板部材62は、例えば平板部材62の上面に長さ方向に沿った補強リブを設けることによって補強されていてもよい。
【0057】
押圧ローラー63は、断面が円形又は略円形を呈する丸い棒状に形成されている。また、押圧ローラー63は、含浸装置60の幅方向に沿って配されているとともに、押圧ローラー63の幅方向における両端部(すなわち、押圧ローラー63の左右の端部)は、左右のローラー制御部64に固定されている。
【0058】
左右の各ローラー制御部64は、支持部61aの幅方向の外側に配される制御本体部と、押圧ローラー63を固定する図示しないローラー固定部と、押圧ローラー63の高さ位置を調整する図示しない高さ調整部とを有する。また、左右のローラー制御部64の少なくとも一方には、制御本体部に対して回転可能に設けられるとともに支持部61aのラック部61dに噛み合うピニオン64aと、ピニオン64aを回転させる回転操作部64bとが設けられている。
【0059】
このようなローラー制御部64を用いることにより、押圧ローラー63の高さ位置を変えること、及び、押圧ローラー63を所定の高さ位置で保持することができる。また、回転操作部64bでピニオン64aを回転させることによって、所定の高さ位置で保持された押圧ローラー63を、含浸装置60の長さ方向に沿って、支持台61の支持面を平行に移動させることができる。
【0060】
上述のような含浸装置60を用いて、第2フィルム部材47に収容されている基布部46に合成樹脂を含浸させる場合、先ず、基布部46を収容した第2フィルム部材47を含浸装置60の支持面に載置する。このとき、第2フィルム部材47を、含浸装置60の長さ方向に沿うように配置することが好ましい。
【0061】
第2フィルム部材47を支持面に載置した後、第2フィルム部材47の内部に液体の合成樹脂を、基布部46の長さに対応する分量で注入する。このとき、合成樹脂を、基布部46の一端部の位置が含まれる範囲に注入することが好ましい。合成樹脂の注入後、第2フィルム部材47を載置した支持面の上に平板部材62を重ね合せる。このとき、支持台61の支持面と平板部材62との間に第2フィルム部材47の全体が挟まれるように平板部材62を重ねる。
【0062】
続いて、左右のローラー制御部64によって、押圧ローラー63を移動させて平板部材62の上に、且つ第2フィルム部材47の一端部が配されている位置に配置する。また、左右のローラー制御部64によって、押圧ローラー63を下降させて平板部材62に接触させ、更に、押圧ローラー63によって第2フィルム部材47に適切な押圧力が加えられるような高さ位置に押圧ローラー63を保持する。
【0063】
これにより、
図11に示したように、支持台61の支持面と押圧ローラー63とによって、第2フィルム部材47及び平板部材62が挟持されるとともに、押圧ローラー63から第2フィルム部材47及び平板部材62に対して押圧力が加えられる。これによって、支持台61の支持面と平板部材62とによって第2フィルム部材47が広い面積で押圧されるため、第2フィルム部材47に注入した合成樹脂を、基布部46に効率的に含浸させることができる。
【0064】
更に本実施形態では、第2フィルム部材47及び平板部材62を挟持した後、含浸装置60の脚部61bに設けたチルト機構65によって、支持台61の支持面と平板部材62とが、長さ方向の一端部から他端部に向けて下り傾斜するように支持台61を傾ける。その後、第2フィルム部材47の一端部側に配置されている押圧ローラー63を、ローラー制御部64に設けた回転操作部64bを回すことによって、第2フィルム部材47の他端部に向けて移動させる。このとき、押圧ローラー63は、ローラー制御部64によって所定の高さ位置で保持されているため、第2フィルム部材47及び平板部材62に適切な押圧力を加えながら第2フィルム部材47の他端部まで移動できる。これにより、第2フィルム部材47内に注入した合成樹脂が、基布部46の一端部から他端部までの全体に亘って含浸した補修部材45を作製できる。
【0065】
特にこの場合、
図11に示した第2フィルム部材47及び基布部46の断面において、注入された液体の合成樹脂をグレーで示すように、合成樹脂を第2フィルム部材47の内側全体に容易に回り込ませることができる。このため、第2フィルム部材47内に空気が残ることを防いで、合成樹脂を基布部46に円滑に浸み込ませることができる。また、押圧ローラー63によって、第2フィルム部材47及び基布部46を長さ方向の全体に亘って略均一に押圧することができるため、合成樹脂を基布部46の全体に均一に含浸させることができる。
【0066】
従って、
図10に示した含浸装置60を用いて合成樹脂の含浸作業を行うことによって、押圧ローラー63の押圧力を利用して第2フィルム部材47内部の空気を抜きながら、基布部46の一端部から他端部に向けて合成樹脂を含浸させていくことができる。このため、空気の入り込みや含浸斑などが発生することを効果的に抑制して、合成樹脂を基布部46の全体に均一に且つ安定して含浸させることができる。更に、含浸作業を容易に行うことができるとともに、含浸作業に要する時間を低減できる。
【0067】
なお本実施形態では、合成樹脂の含浸作業を、
図10に示した含浸装置60を用いる代わりに、例えば
図12に示したような回転可能に支持された2つ回転ローラー71を有する含浸装置70を用いて行うことも可能である。
図12に示した含浸装置70を用いる場合、基布部46を内部に収容した第2フィルム部材47内に液体の合成樹脂を注入するとともに、その第2フィルム部材47(補修部材45)を2つ回転ローラー71間に挿入する。このとき、2つの回転ローラー71間の間隔は、挿入する第2フィルム部材47の厚さ等に応じて適切に設定されている。そして、2つの回転ローラー71を回転させながら、2つの回転ローラー71間に挿入された第2フィルム部材47を下側から引っ張ることによって、第2フィルム部材47内に注入した合成樹脂を基布部46に含浸させることができる。
【0068】
このような
図12に示した含浸装置70を用いることによっても、基布部46の全体に亘って合成樹脂が含浸した補修部材45を作製できる。また、
図12の含浸装置70は、例えば
図10の含浸装置60に比べて、コンパクトに且つ軽く形成されているため、例えば
図10の含浸装置60を持ち運ぶことが難しい現場等において有用である。
【0069】
一方、
図12の含浸装置70は、2つの回転ローラー71間に挿入された第2フィルム部材47を下側から引っ張りながら合成樹脂の含浸作業を行うため、下方への引張力によって第2フィルム部材47及び基布部46が部分的に伸びる可能性がある。このように基布部46が部分的に伸びてしまうと、後述するように、基布部46と硬化した合成樹脂を含む補修管を排水取付管1の内側に形成したときに、その補修管の強度を部分的に低下させることが考えられる。
【0070】
これに対し、
図10の含浸装置60を用いて合成樹脂の含浸作業を行う場合、その作業中に第2フィルム部材47及び基布部46が部分的に伸びることは生じないため、形成される補修管の強度を安定して確保できるといった効果が得られる。
【0071】
上述のようにして補修部材45を作製して準備した後、その補修部材45と円筒状の反転ゴム部材48とを接続する。本実施形態の反転ゴム部材48は、弾性を有するゴム管であり、特許文献1に記載されている「反転ゴム4」と実質的に同様に形成されている。補修部材45と反転ゴム部材48とを接続するために、先ず、
図13に示したように、補修部材45における第2フィルム部材47の基布部46よりも延出している部分(補修部材45の一端部)を接続ロープ43の一端部に固定する。
【0072】
例えば、接続ロープ43の一端部にループを形成して、その接続ロープ43のループに第2フィルム部材47の一端部を挿通させるとともに固定紐を用いて第2フィルム部材47の挿通させた部分と挿通させていない部分とを結ぶことにより、補修部材45の一端部と接続ロープ43の一端部とを容易に接続できる。なお、補修部材45と接続ロープ43とを接続する方法及び手段はこれに限定されるものではない。
【0073】
続いて、補修部材45を固定した接続ロープ43を引っ張って、補修部材45の一端部(先端部)が反転ゴム部材48の一端部(先端部)の近くに到るまで補修部材45を反転ゴム部材48内に挿入する。また、反転ゴム部材48の一端部には、
図14に示すように、接続ロープ43を連結するための連結金具50が事前に取り付けられている。この連結金具50は、特許文献1に記載されている「先端金具40」と実質的に同様に形成されている。
【0074】
本実施形態の連結金具50は、中心孔を有する面板部51と、面板部51の外周部に一体的に設けられる円筒状の反転ゴム取付部52と、面板部51から突出するように配される止め環部53と、面板部51の中心孔に取り外し可能に螺着する中空ボルト54と、中空ボルト54に設けられた係合孔に螺着する閉止ボルト55とを有する。
【0075】
このような連結金具50では、連結金具50の反転ゴム取付部52に、反転ゴム部材48の一端部が気密に固定される。また、補修部材45が接続された接続ロープ43の他端部を中空ボルト54の係合孔に挿入した状態で閉止ボルト55を係合孔に螺着することによって、連結金具50に接続ロープ43の他端部が固定される。また、連結金具50の止め環部53には、反転機10の巻芯部16に巻かれる反転ロープ42の一端部を結び付ける。これにより、補修部材45の一端部と反転ゴム部材48の一端部とを接続ロープ43を介して接続できる。それとともに、反転ゴム部材48の一端部を反転ロープ42に接続できる。なお本発明において、接続ロープ43と反転ゴム部材48を接続する方法及び手段は、これに限定されるものではない。
【0076】
また上述のように補修部材45と反転ゴム部材48の接続、及び反転ゴム部材48と反転ロープ42の接続を行うとともに、
図2、
図5、及び
図6に示したような反転ガイド20を反転機10の接続部12に接続する。反転ガイド20は、反転機10の接続部12に直接接続する基端側の第1ガイド部21と、第1ガイド部21に接続される流路遮断用のバルブ部25と、バルブ部25に接続されるともに屈曲部を有する第2ガイド部22と、第2ガイド部22の先端部に接続される第3ガイド部23とを有する。
【0077】
この場合、第1ガイド部21〜第3ガイド部23は、金属により形成されている。また、第1ガイド部21〜第3ガイド部23及びバルブ部25の各接続部分は、それぞれの接続相手に対して切り離し可能に接続される。なお、第1ガイド部21〜第3ガイド部23及びバルブ部25を接続する接続方法及び接続手段は特に限定されず、従来から一般的に利用されている接続方法及び接続手段を適用できる。また、本発明の反転ガイド20は、バルブ部25を用いずに形成されていてもよい。
【0078】
反転ガイド20の第1ガイド部21は、円筒状に形成されている。第1ガイド部21は、反転機10の接続部12とバルブ部25の後述するゴム筒部25bとに気密に接続される。
反転ガイド20のバルブ部25は、特許文献1に記載されている「バルブV」と実質的に同様に形成されている。このため、本実施形態のバルブ部25については
図7を参照しながら簡単に説明する。バルブ部25は、方形筒状のカバー部25aと、カバー部25a内に保持されるゴム筒部25bと、カバー部25aの一対の側壁部に挿通される一対のネジロッド25cと、ネジロッド25cの内側端部に取り付けられる一対の圧接板25dと、ネジロッド25cの外側端部に固定されるプーリー25eとを有する。また、カバー部25aの内壁面の4つの隅部には、図示しないガイド板が圧接板25dを両側から挟持する形態で固定されている。
【0079】
このバルブ部25では、プーリー25eを回転させることによりネジロッド25cをカバー部25aに対して進退させることができ、それによって、圧接板25dをカバー部25aの内壁面に対して接近・離間させる方向に移動させることができる。また、一対の圧接板25dをゴム筒部25bに向けて内側に進出させることによって、一対の圧接板25dがゴム筒部25bの中央部分を両側面側から圧接して、ゴム筒部25bの流路を遮断できる。
【0080】
また、バルブ部25には、ゴム筒部25bの内部の圧力を測定する圧力計25f(
図2を参照)と、図示しない圧力調整バルブとが取り付けられており、圧力調整バルブには、図示しない圧力供給源が接続されている。このような圧力計25fと圧力調整バルブが設置されることによって、一対の圧接板25dでゴム筒部25bの中央部分が遮断されている状態において、圧力計25fによってゴム筒部25bの内部圧力の低下が検出されたときには、圧力調整バルブを開いてゴム筒部25bの内部に高圧流体(圧縮空気)を供給できる。これによって、ゴム筒部25bの内部圧力を予め設定した大きさに回復させることができる。また、圧力調整バルブは、圧力調整バルブを開いてゴム筒部25bの内部と外部空間とを連通させることによってゴム筒部25b内の高圧流体(圧縮空気)を放出可能に形成されている。これにより、ゴム筒部25bの内部圧力を一定の大きさに維持することが可能となる。
【0081】
反転ガイド20の第2ガイド部22は、第2ガイド本体22aと、第2ガイド本体22aの先端部に切り離し可能に接続されるとともに、反転ゴム部材48の他端部を固定する第2ガイド先端部22bとを有する。第2ガイド本体22aは、略90°に折れ曲がった筒状に形成されている。なお、第2ガイド本体22aは、屈曲部を設けずに、直線状に形成されていてもよい。第2ガイド先端部22bは、内径が先端に向けて漸減するテーパー部と、テーパー部から延びる細筒部とを有する。第2ガイド先端部22bの細筒部に、反転ゴム部材48の他端部が細筒部の内側から外周面に折り返されるようにして固定される。
【0082】
反転ガイド20の第3ガイド部23は、円筒状に形成されている。この第3ガイド部23は、第2ガイド先端部22bを外側から覆い隠して、第2ガイド本体22aに切り離し可能に接続される。第3ガイド部23の中間部には補助供給部23aが設けられている。この補助供給部23aは、図示しない加圧流体供給部が接続されており、補助供給部23aを介して第3ガイド部23内に高圧流体(圧縮空気)を供給可能である。また、第3ガイド部23の先端部には、第2フィルム部材47の他端部が第3ガイド部23の内側から外周面に折り返されるようにして固定される。
【0083】
上述のような反転ガイド20が接続される反転機10に対し、互いに接続されている補修部材45及び反転ゴム部材48を装着する。この場合、反転ロープ42とその反転ロープ42に接続されている反転ゴム部材48及び補修部材45とを反転機10の巻芯部16に順番に巻き付けて収容する。それとともに、
図5及び
図6に示すように、反転ゴム部材48の他端部を第2ガイド部22の第2ガイド先端部22bに気密に固定する。更に、補修部材45の他端部を第3ガイド部23の先端部に気密に固定する。なお、
図5及び
図6では、反転ロープ42、反転ゴム部材48、補修部材45のそれぞれの接続を判り易くするために、実際には反転機10の巻芯部16に巻き付けられている部分が、反転ガイド20内に巻き出された状態で示されている。
【0084】
また、補修部材45及び反転ゴム部材48の装着を行うとともに、排水取付管1に既に挿通させている第1フィルム部材41の端部(第1フィルム部材41の他端部)を、第3ガイド部23の先端部の外周面に、第3ガイド部23の先端部に固定した補修部材45を外側から被覆するように固定する。
【0085】
補修部材45及び反転ゴム部材48の装着が完了した後、反転機10に供給される高圧流体を利用して、補修部材45及び反転ゴム部材48を反転させながら送り出して、補修部材45を排水取付管1に挿通させる挿通作業を行う。
この挿通作業では、先ず、補助供給部23aを介して圧縮空気を第3ガイド部23内に供給することにより、補修部材45と反転ゴム部材48との間に圧縮空気が流入する。それとともに、反転機10の高圧流体供給部14から反転機本体部11の内部空間に高圧流体を供給するとともに、反転機10の操作部15を回転させることによって巻芯部16に巻き付けられている補修部材45及び反転ゴム部材48と反転ロープ42とを順番に徐々に巻き出す。これによって、補修部材45及び反転ゴム部材48を反転ガイド20から反転させながら送り出して、基端部が第3ガイド部23の先端部に固定された第1フィルム部材41内に挿入することができる。
【0086】
このとき、反転ガイド20から送り出された補修部材45及び反転ゴム部材48の先端部には、補修部材45と反転ゴム部材48との間に圧縮空気が閉じ込められることによって先導部49が形成される。なお、反転ゴム部材48が反転しながら反転ガイド20内を進み、反転ゴム部材48が第3ガイド部23に設けた補助供給部23aの位置を越えたときに、補助供給部23aからの高圧流体(圧縮空気)の供給を停止させることが好ましい。補助供給部23aからの供給を停止しても、補修部材45と反転ゴム部材48との間に圧縮空気が閉じ込められるため、先導部49が形成されている状態を維持できる。なお本発明では、補修部材45の先端部に上述のような圧縮空気による先導部49を形成せずに、補修部材45及び反転ゴム部材48を第1フィルム部材41内に挿入してもよい。
【0087】
補修部材45及び反転ゴム部材48を第1フィルム部材41内に挿入した後、反転機本体部11への高圧流体の供給を続けることによって、補修部材45及び反転ゴム部材48は、第1フィルム部材41によって案内されて排水取付管1内に進入し、排水取付管1内を下水道本管3に向けて進むことができる。
【0088】
このとき、
図2に示したように、排水取付管1に管路が屈曲する屈曲部若しくは湾曲する湾曲部が設けられていても、又は、排水取付管1の一部に継目のずれや開離が生じていても、反転ゴム部材48内に圧縮空気が連続的に供給されるとともに、排水取付管1内を進む補修部材45の先端部に上述した先導部49が設けられているため、排水取付管1の屈曲部若しくは湾曲部、又は継目のずれや開離を越えて下水道本管3に向けて円滑に進むことができる。また、補修部材45は、反転ゴム部材48内の圧縮空気によって押圧されながら排水取付管1内を進むため、補修部材45に皺が生じ難く、また、補修部材45に皺が生じても、補修部材45の内周面を、圧縮空気の圧力によって流水障害が生じない程度に滑らかにすることができる。
【0089】
補修部材45及び反転ゴム部材48を、第1フィルム部材41内で排水取付管1に沿って更に奥に進行させることによって、補修部材45を排水取付管1の全体に挿通させることができる。また、先導部49内に閉じ込められている圧縮空気と、反転ゴム部材48内に供給された圧縮空気とによって、補修部材45を、第1フィルム部材41を介して排水取付管1の内周面に圧接させることができる。
【0090】
補修部材45を排水取付管1の全体に挿通させた後、反転ガイド20のバルブ部25を操作して、バルブ部25の圧接板25dによって第1ガイド部21と第2ガイド部22との間の流路を遮断する。その後、反転機10側の圧縮空気を抜くとともに、反転機10の巻芯部16から反転ロープ42を取り外す。更に、反転機10の接続部12と反転ガイド20の第1ガイド部21との接続を解除する。これにより、反転機10を反転ガイド20から切り離して、例えば次の現場に移動させて使用することができる。また、反転ガイド20のバルブ部25で上記遮断を行った後も、バルブ部25に設けた圧力計25fと図示しない圧力調整バルブとを用いることによって、反転ゴム部材48内の圧力を一定の大きさに制御できる。
【0091】
そして、補修部材45を排水取付管1の全体に挿通させた状態で、反転ゴム部材48内の圧力を一定の大きさに所定時間維持することによって、補修部材45の基布部46に含浸させている合成樹脂を硬化させる。これによって、硬化した基布部46と、基布部46の外側に配される第1フィルム部材41とを有する補修管を、排水取付管1の内周面に密接させて形成できる。
【0092】
このようにして形成される補修管は、排水取付管1の長さ方向の全体に亘って継ぎ目のない連続した管体として形成される。また、補修管の内周面は、反転ゴム部材48によって押圧された状態で形成されるため、段差が形成されない又は段差が小さい滑らかな面に仕上げられる。更に、補修管の硬化した基布部46の外側には第1フィルム部材41が配されているため、補修管からの漏水並びに補修管内への地下水及び土砂の流入を効果的に防止できる。また、この第1フィルム部材41によって、硬化した基布部46を外側から保護できる。
【0093】
合成樹脂の硬化後、排水取付管1に密接する補修管から反転ゴム部材48と第2フィルム部材47とを引き抜き、更に、排水取付管1及び補修管における管口部の処理(管口仕上げ)を行う。その後、排水取付管1の補修状態を調査して確認する。これによって、排水取付管1の補修作業が完了する。
【0094】
以上のような本実施形態における排水取付管1の補修方法では、補修部材45を、合成樹脂を含浸させる基布部46と、基布部46を被覆する第2フィルム部材47とを有する2層構造の筒状体により形成するため、例えば補修部材が3層構造の筒状体により形成される従来の特許文献1の補修方法に比べて、合成樹脂を基布部46の全体に均一に且つ短時間で含浸させることができる。それとともに、合成樹脂を含浸させた基布部46に、空気の入り込みや合成樹脂の含浸斑などが発生することを抑制できる。更にそれによって、基布部46に合成樹脂を含浸させる含浸作業を容易に且つ短時間で行うことができる。
【0095】
また本実施形態では、補修部材45及び反転ゴム部材48を排水取付管1内に導入する前に、円筒状の第1フィルム部材41を排水取付管1に予め挿通させる。このため、その排水取付管1に対して補修作業を行えるか否かの確認を事前に行うことができ、その結果、補修作業の効率化を図ることができる。
【0096】
更に本実施形態では、補修部材45及び反転ゴム部材48を反転させながら送り出すときに、上述したように筒状の第1フィルム部材41内に挿入することによって、第1フィルム部材41で補修部材45及び反転ゴム部材48を排水取付管1内に案内(誘導)できる。このため、本実施形態では、例えば特許文献1の場合のように反転機に接続する反転ガイドの先端部を、排水取付管1の入口部の近傍に配置する必要がなくなるため、反転機10及び反転ガイド20の設置作業や準備作業をより簡単に行うことができるという効果も得られる。
従って、本実施形態では、排水取付管1の長さ方向の全体に、非開削で補修管を簡便に且つ安定して形成できるため、排水取付管1の補修を安定した品質で、また、従来よりも簡便に行うことができる。
【0097】
なお、本実施形態の場合、反転機10に供給する高圧流体、反転ガイド20の補助供給部23aから第3ガイド部23内に供給する高圧流体、及び、バルブ部25の圧力調整バルブから供給する高圧流体には、常温の圧縮空気を用いている。しかし本発明では、高圧流体として、空気以外に水等の液体を用いることが可能である。また、高圧流体として、気体(空気若しくはガス)又は液体(水)を加熱して用いることも可能である。
【0098】
更に本発明では、上述したゴム筒部25b及び圧接板25dを備えたバルブ部25に代えて、例えば慣用の管路開閉型バルブを用いてもよい。この場合、管路開閉型バルブにおけるシッター部の反転ロープ42に当接する部分にゴム製のシールリップ等を付設することによって流体漏れを防止できる。
【0099】
また、補修部材45の基布部46には、織布、編布、不織布等のシート状の適切な部材を任意に選択して使用することが可能である。また、基布部46は、シート状の1つの部材を円筒状に形成すること、又はシート状の複数の部材を重ね合わせて円筒状に形成することによって作製されていてもよい。
【0100】
更に、反転機10の巻芯部16に巻き付ける反転ロープ42としては、例えばバルブ部25において圧接板25dでゴム筒部25bを押圧して遮断したときに、ゴム筒部25bに挟まれる反転ロープ42の周辺から空気が漏れることを抑制するため、例えば軟質プラスチック被覆層を有するロープ又はゴム被覆繊維ロープを用いることも可能である。
【0101】
本発明の補修方法が適用される排水取付管1には、上述した実施形態のような宅内汚水桝2と下水道本管3との間に埋設される排水取付管1だけでなく、工場や家庭内の雨水桝から延びる排水取付管、又は工場の排水溜めから延びる排水取付管などのように、地中に埋設されているとともに、地表から掘られた水溜め部に連結される種々の排水取付管が含まれる。
【解決手段】本発明の補修方法は、反転機(10)を用いて筒状の第1フィルム部材(41)を反転させながら送り出すことにより、第1フィルム部材(41)を排水取付管(1)の全体に挿通させること、合成樹脂が含浸した基布部(46)と第2フィルム部材(47)とを備える補修部材(45)を準備すること、補修部材(45)の一端部と反転ゴム部材(48)の一端部とを接続すること、反転機(10)を用いて補修部材(45)及び反転ゴム部材(48)を反転させながら送り出すことにより第1フィルム部材(41)の内側に挿入すること、補修部材(45)及び反転ゴム部材(48)を第1フィルム部材(41)内に進入させて排水取付管(1)の全体に挿通させること、合成樹脂を硬化させること、及び、反転ゴム部材(48)及び第2フィルム部材(47)を引き抜くことを含むことを特徴とする。