(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明のフィルタベント装置の実施例を、図面を用いて説明する。
【0016】
<実施例1>
図1は本発明の実施例1のフィルタベント装置の構成を示す模式図である。
【0017】
図1において、フィルタベント装置30は、原子炉圧力容器4Aが破損するなどの過酷事故時において、ドライウェル31ならびにウェットウェル32が内在する格納容器4内の圧力を減少させるために格納容器4内の気体を大気放出する際に気体に含まれる放射性物質を極力除去するものである。
【0018】
本実施例におけるフィルタベント装置30の各構成機器は、
図1に示すように、内部にスクラビング水2および放射性物質除去用の金属フィルタ10を有するフィルタベント容器1、格納容器4に連結したドライウェルベント配管7やウェットウェルベント配管8、一端がドライウェルベント配管7およびウェットウェルベント配管8に連結され、他端がフィルタベント容器1内のスクラビング水2内に導入された入口配管9、フィルタベント容器1内の金属フィルタ10に連結する出口配管11、を備えている。
【0019】
フィルタベント容器1は放射性物質であるエアロゾル、無機よう素、有機よう素の捕集に用いられる役割を持つ。
【0020】
図1に示すように、フィルタベント容器1の内部にはスクラビング水2が設置されている。このスクラビング水2の上層には、スクラビング水2と混じらずに、放射性物質である有機よう素が捕集可能な不揮発性液体3が設置されている。
【0021】
個々のプラント出力や事故シナリオにより異なるが、事故時に発生する放射性物質のうち、原子炉圧力容器4Aが破損するような燃料破損が伴うシビアアクシデント時では、1kg程度の有機よう素が発生すると評価されており、有機よう素としては主によう化メチルが発生すると評価されている。
【0022】
そこで、本実施例では、有機よう素を捕集する性質を持つ不揮発性液体3として、イオン液体を用いる。このイオン液体の種類としては、疎水性で、また水よりも上層に位置するように、比較的密度の低いトリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムクロリドなどがある。
【0023】
なお、不揮発性液体3はイオン液体に限られず、同様に耐熱性、耐放射性のある界面活性剤も用いることができ、また、イオン液体と界面活性剤との混合液体であっても、同じような効果が期待できる。
【0024】
事故時には比較的温度の高いガスがフィルタベント容器1に流入するため、有機よう素はガス状であると推定される。ガス状の有機よう素を捕集するためには、気泡内での有機よう素の拡散泳動、熱泳動、ブラウン拡散、対流を利用しイオン液体と接触させ溶解させるため、不揮発性液体3は、気泡の液体中での滞留時間を稼ぐように設けることが望ましい。
【0025】
ここで、本実施例における不揮発性液体3は、常温(大気の標準的な温度であり、15〜25℃の範囲)・常圧(大気圧)で液相であり、かつ200℃以上の高温・高圧(大気圧より高圧)でも液相である液体とする。
【0026】
次に、
図1を用いて本実施例のフィルタベント装置30の動作原理を説明する。
【0027】
事故時に格納容器4へ放出された放射性物質は、隔離弁5または隔離弁6を開くことで格納容器4に接続されるドライウェルベント配管7またはウェットウェルベント配管8へ流入する。
【0028】
その後、放射性物質は入口配管9を経由してフィルタベント容器1内のスクラビング水2に流入し、スクラビング水2によって放射性物質のうちエアロゾルおよび無機よう素が捕集される。
【0029】
スクラビング水2で捕集されなかった有機よう素はスクラビング水2の上層に位置する不揮発性液体3によって捕集される。
【0030】
スクラビング水2および不揮発性液体3で捕集しきれなかったエアロゾルは下流の金属フィルタ10によってさらに捕集され、出口配管11を通り排気筒12によって放射性物質が充分に除去されたガスが外部に放出される。
【0031】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0032】
上述した本発明の実施例1の放射性物質を除去するためのフィルタベント装置30は、内部にスクラビング水2および放射性物質除去用の金属フィルタ10を有するフィルタベント容器1と、格納容器4に連結したドライウェルベント配管7,ウェットウェルベント配管8と、一端がドライウェルベント配管7,ウェットウェルベント配管8に連結され、他端がフィルタベント容器1内のスクラビング水2内に導入された入口配管9と、フィルタベント容器1内の金属フィルタ10に連結する出口配管11と、フィルタベント装置30内に配置され、有機よう素を捕集することが可能な不揮発性液体3と、を備えた。
【0033】
このように、フィルタベント装置30内に、有機よう素の捕集材として、有機よう素を捕集することが可能な不揮発性液体3を設置するのみで、格納容器4から放出される放射性物質のうち、特に有機よう素を効率的に捕集することができる。よって、上述した特許文献2に記載された技術のように有機よう素の除去系統が複雑化することなく、簡易的な設計で効率的に捕集することができ、処理コストが高くなることを防ぐこともできる。また、大掛かりな装置を導入する必要がないため、現存するフィルタベント装置に適用する際にも、フィルタベント装置の静的システムを維持することができる、との利点を有する。
【0034】
また、不揮発性液体3は、スクラビング水2と混合せず、スクラビング水2の上層部に位置することで、スクラビング水2でエアロゾルや無機よう素などを捕集した後に不揮発性液体3により有機よう素を捕集させることができるため、不揮発性液体3には比較的濃度の高い有機よう素を流入させることができる。そのため、不揮発性液体3での有機よう素の捕集効率を高く維持することができ、より効果的な有機よう素の捕集が可能となる。
【0035】
更に、不揮発性液体3は、イオン液体、界面活性剤のうち少なくともいずれか1種を含む液体である。不揮発性液体3のうち、イオン液体は一般産業向けに実用化されている。イオン液体の特徴は不揮発性であり、事故時にフィルタベント装置30に流入するとされるガス温度である約200℃という条件でも十分な耐熱性を持つ。また、イオン液体は耐放射性にも優れ、かつ放射性物質などの基質をイオン液体中に高い濃度で溶解(捕集)する性質を持つ。特に有機よう素は水に難溶で高揮発性の物質であるため、これを捕集するための有力な不揮発性の液体としてイオン液体を使用することにより、捕集効率の更なる効率化を図ることができる。同様に、不揮発性液体3には界面活性剤も好適に適用することができ、イオン液体と同様の効果が得られる。
【0036】
また、不揮発性液体3は、常温・常圧で液相であり、かつ200℃以上でも液相である液体であることで、事故時においても、不揮発性液体3を安定して液相で存在させて、有機よう素を十分に捕集させることができる。
【0037】
<実施例2>
本発明の実施例2のフィルタベント装置を
図2を用いて説明する。
図1と同じ構成には同一の符号を示し、説明は省略する。以下の実施例においても同様とする。
【0038】
図2に示すように、本実施例のフィルタベント装置30Aは、フィルタベント容器1A内のスクラビング水2の上層部の位置に、格納容器4内から導入される気体と不揮発性液体3との接触時間を増加させるための流路絞り板13を備えることを特徴とするものである。
【0039】
その他の構成・動作は前述した実施例1のフィルタベント装置30とほぼ同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0040】
本発明の実施例2のフィルタベント装置30Aにおいても、前述した実施例1のフィルタベント装置30とほぼ同様な効果が得られる。
【0041】
また、フィルタベント容器1Aは、スクラビング水2の上層部に、格納容器4内から導入される気体と不揮発性液体3との接触時間を増加させるための流路絞り板13を有する。この流路絞り板13により、不揮発性液体3の量を多くすることなく、不揮発性液体3部分の水路長を長くすることができ、流入する気泡の不揮発性液体3内の滞留時間を実施例1に比べてより稼ぐことができる。従って、より効果的な有機よう素の捕集が可能となる。
【0042】
<実施例3>
本発明の実施例3のフィルタベント装置を
図3を用いて説明する。
【0043】
図3に示すように、本実施例のフィルタベント装置30Bは、フィルタベント容器1Bの内部にスクラビング水2が設置されており、このスクラビング水2の下層に、スクラビング水2と混じらずに、放射性物質である有機よう素が捕集可能な不揮発性液体3Bが設置されている。このフィルタベント容器1Bも、実施例1のフィルタベント容器1と同様に、放射性物質であるエアロゾル、無機よう素、有機よう素の捕集に用いられる役割を持つ。
【0044】
有機よう素を捕集する性質を持つ不揮発性液体3Bとしてはイオン液体が好適に用いられる。不揮発性液体3Bの種類としては、疎水性で、水よりも下層に位置する比較的密度の高い1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドや1−メチル−1−プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドなどがある。
【0045】
事故時には比較的温度の高いガスがフィルタベント容器1Bに流入するため有機よう素はガス状であると推定される。ガス状の有機よう素を捕集するためには、気泡内での有機よう素の拡散泳動、熱泳動、ブラウン拡散、対流を利用してイオン液体と接触させ溶解させるため、その気泡のイオン液体中での滞留時間を稼ぐことが望ましい。
【0046】
また、本実施例では不揮発性液体3Bとして、イオン液体を選定したが、同様に耐熱性、耐放射性のある界面活性剤や、これらイオン液体と界面活性剤との混合液体でも同じ効果が期待できる。
【0047】
本実施例のフィルタベント装置30Bでは、事故時に格納容器4へ放出された放射性物質は隔離弁5または隔離弁6を開くことで格納容器4に接続されるドライウェルベント配管7またはウェットウェルベント配管8へ流入する。
【0048】
その後、放射性物質は入口配管9を経由してフィルタベント容器1B内に流入し、最初に、フィルタベント容器1B内の不揮発性液体3Bによって放射性物質のうち有機よう素が重点的に捕集される。
【0049】
不揮発性液体3Bで捕集されなかったエアロゾルと無機よう素は不揮発性液体3の上層に位置するスクラビング水2によって捕集される。
【0050】
不揮発性液体3Bおよびスクラビング水2で捕集しきれなかったエアロゾルは下流の金属フィルタ10によって捕集され、出口配管11を通り排気筒12によって放射性物質が除去されたガスが外部に放出される。
【0051】
その他の構成・動作は前述した実施例1のフィルタベント装置30とほぼ同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0052】
本発明の実施例3のフィルタベント装置30Bにおいても、前述した実施例1のフィルタベント装置30とほぼ同様な効果が得られる。
【0053】
<実施例4>
本発明の実施例4のフィルタベント装置を
図4を用いて説明する。
【0054】
図4に示すように、本実施例のフィルタベント装置30Cは、フィルタベント容器1Cの内部にスクラビング水と不揮発性液体とが混合された混合型スクラビング水14が設置されている。このフィルタベント容器1Cも、放射性物質であるエアロゾル、無機よう素、有機よう素の捕集に用いられる役割を持つ。
【0055】
有機よう素を捕集する性質を持つ不揮発性液体として、イオン液体が好適である。このイオン液体の種類としては、親水性で、かつ水と混合する1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヨージドや1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロほう酸塩などがある。
【0056】
また、不揮発性液体は、イオン液体に限られず、同様に耐熱性、耐放射性のある界面活性剤や、イオン液体と界面活性剤との混合液体でも同じ効果が期待できる。
【0057】
本実施例のフィルタベント装置30Cでは、事故時に格納容器4へ放出された放射性物質は隔離弁5または隔離弁6を開くことで格納容器4に接続されるドライウェルベント配管7またはウェットウェルベント配管8へ流入する。
【0058】
放射性物質は入口配管9を経由してフィルタベント容器1C内に流入し、フィルタベント容器1C内の混合型スクラビング水14によって放射性物質であるエアロゾル、無機よう素および有機よう素が捕集される。
【0059】
混合型スクラビング水14で捕集しきれなかったエアロゾルは下流の金属フィルタ10によってさらに捕集され、出口配管11を通り排気筒12によって放射性物質が除去されたガスが外部に放出される。
【0060】
その他の構成・動作は前述した実施例1のフィルタベント装置30とほぼ同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0061】
本発明の実施例4のフィルタベント装置30Cにおいても、前述した実施例1のフィルタベント装置30とほぼ同様な効果が得られる。
【0062】
また、不揮発性液体は、スクラビング水と混合した混合型スクラビング水14として存在していることにより、液体中での気泡の滞留時間を十分に稼ぐことのできる構成となっている。このため、特に有機よう素の捕集効率を十分に高めることができる。
【0063】
<実施例5>
本発明の実施例5のフィルタベント装置を
図5および
図6を用いて説明する。
【0064】
図5に示すように、本実施例のフィルタベント装置30Dは、フィルタベント容器1Dの内部にスクラビング水2が設置されている。スクラビング水2の下流には金属フィルタ10が設置され、金属フィルタ10の下流、出口配管11の上流には不揮発性液体3Dが収納された有機よう素捕集容器15Aが設置されている。このフィルタベント容器1Dも、放射性物質であるエアロゾル、無機よう素、有機よう素の捕集に用いられる役割を持つ。
【0065】
本実施例では、有機よう素を捕集する性質を持つ不揮発性液体3Dとして、イオン液体を用いた。イオン液体の種類としては疎水性や親水性、または密度に関わらず実施例1―4に記載したイオン液体を用いてもよい。
【0066】
本実施例では、実施例1等と異なり、スクラビング水2および金属フィルタ10でエアロゾルや無機よう素などが捕集された後に不揮発性液体3Dに流入するため、不揮発性液体3D部には実施例1に比べてより濃度の高い有機よう素が流入する。そのため、不揮発性液体3Dでの捕集効率を高く維持することができる。
【0067】
また、事故時には比較的温度の高いガスがフィルタベント容器1に流入するため、有機よう素はガス状であると推定される。ガス状の有機よう素を捕集するためには、気泡内での有機よう素の拡散泳動、熱泳動、ブラウン拡散、対流を利用しイオン液体と接触させ溶解させるため、その気泡のイオン液体中での滞留時間を稼ぐことが好ましい。
【0068】
そこで、本実施例のフィルタベント装置30Dは、
図6に示すように、有機よう素捕集容器15Aに流路板16および多孔板17が設けられている。流路板16により不揮発性液体3中のガスの滞留時間を稼ぐことができ、多孔板17を設けることにより気泡のサイズを小さくして不揮発性液体3Dとの接触面積を大きくとることで有機よう素の捕集効率を高めることができる。
【0069】
多孔板17としては金属のメッシュシートやパンチングメタル、多孔質セラミック層などが有効である。
【0070】
また、流路板16と多孔板17は複数個設けることも可能である。
【0071】
流路板16は、螺旋状の螺旋板とすることも可能である。
【0072】
また、本実施例でも、不揮発性液体3Dとして、イオン液体を選定したが、同様に耐熱性、耐放射性のある界面活性剤や、これらイオン液体と界面活性剤との混合液体でも同じ効果が期待できる。
【0073】
次に、
図5,6を用いて本実施例のフィルタベント装置30Dの動作原理を説明する。
【0074】
事故時に格納容器4へ放出された放射性物質は隔離弁5または隔離弁6を開くことで格納容器4に接続されるドライウェルベント配管7またはウェットウェルベント配管8へ流入する。
【0075】
放射性物質は入口配管9を経由してフィルタベント容器1D内に流入し、スクラビング水2によって放射性物質のうちエアロゾルおよび無機よう素が捕集される。
【0076】
次いで、スクラビング水2の下流に設置される金属フィルタ10でさらにエアロゾルが捕集され、その後、その下流に設置された有機よう素捕集容器15Aに収納された不揮発性液体3Dによって有機よう素が捕集される。
【0077】
このように放射性物質が除去されたガスが出口配管11を通り排気筒12によって放出される。
【0078】
その他の構成・動作は前述した実施例1のフィルタベント装置30とほぼ同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0079】
本発明の実施例5のフィルタベント装置30Dにおいても、前述した実施例1のフィルタベント装置30とほぼ同様な効果が得られる。
【0080】
また、不揮発性液体3が収納された有機よう素捕集容器15Aを更に備え、この有機よう素捕集容器15Aは、格納容器4内から導入される気体と不揮発性液体3との接触を増加させるための多孔板17と、格納容器4内から導入される気体と不揮発性液体3との接触時間を増加させるための流路板16または螺旋板とを有することで、スクラビング水2および金属フィルタ10でエアロゾルや無機よう素などを捕集した後のより有機よう素の濃度の高い気泡が不揮発性液体3Dに流入する。このため、不揮発性液体3Dでの有機よう素の捕集効率をさらに高く維持することができる。
【0081】
<実施例6>
本発明の実施例6のフィルタベント装置を
図7を用いて説明する。
【0082】
図7に示すように、本実施例のフィルタベント装置30Eは、
図5に示される実施例5のフィルタベント装置30Dに対して、不揮発性液体3Eが収容された有機よう素捕集容器15Bがフィルタベント容器1Eの外部に設置されたことを特徴とする。
【0083】
その他の構成・動作は前述した実施例5のフィルタベント装置30Dとほぼ同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0084】
本発明の実施例6のフィルタベント装置30Eにおいても、前述した実施例5のフィルタベント装置30Dとほぼ同様な効果が得られる。
【0085】
また、本実施例では、フィルタベント容器1Eを実施例5のフィルタベント容器1Dに比べて小型化することができる。実施例5のフィルタベント装置30Dと実施例6のフィルタベント装置30Eとは、原子炉建屋などの配置に応じて適宜選択することができる。
【0086】
<実施例7>
本発明の実施例7のフィルタベント装置を
図8を用いて説明する。
【0087】
図8に示すように、本実施例のフィルタベント装置30Fは、フィルタベント容器1Fの内部にスクラビング水2が設置されている。スクラビング水2の下流には金属フィルタ10が設置されている。
【0088】
本実施例のフィルタベント装置30Fでは、不揮発性液体3が収納された保管容器18が注入配管19を経由しフィルタベント容器1Fに接続されており、注入配管19には弁20が設置されている。このフィルタベント容器1Fも、放射性物質であるエアロゾル、無機よう素、有機よう素の捕集に用いられる役割を持つ。
【0089】
保管容器18は、フィルタベント容器1Fの外に設置されており、通常時は不揮発性液体3Fを保持してスクラビング水2と不揮発性液体3Fとを別個に保管する。
【0090】
本実施例でも、有機よう素を捕集する性質を持つ不揮発性液体3Fとしてイオン液体を用いた。イオン液体の種類としては疎水性であり、密度に関わらず実施例1,3に記載したイオン液体を用いることができる。密度の低い疎水性イオン液体を用いた場合、弁20を開いてイオン液体をフィルタベント容器1Fに注入する。密度の高い疎水性イオン液体を用いた場合も、弁20を開いてイオン液体をフィルタベント容器1Fに注入する。
【0091】
また、本実施例でも不揮発性液体3として疎水性のイオン液体を選定したが、親水性のイオン液体であってもよく、更に、耐熱性、耐放射性のある界面活性剤や、イオン液体と界面活性剤との混合液体でも同じ効果が期待できる。
【0092】
次に、
図8を用いて本実施例のフィルタベント装置30Fの動作原理を説明する。
【0093】
事故時に格納容器4へ放出された放射性物質は隔離弁5または隔離弁6を開くことで格納容器4に接続されるドライウェルベント配管7またはウェットウェルベント配管8へ流入する。
【0094】
本実施例のフィルタベント装置30Fでは、この隔離弁5、6を開く前に、弁20を開き、保管容器18に収納された不揮発性液体3Fをフィルタベント容器1Fに注入する。注入方法は水頭圧による注入であっても窒素圧をかけて注入する方法でも手段を問わない。
【0095】
その後、放射性物質は入口配管9を経由してフィルタベント容器1F内に流入し、実施例1,3等と同様にスクラビング水2、不揮発性液体3F、金属フィルタ10によって放射性物質が捕集される。このように放射性物質が除去されたガスが出口配管11を通り排気筒12によって放出される。
【0096】
その他の構成・動作は前述した実施例1,3のフィルタベント装置30,30Bとほぼ同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0097】
本発明の実施例7のフィルタベント装置30Fにおいても、前述した実施例1,3のフィルタベント装置30,30Bとほぼ同様な効果が得られる。
【0098】
また、フィルタベント装置30Fは、フィルタベント容器1Fの外に設置された、不揮発性液体3Fが収納された保管容器18を更に備えたことにより、使用する不揮発性液体3Fの密度によって、各々、実施例1,3で生じる各効果を得ることができる。また、不揮発性液体3の保管管理が実施例1,3に比べて容易であり、不揮発性液体3Fへのわずかな水分吸収も防ぐことが可能である。
【0099】
<その他>
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。