【文献】
Becker, G.; Beck, H. P.,Syntheses and properties of acylphosphines. IV. Molecular and crystal structure of aluminum tris(dibenzoylphosphide),Zeitschrift fuer Anorganische und Allgemeine Chemie,1977年,430,91-109
【文献】
Weber, Lothar; Bungardt, Dagmar,Transition-metal-substituted acylphosphines and phosphaalkenes. XI. Phosphaalkenyl-, disilylphosphido-, and diacylphosphido complexes of dicarbonyl(pentamethylcyclopentadienyl)osmium. Study of [(η5-C5Me5)Os(CO)2]2,Journal of Organometallic Chemistry,1986年,311(3),269-80
【文献】
Madadi, Masoomeh; Khalili Najafabadi, Bahareh; Fard, Mahmood Azizpoor; Corrigan, John F.,NHC-Stabilized Bis(trimethylsilyl)phosphido Complexes of PdII and NiII,European Journal of Inorganic Chemistry ,2015年,2015(19),3094-3101
【文献】
Becker, G.; Roessler, M.; Uhl, G.,Acyl and alkylidenephosphines. XX. Bis(2,2-dimethylpropionyl)phosphine and bis(2,2-dimethylpropionyl) phosphides,Zeitschrift fuer Anorganische und Allgemeine Chemie,1982年,495,73-88
【文献】
Weber, Lothar; Reizig, Klaus; Boese, Roland,Transition metal substituted acyl phosphines and phosphaalkenes. 5. Synthesis and structure of (C5Me5)(CO)2RuP[C(O)(tert-Bu)]2, the first diacylphosphido complex with metal-phosphorus coordination,Organometallics,1985年,4(10),1890-1
【文献】
Weber, Lothar; Reizig, Klaus; Frebel, Matthias,Transition-metal-substituted acylphosphanes and phosphaalkenes. IX. The synthesis of phosphaalkenyl-, mono- and diacylphosphido complexes from the reaction of [bis(trimethylsilyl)phosphido] dicarbonyl(pentamethylcyclopentadienyl) iron and carbonyl chlorides,Chemische Berichte ,1986年,119(6),1857-67
【文献】
Ionkin, Alex S.; Wang, Ying; Marshall, William J.; Petrov, Viacheslav A.,Synthesis, structural characterization, and initial electroluminescent properties of bis-cycloiridiated complexes of 2-(3,5-bis(trifluoromethyl)phenyl)-4-methylpyridine,Journal of Organometallic Chemistry,2007年,692(22),4809-4827
【文献】
Nief, Francois; Mercier, Francois; Mathey, Francois,Reactions of (phosphine)pentacarbonyltungsten. Synthesis of primary and secondary phosphines in the coordination sphere of tungsten,Journal of Organometallic Chemistry ,1987年,328(3),349-55
【文献】
Manzoni de Oliveira, Gelson; Seiffert, Milton; Lorenz, Ingo-Peter,Reactions of Cp'(CO)2MnPPh2H with CH3COCl and CH3S(O)2Cl in THF/triethylamine: evidence of the first complex stabilization of a phosphorus homolog of the sulfonamides,Inorganica Chimica Acta ,1999年,288(1),101-105
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
式(I)の化合物として、ベンゾイルホスフィン、メシトイルホスフィン、ビスメシトイルホスフィン、ジベンゾイルホスフィン、ジクロロアルミニウム−ビスメシトイルホスフィド、ジフルオロボリル−ビスメシトイルホスフィド、ジクロロアルミニウム−ビスベンゾイルホスフィド、ジフルオロボリル−ビスベンゾイルホスフィド、クロロアルミニウム−ビス(ビスメシトイルホスフィド)、クロロアルミニウム−ビス(ビスベンゾイル−ホスフィド)、クロロボリル−ビス(ビスメシトイルホスフィド)、クロロボリル−ビス(ビスベンゾイル−ホスフィド)、アルミニウム−トリス(ビスメシトイルホスフィド)、アルミニウム−トリス(ビスナフトイルホスフィド)および/またはアルミニウム−トリス(ビスベンゾイルホスフィド)が調製される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
光開始剤、特にモノおよびビスアシルホスフィンオキシド、特にさらに官能化された置換基を有するものは、光誘起開裂が起こる波長に関して調整可能であるか、または増感剤、安定剤もしくは界面活性剤などの他の添加剤に結合可能である、光開始剤が非常に望ましいので、商業的に大きな注目を集めている。
【0003】
モノおよびビスアシルホスフィンオキシドの工業用途には、着色および透明コーティング、接着剤、インク、フォトレジスト、印刷版、および歯科用修復材料の製造が含まれる。
【0004】
しかしながら、対応する酸化物のための標準的な前駆体物質としてのモノおよびビスアシルホスフィンの合成は、高度に反応性のホスファンの使用を必要とし、したがって工業的規模で管理することが困難である。具体的には、ビスアシルホスフィンの公知の合成に関して、第一級ホスファン、RPH
2などの有害化学物質が使用される。
【0005】
さらに、この手法は、R基として単純なアルキル基またはアリール基以外の官能基をリン中心に結合させることができない。
【0006】
現在、置換ビスアシルホスフィンへの唯一の工業的に実行可能な経路は、第1のステップとして、金属である二水素ホスファイド(dihydrogenphosphide)M(PH
2)のアシル化によって得られる中間体としてのビスアシルホスフィン、HP(COR)
2の合成を必要とする。M(PH
2)は、リチウム、ナトリウム、またはカリウムなどの強還元性金属、および触媒量のナフタレンと反応させ、続いて、得られた三ナトリウムホスファイド(trisodium phosphide)(Na
3P)をtert−ブタノールでプロトン化することによってリン元素から得ることができる(特許文献1を参照のこと)。
【0007】
次いで、得られたビスアシルホスフィン、HP(COR)
2を、官能化ハロ化合物(特許文献1)または特許文献2に開示されているようなアクリレートもしくは他の求電子剤とさらに反応させて、官能化ビスアシルホスフィンRP(COR)
2を得ることができ、次いでこれは簡単な酸化によって対応するビスアシルホスフィンオキシドO=PR(COR)
2に変換される。同様の反応順序が特許文献3および特許文献4に開示されている。
【0008】
あるいは、特許文献5は、モノおよびビスアシルホスフィンならびにそれらのそれぞれの酸化物および硫化物を調製する方法を開示している。この方法は、適切な場合、触媒の存在下で、置換モノハロホスファンまたはジハロホスファンを、アルカリ金属またはマグネシウムとリチウムの組み合わせと反応させるステップと、得られた金属化ホスファンをカルボン酸ハロゲン化物とさらに反応させるステップと、最終的に、得られたモノまたはビスアシルホスファンを硫黄または酸素移動酸化剤で酸化するステップとを含む。
【0009】
さらに、特許文献6から、最初に、プロトン源の存在下にて溶媒中でモノハロホスファンまたはジハロホスファンをアルカリ金属と反応させ、次いでそれによって得られたホスファンをカルボン酸ハロゲン化物と反応させるステップを含む方法によって置換ビスアシルホスフィンを調製することが知られている。
【0010】
特許文献7は、最初に、非プロトン性溶媒中の第三級脂肪族アミンまたは芳香族アミンの存在下で、圧力下で20〜200℃の温度にて、モノクロロまたはジクロロホスフィンを水素で触媒により還元して、対応するハロゲンを含まないホスファンを得、続いて、前記ホスファンをカルボン酸ハロゲン化物と反応させて、モノまたはビスアシルホスフィンを得ることによる、ビスアシルホスフィンを調製する方法を開示している。
【0011】
しかしながら、リン原子における非アシル置換基の変化のために、上述の方法は、それらの一部が、ワンポット手順として実施され得るとしても、以下のいずれかを必要とする。
・ 可能な置換パターンの変動性を著しく減少させる第1の還元もしくは金属化ステップにおいて、既にそのような置換基を有する有機モノまたはジハロホスファンの最初の利用、または
・ 例えば、Na
3PまたはNaPH
2などのアルカリ金属リン化物が利用される場合のリン元素および強還元性アルカリ金属の取り扱い。
これらにより、このような方法は商業的に魅力が低いものとなっている。
【0012】
すぐに入手できるホスフィン(PH
3)から直接、モノまたはビスアシルホスファン(H
2P(COR))およびHP(COR)
2を調製する試みは、これまで失敗してきた。
【0013】
Albersらは、AlCl
3の存在下で塩化アセチルによるPH
3のアシル化を試みたが、いずれの生成物も単離できなかった(非特許文献1)。Issleibは同様に、PH
3および種々のハロゲン化アシルからアシルホスファンを調製できなかったことを報告している(非特許文献2)。このことは、後にBeckerらによって確認された(非特許文献3)。
【0014】
Evansらは、PH
3を純粋な塩化ベンゾイルを通して泡立てることによってベンゾイルホスフィンを、非常に低い収率ではあるが、調製した(非特許文献4)。Platzekらは、酸塩化物のピリジン溶液をPH
3で処理することによってトリス(アシル)ホスフィンを調製した(非特許文献5)。多数の可能性のある副反応のために、得られた生成物は低い純度であり、したがって工業的に利用するのに適さない。
【0015】
シリルホスフィンのアシル化が報告されている(非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10;化合物ジフェニルボリルピバロイルホスフィドが明確に言及されている非特許文献11;非特許文献12)。
【0016】
ポリホスフィドまたはポリホスフィンのアシル化は、今日まで報告されていない。
【0017】
結果として、そして上記の制限の観点から、アシルホスフィン、特にモノまたはビスアシルホスフィンを調製するための高い効率で汎用的な方法に対する必要性が依然として存在する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の範囲は、一般にまたは互いに優先の範囲もしくは好ましい実施形態の範囲内のいずれかで、上記および下記の置換基の定義、パラメーター、および例示の全ての組み合わせ、すなわち、特定の範囲と優先の範囲との間の任意の組み合わせも包含する。
【0022】
本明細書で使用されるときはいつでも、「含む」、「例えば」、「など」および「同様の」という用語はそれぞれ「含むが、それに限定されない」または「非限定的な例」という意味で使用される。
【0023】
本明細書で使用される場合、特に断らない限り、アリールは、炭素環式芳香族置換基を示し、ここで、前記炭素環式芳香族置換基は、置換されていないか、または1つの環につき5個までの同一または異なる置換基で置換されている。例えば、好ましくは、置換基は、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素、ニトロ、シアノ、C
1〜C
8−アルキル、C
1〜C
8−ハロアルキル、C
1〜C
8−アルコキシ、C
1〜C
8−ハロアルコキシ、保護ヒドロキシル、保護ホルミル、フェニルおよびナフチルなどのC
6〜C
14−アリール、ジ(C
1〜C
8−アルキル)アミノ、(C
1〜C
8−アルキル)アミノ、CO(C
1〜C
8−アルキル)、OCO(C
1〜C
8−アルキル)、NHCO(C
1〜C
8−アルキル)、N(C
1〜C
8−アルキル)CO(C
1〜C
8−アルキル)、CO(C
6〜C
14−アリール)、OCO(C
6〜C
14−アリール)、NHCO(C
6〜C
14−アリール)、N(C
1〜C
8−アルキル)CO(C
6〜C
14−アリール)、COO−(C
1〜C
8−アルキル)、COO−(C
6〜C
14−アリール)、CON(C
1〜C
8−アルキル)
2またはCONH(C
1〜C
8−アルキル)、CONH
2、SO
2NH
2またはSO
2N(C
1〜C
8−アルキル)
2からなる群から選択される。
【0024】
好ましい実施形態では、炭素環式芳香族置換基は、置換されていないか、またはフッ素、塩素、C
1〜C
8−アルキル、C
1〜C
8−フルオロアルキル、C
1〜C
8−アルコキシ、C
1〜C
8−ハロアルコキシ、C
6〜C
14−アリール、例えばフェニルからなる群から選択される、1つの環につき3個までの同一もしくは異なる置換基で置換されている。
【0025】
より好ましい実施形態では、炭素環式芳香族置換基は、置換されていないか、またはフッ素、塩素、C
1〜C
4−アルキル、C
1〜C
4−ペルフルオロアルキル、C
1〜C
4−アルコキシ、C
1〜C
4−ペルフルオロアルキルおよびフェニルからなる群から選択される、1つの環につき3個までの同一もしくは異なる置換基で置換されている。
【0026】
C
6〜C
14アリールなどの用語は、それぞれの炭素環式芳香環系の炭素原子の数が6〜14個であり、潜在的な置換基の炭素原子を考慮に入れていないことを示す。
【0027】
本明細書で使用される場合、特に断らない限り、ヘテロシクリルは、1つの環につき骨格原子がないか、1つ、2つもしくは3つの骨格原子があるが、環系全体の少なくとも1つの骨格原子が、置換されていないか、または1つの環につき5個までの同一もしくは異なる置換基で置換されている窒素、硫黄および酸素からなる群から選択されるヘテロ原子である、複素環式脂肪族、芳香族または混合脂肪族および芳香族置換基を示し、ここで置換基は、優先範囲を含む炭素環式芳香族置換基について上記に与えられているものと同じ基から選択される。
【0028】
好ましいヘテロシクリル置換基およびヘテロアリール置換基はそれぞれ、ピリジニル、オキサゾリル、チオフェン−イル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェン−イル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、フラニル、インドリル、ピリダジニル、ピラジニル、イミダゾリル、ピリミジニルおよびキノリニルであり、置換されていないか、またはフッ素、C
1〜C
8−アルキル、C
1〜C
8−ペルフルオロアルキル、C
1〜C
8−アルコキシ、C
1〜C
8−ペルフルオロアルコキシ、およびフェニルからなる群から選択される1つ、2つまたは3つの置換基で置換されている。
【0029】
本明細書で使用される場合、特に断らない限り、保護ホルミルは、アミナール、アセタールまたは混合アミナールアセタールへの変換によって保護されるホルミル置換基であり、アミナール、アセタールおよび混合アミナールアセタールは、非環式または環式のいずれかである。
【0030】
例えば、好ましくは、保護ホルミルは、1,1−(2,4−ジオキシシクロペンタンジイル)である。
【0031】
本明細書で使用される場合、特に断らない限り、保護ヒドロキシルは、ケタール、アセタールまたは混合アミナールアセタールへの変換によって保護されるヒドロキシルラジカルであり、アミナール、アセタールおよび混合アミナールアセタールは、非環式または環式のいずれかである。保護ヒドロキシルの具体例は、テトラヒドロピラニル(O−THP)である。
【0032】
本明細書で使用される場合、特に断らない限り、アルキルおよびアルケニルは、直鎖、部分的にまたは全体として環式、分枝または非分枝である。
【0033】
C
1〜C
18−アルキルという用語は、直鎖、部分的にまたは全体として環式、分枝または非分枝のアルキル置換基が、C
1〜C
18−アルキル置換基に対して任意に存在する置換基の炭素原子を除いて1〜18個の炭素原子を含有することを示す。同じことが、アルケニル、および特に明記しない限り、異なる示された数または範囲の炭素原子を有するさらなる置換基にも同様に当てはまる。
【0034】
疑いを避けるために、アルケニルという用語は、直鎖、部分的にまたは全体として環式、分枝または非分枝の置換基内のその位置にかかわらず、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む置換基を示す。
【0035】
C
1〜C
4−アルキルの具体例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチルである。C
1〜C
8−アルキルのさらなる例は、n−ペンチル、シクロヘキシル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチルである。C
1〜C
18−アルキルのさらなる例は、ノルボルニル、アダマンチル、n−デシル、n−ドデシル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシルである。
【0036】
C
1〜C
4−アルコキシ置換基の具体例は、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシおよびtert−ブトキシである。C
1〜C
8−アルコキシのさらなる例は、シクロヘキシルオキシである。
【0037】
C
2〜C
18−アルケニルおよびC
2〜C
8−アルケニル置換基の具体例は、アリル、3−プロペニルおよびブテン−2−イルである。
【0038】
上記で使用されているように、C
1〜C
8−ハロアルキルおよびC
1〜C
8−ハロアルコキシは、ハロゲン原子によって1回、1回より多く、または完全に置換されているC
1〜C
8−アルキルおよびC
1〜C
8−アルコキシ置換基である。フッ素によって完全に置換されている置換基は、それぞれC
1〜C
8−ペルフルオロアルキルおよびC
1〜C
8−ペルフルオロアルコキシと呼ばれる。
【0039】
C
1〜C
8−ハロアルキル置換基の具体例は、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、クロロメチル、フルオロメチル、ブロモメチル、2−ブロモエチル、2−クロロエチル、ノナフルオロブチルおよびn−ペルフルオロオクチルである。
【0040】
本発明による方法は、式(II)および(III)の化合物の利用を必要とする。このような化合物は、市販されているか、または公開された手順によって調製され得る。
【0041】
一実施形態において、
R
1およびR
2は、互いに独立して、アリール、アルキルまたはアルケニルであり、ここで前記アルキルおよびアルケニル置換基R
1および/またはR
2は、
・ −O−、−CO−、−NR
4(CO)−からなる群から選択される非連続的な官能基によって、1回、2回または2回より多く、中断されておらず、
・ さらにまたは代替として、アリールジイルからなる群から選択される二価残基によって、1回、2回または2回より多く、中断されておらず、
・ さらにまたは代替として、オキソ、フルオロ、C
6〜C
14−アリール、C
1〜C
8−アルコキシ、−SO
2N(R
4)
2、−NR
4SO
2R
5、−CO
2N(R
4)
2、−COR
4−からなる群から選択される置換基によって、1回、2回または2回より多く、置換されておらず、
ここで、使用される場合、全ての式において、
R
4は、水素、C
1〜C
8−アルキル、C
6〜C
14−アリールからなる群から独立して選択されるか、または全体としてN(R
4)
2はN含有複素環であり、
R
5は、C
1〜C
8−アルキル、C
6〜C
14−アリールからなる群から独立して選択されるか、また全体としてN(R
5)
2はN含有複素環である。
【0042】
一実施形態において、式(I)および(II)の化合物において、
R
1は、C
6〜C
14−アリール、C
4〜C
13−ヘテロアリールまたはC
1〜C
18−アルキル、好ましくはC
6〜C
14−アリール、より好ましくはフェニルである。
【0043】
一実施形態において、式(I)および(III)の化合物において、
R
2は、C
6〜C
14−アリールまたはC
4〜C
13−ヘテロアリール、好ましくはC
6〜C
14−アリール、より好ましくはフェニル、メシチルまたは2,6−ジメトキシフェニルまたはナフチル、さらにより好ましくはフェニルまたはメシチルまたはナフチルであり、フェニルまたはメシチルがさらにより好ましい。
【0044】
一実施形態において、式(I)および(II)の化合物において、
R
Hは、水素またはトリメチルシリルであり、水素が好ましい。
【0045】
一実施形態において、式(I)および(II)の化合物において、
LAFは、sおよびxが1であり、mが0であり、pが2であるならば、qおよびルイス酸についての好ましい実施形態を含む、本明細書以下に定義されているq価ルイス酸フラグメント(LAF)である。
【0046】
1つの好ましい実施形態において、式(I)および(II)の化合物において、
nは0である。
【0047】
1つの好ましい実施形態において、式(I)および(II)の化合物において、
xは1または7であり、
nは0であり、
(m+n+p)およびそれにより(m+p)は3であり、
xが1であり、さらにsが1である場合、(s+m+n+p)は3であり、(m+p)は2である。
【0048】
この実施形態において、式(I)の化合物において、
pは、xが1である場合、1または2であり、xが7である場合、3であり、
mは、xが1である場合、1または2であり、xが7である場合、0である。
【0049】
式(II)の具体的な化合物には、ホスフィン(PH
3)、トリス(トリメチルシリル)ホスフィン(P(SiMe)
3)およびトリス(トリメチルシリル)−ヘプタホスフィン((P
7(SiMe)
3)が含まれ、ホスフィンが好ましい。
【0050】
式(I)の具体的な化合物には、ベンゾイルホスフィン、メシトイルホスフィン、ナフトイルホスフィン、ビスメシトイルホスフィン、ジベンゾイルホスフィン、ビスナフトイルホスフィン、ジクロロアルミニウム−ビスメシトイルホスフィド、ジフルオロボリル−ビスメシトイルホスフィド、ジクロロアルミニウム−ビスベンゾイルホスフィド、ジフルオロボリル−ビスベンゾイルホスフィド、クロロアルミニウム−ビス(ビスメシトイルホスフィド)、クロロアルミニウム−ビス(ビスベンゾイル−ホスフィド)、クロロボリル−ビス(ビスメシトイルホスフィド)、クロロボリル−ビス(ビスベンゾイル−ホスフィド)、アルミニウム−トリス(ビスメシトイルホスフィド)、アルミニウム−トリス(ビスナフトイルホスフィド)および/またはアルミニウム−トリス(ビスベンゾイルホスフィド)が含まれる。
【0051】
式(III)の具体的な化合物には、塩化ナフトイル、塩化ベンゾイルおよび塩化メシトイルが含まれ、塩化ベンゾイルおよび塩化メシトイルが好ましい。
【0052】
式(I)の化合物、特にLAFを含む化合物は、溶媒または他の条件に応じて、溶液または固体状態で二量体または三量体などのオリゴマーを形成し得ることが、当業者に公知である。これらのオリゴマーは本発明およびそれぞれの式に包含される。
【0053】
本発明による方法は、少なくとも1つのルイス酸の存在下で実施される。
【0054】
本発明の文脈における「ルイス酸」という用語は、電子空孔を有するこれらの化合物の一般に慣例の定義を意味すると理解される。例えば、Rompp’s Chemie−Lexikon、第8版、Franck’sche Verlagshandlung 1983、Volume 3、H−Lに説明されている。
【0055】
好ましい実施形態において、少なくとも1つのルイス酸は、メチルアルミノキサン(MAO)および式(IV)によって表される化合物
MR
L(r)X
(z−r) (IV)
(式中、
zは、2、3、4または5であり、
rは、0または最大でzの整数、好ましくは0、1または2、より好ましくは0または1、さらにより好ましくは0であり、
Mは、
zが2である場合、Sn、または別の実施形態において、Sn、Fe、MnおよびZnであり、
zが3である場合、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Fe、B、Al、Ga、In、Asからなる群から選択される元素であり、
zが4である場合、V、Ti、Zr、Hf、Snからなる群から選択される元素であり、
zが5である場合、V、P、As、Sb、Biからなる群から選択される元素であり、
Xは、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、アジド、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネートまたはシアン化物、好ましくはフルオロ、クロロまたはブロモ、より好ましくはフルオロまたはクロロからなる群から独立して選択され、
R
Lは、C
1〜C
18−アルキル、シクロペンタジエニル、C
1〜C
18−ハロアルキル、C
1〜C
18−アルコキシ、C
1〜C
18−ハロアルコキシ、C
6〜C
14−アリール、C
7〜C
18−アリールアルキル、C
6〜C
14−アリールオキシ、C
7〜C
18−アリールアルコキシ、−O(HC=O)、−O(C=O)−(C
1〜C
18−アルキル)、−O(C=O)−(C
6〜C
14−アリール)および−O(C=O)−(C
7〜C
18−アリールアルキル)を表すか、または
2つのR
Lは一緒に、C
4〜C
18−アルカンジイル、C
4〜C
18−ハロアルカンジイル、C
4〜C
18−アルカンジオキシ、C
4〜C
18−ハロアルカンジオキシ、C
6〜C
14−アリールジイル、C
7〜C
18−アリールアルカンジイル、C
6〜C
14−アリールジオキシ、C
7〜C
18−アリールアルカンジオキシ、−O(C=O)−(C
1〜C
18−アルキル)−(C=O)O−、−O(C=O)−(C
6〜C
14−アリール)−(C=O)O−および−O(C=O)−(C
7〜C
18−アリールアルキル)−(C=O)O−、またはオキソ(=O)を表す)
を含む群から選択される。
【0057】
この実施形態に関して、このような化合物についての例には以下が含まれる。
z=2 二塩化スズまたは別の実施形態では、二塩化スズ、二塩化亜鉛、二塩化鉄および二塩化マンガン。
z=3 三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、三塩化ガリウム、三フッ化インジウム、三塩化スカンジウム、三塩化鉄、三フッ化ヒ素、三塩化ビスマス。
z=4 四塩化チタン、四臭化チタン、四塩化バナジウム、四塩化スズ、四塩化ジルコニウム、ハフニウムテトラクロリド、チタンブロミドトリクロリド、チタンジブロミドジクロリド、バナジウムブロミドトリクロリド、および三フッ化塩化スズ。
z=5 五塩化アンチモン、五フッ化アンチモン、五フッ化ヒ素、五フッ化塩化アンチモンおよび四塩化フッ化ヒ素。
【0058】
好ましい化合物は、二塩化亜鉛、二塩化鉄、二塩化マンガン、三塩化アルミニウムおよび三フッ化ホウ素であり、三塩化アルミニウムおよび三フッ化ホウ素が好ましい。
【0059】
当業者は、ルイス酸が、多くの場合、弱ルイス塩基、特にエーテルとの付加物の形態で供給されるか、または入手可能であるという事実を知っている。その例には、三フッ化ホウ素ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフラネートが含まれる。このような誘導体は、ルイス酸の単なる記載によっても包含される。
【0060】
一実施形態において、rは、1、2または3である。
【0061】
この実施形態に関して、このような化合物についての例には以下が含まれる。
z=3 二臭化メチルアルミニウム、二塩化メチルアルミニウム、二臭化エチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、二臭化ブチルアルミニウム、二塩化ブチルアルミニウム、臭化ジメチルアルミニウム、塩化ジメチルアルミニウム、臭化ジエチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、臭化ジブチルアルミニウム、塩化ジブチルアルミニウム、メチルアルミニウムセスキブロミド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミド、エチルアルミニウムセスキクロリド、メトキシアルミニウムジクロリド、エトキシアルミニウムジクロリド、2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシアルミニウムジクロリド、メトキシメチルアルミニウムクロリド、2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシメチルアルミニウムクロリド、二塩化イソプロポキシガリウムおよびフッ化フェノキシメチルインジウム、二塩化アセトキシアルミニウム、二臭化ベンゾイルオキシアルミニウム、二フッ化ベンゾイルオキシガリウム、塩化メチルアセトキシアルミニウムおよび三塩化イソプロポイルオキシインジウムおよび一実施形態においてさらにトリフェニルホウ素。
z=4 シクロペンタジエニルチタニウムトリクロリド、ジシクロペンタジエニルチタニウムジクロリド、シクロペンタジエニルジルコニウムトリクロリドおよびジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド。
z=5 塩化テトラフェニルアンチモンおよび二塩化トリフェニルアンチモンおよびオキシ三塩化バナジウム。
【0062】
一実施形態において、2つ以上、例えば、2つまたは3つのルイス酸が利用される。
【0063】
結果として、q価ルイス酸フラグメント(LAF)は、形式的にはq個の形式的にアニオン性の置換基をルイス酸から除去することによって形式的に得られるカチオン構造単位である。これは当業者には明らかであり、利用されるルイス酸に応じて、qは1からそれぞれのzまでの整数であることが理解される。
【0064】
メチルアルミノキサンに関して、qは最大で3である。
【0065】
好ましいルイス酸フラグメント(LAF)は、式(IVa)の構造単位である
MR
L(rr)X
(ZZ−rr) (IVa)
(式中、
M、XおよびR
Lは、それらの好ましい範囲を含む上記の式(IV)について記載されているものと同じ意味を有するものであり、
zzは、qが1からz以下の整数である(z−q)であり、ここでzは、その好ましい範囲を含む上記の式(IV)について記載されているものと同じ意味を有するものであり、
rrは、0または最大でzzの整数、好ましくは0、1または2、より好ましくは0または1、さらにより好ましくは0である)。
【0066】
好ましいルイス酸フラグメント(LAF)は、
q=1(一価)に関して:ジクロロアルミニウムAlCl
2およびジフルオロボリルBF
2であり、
q=2(二価)に関して:クロロアルミニウムAlClおよびフルオロボリルBFであり、
q=3(三価)に関して:アルミニウムAlである。
【0067】
当業者は、ルイス酸フラグメント(LAF)が形式的にq倍に正に荷電していること、および例えば式(Ia)の化合物において、残基P(OCR
2)
2が形式的に陰イオン性であり、負電荷が5員O−C−P−C−O単位にわたって移動していることを知っている。イオン性の1つの式(I)、(Ia)および(IVa)の代わりに共有P−HまたはP−Si結合を有するそれらの類似体との一貫性の理由から、荷電の分布または存在は特に示さない。
【0068】
この方法は、典型的に、そのままでまたは溶媒に溶解もしくは懸濁させて、式(II)および(III)の化合物と少なくとも1つのルイス酸とを組み合わせることによって実施される。これにより、反応混合物が形成される。
【0069】
あるいは、この方法は、少なくとも1つのルイス酸、次いでそのままの式(II)の化合物または溶媒に溶解もしくは懸濁した式(II)の化合物を、そのままの式(III)の化合物もしくはその溶液もしくは懸濁液に加えることによって実施される。これにより、反応混合物が形成される。
【0070】
反応時間は、典型的に、2分〜72時間、好ましくは30分〜24時間の範囲である。
【0071】
好適な溶媒には、式(I)、(II)および(III)の化合物との新たな共有結合の形成下で反応しない、または実質的に反応しないものが含まれ、好ましくはそれらである。
【0072】
そのような溶媒には以下が含まれる。
・ 芳香族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素、例えば、メシチレン、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼン、
・ エーテル、例えば、ジエチルエーテル、メチルtert.ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタンおよび高級グリコールエーテル、
・ アミド、例えば、ジメチルホルムアミド、
・ スルホン、例えば、テトラエチレンスルホン、
・ 液体二酸化硫黄および液体二酸化炭素、
・ 脂肪族炭化水素、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ならびに
・ ハロゲン化脂肪族またはオレフィン系炭化水素、例えば、塩化メチル、塩化ジメチル、クロロホルム、トリクロロエタンおよびテトラクロロエテン
ならびに上記の溶媒の混合物。
【0073】
好ましい溶媒は、ハロゲン化脂肪族炭化水素、例えば、塩化メチル、塩化ジメチル、クロロホルム、トリクロロエタンおよびテトラクロロエテンである。
【0074】
当業者は、適切な溶媒の選択が、とりわけ、利用されるルイス酸(複数も含む)の溶解度および反応性に依存することを知っている。
【0075】
溶媒の量は、式(I)の化合物を最終的に単離する場合には除去しなければならないので、全く重要ではなく、商業的態様によって制限されるだけである。
【0076】
反応を促進するために、例えば、標準的な撹拌器および/または静的混合要素による混合エネルギーを反応混合物に導入する。
【0077】
必須ではないが、混合は、例えば、超音波ソノトロードまたは高圧ホモジナイザーなどの高力分散装置を使用することによっても支援することができる。
【0078】
この方法は、バッチ式または連続式のいずれかで実施することができる。
【0079】
この方法を実施するための典型的かつ好ましい反応温度範囲は、−30℃〜120℃、好ましくは−10℃〜80℃、さらにより好ましくは0℃〜40℃である。
【0080】
所望の反応温度が利用される溶媒の1013hPaでの沸点より高い場合、反応は十分な圧力下で実施されることは当業者に明らかである。
【0081】
この方法を実施するための典型的かつ好ましい反応圧力範囲は、50hPa〜10MPa、好ましくは500hPa〜1MPaである。
【0082】
式(II)の化合物としてホスフィン(PH
3)が利用される場合、この方法を実施するための好ましい反応圧力範囲は、800hPa〜10MPa、好ましくは1000hPa〜6MPa、さらにより好ましくは1000hPa〜0.5MPaである。
【0083】
一実施形態では、反応は、酸素の実質的な排除下、すなわち、10hPa未満、好ましくは5hPa未満、より好ましくは0.15hPa未満の酸素分圧下で実施される。
【0084】
この方法を実施するための典型的かつ好ましい反応圧力範囲は、50hPa〜10MPa、好ましくは500hPa〜1MPaである。
【0085】
一実施形態では、反応は、不活性ガス、すなわち、利用される反応条件下で反応物と反応しないか、または実質的に反応しないガスの下で行われる。
【0086】
反応の間に、式(I)の化合物が形成される。
【0087】
反応に利用される式(III)に対する式(II)の化合物のモル比は、整数m、すなわち、式(I)の化合物に最終的に存在するアシル基の数に依存する。典型的に、導入されるアシル基当たり0.8〜1.2mol、好ましくは0.9〜1.0molの式(III)の化合物が利用される。
【0088】
反応に利用される式(III)に対する式(II)の化合物のモル比に依存して、様々な数のアシル基mを有する式(I)の化合物の混合物が得られることは当業者に公知である。
【0089】
反応に利用される式(III)の化合物とルイス酸のモル比は、典型的には式(III)の化合物1mol当たり0.01〜1molのルイス酸、好ましくは0.05〜1.0mol、さらにより好ましくは0.05〜0.5molである。
【0090】
特に好ましい実施形態において、本発明による方法において、式Id)の化合物
[LAF]
s[P(R
H)
m(COR
2)
p]
q (Id)
(式中、
[LAF]は、任意のレベルでその好ましい範囲を含む上記の式(IVa)に定義されているルイス酸フラグメントを表し、
R
11は水素であり、
R
2は、C
6〜C
14−アリール、より好ましくはフェニル、メシチルまたは2,6−ジメトキシフェニルまたはナフチル、さらにより好ましくはフェニルまたはメシチルまたはナフチルであり、フェニルまたはメシチルがさらにより好ましく、
sは0であるか、またはmが0であり、pが2であるならば、sは1であり、
qは、sが0である場合、1であり、sが1である場合、1、2または3の整数、より好ましくは1または3であり、
mおよびpは、
mが0または1または2であり、
pが1または2である
ように選択され、
以下の条件:
sが0である場合、(m+p)は3であり、
sが1である場合、(m+p)は2である、
が満たされる)
は、ホスフィン(PH
3)を式(III)の化合物
R
2COHal (III)
(式中、
R
2は上記に定義されている通りであり、
Halは、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード、好ましくはクロロまたはブロモ、さらにより好ましくはクロロを表す)
と反応させることによって調製され、この反応は、任意のレベルでその好ましい範囲を含む上記に定義されている式(IV)の少なくとも1つのルイス酸の存在下で実施される。
【0091】
ホスフィン(PH
3)が利用される場合、増加した量の式(Ia)のルイス酸化合物が主要生成物として形成され得ることが見出された。
[LAF][P(COR
2)
2]
q (Ia)
【0092】
式(Ia)の化合物は以下の化合物を除いて新規である:
1)ジフェニルボリルジピバロイルホスフィド(なぜならこの化合物は、A.S.Ionkin、L.F.Chertanova、B.A.Arbuzov、Phosphorus, Sulfur and Silicon and the Related Elements 1991、55、133〜136から公知であるからである)。
2)1−オキサ−3−オキソニア−5λ
3−ホスファ−2−ボラタ−4,6−ジメチルシクロヘキサジンおよび1−オキサ−3−オキソニア−5λ
3−ホスファ−2−ボラタ−4,6−ジフェニルシクロヘキサジン(なぜならこれらの化合物は、H.Noth、S.Staude、M.Thomann、J.Kroner、R.T.Paine、Chem.Ber.1994、127、1923〜1926から公知であるからである)。
【化1】
【0093】
式(I)の化合物、LAFおよびR
2について上記に開示されている好ましい置換パターンは、ここでも同様に適用可能である。
【0094】
上記の除外された化合物のうちの2つについて示され、本発明者らによって確認されているように、例えばq=1についての式(Ia)の化合物の構造は、以下の一般式(Ib)およびそのメソメリー(mesomeric)類似体によって最もよく例示される:
【化2】
【0095】
単に疑義を避けるために、これらの構造は、もちろん、より一般的な式(Ia)に包含されるものとする。
【0096】
式(I)および(Ia)の化合物の具体例は、ジクロロアルミニウム−ビスメシトイルホスフィド、クロロアルミニウム−ビス(ビスメシトイルホスフィド)、クロロアルミニウムジフルオロボリル−ビスメシトイルホスフィド−ビス(ビスベンゾイルホスフィド)、クロロボリル−ビス(ビスメシトイルホスフィド)、クロロボリル−ビス(ビスベンゾイルホスフィド)、アルミニウム−トリス(ビスメシトイルホスフィド)、アルミニウム−トリス(ビスナフトイルホスフィド)およびアルミニウム−トリス(ビスベンゾイルホスフィド)であり、ジフルオロボリル−ビスメシトイルホスフィド、アルミニウム−トリス(ビスメシトイルホスフィド)およびアルミニウム−トリス(ビスベンゾイルホスフィド)が好ましい。
【0097】
式(Ia)の化合物は、LAFが水素によって置換される化合物に変換され得る。
【0098】
したがって、本発明はさらに、式(Ia)の化合物をプロトン源と反応させることによって式(Ib)の化合物
HP(COR
2)
2 (Ib)
を調製する方法を包含する。
【0099】
一実施形態において、プロトン源には、水、酸、およびアルコール、またはそれらの混合物が含まれる。好適な酸には、25℃にて水中で測定して、7以下、好ましくは5以下、より好ましくは2以下のpKaを有するものが含まれる。
【0100】
好適な酸の例としては、水中またはジエチルエーテル中の塩化水素、硫酸、カルボン酸、例えば、ギ酸、酢酸およびクエン酸、ならびにアルコール、例えば、エチレングリコールが挙げられる。
【0101】
一実施形態において、水が上述の変換のために利用される。別の実施形態において、トルエンが上述の変換のために利用される。
【0102】
プロトン源の量は重要ではなく、式(I)の化合物に対して0.1〜100mol当量の範囲、好ましくは0.9〜1.2mol当量の範囲であってもよい。
【0103】
式(I)の化合物、特にx=1である化合物または式(Ia)および(Ib)の化合物は、ポリマーであるか否かにかかわらず、汎用光開始剤である置換ビスアシルホスフィンオキシドについての前駆体物質として有効である。
【0104】
このようなビスアシルホスフィンオキシドは当該技術分野においてそれ自体が公知であり、例えば国際公開第2006/056541号および国際公開第2014/053455号(それらの全体は本明細書に参照により組み込まれる)に開示されているように、式(I)の化合物を反応させることによって得られる。
【0105】
したがって、式(I)および(Ia)および(Ib)の化合物は、光開始剤についての前駆体として特に有用である。したがって、本発明の1つのさらなる態様は、光開始剤を調製する方法における式(I)または(Ia)または(Ib)の化合物の使用に関する。
【0106】
本発明の別の態様は、上記に開示した式(I)および任意に(Ib)の化合物を調製する方法を含む、ビスアシルホスフィンオキシドを調製する方法に関する。
【0107】
本発明はさらに、ここで限定されない実施例によって例示される。
【実施例】
【0108】
I 材料および方法
全ての反応は、標準的なSchlenk技術またはアルゴン充填グローブボックスのいずれかを使用してアルゴン下で実施した。溶媒は、Innovative Technology PureSolv MD7溶媒精製システムを使用して精製した。全ての試薬は特に断らない限り、市販の供給業者から入手したまま使用した。化合物Na
3P
7および(Me
3Si)
3P
7は、以下の文献の手順に従って合成した。例えば、M.Cicac−Hudi、J.Bender、S.H.Schlindwein、M.Bispinghoff、M.Nieger、H.Grutzmacher、D.Gudat、Eur.J.Inorg.Chem.2015、5、649。X線単結晶回折研究は、モリブデンX線管(λ=0.7107Å)を備えたOxford XCalibur S回折計で実施した。
【0109】
II アシルホスフィンを調製するための一般的方法
実施例1a:BF
3・Et
2Oの存在下での塩化メシトイルによるPH
3のアシル化
ジクロロメタン(DCM)(20mL)中の塩化メシトイル(MesCOCl)(4mL、24mmol、1当量)および三フッ化ホウ素エーテル(BF
3・Et
2O)(0.15mL、1.2mmol、0.05当量)を含有する100mLの2口丸底フラスコを、一方の口を介してPH
3供給源に接続し、他方の口を介して漂白スクラバーに接続した。フラスコをPH
3でフラッシュし、次いで漂白スクラバーへの栓を閉じ、この系を50kPaのPH
3で加圧した。典型的に、PH
3消費は3〜6時間後に終了した。フラスコを20℃でさらに12時間撹拌した。次いでこの系を漂白スクラバーに対して開き、アルゴンで30分間フラッシュして、全ての分量のPH
3を除去した。粗反応混合物を
31P−NMR分光法により分析した。NMRシグナルの積分に基づいて、混合物は、70%ビス(メシトイルホスフィン)HP(COMes)
2[δ(
31P)=89.2(s,enol),2.2(d,
1J
PH=246.8Hz、keto)ppm]、16%ジフルオロボリルビス(メシトイルホスフィド)[BF
2]P(COMes)
2[δ(
31P)=93.4(s)ppm]および14%モノ(メシトイルホスフィン)H
2P(COMes)[δ(
31P)=−97.4(t,
1J
PH=218.3Hz)ppm]を含有することを見出した。MesCOCl(0.33mL、2.0mmol)およびBF
3・Et
2O(0.013mL、0.10mmol)を再び加え、混合物をさらに60分間撹拌した。その後、混合物を
31P−NMR分光法により分析すると、76%HP(COMes)
2および16%[BF
2]P(COMes)
2を含有することを見出した。脱気水(25mL)を加え、懸濁液を20℃で24時間撹拌した。水相をDCM(3×5mL)で抽出した。合わせた有機相から溶媒を減圧下で除去し、HP(COMes)
2を明黄色の結晶性固体として得た。分析データは公開されたデータに対応した。
【0110】
実施例1b:BF
3・Et
2Oの存在下での塩化メシトイルによるPH
3のアシル化
ジクロロメタン(DCM)(20mL)中の塩化メシトイル(MesCOCl)(4mL、24mmol、1当量)および三フッ化ホウ素エーテル(BF
3・Et
2O)(0.15mL、1.2mmol、0.05当量)を含有する100mLのセラミックセルを備えたスチールオートクレーブを、入口を介してPH
3供給源に接続し、出口を介して漂白スクラバーに接続した。オートクレーブをPH
3でフラッシュし、次いで漂白スクラバーに対する弁を閉じ、この系を250kPaのPH
3で加圧した。典型的に、PH
3消費は3〜6時間後に終了した。フラスコを20℃でさらに12時間撹拌した。次いでこの系を漂白スクラバーに対して開き、アルゴンで30分間フラッシュして、全ての分量のPH
3を除去した。粗反応混合物を
31P−NMR分光法により分析した。NMRシグナルの積分に基づいて、混合物は、実施例1a)で得られたものと実質的に同一であることが見出された。
【0111】
実施例2:BF
3・Et
2Oの存在下での塩化メシトイルによる(Me
3Si)
3P
7のアシル化
DCM(10mL)中のMesCOCl(2.48mL、15mmol、6当量)およびBF
3・Et
2O(0.95mL、7.5mmol、3当量)の溶液に、固体トリス(トリメチルシリル)ヘプタホスフィド(Me
3Si)
3P
7(1.09g、2.5mmol、1当量)を加えた。橙色の溶液を16時間撹拌し、溶媒を減圧下で除去して、(MesCO)
3P
7を明黄色の固体(1.63g、2.48mmol、99%)として得た。分析的に純粋な試料は飽和THF溶液をヘキサンで層状にし、ガラスフリット上に黄色の結晶を回収し、それを減圧下で乾燥させることによって得ることができる。
Mp 198−199℃(THFから)。分析実測値:C,55.7;H,5.5;N,0.2。C
30H
33O
3P
7についての計算値:C,54.7;H,5.1;N,0.0。
1H−NMR(300MHz,CD
2Cl
2):δ=6.85(s,6H,Ar),2.30(s,9H,CH
3),2.24(s,18H,CH
3)ppm。
31P−NMR(CDCl
3,121MHz):δ=135.0〜122.0(m,3P),−140.0〜−151.0(m,1P),−148.5〜−159.5(m,3P)ppm。
【0112】
実施例3:AlC
3の存在下での塩化メシトイルによるPH
3のアシル化による、アルミニウムトリス[ビス(メシトイル)ホスフィド][Al(
MesBAP)
3]の産生
2つのNormagスピンドルバルブを有する100mLの丸底フラスコに、MesCOCl(6当量、90mmol、15.0mL)、AlCl
3(1当量、15mmol、2.00g)およびテトラクロロエタンC
2Cl
4(35mL)を充填した。フラスコの一方の側をPH
3ガスボトルに接続し、他方の側を一連の3つの漂白浴に接続した。この系をアルゴンで15分間パージして、微量の酸素を除去した。次いで激しく撹拌しながら、80kPaのPH
3で加圧した。初期の圧力降下に続いて、副産物としてのHClの形成により、約120kPaまでの圧力上昇が起こった。この系を漂白浴に対して開き、PH
3で再び加圧した。圧力が安定したままになるまで、この手順を数回繰り返した。橙色の懸濁液を80kPaのPH
3圧力下でさらに16時間撹拌し、その後、それを漂白浴に対して開き、アルゴンで60分間パージした。懸濁液を100mLの丸底Schlenkフラスコに移し、溶媒を減圧下で最小になるまで除去した。生成物の沈殿は、n−ヘキサン(50mL)の添加によって完了した。生成物をG3ガラスフリット上に回収し、n−ヘキサン(3×10mL)で洗浄し、減圧下で乾燥して、アルミニウム錯体[Al(
MesBAP)
3]を明るい橙色の粉末(14.0g、14.0mmol、93%)として得た。
Mp 137−139℃。
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ=6.73(s,12H,Ar),2.24(s,18H,CH
3),2.15(s,36H,CH
3)ppm。
13C{
1H}−NMR(75MHz,CDCl
3):δ=229.0(d,
1J
PC=88.2Hz,C(O)P),140.0(d,
2J
PC=27.9Hz,C
ipso,138.4(s,C
para),134.0(d,C
ortho),128.3(s,C
meta),21.2(s,CH
3),19.6(s,CH
3)ppm。
31P−NMR(CDCl
3,121MHz):δ=99.0(s)ppm。
【0113】
実施例4:AlCl
3の存在下での塩化ベンゾイルによるPH
3のアシル化による、アルミニウムトリス[ビス(ベンゾイル)ホスフィド][Al(
PhBAP)
3]の産生
2つのNormagスピンドルバルブを有する100mLの丸底フラスコに、塩化ベンゾイル(PhCOCl、6当量、17.4mmol、2.00mL)、AlCl
3(1当量、2.90mmol、290mg)およびテトラクロロエタンC
2Cl
4(10mL)を充填した。反応および後処理を上記のように実施し、明赤色の粉末(1.35g、1.80mmol、62%)としてアルミニウム錯体[Al(
PhBAP)
3]を得た。
31P−NMR(CDCl
3,121MHz):δ=68.7(s)ppm。
【0114】
実施例5:[Al(
MesBAP)
3]からのビス(メシトイル)ホスフィンHP(COMes)
2の合成
トルエン(2.0mL)中の実施例3に従って調製したアルミニウム錯体[Al(
MesBAP)
3](1当量、0.100mmol、100mg)およびクエン酸(2当量、0.200mmol、38mg)の懸濁液を6時間還流した。得られた黄色の懸濁液をG3ガラスフリット上で濾過し、濾液の溶媒を減圧下で除去して、ビス(メシトイル)ホスフィンHP(COMes)
2を明黄色の粉末(90mg、0.275mmol、92%)として得た。
1H−NMR(300MHz,C
6D
6):δ=19.3(d,
3J
PH=2.0Hz,OHO),6.63(s,Ar),6.63(s,Ar),5.44(d,
1J
PH=244.2Hz,PH),2.34(s,CH
3),2.18(s,CH
3),2.03(s,CH
3),2.00(s,CH
3)ppm。
31P−NMR(CDCl
3,121MHz):δ=90.2(s,enol),3.8(d,
1J
PH=243.6Hz,keto)ppm。
【0115】
実施例6:[Al(
PhBAP)
3]からのビス(ベンゾイル)ホスフィンHP(COPh)
2の合成
トルエン(2.0mL)中の実施例4に従って調製したアルミニウム錯体[Al(
PhBAP)
3](1当量、0.100mmol、75mg)およびクエン酸(2当量、0.200mmol、38mg)の懸濁液を2.5時間還流した。得られた橙色の懸濁液をG3ガラスフリット上で濾過し、濾液の溶媒を減圧下で除去して、ビス(ベンゾイル)ホスフィンHP(COPh)
2を明るい橙色の粉末(70mg、0.289mmol、96%)として得た。
1H−NMR(300MHz,C
6D
6):δ=20.1(d,
3J
PH=3.1Hz,OHO),8.20−8.10(s,4H,Ar),7.12−6.95(s,6H,Ar)ppm。
13C{
1H}−NMR(75MHz,C
6D
6):δ=228.3(d,
1J
PC=86.1Hz,C(O)P),140.1(d,
2J
PC=26.7Hz,C
ipso),144.0(d,
5J
PC=2.8Hz,C
para),128.9(s,C
meta),126.5(d,
3J
PC=16.7Hz,C
ortho)ppm。
31P−NMR(CDCl
3,121MHz):δ=90.2(s,enol),3.8(d,
1J
PH=243.6Hz,keto)ppm。
【0116】
実施例7a:PH
3からのジフルオロボリル−ビスメシトイルホスフィン[BF
2(
MesBAP)の合成
C
2Cl
4(20mL)中の塩化メシトイル(MesCOCl)(5.0mL、30mmol、1当量)および三フッ化ホウ素ジエチルエーテル(BF
3・Et
2O、2.38mL、18.8mmol、1当量)を含有する100mLの2口丸底フラスコを、800hPaのPH
3に48時間曝露した。この系をパージした後、橙色の懸濁液をSchlenkフラスコに移し、溶媒を最小限まで蒸発させ、n−ヘキサン(40mL)の添加によって生成物の沈殿を完了させた。生成物をガラスフリット上に回収し、n−ヘキサン(3×5mL)で洗浄し、減圧下で乾燥させて、ホウ素錯体ジフルオロボリル−ビスメシトイルホスフィド[BF
2(
MesBAP)]を黄色の固体(3.90g、10.4mmol、69%)として得た。単結晶を−30℃にてトルエンから得た。
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ=6.93(s,3H,Mes−H),2.37(s,12H,CH
3),2.32(s,6H,CH
3)ppm。
13C{
1H}−NMR(300MHz,CDCl
3):δ=237.7(dt,
1J
PC=95.0,
3J
BC=2.2Hz,C(O)P),141.6(d,J=1.4Hz,p−Mes),135.4(d,
3J
PC=3.7Hz,o−Mes),135.3(d,
2J
PC=21.2Hz,ipso−Mes),129.4(s,m−Mes),21.3(s,p−CH
3),20.1(d,
4J
PC=3.8Hz,o−CH
3)ppm。
31P−NMR(121MHz,CDCl
3):δ=94.3(s)ppm。
【0117】
実施例7b:ジフルオロボリル−ビスメシトイルホスフィド[BF
2(
MesBAP)]からのビス(メシトイル)ホスフィンHP(COMes)
2の合成
THF(15mL)および水(2mL)中のホウ素錯体[BF
2(
MesBAP)](1.33g、3.55mmol)の溶液を20℃で15分間撹拌した。揮発性物質を減圧下で明黄色の溶液から除去し、ホスフィン
MesBAP−Hを明黄色の粉末(1.16g、3.55mmol、100%)として得た。
【0118】
実施例8:AlCl
3の存在下での未処理の塩化メシトイルによるPH
3のアシル化による、アルミニウムトリス[ビス(メシトイル)ホスフィド][Al(
MesBAP)
3]の産生
2つのNormagスピンドルバルブを有する100mLの丸底フラスコに、塩化メシトイル(10.0mL、60.0mmol、4当量)およびAlCl
3(333mg、2.50mmol、1当量)を充填した。反応および後処理を実施例3に記載したように実施し、アルミニウム錯体[Al(
MesBAP)
3]を明るい橙色の粉末(2.38g、2.37mmol、95%、AlCl
3に対応する)として得た。
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ=6.75(s,12H,Mes−H),2.25(s,18H,CH
3),2.17(s,36H,CH
3)ppm。
13C{
1H}−NMR(75MHz,CDCl
3):δ=240.3(d,
1J
PC=92.2Hz,C(O)P),140.0(d,
2J
PC=28.0Hz,ipso−Mes,138.4(d,
5J
PC=1.3Hz,p−Mes),134.0(d,
3J
PC=3.0Hz,o−Mes),128.3(s,m−Mes),21.2(s,p−CH
3),19.6(d,
4J
PC=2.7Hz,o−CH
3)ppm。
31P−NMR(121MHz,CDCl
3):δ=99.0(s)ppm。
分析実測値:C,71.0;H,6.7;N,0.1。C
60H
66O
6P
3Alについての計算値:C,71.8;H,6.6;N,0。
Mp>180℃(トルエンから分解)。
【0119】
実施例9:AlCl
3の存在下での1−ナフトイルクロリドによるPH
3のアシル化による、アルミニウムトリス[ビス(ナフトイル)ホスフィド][Al(
NaphBAP)
3]の産生
2つのNormagタップを有する厚壁の100mLの丸底フラスコに、グローブボックス中で無水AlCl
3(333mg、2.5mmol)を充填した。これに、1−ナフトイルクロリド(2.26mL、15mmol)およびC
2Cl
4(10mL)を加えた。混合物を1barのAr下に置き、漏出をチェックした。次いで混合物を30分間撹拌すると、淡黄色の溶液が形成した。Ar圧力を解放し、フラスコを800hPaのPH
3で再び加圧すると、直ちに橙色が観察された。1時間後、雰囲気を新鮮なPH
3と置き換えて、形成したHClを除去した。混合物を週末(3晩)にわたって激しく撹拌すると、明るい橙色に変化し、明るい橙色の沈殿物が形成した。
31P NMRスペクトルは、溶液が完全であることを示した。次いで反応混合物をTHF(40mL)を含むSchlenkフラスコに移した。溶液を約10mLに濃縮し、次いでヘキサン(20mL)を加えて沈殿を完了させた。次いでこれをAr下で濾過し、固体をヘキサン(20mL)で洗浄した。固体をフリット上で真空下で乾燥し、回収して、Al(
NaphBAP)
3を明るい橙色の固体(1.947g、74%)として得た。
【0120】
実施例10:ZnCl
2の存在下での塩化メシトイルによるPH
3のアシル化
2つのNormagタップを有する厚壁の100mLの丸底フラスコに、グローブボックス中で無水ZnCl
2(340.7mg、2.5mmol)を充填した。これに塩化メシトイル(1.66mL、10mmol)およびC
2Cl
4(10mL)を加えた。混合物を1barのAr下に置き、次いで15分間撹拌し、ZnCl
2の部分的な溶解を伴って淡黄色が観察された。Ar圧力を解放し、フラスコを800hPaのPH
3で再び加圧した。1時間後、雰囲気を新鮮なPH
3と置き換えて、形成したHClを除去した。混合物を一晩激しく撹拌すると、より暗い黄色に変わり、フラスコ壁上にいくらかの黄色の沈殿が観察された。
31P NMRスペクトルにより、溶液は約1:1の比でHP(COMes)
2およびH
2P(COMes)の両方を含有することが示された。反応混合物をPH
3で再び加圧し、週末(3晩)にわたって静置すると、
31P NMRはここで約90%のHP(COMes)
2を示した。次いで反応混合物をTHF(20mL)を有するSchlenkフラスコに移した。溶液を約10mlに濃縮し、次いでヘキサン(10mL)を加えて沈殿を完了させた。次いでこれをAr下で濾過し、次いで濾液を真空下で乾燥させて、粘性のある黄色の固体(1.55g)を得た。次いでこれを乾燥ヘキサン(5mL)で洗浄して黄色の粉末を得、上清をカニューレ濾過によって除去し、粉末を乾燥させて、HP(COMes)
2(0.872g、2.67mmol、53%)を得た。
【0121】
実施例11:ZnCl
2の存在下での塩化ナフトイル(NaphCOCl)によるPH
3のアシル化
2つのNormagタップを有する厚壁の100mLの丸底フラスコに、グローブボックス中で無水ZnCl
2(340.7mg、2.5mmol)を充填した。これに、1−ナフトイルクロリド(1.5mL、10mmol)およびC
2Cl
4(10mL)を加えた。混合物を1barのAr下に置き、次いで30分間撹拌し、ZnCl
2の部分的な溶解を伴って淡黄色が観察された。Ar圧力を解放し、フラスコを800hPaのPH
3で再び加圧すると、即座に橙色が観察された。1時間後、雰囲気を新鮮なPH
3と置き換えて、形成したHClを除去した。混合物を週末(3晩)にわたって激しく撹拌すると、明るい橙色に変化し、明るい橙色の沈殿物が観察された。
31P NMRスペクトルにより、溶液が約1:1の比でHP(CONaph)
2およびH
2P(CONaph)の両方を含有することが示された。次いで反応混合物をさらに2日間Ar下で撹拌すると、H
2P(CONaph)は
31P NMRスペクトルにおいて見えなかった。次いで、反応混合物をトルエン(20mL)およびTHF(5mL)を有するSchlenkフラスコに移した。溶液を約10mLに濃縮し、次いでヘキサン(10mL)を加えて沈殿を完了させた。次いでこれをAr下で濾過し、次いで濾液を真空下で乾燥させて、粘性のある橙色の生成物を得た。次いでこれを乾燥ヘキサン(40mL)に溶解し、濾過し、ヘキサンを真空下で除去して、明るい橙色の油を得た。
【0122】
実施例12:TiCl
4の存在下での塩化ナフトイル(NaphCOCl)によるPH
3のアシル化
TiCl
4(Tol中1M、2.5mL、2.5mmol)を、Ar下で2つのNormagタップを有する厚壁の100mLの丸底フラスコ中で乾燥トルエン(7.5mL)で希釈した。これに、1−ナフトイルクロリド(1.5mL、10mmol)を加えると、色は淡橙色から暗赤色に変化した。混合物を1barのAr下に置き、次いで15分間撹拌した。Ar圧力を解放し、フラスコを800hPaのPH
3で再び加圧した。雰囲気を新鮮なPH
3でさらに2回交換した(1回目は1時間後および2回目は2時間後)。反応物を一晩、16時間撹拌した。このとき、色は赤色から緑色/黒色に変化した。緑色/黒色溶液に脱気水を加えると、橙色に変化し、HP(CONaph)
2の形成が
31P NMRにおいて観察された。この溶液に乾燥ヘキサンを加えると、青銅色/赤色の沈殿物が得られた。
【0123】
実施例13:FeCl
3の存在下での塩化メシトイルによるPH
3のアシル化
2つのNormagタップを有する厚壁の100mLの丸底フラスコに、グローブボックス中で無水FeCl
3(406mg、2.5mmol)を充填した。これに、塩化メシトイル(2.45mL、15mmol)およびC
2Cl
4(10mL)を加えた。混合物を1barのAr下に置き、次いで15分間撹拌し、粘性の褐色固体の上に淡黄色溶液が観察された。Ar圧力を解放し、フラスコを800hPaのPH
3で再び加圧した。1時間後、雰囲気を新鮮なPH
3と置き換えて、形成したHClを除去し、これをさらに1回繰り返した。混合物を週末にわたって激しく撹拌した。
31P NMRスペクトルにより、それぞれHP(COMes)
2およびH
2P(COMes)に割り当てることができるδ(ppm)90.4および−95.7(t,
1J
PH=212Hz)を含む、複数のピークが示された。
【0124】
実施例14:MnCl
2の存在下での塩化メシトイルによるPH
3のアシル化
2つのNormagタップを有する厚壁の100mLの丸底フラスコに、グローブボックス中で無水MnCl
2(315mg、2.5mmol)を充填した。これに、塩化メシトイル(1.66mL、10mmol)およびトルエン(10mL)を加えた。混合物を1barのAr下に置き、次いで15分間撹拌し、ピンク色がかった固体の上に淡黄色の溶液が観察された。Ar圧力を解放し、フラスコを800hPaのPH
3で再び加圧した。1時間後、雰囲気を新鮮なPH
3と置き換えて、形成したHClを除去し、これをさらに1回繰り返した。混合物を20時間激しく撹拌した。
31P NMRスペクトルにより、HP(COMes)
2およびH
2P(COMes)の存在が示された。MnCl
2を濾別し、濾液の溶媒を真空下で除去して、粘性のある黄色の固体を得た。ヘキサン(1mL)を加え、一晩撹拌することによって固体を洗浄した。次いで黄色の固体を濾過により回収し、真空下で乾燥して、HP(COMes)
2(0.98g、3mmol、60%)を得た。
【0125】
実施例15:FeCl
2の存在下での塩化メシトイルによるPH
3のアシル化
実施例15は、FeCl
2(318mg、2.5mmol)をMnCl
2の代わりに使用したことを唯一の差として実施例14のように実施した。HP(COMes)
2は58%の収率で得た。
【0126】
実施例16:メチルアルミノキサン(MAO)の存在下での塩化メシトイルによるPH
3のアシル化
塩化メシトイル(4.0mL、24mmol)のジクロロメタン(15mL)溶液に、メチルアルミノキサンのトルエン溶液(1.0mL、0.895g mL
−1、7wt%Al、2.4mmol Al、0.1当量)を加えた。得られた暗橙色溶液を800hPaのPH
3に48時間曝露した。
31P−NMRスペクトルにより、HP(COMes)
2の異なるAl錯体の混合物に割り当てることができる、δ=100ppmにおいてブロードシグナルが示された。0℃でのH
2O
2(8.0mL、30wt%、72mmol、3.0当量)の添加後、δ=−2ppmにおいて鋭いシグナルが、(HO)OP(COMes)
2に割り当てることができる
31P−スペクトルにおいて観察された。