特許第6851468号(P6851468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851468
(24)【登録日】2021年3月11日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】パターン構造物検査装置及び検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/956 20060101AFI20210322BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   G01N21/956 A
   H01L21/66 J
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-515755(P2019-515755)
(86)(22)【出願日】2017年6月1日
(65)【公表番号】特表2019-518973(P2019-518973A)
(43)【公表日】2019年7月4日
(86)【国際出願番号】KR2017005747
(87)【国際公開番号】WO2017209544
(87)【国際公開日】20171207
【審査請求日】2018年11月30日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0068563
(32)【優先日】2016年6月2日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0066365
(32)【優先日】2017年5月29日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518426804
【氏名又は名称】ザ・ウェーヴ・トーク・インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】592127149
【氏名又は名称】韓国科学技術院
【氏名又は名称原語表記】KOREA ADVANCED INSTITUTE OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・トゥク・キム
(72)【発明者】
【氏名】チョン・チャン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヨンクン・パク
【審査官】 平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/107976(WO,A1)
【文献】 特開2013−083482(JP,A)
【文献】 特開2007−322154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84− 21/958
G01B 11/00− 11/30
H01L 21/64− 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に一定のパターンを有する構造物が形成されたパターン領域を含むサンプルに波動を照射する波動源と、
前記照射された波動が、前記サンプルによって多重散乱されて発生したスペックルを検出する情報収集部と、
前記情報収集部から収集されたスペックル情報を伝送されて分析し、それをディスプレイに出力する情報分析部と、を含み、
前記情報収集部は、前記サンプルと前記情報収集部との間、または前記情報収集部の内部の一領域からレーザスペックルを検出し、
前記サンプルから多重散乱されて出射される前記波動の少なくとも一部を、前記サンプルに反射させて、前記サンプルでの多重散乱回数を増幅させる多重散乱増幅部をさらに含み、
前記多重散乱増幅部は、
前記波動源と上記サンプルとの間に配され、前記サンプルから多重散乱されて出射される前記波動の少なくとも一部を前記サンプルに反射する半透過型である第1多重散乱増幅部と、
前記サンプルを基準に前記第1多重散乱増幅部と対向して配され、前記サンプルから多重散乱されて出射される前記波動の全部を前記サンプルに反射する反射型である第2多重散乱増幅部と、を含む、パターン構造物検査装置。
【請求項2】
前記情報収集部は、前記サンプルの表面から一定距離だけ離隔した第1領域から前記スペックルを検出する、請求項に記載のパターン構造物検査装置。
【請求項3】
前記第1領域は、前記サンプルの表面から第1距離だけ離隔した第1地点を含む第1面と前記サンプルの表面から前記第1距離よりも遠い第2距離だけ離隔した第2地点を含む第2面との間に配される請求項に記載のパターン構造物検査装置。
【請求項4】
前記第1領域は、前記サンプルの表面から第1距離だけ離隔した第1地点を含む第1面と前記サンプルの表面から前記第1距離よりも遠い第2距離だけ離隔した第2地点を含む第2面との間に配される請求項2に記載のパターン構造物検査装置。
【請求項5】
前記情報収集部を2つ以上含む場合、複数の前記情報収集部から検出された複数の前記スペックルを用いて3次元スペックルイメージを生成する3次元イメージ生成部をさらに含み、制御部は、前記3次元スペックルイメージを用いて、前記サンプルの特性を探知する、請求項に記載のパターン構造物検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カオス波センサーを用いて、2次元または3次元的なパターンを有する構造物(以下、「パターン構造物」と称する)のパターン形成の異常有無を検査する装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に一定のパターンを有する構造物が形成されたパターン領域を製造する技術が産業界に広く使われている。例えば、半導体素子、ディスプレイ素子、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子のように基板上に所定の厚さに塗布された金属または絶縁体を選択的に除去して、微細なパターンを形成する技術が代表的である。
【0003】
このようなパターン領域を製造する技術の場合、パターンを形成した後に、このようなパターンが正常に形成されたか否かを確認する作業が行われる場合がある。このために、従来より、光学顕微鏡を用いてパターンの最上層を観察したり、探針を用いてパターン表面の異常有無を検査したりする方法が用いられてきた。
【0004】
基板上に複数のパターンが基板に垂直な方向に順次に積層される場合、このような従来の検査方法による場合には、最上層パターンの下に配されたパターンの異常有無を観察しにくいという問題がある。特に、パターンを構成する素材が光学的に不透明な素材、例えば、金属である場合には、最上層の金属パターンによって、その下に在る領域が遮蔽されて、下に在る他のパターンの異常有無を光学的に観察することは実質的に不可能である。
【0005】
半導体素子の製造工程を例を挙げれば、一般的に、メモリ素子、ロジッグ素子のような半導体素子は、シリコンウェーハ上に一定のパターンを有するレイヤ(layer)を順次に積層して製造する。
【0006】
図15には、例示的に、MOSFET素子の断面構造が示されている。図15を参照すれば、シリコンウェーハ基板の表面には、ドーパント(dopant)がドーピングされている活性領域801、802を形成し、このような活性領域の上部には、MOSトランジスタのゲート803が形成される。ゲート803の上部には、絶縁層804が介在された状態で導電のための多様なレベルの金属配線層805、806が形成される。最終的には、既に製造された構造物を外部環境から保護するためのパッシベーション層808が形成される。このように、半導体素子の場合には、活性領域から最終パッシベーション層まで順次に積層される構造を有することが一般的である。
【0007】
このような垂直的積層構造では、最終的に工程が完了した後には、最上位層の下方部分に配されている下部構造物の異常有無を非破壊的に検査することが容易ではない。
【0008】
図8には、例示的に、多層に積層された金属配線構造(multi−layer metalization structure)が示されている。図8において、図面符号601は、下側の第1金属配線であり、図面符号602は、上側の第2金属配線であり、互いに垂直な方向に上下に積層された第1及び第2金属配線601、602の間には、絶縁層604が形成されている。
【0009】
図8の(a)に例示されたように、第1金属配線601と第2金属配線602は、絶縁層604を貫通して形成されたビア(via)の内部に埋め込まれた金属603によって電気的に導通されている。図8の(a)は、正常にビア埋め込みが起こった場合であるが、場合によっては、非正常に進められた工程によって、図8の(b)のように、ビア埋め込みが正常に起こらず、ビア中間に空孔(void)610が形成されうる。または、図8の(c)のように、絶縁層604内にビアが正常に絶縁層604を貫通しない非正常なパターン620を形成しうる。
【0010】
このようなビア内の空孔の存否、ビア形成の正常程度が分かるためには、工程が完了した後、素子単位で電気的テストを通じて確認しなければならず、工程の進行中間に確認するためには、ウェーハを切断して当該部分を透過電子顕微鏡(TEM、transmission electron microscopy)や走査電子顕微鏡(SEM、scanning electron microscopy)のような検査装備で観察しなければならない。このような工程異常を確認するために、局部的な領域の観察が必要であるが、ウェーハ全体を破壊しなければならないので、相当な時間及びコストがかかる。また、工程確認に必要な時間によって、その分だけ工程進行が遅延されるという問題点がある。
【0011】
前述した問題は、半導体素子の以外にも、複数のパターン層を順次に積層して製造する他の多様な素子でも共通して発生する問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記問題点を含む多様な問題点を解決するためのものであって、非破壊的に基板上に多層構造で積層されたパターン領域の最上部はもとより、その下方部分に形成されたパターン形態の異常を検査することができる検査装備及び検査方法の提供を目的とする。しかし、このような課題は、例示的なものであって、これにより、本発明の範囲が限定されるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様によれば、波動源から基板上に一定のパターンを有する構造物が形成されたパターン領域を含むサンプルに波動を照射するステップと、情報収集部を用いて、前記パターン領域での多重散乱によって形成されたスペックル(speckle)についての情報を収集するステップと、前記収集された情報を基準情報と比較して、前記パターン領域に形成された構造物形態の異常有無を分析するステップとを含むパターン構造物検査方法が提供される。
【0014】
前記パターン構造物検査方法において、前記情報を収集するステップは、前記サンプルと前記情報収集部との間、または前記情報収集部の内部の一領域で行われる。
【0015】
前記パターン構造物検査方法において、前記情報を収集するステップは、前記サンプルの表面から第1距離だけ離隔した第1地点を含む第1面と、前記サンプルの表面から前記第1距離よりも遠い第2距離だけ離隔した第2地点を含む第2面との間の領域でなされうる。
【0016】
前記パターン構造物検査方法において、前記情報収集部を2個以上含む場合、前記複数の情報収集部から検出された複数のスペックルを用いて3次元スペックルイメージを生成するステップをさらに含みうる。
【0017】
前記パターン構造物検査方法において、前記情報を収集するステップは、前記サンプルから多重散乱されて出射される波動の少なくとも一部を、前記サンプルに反射させて、前記サンプルでの多重散乱の回数を増幅させるステップをさらに含みうる。
【0018】
前記パターン構造物検査方法において、前記波動源から照射される波動は、レーザを含みうる。
【0019】
前記パターン構造物検査方法において、前記サンプルは、基板上に複数のパターンが前記基板に垂直な方向に順次に積層された構造を有するものである。
【0020】
前記パターン構造物検査方法において、前記サンプルの構造物は、金属からなるパターン領域及び絶縁体からなるパターン領域を含みうる。
【0021】
本発明の他の態様によれば、基板上に同じ形態を有する複数のパターン領域が一定の離隔距離を置いて周期的に反復されるように形成されるパターン構造物に対する検査方法であって、波動源から前記複数のパターン領域のうち、任意の1つである第1パターン領域を選択して、前記第1パターン領域に波動を照射し、前記第1パターン領域での多重散乱によって形成されたスペックルについての情報を収集してDBに保存する第1ステップと、前記第1ステップと同じステップを、前記第1パターン領域から離隔した少なくとも1つの他のパターン領域に繰り返して行って、前記他のパターン領域でのスペックル情報をDBに保存する第2ステップと、前記第1ステップ及び第2ステップから収集されたスペックル情報を分析して、前記パターン領域の異常有無を判断する基準を設定するステップと、前記DBに保存された前記パターン領域のスペックル情報を、前記基準と比較し、判断するステップと、を含むパターン構造物検査方法が提供されうる。
【0022】
本発明のさらに他の態様によれば、基板上に一定のパターンを有する構造物が形成されたパターン領域を含むサンプルに波動を照射する波動源と、前記照射された波動が、前記サンプルによって多重散乱(multiple scattering)されて発生したスペックルを検出する情報収集部と、前記情報収集部から収集されたスペックル情報を伝送されて分析し、それをディスプレイに出力する情報分析部と、を含むパターン構造物検査装置が提供される。
【0023】
前記パターン構造物検査装置において、前記情報収集部は、前記サンプルと前記情報収集部との間、または前記情報収集部の内部の一領域から前記レーザスペックルを検出することができる。
【0024】
前記パターン構造物検査装置において、前記情報収集部は、前記サンプルの表面から一定距離だけ離隔した第1領域から前記スペックルを検出することができる。
【0025】
前記パターン構造物検査装置において、前記第1領域は、前記サンプルの表面から第1距離だけ離隔した第1地点を含む第1面と前記サンプルの表面から前記第1距離よりも遠い第2距離だけ離隔した第2地点を含む第2面との間に配置される。
【0026】
前記パターン構造物検査装置において、前記第1領域は、前記サンプルの表面から第1距離だけ離隔した第1地点を含む第1面と前記サンプルの表面から前記第1距離よりも遠い第2距離だけ離隔した第2地点を含む第2面との間に配置される。
【0027】
前記パターン構造物検査装置において、前記情報収集部を2つ以上含む場合、前記複数の情報収集部から検出された複数の前記スペックルを用いて3次元スペックルイメージを生成する3次元イメージ生成部をさらに含み、前記制御部は、前記3次元スペックルイメージを用いて、前記サンプル特性を探知することができる。
【0028】
前記パターン構造物検査装置において、前記サンプルから多重散乱されて出射される前記波動の少なくとも一部を、前記サンプルに反射させて、前記サンプルでの多重散乱回数を増幅させる多重散乱増幅部をさらに含みうる。
【0029】
前記パターン構造物検査装置において、前記多重散乱増幅部は、前記サンプルの中心を通る延長線上に配され、前記サンプルから多重散乱されて出射される前記波動の少なくとも一部を、前記サンプルに反射させる第1多重散乱増幅部と、前記サンプルを基準に、前記第1多重散乱増幅部と対向して配され、前記サンプルから多重散乱されて出射される前記波動の少なくとも一部を、前記サンプルに反射させる第2多重散乱増幅部と、を含みうる。
【0030】
本発明のさらに他の態様によれば、サンプルを収容するサンプルホルダー及び基準サンプルを収容する基準サンプルホルダーと、前記サンプル及び基準サンプルに波動を照射する波動源と、前記照射された波動が、前記サンプル及び基準サンプルによって多重散乱されて発生したスペックルを検出する情報収集部と、前記情報収集部から収集されたスペックル情報を伝送されて分析し、それをディスプレイに出力する情報分析部と、を含み、前記サンプル及び基準サンプルは、基板上に一定のパターンを有する構造物が形成されたパターン領域を含むパターン構造物検査装置が提供されうる。
【0031】
前記パターン構造物検査装置において、前記情報収集部は、前記サンプルと前記情報収集部との間、または前記情報収集部の内部の一領域から前記レーザスペックルを検出することができる。
【0032】
前記パターン構造物検査装置は、前記波動源から入射された波動を分割させて複数の波動経路に提供する多重ビームリフレクターと、前記多重ビームリフレクターから提供される前記波動経路上に配され、前記サンプル及び前記基準サンプルから反射して出射される前記波動の経路を変更して、前記情報収集部に提供するビームスプリッタと、をさらに含みうる。
【発明の効果】
【0033】
前記のようになされた本発明の一実施形態によれば、基板に順次に積層された構造物のパターン異常を非破壊的に短時間で検査することが可能である。本発明の一実施形態によれば、パターン構造物の最上部の部分でのパターン異常はもとより、その下部に形成されたパターン形態の異常も、短時間で検査することが可能である。もちろん、このような効果によって、本発明の範囲が限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1a】本発明の一実施形態によるカオス波センサーの原理を説明する図面である。
図1b】本発明の一実施形態によるカオス波センサーの原理を説明する図面である。
図2】本発明の第1実施形態によるパターン構造物検査装置を概略的に示す概念図である。
図3図1の情報収集部でのレーザスペックルの検出方法を示す図面である。
図4a図1のパターン構造物検査装置の実施形態を概略的に示す概念図である。
図4b図1のパターン構造物検査装置の実施形態を概略的に示す概念図である。
図4c図1のパターン構造物検査装置の実施形態を概略的に示す概念図である。
図5a】本発明の他の実施形態によるパターン構造物検査装置を概略的に示す概念図である。
図5b】本発明の他の実施形態によるパターン構造物検査装置を概略的に示す概念図である。
図6】本発明の第2及び第3実施形態によるパターン構造物検査装置を概略的に示す概念図である。
図7】本発明の第2及び第3実施形態によるパターン構造物検査装置を概略的に示す概念図である。
図8】(a)から(c)は多層に積層された金属配線構造を有する半導体素子の断面図である。
図9】(a)及び(b)は半導体素子の金属配線構造を示す平面図である。
図10】(a)から(c)はレーザスペックルの分析の結果を電算模写するための設計案である。
図11a】レーザスペックルの電算模写の結果を示した図面である。
図11b】レーザスペックルの電算模写の結果を示した図面である。
図12】さらに他のレーザスペックルの分析の結果を電算模写するための設計案である。
図13a】レーザスペックルの電算模写の結果を示した図面である。
図13b】レーザスペックルの電算模写の結果を示した図面である。
図14】複数のパターン領域が周期的に形成されたシリコンウェーハを例示的に図示したものである。
図15】一般的なMOSFET半導体素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態を詳しく説明すれば、次の通りである。しかし、本発明は、以下で開示される実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態として実現可能なものであって、以下の実施形態は、本発明の開示を完全にし、当業者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。また、説明の便宜上、図面では、構成要素は、その大きさが拡大または縮小されうる。
【0036】
ガラスのように内部屈折率が均質な物質の場合には、光を照射した時に、一定の方向に屈折が起こる。しかし、内部屈折率が不均質な物体にレーザのような干渉光(Coherent Light)を照射すれば、物質の内部で非常に複雑な多重散乱が発生する。
【0037】
図1aを参照すれば、波動源から照射した光または波動(以下、簡略化のために、波動と称する)のうち、多重散乱を通じて複雑な経路に散乱された波動の一部は、検査対象面を通過する。検査対象面の多様な地点を通過する波動が、互いに補強干渉(constructive interference)または相殺干渉(destructive interference)を起こし、このような波動の補強/相殺干渉は、粒状の縞であるスペックルを発生させる。
【0038】
本明細書では、このような複雑な経路に散乱される波動を「カオス波(Chaotic wave)」と名付け、カオス波は、レーザスペックルを通じて検出することができる。図1aのように、経時的に内部構成物質の動きのない安定した媒質を干渉光(例えば、レーザ)で照射した時には、変化のない安定したスペックルパターン(speckle pattern)を観測することができる。本明細書は、このようなスペックルパターンを測定する構成をカオス波センサー(Chaotic Wave Sensor)と定義する。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、波動源から所定の波長をサンプルであるパターン構造物(基板上の少なくとも一部領域にパターン領域が生成された構造物)に投入し、前記サンプルから発生するスペックルを分析するカオス波センサーが提供される。このようなカオス波センサーは、パターン構造物内の一部領域の形態の異常有無を検査するための装置という点でパターン構造物検査装置と称される。
【0040】
図1bには、例示的に、多層金属配線構造を有する半導体素子600をサンプルとして使用した場合のスペックルパターンの形成を示している。一般的に、半導体素子は、光学特性、例えば、屈折率、光透過度などにおいて互いに異なる特性の複数の材料でパターン構造物を構成している。例えば、図1bを参照すれば、電気伝導体である金属601、602、603は、可視光線が透過することができず、不透明であるが、シリコン酸化物またはシリコン窒化物からなる電気絶縁体604、605は、可視光線領域で高い透過度を有する。
【0041】
第1金属配線601と第2金属配線602との間には、第1絶縁層604が形成されており、第2金属配線602の上部には、第2絶縁層605が形成されている。
【0042】
絶縁層604、605の材料は、代表的にシリコン酸化物(SiO)であり得るが、その他にも、光が透過される透明度がある絶縁物は、如何なる材料として用いられうる。金属配線601、602の材料は、例示的に、アルミニウム、タングステン、銅などが用いられうる。
【0043】
図1bを参照すれば、半導体素子の場合、最上部の第2金属配線602をパターン化する途中で互いに離隔した部分(d)が形成され、このような離隔した部分は、絶縁のために絶縁体605が埋め込まれる。例えば、サンプルの表面に照射されたレーザは、このような第2金属配線602の離隔領域(d)を通じて第2金属配線602の下部まで投入された後、多重散乱が起こる。例えば、前記レーザは、ビアを埋め込んだ金属603またはこれと連結された下部の第2金属配線601の表面から反射された後、再び第2金属配線602側に散乱されてサンプルの外部に出射し、この過程で波動の補強/相殺干渉によってスペックルが形成される。したがって、サンプルを構成する構造物(金属配線、ビア、絶縁層など)の形態によって、レーザスペックルのパターンが決定され、このような構造物の変化に連動してレーザスペックルのパターンも変化する。
【0044】
本発明の技術思想によるパターン構造物検査装置の波動源としては、波動(wave)を生成することができるあらゆる種類のソース装置を適用することができる。例えば、特定の波長帯域の光を照射することができるレーザ(laser)であり得る。本発明は、波動源の種類に制限がないが、以下、説明の便宜上、レーザ照射装置を波動源(または、光源)として使用する装置について記述する。このような本発明の一実施形態は、光源としてレーザを使用するという点でレーザ検査装置と称される。
【0045】
本発明の一実施形態によるパターン構造物検査装置は、レーザを照射する光源、サンプルを支持するサンプルホルダー、サンプルに入射された光が多重散乱されることによって形成されたレーザスペックル情報を収集する情報収集部と、及び収集された情報を分析し、該分析された結果をディスプレイにユーザに出力する情報分析部と、を含む。前記情報分析部は、制御部及びディスプレイ部を含みうる。制御部は、収集された情報を分析し、該分析の結果をディスプレイ部に伝送する。ディスプレイ部は、伝送された分析の結果を外部に出力する。
【0046】
図2は、本発明の第1実施形態によるパターン構造物検査装置100を概略的に示す概念図であり、図3は、図1の情報収集部130でのレーザスペックルの検出方法を示す図面である。また、図4aから図4cは、パターン構造物検査装置100の実施形態を概略的に示す概念図である。
【0047】
図2を参照すれば、本発明の第1実施形態によるパターン構造物検査装置100は、光源120及び情報収集部130を含みうる。また、パターン構造物検査装置100は、サンプルホルダー110、多重散乱増幅部150、制御部140及びディスプレイ部190をさらに含みうる。
【0048】
光源120は、サンプルホルダー110内のサンプル(S)に向けて波動を照射することができる。例えば、サンプルホルダー110にスペックルを形成するために、干渉性(coherence)に優れるレーザを波動として利用できる。この際、レーザ波動の干渉性を決定する波動のスペクトラル帯域幅(spectral bandwidth)が短いほど、測定正確度が増加する。すなわち、干渉長(coherence length)が長いほど、測定正確度が増加する。これにより、波動のスペクトラル帯域幅が既定の基準帯域幅未満であるレーザ光が光源120として用いられ、基準帯域幅よりも短いほど、測定正確度は増加する。例えば、レーザ波動のスペクトラル帯域幅は、1nm以下になるように設定しうる。
【0049】
情報収集部130は、光源120の種類に対応した感知手段を含み、例えば、可視光線波長帯域の光源を利用する場合には、映像を撮影する撮影装置であるカメラまたはイメージセンサーが用いられうる。
【0050】
カメラの種類は、2次元情報を測定することができるカメラが望ましいが、1次元情報を測定するカメラも使われる。例えば、カメラは、サンプル(S)から出るレーザスペクル信号を測定するために、サンプルに光が入射される面と対向し、一定角度で傾いて位置しうる。
【0051】
一実施形態として、情報収集部130は、イメージセンサー及び所定の焦点距離を有する1つ以上のレンズを含んでレーザスペックルを検出することができる。この際、焦点距離は、サンプル(S)と情報収集部130との間の距離よりも短いが、これに制限されるものではない。他の実施形態として、情報収集部130は、レンズを含まないイメージセンサーが利用されることもある。
【0052】
図3を参照すれば、情報収集部130は、サンプル(S)に照射された波動がサンプル(S)によって多重散乱されて発生したレーザスペックルを検出することができる。言い換えれば、情報収集部130は、サンプル(S)から誘発された(caused)レーザスペックルを検出することができる。
【0053】
具体的に、情報収集部130は、サンプル(S)の表面(F)からレーザスペックルを検出することもできるが、サンプル(S)によって多重散乱された波動が移動する経路上の一領域(A1)からレーザスペックルを予め設定された時点ごとに検出することができる。この際、第1領域(A1)は、サンプル(S)の表面(F)から一定距離だけ離隔した領域であり得る。一実施形態として、第1領域(A1)は、サンプル(S)の表面(F)から第1距離(d1)離隔した第1地点(x1)を含む第1面(B1)とサンプル(S)の表面(F)から第1距離(d1)よりも遠い第2距離(d2)離隔した第2地点(x2)を含む第2面(B2)との間に配された領域であり得る。すなわち、情報収集部130とサンプルとの間の第1領域(A1)からレーザスペックルを検出することができる。または、レーザスペックルは、情報収集部130の内部、例えば、情報収集部130がCCDセンサーである場合、CCDセンサーの表面から検出されうる。
【0054】
他の実施形態として、情報収集部130は、イメージセンサーを用いてレーザスペックルを検出することもできる。イメージセンサーを用いてレーザスペックルを検出する場合、サンプル(S)の表面からレーザスペックルを観察する場合よりも焦点距離を減らしてレーザスペックルを検出することができる。
【0055】
一方、情報収集部130としてイメージセンサーが用いられる場合、イメージセンサー一ピクセル(pixel)のサイズdがスペックルパターンの粒子サイズ(grain size)よりも小さいか、同じになるようにイメージセンサーが配置される。
【0056】
一方、図4aから図4cを参照すれば、本発明の一実施形態によるパターン構造物検査装置100は、多重散乱増幅部150をさらに含みうる。多重散乱増幅部150は、サンプル(S)から多重散乱されて出射される波動の少なくとも一部を、サンプル(S)に反射させて、サンプル(S)での多重散乱回数を増幅させることができる。
【0057】
多重散乱増幅部150は、多重散乱物質(multiple scattering material)を含みうる。例えば、多重散乱物質は、屈折率が大きなμmサイズ以下の直径を有する粒子、例えば、酸化チタン(TiO)ナノ粒子を含み、多重散乱増幅部150は、前記多重散乱増幅部150に入射される波動の少なくとも一部を反射させることができる。
【0058】
多重散乱増幅部150は、サンプル(S)と隣接して配されて、サンプル(S)から多重散乱されて出射される波動が、サンプル(S)と前記多重散乱増幅部150との間の空間を少なくとも1回以上往復させうる。
【0059】
本発明の一実施形態によるパターン構造物検査装置100は、多重散乱増幅部150を通じてサンプル(S)内で波動の多重散乱される回数を増幅させることにより、サンプル内の含まれた微細なサイズの非正常領域に対する検出感度を向上させうる。
【0060】
多重散乱増幅部150は、入射される波動の一部を反射させ、残りの波動は透過させることができる。または、多重散乱増幅部150は、入射される波動の一部を透過させ、残りの波動は反射させることができる。または、多重散乱増幅部150は、入射される波動の全部を反射させることもできる。多重散乱増幅部150は、光源120と情報収集部130の光学系の構造に対応して前述した構成のうち少なくとも1つ以上選択されうる。
【0061】
図4aを参照すれば、パターン構造物検査装置100−1は、光源120と情報収集部130とを含む光学系を、反射型で構成することができる。サンプル(S)に入射された波動(L1)は、サンプル(S)の光学的に不均一である特徴のために、多重散乱現象が発行して、一部波動が反射して出る。この際、情報収集部130は、サンプル(S)の光学的な不均一性によってサンプル(S)に波動が反射して出射されることによって発生するレーザスペックル信号を撮影して、サンプル(S)によって誘発されたレーザスペックルを測定することができる。
【0062】
パターン構造物検査装置100−1は、第1多重散乱増幅部151及び第2多重散乱増幅部153を含みうる。第1多重散乱増幅部151は、サンプル(S)の中心を通る延長線(C)上に配され、サンプル(S)から多重散乱されて出射される波動の少なくとも一部をサンプル(S)に反射させることができる。
【0063】
第2多重散乱増幅部153は、サンプル(S)を基準に第1多重散乱増幅部151と対向して配され、サンプル(S)から多重散乱されて出射される波動の少なくとも一部をサンプル(S)に反射させることができる。反射型光学系の場合、第1多重散乱増幅部151は、波動の一部を透過させ、一部を反射させる半透過型からなりうる。
【0064】
また、第2多重散乱増幅部153は、入射される波動の全部を反射させる反射型からなりうる。それを通じて、サンプル(S)内で波動が多重散乱される回数を顕著に増幅させることができる。
【0065】
図4aにおいて、光源120の波長、波動の強度などの制限を受けずに使われ、情報収集部130の種類は、2次元情報を測定することができるカメラが望ましいが、1次元情報を測定するカメラも使われる。
【0066】
図4aにおいて、光源120、サンプル(S)の位置は制限されず、反射されたレーザスペックル信号を測定する情報収集部130は、測定された1つのスペックルサイズが情報収集部130のピクセルのうち、2〜3ピクセル以上に該当するように位置しうる。例えば、情報収集部130は、サンプル(S)による波動の反射によるレーザスペックル信号を測定するために、サンプル(S)に光が入射される面と一定角度で傾いて位置しうる。
【0067】
図4bを参照すれば、パターン構造物検査装置100−2は、光源120と情報収集部130とを含む光学系を、透過型で構成することができる。サンプル(S)に入射された波動は、サンプル(S)の光学的に不均一である特徴のために、多重散乱現象が発生して、一部波動がサンプル(S)を透過して出射されうる。
【0068】
そうすると、情報収集部130は、波動がサンプル(S)を透過して出射されるによって発生するレーザスペックル信号を撮影することにより、サンプル(S)を透過することによって誘発されたレーザスペックルを測定することができる。
【0069】
サンプル特性探知装置100−2の光学系が透過型で構成される場合、第1多重散乱増幅部151及び第2多重散乱増幅部153は、波動の一部を透過させ、一部を反射させる半透過型からなりうる。
【0070】
図4cを参照すれば、パターン構造物検査装置100−3は、光源120と情報収集部130とを含む光学系を、分光型で構成することができる。サンプル(S)に入射された波動(L1)は、サンプル(S)の光学的に不均一である特徴のために、多重散乱現象が発生して、一部波動が反射して出るようになり、それをビームスプリッタ(Beam splitter)181を用いて、一部波動の経路を情報収集部130に変更することができる。
【0071】
分光型からなる場合、波動の偏光状態を利用するために、位相遅延板または偏光板のような光学部をさらに含みうる。この際、情報収集部130は、光源120とサンプル(S)との間に位置し、サンプル(S)によって反射して出射される波動の経路を変更させることができる。また、情報収集部130は、サンプル(S)によって反射及び経路が変更されることによって発生するレーザスペックルを測定することができる。
【0072】
一方、パターン構造物検査装置100−3の光学系が分光型で構成される場合、第1多重散乱増幅部151は、波動の一部を透過させ、一部を反射させる半透過型からなりうる。また、第2多重散乱増幅部153は、入射される波動の全部を反射させる反射型からなりうる。
【0073】
一方、パターン構造物検査装置100は、制御部140及びディスプレイ部190をさらに含みうる。
【0074】
制御部140は、情報収集部130から収集されたスペックル情報を分析し、該分析の結果をディスプレイ部190に伝送する。例えば、制御部140は、レーザスペックルの形態を分析して、サンプルであるパターン構造物内のパターン形態が既定の設計案と互いに同一であるか否かを判断することができる。
【0075】
ディスプレイ部190は、制御部140から分析された情報をユーザが確認できるように外部に表示することができる。
【0076】
図5a及び図5bは、本発明の他の実施形態によるパターン構造物検査装置100−4を概略的に示す概念図である。図5a及び図5bでは、説明の便宜上、光学部135と情報収集部130との関係を中心に図示した。
【0077】
図5a及び図5bを参照すれば、パターン構造物検査装置100−4は、サンプルから散乱された第1波動信号を光源120の波動がサンプルによって散乱される前の第2光信号に復元する変調する光学部135をさらに含みうる。この際、光学部135は、空間光変調部(Spatial Light Modulator;SLM)1351及び情報収集部130を含みうる。光学部135は、測定対象から散乱された波動が入射されれば、散乱された波動の波面を制御して、再び散乱される前の波動(光)に復元して情報収集部130に提供することができる。空間光変調部1351は、サンプルから散乱された波動(光)が入射されうる。空間光変調部1351は、サンプルから散乱された波動の波面を制御して、レンズ1352に提供することができる。レンズ1352は、制御された光を集約して、再び情報収集部130に提供することができる。情報収集部130は、レンズから集約された波動を感知して、散乱される前の最初波動源から出力された波動に復元して出力することができる。
【0078】
一方、図6は、本発明の第2実施形態によるパターン構造物検査装置200−1の実施形態を概略的に示す図面である。第2実施形態において、パターン構造物検査装置200−1は、2つ以上の情報収集部230A、230B、230C、230Dを含みうる。この際、パターン構造物検査装置200−1は、複数の情報収集部230A、230B、230C、230Dから検出された複数のレーザスペックルを用いて3次元スペックルイメージを生成する3次元イメージ生成部245をさらに含みうる。3次元イメージを生成するために、理論的に必要な情報収集部230の台数は、2台であるが、2台では、相対的なイメージを把握するものなので、絶対的な3次元イメージを生成するためには、少なくとも3台の情報収集部230を含みうる。図面では、正確度の向上のために、4個の情報収集部230A、230B、230C、230Dを図示した。
【0079】
図7は、本発明の第3実施形態によるパターン構造物検査装置200−2の実施形態を概略的に示す図面である。
【0080】
図7を参照すれば、第3実施形態によるパターン構造物検査装置200−2は、サンプルホルダー210、基準サンプルホルダー215、光源220、情報収集部230、制御部240、ビームスプリッタ281及び多重ビームリフレクター283を含みうる。本実施形態は、基準サンプルホルダー215をさらに含み、それによる波動経路を異ならせるという点を除き、前述した実施形態との構成要素と同一なので、重複説明は省略する。基準サンプルホルダー215は、サンプルホルダー210と隣接して配され、基準サンプルを収容することができる。
【0081】
例えば、基準サンプルは、正常に製造されたことが確認された標準半導体素子であり、サンプルは、工程進行の正常有無を確認しなければならない半導体素子であり得る。
【0082】
光源220は、サンプルホルダー210内のサンプル及び基準サンプルホルダー215内の基準サンプルに向けてレーザを照射することができる。ここで、光源220とサンプルホルダー210及び基準サンプルホルダー215との間には、多重ビームリフレクター283及びビームスプリッタ281が位置しうる。また、光源220から提供された波動経路を変更するためのミラー285をさらに含むこともある。
【0083】
多重ビームリフレクター283は、光源220から入射された波動を分割させて複数の波動経路に提供することができる。多重ビームリフレクター283は、前面と裏面とでそれぞれ波動を反射させて、平行しながら分割された第1波動(L2)及び第2波動(L3)を提供することができる。
【0084】
ビームスプリッタ281は、多重ビームリフレクター283から提供される複数の波動経路上に配され、前記第1波動(L2)及び第2波動(L3)をそれぞれサンプル及び基準サンプルに提供することができる。以後、サンプル及び基準サンプルから反射して出射される波動の経路を変更して、情報収集部230に提供することができる。
【0085】
情報収集部230は、サンプル及び基準サンプルのそれぞれから、照射された波動の多重散乱によって発生した第1レーザスペックル及び基準レーザスペックルを検出することができる。情報収集部230は、サンプルから反射した第1波動の経路に対応して配された第1情報収集部231及び基準サンプルから反射した第2波動の経路に対応して配された第2情報収集部233を含みうる。
【0086】
制御部240は、検出された第1及び第2レーザスペックル情報を互いに比較分析して、前記第1及び第2レーザスペックル情報の差が既定の基準値以下であるかを判断する。もし、第1及び第2レーザスペックル情報の差が、前記基準値以下である場合には、サンプルである半導体素子のパターン構造が標準半導体素子のように正常に進められたと判断することができる。もし、その逆の場合には、サンプルである半導体素子のパターン構造に正常から外れた部分があると判断し、したがって、製造工程中に問題が発生したことを推定することができる。
【0087】
図8の(a)から図8の(c)には、サンプルの例として、半導体素子の多層金属配線構造物が示されている。以下、図8の(a)から図8の(c)を参照して、このようなサンプル構造物の変化を用いるスペックルパターンの分析方法について説明する。
【0088】
図8の(a)は、正常に工程が進められたものであり、図8の(b)は、ビア部分に空孔610が形成されたものであり、図8の(c)は、絶縁層604を貫通するコンタクト(contact)が形成されていないものである。
【0089】
前述したサンプルをサンプルホルダーに装着した後、サンプルにレーザを照射し、サンプルから散乱されるレーザスペックル情報を収集する。該収集された情報は、情報分析部に分析される。情報分析部は、制御部及びディスプレイ部を含む。
【0090】
情報分析部を構成する制御部は、標準サンプル、すなわち、図8の(a)のように進められた場合のレーザスペックル情報が保存されたDBと連結されている。前記制御部は、収集されたレーザスペックル情報とDBに既保存の標準サンプルのレーザスペックル情報とを互いに比較して、スペックルパターンの差値を導出する。このような差値が既定の基準以下であれば、分析サンプルは、標準サンプルと同じ構造を有していると解析され、したがって、工程は正常に進められたと判定されうる。
【0091】
一方、図8の(b)または図8の(c)のように、非正常に工程が進められてパターン上の異常領域が存在する場合には、収集されたスペックル情報と標準サンプルのスペックル情報との差が顕著であって、その差値は、既定の基準を超過し、したがって、工程が非正常に進められたということを判断することができる。
【0092】
前記制御部の判断の結果は、ディスプレイ部に伝送されてユーザが確認できるように出力される。
【0093】
図9の(a)及び図9の(b)は、他の例として、金属配線の線幅変化をレーザスペックル分析で確認する例である。図9の(a)のように、正常な線幅を有した場合には、標準サンプルとの差が既定の基準以下である。しかし、図9の(b)のように、非正常に線幅が形成された領域701がある場合には、標準サンプルとの差が顕著であり、これより工程が非正常に進められたということを判断することができる。
【0094】
パターン構造物の差によるレーザスペックル結果を確認するために、図9の(a)及び図9の(b)の形態を有するパターン構造物に対してレーザスペックル結果を電算模写(simulation)した。
【0095】
図10の(a)から図10の(c)には、電算模写に使われた設計案が示されている。図10の(c)には、シミュレーションのために設計した半導体素子の断面組織が示されている。図10の(c)を参照すれば、基板1100は、シリコン単結晶であり、基板1100の上部には、アルミニウムからなる金属配線1110が所定の隔離距離を置いて形成されている。金属配線1110が形成された後、シリコン酸化膜1120が金属配線1110を塗布した。図10の(a)から図10の(c)の図面で、グリドの間隔は、100nmであり、光源から照射されたレーザの波長は、532nmであった。
【0096】
図10の(a)は、正常に金属配線が形成された場合であり、図10の(b)は、金属配線の一部に短絡(defect)が形成された場合である。
【0097】
図11a及び図11bには、電算模写の結果が示されている。図11aは、図10の(a)に示された構造のレーザスペックル結果であり、図11bは、図10の(b)に示された構造のレーザスペックル結果である。
【0098】
図11a及び図11bに示されたように、金属配線の形成が非正常に進められた場合(図11b)には、正常に進められた場合(図11a)と顕著に異なるレーザスペックル結果を示すということが分かる。このような図11a及び図11bの結果を互いに比較することにより、金属配線の製造ステップでの工程異常有無を判断することができる。
【0099】
図12の(a)から図12の(c)には、さらに他の電算模写に使われた設計案が示されている。図12の(c)には、シミュレーションのために設計した半導体素子の断面組織が示されている。図12の(c)を参照すれば、基板2100は、シリコン単結晶であり、基板2100の上部には、アルミニウムからなる第1金属配線2110が所定の隔離距離を置いて形成されている。第1金属配線2110が形成された後、第1金属配線2110の上部にシリコン酸化膜で第1絶縁体層2120を形成した。第1絶縁体層2120の上部に第1金属配線2110の伸張方向に垂直に伸張する第2金属配線2130を形成した後、その上部に、やはりシリコン酸化膜で第2絶縁体層2140を形成した。金属配線2110、2130は、いずれもアルミニウムで構成されていた。
【0100】
但し、図12の(a)の場合には、第1及び第2金属配線2110、2130がいずれも正常に形成されたが、図12の(b)の場合には、下部の第1金属配線2110の一部領域に短絡が存在した。図12の(b)の場合、金属配線2130は、正常にパターニングされたので、平面図上で観察する場合、第1金属配線2110の短絡部分が第2金属配線2130によって遮断されて観察されない。図12の(a)から図12の(c)の図面で、グリドの間隔は、100nmであり、光源から照射されたレーザの波長は、532nmであった。
【0101】
図13a及び図13bには、電算模写の結果が示されている。図13aは、図12の(a)に示された構造のレーザスペックル結果であり、図13bは、図12の(b)に示された構造のレーザスペックル結果である。
【0102】
図13a及び図13bに示されたように、金属配線の形成が非正常に進められた場合(図13b)には、正常に進められた場合(図13a)と顕著に異なるレーザスペックル結果を示すということが分かる。このような図13a及び図13bの結果を互いに比較することにより、金属配線の製造ステップでの工程異常有無を判断することができる。
【0103】
特に、図13bの場合には、最上層部の形成された金属配線が可視光線領域で不透明なので、その下部に形成された非正常パターン領域(defect)を従来のような方法で観察することが容易ではなかった。しかし、本発明による場合、スペックルパターンが非正常に検出されることによって、それを通じて最上部金属配線の下部に存在する非正常パターン領域の存在を推定させうる。
【0104】
他の例として、シリコン基板にイオン注入によって形成された活性領域の異常有無に対しても、同じ方式で検査可能である。
【0105】
本発明の一実施形態による他のレーザ検査装置によれば、基板に同じ形態を有する複数のパターン領域が一定の距離を置いて周期的に反復されるように形成される素子において、前記各パターン領域の異常有無を判断する機能を行える。代表的に、シリコンウェーハ上に複数形成されたパターン領域を順次に検査して、シリコンウェーハ内に形成された複数個のパターン領域全体に対して、それぞれパターン形状の有無を判定する機能を行える。
【0106】
図14には、例示的に、シリコンウェーハ上に複数個のパターン領域が形成されている場合が示されている。この場合、パターン領域は、最終的に工程が完了する場合、ソーイング(sawing)によって分離されて、最終1つの素子になるように区画された領域である。
【0107】
本発明の一実施形態によるパターン構造物検査装置を利用する場合、複数のパターン領域、例えば、図14の矢印のように、左側最上段のパターン領域から出発して順次にレーザを照射し、情報収集部は、それぞれのパターン領域から該当するレーザスペックル情報を収集してDB上に保存する。
【0108】
情報分析部は、DBに保存された各パターン領域のレーザスペックル情報を分析して、パターンの異常有無を判断することができる基準を設定する。例示的に、レーザスペックル縞の強度や形態などが基準を設定するための特性になりうる。このような基準の対象となる特性を設定した後、全体パターン領域での平均値と標準偏差のような統計的分析を行う。遂行結果、導出された基準対象特性が平均値及び標準偏差が基準として設定される。
【0109】
例えば、収集されたレーザスペックル情報が平均値から顕著に外れたパターン領域は、他のパターン領域と異なる構造を有すると解析し、工程が非正常に進められた領域と見做す。したがって、このように非正常に進められたパターン領域についての情報を出力することにより、ユーザがシリコンウェーハを局部的に切断して照射せずとも、非正常なパターン領域についての情報を取得することができる。
【0110】
本発明は、図面に示された実施形態を参考にして説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これより多様な変形及び均等な他実施形態が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決定されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の一実施形態によれば、基板に順次に積層された構造物のパターン異常を非破壊的に短時間で検査することが可能である。本発明の一実施形態によれば、パターン構造物の最上部の部分でのパターン異常はもとより、その下部に形成されたパターン形態の異常も、短時間で検査することが可能であって、時間的効率性に優れ、多様な試験を可能にして、検査コストを節減することができる。
【符号の説明】
【0112】
100 パターン構造物検査装置
100−1 パターン構造物検査装置
100−2 パターン構造物検査装置
100−2 サンプル特性探知装置
100−3 パターン構造物検査装置
100−4 パターン構造物検査装置
110 サンプルホルダー
120 光源
130 情報収集部
135 光学部
140 制御部
150 多重散乱増幅部
151 第1多重散乱増幅部
153 第2多重散乱増幅部
181 ビームスプリッタ
190 ディスプレイ部
200−1 パターン構造物検査装置
200−2 パターン構造物検査装置
210 サンプルホルダー
215 基準サンプルホルダー
220 光源
230 情報収集部
230A 情報収集部
230B 情報収集部
230C 情報収集部
230D 情報収集部
231 第1情報収集部
233 第2情報収集部
240 制御部
281 ビームスプリッタ
283 多重ビームリフレクター
285 ミラー
図1a
図1b
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図6
図7
図8(a)】
図8(b)】
図8(c)】
図9(a)】
図9(b)】
図10
図11a
図11b
図12
図13a
図13b
図14
図15