(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記HMS−PPが、I)メタロセン触媒を用いて合成した長鎖分枝ポリプロピレンであるか、またはII)ポリプロピレンホモポリマーもしくは6wt%未満のコモノマーを有するポリプロピレンコポリマーを修飾することによって生成され、前記修飾は、a)電子ビーム照射によって、またはb)多価不飽和化合物の存在下での過酸化物との反応によって行われ、続いてVDA 278:2011に従って決定して75μgTE/g未満のVOC、およびVDA 278:2011に従って決定して150μgHD/g未満のFOGに揮発性物質を低減させるために熱処理が行われる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
発泡物品は、特に軽量、低コスト、および成形の容易さのために、自動車工業において、および食品包装材料として広く使用されている。発泡物品に関する課題は、発泡プロセスの結果として、有機化合物排出量が、発泡体に関して、元のポリマーよりも高いことである。使用中の望ましくない排出量は自動車内装で起こり得る上昇した温度で悪化する。
【0003】
有機化合物排出量が少ないとは、標準的なVDA 278:2011に定義されているように、低揮発性有機化合物(VOC)および/または低いFOG排出量を意味する。VDA規制は自動車部品からの有機排出物に対処している。VDA試験は、ポリプロピレンポリマーの自動車用非金属材料の特性評価(10/2011)のための有機排出物の熱脱離分析に基づいており、C25までの高揮発性物質および中揮発性物質(VOC)ならびにC14からC32までの範囲の低揮発性(FOG)の2つのクラスの化合物が識別されている。
【0004】
自動車の車室内の汚染レベルに関するデータはほとんど存在しない。しかし、発がん性およびアレルギー活性および呼吸器の問題に関する「新車臭」の潜在的な健康上の危険性に関して、重大な懸念および問題が提起されている。
【0005】
したがって、自動車内装工業用に製造された発泡物品は、VOCが少なくともある程度放出されてから自動車の内装に組み込まれるように、長期間保存される。これは、タイミング、空間、およびコストの点で、自動車工業において大きな欠点である。さらに、これは、FOGの周囲温度蒸気圧が低すぎるので、FOGを有意に減少させることができず、今日まで、低排出性、非毒性の内装は利用できていない。
【0006】
多くの試みは、有機排出物が減少した発泡体を提供することを目的とした。例えば、特許文献1は、ペンタンなどの有機可塑化発泡剤、および二酸化炭素などの大気気体の混合物である発泡剤を用いて調製されるポリスチレンの熱可塑性発泡体に関する。このような発泡体は、純粋な炭化水素発泡剤を用いて発泡させたものと比較して、経年により排出量が減少する。
【0007】
特許文献2は、ポリエチレンの発泡性溶融物、核形成剤、アルカンの移動を遅延させる材料、および10〜100mol%のエタンを含む発泡剤を形成することによって膨張したポリエチレン材料に関する。低いVOC排出量が1つの利点として主張されている。
【0008】
特許文献3は、少なくとも1種のアルケニル芳香族ポリマー樹脂を溶融することを含む、アルケニル芳香族ポリマー発泡構造を製造する方法を包含する。少なくとも1種のVOC発泡剤およびアセトンを含む有効量の発泡剤混合物が、少なくとも1種のアルケニル芳香族ポリマーに溶解される。得られた発泡構造は低い排出量を特徴とする。
【0009】
特許文献4は、約0.5〜約30g/10分のD1238Lメルトフローレートを有するポリプロピレン樹脂を含む発泡性ポリプロピレン組成物、および0.4〜約0.8g/cm
3の範囲の密度を有する改善された表面外観を有する硬質の発泡ポリプロピレンシートを押し出す方法を記載している。化学発泡剤が使用され、全体的に低い排出量が主張されている。
【0010】
発泡ポリプロピレンは、自動車工業において、その汎用性およびリサイクル性のために重要な役割を果たし、バンパーおよびサイドシルなどの自動車外装用途、ならびにダッシュボードおよび内装トリムなどの自動車内装用途に使用されている。しかしながら、既存のポリプロピレン発泡体の課題は、依然として揮発性有機化合物を低減させることである。押出し発泡の間、発泡剤を加えることにより、発泡剤はポリマーに部分的に溶解し、発泡体形成後にゆっくりと放出されるので、VOCおよびFOG排出量は出発ポリプロピレン物質の値と比較して増加し、比表面積の増加は以前に移動が制限された成分の放出を促進し、処理中の分解現象は、より多くのオリゴマーをもたらすと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面は例示の目的のみを意図しており、特許請求の範囲によって規定される範囲または保護の制限として与えるものではない。
【0017】
好ましくは、熱処理は、HMS−PPの溶融温度より5〜15℃低い処理温度Ttで、1〜10分、好ましくは2〜8分または3〜5分の時間行われる。より好ましくは、HMS−PP発泡体の溶融温度Tmは少なくとも150℃であり、熱処理温度Ttは120〜145℃である。より高いTmでは、寸法安定性は、より高い温度で保証され、揮発性物質は、より高い温度で、より短い時間で減少させることができる。
【0018】
溶融温度Tmは、5〜10mgの試料でTA Instrument Q2000示差走査熱量測定装置(DSC)を使用してDSC分析によってISO−11357−3に従って測定される。結晶化(Tc)および溶融温度(Tm)は、30℃〜225℃の間で10℃/分の走査速度で加熱/冷却/加熱サイクルにおいて得られた。溶融温度(Tm)および結晶化温度(Tc)を、それぞれ、冷却サイクルおよび第2の加熱サイクルにおける吸熱および発熱のピークとして得た。ポリプロピレン組成物が1つより多いポリプロピレン成分を含む場合、溶融温度Tmは、最も高い融点を有する組成物の部分の溶融温度を指し、特に異相ポリプロピレン組成物の場合、Tmは、マトリクスを形成する少なくとも50wt%のポリプロピレン(複数も含む)の(より高い)Tmを指す。
【0019】
HMS−PPは、本明細書に参照により組み込まれる欧州特許第2000504号に定義されるように、典型的に、少なくとも200mm/sの最大速度で少なくとも25cNの溶融強度、さらにより好ましくは少なくとも250mm/sの最大速度で少なくとも25cNの溶融強度(2mmの直径および6mmの長さを有するキャピラリーダイ、および120mm/sec
2の溶融ストランド引き出しの加速度で200℃の温度を使用してRheotens装置において測定した)を有する発泡プロセスを考慮して、高い溶融強度を必要とする。
【0020】
あるいは、HMS−PPポリマーの高い溶融強度は、本明細書に参照により組み込まれる米国特許第8722805号に記載されているように、3.0s
−1の歪速度および2.5のHencky歪において測定して、少なくとも1.7、より好ましくは少なくとも2、さらにより好ましくは2〜15の範囲、なお好ましくは3.5〜15の範囲、なおさらにより好ましくは3.5〜6.5の範囲の歪硬化係数(SHF)を有することを特徴とし得る。
【0021】
HMS−PPは、好ましくは、ASTM 01238条件Lに従って、0.5〜7、最も好ましくは0.5〜4dg/分のメルトフローレートMFRを有する。好ましくは、HMS−PPは、既知の手順、好ましくはGPC/VIS/LSによって測定して、少なくとも2000000g/molのz平均分子量を有する。
【0022】
方法において使用されるプロピレン組成物は、高溶融強度プロピレン(HMS−PP)ホモポリマーもしくはコポリマーまたはそれらの組み合わせを含む。組み合わせは、物理的ブレンド、混合物または反応器ブレンドであってもよい。本発明の目的のために、「プロピレンホモポリマー」という表現は、実質的に、すなわち、少なくとも97mol%、好ましくは少なくとも98mol%、より好ましくは少なくとも99mol%、最も好ましくは少なくとも99.8mol%のプロピレン単位からなるポリプロピレンを指す。好ましい実施形態において、プロピレンホモポリマーにおけるプロピレン単位のみが検出可能である。
【0023】
プロピレンコポリマーは、好ましくは、プロピレンモノマーと、エチレンおよびC4〜C12αオレフィンから選択される1.0〜10.0wt%の少なくとも1つのコモノマーとを含む。好ましいPPコポリマーは、プロピレンモノマーを含み、ISO−11357−3に従って測定して135〜155℃の範囲の溶融温度ならびに230℃の温度および2.16kgの荷重下でISO1133に従って測定して0.1〜15g/10分の範囲のメルトフローレート(MFR2)を有する結晶性プロピレンランダムコポリマーである。
【0024】
高溶融強度ポリプロピレンHMS−PPは、I)メタロセン触媒を用いて合成した長鎖分枝ポリプロピレンであってもよいか、またはII)ポリプロピレンホモポリマーもしくは6wt%未満のコモノマーを有するポリプロピレンコポリマーを修飾することによって生成されてもよく、ここで、修飾は、a)電子ビーム照射によって、またはb)多価不飽和化合物の存在下での過酸化物との反応によって行われ、続いて75μgTE/g未満のVOCおよび150μgHD/g未満のFOGに揮発性物質を低減させるために熱処理が行われる。
【0025】
適切なHMS分枝ポリプロピレンは、本明細書に参照により組み込まれる欧州特許第1892264号に記載されている特定のメタロセン触媒の使用によって得ることができる。
【0026】
本明細書に参照により組み込まれる欧州特許第0879830号は、ポリプロピレンホモポリマーまたはポリプロピレンコポリマーが過酸化物およびブタジエンで修飾される、反応器後プロセス(上記のプロセスII.b)において生成される適切な高溶融強度(HMS)ポリプロピレンを記載している。この特許は、広範囲の粉末メルトフローレート(MFR)および粒径を包含する。このようなプロセスにおいて、分解生成物およびHMS−PPポリマー自体からの起こり得る未反応反応物からの排出を低減するために、熱後処理を行うことが好ましい。
【0027】
別の適切なHMS−PPは、本明細書に参照により組み込まれる米国特許第6521675号に記載されており、それは、約0.5〜約30g/10分のメルトフローレートを有するポリプロピレン樹脂を含む発泡性ポリプロピレン組成物および0.4〜約0.8g/cm
3の範囲の密度を有する改善された表面外観を有する硬質発泡性ポリプロピレンシートを押出す方法に関する。ポリプロピレン樹脂は単峰性の分子量分布を有し、有意な分枝がない。
【0028】
適切な市販のHMS−PPグレードは、例えば、オーストリアのBorealis AG製のDaploy WB140HMS、WB135HMSまたはWB130HMSである。
【0029】
好ましい実施形態において、方法において使用されるプロピレンポリマー組成物は、少なくとも50wt%(プロピレンポリマー組成物の全重量に対して)のa)HMS−PP、ならびに50wt%以下のb)エチレンおよび任意に他のC4〜C10α−オレフィンまたはポリエチレンを有するランダムコポリマーまたは異相コポリマーのような1つまたは複数のポリプロピレンコポリマーを含む。このプロピレンポリマー組成物は異相コポリマー組成物であってもよく、ここでHMS−PPポリマーa)は、ランダムコポリマーb)と一緒にマトリクス相を形成するか、または異相コポリマーb)のマトリクス部分を形成し、一方、異相コポリマーb)および/またはポリエチレンの分散ゴム相は分散相を形成する。このようなプロピレンポリマー組成物の溶融温度Tmはマトリクス相を形成する組成物(複数も含む)のTmであり、1つより多い溶融温度が存在する場合、それはマトリクス相の最も低い溶融温度を意味する。
【0030】
本明細書に参照により組み込まれる欧州特許第1354901号は、プロピレンホモポリマーおよび/または20wt%以下のエチレンとのプロピレンコポリマーを含むマトリクス相(HMS−PPであり得る)と、プロペンおよび20〜70wt%のエチレンとのエチレンゴムコポリマーを含む分散相(エチレンゴムコポリマーは粒子形態でポリマー組成物内に分散されている)とを含む適切な異相プロピレンポリマー組成物を記載している。
【0031】
好ましい実施形態において、方法において使用されるポリプロピレン組成物は、異相ポリプロピレンコポリマー(HECO)、例えばBorealis製のBC250MOとの混合物中にHMS−PPを、好ましくは相対量で30〜70wt%、好ましくは40〜60wt%のHMS−PP(HMS−PPおよびHECOの合計に対するwt%)を含む。典型的な異相ポリプロピレンコポリマー(HECO)は、マトリクス相としてポリプロピレンホモポリマーを含み、150〜170℃の範囲の溶融温度Tmを特徴とする。このようなコポリマーは例えば、国際公開第2016/066446号および欧州特許第3015504号に記載されている。
【0032】
このような異相プロピレンコポリマー(HECO)は、プロピレンコポリマーゴム(エラストマー)を含有する非晶質相が分散された、プロピレンホモポリマーまたはランダムプロピレンコポリマーのいずれかであるマトリクスを含む。したがって、ポリプロピレンマトリクスは、マトリクスの一部ではない(微細に)分散された含有物を含み、前記含有物はエラストマーを含有する。含有物という用語は、マトリクスおよび含有物が異相プロピレンコポリマー(HECO)内で異なる相を形成することを示し、前記含有物は、例えば、電子顕微鏡もしくは走査型力顕微鏡もしくは原子間力顕微鏡のような高分解能顕微鏡によって、または動的機械熱分析(DMTA:dynamic mechanical thermal analysis)によって可視化できる。さらに、異相ポリプロピレンは、異相プロピレンコポリマーの調製によって得られる副反応生成物である結晶性ポリエチレンをある程度含有してもよい。このような結晶性ポリエチレンは、熱力学的理由に起因して非晶質相の含有物として存在する。
【0033】
方法において使用されるポリプロピレン組成物は、少量の非プロピレンポリマーを含んでもよく、これには、高密度、中密度、低密度、および線密度ポリエチレン、ポリブテン−1、エチレン/アクリル酸コポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、スチレン/ブタジエンコポリマー、エチレン/スチレンコポリマー、エチレン/アクリル酸エチルコポリマー、およびイオノマーが含まれ得る。発泡性プロピレンポリマー組成物は、所望により、高密度ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、EPDMゴム(エチレン/プロピレン/ジアミンコポリマー)およびポリエチレンの熱可塑性オレフィン混合物などの他の有用な熱可塑性物質を含んでもよい。発泡性プロピレンポリマー組成物は、プロピレンポリマー組成物の全重量に基づいて、好ましくは20wt%未満、より好ましくは10wt%未満、最も好ましくは5wt%未満の非プロピレンポリマーを含む。
【0034】
発泡体は、バキュームフォームによって、発泡性プロピレン組成物混合物の物理的撹拌によって、または発泡性プロピレンポリマー組成物に発泡剤を組み込むことによって製造することができる。好ましい実施形態において、発泡剤は発泡性プロピレンポリマー組成物に組み込まれる。
【0035】
発泡製品は、概して、典型的には20g/リットル以上のフォーム密度を有するビーズの形態であってもよく、またはより好ましくは、典型的には350g/リットル以下のフォーム密度を有する押出発泡体の形態であってもよい。発泡体はまた、発泡ビーズまたは押出物から製造された物品であってもよい。
【0036】
方法は、既存の発泡製品に対する熱処理であってもよいが、本発明の方法の好ましい実施形態において、発泡体は、HMS−PP、発泡剤、および好ましくは発泡核形成剤を含む組成物を押出し、次いで発泡押出物を溶融温度Tmよりも10〜30℃低い温度に冷却し、続いて発泡押出物を熱処理温度Ttにし、熱処理を行うことによって形成される。
【0037】
本発明のポリプロピレン組成物の発泡に使用される発泡剤は、いかなるクラスまたは種類にも限定されない。それは、炭化水素および/もしくは無機物の種類のいずれか、いずれかの種類および/もしくは両方の種類の組み合わせまたは二酸化炭素の化学発泡剤、または物理発泡剤であってもよい。しかしながら、3〜10個、好ましくは3〜8個の炭素原子を有する好ましくは脂肪族有機溶媒である、物理発泡剤が使用され、より好ましくはポリプロピレン組成物が、n−ブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、分枝異性体またはそれらの混合物から選択される脂肪族有機溶媒の存在下で押出される。
【0038】
発泡剤は、概して、発泡層を調製するために、溶融発泡性プロピレンポリマー組成物に組み込まれる。溶融発泡性プロピレン組成物に組み込まれる発泡剤の量は、発泡剤および発泡性プロピレンポリマー組成物の総重量に基づいて、概して0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%である。
【0039】
発泡剤は、ポリプロピレンに部分的に溶解され、発泡剤が蒸発するにつれて、PPポリマーの有効な溶融温度が増加し、同時に、押出物が、行われる発泡剤の蒸発によって冷却される。これは、発泡体の構造および生成物の形状の迅速な固定につながり、これは、寸法安定性を迅速に提供するが、揮発性成分の取り込みにもつながる。熱処理は揮発性発泡剤の蒸発を可能にするが、発泡剤の蒸発もまた、揮発性の低い有機物成分を追い出し、低VOCおよび低FOGをもたらす。
【0040】
熱処理プロセスは、得られたポリプロピレン発泡製品が、90℃にて0.5時間、VDA278:2011に従って決定して、300μgTE/g未満、好ましくは200μgTE/g未満、150μgTE/g未満または100μgTE/g未満、最も好ましくは50μgTE/g未満の揮発性有機化合物(VOC)排出量を有するような時間および温度で実施される。好ましくは、得られたポリプロピレン発泡製品は、120℃にて1.0時間、VDA278:2011に従って決定して、200μgHD/g未満、好ましくは150μgHD/g未満、最も好ましくは100μgHD/g未満のFOG排出量を有する。
【0041】
得られたポリプロピレン発泡製品は、発泡前のポリプロピレン構成物質の算出した重量平均VOCおよびFOG放出レベルの150%以下、120%以下、またはより好ましくは100%未満のVOCおよびFOG排出レベルを有することができることが見出された。
【0042】
方法において、ポリプロピレン組成物は、好ましくは酸化防止剤をさらに含み、熱処理(温度および時間)は、酸化防止剤の量が20wt%未満、好ましくは15wt%未満、より好ましくは10wt%未満低減するようなものである。これは、特定のポリプロピレンを用いる本発明のプロセスにおいて、熱処理中に有意な酸化分解がないことを意味する。
【0043】
発泡性プロピレンポリマー組成物は、発泡セルの大きさを制御するために任意に核形成剤を含んでもよい。有用な核形成剤は、米国特許第6,417,242号の第11欄63行〜第12欄3行に教示されている。好ましい核形成剤には、炭酸カルシウム、滑石、粘土、二酸化チタン、シリカ、ステアリン酸バリウム、および珪藻土などの無機物が含まれる。利用される核形成剤の量は、ポリマー樹脂100重量部当たり0.1〜3重量部の範囲であってもよい。好ましい範囲は0.3〜2重量部である。
【0044】
遊離基抑制剤および紫外線(UV)安定剤を含む安定剤、中和剤、スリップ剤、ブロック防止剤、色素、帯電防止剤、清澄剤、ワックス、樹脂、充填剤、例えばナノ充填剤、シリカおよびカーボンブラック、発泡安定剤ならびに当該技術分野において組み合わせてまたは単独で使用される他の添加剤などの、さらなる添加剤が発泡性プロピレンポリマー組成物に任意に含まれる。有効量は当該技術分野において知られており、組成物におけるポリマーのパラメーターおよびそれらが曝露される条件に依存する。
【0045】
HMS−PPを含み、発泡剤および任意に核形成剤および他の添加剤、ならびに任意に上記の他のポリマーを含むPP組成物は、円筒形ダイから溶融物により押し出される。発泡は、ダイから溶融物が出ると開始する。円筒形発泡シートは冷却され、スリット開放されてシートを形成する。配向または延伸は、押出後に行うことができる。
【0046】
本発明はまた、特に発泡シート、ビーズ、パイプ、好ましくは発泡シートまたはビーズから作製されたシートまたは物品の形態である、本発明による方法によって得られるポリプロピレン発泡製品にも関する。ポリプロピレン発泡製品は低いVOCを有し、好ましくは上記のように低いFOG特性も有する。
【0047】
本発明はまた、発泡体を含み、密閉された部屋または区画、特に自動車または食品包装で使用するために低いVOCおよび低いFOGを有する物品を製造する方法であって、本発明の方法によって生成されるポリプロピレン発泡体の使用を含む、方法にも関する。
【実施例】
【0048】
この実施例は例示を意図するものであり、限定を意図するものではない。当業者には、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の代替および等価の実施形態を考慮し、実施するように合わせることができることが明らかであろう。
【0049】
実施例1:
50wt%のWB140HMS(Borealis製)、49wt%のBC250MO(Borealis製)、発泡核形成剤として1wt%のタルクを含むポリプロピレン組成物を、発泡剤として4wt%のイソブテンを使用して押出して、150g/リットルの密度を有する発泡シートを作製した。BC250MOは、耐衝撃性の高いポリプロピレン異相コポリマーである。3mmの発泡体層を室温に直接冷却した。発泡シートの溶融温度Tmは150℃(DSCにより測定、10℃/分、シート製造後1時間で測定)であった。
【0050】
押出発泡シートを10×10cmの断片に切断し、100℃、120℃および140℃の温度で1分〜4日間の範囲の時間、熱処理に供した。試料のVOCおよびFOG値は以下に記載されるように測定した。結果を
図1および2に示す。
【0051】
VOC
VOC排出量は、VDA 278:2011に従って決定した。VDA規格は、「Verband der Automobilindustrie」によって発行されている。VDA 278規格は厳格なワークフローを規定している。ここでは、2つの較正基準を測定する。トルエンを、VOC較正のための応答係数を決定するために使用し、ヘキサデカンを、FOG較正のための応答係数を決定するためにそれぞれ使用する。標準溶液の注入後、溶媒を窒素の連続流量(100mL/分)下で5分間蒸発させる。調査する試料(整形部品の上層)を分析の直前にその包装から取り出し、小片(約10mg)に切断し、次いで注意深く清浄化した脱着管の中央に配置する。各試料を2回測定し、最初にそのVOC値(90℃で30分間の脱着)を決定し、続いてそのFOG値(120℃で1時間の脱着)も決定する。
【0052】
VDA 278によるVOCは、全ての高揮発性化合物および中揮発性化合物の合計である。これはトルエン当量(TE)として計算される。VDA 278によるVOCは、最大でC20(n−エイコサン)までの沸点および溶出範囲における全ての有機化合物を表す。VOC=130μgTE/gおよびFOG=384μgHD/g(発泡剤および分解を除く)。
【0053】
VOCおよびFOGの排出量は、10×10cmのHMS−PPシートから決定した。
【0054】
FOG
FOGは、VDA 278:2011に従って決定した。VDA 278によるFOGは、n−ヘキサデカン以上の溶出時間を有する低揮発性の全ての有機化合物の合計である。FOGはヘキサデカン当量(HE)として計算される。VDA 278によるFOGは、n−アルカンC16〜C32の沸点範囲における有機化合物を表す。
【0055】
また、構成ポリプロピレン出発物質WB140HMSおよびBC250MOのVOCおよびFOGも測定した。値は以下であった。
WB140HMS:VOC=67μgTE/gおよびFOG=102μgHD/g
BC250MO:VOC=196μgTE/gおよびFOG=680μgHD/g
発泡前のポリプロピレン組成物(したがって、発泡剤および分解を除く)についての重量平均計算値は、VOC=130μgTE/gおよびFOG=384μgHD/gである。
【0056】
結果は、VOCおよびFOGの非常に迅速な低減が特に140℃の最高試験温度で可能であったことを示している。さらに、本発明による発泡体のVOC/FOG排出量は、出発物質についての計算された平均値よりもさらに低く、HMS−PP成分自体の値よりもさらに低いことが示された。
【0057】
歪硬化挙動(溶融強度)
歪硬化挙動は、本明細書に参照により組み込まれる欧州特許第2000504号、およびまた、論文「Rheotens−Mastercurves and Drawability of Polymer Melts」,M.H.Wagner,Polymer Engineering and Sience,MID−APRIL ISW,Vol.36,No.7,925〜935ページに記載されている方法によって決定する。この文書の内容は参照により含まれる。
【0058】
測定方法の詳細な説明のために、
図3および
図4も参照されたい。
図3は、歪硬化を決定するために使用される実験手順の概略図を示す。
【0059】
ポリマーの歪硬化挙動をRheotens装置(1)(Gottfert、Siemensstr.2、74711 Buchen、ドイツの製品)によって分析し、この装置においては定められた加速度で引き出すことによって溶融ストランド(2)を伸長させる。引き出し速度vに依存して引張力Fが記録される。
【0060】
試験手順は、23℃の室温に制御された標準的な気候室において実施する。Rheotens装置(1)を、溶融ストランド(2)を連続供給するために押出機/溶融ポンプ(3)と組み合わせる。押出温度は200℃であり、直径2mmおよび長さ6mmを有するキャピラリーダイを使用する。実験の開始時に、Rheotensホイールの巻き取り速度を、押出されたポリマーストランドの速度(張力0)に調節した:次に、ポリマーフィラメントが破断するまでRheotensホイールの巻き取り速度をゆっくり増加させることによって実験を開始した。ホイールの加速度は、張力が準定常条件下で測定されるように十分に小さかった。溶融ストランド(2)引き出しの加速は120mm/sec
2である。
【0061】
RheotensをPCプログラムEXTENSと組み合わせて操作した。これは、リアルタイムデータ取得プログラムであり、張力および引き出し速度の測定データを表示し、保存する。
【0062】
図1の模式図は、引き出し速度v(すなわち、「引抜き性」)の増加に対する引張力F(すなわち、「溶融強度」)の測定された増加を例示的に示す。
【0063】
図4は、歪硬化挙動を有するおよび有さないポリマー試料のRheotens測定値の記録された曲線を示す。ストランドの破壊時の最大点(Fmax;vmax)は、溶融物の強度および引抜き性に特徴的である。
【0064】
230℃/2.16kgで0.3、2.0および3.0g/10分のメルトインデックスを有する標準的なプロピレンポリマー4、5、6は、非常に低い溶融強度および低い引抜き性を示す。それらは歪硬化を有さない。
【0065】
変性プロピレンポリマー7(図中の試料のメルトインデックスは、230℃/2.16kgで2〜3g/10分である)またはLDPE 8(図中の試料のメルトインデックスは230℃/2.16kgで0.7g/10分である)は、完全に異なった引抜き性対溶融強度挙動を示す。引き出し速度vが増加すると、引張力Fは、標準的なプロピレンポリマー4、5、6と比較して、非常に高いレベルまで増加する。この曲線形状は歪硬化に特徴的である。
【0066】
歪硬化係数(SHF)
歪硬化係数は、本明細書に参照により組み込まれる米国特許第8722805号に記載されているように測定した。歪硬化係数は以下のように定義される。
【数1】
式中、
【数2】
は、一軸伸長粘度であり、
【数3】
は、変形の線形範囲における3倍の時間依存剪断粘度(η
+(t))である。
【0067】
IRIS Rheo Hub 2008を使用した伸長
【数4】
における線形粘弾性エンベロープの決定は、貯蔵および損失係数データ(G’,G’’(ω))からの離散的緩和時間スペクトルの計算を必要とした。線形粘弾性データ(G’,G’’(ω))は、25mmの平行プレートと結合したAnton Paar MCR 300で、180℃で行った周波数掃引測定によって得られる。離散的緩和スペクトルの決定のために使用される基本的な計算原理は、Baumgartel M,Winter HH,「Determination of the discrete relaxation and retardation time spectra from dynamic mechanical data」,Rheol Acta 28:511519(1989)に記載されており、その全体は参照により組み込まれる。
【0068】
IRIS RheoHub 2008は、緩和時間スペクトルをN Maxwellモデルの合計として表し、
【数5】
式中、g
iおよびλ
iは材料パラメーターであり、G
eは平衡係数である。
【0069】
離散的緩和スペクトルの決定のために使用されるモードの最大数Nの選択は、IRIS RheoHub 2008からのオプション「最適」を使用することによって行われる。平衡係数G
eはゼロに設定した。
【数6】
を得るために使用した非線形フィッティングは、Doi−Edwardsモデルを使用してIRIS Rheo Hub 2008で実施した。
【0070】
一軸伸長粘度
【数7】
は、Sentmanat伸長固定具(SER−1)と連結したAnton Paar MCR 501で行った一軸伸長流測定から得られる。一軸伸長流測定のための温度は180℃に設定し、0.3s
−1〜10s
−1の範囲の伸長(歪)速度
【数8】
を適用し、Hencky歪の範囲
ε=ln[(l−l
0)/l
0]
をカバーし、式中、l
0は元の値であり、lは0.3〜3.0の実際の試料固定長である。特に伸長流のための試料の調製に注意を払った。試料は230℃で圧縮成形し、続いて室温までゆっくりと冷却することによって調製した(強制的な水または空冷は使用しなかった)。この手順は、残留応力のない良好な形状の試料を得ることを可能にした。熱安定性を確実にするために試料を試験温度(設定温度±0.1℃)で数分間静置し、その後、一軸伸長流測定を実施した。