(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851489
(24)【登録日】2021年3月11日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】新規エルゴステノールグリコシド誘導体
(51)【国際特許分類】
C07J 17/00 20060101AFI20210322BHJP
A61K 31/575 20060101ALI20210322BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20210322BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20210322BHJP
A61P 17/08 20060101ALI20210322BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20210322BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20210322BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20210322BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20210322BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20210322BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20210322BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20210322BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20210322BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20210322BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20210322BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20210322BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20210322BHJP
【FI】
C07J17/00
A61K31/575
A61K31/704
A61P17/00
A61P17/08
A61P37/08
A61K9/06
A61K9/107
A61K9/12
A61K9/70 401
A61Q19/00
A61K8/63
A61Q1/02
A61Q5/02
A61Q5/10
A61Q19/10
!C07B61/00 300
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-539762(P2019-539762)
(86)(22)【出願日】2017年3月24日
(65)【公表番号】特表2020-506177(P2020-506177A)
(43)【公表日】2020年2月27日
(86)【国際出願番号】KR2017003183
(87)【国際公開番号】WO2018135699
(87)【国際公開日】20180726
【審査請求日】2019年7月23日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0010639
(32)【優先日】2017年1月23日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513180473
【氏名又は名称】エスティ ファーム カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ハクウォン
(72)【発明者】
【氏名】リー、タエ フーン
(72)【発明者】
【氏名】パク、フーンギュ
(72)【発明者】
【氏名】オー、ヒュンジェオン
【審査官】
神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第102940606(CN,A)
【文献】
Marine Drugs,2012年,Vol.10,pp.521-538
【文献】
International Journal of Nanomedicine,2012年,Vol.7,pp.5067-5078
【文献】
Journal of Agricultural and Food Chemistry,2013年,Vol.61,pp.5961-5971
【文献】
Journal of Organic Chemistry,1953年,Vol.18,pp.276-281
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07J
A61K
A61Q
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1で表示される化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【化1】
化学式1
前記式で、Rは単糖類(monosaccharide)またはアミノ糖(amino sugar)である。
【請求項2】
前記Rは、
【化2】
からなる群より選択されたものである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項3】
下記の化学式1で表示される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効性分に含む、皮膚炎の予防または治療用薬学組成物。
【化3】
【請求項4】
前記皮膚炎は、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、または脂漏性皮膚炎からなる群より選択されるいずれか1つである、請求項3に記載の皮膚炎予防または治療用薬学組成物。
【請求項5】
前記組成物は、軟膏、ゲル、クリーム、パッチ、及び噴霧剤からなる群より選択される剤形である、請求項3に記載の薬学組成物。
【請求項6】
下記の化学式1で表示される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む皮膚炎の改善または緩和用化粧料組成物。
【化4】
【請求項7】
エルゴステロールをアルコール溶媒及び塩素系有機溶媒下にPd/C触媒と反応させてエルゴステノールを収得する段階を含む、下記の化学式1で表示される化合物の製造方法。
【化5】
【請求項8】
前記塩素系有機溶媒は、メチレンクロライド、クロロホルム、1,2−ジクロロエテインからなる群より選択されるものである、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
エルゴステロールをアルコール溶媒及び塩素系有機溶媒下にPd/C触媒と反応させてエルゴステノールを収得する段階;及び
前記収得したエルゴステノールをOH基が保護された糖と塩素系有機溶媒下に混合した後、酸触媒存在下に撹拌する段階を含む、下記の化学式1を有する化合物の製造方法。
【化6】
【請求項10】
前記酸触媒はTMSOTf、BF3OEt2、Cu(OTf)2、Sc(OTf)3、SiO2−H2SO4、及びセルロース−HClO4からなる群より選択されたものである、請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エルゴステノールグリコシド誘導体及びこれを含む皮膚炎予防及び治療用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アトピー(atopy)とは、ギリシャ語である‘a-topos’が語源で、‘特異な’、‘異常な’、‘正常でない反応’などの意味を有する。文字通り多様な原因が複雑に縺れて発病し、緩和と再発を反復する。
【0003】
アトピー疾患にはアレルギー喘息、アレルギー結膜炎、アレルギー鼻炎、アトピー皮膚炎などがあり、これらの疾患は単独またはいろいろな疾患が同時に表れることがある。
【0004】
現在まで知られているアトピー疾患の発病原因は正確に明らかになっていないが、普遍的に遺伝的、免疫学的な要因が関与することと推定され、その他の環境的、精神的要因などが悪化要因として作用するということが専門家の普遍的な見解である。
【0005】
アトピー皮膚炎は嬰児と小児で最もありふれた皮膚疾患の1つであり、生後6ケ月間に45%、生後12ケ月以前に60%、5歳以前に少なくとも85%の割合で始まる。普通、幼い時に暫し病む病気と知られているが、患者の50%は2週間以内にその症状がなくなるが、25%は青年期まで持続し、残りの25%は成人になってもなくならずに続く。
【0006】
アトピー皮膚炎の主要症状はかゆみであるが、掻けば湿疹性病変に発展し、このような病変が進行するにつれて、より甚だしい掻痒症が誘発する一連の悪循環が反復されるようになる。
【0007】
現在、皮膚免疫疾患治療に使われる製剤には、ステロイド剤、抗ヒスタミン剤、免疫調節剤などが使われており、そのうち、ステロイド系薬品が消炎効果及び免疫抑制効果が最も優れると知られている。しかしながら、ステロイド剤を長期間使用すれば、塗布した部位の皮膚で毛が生え、皮膚が委縮され、皮膚色素が少なくなり、皮膚が薄くなるなどの副作用を起こすと報告されている。
【0008】
一例に、現在アトピー皮膚炎に最も広く使われる治療剤はステロイド剤として知られたデキサメタソン(Dexamethasone)があるが、これは短期治療に効果的であり、1年以上の長期治療時には安定性とその効能が成立されず、皮膚が薄くなるか、皮膚委縮、傷痕、皮膚変色などの副作用が発生する事例が報告されるなど、問題点が示している。
【0009】
これによって、化学薬品の副作用を最小化し、かつ急増しているアトピー皮膚炎を効果的に予防または治療することができる優れる効能を有する新たな薬物に対する研究が必要な実状である。
【0010】
これと関連して、コルチコステロイドは炎症媒介サイトカインであるIgEを抑制してアトピーが緩和できるものと知られている(Peter J.Barnes,Corticosteroids, IgE, and atopy., J Clin Invest. 2001 Feb 1 ; 107(3) : 265−266)。しかしながら、ステロイド物質が有する副作用のため、標準的な治療剤に使用されることに適合しない点がある。また、ピメクロリムス(Pimecrolimus)及びタクロリムス(tacrolimus)が最近アトピー治療のための免疫調節子として注目されている(Cury Martins J et al, Topical tacrolimus for atopic dermatitis., Cochrane Database Syst REv. 2015 Jul 1)。しかしながら、免疫を低下させて他の疾病に感染されやすいという問題点がある。
【0011】
本発明者はこのような背景下で、新規化合物である本発明の新規なエルゴステノールグリコシド誘導体を発見し、これはアトピーなどの皮膚炎予防、治療、及び改善に有用に使用できることを確認した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、新規エルゴステノールグリコシド誘導体を提供する。
【0013】
本発明は、エルゴステノールまたはそのグリコシド誘導体を含む皮膚炎予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0014】
本発明は、エルゴステノールまたはそのグリコシド誘導体を含む皮膚炎改善または緩和用化粧料組成物を提供する。
【0015】
本発明は、エルゴステノールまたはそのグリコシド誘導体を製造する方法を提供する。
【0016】
本発明は、エルゴステノールまたはそのグリコシド誘導体を含む組成物を、これを必要とする対象者に投与する段階を含む皮膚炎の予防または治療方法を提供しようとする。
【0017】
本発明は、皮膚炎の予防または治療のための薬学組成物の製造のためのエルゴステノールまたはそのグリコシド誘導体の用途を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は、皮膚炎、特にアトピー皮膚炎を治療または改善できる物質を探すために努力した結果、エルゴステノールとそのグリコシド誘導体が皮膚炎及びアトピー皮膚炎の症状を顕著に改善し治療する効能を有するということを見出し、またエルゴステロールを開始物質にしてエルゴステノールとそのグリコシド誘導体を製造する方法を最初に開発して、本発明を完成した。
【0019】
本発明の目的を達成するための本発明の1つの態様は新規エルゴステノールグリコシド誘導体またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。本発明に従う新規なエルゴステノールグリコシド誘導体は下記の化学式1で表示される化合物でありうる。
【0020】
【化1】
【0021】
前記式で、Rは単糖類(monosaccharide)またはアミノ糖(amino sugar)である。
【0022】
【化2】
【0023】
【化3】
【0024】
本発明のエルゴステノールは8番炭素と14番炭素の間に二重結合の位置を有することによって、一般的なステロイド化合物とは異なり、独特の立体形態を有することができる。具体的に、エルゴステノールとそのグリコシド誘導体は
図1で表示される3次元立体構造を有することができる。
【0025】
本発明は、前記化学式1で表示される化合物の薬学的に許容される全ての塩形態を含む。
【0026】
例えば、カルシウム、カリウム、ナトリウム、及びマグネシウムなどで製造された無機イオン塩、塩酸、硝酸、燐酸、臭素酸、ヨウ素酸、過塩素酸、酒石酸、及び硫酸などで製造された無機酸塩、アセト酸、トリフルオロアセト酸、シトリック酸、マレイン酸、コハク酸、蓚酸、安息香酸、タルタル酸、フマル酸、マンデル酸、プロピオン酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、グルコン酸、ガラクツロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グルクロン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、カーボン酸、バニリン酸、ヒドロアイオディン酸、マンデル酸、ミュク酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、コハク酸、タルタル酸などで製造された有機酸塩、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、P−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、またはナフタリンスルホン酸などで製造されたスルホン酸塩、グリシン、アルギニン、ライシンなどで製造されたアミノ酸塩、及びトリメチルアミン、トリエチルアミン、アンモニア、ピリジン、ピコリンなどで製造されたアミン塩などがあるが、列挙されたこれら塩により本発明で意味する塩の種類が限定されるのではない。
【0027】
例えば、前記薬学的に許容可能な塩は無機酸として塩酸、有機酸としてメタンスルホン酸でありうる。
【0028】
他の1つの態様は、エルゴステノール、そのグリコシド誘導体、またはその薬学的に許容可能な塩を含む皮膚炎の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0029】
本発明の皮膚炎は、アトピー皮膚炎、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎を含むことができ、具体的にアトピー皮膚炎でありうる。
【0030】
本発明の具体的な一実施例では、エルゴステノール及びそのグリコシド誘導体をHaCaT細胞に処理することによって、濃度依存的にCCL17及びCCL22の遺伝子と蛋白質発現水準が減少することを確認した(
図2及び
図3)。これから、エルゴステノール及びそのグリコシド誘導体が角質形成細胞株の炎症媒介発現を調節して、皮膚炎を緩和する活性を示すことが分かった。
【0031】
本発明で、医薬組成物は、軟膏、ゲル、クリーム、パッチ、及び噴霧剤からなる群より選択される剤形でありうる。また、前記医薬組成物は経口用製剤または注射用製剤でありうる。前記経口用製剤は、散剤、顆粒剤、精製、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアゾール、懸濁剤、内用液剤、乳剤、またはシロップ剤であり、前記注射用製剤は滅菌注射剤形態の剤形でありうる。
【0032】
本発明の薬学組成物は薬学的に許容される担体を添加して製剤化することができ、製剤化に関する内容はRrmington‘s Pharamaceutical Science(最近版)、Mack Publishing company,Easton PAの文献を参照することができる。前記薬学的に許容可能な担体は医薬発明部分に属する通常の技術者に医薬組成物製造時、通常的に使われることを意味する。例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート、及び鉱物油などがある。また、薬学的に許容される担体は充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤、または賦形剤を含む。例えば、経口用固形製剤は、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などは、少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、カルシウムカーボネート(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)、またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを含むことができ、マグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤などを含むことができる。経口用液状製剤は、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などを含み、水、リキッドパラフィンなどの希釈剤、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などを含むことができる。非経口用製剤は、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤を含み、非水性溶剤、懸濁剤には、プロピレングリコール(Propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオレートのような注射可能なエステル類などを含む。しかしながら、前記列挙された薬学的に許容される担体などに本発明が限定されるのではなく、これらは単に例示に過ぎない。前記担体は非自然的担体(non−naturally occuring carrier)を含むことができる。
【0033】
前記薬学組成物の投与量は、患者の状態及び体重、病気の程度、薬物形態、投与経路、及び期間によって異なるが、場合によって、適切に選択できる。例えば、前記エルゴステノールまたはそのグリコシド誘導体は、1日0.01mg/kgから10mg/kgで、好ましくは2.5mg/kgから5mg/kgの容量で投与されるか、または皮膚などに塗布されることができ、前記投または塗布は一日に1回または数回に分けることもできる。また、前記薬学組成物は組成物の総重量に対して前記エルゴステノールまたはそのグリコシド誘導体を0.0001から80重量%で含むことができる。前記薬学組成物はヒトなどの哺乳動物に多様な経路で、例えば、経口、静脈、筋肉、または皮下注射により投与できる。
【0034】
また、本発明の薬学組成物はエルゴステノールまたはそのグリコシド誘導体の以外に皮膚炎の改善、緩和、治療、または予防を示す有効性分を1種以上追加で含有することができる。
【0035】
また、本発明の薬学組成物は、皮膚炎の改善、緩和、治療、または予防のために単独に、または手術、ホルモン治療、薬物治療、及び生物学的反応調節剤を使用する方法などと併用して使用することができる。
【0036】
他の1つの態様は、エルゴステノールまたはそのグリコシド誘導体を含む皮膚炎の改善または緩和用化粧料組成物を提供する。前記皮膚炎は前述した通りである。
【0037】
本発明で、前記化粧料組成物は柔軟化粧水、収れん化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、アイエッセンス、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、パウダー、ボディーローション、ボディークリーム、ボディーオイル、ボディーエッセンス、メーキャップベース、ファウンデーション、染毛剤、シャンプー、リンス、及びボディー洗浄剤からなる群より選択される剤形でありうる。
【0038】
本発明の化粧料組成物は、前記エルゴステノールまたはそのグリコシド誘導体を使用して通常の化粧料製造方法によって、多様な形態に製造されることができ、化粧料組成物分野で通常的に使われる安定化剤、溶解化剤、ビタミン、顔料、及び香料のような通常的な補助剤を含むことができる。
【0039】
また、化粧料組成物が前記エルゴステノールまたはそのグリコシド誘導体を含有する香粧製品、シャンプー、ヘアーローション、ヘアークリーム、ヘアージェルなどの形態に製造される場合、通常のクレンジング液、収れん液、及び保湿液に希釈して使われることができる。
【0040】
本発明の化粧料組成物は、前記エルゴステノールまたはそのグリコシド誘導体を組成物総重量を基準に0.001%乃至20重量%含有することができる。
【0041】
本発明は、エルゴステノールまたはそのグリコシド誘導体の治療学的に有効な量をこれを必要とする個体に投与する段階を含む皮膚炎予防または治療方法を提供しようとする。
【0042】
本発明で使われる“治療学的に有効な量”という用語は、皮膚炎の予防または治療に有効なエルゴステノールまたはそのグリコシド誘導体の量を示す。
【0043】
本発明の皮膚炎の予防または治療方法、特にアトピー皮膚炎の予防または治療方法は前記エルゴステノールまたはそのグリコシド誘導体を投与(皮膚に塗布を含み)することで、徴候の発現前に病気その自体を扱うだけでなく、その徴候を阻害するか、または避けることをまた含む。疾患の管理において、特定活性成分の予防的または治療学的容量は病気または状態の本性(nature)と深刻度、そして活性成分が投与される経路によって多様である。好ましくは、1日0.01mg/kg乃至10mg/kgで、より好ましくは2.5mg/kg乃至5mg/kgの容量で投与されるか、または皮膚などに塗布されることができ、前記投与乃至塗布は一日に1回または数回に分けて投与することもできる。しかしながら、その容量及び容量の頻度は個別患者の年齢、体重、及び反応によって多様であり、適合した容量用法はこのような因子を当然に考慮するこの分野の通常の知識を有する者により容易に選択できる。
【0044】
また、本発明の皮膚炎の予防または治療方法は前記エルゴステノールまたはそのグリコシド誘導体と共に疾患治療に助けになる追加的な活性製剤の治療学的に有効な量の投与をさらに含むことができ、追加的な活性製剤は前記エルゴステノールまたはそのグリコシド誘導体と共にシナジー効果または補助的効果を示すことができる。
【0045】
本発明は、皮膚炎、特にアトピー皮膚炎予防または治療のための薬学組成物の製造のためのエルゴステノールまたはそのグリコシド誘導体の用途を提供しようとする。薬剤の製造のための前記エルゴステノールまたはそのグリコシド誘導体は許容される補助剤、希釈剤、担体などを混合することができ、その他の活性製剤と共に複合製剤に製造されて活性成分の上昇作用を有することができる。
【0046】
本発明の用途、組成物、治療方法で言及された事項は、互いに矛盾しない限り、同一に適用される。
【0047】
他の1つの態様は、前記エルゴステノールとそのグリコシド誘導体を製造する効率よい方法を提供する。
【0048】
まず、エルゴステノールの製造は自然界によく存在するエルゴステロール(ergosterol)を開始物質にして提供することができる。具体的に、エルゴステロールをアルコール溶媒及び塩素系有機溶媒下にPd/C触媒と反応させてエルゴステノールを収得する段階を含む。
【0049】
前記塩素系有機溶媒はメチレンクロライド、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンからなる群より選択されるもので、前記アルコール溶媒はメタノール、エタノール、またはプロパノールでありうる。
【0050】
前記段階で、水素を詰めた後、常温で長時間撹拌した後、Celiteで濾過させて減圧濃縮することができ、濃縮された固体にメタノールを使用して再結晶を行った後、濾過してエルゴステノールを収得することができる。
【0051】
前記収得したエルゴステノールをOH基が保護された糖と塩素系有機溶媒下に混合した後、酸触媒存在下に撹拌する段階を含んで、エルゴステノールのグリコシド誘導体を製造することができる。
【0052】
前記OH基が保護された糖のOH基はテトラベンゾイル基で保護されたものでありうる。グルコシル化反応が起こるOH基はピラノシル(Pyranosyl)化されてトリクロロアセトイミデート(trichloroacetimidate)と結合された形態でありうる。前記塩素系有機溶媒は、メチレンクロライド、クロロホルム、1,2−ジクロロエテインからなる群より選択されるものでありうる。
【0053】
前記酸触媒は、TMSOTf、BF
3OEt
2、Cu(OTf)
2、Sc(OTf)
3、SiO
2−H
2SO
4、及びセルロース−HClO
4からなる群より選択されたものでありうる。前記段階で撹拌は室温で行なうことができ、反応溶液に有機塩基(例えば、TEA)を入れて中和させた後、濾過して減圧濃縮することができる。
【0054】
前記段階を通じて、糖のOH基が保護されたエルゴステノールグリコシド誘導体を得ることができ、脱保護を通じて最終的に本発明のエルゴステノールグリコシド誘導体を得ることができる。具体的に、前記OH基が保護されたエルゴステノールグリコシド誘導体を塩素系有機溶媒とアルコール溶媒下にNaOMeまたはK
2CO
3を入れて室温で撹拌して得ることができる。
【発明の効果】
【0055】
本発明のエルゴステノール及びそのグリコシド誘導体は皮膚炎予防及び治療において、皮膚炎症刺激によって増加するケモカインの生成を抑制し、多様な炎症媒介体の発現を調節する転写因子の活性を抑制して皮膚炎予防及び治療剤乃至アトピー改善化粧品素材に有用に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】本発明のエルゴステノールとそのグリコシド誘導体の立体的な形態を示した図である。
【
図2】角質形成細胞株であるHaCaT細胞で、エルゴステノール及びそのグリコシド誘導体がTNF−α、IFN−γの誘導に従うCCL17及びCCL22の遺伝子発現を抑制することを確認した結果を示す図である。
【
図3】角質形成細胞株であるHaCaT細胞で、エルゴステノール誘導体がTNF−α、IFN−γの誘導に従うCCL17及びCCL22の蛋白質発現を抑制することを確認した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
これより、以下の実施例により本発明をより詳細に説明する。但し、以下の実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらに限定されるのではない。
【0059】
エルゴステロール(ergosterol、3g)をメチレンクロライド(30ml)とメタノール(70ml)で溶かした後、Palladium carbon(0.3g)を入れる。水素を詰めた後、常温で20時間の間撹拌した。その後、Celiteで濾過させた後、直ぐに減圧濃縮した。濃縮された固体にメタノールを使用して再結晶を行った後、濾過して白い固体である生成物を99%(3g)収率で得た。
【0060】
1H NMR(300MHz、CDCl
3)δ(ppm):3.62(brs、1H)、2.39−2.35(m、1H)、2.20−2.17(m、2H)、1.95−1.91(m、1H)、1.83−1.80(m、2H)、1.17−1.54(m、7H)、1.45−1.30(m、7H)、1.27−1.25(m、5H)、1.10−1.06(m、5H)、1.01−0.97(m、1H)、0.97−0.91(m、3H)0.85(d、6H、J=7.9Hz)、0.78(d、6H、J=6.6Hz)、0.69(s、3H)
【0061】
13C NMR(75MHz、CDCl
3)δ(ppm):142.7、126.3、71.3、56.7、49.3、44.3、42.7、39.1、38.3、37.3、36.8、36.5、34.8、33.5、31.6、31.5、30.4、29.6、28.9、27.0、25.8、20.5、20.0、19.3、18.2、17.6、15.4、12.8
【0062】
製造例2. エルゴステノール−グルコースの製造
【0063】
2−1. 2,3,4,6−テトラベンゾイルグルコース−エルゴステノールの製造
【0064】
エルゴステノール(0.1g)と2,3,4,6−テトラ−0−ベンゾイル−a−D−グルコピラノシルトリクロロアセトイミデート(0.37g)をメチレンクロライド(2.5ml)に溶かした後、4Aモレキュラーシーブを入れて室温で撹拌した。TMSOTf(4.5μl)を入れて室温で2.5時間の間撹拌した。反応溶液にTEA(1ml)を入れて中和させた後、濾過して濾過液を減圧濃縮させた。濃縮液をカラムクロマトグラフィーを通じて精製して90%収得率で生成物を得ることができた。
【0065】
2−2. エルゴステノール−グルコースの製造
【0066】
前記製造例2−1で収得した2,3,4,6−テトラベンゾイルグルコース_エルゴステノール(0.46g)をメチレンクロライド(5ml)とメタノール(5ml)に溶かした後、0.5M NaOMe(5.6ml)を入れて、室温で1.5時間の間撹拌した。Dowex Mac−3を入れて中和させた後、濾過して濾過液を減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィーで精製して生成物を71%の収率で得た。
【0067】
1H NMR(300MHz、Pyridine−d
5)δ(ppm):5.11(d、1H、J=7.7Hz)、4.65−4.68(m、1H)、4.44−4.50(m、1H)、4.28−4.39(m、2H)、4.03−4.12(m、3H)、2.36(d、1H、J=14.5Hz)、2.25−2.28(m、2H)、2.06(m、1H)、1.83−1.96(m、4H)、1.32−1.61(m、11H)、1.06−1.21(m、8H)、0.99−1.01(m、4H)、0.88−0.90(m、6H)、0.81−0.85(m、6H)、0.63(s、3H)
【0068】
13C NMR(75MHz、Pyridine−d
5)δ(ppm):142.61、126.85、102.10、78.69、78.62、76.94、75.41、71.84、62.99、57.01、49.56、44.06、42.97、39.37、37.57、37.15、36.75、35.08、34.87、33.81、31.77、30.72、30.09、29.91、29.26、27.37、26.13、20.68、20.23、19.50、18.51、17.77、15.63、12.83
【0069】
製造例3. エルゴステノール−ガラクトースの製造
【0070】
3−1. 2,3,4,6−テトラベンゾイルガラクトース_エルゴステノールの製造
【0071】
エルゴステノール(0.136g)と2,3,4,6−テトラ−0−ベンゾイル−a−D−ガラクトピラノシルトリクロロアセトイミデート(0.5g)をメチレンクロライド(10ml)に溶かした後、4Aモレキュラーシーブを入れて、室温で撹拌した。セルロース−HClO
4(0.17mmol/g、60mg)を入れて、室温で一日間撹拌した。反応溶液を濾過して濾過液を減圧濃縮させた。濃縮液をカラムクロマトグラフィーを通じて精製して79%収得率で生成物を得ることができた。
【0072】
3−2. エルゴステノール−ガラクトースの製造
【0073】
前記製造例3−1で収得した2,3,4,6−テトラベンゾイルガラクトース−エルゴステノール(0.39g)をメチレンクロライド(4ml)とメタノール(4ml)に溶かした後、0.5M NaOMe(4.8ml)を入れて、室温で2時間の間撹拌した。Dowex Mac−3を入れて中和させた後、濾過して濾過液を減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィーで精製して生成物を80%の収率で得た。
【0074】
1H NMR(300MHz、Pyridine−d
5)δ(ppm):5.02(d、1H、J=7.5Hz)、4.63(s、1H)、4.48−4.54(m、3H)、4.20−4.28(m、2H)、4.04(m、1H)、2.37(d、1H、J=14.5Hz)、2.25(m、2H)、2.09(m、1H)、1.83−1.93(m、4H)、1.34−1.61(m、11H)、1.06−1.19(m、8H)、0.99−1.01(m、4H)、0.88−0.90(m、6H)、0.82−0.85(m、6H)、0.62(s、3H)
【0075】
13C NMR(75MHz、Pyridine−d
5)δ(ppm):142.60、126.86、102.69、77.11、76.80、75.48、72.76、70.45、62.70、57.01、49.56、44.08、42.97、39.37、37.57、37.14、36.77、35.08、34.89、33.81、31.76、30.72、30.11、29.92、29.27、27.36、26.12、20.67、20.22、19.49、18.50、17.76、15.63、12.81
【0076】
製造例4. エルゴステノール−キシロースの製造
【0077】
4−1. 2,3,4−トリベンゾイルキシロース−エルゴステノールの製造
【0078】
エルゴステノール(0.5g)と2,3,4−トリ−0−ベンゾイル−a−D−キシロピラノシルトリクロロアセトイミデート(1.5g)をメチレンクロライド(30ml)に溶かした後、4Aモレキュラーシーブを入れて、室温で撹拌した。セルロース−HClO
4(0.17mmol/g、0.22g)を入れて、室温で一日間撹拌した。反応溶液を濾過して濾過液を減圧濃縮させた。濃縮液をカラムクロマトグラフィーを通じて精製して82%収得率で生成物を得ることができた。
【0079】
4−2. エルゴステノール−キシロースの製造
【0080】
前記製造例4−1で収得した2,3,4−トリベンゾイルキシロース−エルゴステノール(0.86g)をメチレンクロライド(10ml)とメタノール(10ml)に溶かした後、0.5M NaOMe(12ml)を入れて、室温で2時間の間撹拌した。Dowex Mac−3を入れて中和させた後、濾過して濾過液を減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィーで精製して生成物を70%の収率で得た。
【0081】
1H NMR(300MHz、Pyridine−d
5)δ(ppm):4.95(d、1H、J=7.5Hz)、4.42−4.48(m、1H)、4.22−4.35(2H、m)、4.05(t、1H、J=8.0Hz)、3.96(m、1H)、3.83(t、1H、J=10.3Hz)、2.37(d、1H、J=12.6Hz)、2.25−2.28(m、2H)、2.11(m、1H)、1.84−1.97(m、4H)、1.36−1.65(m、11H)、1.04−1.32(m、9H)、1.00(d、3H、J=6.4Hz)、0.88−0.90(m、6H)、0.81−0.85(m、6H)、0.64(s、3H)
【0082】
13C NMR(75MHz、Pyridine−d
5)δ(ppm):142.65、126.84、103.04、78.59、77.31、75.16、71.28、67.23、57.03、49.57、44.23、42.99、39.38、37.58、37.17、36.85、35.09、34.94、33.81、31.76、30.73、30.22、29.92、29.27、27.38、26.13、20.68、20.25、19.51、18.51、17.77、15.63、12.84
【実施例1】
【0083】
エルゴステノール及びそのグリコシド誘導体のCCL17及びCCL22発現増加抑制効果確認
【0084】
HaCaT細胞にエルゴステノール及びそのグリコシド誘導体を処理することによって炎症誘導分子として知られているTNF−α及び/又はIFN−γにより誘導されるCCL17及びCCL22の発現減少効果を確認した。
【0085】
1×10
6個のHaCaT細胞を6−ウェルマイクロプレートに移して、10%(v/v)のFBSが含まれたDMEMで12時間の間培養し、PBSで洗浄した後、無血清培地 2mlにエルゴステノール各々2.5、5、10、20μg/ml濃度で1時間処理した。その後、炎症誘導分子であるTNF−α、IFN−γ、またはTNF−α及びIFN−γを処理した後、18時間の間さらに培養した。
【0086】
RNA水準でCCL17及びCCL22の発現変化を確認するためにTrizol reagent kit(Invitrogen,Gaithersburg,MD)を用いて製造社のマニュアルに従ってRNAを分離した。分離されたRNAを鋳型に逆転写を遂行してcDNAを収得した。
【0087】
cDNA 2μgに逆転写緩衝溶液(5mM MgCl
2、1mM dNTP、2.5U/μl reverse transcriptase、及び2.5μM oligo(dT)15 asa primer(ominiscript RTkit,Qiagen)、0.5UのRNase抑制剤、2.5μMオリゴ(dT)(oligo(dT))及び2.5Uの逆転写酵素を添加して37℃で反応してcDNAを収得した。
【0088】
収得したcDNAを定量するために、下記の表1のプリマーを用いてPCRを遂行し、増幅されたDNAは1%アガロスゲルにより確認した。
【0089】
【表1】
【0090】
また、蛋白質水準でエルゴステノールの効果を知るために、エルゴステノール2.5、5、10、20μg/ml濃度で1時間処理した後、炎症誘導関連分子であるTNF−α、IFN−γ、またはTNF−α及びIFN−γを処理した後、18時間の間培養した。培地に存在するCCL17、CCL22に対する蛋白質の量はELISAキット(R&D systems,Minneapolis,MN,USA)を用いて確認した。96−ウェルプレートに2μg/ml捕獲抗体(抗−CCL17抗体、抗−CCL22抗体)50μlずつを入れて2時間の間コーティングした後、1%のBSAが含まれたPBSで1時間の間ブロッキング(blocking)した。次に、回収された試料を各々のウェルに100μlずつ入れた後、2時間の間反応させた。PBS−Tで3回洗浄し、各ウェルに100ng/wellのdetector抗体(抗−CCL17抗体、抗−CCL22抗体)50μlを入れて2時間の間反応させた。PBS−Tで3回洗浄し、HRPが接合された抗体を1:200で希釈して50μlずつ入れた後、30分間反応させた。PBS−Tで十分に洗浄した後に基質液(TMB)を添加し、450nmで吸光度を測定した。
【0091】
前記実験結果を
図2及び
図3に示した。
図2に示したように、エルゴステノール及びそのグリコシド誘導体をHaCaT細胞に処理することによって濃度依存的にCCL17及びCCL22の遺伝子と蛋白質発現水準が減少することを確認した。
【0092】
上記の結果からエルゴステノール及びそのグリコシド誘導体が角質形成細胞株の炎症媒介発現を調節して、皮膚炎を緩和する活性を示すことが分かった。
【0093】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者は本発明がその技術的思想や必須的な特徴を変更せずに、他の具体的な形態に実施できるということを理解することができる。これと関連して、以上で記述した実施例は全ての面で例示的なものであり、限定的でないものとして理解しなければならない。本発明の範囲は前記詳細な説明よりは後述する特許請求範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導出される全ての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものとして解釈されなければならない。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]