(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の選択された実施形態について図面を参照しながら説明する。この開示から当業者には明らかなように、本発明の実施形態の以下の説明は例示のみを目的として提供されており、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって定義される本発明を限定する目的ではない。
【0012】
最初に
図1および
図2を参照して、一実施形態に係る凝縮器3を含む蒸気圧縮式システムについて説明する。
図1に見られるように、本実施形態に係る蒸気圧縮式システムは、大型ビル等の空調用の暖房換気空調(HVAC)システムに使用することができるチラーである。本実施形態の蒸気圧縮式システムは、蒸気圧縮式冷凍サイクルによって冷却される液体(例えば、水、エチレングリコール、ブラインなど)から熱を除去し、蒸気圧縮式冷凍サイクルによって加熱される液体(例えば、水、エチレングリコール、塩化カルシウムブラインなど)に熱を加えるように構成および配置されている。図示の実施形態では水が示されている。しかしながら、この開示から当業者には他の液体を使用できることが明らかであろう。液体の加熱および冷却は図示の実施形態に示されている。
【0013】
図1および
図2に示すように、蒸気圧縮式システムは、以下の主要構成要素を含む:蒸発器1、圧縮機2、凝縮器3、膨張装置4、および制御ユニット5。制御ユニット5は、蒸気圧縮式システムの動作を制御するために圧縮機2および膨張装置4の駆動機構に動作可能に結合されている。また、制御ユニットは、センサおよび/又は図示されていないシステムの任意の構成要素などの様々な他の構成要素に接続されてもよい。
【0014】
蒸発器1は、循環する冷媒が蒸発器1内で蒸発するにつれ、蒸発器1を通過する冷却対象の液体(この例では水)から熱を除去し、水の温度を下げる熱交換器である。蒸発器1に入る冷媒は、典型的には二相の気/液状態にある。冷媒は少なくとも液冷媒を含む。蒸発器1内の蒸気冷媒が水などの冷却媒体から熱を吸収すると、液体冷媒が蒸発する。図示の実施形態では、蒸発器1は上述のように加熱/冷却媒体として水を使用する。蒸発器1は、流下液膜式蒸発器、浸漬式蒸発器、ハイブリッド式蒸発器等のような多数の従来の蒸発器のうちの任意の1つとすることができる。蒸発器を出る水は冷却される。この冷却された水は、次に建物などを冷却するために使用することができる。
【0015】
蒸発器1を出ると、冷媒は低圧低温の蒸気冷媒となる。低圧低温の蒸気冷媒は、蒸発器1から出て、圧縮機2に吸い込まれる。圧縮機2において、蒸気冷媒は、より高圧でより高温の蒸気に圧縮される。圧縮機2は、例えば遠心圧縮機、スクロール圧縮機、往復動圧縮機、スクリュー圧縮機などの任意の種類の従来の圧縮機とすることができる。
【0016】
次に、高温高圧の蒸気冷媒は、別の熱交換器である凝縮器3に入る。凝縮器3は、蒸気冷媒から熱を除去して、ガス状態から液体状態に凝縮させる。図示の実施形態における凝縮器3は、水などの液体を用いて液冷されている。圧縮された蒸気冷媒の熱は、凝縮器3を通過する冷却水の温度を上昇させる。通常、凝縮器からの温水は、冷却塔に送られて熱を大気に放出する。加えて、任意選択的に、温水(冷媒を冷却する冷却水)は、給湯として、又は建物を加熱するために建物内で使用することができる。
【0017】
凝縮した液冷媒は、次に膨張装置4に入り、そこで冷媒は急激な圧力低下を受ける。膨張装置4はオリフィス板のように単純なものでも、電子変調式熱膨張弁のように複雑なものでもよい。膨張装置4が制御ユニットに接続されるかどうかは、制御可能な膨張装置4が利用されているかどうかによって決まる。急激な減圧は、通常、液冷媒の部分的な膨張をもたらし、したがって、蒸発器1に入る冷媒は、通常、二相の気/液状態にある。
【0018】
蒸気圧縮式システムで使用される冷媒のいくつかの例は、例えばR410A、R407C、およびR134aのようなハイドロフルオロカーボン(HFC)系冷媒、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、例えばR1234zeおよびR1234yfのような不飽和HFC系冷媒、例えばR717およびR718のような自然冷媒である。R1234zeおよびR1234yfは、R134aと同様の密度を持つ中密度冷媒である。R450AおよびR513Aは、可能性のある冷媒でもある中圧冷媒である。いわゆる低圧冷媒(LPR)R1233zdも、適切な種類の冷媒である。低圧冷媒(LPR)R1233zdは、R1233zdの蒸気密度が上記の他の冷媒よりも低いため、低密度冷媒(LDR)と呼ばれることがある。R1233zdは、いわゆる中密度冷媒であるR134a、R1234ze、およびR1234yfより低い密度を有する。R1233zdはR134Aよりわずかに高い液体密度を有するので、ここで議論される密度は、液体密度ではなく蒸気密度である。本明細書に開示された実施形態は、任意の種類の冷媒に有用であるが、本明細書に開示された実施形態はR1233zdのようなLPRと共に使用されるときに特に有用である。R1233zdは不燃性である。R134aも可燃性ではない。しかし、R1233zdの地球温暖化係数はGWP<10である。一方、R134aのGWPは約1300である。冷媒R1234zeおよびR1234yfは、GWPがR1233zdのように10未満であっても、わずかに可燃性である。それゆえ、R1233zdは、これらの特性、不燃性および低GWPのため、望ましい冷媒である。
【0019】
個々の冷媒が上述されているが、この開示から当業者には明らかなように、任意の2つ以上の上記冷媒を利用する混合冷媒を使用することができる。例えば、R1233zdとしての一部分のみを含む混合冷媒を利用することができる。いずれにせよ、図示の実施形態では、冷媒はR1233zdを含むことが好ましい。より好ましくは、図示の実施形態では、冷媒は好ましくはR1233zdである。上述のように、R1233zdは、その低いGWPと、可燃性ではないゆえに望ましい冷媒である。しかしながら、
図10に示すように(効率を最大にしようとするために)最大数の伝熱管が含まれる凝縮器では、管がそれらの管の周りの蒸気が容易に流れるのを妨げ、圧縮機出口と凝縮器の管との間に大きな圧力降下を引き起こし得るので、比較的大きな圧力降下が生じることが発見された。比較的大きな圧力降下はサイクル効率を低下させるので、圧力降下を減少させることが望ましいことが発見された。蒸気が管の周りを流れることが可能であれば、圧縮機吐出口と凝縮器の管との間の蒸気の圧力低下を減らすことができ、したがってサイクル効率は低下しない(サイクル効率は一般に維持できる)。
【0020】
本発明を実施するために、圧縮機2、蒸発器1および膨張装置4として、それぞれ従来の圧縮機、蒸発器および膨張装置を使用できることは、この開示から当業者には明らかであろう。言い換えれば、圧縮機2、蒸発器1および膨張装置4は、当技術分野において周知の従来の構成要素である。圧縮機2、蒸発器1および膨張装置4は、当技術分野において周知であるので、これらの構造は本明細書では詳細に説明又は図示されない。むしろ、本開示から当業者には明らかなように、任意の適切な圧縮機、蒸発器および膨張装置を例示の実施形態の凝縮器と共に使用することができる。したがって、以下の説明では、本発明に係る凝縮器3を中心に説明する。さらに、本開示の範囲から逸脱することなく、蒸気圧縮式システムが複数の蒸発器1、圧縮機2および/又は凝縮器3を含み得ることは、この開示から当業者には明らかであろう。
【0021】
次に、
図3〜
図8を参照して、本実施形態による凝縮器3の詳細構造について説明する。凝縮器3は、基本的に、シェル10と、冷媒分配器20と、伝熱ユニット30と、を備える。図示の実施形態では、伝熱ユニット30は管束である。したがって、本明細書では伝熱ユニット30を管束30ともいう。上述のように、図示の実施形態では、管束30は、それを介して水などの液体冷却/加熱媒体を運ぶ。
【0022】
冷媒は、シェル10に入り、冷媒分配器20に供給される。冷媒分配器20は、以下により詳細に説明するように、冷媒を管束30上に比較的均等に分配するように構成されている。凝縮器3のシェル10に入る冷媒は、典型的には高圧高温の圧縮ガス(蒸気)冷媒である。蒸気冷媒は、分配器20を出て、シェル10の内部に入って、管束30上を流れる。蒸気冷媒は、管束30上を下方に流れるにつれて、徐々に冷えて凝縮する。管束30内の媒体(水)は、蒸気冷媒から熱を吸収して、凝縮および冷却を生じさせる。凝縮された液体冷媒は、その後、以下により詳細に説明されるように凝縮器の底部を出る。
【0023】
図3〜
図5から最もよく理解されるように、図示の実施形態では、シェル10は、ほぼ水平方向に延びる長手方向中心軸C(
図4)を有するほぼ円筒形状を有する。したがって、シェル10は水平面Pとほぼ平行に延び、中心軸Cは水平面Pとほぼ平行である。シェル10は、接続ヘッド部材13と、円筒体14と、戻りヘッド部材15とを含む。円筒体14は、接続ヘッド部材13と戻りヘッド部材15との間に気密状態で取り付けられている。具体的には、接続ヘッド部材13および戻りヘッド部材15は、シェル10の円筒体14の長手方向端部に気密に接続されている。
【0024】
接続ヘッド部材13は、取付板13aと、取付板13aに取り付けられたドーム部13bと、取付板13aとドーム部13bとの間に延びて入口室13dと出口室13eとを区画する仕切板13cと、を有する。取付板13aは、通常、円筒体14に通常溶接される管板である。ドーム部13bは、通常、ボルトと、それらの間に配置されるガスケット(図示せず)とを介して管板(取付板)13aに取り付けられている。仕切板13cは、通常、ドーム部13bに溶接されている。入口室13dと出口室13eとは、仕切板13cによって仕切られている。戻りヘッド部材15も、取付板15aと、取付板15aに取り付けられて戻り室15cを画定するドーム部材15bとを含む。取付板15aは、通常、円筒体14に通常溶接される管板である。ドーム部15bは、通常、ボルトと、それらの間に配置されるガスケット(図示せず)とを介して管板(取付板)15aに取り付けられている。戻りヘッド部材15は、仕切りを含まない。したがって、取付板13aおよび15aは、シェル10の円筒体14の長手方向端部に固定的に接続されている。入口室13dと出口室13eとは、仕切板(バッフル)13cによって区画されており、冷却媒体の流れを分離している。具体的には、接続ヘッド部材13は、水が入る入口管17と、シェル10から水が排出される水出口管18との両方に流体接続されている。より具体的には、入口室13dは入口管17と流体的に接続され、出口室13eは出口管18と流体的に接続され、仕切板13cが流れを分割する。
【0025】
取付板13a,15aには、伝熱管34が取り付けられる複数の孔が形成されている。例えば、伝熱管34を孔の中に配置し、次いで管34を孔の中に固定して、管と孔との間にシールを形成するようにローラ拡張することができる。下部グループの伝熱管34は、入口室13dから水を受け取り、その水を円筒体14を通して戻り室15cに運ぶ。そして、戻り室15c内の水は、上部グループの伝熱管34内に流れ込み、円筒体14を通して出口室13e内に戻る。したがって、図示の実施形態では、凝縮器3は、いわゆる「2パスの」凝縮器3である。水の流路は、取付板13aと取付板15aとの間の円筒体14の内部空間から気密的に封止されている。この内部空間は、水流路から気密的に封止されて冷媒を収容している。このように、管束30は、上部グループの伝熱管34と、上部グループの伝熱管34の下方に配置された下部グループの伝熱管34とを含む。
【0026】
図示の実施形態では、上部グループの伝熱管は、シェル10の鉛直中央平面(例えば、
図4の平面P)に又はそれより上方に配置され、下部グループの伝熱管34は、シェル10の鉛直中央平面(例えば、
図4の平面P)に又はその下方に配置されている。より具体的には、図示の実施形態では、上部グループの伝熱管は、シェル10の鉛直中央平面(例えば、
図4の平面P)に、およびシェル10の鉛直中央平面の上方に配置されている。下部グループの伝熱管34は、シェル10の鉛直中央平面(例えば
図4の平面P)の下方に配置されている。図示の実施形態では、上部グループと下部グループは隙間によって分離され、各グループは、概ね同一の数の伝熱管34を有する。
【0027】
シェル10は、冷媒入口管11bが接続される冷媒入口11aと、冷媒出口管12bが接続される冷媒出口12aとをさらに含む。冷媒入口管11bは、圧縮機2と流体的に接続されており、圧縮機2から供給される圧縮された蒸気ガス冷媒をシェル10の頂部に導入する。冷媒入口11aからの冷媒は冷媒分配器20に流入し、冷媒分配器20は、冷媒を管束30に分配する。冷媒は、管束30との熱交換により凝縮する。シェル10内で凝縮すると、液体冷媒は冷媒出口12aを通ってシェル10を出て、冷媒出口管12bに流入する。膨張装置4は、冷媒出口管12bに流体連結され、液冷媒を受け取る。冷媒入口11aに入る冷媒は、少なくともガス冷媒を含む。冷媒出口12aを流れる冷媒は、少なくとも液冷媒を含む。したがって、シェル10は、少なくともガス冷媒を含む冷媒が流れる冷媒入口11aと少なくとも液体冷媒を含む冷媒が流れる冷媒出口12aとを有し、シェルの長手方向中心軸Cは、水平面Pとほぼ平行に延びている。
【0028】
ここで
図4〜
図6に示すように、冷媒分配器20は、冷媒入口11aに流体的に接続されており、シェル10内に配置されている。冷媒分配器20は、冷媒入口11aを通ってシェル10に入る冷媒を受け取るように皿状構造で配置構成されている。冷媒分配器20は、シェル10の長手方向中心軸Cとほぼ平行に、シェル10内を長手方向に延びる。
図4〜
図6に最もよく示されるように、冷媒分配器20は、基部22と、第1の側部24aと、第2の側部24bと、一対の端部26とを含む。基部22、第1の側部24a、第2の側部24b、および一対の端部26は互いにしっかりと接続されている。図示の実施形態では、基部22、第1の側部24a、第2の側部24b、および一対の端部26のそれぞれは、鋼板材料などの薄くリジッドな板材料で構成されている。図示の実施形態では、基部22、第1の側部24a、第2の側部24b、および一対の端部26は、互いに固定された別々の部品として構成することができ、又は一体部品として一体に形成することができる。
【0029】
図示の実施形態では、基部22、第1の側部24a、および第2の側部24bには、複数の孔が形成されている。一方、端部26には孔が開いていない。図示の実施形態では、基部22には、
図5から最もよく理解されるように、端部領域を除いて円形孔が形成されている。同様に、図示の実施形態では、側部24a,24bには、端部領域を除いて円形孔が形成されている。しかしながら、側部24a,24bの端部領域には、基部22とは異なり、長手方向のスロットが形成されている。端部領域を越えた長手方向の端部には、中央領域と同様に孔が形成されている。この開示から当業者には明らかなように、本明細書に示された孔のパターンおよび形状は、本発明に係る適切な分配器20の一例を表している。
【0030】
図示の実施形態では、分配器20は、シェル10の上部に溶接されている。代替的におよび/又は追加的に、分配器20は管束30の支持プレート(後述)に固定することができる。しかしながら、これは図示の実施形態では必要ではない。さらに、本開示から当業者には明らかなように、端部26は、必要ではない場合および/又は所望しない場合には省略することができる。図示の実施形態では、分配器20の端部26が存在し、シェル10の円筒体14の円筒形の内部曲率に一致する曲線を有する上端を有する。分配器20がシェル10に固定されるとき、側部24a,24bの上端および/又は端部26の上端は、任意の適切な従来技術を用いて湾曲した内面に取り付けることができる。溶接はその一例である。図示の実施形態では、分配器20は、シェル10の内部長さとほぼ同じ長さを有する。具体的には、図示の実施形態では、分配器は、シェル10の内部長さの少なくとも約90%、例えば約95%の長さを有する。したがって、冷媒は、分配器20から管束30のほぼ全長に沿って分配される。
【0031】
再び
図4〜6を参照して、伝熱ユニット30(管束)をより詳細に説明する。冷媒分配器20の下方には管束30が配置されており、冷媒分配器20から排出された冷媒が管束30に供給されるようになっている。管束30は、
図4〜
図6に最もよく示されているように、複数の支持プレート32と、支持プレート32を通ってシェル10の長手方向中心軸Cとほぼ平行に延びる複数の伝熱管34(上記に簡単に述べた)と、複数のプレート支持部材36と、を含む。図示の実施形態では、管束30は、5つの支持プレート32を含む。しかし、本開示から、当業者には、支持プレート32の数がこの数に限定されないことが明らかであろう。いずれの場合でも、管束30は少なくとも1つの支持プレート32を含む。支持プレート32およびプレート支持部材36は、伝熱管34を支持する管支持構造として機能する。また、管束30の下方には、ガイド板40が配置されている。ガイド板40は、凝縮した液体(冷媒)を集め、その液体をシェル10の底部にある凝縮器出口12aに向かわせる。
【0032】
ここで
図4〜
図8を参照すると、支持プレート32は、シェル10の内部形状に部分的に一致するように成形される。
図7に示されるように、各支持プレート32は、伝熱管34を受ける孔50と、プレート支持部材36を受ける孔52とを有する。また、各支持プレートは、その上部に上部ノッチ56を有し、その下部に下部ノッチ58を有する。ガイド板40は、支持プレート32の下に配置されている。伝熱管34は、シェル10内で支持プレート32によって支持されるように、支持プレート32に形成された孔50を通って延びる。プレート支持部材36は、支持プレート32に取り付けられて、
図4および
図5に示すように、支持プレート32を互いに間隔を空けた配置で支持および維持する。支持プレート32は、シェル10の長手方向に沿って、互いに間隔を空けて配置されている。
図9Aから最もよく理解されるように、図示の実施形態では、支持プレート32は、シェル10の長手方向に沿って、互いに対して等間隔「a」で配置されている。支持プレート32の間隔「a」は、支持プレート32の数とシェル10の長さに応じて決定される。支持プレート32およびプレート支持部材36が管支持構造として(例えば、溶接により)一緒に取り付けられると、以下により詳細に説明するように、管支持構造を円筒体14に挿入して取り付けることができる。
【0033】
さらに
図4〜8を参照すると、支持プレート32は互いに同一である。各支持プレート32は、好ましくは金属薄板のようなリジッドなシート材料で形成される。したがって、各支持プレート32は、平面形状を有し、シェルの内部湾曲に一致するように形作られた湾曲した側面を含み、上部ノッチ56および下部ノッチ58が概ね互いに向かって延びる。
図4〜
図6に最もよく示されているように、各支持プレート32は、管束30の上方から管束30の下方まで延びる。支持プレート32と円筒体14の一致する湾曲形状のために、支持プレート32は、円筒体14に対して、鉛直方向、横方向等に(例えば、長手方向中心軸Cを横切る任意の方向で)動くのが防止される。ガイド板40は、支持プレート32の下方に配置されている。ガイド板40は、円筒体14に固定されていてもよいし、円筒体14の内部に単に配置されていてもよい。同様に、ガイド板40は支持プレート32に固定されていてもよく、支持プレート32は単にガイド板40上に載置されていてもよい。図示の実施形態では、支持プレート32とプレート支持部材36とのアセンブリが円筒体14に入れられて取り付けられる前に、ガイド板40が円筒体14に固定(例えば溶接)されている。図示の実施形態では、支持プレート32とプレート支持部材36とのアセンブリが(例えば溶接によって)互いに取り付けられると、アセンブリは円筒体14内のガイド板40の上に挿入され、次に、端部の支持プレート32は、シェル10の円筒体14に溶接される。
【0034】
支持プレート32の上部ノッチ56は、分配器20のための空間を作るような形状を有する凹部を形成する。上述のように、分配器20は、分配器20が上部ノッチ内に配置されるように円筒体14に溶接される。もちろん、代替的に、この開示から当業者には明らかなように、分配器20は、支持プレート32に固定されていてもよく、又は分配器20は支持プレート32上に載置されていてもよい。図示の実施形態では、支持プレート32は分配器20に固定されていないので、分配器20はユニットとしての管束30の前又は後に、円筒体14に取り付けることができる。支持プレート32の下部ノッチ58は、一緒になって流体流路を形成する。ガイド板40は、上述のように、支持プレート32の下で、長手方向中心軸Cと平行にかつ平面Pと平行に延びるように、シェル10内に取り付けられている。
【0035】
支持プレート32は、シェル10の長手方向中心軸Cに垂直な鉛直方向に対して傾斜している。図示の実施形態では、各支持プレート32は、シェル10の長手方向中心軸Cに垂直な鉛直方向に対して角度αで傾斜している。角度αは45度から80度の範囲である。好ましくは、角度αは、50度から75度の範囲である。図示の実施形態では、角度αは60度であり、これは55度〜65度の適切な(例示の)範囲の中央である。各支持プレート32は、同じ角度で傾斜している。角度αが小さすぎる場合、以下でより詳細に説明されるように、各支持プレート32によって覆われる領域が十分ではない。一方、角度αが大きすぎる場合、各支持プレート32のサイズを大きくする必要がある。また、角度αが大きすぎると、重力により液体冷媒がすぐに排出されない。
【0036】
分配器20から管束30に供給された圧縮された蒸気冷媒が管束30を下降すると、冷媒は凝縮して液体冷媒に状態を変える。この凝縮した液冷媒は、傾斜している支持プレート32に受け止められて、傾斜している支持プレート32の表面に沿って下方に流れる。凝縮した液体冷媒は、その後、ガイド板40に沿って凝縮器3の端部に向かって流れる。ガイド板40は、円筒体14よりも短い。したがって、液体冷媒は、次いで、円筒体14の底部に沿って冷媒出口12aに流れる。傾斜している支持プレート32によって、凝縮した液体冷媒を迅速に排出することができる。
【0037】
ここで
図4〜
図7に示されるように、各支持プレート32は、そこを通る伝熱管34を受け入れるための孔50が形成されている。各支持プレート32の孔50は、伝熱管34が孔50に嵌合するように構成されている。このような配置により、液体冷媒は、孔50を介して、上部の伝熱管34から下部の伝熱管34に直接落下しない。真下に落下する液体冷媒は、下部の伝熱管34の周囲に液体冷媒の厚い層を形成し、この液体冷媒の層によって引き起こされる断熱によって伝熱性能が低下する。したがって、図示の実施形態では、孔50が伝熱管34がその中に嵌合するように形作られ、液体冷媒が孔50を通って上部の伝熱管34から下部の伝熱管34に直接落下するのを抑制する。しかし、当業者には、本開示から、伝熱管34が孔50に液密に嵌合する必要はなく、伝熱管34は、液体冷媒が孔50からある程度流出することが可能な状態で、孔50に隙間嵌めで配置できることが明らかであろう。
【0038】
各支持プレート32は、プレート支持部材36を受け入れる孔52も有する。具体的には、図示の実施形態では、管束30の両側のそれぞれで、3つのプレート支持部材36が支持プレート32の孔52を通って延び、支持プレート32に固定され、支持プレート32をここに示す間隔配置に維持する。
【0039】
図7に示すように、各支持プレート32は、支持プレート32の上部に上部ノッチ56を有し、支持プレート32の下部に下部ノッチ58を有する。上部ノッチ56および下部ノッチ58は、概して互いに向かって延びている。上述のように、支持プレート32の上部ノッチ56は、分配器20が上部ノッチ56内に配置されるように、分配器20のための空間を作るような形状の凹部を形成する。支持プレート32の下部ノッチ58は、一緒になって流体流路を形成する。
【0040】
ガイド板40は、さらに、
図5および
図6から最もよく理解されるように、管束30の底部に鉛直方向の支持を提供することができる。図示の実施形態では、プレート支持部材36は、細長い、リジッドな、棒状部材として構成されている。1つの適切な材料は鋼鉄である。
【0041】
伝熱管34は、支持プレート32の孔50を通って延び、支持プレート32によってここに示されたパターンで支持される。伝熱管34は、支持プレート32に固定されてもよいし、単に支持プレート32によって支持されてもよい。図示の実施形態では、伝熱管34は、単に支持プレート32上に載置され、支持プレート32に固定されていない。
【0042】
ここで
図8を参照すると、支持プレート32は、上方から見たときに互いに重なるように配置されている。このような構成により、液体冷媒が、支持プレート32間で上部の伝熱管34から下部の伝熱管34に落下し、下部の伝熱管34の周囲に液体冷媒の厚い層が形成されることを防止できる。
図8に示すように、支持プレート32は、上方から見ると、シェル10の両端部領域を除き、シェル10の長手方向中心軸Cの大部分を覆うように配置されている。好ましくは、支持プレート32は、上方から見たときにシェル10の長手方向中心軸Cの約90%を覆うように配置される。より好ましくは、支持プレート32は、上から見たときにシェル10の長手方向中心軸Cの約95%を覆うように配置される。
【0043】
上述したように、支持プレート32の傾斜の角度αが小さすぎる場合、各支持プレート32による被覆面積が十分ではなくなる。したがって、シェル10の長手方向中心軸Cの大部分を覆うためには、非常に多くの支持プレート32が必要になる。したがって、角度αは、あまりにも多くの支持プレート32が必要とならないように、好ましくは45度以上、より好ましくは50度以上である。また、角度αは、各支持プレート32の大きさが大きくなりすぎず、重力の影響が小さくなるように、80度以下が好ましく、75度以下がより好ましい。角度αが大きく、各支持プレート32のサイズを大きくする必要がある場合、シェル10内のスペースが不十分となり、支持プレート32のプレート全体をシェル10内に配置することができない場合がある。そのような場合、支持プレート32のプレート全体に加えて、支持プレート32の部分プレートを使用して残りの空間を埋めることができる。
【0044】
伝熱管34は、金属などの熱伝導率の高い材料からなる。伝熱管34には、冷媒と伝熱管34内を流れる水との間の熱交換をさらに促進するために、内側溝(Groove)および外側溝が設けられていることが好ましい。内部溝および外部溝を含むこのような伝熱管は、当技術分野で周知である。本実施形態の伝熱管34として、例えば、Wieland Copper Products, LLCのGEWA−C管を用いることができる。上述のように、伝熱管34は、シェル10内に支持されている複数の鉛直に延びる支持プレート32によって支持されている。
【0045】
上述したように、本実施形態では、管束30が2パス方式を形成するように構成され、伝熱管34は、管束30の下部に配置される供給配管群と、管束30の上部に配置される戻り配管群とに分割される。
図4に示すように、供給配管群の伝熱管34の入口端は、接続ヘッド部材13の入口室13dを介して入口管17に流体接続されており、凝縮器3に入った水は、供給配管群の伝熱管34に分配される。供給配管群の伝熱管34の出口端および戻り配管群の伝熱管34の入口端とは、戻りヘッド部材15の戻り室15cと流体連通している。したがって、供給配管群の伝熱管34内を流れる水は、戻り室15cに排出され、戻り配管群の伝熱管34に再分配される。戻り配管群の伝熱管34の出口端は、接続ヘッド部材13の出口室13eを介して出口管18と流体連通している。この戻り配管群の伝熱管34内を流れる水は、出口管18を通って凝縮器3を出る。
【0046】
図1〜
図6の実施形態では、ガイド板40の下に伝熱管が配置されていない(すなわち、ガイド板40の下にサブクーラーがない)が、供給配管群が、
図11に示されるように、ガイド板40の下に追加の板および管の群(すなわち、ガイド板40の下方のサブクーラー)を含み得ることは、本開示から当業者には明らかであろう。このような配置では、液体冷媒が凝縮器の底部に沿って冷媒出口12aに流れることができるように、ガイド板40の下のプレートの底部に連通孔を形成するか、切欠きを形成する必要がある。冷媒がガイド板40まで降下すると、冷媒はすでに液体であるはずである。したがって、凝縮器を出る前にガイド板40の下の液体の温度をさらに下げる(すなわち、過冷却する)ために、ガイド板40の下の追加の伝熱管を使用することができる。さらに、凝縮液冷媒の供給が他の目的(例えば、モータ冷却又は他の目的のため)に必要とされる場合、凝縮器3からの追加の出口を設けることができることは、本開示から当業者には明らかであろう。このような凝縮器からの追加の出口は、
図11に示されている。
【0047】
さらに
図4〜
図6を参照して、凝縮器3の組み立てについてさらに詳細に説明する。プレート支持部材36は、(例えば、溶接によって)支持プレート32に取り付けられ、管支持構造を形成する。ガイド板40を、支持プレート32とプレート支持部材36とを組み立てる前又は後に、シェル10に挿入して、シェル10に固定(例えば溶接)することができる。同様に、分配器20を、支持プレート32とプレート支持部材36とを組み立てる前又は後に、シェル10に挿入して、シェル10に固定(例えば溶接)することができる。いずれにせよ、図示の実施形態では、支持プレート32およびプレート支持部材36を含む組み立てられた管支持構造は、分配器20およびガイド板40を取り付けた後に、円筒体14に挿入される。そして、支持プレート32の端部片は、円筒体14に固定(例えば溶接)される。次に、円筒体14に管板13a、15aが(例えば溶接により)取り付けられる。次に、伝熱管34は、管板13a、15aの孔と、支持プレート32の孔50と、に挿通される。次いで、伝熱管34を管板13a,15aにローラ拡張して、伝熱管34を固定することができる。これは、図示の実施形態の凝縮器を、どのように組み立てることができるかの一例にすぎない。しかしながら、本開示の範囲から逸脱することなく、他の組み立て技術および/又は挿入および取り付けの順序が可能であることは、この開示から当業者には明らかであろう。
【0048】
ここで
図9A〜
図9Cを参照すると、
図9Bは、
図9Aの位置Iにおける伝熱性能(heat transfer performance)を示すグラフであり、
図9Cは、
図9Aの位置IIにおける伝熱性能を示すグラフである。
図9Bおよび9Cにおいて、「U」は伝熱係数(heat transfer coefficient)を指す。図示の実施形態では、
図9Aに示すように、側面から見たときに、20段の伝熱管34が並べられている。より具体的には、上部グループの伝熱管34は、10段の管T1〜T10を含み、下部グループの伝熱管34は、10段の管T11〜T20を含む。
図9Aから最もよく理解されるように、伝熱管34の上下のグループ(管段T1〜T20)は、位置Iにおいて支持プレート32により覆われていない。一方、位置IIにおいて、上部グループの伝熱管34(管段T1〜T10)は支持プレート32によって覆われていないが、位置IIにおいて、下部グループの伝熱管34(管段T11〜T20)は支持プレート32により覆われている。
図9Bのグラフは、位置Iにおいて、上部の伝熱管34から下部の伝熱管34へと(管層T1から管層T20へと)、伝熱性能が徐々に低下することを示している。位置Iにおける伝熱性能の低下は、下部の伝熱管34の周囲に形成される液体冷媒層の厚さによるものであり、これは増加して、断熱効果を引き起こして伝熱透過を低下させる。
図9Bに示すように、位置Iにおける平均伝熱係数Uは6.9である。一方、
図9Cのグラフは、下部グループの伝熱管34の先頭(すなわち、管層T11)で伝熱性能が向上し、位置IIでは性能低下が全体的に低減されることを示している。支持プレート32は、液体冷媒を補足し排出することができ、液体冷媒層の厚さを増加させず、断熱効果を可能な限り排除し、管は位置IIで完全な伝熱を回復可能にする。
図9Cでは、位置IIにおける平均伝熱係数Uは7.7である。
【0049】
ここで
図10を参照すると、
図10は、COP(性能係数)とU(伝熱性能)との関係を示している。
図10から分かるように、伝熱性能が大きくなると、COPが大きくなる。したがって、管束30の伝熱管34における伝熱性能を改善することが望ましいことが発見された。さらに、傾斜した支持プレート32を設けることにより、伝熱性能を改善できることが発見された。例えば、
図9A〜9Cに示すように、位置IIにおける伝熱管34の伝熱性能は、傾斜した支持プレート32を設けることにより、位置Iにおける伝熱管34と比較して改善される。
図10に示されるように、位置I(先行技術)での平均伝熱係数Uと比較して、位置II(本発明)での平均伝熱係数Uは、大きなCOPを達成する。
【0050】
<用語の一般的な解釈>
本発明の範囲を理解する上で、本明細書で使用される「備える」という用語およびその派生語は、述べられた特徴、要素、構成要素、グループ、整数、および/又はステップの存在を指定するオープンエンドの用語であることを意図する。しかし、他の記載されていない特徴、要素、構成要素、グループ、整数および/又はステップの存在を排除しない。前述のことは、用語「含む」、「有する」およびそれらの派生語などの類似の意味を有する単語にも適用される。また、単数形で使用される場合の「部」、「セクション」、「部分」、「部材」又は「要素」という用語は、単一又は複数の二重の意味を有することができる。上記実施形態を説明するために本明細書で使用される場合、以下の方向用語「上部」、「下部」、「上方」、「下方に」、「鉛直」、「水平」、「下方」および「横方向」、ならびに、他の同様の方向用語は、その長手方向中心軸が
図4および
図5に示すように実質的に水平に配向されているときの、凝縮器のこれらの方向を指す。したがって、本発明を説明するために利用されるこれらの用語は、通常の動作位置で使用されるような凝縮器に関して解釈されるべきである。最後に、本明細書で使用される「実質的に」、「約」および「およそ」などの程度の用語は、最終結果が有意に変化しないような、変更される用語の妥当な量の偏差を意味する。
【0051】
選択された実施形態のみが本発明を説明するために選択されたが、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、様々な構成要素のサイズ、形状、位置又は向きは、必要に応じておよび/又は所望に応じて変更することができる。互いに直接接続又は接触していると示されている構成要素は、それらの間に配置される中間構造を有することができる。1つの要素の機能は2つの要素で実行でき、その逆も可能である。一実施形態の構造および機能は、他の実施形態でも採用することができる。特定の実施形態に全ての利点が同時に存在する必要はない。先行技術に対して特有のあらゆる特徴は、単独で又は他の特徴と組み合わせて、そのような特徴によって具体化される構造的および/又は機能的概念を含む、本出願人に係るさらなる発明の別々の説明と見なされるべきである。したがって、本発明に係る実施形態の前述の説明は、例示のみを目的として提供されており、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって定義される本発明を限定する目的ではない。