特許第6851497号(P6851497)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851497
(24)【登録日】2021年3月11日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】熱可塑性高分子粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20210322BHJP
【FI】
   C08J3/12 101
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-548702(P2019-548702)
(86)(22)【出願日】2018年3月9日
(65)【公表番号】特表2020-509144(P2020-509144A)
(43)【公表日】2020年3月26日
(86)【国際出願番号】KR2018002846
(87)【国際公開番号】WO2018164541
(87)【国際公開日】20180913
【審査請求日】2019年9月6日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0030178
(32)【優先日】2017年3月9日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0030179
(32)【優先日】2017年3月9日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0119588
(32)【優先日】2017年9月18日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0027666
(32)【優先日】2018年3月8日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510244710
【氏名又は名称】エルジー・ハウシス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒ−ジュン・イ
(72)【発明者】
【氏名】スン・ヨン・カン
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ミン・カン
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ギョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】チャン−ヨン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ホ・リム
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ホ・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ハン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ジン・ゴ
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−536420(JP,A)
【文献】 特開2008−137377(JP,A)
【文献】 特開2006−124366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)熱可塑性高分子樹脂を押出機へ供給して押出す段階;
(2)押出された熱可塑性高分子樹脂及び空気をノズルに供給し、熱可塑性高分子樹脂と空気を接触させて熱可塑性高分子樹脂を粒子化した後、粒子化された熱可塑性高分子樹脂を吐出する段階;及び
(3)吐出された熱可塑性高分子粒子を冷却器に供給して熱可塑性高分子粒子を冷却した後、冷却された熱可塑性高分子粒子を収得する段階
を含む、熱可塑性高分子粒子の製造方法であって、
前記(2)段階でノズルの断面を基準にして、空気は中心部と外郭部へ供給され、押出された熱可塑性高分子樹脂は空気が供給される中心部と外郭部の間に供給され、
前記(2)段階でノズルの吐出部での断面を基準にして、外郭部に供給された空気と、 空気が供給される中心部と外郭部との間へ供給された押出された熱可塑性高分子樹脂との断面積の比は2:1ないし6:1であり、
前記(3)段階で冷却器はノズルの吐出部と離隔して位置し、吐出された熱可塑性高分子粒子は冷却器へ投入される前に周辺空気によって1次的に冷却され、
前記(3)段階で冷却器は、−30ないし−20℃の温度を有し且つ回転気流を形成する空気によって前記熱可塑性高分子粒子を冷却する、熱可塑性高分子粒子の製造方法
【請求項2】
前記(1)段階で押出機の内部は150ないし450℃に維持されることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性高分子粒子の製造方法。
【請求項3】
前記(2)段階でノズルに供給される押出された熱可塑性高分子樹脂は0.5ないし20Pa・sの溶融粘度を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性高分子粒子の製造方法。
【請求項4】
前記(2)段階で押出された熱可塑性高分子樹脂は1ないし10kg/hrの流量でノズルに供給され、空気は1ないし300m/hrの流量でノズルに供給されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱可塑性高分子粒子の製造方法。
【請求項5】
前記(2)段階で空気は250ないし600℃の温度でノズルに供給されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱可塑性高分子粒子の製造方法。
【請求項6】
前記(2)段階でノズルの内部は250ないし450℃に維持されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱可塑性高分子粒子の製造方法。
【請求項7】
前記(2)段階でノズルの末端部は、下記の計算式によって計算される温度に維持されることを特徴とする請求項に記載の熱可塑性高分子粒子の製造方法:
[計算式]
末端部温度=ガラス転移温度(T)+(熱分解温度(T)−ガラス転移温度(T))×A
前記計算式において、ガラス転移温度及び熱分解温度は熱可塑性高分子に対する値であり、前記Aは0.5ないし1.5である。
【請求項8】
前記(2)段階において、ノズルからの熱可塑性高分子樹脂の吐出角は10ないし60゜であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱可塑性高分子粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年3月9日付韓国特許出願第10−2017−0030178号、2017年3月9日付韓国特許出願第10−2017−0030179号、2017年9月18日付韓国特許出願第10−2017−0119588号、及び2018年3月8日付韓国特許出願第10−2018−0027666号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容を本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、熱可塑性高分子粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
粒子形態の高分子樹脂は産業全般にわたって多様に利用されている。このような高分子樹脂粒子は高分子樹脂原料を粒子化する工程を通して製造される。
【0004】
一般に、熱可塑性高分子樹脂を粒子化する方法として、凍結粉砕と代表される粉砕法;高温の溶媒に溶解した後で冷却して析出させたり、溶媒に溶解した後で貧溶媒を添加して析出させる溶媒溶解析出法;及び混合器内で熱可塑性樹脂及び非商用樹脂を混合して熱可塑性樹脂を分散相に、熱可塑性樹脂と非商用樹脂を連続相に有する組成物を形成した後、非商用樹脂を取り除くことで熱可塑性樹脂粒子を得る溶融混練法などが存在する。
【0005】
前記粉砕法を通じて粒子を製造する場合、製造された熱可塑性高分子樹脂粒子の粒子均一性を確保しがたいという問題点がある。また、粉砕法の冷却時に液体窒素を使うので、粒子収得の工程に比べて高費用が必要となる。熱可塑性高分子樹脂原料に対して、顔料、酸化防止剤などを添加するコンパウンディング工程が加えられる場合には、バッチ式で進められるため、連続的な粒子収得工程に比べて生産性が低くなる。前記溶媒溶解析出法及び溶融混練法を通じて粒子を製造する場合、熱可塑性樹脂粒子の他に溶媒などの別の成分が不純物として検出されることがある問題点がある。加工過程で不純物が混入される場合は、純粋に熱可塑性高分子樹脂のみからなる粒子を製造しにくいだけでなく、粒子の物性及び形状の変形が引き起こされるおそれが高く、これを細かく制御することも難しい。
【0006】
よって、当該技術分野では、前述した問題点を改善できる熱可塑性高分子粒子の製造方法が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】日本特開2001−288273号公報
【特許文献2】日本特開2000−007789号公報
【特許文献3】日本特開2004−269865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、熱可塑性高分子樹脂を押出し、押出された樹脂を空気と接触させて微粒化した後、これを冷却して熱可塑性高分子粒子を製造することにより、粒子内に樹脂成分を除いた不純物の混入が効果的に防止され、粒子が幅広く活用される物性を有するように制御することができる熱可塑性高分子粒子の製造方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1側面によれば、
本発明は、熱可塑性高分子樹脂を押出機へ供給して押出す段階;押出された熱可塑性高分子樹脂及び空気をノズルに供給し、熱可塑性高分子樹脂と空気を接触させて熱可塑性高分子樹脂を粒子化した後、粒子化された熱可塑性高分子樹脂を吐出する段階;及び吐出された熱可塑性高分子粒子を冷却器に供給して熱可塑性高分子粒子を冷却した後、冷却された熱可塑性高分子粒子を収得する段階を含む熱可塑性高分子粒子の製造方法を提供する。
【0010】
本発明の一具体例において、ノズルに押出された熱可塑性高分子樹脂及び空気を供給する時、ノズルの断面を基準にして、空気は中心部と外郭部へ供給され、押出された熱可塑性高分子樹脂は空気が供給される中心部と外郭部の間へ供給される。
【0011】
本発明の一具体例において、ノズルの吐出部での断面を基準にして、外郭部へ供給された空気と、空気が供給される中心部と外郭部との間へ供給された押出された熱可塑性高分子樹脂との断面積の比は1:1ないし10:1である。
【0012】
本発明の一具体例において、ノズルの末端部は下記の計算式によって計算される温度で維持される。
[計算式]
末端部温度=ガラス転移温度(T)+(熱分解温度(T)−ガラス転移温度(T))×A
前記計算式において、ガラス転移温度及び熱分解温度は熱可塑性高分子に対する値で、前記Aは0.5ないし1.5である。
【発明の効果】
【0013】
本発明による熱可塑性高分子粒子の製造方法は、原料物質である熱可塑性高分子樹脂と空気の他に別の追加成分がなくも粒子の大きさ及び形状などの物性を均一で効果的に制御することができる。
【0014】
よって、本発明による製造方法によって製造された粒子は、粒子内で熱可塑性高分子の他に不純物が効果的に排除され、外的だけでなく内的物性が向上されて粒子が様々な分野で製品に適用される時、加工が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による熱可塑性高分子粒子の製造方法を概略的に示す工程フロー図である。
図2】本発明の具体例にしたがってノズルへの熱可塑性高分子樹脂及び空気の供給位置を示すノズル吐出部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明によって提供される具体例は、下記説明によって全て達成される。下記説明は、本発明の好ましい具体例を記述するものとして理解しなければならず、本発明が必ずこれに限定されることではないことを理解しなければならない。
【0017】
以下、明細書における数値範囲に対して、「ないし」の表現は範囲の上限と下限をいずれも含む意味で使われ、上限または下限を含まない場合は、含むか否かを具体的に示すために「未満」、「超」、「以下」または「以上」の表現が使われる。
【0018】
本発明は、溶媒などの追加成分を添加せずに、温度及び圧力によって物性が調節された熱可塑性高分子樹脂を空気と接触させて粒子化する熱可塑性高分子粒子の製造方法を提供する。図1は前記製造方法に対する工程フロー図を概略的に示す。前記製造方法は熱可塑性高分子樹脂を押出機へ供給して押出す段階(S100);押出された熱可塑性高分子樹脂及び空気をノズルに供給し、熱可塑性高分子樹脂と空気を接触させて熱可塑性高分子樹脂を粒子化した後、粒子化された熱可塑性高分子樹脂を吐出する段階(S200);及び吐出された熱可塑性高分子粒子を冷却器に供給して熱可塑性高分子粒子を冷却した後、冷却された熱可塑性高分子粒子を収得する段階(S300)を含む。以下では、前記製造方法の各段階について具体的に説明する。
【0019】
本発明によって熱可塑性高分子粒子を製造するために、先ず原料である熱可塑性高分子樹脂を押出機へ供給して押出す。熱可塑性高分子樹脂を押出すことで、熱可塑性高分子樹脂はノズルでの粒子加工に適した物性を有する。原料で使われる熱可塑性高分子樹脂は本発明の製造方法によって粒子化が可能な物質であれば、特に限定されないが、製造された粒子の適正な物性を考慮して10,000ないし200,000g/molの重量平均分子量を有することが好ましい。本発明の一具体例によれば、前記熱可塑性高分子樹脂は、ポリ乳酸(PLA、Poly lactic acid)、熱可塑性ポリウレタン(TPU、Thermoplastic Polyurethane)、ポリエチレン(PE、Polyethylene)、ポリプロピレン(PP、Polypropylene)、ポリエーテルスルホン(PES、Polyether sulfone)、ポリメチルメタクリレート(PMMA、Poly(methyl methacrylate))、エチレンビニル−アルコール重合体(EVOH、Ethylene Vinyl−Alcohol Copolymer) 及びこの組み合わせからなる群から選択された樹脂であってもよい。
【0020】
前記熱可塑性高分子樹脂が供給される押出機は、熱可塑性高分子樹脂を加熱及び加圧して熱可塑性高分子樹脂の粘度などの物性を調節する。ノズルで粒子化するために適した物性に調節が可能であれば、前記押出機の種類は特に限定されない。本発明の一具体例によれば、前記押出機は効率的な押出のために二軸スクリュー押出機が使われてもよい。前記押出機の内部は150ないし450℃、好ましくは170ないし400℃、より好ましくは200ないし350℃で維持されることが好ましい。前記押出機の内部温度が150℃未満であれば、熱可塑性高分子樹脂の粘度が高くてノズルでの粒子化に適しないだけでなく、押出機内で熱可塑性高分子樹脂の流れ性が低くて押出に効率的ではない。また、前記押出機の内部温度が450℃超であれば、熱可塑性高分子樹脂の流れ性が高くて効率的な押出が可能であるが、ノズルで熱可塑性高分子樹脂が粒子化される時、細かく物性を調節することが難しい。
【0021】
熱可塑性高分子樹脂の押出量は、押出機のサイズを考慮して熱可塑性高分子樹脂の物性調節が容易に設定されることができる。本発明の一具体例によれば、熱可塑性高分子樹脂は1ないし10kg/hrの速度で押出される。押出された熱可塑性高分子樹脂の粘度は0.5ないし20Pa・s、好ましくは1ないし15Pa・s、より好ましくは2ないし10Pa・sであってもよい。熱可塑性高分子樹脂の粘度が0.5Pa・s未満であれば、ノズルで粒子を加工することが難しく、熱可塑性高分子樹脂の粘度が20Pa・s超であれば、ノズルで熱可塑性高分子樹脂の流れ性が低くて加工効率が落ちる。押出された熱可塑性高分子樹脂の温度は、150ないし450℃であってもよい。
【0022】
押出機から押出された熱可塑性高分子樹脂はノズルに供給される。前記熱可塑性高分子樹脂とともに、空気もノズルへ供給される。前記空気はノズル内で熱可塑性高分子樹脂と接触して熱可塑性高分子樹脂を粒子化する。熱可塑性高分子樹脂の物性を適切に維持するよう、ノズルには高温の空気が供給される。本発明の一具体例によれば、前記空気の温度は250ないし600℃、好ましくは270ないし500℃、より好ましくは300ないし450℃であってもよい。前記空気の温度が250℃未満や600℃超であれば、熱可塑性高分子樹脂で熱可塑性高分子粒子が製造される時、空気と接触された表面の物性が好ましくない方向へと変化させることがあって問題となる。特に、空気の温度が600℃超であれば、空気との接触面に過度な熱が供給されて粒子の表面で高分子の分解現象が発生することがある。
【0023】
ノズルに供給される熱可塑性高分子樹脂及び空気は、熱可塑性高分子粒子が適切な大きさ及び形状を有することができ、形成された粒子が均一に分散されるように供給位置が設定される。図2はノズル吐出部の断面図を示し、本発明の一具体例による熱可塑性高分子樹脂及び空気の供給位置は、図2を通じて具体的に説明される。本明細書で具体的に説明するために、ノズルの位置を「注入部」、「吐出部」、及び「末端部」などに表現する。ノズルの「注入部」はノズルが始まる位置を意味し、ノズルの「吐出部」はノズルが終わる位置を意味する。また、ノズルの「末端部」はノズルの3分の2地点から吐出部までの位置を意味する。ここで、ノズルの0地点はノズルの注入部であり、ノズルの1地点はノズルの吐出部である。
【0024】
図2に図示されたように、熱可塑性高分子樹脂及び空気の流れ方向と垂直である断面は円形である。前記空気は、前記円形の中心に供給される第1の空気の流れ40と前記円形の外郭部に供給される第2の空気の流れ20を通して供給され、前記熱可塑性高分子樹脂は、第1の空気の流れ40と第2の空気の流れ20の間に供給される。熱可塑性高分子樹脂及び空気がノズルの注入部に供給される時からノズルの吐出部直前まで各供給の流れ(熱可塑性高分子樹脂の流れ30、第1の空気の流れ40及び第2の空気の流れ20)は、ノズルの内部構造によって分離される。ノズル吐出部の直前で熱可塑性高分子樹脂の流れと第2の空気の流れが合されて熱可塑性高分子樹脂と空気が接触し、これによって熱可塑性高分子樹脂は粒子化される。これと違って、第1の空気の流れは、熱可塑性高分子樹脂及び空気がノズルから吐出されるまで熱可塑性高分子樹脂の流れ及び第2の空気の流れとはノズルの内部構造によって分離される。第1の空気の流れは、第2の空気の流れによって粒子化された熱可塑性高分子樹脂の粒子がノズルの吐出部で粘着されることを防止し、ノズルで吐出した後、冷却器に供給される前に吐出された粒子を均一に分散させる役目をする。
【0025】
押出機で押出された熱可塑性高分子樹脂は、全て前述したノズルの位置に供給され、ノズルに供給される空気の流量は押出された熱可塑性高分子樹脂の流量によって調節されてもよい。本発明の一具体例によれば、前記空気は1ないし300m/hr、好ましくは30ないし240m/hr、より好ましくは60ないし180m/hrの流量でノズルに供給される。前記空気の流量範囲内で空気は第1の空気の流れと第2の空気の流れに分離して供給される。前述したように、熱可塑性高分子樹脂は第2の空気の流れによって粒子化されるが、第2の空気の流れの温度だけでなく、熱可塑性高分子樹脂と第2の空気の流れの割合も粒子の物性を決めることができる。本発明の一具体例によれば、ノズルの吐出部の断面を基準にして熱可塑性高分子樹脂と第2の空気の流れの断面積の比は1:1ないし10:1、好ましくは1.5:1ないし 8:1、より好ましくは2:1ないし 6:1であってもよい。前記範囲内で熱可塑性高分子樹脂と第2の空気の流れの割合が調節される場合、活用性の高い適正な大きさ及び形態の熱可塑性高分子粒子を製造することができる。
【0026】
ノズルで熱可塑性高分子樹脂は粒子化されるので、ノズルの内部は熱可塑性高分子樹脂が粒子化されるために適した温度に調節される。急激な温度の上昇は熱可塑性高分子樹脂内の高分子の構造を変化させることができるため、押出機からノズルの吐出部までの温度は段階的に上昇されることがある。よって、ノズル内部の温度は平均的に押出機の内部温度より高い範囲で設定される。ノズルの末端部に対する温度は以下で別に定義しているので、本明細書でノズル内部の温度は特に言及しない限り、ノズルの末端部を除いたノズルの残り部分の平均温度を意味する。本発明の一具体例によれば、ノズルの内部は250ないし450℃で維持されることができる。ノズルの内部温度が250℃未満であれば、熱可塑性高分子樹脂に、粒子化時に物性を充たせるための十分な熱が伝達されないし、ノズルの内部温度が450℃超であれば、熱可塑性高分子樹脂に過度な熱が供給されて高分子の構造を変化させることができる。
【0027】
ノズルの末端部は、生成された粒子の外的及び内的物性を向上させるためにノズル内部の平均温度より高い温度で維持されてもよい。ノズル末端部の温度は熱可塑性高分子のガラス転移温度(T)と熱分解温度(T)の間で決まってもよいが、具体的には下記計算式4によって決まってもよい。
[計算式4]
末端部温度=ガラス転移温度(T)+(熱分解温度(T)−ガラス転移温度(T))×A
【0028】
ここで、前記Aは0.5ないし1.5、好ましくは0.65ないし1.35、より好ましくは0.8 ないし1.2であってもよい。前記Aが0.5未満であれば、ノズル末端部の温度上昇による粒子の外的及び内的物性の向上を期待しにくいし、前記Aが1.5超であればノズルの末端部で熱可塑性高分子に実質的に伝達される熱が過度に増加して熱可塑性高分子の構造が変形されることがある。前記ガラス転移温度及び熱分解温度は、高分子の種類、重合度、構造などによって変わることがある。本発明の一具体例によれば、−40ないし250℃のガラス転移温度を有し、270ないし500℃の熱分解温度を有する熱可塑性高分子が使われてもよい。ノズルの末端部はノズルの平均温度より高く維持されるので、場合によってノズルの末端部にはさらなる加熱手段が備えられてもよい。
【0029】
ノズルで吐出された熱可塑性高分子粒子は冷却器へ供給される。ノズルと冷却器は離隔して位置させてもよく、この場合、吐出された熱可塑性高分子粒子が冷却器へ供給される前に周辺空気によって1次的に冷却される。ノズルでは熱可塑性高分子粒子だけでなく高温の空気も一緒に排出されるが、ノズルと冷却器を離隔させることで、高温の空気を冷却器ではない外部へ排出することができるので、冷却器で冷却効率を高めることができる。本発明の一具体例によれば、冷却器はノズルと100ないし500mm、好ましくは150ないし400mm、より好ましくは200ないし300mm離隔して位置する。前記距離より離隔距離が短い場合は、冷却チャンバ内に多量の高温の空気が注入されるため冷却効率が低く、前記距離より離隔距離が長い場合は、周辺空気によって冷却される量が多くなるため、冷却チャンバによる急速冷却が行われない。また、ノズルで熱可塑性高分子粒子を吐出する時の噴射角は10ないし60゜であってもよいが、当該角度で熱可塑性高分子粒子を吐出する場合、ノズルと冷却器の離隔による効果を倍加することができる。
【0030】
冷却器は、冷却器の内部に低温の空気を供給して前記空気と熱可塑性高分子粒子を接触させることで、熱可塑性高分子粒子を冷却することができる。前記低温の空気は冷却器内で回転気流を形成するが、前記回転気流によって冷却器内で熱可塑性高分子粒子の滞留時間を十分確保することができる。冷却器へ供給される空気の流量は、熱可塑性高分子粒子の供給量によって調節されてもよく、本発明の一具体例によれば、前記空気は1ないし10m/minの流量で冷却器へ供給されてもよい。前記空気は−30ないし−20℃の温度を有することが好ましい。冷却器へ供給される熱可塑性高分子粒子と比べて極低温の空気を冷却器内へ供給することで、熱可塑性高分子粒子が急速に冷却されて吐出する時、高温の熱可塑性高分子粒子の内部構造を適当に維持することができる。熱可塑性高分子粒子は、製品を製造するために実際適用する時に再加熱されるが、この時、再加熱された熱可塑性高分子は加工に有利な物性を有する。低温の空気によって冷却された熱可塑性高分子粒子は40℃以下に冷却されて排出され、排出された粒子はサイクロンまたはバッグフィルターを通して捕集する。
【0031】
本発明による熱可塑性高分子粒子の製造方法は、原料物質である熱可塑性高分子樹脂と空気の他に別の追加成分がなくも粒子の大きさ及び形状などの物性を均一で効果的に制御することができる。よって、本発明による製造方法によって製造された粒子は、粒子内で熱可塑性高分子の他に不純物が効果的に排除され、外的だけではなく内的物性が向上されて粒子が多様な分野で製品に適用される時、加工が容易である。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を理解しやすくするための好ましい実施例を示すが、下記実施例は本発明を容易に理解するために提供されるものに過ぎず、本発明がこれに限定されることではない。
【0033】
実施例1:本発明の製造方法によるポリ乳酸粒子の製造
ポリ乳酸樹脂(Natureworks、2003D、Mw:約200,000g/mol、ガラス転移温度(T):約55℃、熱分解温度(T):約300℃)100重量%を二軸スクリュー押出機(直径(D)=32mm、長さ/直径(L/D)=40)へ供給した。前記二軸スクリュー押出機は、約220℃の温度条件及び約5kg/hrの押出量の条件で設定して押出した。押出されたポリ乳酸樹脂は約10Pa・sの粘度を有し、前記押出されたポリ乳酸樹脂を約300℃の内部温度及び約350℃の末端部温度(計算式によるA値は約1.2である)に設定されたノズルに供給した。また、約350℃の空気を約1m/minの流量でノズルへ供給した。前記空気はノズル断面の中心部と外郭部へ供給され、前記押出されたポリ乳酸樹脂は、空気が供給されるノズルの中心部と外郭部の間に供給された。外郭部に供給された空気と、空気が供給された中心部と外郭部との間に供給された押出されたポリ乳酸樹脂との断面積の比は約4.5:1であった。ノズルに供給されたポリ乳酸樹脂は高温の空気と接触して微粒化されたし、微粒化された粒子がノズルから噴射された。ノズルからの噴射角は約45゜で、噴射された粒子はノズルから約200mm離隔された冷却チャンバ(直径(D)=1,100mm、長さ(L)=3,500mm)に供給された。また、前記冷却チャンバは、噴射された粒子が供給される前から−25℃の空気を約6m/minの流量で注入して回転気流を形成するように調節した。冷却チャンバ内で40℃以下に充分冷却された粒子は、サイクロンまたはバッグフィルターを通して捕集された。
【0034】
実施例2:本発明の製造方法による熱可塑性ポリウレタン粒子の製造
原料物質で熱可塑性ポリウレタン樹脂(Lubrizol、PearlthaneTM D91M80、Mw:約160,000g/mol、ガラス転移温度(T):約−37℃、熱分解温度(T):約290℃)100重量%を使ったことを除いて実施例1と同様の方法で粒子を製造しました。
【0035】
比較例1:冷凍粉砕方式によるポリ乳酸粒子の製造
実施例1と同一なポリ乳酸樹脂をホッパーを通してスクリュー供給機へ供給した。スクリューを通して原料を移動させながら水分を取り除いた後、−130℃の液体窒素が供給される粉砕機へ原料を投入した。前記粉砕機はピンクラッシャー(Pin Crusher)タイプの粉砕機が使われた。粒子の大きさは粉砕サイズ決定ピンによって調節された。粉砕機を通して微粒化された粒子は、サイクロンを通して捕集された。
【0036】
実験例1:粒子の物性評価
前記実施例1及び2と比較例1によって製造された粒子の物性を測定して下記表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
前記表1によれば、実施例1及び2による熱可塑性高分子粒子は縦横比及び球形度が1に近い値で測定されて球状に近い形状を有し、これに比べて比較例1による熱可塑性高分子粒子は縦横比及び球形度が1とは多少差がある値で測定され、球状に近い形状を有することができなかった。
【0039】
比較例1のように、従来の冷凍粉砕方式で製造された熱可塑性高分子粒子は、縦横比及び球形度が球状に近い水準を充たすことができないため、その後熱可塑性高分子粒子を取り扱う時、実施例1及び2の熱可塑性高分子粒子に比べて容易ではない。
【0040】
実験例2:DSC分析
前記実施例1及び2と比較例1によって製造された粒子をDSC分析して下記表2に示す。具体的に、示差走査熱量計(DSC、Perkin−Elmer、DSC8000)を利用して10℃/minの昇温速度下で0℃から200℃まで昇温してDSC曲線を得た。それぞれのDSC曲線からガラス転移温度(T)、融点(T)、冷結晶化温度(Tcc) 及び吸熱量(△H1)と発熱量(△H2)の差を導き出した。
【0041】
【表2】
【0042】
前記表2によれば、前記実施例1の熱可塑性高分子粒子は98℃で冷結晶化温度のピークが表れ、前記実施例2の熱可塑性高分子粒子は34℃で冷結晶化温度のピークが表れる一方、前記比較例1の熱可塑性高分子粒子は、このような冷結晶化温度のピークが表れないことを確認することができた。
【0043】
さらに、実施例1の場合は吸熱量(△H1)と発熱量(△H2)の差が約36J/gで表れ、実施例2の場合は吸熱量(△H1)と発熱量(△H2)の差が約6J/gで表れることを確認することができた。実施例1と違って比較例1の場合、吸熱量(△H1)と発熱量(△H2)の差が約42J/gで表れることを確認することができた。これは実施例1のポリ乳酸粒子が冷結晶化現象によって粒子が溶融される前に発熱する特性を有するので、相対的に高い発熱量を有するものと理解される。
【0044】
実施例1及び2のように熱可塑性高分子粒子が冷結晶化温度ピークを有する場合、このような粒子を利用して加熱加工を行う場合、比較例1の熱可塑性高分子粒子の加工温度に比べて低温で加工可能な利点を有することができる。
【0045】
比較例2:溶媒重合方式にしたがうポリ乳酸粒子の製造
キシレン溶媒に乳酸を入れて撹拌した後、スズ系の触媒とポリオールを投入して約140℃の温度で重合した。重合体をクロロホルムに溶かしてメタノールに沈澱させた後、これを乾燥して最終的に10μm大きさのポリ乳酸粒子を製造した。
【0046】
比較例3:溶媒重合方式にしたがう熱可塑性ポリウレタン粒子の製造
ジメチルホルムアミド溶媒にエステルまたはエーテル系のポリオールを入れて撹拌した後、ジイソシアネートを投入してプレポリマーを合成した。この後、80℃の温度で反応性単分子であるジオールまたはジアミン系の鎖延長剤を入れて最終的に400μm大きさの熱可塑性ポリウレタン粒子を製造した。
【0047】
実験例3:粒子内の不純物分析
前記実施例1と比較例2及び3によって製造された粒子の不純物含量を分析して下記表3に示す。具体的に、粒子内の残留溶媒はGC/FID装置(製造社:Agilent、モデル:7890A)によって測定され、粒子内の重金属はICP/MS装置(製造社:Perkinelmer、モデル:Nexion300)によって測定された。下記表3の不純物含量は、粒子内の残留溶媒の含量と重金属の含量を合わせた値である。
【0048】
【表3】
【0049】
前記表3によれば、比較例2及び3の粒子は、粒子を製造する時に溶媒が使われるので、粒子内の残留溶媒などによって実施例1の粒子と比べて顕著に高い含量の不純物が確認された。これと違って、実施例1の粒子は、粒子の製造過程で装置から流入される微量の不純物を除いた残留溶媒などの不純物はほとんど存在しなかった。
【0050】
本発明の単純な変形ないし変更は、全て本発明の領域に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求範囲によって明確になる。
【符号の説明】
【0051】
10:ノズル
20:第2の空気の流れ
30:熱可塑性高分子樹脂の流れ
40:第1の空気の流れ
図1
図2