【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の表面処理設備の特徴は、処理槽の処理液中に被処理物を浸漬させて表面処理する表面処理設備において、
前記処理槽は、前記被処理物が通過し、且つ処理液が一方向に流れる第1流路部と、前記第1流路部の処理液の流れと逆方向に処理液が流れる第2流路部とを備え、
前記第1流路部と前記第2流路部との間に仕切り板が設けられており、
前記第1流路部の下流側端部と前記第2流路部の上流側端部とが連通し、
前記第1流路部の上流側端部と前記第2流路部の下流側端部とが、前記第2流路部の処理液の流れる方向を前記第1流路部の処理液の流れる方向に反転させるUターン部を介して連通し、
前記第1流路部の処理液の流れる方向に沿って延びる整流板が、前記Uターン部に設けられている点にある。
【0006】
本発明によれば、第2流路部にて生じた処理液の流れがUターン部を介して反転して第1流路部の流れとなるため、第1流路部全体で処理液が一方向の流れとなり、滞留することなく流速が均一化され、且つ、乱流も生じない。従って、処理槽の底部からのゴミの巻き上がりが生じ難くなり、被処理物に対するゴミなどの付着を低減することができる。
【0007】
また本発明のごとく、Uターン部に整流板を設けることによって、処理槽の幅方向中央部付近と仕切り板側における処理液の流速分布がより均一に近づくため渦が生じ難くなり、流速がより均一化される。
【0008】
さらに本発明によれば、処理液の流速が均一化されることにより、従来の表面処理設備と比べて、槽内進行する被処理物の周囲を流れる処理液の被処理物に対する相対速度が増加する。
【0009】
特に、処理液が塗料液である場合、塗料液に含まれる顔料成分は、分散樹脂に覆われた0.1〜10μm程度の微小粒子であるが、比重が大きいため、塗装時において流速が低くて撹拌がないか、もしくは弱いと沈降してしまい、ザラザラ感のある塗装仕上がりとなる。しかしながら、本発明では、塗料液の被塗物に対する相対速度が増加するため、塗料液について一定以上の流速を確保し易く、被塗物の塗膜平滑性や塗料液の付きまわり性が向上する。
【0010】
また、塗膜析出面のジュール熱は、塗料液の流速が速いほど拡散されて奪われ易い。塗膜析出面の水酸化物イオンや塗料粒子イオンは、流速が速いほど拡散しやすい。即ち、塗装膜厚は塗料液の流速に依存する傾向があり、塗料液の流速が速いほど塗装膜厚が薄くなる。
【0011】
本発明では、塗料液の被塗物に対する相対速度が増加するため、塗装膜厚を薄くすることができる。その結果、余剰塗膜が削減されて、塗料液量や電力などにかかる塗装コストを低減することができる。
【0012】
本発明においては、前記整流板が、前記処理槽の幅方向に沿って複数設けられていると好適である。
【0013】
本構成によれば、処理槽の幅方向中央部付近と仕切り板側における処理液の流速分布がより均一になり、渦が生じ難くなる。
【0014】
本発明においては、前記第2流路部の下流側端部の幅が拡大されていると好適である。
【0015】
本構成によれば、第2流路部の下流側端部での流速が低下してUターン部における反転力が弱くなる。その結果、処理槽の幅方向中央部付近への流れが弱まり、渦が発生し難くなる。
【0016】
本発明においては、処理液の流れを生じさせる圧送手段が、前記第2流路部に設けられていると好適である。
【0017】
本構成によれば、第1流路部に圧送手段を設ける必要がないため、第1流路部全体で、処理液がより完全な一方向の流れとなる。
【0018】
本発明においては、前記圧送手段が、エジェクターノズルを備えて構成されていると好適である。
【0019】
本構成によれば、エジェクターノズルから処理液を噴出させることによって流れを生じさせることができる。
【0020】
本発明においては、複数の前記エジェクターノズルが、前記処理槽の液面付近から底部にわたって縦方向に一列に配置され、且つ、前記エジェクターノズルの列が、前記第2流路部の長手方向に沿って複数設けられていると好適である。
【0021】
本構成のごとく、エジェクターノズルの列を、第2流路部の長手方向に沿って複数設けることで、処理槽内の処理液のどの深さにおいても、一定の流速を確保することができる。
【0022】
本発明においては、前記複数のエジェクターノズルの列のそれぞれが、噴出圧力調節可能に構成されていると好適である。
【0023】
本構成によれば、複数のエジェクターノズルの列のそれぞれが、噴出圧力調節可能に構成されているため、処理液の流速の大きさを調節し易い。
【0024】
本発明においては、前記圧送手段が、プロペラ形羽根車をさらに備えると好適である。
【0025】
本構成によれば、プロペラ形羽根車を設けることによって、エジェクターノズルの数を削減することができるため、エジェクターノズルに供給する処理液の量を低減することができる。
【0026】
本発明においては、前記処理槽に隣接する付属槽を備え、該付属槽が、前記第1流路部の下流側端部の上側と連通していると好適である。
【0027】
本構成によれば、第1流路部の下流側端部に到達した処理液の一部が付属槽に流入するため、当該処理液に含まれる浮上性のゴミなどが付属槽にて捕集されて除去される。
【0028】
本発明においては、前記処理槽に隣接する底部ホッパーを備え、該底部ホッパーが、前記第1流路部の下流側端部の下側と連通していると好適である。
【0029】
本構成によれば、第1流路部の下流側端部に到達した処理液の一部が底部ホッパーに流入するため、当該処理液に含まれる沈降性のゴミなどが底部ホッパーにおいてろ過捕集されて除去される。
【0030】
本発明においては、前記処理槽に隣接する第2底部ホッパーを備え、該第2底部ホッパーが、前記Uターン部の下側と連通していると好適である。
【0031】
本構成によれば、第2流路部の下流側端部に到達した処理液の一部が第2底部ホッパーに流入するため、当該処理液に含まれる沈降性のゴミなどが第2底部ホッパーにおいてろ過捕集されて除去される。
【0032】
本発明においては、処理液が流入可能な滞留部が、前記第2流路部の上流側端部付近に設けられていると好適である。
【0033】
本構成によれば、例えば付属槽や底部ホッパーによって除去されなかったゴミなども、滞留部で捕集されて除去される。
【0034】
本発明においては、前記第1流路部の底面付近に、沈降防止手段が設けられていると好適である。
【0035】
本構成によれば、塗料やゴミ等が第1流路部の底面に沈降・堆積することを防止することができる。