特許第6851522号(P6851522)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6851522
(24)【登録日】2021年3月11日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】表面処理設備
(51)【国際特許分類】
   C25D 13/00 20060101AFI20210322BHJP
   C25D 13/24 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   C25D13/00 C
   C25D13/00 301
   C25D13/24 301Z
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-48168(P2020-48168)
(22)【出願日】2020年3月18日
【審査請求日】2020年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149790
【氏名又は名称】株式会社大気社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】佐古田 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雅之
(72)【発明者】
【氏名】竿尾 増利
(72)【発明者】
【氏名】長澤 利喜
【審査官】 中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2019−002032(JP,A)
【文献】 特開2002−206195(JP,A)
【文献】 特開平07−018494(JP,A)
【文献】 特開平11−131293(JP,A)
【文献】 実開平05−085858(JP,U)
【文献】 実開平03−001971(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0166569(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽の処理液中に被処理物を浸漬させて表面処理する表面処理設備において、
前記処理槽は、前記被処理物が通過し、且つ処理液が一方向に流れる第1流路部と、前記第1流路部の処理液の流れと逆方向に処理液が流れる第2流路部とを備え、
前記第1流路部と前記第2流路部との間に仕切り板が設けられており、
前記第1流路部の下流側端部と前記第2流路部の上流側端部とが連通し、
前記第1流路部の上流側端部と前記第2流路部の下流側端部とが、前記第2流路部の処理液の流れる方向を前記第1流路部の処理液の流れる方向に反転させるUターン部を介して連通し、
前記第1流路部の処理液の流れる方向に沿って延びる整流板が、前記Uターン部に設けられていることを特徴とする表面処理設備。
【請求項2】
前記整流板が、前記処理槽の幅方向に沿って複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の表面処理設備。
【請求項3】
前記第2流路部の下流側端部の幅が拡大されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面処理設備。
【請求項4】
処理液の流れを生じさせる圧送手段が、前記第2流路部に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面処理設備。
【請求項5】
前記圧送手段が、エジェクターノズルを備えて構成されていることを特徴とする請求項4に記載の表面処理設備。
【請求項6】
複数の前記エジェクターノズルが、前記処理槽の液面付近から底部にわたって縦方向に一列に配置され、且つ、前記エジェクターノズルの列が、前記第2流路部の長手方向に沿って複数設けられていることを特徴とする請求項5に記載の表面処理設備。
【請求項7】
前記複数のエジェクターノズルの列のそれぞれが、噴出圧力調節可能に構成されていることを特徴とする請求項6に記載の表面処理設備。
【請求項8】
前記圧送手段が、プロペラ形羽根車をさらに備えることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の表面処理設備。
【請求項9】
前記処理槽に隣接する付属槽を備え、該付属槽が、前記第1流路部の下流側端部の上側と連通していることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の表面処理設備。
【請求項10】
前記処理槽に隣接する底部ホッパーを備え、該底部ホッパーが、前記第1流路部の下流側端部の下側と連通していることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の表面処理設備。
【請求項11】
前記処理槽に隣接する第2底部ホッパーを備え、該第2底部ホッパーが、前記Uターン部の下側と連通していることを特徴とする請求項10に記載の表面処理設備。
【請求項12】
処理液が流入可能な滞留部が、前記第2流路部の上流側端部付近に設けられていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の表面処理設備。
【請求項13】
前記第1流路部の底面付近に、沈降防止手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の表面処理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理槽の処理液中に被処理物を浸漬させて表面処理する表面処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の表面処理設備としては、例えば、図16及び図17に示されるような電着塗装設備が挙げられる。当該電着塗装設備では、塗料液を噴出する複数のエジェクターノズルが電着槽(処理槽の一例)の両側壁と槽底部とに配置され、塗料液(処理液の一例)の上層と下層とで流れる方向を概ね逆方向に設定することによって、電着槽全体にわたって塗料液を循環させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−18494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電着装置設備では、図16に示すように、電着槽の中央部付近を流れる塗料液の液流が弱いため、反転流による淀みや乱流が発生し易い。
即ち、塗料液の流速にばらつきが生じ易く、特に、流速の遅い電着槽の中央部付近を通過する被塗物の塗膜面の平滑性が低下する。また、乱流が生じることによって、電着槽の底部から沈降性のゴミ(金属粉や粗大化した塗料粒子など)が巻き上げられて、被塗物に付着してしまうという問題もある。
従って、本発明の目的は、処理槽における処理液の流速が均一化され、且つ、乱流も生じ難い表面処理設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の表面処理設備の特徴は、処理槽の処理液中に被処理物を浸漬させて表面処理する表面処理設備において、
前記処理槽は、前記被処理物が通過し、且つ処理液が一方向に流れる第1流路部と、前記第1流路部の処理液の流れと逆方向に処理液が流れる第2流路部とを備え、
前記第1流路部と前記第2流路部との間に仕切り板が設けられており、
前記第1流路部の下流側端部と前記第2流路部の上流側端部とが連通し、
前記第1流路部の上流側端部と前記第2流路部の下流側端部とが、前記第2流路部の処理液の流れる方向を前記第1流路部の処理液の流れる方向に反転させるUターン部を介して連通し、
前記第1流路部の処理液の流れる方向に沿って延びる整流板が、前記Uターン部に設けられている点にある。
【0006】
本発明によれば、第2流路部にて生じた処理液の流れがUターン部を介して反転して第1流路部の流れとなるため、第1流路部全体で処理液が一方向の流れとなり、滞留することなく流速が均一化され、且つ、乱流も生じない。従って、処理槽の底部からのゴミの巻き上がりが生じ難くなり、被処理物に対するゴミなどの付着を低減することができる。
【0007】
また本発明のごとく、Uターン部に整流板を設けることによって、処理槽の幅方向中央部付近と仕切り板側における処理液の流速分布がより均一に近づくため渦が生じ難くなり、流速がより均一化される。
【0008】
さらに本発明によれば、処理液の流速が均一化されることにより、従来の表面処理設備と比べて、槽内進行する被処理物の周囲を流れる処理液の被処理物に対する相対速度が増加する。
【0009】
特に、処理液が塗料液である場合、塗料液に含まれる顔料成分は、分散樹脂に覆われた0.1〜10μm程度の微小粒子であるが、比重が大きいため、塗装時において流速が低くて撹拌がないか、もしくは弱いと沈降してしまい、ザラザラ感のある塗装仕上がりとなる。しかしながら、本発明では、塗料液の被塗物に対する相対速度が増加するため、塗料液について一定以上の流速を確保し易く、被塗物の塗膜平滑性や塗料液の付きまわり性が向上する。
【0010】
また、塗膜析出面のジュール熱は、塗料液の流速が速いほど拡散されて奪われ易い。塗膜析出面の水酸化物イオンや塗料粒子イオンは、流速が速いほど拡散しやすい。即ち、塗装膜厚は塗料液の流速に依存する傾向があり、塗料液の流速が速いほど塗装膜厚が薄くなる。
【0011】
本発明では、塗料液の被塗物に対する相対速度が増加するため、塗装膜厚を薄くすることができる。その結果、余剰塗膜が削減されて、塗料液量や電力などにかかる塗装コストを低減することができる。
【0012】
本発明においては、前記整流板が、前記処理槽の幅方向に沿って複数設けられていると好適である。
【0013】
本構成によれば、処理槽の幅方向中央部付近と仕切り板側における処理液の流速分布がより均一になり、渦が生じ難くなる。
【0014】
本発明においては、前記第2流路部の下流側端部の幅が拡大されていると好適である。
【0015】
本構成によれば、第2流路部の下流側端部での流速が低下してUターン部における反転力が弱くなる。その結果、処理槽の幅方向中央部付近への流れが弱まり、渦が発生し難くなる。
【0016】
本発明においては、処理液の流れを生じさせる圧送手段が、前記第2流路部に設けられていると好適である。
【0017】
本構成によれば、第1流路部に圧送手段を設ける必要がないため、第1流路部全体で、処理液がより完全な一方向の流れとなる。
【0018】
本発明においては、前記圧送手段が、エジェクターノズルを備えて構成されていると好適である。
【0019】
本構成によれば、エジェクターノズルから処理液を噴出させることによって流れを生じさせることができる。
【0020】
本発明においては、複数の前記エジェクターノズルが、前記処理槽の液面付近から底部にわたって縦方向に一列に配置され、且つ、前記エジェクターノズルの列が、前記第2流路部の長手方向に沿って複数設けられていると好適である。
【0021】
本構成のごとく、エジェクターノズルの列を、第2流路部の長手方向に沿って複数設けることで、処理槽内の処理液のどの深さにおいても、一定の流速を確保することができる。
【0022】
本発明においては、前記複数のエジェクターノズルの列のそれぞれが、噴出圧力調節可能に構成されていると好適である。
【0023】
本構成によれば、複数のエジェクターノズルの列のそれぞれが、噴出圧力調節可能に構成されているため、処理液の流速の大きさを調節し易い。
【0024】
本発明においては、前記圧送手段が、プロペラ形羽根車をさらに備えると好適である。
【0025】
本構成によれば、プロペラ形羽根車を設けることによって、エジェクターノズルの数を削減することができるため、エジェクターノズルに供給する処理液の量を低減することができる。
【0026】
本発明においては、前記処理槽に隣接する付属槽を備え、該付属槽が、前記第1流路部の下流側端部の上側と連通していると好適である。
【0027】
本構成によれば、第1流路部の下流側端部に到達した処理液の一部が付属槽に流入するため、当該処理液に含まれる浮上性のゴミなどが付属槽にて捕集されて除去される。
【0028】
本発明においては、前記処理槽に隣接する底部ホッパーを備え、該底部ホッパーが、前記第1流路部の下流側端部の下側と連通していると好適である。
【0029】
本構成によれば、第1流路部の下流側端部に到達した処理液の一部が底部ホッパーに流入するため、当該処理液に含まれる沈降性のゴミなどが底部ホッパーにおいてろ過捕集されて除去される。
【0030】
本発明においては、前記処理槽に隣接する第2底部ホッパーを備え、該第2底部ホッパーが、前記Uターン部の下側と連通していると好適である。
【0031】
本構成によれば、第2流路部の下流側端部に到達した処理液の一部が第2底部ホッパーに流入するため、当該処理液に含まれる沈降性のゴミなどが第2底部ホッパーにおいてろ過捕集されて除去される。
【0032】
本発明においては、処理液が流入可能な滞留部が、前記第2流路部の上流側端部付近に設けられていると好適である。
【0033】
本構成によれば、例えば付属槽や底部ホッパーによって除去されなかったゴミなども、滞留部で捕集されて除去される。
【0034】
本発明においては、前記第1流路部の底面付近に、沈降防止手段が設けられていると好適である。
【0035】
本構成によれば、塗料やゴミ等が第1流路部の底面に沈降・堆積することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明に係る電着塗装設備の第1実施形態の概略平面図である。
図2】本発明に係る電着塗装設備の第1実施形態の概略側断面図である。
図3】整流板を備えていないUターン部の概略平面図である。
図4】整流板を1枚備えるUターン部の概略平面図である。
図5】整流板を2枚備えるUターン部の概略平面図である。
図6】幅が拡大されていない第2流路部の下流側端部の概略平面図である。
図7】幅が拡大されている第2流路部の下流側端部の概略平面図である。
図8】本発明に係る電着塗装設備の第2実施形態の概略平面図である。
図9】本発明に係る電着塗装設備の第2実施形態の概略側断面図である。
図10】本発明に係る電着塗装設備の第3実施形態の概略平面図である。
図11】本発明に係る電着塗装設備の第3実施形態の概略側断面図である。
図12】本発明に係る電着塗装設備の第4実施形態の概略平面図である。
図13】本発明に係る電着塗装設備の第4実施形態の概略側断面図である。
図14】本発明に係る電着塗装設備の第5実施形態の概略平面図である。
図15】本発明に係る電着塗装設備の第5実施形態の概略側断面図である。
図16】従来の電着塗装設備の概略平面図である。
図17】従来の電着塗装設備の概略側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明に係る表面処理設備の一例として、電着塗装設備の実施形態について、図面に基づいて以下説明する。尚、各図面における実線の矢印は塗料液L(処理液の一例)の流れを示し、紙面右方向を指す白抜きの矢印は、被塗物の搬送方向を示す。
〔第1実施形態〕
図1及び図2に示すように、本実施形態における電着塗装設備1は、オーバーヘッドコンベア(図示せず)、電着槽2(処理槽の一例)、付属槽5、底部ホッパー6、塗料液循環用ポンプP、を備える。
【0038】
本実施形態における電着槽2は、箱型形状を有するものであり、槽内には、塗膜成分を含有させた塗料液Lが貯留される。
【0039】
電着槽2の槽内には、長手方向に延びる2つの仕切り板3が、電着槽2の両側壁部20のそれぞれに近接する位置で設けられている。仕切り板3の前端と電着槽2の前壁部21との間、及び仕切り板3の後端と電着槽2の後壁部22との間にはそれぞれ隙間が設けれている。
【0040】
電着槽2は、被塗物が通過し、且つ塗料液Lが一方向に流れる第1流路部23と、第1流路部23の塗料液Lの流れと逆方向に塗料液Lが流れる2つの第2流路部24とを備える。第1流路部23と第2流路部24とは、仕切り板3によって区画されている。
【0041】
仕切り板3のそれぞれには、槽内の塗料液Lに浸漬させる状態で槽内電極(図示せず)が配置されている。また、後壁部22の幅方向中央部には、槽長手方向に延びる中央壁29が設けられている。
【0042】
第1流路部23は、第2流路部24よりも広い幅を有しており、被塗物を浸漬させて電着塗装する塗装エリアとして構成される。電着槽2は、第1流路部23の下流側に入槽部25を備え、第1流路部23の上流側に出槽部26を備える。
【0043】
図1に示すように、電着槽2では、第1流路部23の下流側端部と第2流路部24の上流側端部とが連通する。そして、第1流路部23の上流側端部と第2流路部24の下流側端部とが、第2流路部24の塗料液Lの流れる方向を第1流路部23の塗料液Lの流れる方向に反転させるUターン部27を介して連通している。
【0044】
Uターン部27は、中央壁29と、第1流路部23の塗料液Lの流れる方向に沿って延びる整流板4とを備える。
【0045】
Uターン部27における中央壁29は、2つの第2流路部24から流入してきた塗料液Lが、槽幅方向中央部で互いに衝突して速度エネルギーを損失してしまうことを防いで、塗料液Lを効率的にUターンさせる機能を担う。
【0046】
整流板4がない場合、図3に示すように、第2流路部24から流出してきた塗料液LがUターン部27で反転する際に、電着槽2の幅方向中央部付近の流速が速くなるため、仕切り板3側で渦が生じ易くなる。そこで、図4に示すように、Uターン部27に整流板4を設けることによって、電着槽2の幅方向中央部付近と仕切り板3側における塗料液Lの流速分布が均一に近づき、渦が生じ難くなる。
【0047】
図5に示すように、渦の発生を抑えるため、整流板4は、電着槽2の幅方向に沿って複数設けられていることが望ましい。本実施形態では、片方の第2流路部24につき整流板4を2枚設けることによって、電着槽2の幅方向中央部付近と仕切り板3側における塗料液Lの流速分布がほぼ均一になり、渦の発生をほぼなくすことができるように構成されている。
【0048】
また、整流板4を複数枚設置する場合、各整流板4の後壁部22の側の長さは、槽の幅方向中央寄りの整流板4ほど長くすること、即ち、整流板4と後壁部22との間隙を少なくしていることが望ましい。整流板4と後壁部22との間隙を少なくするほど、第1流路部23における槽の幅方向中央寄りの塗料液Lの流速を小さく調整できるため、Uターン部27の出口流速がより均一化され、Uターン部27における乱流の発生も防止される。
【0049】
尚、本実施形態では、長さの異なる2枚の整流板4を用いて、長さが長い方の整流板4を、電着槽2の幅方向中央部側に配置するように構成されているが、この構成に限定されるものではない。整流板4の長さや設置数については、渦の発生を抑えるか、あるいは渦を生じ難くすることができる構成であれば、適宜変更して良い。
【0050】
また、図6に示すように、第2流路部24の下流側端部の幅が拡大されていない場合、第2流路部24の下流側端部(第2流路部24における塗料液Lの出口付近)での流速が大きくなり、Uターン部27における反転力が強くなる。その結果、電着槽2の幅方向中央部付近への流れが強くなり渦が発生し易くなる。そこで、図7に示すように、渦の発生を抑えるために第2流路部24の下流側端部の幅が拡大されていることが望ましい(図7の二点鎖線部分と白抜き矢印を参照)。
【0051】
図1及び図2に示すように、第2流路部24の一部を構成する電着槽2の両側壁部20のそれぞれには、塗料液Lの流れを生じさせる圧送手段として、複数のエジェクターノズル9が設けられている。
【0052】
エジェクターノズル9は、電着槽2の液面付近から底部にわたって縦方向に一列に配置されるサイドライザー90を構成する。そして、複数のサイドライザー90が、第2流路部24の長手方向に沿って設けられている。
【0053】
尚、各エジェクターノズル9は、側壁部20に対して所定角度(例えば15°程度)だけ、槽内側に傾けた斜め向き姿勢で、電着槽2の出槽部26の側に塗料液Lを噴出させる状態に配置してある。これは、エジェクターノズル9から噴出された塗料液Lが、下流に配置されたサイドライザー90やその他の支持部材等に衝突することによって生じる、速度エネルギーの損失を防止することを目的としている。
【0054】
また、各サイドライザー90は、例えば圧力調整バルブ(図示せず)などを設けることによって、その噴出圧力を調節することができるように構成されていることが望ましい。これにより、塗料液Lの流速を適宜変更し易くなる。
【0055】
付属槽5は、電着槽2の入槽部25側の上部に隣接して設けられており、第1流路部23の下流側端部の上側と連通している。
【0056】
底部ホッパー6は、電着槽2の入槽部25側の下部に隣接して設けられており、第1流路部23の下流側端部の下側と連通している。
【0057】
塗料液循環用ポンプPは、電着槽2の外側に設けられており、配管8を介して、付属槽5、底部ホッパー6、及びサイドライザー90に接続されている。
【0058】
塗料液循環用ポンプPを作動させると、付属槽5及び底部ホッパー6から流下してきた塗料液Lが吸引される。吸引された塗料液Lは、必要に応じて温度調節やろ過処理がなされた後、各サイドライザー90に供給される。
【0059】
各サイドライザー90に供給された塗料液Lは、サイドライザー90の各エジェクターノズル9から噴出され、この噴出力によって電着槽2における塗料液Lの流れが生じる。
【0060】
サイドライザー90の各エジェクターノズル9から噴出された塗料液Lは、第2流路部24を出槽部26側に向かって流れてUターン部27に到達すると、流れを反転させて、第1流路部23に流入する。
【0061】
第1流路部23を流れる塗料液Lは、第1流路部23全体で、出槽部26側から入槽部25側へ向かう一方向の流れとなるため、滞留することなく流速が均一化され、且つ、乱流も生じない。
【0062】
また、各サイドライザー90の第2流路部24の長手方向における位置と、各サイドライザー90におけるエジェクターノズル9の高さ位置については、塗料液Lの深さ方向における流速ムラが生じないような位置に設定されている。そのため、第1流路部23における塗料液Lの流速分布については、平面方向だけでなく、深さ方向においても、流速ムラが生じ難い。
【0063】
第1流路部23の下流側端部に到達した塗料液Lの大部分は、第2流路部24の上流側端部(第2流路部24における塗料液Lの入り口)に流入し、入槽部25側から出槽部26側へ向かう一方向の流れとなる。従って、電着槽2の全体において、第1流路部23と第2流路部24によって一つの大きな槽内循環系が生じることとなる。
【0064】
また、第1流路部23の下流側端部に到達した塗料液Lの一部は、浮上性のゴミなどと共にオーバーフローして付属槽5に流入する。浮上性のゴミは、付属槽5にて捕集されて除去される。
【0065】
また、第1流路部23の下流側端部に到達した塗料液Lの一部は、沈降性のゴミなどと共に底部ホッパー6に流入する。沈降性のゴミは、底部ホッパー6においてろ過捕集されて除去される。
【0066】
自動車ボディ等の被塗物(被処理物の一例)は、オーバーヘッドコンベアによる吊下げ形態で搬送される。被塗物は、電着槽2の長手方向における一端部の入槽部25において槽内の塗料液L中に浸漬され、この入槽に続き、塗料液L中への浸漬状態を保った状態で、電着槽2の長手方向における他端部の出槽部26に向けて槽内進行され、この槽内進行過程において所定の電着時間にわたる電着工程が実施される。
【0067】
電着工程における被塗物は、槽内電極に対する対極電極として電気的に接地した状態を保ちつつ、その全体が槽内の塗装液に浸漬される。つまり、電着槽2では、被塗物を槽内の塗料液Lに浸漬させた状態で、槽内の塗料液Lを介して、槽内電極と対極電極としての被塗物との間に所定の電位差を所定の電着時間にわたって付与することで、塗料液L中の塗膜成分を電気的に被塗物の外面及び内面に引き付けて定着させ、これにより、被塗物Wの外面及び内面の夫々に塗膜を形成する。
【0068】
電着工程を経て出槽部26に至った被塗物は、オーバーヘッドコンベアによる搬送に伴い、槽内の塗料液Lから引き上げられ、この出槽に続く後続工程部に送られる。
【0069】
〔第2実施形態〕
図8及び図9には、電着塗装設備1の第2実施形態が示されている。
本実施形態については、上述の第1実施形態と異なる構成を主に記載し、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を一部省略する。
【0070】
本実施形態に係る電着塗装設備1は、上述の第1実施形態の構成に加えてさらに第2底部ホッパー7を備える。第2底部ホッパー7は、電着槽2の出槽部26側の下部に隣接して設けられており、第1流路部23の上流側端部の下側と連通している。
【0071】
第2流路部24の下流側端部に到達した塗料液Lの一部は、沈降性のゴミなどと共に第2底部ホッパー7に流入する。沈降性のゴミは、底部ホッパー6だけでなく、第2底部ホッパー7においても、ろ過捕集されて除去される。
【0072】
塗料液循環用ポンプPを作動させると、付属槽5、底部ホッパー6、及び第2底部ホッパー7から流下してきた塗料液Lが吸引される。吸引された塗料液Lは、必要に応じて温度調節やろ過処理がなされた後、各サイドライザー90に供給される。
【0073】
〔第3実施形態〕
図10及び図11には、電着塗装設備1の第3実施形態が示されている。
本実施形態については、上述の第1実施形態と異なる構成を主に記載し、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を一部省略する。
【0074】
本実施形態に係る電着塗装設備1は、上述の第1実施形態の構成に加えてさらに滞留部28を備える。
【0075】
滞留部28は、第2流路部24の上流側端部(第2流路部24における塗料液Lの入り口)付近における電着槽2の両側壁部20に設けられている。
【0076】
第1流路部23の下流側端部に到達した塗料液Lの大部分が滞留部28に流入した後、第2流路部24の上流側端部(第2流路部24における塗料液Lの入り口)に流入する。滞留部28では、付属槽5や底部ホッパー6によって除去されなかったゴミなどが捕集されて除去される。
【0077】
塗料液循環用ポンプPを作動させると、付属槽5、底部ホッパー6、及び滞留部28から流下してきた塗料液Lが吸引される。吸引された塗料液Lは、必要に応じて温度調節やろ過処理がなされた後、各サイドライザー90に供給される。
【0078】
〔第4実施形態〕
図12及び図13には、電着塗装設備1の第3実施形態が示されている。
本実施形態については、上述の第1実施形態と異なる構成を主に記載し、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を一部省略する。
【0079】
本実施形態に係る電着塗装設備1は、塗料液Lの流れを生じさせる圧送手段として、上述の第1実施形態におけるサイドライザー90に加えてさらにプロペラ形羽根車10を備える。
【0080】
本実施形態では、第1実施形態におけるサイドライザー90の一部を、プロペラ形羽根車10に替えて構成されている。
【0081】
複数のプロペラ形羽根車10が、電着槽2の液面付近から底部にわたって縦方向に一列に配置され、且つ、プロペラ形羽根車10の列が、第2流路部24の長手方向に沿って、サイドライザー90よりも下流側に複数設けられている。
【0082】
本構成においては、サイドライザー90による噴出力とプロペラ形羽根車10の回転力によって塗料液Lの流れが生じる。即ち、プロペラ形羽根車10が設けられていることによって、サイドライザー90の数を削減しても、塗料液Lの流速を第1実施形態と同様の流速に維持することができる。さらに、サイドライザー90の数が削減される分、塗料液循環用ポンプPを介して循環させる塗料液Lの量を低減することができる。
【0083】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0084】
〔第5実施形態〕
図14及び図15には、電着塗装設備1の第5実施形態が示されている。
本実施形態については、上述の第1実施形態と異なる構成を主に記載し、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を一部省略する。
【0085】
本実施形態に係る電着塗装設備1は、塗料沈降防止用ライザー11(沈降防止手段の一例)、切り替えバルブ12、及びバッグフィルター13をさらに備える。
【0086】
電着槽2における塗料やゴミの沈降は多少にかかわらず発生し得る。一方、本実施形態においては、塗装エリアである第1流路部23内の流向は巻き上がりがないため、塗料やゴミが一度沈降すれば再浮上することはなく、被塗物の塗装品質への影響はない。
【0087】
しかしながら、第1流路部23の底面付近の流速が遅いため、塗料やゴミがそのまま堆積してしまう虞がある。
【0088】
本実施形態では、第1流路部23の底面に近く、且つ仕切り板3の付近に、仕切り板3に沿って複数の塗料沈降防止用ライザー11を設置し、塗料沈降防止用ライザー11から塗料液Lを噴出させることによって、塗料やゴミ等が第1流路部23の底面に沈降・堆積することを防止することができる。
【0089】
電着工程を実施している間は、第1流路部23における塗料やゴミなどの沈降物の巻き上がりを防ぐため、塗料沈降防止用ライザー11を使用しない。
【0090】
一方、休日等、電着工程を実施していないとき、定期的に切り替えバルブ12を切り替えて、塗料液Lを塗料沈降防止用ライザー11に供給して噴出させる。これにより、沈降物を撹拌して底部ホッパー6から排出させ、バッグフィルター13にて捕集する。
【0091】
塗料沈降防止用ライザー11を使用するときは間欠運転を実施し、沈降物を撹拌した後は、切り替えバルブ12を所定時間オフにして通常の塗料液Lの流れによって底部ホッパー6へ沈降物を誘導する。これを何度か繰り返すことによって沈降物を排出する。
【0092】
〔その他の実施形態〕
1.上述の第2〜5実施形態における第1実施形態と異なる新たな構成については、必要に応じて任意に組み合わせて構成しても良い。
2.本発明に係る表面処理設備は、上述の電着塗装設備に限らず、他にも例えば、成形加工後の金属部材等の表面に付着した油やゴミを取り除く脱脂処理設備に適用することができる。この場合、被処理物の金属部材等を脱脂槽の脱脂剤中に浸漬させることにより、被処理部材の表面に付着した油やゴミを効率良く取り除くことができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の表面処理設備は、例えば、自動車ボディ等を塗装する電着塗装設備の技術分野において好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 電着塗装設備(表面処理設備の一例)
2 電着槽(処理槽の一例)
20 側壁部
21 前壁部
22 後壁部
23 第1流路部
24 第2流路部
25 入槽部
26 出槽部
27 Uターン部
28 滞留部
29 中央壁
3 仕切り板
4 整流板
5 付属槽
6 底部ホッパー
7 第2底部ホッパー
8 配管
9 エジェクターノズル(圧送手段の一例)
90 サイドライザー(圧送手段の一例)
10 プロペラ形羽根車(圧送手段の一例)
11 塗料沈降防止用ライザー(沈降防止手段の一例)
12 切り替えバルブ
13 バッグフィルター
P 塗料液循環用ポンプ
L 塗料液(処理液の一例)
【要約】
【課題】処理槽における処理液の流速が均一化され、且つ、乱流も生じ難い表面処理設備を提供すること。
【解決手段】処理槽の処理液L中に被処理物を浸漬させて表面処理する表面処理設備において、処理槽は、被処理物が通過し、且つ処理液Lが一方向に流れる第1流路部23と、第1流路部23の処理液Lの流れと逆方向に処理液Lが流れる第2流路部24とを備え、第1流路部23と第2流路部24との間に仕切り板3が設けられており、第1流路部23の下流側端部と第2流路部24の上流側端部とが連通し、第1流路部23の上流側端部と第2流路部24の下流側端部とが、第2流路部24の処理液Lの流れる方向を第1流路部23の処理液Lの流れる方向に反転させるUターン部27を介して連通し、第1流路部23の処理液Lの流れる方向に沿って延びる整流板4が、Uターン部27に設けられていることを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17