特許第6851525号(P6851525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6851525
(24)【登録日】2021年3月11日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】工具マガジン装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/155 20060101AFI20210322BHJP
【FI】
   B23Q3/155 F
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-53850(P2020-53850)
(22)【出願日】2020年3月25日
【審査請求日】2020年4月1日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 靖隆
【審査官】 中里 翔平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−043462(JP,A)
【文献】 特開2017−013199(JP,A)
【文献】 特開昭58−114842(JP,A)
【文献】 特開2016−47558(JP,A)
【文献】 特開平6−155397(JP,A)
【文献】 特開2008−264995(JP,A)
【文献】 特開平10−263969(JP,A)
【文献】 特開平10−113836(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0187871(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/155− 3/157
B23Q 11/00
B23Q 17/00
B23Q 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を保持する複数の工具保持部、及び該複数の工具保持部から選択される一の工具保持部を着脱位置に移送する移送機構を備えた工具マガジンと、
前記移送機構の作動を制御するマガジン制御部と、
前記工具マガジンに保持された工具の情報を記憶した工具情報記憶部と、
前記工具マガジンに保持された工具の情報を表示可能なディスプレイを有するとともに、前記マガジン制御部に操作信号を入力するように構成された手動操作器と、
前記ディスプレイの表示を制御する表示制御部とを備えた工具マガジン装置であって、
前記手動操作器は前記工具マガジンの近傍に配設され、
前記表示制御部は、前記ディスプレイに設定された所定の表示領域である操作キー表示領域に操作キーを表示するとともに、該操作キー表示領域以外の領域である工具情報表示領域に工具情報を表示するように構成されるとともに、前記工具保持部を前記着脱位置に移送させるための信号が前記手動操作器から入力されると、対応する工具保持部に保持された工具の情報を前記工具情報記憶部から取得し、前記ディスプレイの工具情報表示領域内に、前記工具の性状に応じて設定された色画像であって、所定領域を有する色画像を表示させるように構成され
前記工具の性状には、手動による工具の着脱の際の取り扱いに注意を要するか否かに関する性状であって、工具の重量、工具の剛性及び靭性から選択される少なくとも一つの性状が含まれ、
前記表示制御部は、移送する前記工具が取り扱いに注意を要する工具である場合には、前記ディスプレイの工具情報表示域内に、警告色のみで形成される前記色画像を表示させるように構成されていることを特徴とする工具マガジン装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、注意する重要度に応じて異なる警告色の色画像を表示するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の工具マガジン装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、色画像とともに注意情報を前記ディスプレイに表示するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の工具マガジン装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、直前の表示画面に重畳させて前記色画像を表示するように構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の工具マガジン装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、直前の表示画面を消去した後、前記色画像を表示するように構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の工具マガジン装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記ディスプレイの全表示領域の50%以上の領域に対して、前記色画像を表示するように構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の工具マガジン装置。
【請求項7】
前記手動操作器は工作機械の操作を行う操作装置から離れた位置に配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の工具マガジン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具を保持する複数の工具保持部、及びこの複数の工具保持部から選択される一の工具保持部を着脱位置に移送する移送機構を具備した工具マガジンなどから構成される工具マガジン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述した工具マガジン装置は、主に、工具主軸を備えた工作機械に付設されており、前記工具保持部に保持された複数の工具から選択される一の工具が工具交換位置に移送され、この後、当該工具交換位置に移送された工具と、工具主軸に装着された工具とが、適宜工具交換機構によって交換されるようになっている。
【0003】
そして、従来、上記のような工具マガジン装置及び工具交換機構を備えた工具交換装置として、特開平8−318443号公報(下記特許文献1)に開示された工具交換装置が知られている。この工具交換装置は、同公報に開示されるように、工具が保持される複数の工具保持部を有する工具マガジンと、この工具マガジンを駆動して、各工具保持部を工具交換位置に移送するマガジン駆動機構(移送機構)と、主軸に装着された工具と工具交換位置に位置決めされた工具とを交換する工具交換機構と、マガジン駆動機構及び工具交換機構の作動を制御する工具交換制御部とから構成される。
【0004】
ところで、このような工具交換装置において、前記工具保持部への工具の装着、及び当該工具保持部からの工具の取り出しといった段取り作業は、従来一般的に、オペレータの手作業によって行われている。そして、多数の工具保持部を備えた工具マガジンの場合には、オペレータが工具を着脱するための着脱位置が設定されており、この場合には、一般的に、前記工具交換制御部による制御の下で、手動操作によって前記着脱作業を行うことができるように、前記複数の工具保持部の中から所望の工具保持部を前記着脱位置に移動させるための操作信号を、前記工具交換制御部に入力する手動操作器が設けられている。
【0005】
斯くして、このような工具交換装置では、オペレータが、前記手動操作器によって、作業対象の工具保持部を指定することで、指定された工具保持部を前記着脱位置に移動させるための操作信号が、当該手動操作器から前記工具交換制御部に送信され、この工具交換制御部による制御の下で、前記マガジン駆動機構が駆動され、指定された工具保持部が着脱位置に移送される。そして、このような手動操作器の操作によって、オペレータは意図した任意の工具保持部を着脱位置に呼び出すことができ、当該工具保持部への工具の装着や、当該工具保持部からの工具の取り出しを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−318443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した工具保持部への工具の取り付けや、当該工具保持部からの工具の取り出しの際に、工具の種類によっては、その取扱いに注意を要するものがある。例えば、取り外す工具の重量が、オペレータが認識している重量よりも重い場合には、オペレータが工具保持部から工具を取り外す際に、誤って当該工具を落下させる虞がある。
【0008】
また、取り扱う工具の工具径が細径である場合や、工具の材質がセラミックやCBNといった靭性が低いものである場合には、この工具を誤って周囲の構造物に接触させると、当該工具が欠損する虞がある。
【0009】
したがって、オペレータの取り扱う工具が何らかの注意を要する工具である場合には、取り扱いに注意を要する工具である旨を、オペレータに対して注意喚起することができれば、オペレータは、これに応じて工具の取り扱いを慎重に行うことができるため、上述した問題が生じるのを未然に防止することができて有益である。一方で、注意を要することなく安全に取り扱うことができる工具の場合には、オペレータがこれを視覚的に容易に認識することができれば、オペレータは安心して当該工具を取り扱うことができる。
【0010】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、工具マガジン内の工具をオペレータが手作業によって着脱等する際に、当該工具が取り扱いに注意を要する工具である場合には、その旨をオペレータに対して認識させることができる工具マガジン装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明は、
工具を保持する複数の工具保持部、及び該複数の工具保持部から選択される一の工具保持部を着脱位置に移送する移送機構を備えた工具マガジンと、
前記移送機構の作動を制御するマガジン制御部と、
前記工具マガジンに保持された工具の情報を記憶した工具情報記憶部と、
前記工具マガジンに保持された工具の情報を表示可能なディスプレイを有するとともに、前記マガジン制御部に操作信号を入力するように構成された手動操作器と、
前記ディスプレイの表示を制御する表示制御部とを備えた工具マガジン装置であって、 前記手動操作器は前記工具マガジンの近傍に配設され、
前記表示制御部は、前記工具保持部を前記着脱位置に移送させるための信号が前記手動操作器から入力されると、対応する工具保持部に保持された工具の情報を前記工具情報記憶部から取得し、前記ディスプレイの所定領域に前記工具の性状に応じて設定された色画像を表示させるように構成された工具マガジン装置に係る。
【0012】
この工具マガジン装置によれば、オペレータが、工具マガジンの近傍に配設された手動操作器から、着脱位置に移送させる工具保持部の選択信号、及び移送の実行信号を入力すると、この選択信号及び実行信号が前記マガジン制御部及び表示制御部に送信される。
【0013】
そして、前記マガジン制御部による制御の下で、前記移送機構が駆動され、選択された工具保持部が着脱位置に移送される。また、前記表示制御部により、入力された工具保持部に保持された工具の情報が前記工具情報記憶部から取得され、手動操作器に設けられた前記ディスプレイの所定領域に前記工具の性状に応じて設定された色画像が表示される。
【0014】
斯くして、オペレータは、ディスプレイに表示された色画像から、これに対応した工具の性状を瞬時に視覚によって認識することができ、認識された性状に応じて、当該工具を取り扱うことができる。尚、本発明において、前記工具には、加工を行う本来的な工具のみならず、工具マガジンの工具保持部に保持されて使用されるタッチセンサ(プローブ)やカメラなどの各種センサ類が含まれるものとする。
【0015】
また、工具の性状に応じた色画像としては、重量が通常取り扱う重量よりも重い工具、工具径が細径で剛性が低い工具や、材質が低靭性の工具であるなど、その取扱いに注意を要する工具の場合には、「赤」、「橙」、「黄」といった一般的に警告色として認識されている色から構成された画像とすることができる。逆に、取り扱いが容易な重量の工具、剛性の高い工具や、材質が高靭性の工具など、安全に取り扱うことができる工具の場合には、「青」や「緑」といった一般的に安全色として認識されている色から構成された画像とすることができる。
【0016】
また、前記表示制御部は、警告色の色画像を表示する場合に、注意を要する重要度に応じた異なる警告色の色画像を表示するように構成されていても良い。例えば、注意の重要度を「高」、「中」及び「低」の3段階に設定し、重要度「高」の場合の警告色を「赤」、重要度「中」の場合の警告色を「橙」、重要度「低」の場合の警告色を「黄」とした色画像としても良い。このようにすれば、オペレータは、工具に応じて段階的に設定された注意の重要度を認識することができ、工具の性状に応じた多様且つきめ細やかな対応を採ることができる。
【0017】
また、前記表示制御部は、前記警告色の色画像を前記ディスプレイに表示する場合に、この色画像とともに、注意すべき情報(注意情報)を表示するように構成されていても良い。このようにすれば、オペレータは色画像から注意すべき工具であることを視覚的に瞬時に認識することができるとともに、注意すべき具体的な内容を注意情報から認識することができるので、当該工具の対する注意事項を正確に認識することができ、当該工具を適切に取り扱うことができる。
【0018】
また、前記表示制御部は、安全色の色画像をディスプレイに表示する場合に、その安全度に応じた異なる安全色の色画像を表示するように構成されていても良い。例えば、安全度を「高」及び「低」の2段階に設定し、安全度「高」の場合の色を「青」、安全度「低」の場合の色を「緑」とした色画像としても良い。このようにすれば、オペレータは、工具に応じて段階的に設定された安全度を認識することができる。
【0019】
また、前記表示制御部は、色画像を表示する場合に、ディスプレイに表示された直前の表示画面に重畳させて当該色画像を表示するように構成された態様を採ることができ、また、直前の表示画面を消去した後、当該色画像を表示するように構成された態様を採ることができる。
【0020】
また、前記表示制御部は、前記ディスプレイの全表示領域の50%以上の領域に対して、前記色画像を表示するように構成された態様を採ることができる。このようにすれば、オペレータは、より容易に色画像を認識することができる。
【0021】
前記手動操作器は、工作機械の操作を行う操作装置から離れた位置に配置された態様を採ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る工具マガジン装置によれば、オペレータは、ディスプレイに表示された色画像から、これに対応した工具の性状を瞬時に視覚によって認識することができ、認識された性状に応じて、当該工具を取り扱うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る工作機械を示した正面図である。
図2図1における矢視A方向の側面図である。
図3】本実施形態に係る工作機械の概略構成を示したブロック図である。
図4】本実施形態に係る工具情報記憶部に格納される工具情報を示したデータテーブルである。
図5】本実施形態に係るマガジン操作器を示した説明図である。
図6】本実施形態に係るマガジン操作器を示した説明図である。
図7】本実施形態に係るマガジン操作器を示した説明図である。
図8】本実施形態に係るマガジン操作器を示した説明図である。
図9】本実施形態に係るマガジン操作器を示した説明図である。
図10】本実施形態に係るマガジン操作器を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る工作機械を示した正面図、図2は、図1における矢視A方向の側面図、図3は、本実施形態に係る工作機械の概略構成を示したブロック図である。
【0025】
図1図3に示すように、本例の工作機械1は立形のマシニングセンタであり、ベッド2と、このベッド2上に立設されたコラム3と、このコラム3に支持され、上下方向(Z軸方向)に移動可能となった主軸頭4と、この主軸頭4によって、その軸中心に回転自在に支持された主軸5と、この主軸5の下方のベッド2上に配設されたテーブル6と、主軸頭4の側方に配設された工具マガジン35と、この工具マガジン35の下端部に設けられ、主軸5に取り付けられた工具Tと工具マガジン35の工具ポット36に格納された工具Tとを交換する工具交換機構10と、これら各部の作動を制御する制御装置20と、工作機械1を操作する操作信号を入力するためのNC操作盤30と、工具マガジン35を操作する操作信号を入力するための手動操作器であるマガジン操作器40などから構成される。
【0026】
前記テーブル6は水平な直交2軸方向であるX軸−Y軸方向に移動可能に構成され、また、前記主軸頭4はX軸及びY軸と直交する鉛直方向であるZ軸方向に移動可能になっており、適宜送り装置7によって、前記テーブル6がX軸及びY軸方向に駆動され、また、前記主軸頭4がZ軸方向に駆動される。また、前記主軸5は、主軸モータ8によってその軸中心に回転される。
【0027】
前記工具マガジン35は、工具Tが保持される複数の工具ポット36と、この複数の工具ポット36を、外周部に一定間隔で保持した円板状の保持プレート37と、工具ポット36と保持プレート37とを取り囲むように配設され、下部に開口部38aが形成されたカバー体38とから構成される。また、前記保持プレート37は、移送機構としてのマガジン駆動機構39によって中心軸周りに回転駆動されるようになっており、このマガジン駆動機構39により保持プレート37を回転させることによって、保持プレート37に保持された工具ポット36の中から所望の工具ポット36を、前記カバー体38の開口部38a(以下、「着脱位置」という)に移送することができるようになっている。
【0028】
また、前記着脱位置に割り出された工具ポット36は、適宜旋回機構(図示せず)によって、垂直面内で旋回され、主軸5に対して平行な姿勢となる待機位置に移動するようになっており、この待機位置に移動した工具ポット36は、前記旋回機構により、再度、垂直面内で旋回されることによって、前記着脱位置に復帰するようになっている。
【0029】
前記工具交換機構10は、前記主軸5と前記待機位置に移送された工具ポット36との中間位置に、その軸線が主軸5の軸線と平行となるように配設され回転軸11と、カム機構12を介して回転軸11を軸中心に回転させる駆動モータ13と、工具Tを把持する把持部が両端に形成され、前記回転軸11の下端部に固設された交換アーム14などから構成される。
【0030】
そして、前記回転軸11は、駆動モータ13からカム機構12に回転動力が伝達されることにより、その軸中心に回転するとともに、その軸方向に昇降するようになっており、交換アーム14は回転軸11とともに動作して、回転動作と昇降動作とを実行することにより、主軸5に装着された工具Tと、待機位置の工具ポット36に保持された工具Tとを交換する。
【0031】
図3に示すように、前記制御装置20は、NCプログラム記憶部21、NCプログラム実行部22、送り制御部23、主軸制御部24、工具情報記憶部25、加工時間算出部26及び工具交換制御部27などから構成され、これらのうち、前記NCプログラム記憶部21、NCプログラム実行部22、送り制御部23及び主軸制御部24が数値制御部を構成する。また、この制御装置20には、前記NC操作盤30及びマガジン操作器40がそれぞれ接続されている。尚、これら制御装置20、NC操作盤30及びマガジン操作器40は、CPU、RAM、ROMなどを含むコンピュータから構成されている。
【0032】
また、前記NC操作盤30は、入力部31及び表示部32を備えており、入力部31を介して、前記NCプログラム記憶部21にNCプログラムを格納する処理、前記工具情報記憶部25に工具情報を格納する処理、並びに前記NCプログラム実行部22,送り制御部23及び主軸制御部24にそれぞれ制御信号を入力する処理を行うことができるようになっている。また、表示部32には、NCプログラム記憶部21に格納されたNCプログラムや、NCプログラム実行部22における実行状況、送り装置7及び主軸モータ8の動作状況などが表示されるようになっている。
【0033】
前記送り制御部23は前記送り装置7の作動を制御する機能部であり、前記主軸制御部24は、前記主軸モータ8の作動を制御する機能部である。また、NCプログラム記憶部21には、1以上のNCプログラムが格納され、NCプログラム実行部22は、前記NC操作盤30の入力部31から入力された指令に従い、指定されたNCプログラムを前記NCプログラム記憶部21から読み出して、当該NCプログラムを実行し、前記送り制御部23、主軸制御部24及び工具交換制御部27にそれぞれ制御信号を送信する。尚、NCプログラム実行部22は、MDI操作として前記NC操作盤30の入力部31からNCコードが入力される場合には、このNCコードも実行し、当該NCコードに係る制御信号を前記送り制御部23、主軸制御部24及び工具交換制御部27に送信する。
【0034】
前記工具情報記憶部25は、図4に示すような工具情報を記憶する機能部である。図4に例示した工具情報は、各工具Tが格納される前記ポット36の番号、各工具Tについて設定された工具番号、各工具Tの名称、各工具Tの寸法(径と長さ)、各工具Tの重量、各工具Tの材質、各工具Tについての現在の加工累積時間、各工具Tについて設定された限界加工時間、各工具Tについて設定された取扱注意に関するフラグである。尚、工具Tには、切削作用部としての実工具と、この実工具を保持する工具ホルダとが含まれる。
【0035】
前記限界加工時間は、各工具Tの摩耗限界とみなされる加工累積時間であり、例えば、経験的に設定される。また、取扱注意に関するフラグは予め設定されており、例えば、重量が予め設定された基準値よりも重い工具の場合、工具径が予め設定された基準径よりも細径の工具の場合、低靭性として予め設定された材質の工具の場合には、取扱注意フラグがONされる。因みに、図4に示した例では、細径の工具であるポット番号1の工具、重量が重い工具であるポット番号3,4,20の工具、低靭性の材質の工具であるポット番号4の工具について、それぞれ取扱注意フラグがONになっている。
【0036】
前記加工時間算出部26は、前記NCプログラム実行部22の動作状況を監視して、当該NCプログラム実行部22で実行される加工を認識し、当該加工で使用される各工具Tについての加工時間を算出し、算出された加工時間を、前記工具情報記憶部9に格納された各工具Tに係る加工累積時間に加算することによって、当該加工累積時間を更新する処理を行う。
【0037】
前記工具交換制御部27は、前記NCプログラム実行部22又は前記NC操作盤30の入力部31から送信される制御信号を受信して、受信した制御信号に応じて前記工具交換機構10及びマガジン駆動機構39の作動を制御する。例えば、NCプログラム実行部22又は前記入力部31から次工具Tを前記待機位置に呼び出す制御信号を受信すると、工具交換制御部27は、マガジン駆動機構部39を駆動,制御して、当該制御信号に係る工具Tを保持したポット36を待機位置に移動させ、NCプログラム実行部22又は前記入力部31から工具交換指令を受信すると、工具交換機構10を駆動,制御して、当該工具交換機構10に工具交換動作を実行させる。
【0038】
また、工具交換制御部27は、前記マガジン操作器40から入力される操作信号、即ち、特定のポット36を着脱位置に移動させる操作信号を受信すると、まず、前記NCプログラム実行部22がNCプログラムを実行中であるか否かを確認し、NCプログラムを実行していない待機中である場合には、前記マガジン駆動機構39を駆動,制御して、操作信号に係るポット36を着脱位置に移動させる。
【0039】
前記マガジン操作器40は、入力と表示を行うためのタッチパネル41を備えるとともに、このタッチパネル41を介した操作信号の入力を制御する入力制御部42、及びタッチパネル41への表示を制御する表示制御部43を備えており、図2に示すように、前記工具マガジン35のカバー体38に形成された開口部38a、即ち、前記着脱位置の近傍に配設されている。
【0040】
そして、前記タッチパネル41から入力される信号が、前記入力制御部42を介して、前記工具交換制御部27に送信され、また、前記表示制御部43による制御の下で、前記工具情報記憶部25に格納された工具情報がタッチパネル41に表示される。この表示画面の一例を図5に示す。図5に示した例では、タッチパネル41の表示領域の殆どの領域に、ポット番号(POT)、工具番号(工具No.)及び工具名が一覧の形式で表示され、タッチパネル41を指で触れて上下にスライドすることにより、表示を上下方向にスクロールすることができるようになっている。
【0041】
また、一覧情報の下方の領域には、操作キーが表示されており、本例では、「取付キー」、「取外キー」、及び「呼出キー」が設けられている。また、「呼出キー」の隣には「確認キー」が設けられている。
【0042】
尚、本例では、前記工具マガジン35、マガジン駆動機構39、マガジン制御部として機能する工具交換制御部27、工具情報記憶部25及びマガジン操作器40が工具マガジン装置を構成する。
【0043】
次に、前記マガジン操作器40を用いた工具マガジン35の手動操作について説明する。
【0044】
この手動操作は、オペレータが、マガジン操作器40を介して、工具マガジン35内の所望の任意のポット36を前記着脱位置に呼び出す操作であり、オペレータは、前記着脱位置に呼び出したポット36からの工具Tの取り外しや、呼び出したポット36への工具Tの取り付けを行う。
【0045】
この手動操作において、オペレータは、まず、前記着脱位置に呼び出すべきポット36をタッチパネル41の表示画面から選択する。例えば、図6に示すように、オペレータが表示画面から「POT3」、「工具No.00010003」、「工具名Face Mill」を指で押下することによってこの工具Tを選択すると、表示制御部43により当該工具Tの表示領域が白黒反転され、当該工具Tが選択されたことが示される。
【0046】
次に、オペレータが「呼出キー」を押下すると、図7に示すように、表示制御部43によりこの「呼出キー」の表示領域が白黒反転されて、「呼出キー」が押下されたことが示されるとともに、入力制御部42により、このポット番号「POT3」に係る情報、及び呼出指令(操作信号)が前記工具交換制御部27に送信される。
【0047】
次に、表示制御部43は、選択されたポット番号「POT3」の工具について、前記工具情報記憶部25を参照して、その工具情報を取得し、取扱注意フラグがONになっている場合には、図8に示すように、警告色(本例では赤色)で構成される色画像G(斜線で示された領域の画像)、及び取り扱いに注意を要する取扱注意情報(この場合「重い工具」であること)Jを、タッチパネル41に表示されている工具情報に重畳させて表示する。この警告色に係る色画像Gが表示されることにより、オペレータは、取り扱う工具Tが注意を要する工具Tであることを視覚的且つ直感的に認識することができ、また、色画像Gに重畳された状態で取扱注意情報Jが表示されるので、オペレータは、取り扱いに注意を要する具体的な内容を正確に認識することができる。
【0048】
一方、工具交換制御部27は、この操作信号を受信すると、前記NCプログラム実行部22がNCプログラムを実行中であるか否かを確認し、NCプログラム実行部22がNCプログラムを実行していない場合には、マガジン駆動機構39を駆動,制御して、操作信号に係るポット番号「POT3」のポット36を着脱位置に移動させ、NCプログラム実行部22がNCプログラムを実行中である場合には、実行中であることを示す信号をマガジン操作器40に送信する。そして、マガジン操作器40の表示制御部43は、特に図示はしないが、呼出不可であることを、タッチパネル41に表示されている工具情報に重畳させて表示する。
【0049】
そして、このようにして、色画像G及び取扱注意情報Jがタッチパネル41に表示された場合、及び呼出不可情報がタッチパネル41上に表示された場合に、オペレータが「確認キー」を押下すると、表示制御部43によって、これらの表示が消去され、元の工具情報が表示される(図9参照)。
【0050】
次いで、オペレータがマガジン操作器40に表示された「取外キー」を押下すると、入力制御部42により、取り外しに係る操作信号が工具交換制御部27に送信され、この操作信号を受信した工具交換制御部27によりマガジン駆動機構39が駆動されて、着脱位置のポット36に装着された工具Tが取り外し可能となり、これにより、オペレータは手作業によって当該工具Tを当該ポット36から取り外すことができるようになる。
【0051】
次に、オペレータが新たな工具Tをポット36に挿入した状態で、マガジン操作器40に表示された「取付キー」を押下すると、入力制御部42により、取り付けに係る操作信号が工具交換制御部27に送信され、この操作信号を受信した工具交換制御部27によりマガジン駆動機構39が駆動されて、着脱位置のポット36に挿入された工具Tが当該ポットに保持される。
【0052】
斯くして、本例の工作機械1によれば、オペレータがマガジン操作器40を用いた手動操作によって、所望の工具Tを着脱位置に呼び出す操作を行う際に、選択した工具Tが取り扱いに注意を要するものである場合には、赤色の警告色で構成された色画像G、及び取扱注意情報Jが、タッチパネル41に表示されている工具情報に重畳された状態で表示されるので、オペレータはこの警告色に係る色画像Gを見ることで、取り扱う工具Tが注意を要する工具であることを視覚的且つ直感的に認識することができ、また、色画像Gに重畳された状態で取扱注意情報Jが表示されるので、オペレータは、取り扱いに注意を要する具体的な内容を正確に認識することができ、当該工具をT適切に取り扱うことができる。
【0053】
尚、本例では、上述したように、取扱注意に関するフラグは、重量が予め設定された基準値よりも重い工具である場合、工具径が予め設定された基準径よりも細径の工具である場合、低靭性として予め設定された材質の工具である場合にONに設定されており、選択された工具Tがこれらに該当する場合には、表示制御部43によって、警告色の色画像G及び具体的な取扱注意情報Jがタッチパネル41上において工具情報に重畳された状態で表示される。また、一つの工具Tに対して複数の取扱注意情報がある場合には、この複数の取扱注意情報Jが表示される。
【0054】
また、上例では、警告色を赤色としたが、一般的に警告色と認識されている色、例えば、橙色や黄色を用いることができる。
【0055】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明が採り得る具体的な態様は、何ら、上例のものに限定されるものではない。
【0056】
例えば、上例では、警告色で構成された色画像Gと取扱注意情報Jとを重畳させてタッチパネル41に表示するようにしたが、これに限られるものではなく、色画像Gのみを工具情報に重畳させて表示するようにしても良い。
【0057】
また、上例では、選択した工具Tが取り扱い上の注意を要する工具Tである場合に、警告色である色画像Gを表示するようにしたが、これに限られるものではなく、工具Tの他の性状に応じて設定された色画像Gを表示するようにしても良い。例えば、取り扱いが容易な重量の工具T、剛性の高い工具Tや、材質が高靭性の工具Tなど、安全に取り扱うことができる工具Tの場合、例えば、前記工具情報記憶部25に格納された工具情報の内、取扱注意フラグがOFFとなっている工具Tの場合には、「青」や「緑」といった一般的に安全色として認識されている色から構成された色画像Gを表示するようにしても良い。
【0058】
また、前記表示制御部43は、警告色の色画像Gを表示する場合に、注意を要する重要度に応じた異なる警告色の色画像Gを表示するように構成されていても良い。例えば、注意の重要度を複数の段階に設定し、この段階に応じて設定された色画像Gを表示することができる。
【0059】
より具体的には、工具Tの重量について、「かなり重い」(重要度が「高」)、「重い」(重要度が「中」)、「やや重い」(重要度が「低」)の3段階、また、工具径について、「かなり細い」(重要度が「高」)、「細い」(重要度が「中」)、「やや細い」(重要度が「低」)の3段階、また、工具Tの靭性について、「かなり脆い」(重要度が「高」)、「脆い」(重要度が「中」)、「やや脆い」(重要度が「低」)の3段階を設定し、重要度「高」の場合の警告色を「赤」、重要度「中」の場合の警告色を「橙」、重要度「低」の場合の警告色を「黄」とした色画像Gとしても良い。また、この場合に、一つの工具Tに対して複数の重要度が設定されている場合には、最も高い重要度に対応した色画像Gを表示するようにするのが好ましい。
【0060】
同様に、前記表示制御部43は、安全色の色画像Gをタッチパネル41に表示する場合に、その安全度に応じた異なる安全色の色画像Gを表示するように構成されていても良い。例えば、安全度を「高」及び「低」の2段階に設定し、安全度「高」の場合の色を「青」、安全度「低」の場合の色を「緑」とした色画像Gとしても良い。このようにすれば、オペレータは、工具Tに応じて段階的に設定された安全度を認識することができる。また、この場合に、一つの工具Tに対して複数の安全度が設定されている場合には、最も低い安全度に対応した色画像Gを表示するようにするのが好ましい。
【0061】
斯くして、これら場合、表示制御部43は、前記工具情報記憶部25に格納された工具情報を基に、各段階に対して設定された基準値に基づいて、重要度及び安全度の段階を判断する。このようにすれば、オペレータは、工具Tに応じて段階的に設定された注意の重要度及び安全度を認識することができ、工具Tの性状に応じた多様且つきめ細やかな対応を採ることができる。
【0062】
また、上例では、前記表示制御部43は、色画像Gを表示する場合に、タッチパネル41に表示された直前の工具情報の表示領域に重畳させて当該色画像Gを表示するように構成されているが、これに限られるものではなく、直前の工具情報の表示を消去した後、当該色画像Gを表示するように構成されていても良い(図9参照)。
【0063】
また、前記表示制御部43によってタッチパネル41上に表示される色画像Gの表示割合は、特に限定されるものではないが、タッチパネル41の全表示領域の50%以上を占めているのが好ましい。このようにすれば、オペレータは、より容易且つ直感的に色画像Gを認識することができる。
【0064】
また、本例のマガジン操作器40が配設される位置は、前記工具マガジン35の着脱位置の近傍であれば良く、前記NC操作盤30が設けられる位置とは離れた位置とすることができる。また、本実施形態における前記工具Tには、加工を行う本来的な工具のみならず、工具マガジン35のポット36に保持されて、前記工作機械1で使用可能なタッチセンサ(プローブ)やカメラなどの各種センサ類が含まれる。
【0065】
繰り返しになるが、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1 工作機械
2 ベッド
3 コラム
4 主軸頭
5 主軸
6 テーブル
7 送り装置
8 主軸モータ
10 工具交換機構
14 交換アーム
20 制御装置
21 NCプログラム記憶部
22 NCプログラム実行部
23 送り制御部
24 主軸制御部
25 工具情報記憶部
26 加工時間算出部
27 工具交換制御部
12 送り装置
13 主軸装置
30 NC操作盤
35 工具マガジン
36 工具ポット
39 マガジン駆動機構
40 マガジン操作器
41 タッチパネル
42 入力制御部
43 表示制御部
【要約】
【課題】マガジン内の工具を手作業により着脱する際に、取り扱いに注意を要する工具を、オペレータに認識させることができる工具マガジン装置を提供する。
【解決手段】複数の保持部36、及び複数の保持部36から一の保持部36を着脱位置に移送する移送機構39を備えたマガジン35と、移送機構39を制御するマガジン制御部27と、マガジン35内の工具情報を記憶した工具情報記憶部25と、工具情報を表示するディスプレイ41を有し、且つマガジン制御部27に操作信号を入力する手動操作器40と、ディスプレイ41を制御する表示制御部43とを備える。手動操作器40はマガジン35の近傍に配設され、表示制御部43は、保持部36を着脱位置に移送させる信号が手動操作器40から入力されると、この保持部36に保持された工具の情報を工具情報記憶部25から取得し、ディスプレイ41に当該工具の性状に対応した色画像を表示させる。
【選択図】図3
図1
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