特許第6851533号(P6851533)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6851533
(24)【登録日】2021年3月11日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】造影剤注入用カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/092 20060101AFI20210322BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   A61M25/092 510
   A61M25/00 506
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-100784(P2020-100784)
(22)【出願日】2020年6月10日
【審査請求日】2020年6月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502395136
【氏名又は名称】ガデリウス・メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180079
【弁理士】
【氏名又は名称】亀卦川 巧
(74)【代理人】
【識別番号】230101177
【弁護士】
【氏名又は名称】木下 洋平
(72)【発明者】
【氏名】中田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】河合 誠
【審査官】 鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2019−97598(JP,A)
【文献】 特表2018−523541(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/021179(WO,A1)
【文献】 特開2017−38884(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0096428(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0286658(US,A1)
【文献】 特表平6−509963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/092
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状のカテーテルと、
前記カテーテルの基端側に取付けられ、該カテーテル内部に連通している造影剤注入口とワイヤ挿入口のそれぞれを具えたコネクタを有し、
前記ワイヤ挿入口に、ガイドワイヤとスタイレットワイヤそれぞれを挿通させることができるとともに、ガイドワイヤとスタイレットワイヤのいずれかを挿通させることができる孔を具えた弾性部材が配設され、
前記コネクタに対し進退動及び回動可能に設けられたスライダ部材を具え、
前記スライダ部材は、掛止部材と、前記弾性部材を圧縮させ、又は該圧縮状態から解放させる押圧部を具え、
前記コネクタは、前記止部材が移動可能な、軸方向に設けられた軸方向スリットと、該軸方向スリットから周方向に設けられた周方向スリットを具え、
前記周方向スリットは、前記掛止部材を基端側に対して掛止させるロック用掛止部を具え、
前記弾性部材に前記ガイドワイヤ又はスタイレットワイヤが挿通され、前記押圧部により前記弾性部材が圧縮されたとき、前記ワイヤ挿入口が密閉されるように構成され、
前記掛止部材が前記ロック用掛止部に掛止しているとき、前記弾性部材が圧縮されている位置で前記スライダ部材を固定することを特徴とする、
造影剤注入用カテーテル。
【請求項2】
前記周方向スリットが、前記ロック用掛止部と軸方向スリットの間に、前記コネクタの先端に向けて盛り上がる隆起部を具える、請求項1の造影剤注入用カテーテル。
【請求項3】
前記押圧部が、前記ワイヤ挿入口内を軸方向に可動で、前記弾性部材を前記コネクタの先端側に押圧することにより該弾性部材が圧縮されるように構成され、前記孔と同芯のワイヤ案内路を具えている、請求項1又は2の造影剤注入用カテーテル。
【請求項4】
前記ワイヤ案内路が基端側から先端側に向けて小径になるテーパ状である、請求項3の造影剤注入用カテーテル。
【請求項5】
前記弾性部材が接する前記コネクタの先端側が先細りになるテーパ面である、請求項3又は4の造影剤注入用カテーテル。
【請求項6】
前記押圧部の先端の表面積が、該押圧部の先端と対向する前記弾性部材の面の表面積よりも小さい、請求項1から5のいずれか一項に記載の造影剤注入用カテーテル。
【請求項7】
前記軸方向スリットが前記掛止部材を基端側に対して掛止させる掛止部を具える、請求項1から6のいずれか一項に記載の造影剤注入用カテーテル。
【請求項8】
前記カテーテルの先端から15cmの範囲の外径が、該カテーテルの前記範囲以外の外径よりも小径である、請求項1から7のいずれか一項に記載の造影剤注入用カテーテル。
【請求項9】
前記カテーテルが、乳頭切開用ワイヤと、該乳頭切開用ワイヤを挿通させる乳頭切開用ワイヤルーメンをさらに具える、請求項1から8のいずれか一項に記載の造影剤注入用カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡を通じて体腔内、具体的には、特に、胆管又は膵管に挿入され、胆管内又は膵管内に造影剤を注入するために用いられる造影剤注入用カテーテル(以下、単に、「造影剤注入用カテーテル」ということもある。)に関する。
【背景技術】
【0002】
胆管や膵管のX線写真を撮影する場合、鼻や口から十二指腸まで挿入された内視鏡を通じて、十二指腸乳頭から胆管又は膵管に造影剤注入用カテーテルを挿入し、胆管内又は膵管内に造影剤を注入する。造影剤注入用カテーテルとして、例えば、次に挙げるものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−113485号公報
【特許文献2】特開2018−015086号公報
【0004】
特許文献1には、ガイドワイヤが挿入される第一のルーメン(管腔)を具え、第一のルーメンの外周側に造影剤を注入するための第二のルーメンが設けられた造影剤注入用カテーテルが開示されている。
【0005】
特許文献2には、ガイドワイヤを抜かずに造影剤が注入できるように、カテーテルの基端側であって、ガイドワイヤの挿入口に逆止弁を具えた造影剤注入用カテーテルが開示されている。なお、特許文献2では、本明細書におけるガイドワイヤの意味で「スライレットワイヤ」という語が使用されているが、本明細書におけるスタイレットワイヤとは異なるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特に胆管、膵管に挿入される造影剤注入用カテーテルは、一般的に、高い可撓性を有する素材で形成されている。このような造影剤注入用カテーテルを内視鏡に挿通させたとき、カテーテルが湾曲して内視鏡内部に引っ掛かるので、カテーテルを内視鏡に円滑に挿通させるため、カテーテルに所定の強度を付与させておく必要がある。このための方法として、カテーテル内部にスタイレットワイヤを挿通させておくというものがある。スタイレットワイヤは、通常、カテーテル内部に予め挿通されているもので、ガイドワイヤとは別のものである。なお、ガイドワイヤとは、カテーテル内部を進退動させることができるもので、カテーテルより先に延出するようにして体腔内に挿入され、そのガイドワイヤに沿ってカテーテルを進退動させるために使用されるものである。ガイドワイヤとスタイレットワイヤは、その用途が異なるため、素材や構造等が異なる。
【0007】
特許文献1と2に開示されている造影剤注入用カテーテルは、上記のようなスタイレットワイヤを具えていない。この点、特許文献1のカテーテルは、第一のルーメンの外周に造影剤を注入するための第二のルーメンが設けられているので、カテーテルが全体として肉厚で、スタイレットワイヤがなくても、内視鏡に挿通させるための強度を保持し得る。しかし、カテーテルが比較的大径となり、胆管や膵管等の細い体腔へ挿入させるカテーテルとしては適さない場合がある。
【0008】
特許文献2の造影剤注入用カテーテルは、スタイレットワイヤを具えていないので、カテーテルに対し、内視鏡に挿通させるための強度を付与するため、カテーテルを厚くする必要がある。そうすると、特許文献1のカテーテルと同様に、カテーテルが比較的大径となり、細い体腔へ挿入させるカテーテルとしては適さない場合がある。
【0009】
また、造影剤は、粘度が高い液体であるため、カテーテル内の空間が狭いと造影剤の注入抵抗が大きく、造影剤を注入し難いという問題が生じる。
【0010】
そこで、本発明は、前述した問題点に鑑み、細い体腔へ挿入させ易く、造影剤を注入し易い造影剤注入用カテーテルを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、管状のカテーテルと、
前記カテーテルの基端側に取付けられ、該カテーテル内部に連通している造影剤注入口とワイヤ挿入口のそれぞれを具えたコネクタを有し、
前記ワイヤ挿入口に、ガイドワイヤとスタイレットワイヤそれぞれを挿通させることができるとともに、ガイドワイヤとスタイレットワイヤのいずれかを挿通させることができる孔を具えた弾性部材が配設され、
前記コネクタに対し進退動及び回動可能に設けられたスライダ部材を具え、
前記スライダ部材は、掛止部材と、前記弾性部材を圧縮させ、又は該圧縮状態から解放させる押圧部を具え、
前記コネクタは、前記止部材が移動可能な、軸方向に設けられた軸方向スリットと、該軸方向スリットから周方向に設けられた周方向スリットを具え、
前記周方向スリットは、前記掛止部材を基端側に対して掛止させるロック用掛止部を具え、
前記弾性部材に前記ガイドワイヤ又はスタイレットワイヤが挿通され、前記押圧部により前記弾性部材が圧縮されたとき、前記ワイヤ挿入口が密閉されるように構成され、
前記掛止部材が前記ロック用掛止部に掛止しているとき、前記弾性部材が圧縮されている位置で前記スライダ部材を固定することを特徴とする造影剤注入用カテーテルによって前記課題を解決した。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ワイヤ挿入口に、ガイドワイヤとスタイレットワイヤのいずれかを挿通させることができる孔を具えた弾性部材が配設され、コネクタに対し進退動可能に設けられたスライダ部材を具え、スライダ部材は、弾性部材を圧縮させ、又は圧縮状態から解放させる押圧部を具え、弾性部材にガイドワイヤ又はスタイレットワイヤが挿通され、押圧部により弾性部材が圧縮されたとき、ワイヤ挿入口が密閉されるように構成されているので、内視鏡にカテーテルを挿入するときには、スタイレットワイヤが挿通されている状態で円滑に挿入することができ、その後、スタイレットワイヤを引抜いて、ガイドワイヤを挿入し、カテーテルの先端を体内の所望の場所に位置させ、ワイヤ挿入口を密閉した上で、造影剤を注入することができる。このとき、掛止部材をロック用掛止部に掛止させることにより、弾性部材が圧縮されている位置でスライダ部材を固定することができるので、ワイヤ挿入口が密閉されている状態を確実に維持することができる。よって、スタイレットワイヤにより、カテーテルに対し、内視鏡に円滑に挿通させるための強度を付与することができるので、カテーテルを薄くすることができる。換言すれば、カテーテルの内径を比較的大径にすることができ、カテーテルの外径を比較的小径とすることができる。よって、細い体腔へ挿入させ易い。また、造影剤を注入するときには、ガイドワイヤのみがカテーテル内に挿入されている状態であり、前述したように、カテーテルの内径を比較的大径にすることができるので、造影剤を注入し易い造影剤注入用カテーテルとすることができる。
【0013】
また、周方向スリットが、ロック用掛止部と軸方向スリットの間に、コネクタの先端に向けて盛り上がる隆起部を具える構成とすれば、スライダ部材が回動して、掛止部材とロック用掛止部の掛止状態が不意に解除されてしまうことを防止することができる。
【0014】
また、スライダ部材の押圧部が、ワイヤ挿入口内を軸方向に可動で、弾性部材をコネクタの先端側に押圧することにより弾性部材が圧縮されるように構成され、弾性部材の孔と同芯のワイヤ案内路を具えている構成とすれば、ガイドワイヤをワイヤ案内路から弾性部材の孔に、延いては、カテーテル内部に挿入し易い。ワイヤ案内路を基端側から先端側に向けて小径になるテーパ状とすれば、ガイドワイヤをさらに挿入し易くすることができる。また、弾性部材が接するコネクタの先端側が先細りになるテーパ面である構成とすれば、弾性部材が圧縮してガイドワイヤに密着し易いので、密閉度を高めることができる。
【0015】
スライダ部材の押圧部の先端の表面積を、押圧部の先端と対向する弾性部材の面の表面積よりも小さい構成とすれば、圧縮された弾性部材により押圧部が受ける反力を低減させることができるので、ワイヤ挿入口の密閉性を高めることができる。
【0016】
また、軸方向スリットが掛止部材を基端側に対して掛止させる掛止部を具える構成とすれば、スライダ部材がコネクタから脱落することを防ぐことができ、スライダ部材の脱落による事故を防止することができる。
【0017】
また、カテーテルの先端から15cmの範囲の外径を、カテーテルの他の範囲の外径よりも小径とすることにより、細い体腔へより挿入させ易い造影剤注入用カテーテルとすることができる。
【0018】
また、カテーテルが、乳頭切開用ワイヤと、乳頭切開用ワイヤを挿通させる乳頭切開用ワイヤルーメンをさらに具えた構成とすれば、カテーテルの先端を挿入させ難い程小径の体腔を必要に応じて切開することができる造影剤注入用カテーテルとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態の正面図。
図2】本発明の第1実施形態の要部を表す軸方向に沿った断面図。
図3図2の弾性部材が圧縮されている状態の図。
図4】本発明の第2実施形態のカテーテルの要部を表す軸方向に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図1〜4を参照して説明する。但し、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0021】
図1に示されているように、造影剤注入用カテーテル10は、カテーテル40、コネクタ12を有している。カテーテル40は、管状であり、内部は空洞である。コネクタ12は、カテーテル40の基端側に取付けられており、別個独立した造影剤注入口30とワイヤ挿入口17(図2参照。)を有している。コネクタ12には、スライダ部材20が連結されている。スライダ部材20は、コネクタ12に対し軸方向の進退動及び周方向の回動が可能なように設けられている。カテーテル40、コネクタ12、及びスライダ部材20は、公知となっているプラスチック等の樹脂素材で形成すればよい。
【0022】
図2は、造影剤注入用カテーテル10の要部の軸方向に沿った断面図である。図2に示すように、コネクタ12には、連通孔15が形成されており、連通孔15は、カテーテル40の内部、すなわち、ルーメン42と、造影剤注入口30(図1参照。)と連通する造影剤通路32、及びワイヤ挿入口17と連通している。なお、造影剤通路32は、説明の便宜上表示しているもので、図1に示す位置とは異なる。また、コネクタ12の内部とカテーテル40の間は、造影剤等の液体が漏れ出ないように密着され、或いはシールされている。
【0023】
ワイヤ挿入口17には、連通孔15と隣接する位置に、弾性部材18が配設されている。弾性部材18は、ゴムやシリコンゴム等の素材で形成することができる。弾性部材18には、孔19が設けられており、ガイドワイヤやスタイレットワイヤを挿通させることができる。弾性部材18の孔19は、連通孔15と連通するように設けられている。
【0024】
スライダ部材20は、弾性部材18と対向する押圧部23を具えている。また、スライダ部材20は、内部が空洞で、ワイヤ案内路27及びワイヤ用開口部28が形成されている。ワイヤ案内路27は、弾性部材18の孔19と連通するように設けられている。ここで、造影剤注入用カテーテル10の利用者がガイドワイヤ又はスタイレットワイヤを出し入れし易いように、弾性部材18の孔19とワイヤ案内路27は同芯であることが好ましく、さらに、ワイヤ案内路27は、図示しているように、基端側から先端側に向けて小径になるテーパ状であることが望ましい。
【0025】
造影剤注入用カテーテル10には、図示しない内視鏡にカテーテル40が挿入される前に、スライダ部材20のワイヤ開口部28からカテーテル40のルーメン42まで連通する所定の寸法及び強度を持ったスタイレットワイヤSが予め挿入されて使用される。スタイレットワイヤSは、カテーテル40が内視鏡内部を通過し、人体内に到達したとき等に引き抜くことができる。その後、ワイヤ開口部28からカテーテル40のルーメン42に対しガイドワイヤG(図3参照)が挿入され、カテーテル40の先端から延出して体腔内に挿入され、ガイドワイヤGによってカテーテル40の進退動が案内される。
【0026】
スライダ部材20は、前述のとおり、コネクタ12に対し進退動可能に設けられているため、スライダ部材20の押圧部23は、ワイヤ挿入口17内を軸方向に可動である。造影剤注入用カテーテル10の利用者は、スライダ部材20の持ち手部22を掴んでスライダ部材20をコネクタ12に対し進退動させることができる。ここで、スライダ部材20は、掛止部材24を具えており、スライダ部材20がコネクタ12に対し進退動したとき、掛止部材24は、コネクタ12の
軸方向に設けられた軸方向スリット14内(図1も参照。)を移動する。コネクタ12は、掛止部材24を基端側に対して掛止させる掛止部14aを具えているので、スライダ部材20がコネクタ12から脱落することを防ぐことができ、スライダ部材20の脱落による事故を防止することができる。
【0027】
スライダ部材20をコネクタ12の先端側に移動させ、押圧部23が弾性部材18を圧縮している状態を示しているのが図3である。図3に示す状態のとき、スライダ部材20の押圧部23は、弾性部材18を圧縮させており、弾性部材18は、コネクタ12のワイヤ挿入口17の先端側に位置するテーパ面11とガイドワイヤGに密着している。これにより、ワイヤ挿入口17は密閉され、図示しない注射器等を用いて造影剤注入口30から造影剤通路32に注入された造影剤は、ワイヤ挿入口17に流れることなく、カテーテル40のルーメン42に対してのみ流入する。このように、弾性部材18が接するコネクタ12の先端側が先細りになるテーパ面11であるため、弾性部材18が圧縮してガイドワイヤGに密着し易いので、密閉度を高めることができる。
【0028】
ここで、スライダ部材20をコネクタ12の周方向に回動させ、掛止部材24をコネクタ12の周方向に設けられた周方向スリット16内(図1も参照。)に移動させ、掛止部材24の基端側をロック用掛止部16aに掛止させることができる。掛止部材24がロック用掛止部16aに掛止しているとき、弾性部材18が圧縮されている位置でスライダ部材20が固定される。本構成とすることで、造影剤の圧力によってスライダ部材20が軸方向に移動することを防ぐことができるので、ワイヤ挿入口17が密閉されている状態を確実に維持することができる。なお、図示されているように、造影剤注入用カテーテル10では、掛止部材24と軸方向スリット14、周方向スリット16が円周方向に2箇所設けられているが、1箇所または3箇所以上でもよい。
【0029】
図3に示されている状態から、スライダ部材20を軸方向スリット14(図1参照。)の方向に回動させ、コネクタ12の基端側に移動させると、弾性部材18の圧縮状態は解放され、ガイドワイヤGを進退動させることができる状態になる。
【0030】
ここで、図1に示すように、周方向スリット16が、ロック用掛止部16aと軸方向スリット14の間に、コネクタ12の先端に向けて盛り上がる隆起部16bを具える構成とすれば、スライダ部材20が回動して、掛止部材24とロック用掛止部16aの掛止状態が不意に解除されてしまうことを防止することができる。なお、掛止部材24とロック用掛止部16aの掛止状態を解除する場合は、スライダ部材20を弾性部材18の方向に押しながら周方向に回動させればよい。
【0031】
このように、造影剤注入用カテーテル10では、内視鏡にカテーテル40を挿入するときには、スタイレットワイヤSが挿通されている状態で円滑に挿入することができ、その後、スタイレットワイヤSを引抜いて、ガイドワイヤGを挿入し、カテーテル40の先端を体内の所望の場所に位置させ、ワイヤ挿入口17を密閉した上で、造影剤を注入することができる。よって、スタイレットワイヤSにより、カテーテル40に対し、内視鏡に円滑に挿通させるための強度を付与することができるので、カテーテル40を薄くすることができる。すなわち、カテーテル40の内径を比較的大径にすることができ、カテーテル40の外径を比較的小径とすることができる。よって、細い体腔へ挿入させ易い。また、造影剤を注入するときには、ガイドワイヤGのみがカテーテル40内に挿入されている状態であり、さらに、カテーテル40の内径を比較的大径にすることができるので、造影剤を注入し易いのである。
【0032】
また、図1に示すように、カテーテル40の先端から15cmの範囲44の外径が、カテーテル40の範囲A以外の外径よりも小径である構成とすれば、細い体腔へより挿入させ易い造影剤注入用カテーテル10とすることができる。
【0033】
図4に示すように、カテーテル40aが、乳頭切開用ワイヤWと、乳頭切開用ワイヤWを挿通させる乳頭切開用ワイヤルーメン46をさらに具える構成としてもよい。乳頭切開用ワイヤは公知であるため、詳細な説明は省略するが、本構成とすることにより、カテーテル40aの先端を挿入させ難い程小径の体腔を必要に応じて切開することができる造影剤注入用カテーテル10aとすることができる。
【0034】
以上に説明したように、本発明によれば、細い体腔へ挿入させ易く、造影剤を注入し易い造影剤注入用カテーテルを提供することができる。
【符号の説明】
【0035】
10,10a 造影剤注入用カテーテル
11 テーパ面
12 コネクタ
14 軸方向スリット
14a 掛止部
16 周方向スリット
16a ロック用掛止部
16b 隆起部
17 ワイヤ挿入口
18 弾性部材
19 孔
20 スライダ部材
23 押圧部
24 掛止部材
27 ワイヤ案内路
30 造影剤注入口
40,40a カテーテル
46 乳頭切開用ワイヤルーメン
G ガイドワイヤ
S スタイレットワイヤ
W 乳頭切開用ワイヤ
【要約】
【課題】細い体腔へ挿入させ易く、造影剤を注入し易い造影剤注入用カテーテルを提供すること。
【解決手段】造影剤注入用カテーテル10は、弾性部材18にガイドワイヤG又はスタイレットワイヤSが挿通されているときに、押圧部23により弾性部材18が圧縮されると、ワイヤ挿入口17が密閉され、掛止部材24をロック用掛止部16aに掛止させることにより、弾性部材18が圧縮されている位置でスライダ部材20を固定することができる。内視鏡にカテーテル40を挿入するときには、スタイレットワイヤSが挿通されている状態で円滑に挿入することができ、スタイレットワイヤSを引抜いて、ガイドワイヤGを挿入し、ワイヤ挿入口17を密閉した上で、造影剤を注入することができるので、カテーテルの内径を比較的大径に、カテーテルの外径を比較的小径にできるから、細い体腔へ挿入させ易く、造影剤を注入し易い。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4