(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
対象物に対して作用する作用部を有するロボットと、該ロボットを搭載して、設定された作業位置に移動する搬送装置と、前記ロボット及び搬送装置の動作を制御する制御装置とを備えたロボットシステムにおいて、水平面内で相互に直交する第1軸及び第2軸、並びに第1軸及び第2軸と直交する鉛直方向の第3軸によって形成される3次元空間内における前記ロボットの目標作業姿勢及び前記搬送装置の目標作業位置を手動のティーチング操作によって設定する設定方法であって、
前記第1軸及び第2軸によって形成される平面内において、前記搬送装置を所定の作業位置となる位置に移動させた後、該作業位置を暫定作業位置として記憶させる第1工程と、
前記搬送装置を前記作業位置に停止させた状態で、前記ロボットを前記3次元空間内で動作させて、該ロボットに所定の作業姿勢を取らせた後、該作業姿勢を暫定作業姿勢として記憶させる第2工程と、
前記搬送装置が暫定作業位置に在り、且つ、前記ロボットが暫定作業姿勢を取っている状態で、前記ロボットの姿勢を変化させることにより、前記作用部を前記第1軸及び第2軸に沿ってそれぞれ移動させて、該第1軸及び第2軸方向の移動可能量が予め取得された前記搬送装置の第1軸及び第2軸方向の位置決め誤差量を越えているか否かを確認する第3工程と、
前記第1軸及び第2軸方向における前記作用部の移動可能量のいずれもが、前記搬送装置の前記第1軸及び第2軸における位置決め誤差量を越えている場合に、前記暫定作業位置を目標作業位置として記憶するとともに、前記暫定作業姿勢を目標作業姿勢として記憶する第4工程とを、順次実行するようにしたことを特徴とするティーチング操作を用いた設定方法。
前記第4工程において、前記第1軸及び第2軸方向の移動可能量のいずれかが、対応する前記第1軸及び第2軸方向の位置決め誤差量を下回っている場合には、この後、前記ロボット全体を前記第3軸回りに所定角度回転させる修正工程を実行し、
ついで、再度、前記第2工程から第4工程を順次実施するようにしたことを特徴とする請求項1記載のティーチング操作を用いた設定方法。
前記第4工程において、前記第1軸及び第2軸方向の移動可能量のいずれかが、対応する前記第1軸及び第2軸方向の位置決め誤差量を下回っている場合には、この後、前記搬送装置を、移動可能量が位置決め誤差量を下回った軸方向に、下回った値を超える距離だけ移動させる修正工程を実行し、
ついで、再度、前記第2工程から第4工程を順次実施するようにしたことを特徴とする請求項1記載のティーチング操作を用いた設定方法。
前記第4工程において、前記第1軸及び第2軸方向の移動可能量のいずれかが、対応する前記第1軸及び第2軸方向の位置決め誤差量を下回っている場合には、この後、前記ロボット全体を前記第3軸回りに所定角度回転させる第1修正工程を実行し、
ついで、再度、前記第2工程から第4工程を順次実施し、
再度実施した前記第4工程において、前記第1軸及び第2軸方向の移動可能量のいずれかが、対応する前記第1軸及び第2軸方向の位置決め誤差を下回っている場合には、この後、前記搬送装置を、移動可能量が位置決め誤差量を下回った軸方向に、下回った値を超える距離だけ移動させる第2修正工程を実行し、
ついで、再度、前記第2工程から第4工程を順次実施するようにしたことを特徴とする請求項1記載のティーチング操作を用いた設定方法。
対象物に対して作用する作用部を有するロボットと、該ロボットを搭載して、設定された作業位置に移動する搬送装置と、前記ロボット及び搬送装置の動作を制御する制御装置とを備えたロボットシステムにおいて、平面内で相互に交差する第1軸及び第2軸、並びに第1軸及び第2軸と交差する第3軸によって形成される3次元空間内における前記ロボットの目標作業姿勢及び前記搬送装置の目標作業位置を手動のティーチング操作によって設定する設定方法であって、
前記第1軸及び第2軸によって形成される平面内において、前記搬送装置を所定の作業位置となる位置に移動させた後、該作業位置を暫定作業位置として記憶させる第1工程と、
前記搬送装置を前記作業位置に停止させた状態で、前記ロボットを前記3次元空間内で動作させて、該ロボットに所定の作業姿勢を取らせた後、該作業姿勢を暫定作業姿勢として記憶させる第2工程と、
前記搬送装置が暫定作業位置に在り、且つ、前記ロボットが暫定作業姿勢を取っている状態で、前記ロボットの姿勢を変化させることにより、前記作用部を前記第1軸及び第2軸に沿ってそれぞれ移動させて、該第1軸及び第2軸方向の移動可能量が予め取得された前記搬送装置の第1軸及び第2軸方向の位置決め誤差量を越えているか否かを確認する第3工程と、
前記第1軸及び第2軸方向における前記作用部の移動可能量のいずれもが、前記搬送装置の前記第1軸及び第2軸における位置決め誤差量を越えている場合に、前記暫定作業位置を目標作業位置として記憶するとともに、前記暫定作業姿勢を目標作業姿勢として記憶する第4工程とを、順次実行するようにしたことを特徴とするティーチング操作を用いた設定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、例えば、前記ロボットが多関節型の場合、ロボットのアーム先端部に設けられる前記作用部(エンドエフェクタ)の位置は、各関節部を構成するモータの回転によって移動する各アームの姿勢が累積されたものとして定まる。そして、各モータが回転できる当該回転角には構造上の限界があるため、各アームの姿勢によっては、前記作用部をある方向にはそれ以上動かすことができない、所謂、特異点となるところが存在する。例えば、各アームが一直線状に並んだ場合には、その延長線方向には前記作用部を動かすことができない。また、2つ以上の可動軸が一直線状に並んだときにも、前記作用部を動かすことができない方向が生じる。
【0008】
したがって、自動運転において、前記無人搬送車を前記作業位置に位置決めしたときのロボットの作業姿勢を補正する際に、無人搬送車の位置決め誤差量が前記特異点によって制限される前記作用部の可動範囲を超えている場合には、ロボットの作業姿勢を補正することができず、システムはアラーム状態となって停止した状態となる。
【0009】
この点について、
図9及び
図10に基づいて、より具体的に説明する。尚、
図9及び
図10では、無人搬送車がX軸−Y軸平面で移動するとし、ティーチング時に無人搬送車を作業位置に位置決めしたときの、X軸−Y軸平面と平行な平面上における、ティーチング時の前記ロボットの作用部の先端(ロボット先端)の位置(目標位置)をPtとし、自動運転時に無人搬送車を作業位置に位置決めしたときの、X軸−Y軸平面と平行な平面上におけるロボット先端の位置(実動作位置)をPaとする。また、無人搬送車の位置決め誤差量をΔXe,ΔYeとし、実動作位置Paを基準としたロボット先端部のX軸及びY軸方向の各可動距離をXc,Ycとする。
【0010】
例えば、
図9に示すように、無人搬送車の位置決め誤差量ΔXe,ΔYeのいずれもが、実動作位置Paを基準としたロボット先端部のX軸及びY軸方向の各可動距離Xc,Ycより小さい場合、即ち、補正によってロボット先端部を移動させるべき位置である前記目標位置Ptが2点鎖線で示すロボット先端部の可動領域内にあれば、当該ロボット先端部の実動作位置Paを目標位置Ptに補正することができる(破線の矢印を参照)。
【0011】
一方、
図10に示すように、無人搬送車の位置決め誤差量ΔXe,ΔYeの少なくとも一方が、実動作位置Paを基準としたロボット先端部のX軸及びY軸方向の各可動距離Xc,Ycを超える場合(
図10に示した例では、ΔXe>Xc)、即ち、補正によってロボット先端部を移動させるべき位置である前記目標位置Ptが2点鎖線で示すロボット先端部の可動領域外にあれば、当該ロボット先端部の実動作位置Paを目標位置Ptに補正することができない(破線の矢印を参照)。
【0012】
そして、システムがアラーム状態となって停止した場合には、無人搬送車及びロボットを初期位置に復帰させた後、再稼働させる必要があり、また、アラームが頻繁に発生する場合には、ティーチング操作によって、ロボットの動作姿勢及び搬送装置の移動位置を再設定するといった対応を採る必要がある。そして、このような対応を採ることによって、当該システムの稼働率が低下するという問題を生じる。
【0013】
本発明は、以上の背景の下でなされたものであり、ティーチング操作を用いてロボットの姿勢を設定する方法であって、ロボット先端の実動作位置を、確実に、ティーチング操作時に設定された目標位置に補正することを可能にした設定方法の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明は、
対象物に対して作用する作用部を有するロボットと、該ロボットを搭載して、設定された作業位置に移動する搬送装置と、前記ロボット及び搬送装置の動作を制御する制御装置とを備えたロボットシステムにおいて、水平面内で相互に直交する第1軸及び第2軸、並びに第1軸及び第2軸と直交する鉛直方向の第3軸によって形成される3次元空間内における前記ロボットの目標作業姿勢及び前記搬送装置の目標作業位置を手動のティーチング操作によって設定する設定方法であって、
前記第1軸及び第2軸によって形成される平面内において、前記搬送装置を所定の作業位置となる位置に移動させた後、該作業位置を暫定作業位置として記憶させる第1工程と、
前記搬送装置を前記作業位置に停止させた状態で、前記ロボットを前記3次元空間内で動作させて、該ロボットに所定の作業姿勢を取らせた後、該作業姿勢を暫定作業姿勢として記憶させる第2工程と、
前記搬送装置が暫定作業位置に在り、且つ、前記ロボットが暫定作業姿勢を取っている状態で、前記ロボットの姿勢を変化させることにより、前記作用部を前記第1軸及び第2軸に沿ってそれぞれ移動させて、該第1軸及び第2軸方向の移動可能量が予め取得された前記搬送装置の第1軸及び第2軸方向の位置決め誤差量を越えているか否かを確認する第3工程と、
前記第1軸及び第2軸方向における前記作用部の移動可能量のいずれもが、前記搬送装置の前記第1軸及び第2軸における位置決め誤差量を越えている場合に、前記暫定作業位置を目標作業位置として記憶するとともに、前記暫定作業姿勢を目標作業姿勢として記憶する第4工程とを順次実行するようにした、ティーチング操作を用いた設定方法に係る。
【0015】
本発明に係る設定方法によれば、前記ロボットの目標作業姿勢及び前記搬送装置の目標作業位置を手動のティーチング操作によって設定する際に、上述した第1工程〜第4工程が順次実施される。
【0016】
即ち、まず、第1工程では、前記第1軸及び第2軸によって形成される平面内において、前記搬送装置を所定の作業位置となる位置に移動させた後、この作業位置を暫定作業位置として記憶し、ついで、第2工程では、前記ロボットに3次元空間内で所定の作業姿勢を取らせた後、この作業姿勢を暫定作業姿勢として記憶する。
【0017】
次に、第3工程では、ロボットの作用部を第1軸及び第2軸に沿ってそれぞれ移動させて、当該第1軸及び第2軸方向の移動可能量が予め取得された搬送装置の第1軸及び第2軸方向の位置決め誤差量を越えているか否かを確認する。そして、第4工程では、前記第1軸及び第2軸方向における作用部の移動可能量のいずれもが、搬送装置の第1軸及び第2軸における位置決め誤差量を越えている場合に、前記暫定作業位置を目標作業位置として記憶し、前記暫定作業姿勢を目標作業姿勢として記憶する。
【0018】
このようにして得られるロボットの目標作業姿勢では、その作用部の位置を、前記搬送装置の第1軸及び第2軸における各位置決め誤差量を越えて移動させることができる。言い換えれば、自動運転時に前記搬送装置を前記目標作業位置に移動させたときに、前記第1軸及び第2軸においてそれぞれ位置決め誤差を生じたとしても、ロボットに前記目標作業姿勢を取らせるときに、この位置決め誤差に応じて設定される第1軸及び第2軸方向の補正量だけ前記作用部を移動させることができる。即ち、ロボットの実作業姿勢を、搬送装置の位置決め誤差に応じて、確実に、目標作業姿勢に補正することができる。
【0019】
尚、前記第1軸及び第2軸は水平面内で設定されるのが好ましいが、これに限定されるものでは無く、所定の平面内で設定されていれば良い。また、この第1軸及び第2軸は、直交軸であるのが好ましいが、これに限られるものでは無く、単に交差していれば良い。更に、第3軸についても、第1軸及び第2軸と直交し、且つ鉛直に設定されているのが好ましいが、前記第1軸及び第2軸と交差していれば良く、また、鉛直に設定されていなくても良い。
【0020】
また、本発明では、前記第4工程において、前記第1軸及び第2軸方向の移動可能量のいずれかが、対応する前記第1軸及び第2軸方向の位置決め誤差量を下回っている場合には、この後、前記ロボット全体を前記第3軸回りに所定角度回転させる修正工程を実行し、
ついで、再度、前記第2工程から第4工程を順次実施するようにした態様を採ることができる。
【0021】
また、本発明では、前記第4工程において、前記第1軸及び第2軸方向の移動可能量のいずれかが、対応する前記第1軸及び第2軸方向の位置決め誤差量を下回っている場合に、以前の処理と関わりなく、上述した第1工程〜第4工程を新たにやり直すようにしても良いが、修正のための工程として、第4工程を実行後、前記搬送装置を、移動可能量が位置決め誤差量を下回った軸方向に、当該下回った値を超える距離だけ移動させる修正工程を実行し、
ついで、再度、前記第2工程から第4工程を順次実施するようにした態様を採ることができる。
【0022】
また、本発明では、前記第4工程において、前記第1軸及び第2軸方向の移動可能量のいずれかが、対応する前記第1軸及び第2軸方向の位置決め誤差量を下回っている場合には、この後、前記ロボット全体を前記第3軸回りに所定角度回転させる第1修正工程を実行し、
ついで、再度、前記第2工程から第4工程を順次実施し、
再度実施した前記第4工程において、前記第1軸及び第2軸方向の移動可能量のいずれかが、対応する前記第1軸及び第2軸方向の位置決め誤差を下回っている場合には、この後、前記搬送装置を、移動可能量が位置決め誤差量を下回った軸方向に、当該下回った値を超える距離だけ移動させる第2修正工程を実行し、
ついで、再度、前記第2工程から第4工程を順次実施するようにした態様を採ることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、自動運転時に前記搬送装置を前記基準作業位置に移動させたときに、前記第1軸及び第2軸においてそれぞれ位置決め誤差を生じたとしても、ロボットに前記目標作業姿勢を取らせるときに、この位置決め誤差に応じて設定される第1軸及び第2軸方向の補正量だけ前記作用部を移動させることができる。即ち、自動運転時のロボットの実作業姿勢を、搬送装置の位置決め誤差に応じて、確実に、目標作業姿勢に補正することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1及び
図2に示すように、本例のシステム1は、工作機械10、周辺装置としての材料ストッカ20及び製品ストッカ21、無人搬送車35、この無人搬送車35に搭載されたロボット25、ロボット25に装着されたカメラ31、並びにロボット25及び無人搬送車35を制御する制御装置40などから構成される。
【0027】
図4に示すように、前記工作機械10は、ワークW(W’)を把持するチャック12が装着される主軸11を備え、この主軸11が鉛直方向に沿って設けられた所謂立形のNC(数値制御)旋盤であり、ワークW(W’)に対して旋削加工を行うことができるようになっている。また、主軸11の近傍には接触子14及びこれを支持する支持バー15を備えたツールプリセッタ13が設けられており、この支持バー15は、当該主軸11の軸線に沿って、加工領域に対して進退可能に設けられており、その加工領域側の端面に、例えば、セラミック製の表示板16が設けられ、この表示板16に、
図5に示した識別図形が描画されている。
【0028】
尚、表示板16は水平面上に位置するように設けられている。また、
図4では、支持バー15及び接触子14が加工領域内に進出した状態を図示しているが、支持バー15及び接触子14が後退して、接触子14及び表示板16が収納領域内に収納された状態で、シャッタ17が閉じることにより、接触子14及び表示板16は加工領域から隔離される。
【0029】
また、本例の識別図形は複数の正方形をした画素が二次元に配列されたマトリクス構造を有するものであり、各画素が白または黒で表示される。
図5では、黒色の画素に斜線を付している。このような識別図形には、ARマーカやAprilTagと称されるものがある。また、識別図形が小さい場合には、当該識別図形上にレンズを設けるなどして、後述するカメラ31により拡大された画像が撮像されるようにしても良い。
【0030】
前記材料ストッカ20は、
図1において工作機械10の左隣に配設され、当該工作機械10で加工される複数の材料(加工前ワークW)をストックする装置である。また、前記製品ストッカ21は、
図1において工作機械10の右隣に配設され、当該工作機械10で加工された複数の製品又は半製品(加工済ワークW’)をストックする装置である。
【0031】
図1に示すように、前記無人搬送車35には、その上面である載置面36に前記ロボット25が搭載され、また、オペレータが携帯可能な操作盤37が付設されている。尚、この操作盤37は、データの入出力を行う入出力部、当該無人搬送車35及びロボット25を手動操作する操作部、並びに画面表示可能なディスプレイなどを備えている。
【0032】
また、無人搬送車35は、工場内における自身の位置を認識可能なセンサ(例えば、レーザ光を用いた距離計測センサ)を備えており、前記制御装置40による制御の下、水平なX軸−Y軸平面内で、前記工作機械10、材料ストッカ20及び製品ストッカ21が配設される領域を含む工場内を無軌道で走行するように構成され、本例では、前記工作機械10、材料ストッカ20及び製品ストッカ21のそれぞれに対して設定された各作業位置に経由する。
【0033】
図1及び
図3に示すように、前記ロボット25は、第1アーム26、第2アーム27及び第3アーム28の3つのアームを備えた多関節型のロボットであり、第3アーム28の先端部にはエンドエフェクタ(作用部)としてのハンド29が装着され、また、支持バー30を介して1つのカメラ31が装着されており、これらハンド29及びカメラ31を、水平なX軸,Y軸、及びこれらと直交する鉛直方向のZ軸で定義される3次元空間内で移動させる。
【0034】
図2に示すように、前記制御装置40は、動作プログラム記憶部41、移動位置記憶部42、動作姿勢記憶部43、マップ情報記憶部44、基準画像記憶部45、手動運転制御部46、自動運転制御部47、マップ情報生成部48、位置認識部49、補正量算出部50及び入出力インターフェース51から構成される。そして、制御装置40は、この入出力インターフェース51を介して、前記工作機械10、材料ストッカ20、製品ストッカ21、ロボット25、カメラ31、無人搬送車35及び操作盤37に接続している。
【0035】
尚、制御装置40は、CPU、RAM、ROMなどを含むコンピュータから構成され、前記手動運転制御部46、自動運転制御部47、マップ情報生成部48、位置認識部49、補正量算出部50及び入出力インターフェース51は、コンピュータプログラムによってその機能が実現され、後述する処理を実行する。また、動作プログラム記憶部41、移動位置記憶部42、動作姿勢記憶部43、マップ情報記憶部44及び基準画像記憶部45はRAMなどの適宜記憶媒体から構成される。本例では、制御装置40は無人搬送車35に付設され、適宜通信手段によって工作機械10、材料ストッカ20及び製品ストッカ21と接続されるとともに、ロボット25、カメラ31、無人搬送車35及び操作盤37とは有線又は無線によって接続されている。但し、このような態様に限られるものではなく、制御装置40は無人搬送車35以外の適宜位置に配設されていても良い。この場合、制御装置40は適宜通信手段によって各部と接続される。
【0036】
前記動作プログラム記憶部41は、生産時に前記無人搬送車35及び前記ロボット25を自動運転するための自動運転用プログラム、並びに後述する工場内のマップ情報を生成する際に前記無人搬送車35を動作させるためのマップ生成用プログラムを記憶する機能部である。自動運転用プログラム及びマップ生成用プログラムは、例えば、前記操作盤37に設けられた入出力部から入力され、当該動作プログラム記憶部41に格納される。
【0037】
尚、この自動運転用プログラムには、無人搬送車35が移動する目標位置としての移動位置、移動速度及び無人搬送車35の向きに関する指令コードが含まれ、また、ロボット25が順次動作する当該動作に関する指令コード、及び前記カメラ31の操作に関する指令コードが含まれる。また、マップ生成用プログラムは、前記マップ情報生成部48においてマップ情報を生成できるように、無人搬送車35を無軌道で工場内を隈なく走行させるための指令コードが含まれる。
【0038】
前記マップ情報記憶部44は、無人搬送車35が走行する工場内に配置される機械、装置、機器など(装置等)の配置情報を含むマップ情報を記憶する機能部であり、このマップ情報は前記マップ情報生成部48によって生成される。
【0039】
前記マップ情報生成部48は、詳しくは後述する前記制御装置40の自動運転制御部47による制御の下で、前記動作プログラム記憶部41に格納されたマップ生成用プログラムに従って無人搬送車35を走行させた際に、前記センサによって検出される距離データから工場内の空間情報を取得するとともに、工場内に配設される装置等の平面形状を認識し、例えば、予め登録された装置等の平面形状を基に、工場内に配設された具体的な装置、本例では、工作機械10、材料ストッカ20及び製品ストッカ21の位置、平面形状等(配置情報)を認識する。そして、マップ情報生成部48は、得られた空間情報及び装置等の配置情報を工場内のマップ情報として前記マップ情報記憶部44に格納する。
【0040】
前記移動位置記憶部42は、前記無人搬送車35が移動する具体的な目標位置としての移動位置であって、前記動作プログラム中の指令コードに対応した具体的な移動位置を記憶する機能部であり、この移動位置には、上述した工作機械10、材料ストッカ20及び製品ストッカ21に対して設定される各作業位置(目標作業位置)が含まれる。尚、この移動位置(目標移動位置)は、例えば、前記手動運転制御部46による制御の下、前記操作盤37により前記無人搬送車35を手動運転して、目標とする各位置に移動させた後、前記位置認識部49によって認識される位置データを前記移動位置記憶部42に格納する操作によって設定される。この操作は所謂ティーチング操作と呼ばれる。
【0041】
前記動作姿勢記憶部43は、前記ロボット25が所定の順序で動作することによって順次変化するロボット25の姿勢(動作姿勢)であって、前記動作プログラム中の指令コードに対応した動作姿勢に係るデータを記憶する機能部である。この動作姿勢に係るデータは、前記手動運転制御部46による制御の下で、前記操作盤37を用いたティーチング操作により、当該ロボット25を手動運転して、目標とする各姿勢を取らせたときの、当該各姿勢におけるロボット25の各関節(モータ)の回転角度データであり、この回転角度データが動作姿勢に係るデータとして前記動作姿勢記憶部43に格納される。
【0042】
ロボット25の具体的な動作姿勢は、前記材料ストッカ20、工作機械10及び製品ストッカ21において、それぞれ設定される。例えば、材料ストッカ20では、当該材料ストッカ20において作業を開始するときの作業開始姿勢(取出開始姿勢)、当該材料ストッカ20に収納された加工前ワークWをハンド29により把持して、当該材料ストッカ20から取り出すための各作業姿勢(各取出姿勢)及び取出を完了したときの姿勢(取出完了姿勢であり、本例では、取出開始姿勢と同じ姿勢)が取出動作姿勢(目標作業姿勢)として設定される。
【0043】
また、工作機械10では、加工済のワークW’を工作機械10から取り出すワーク取出動作姿勢、及び加工前ワークWを工作機械10に取り付けるワーク取付動作姿勢が目標作業姿勢として設定される。
【0044】
具体的には、ワーク取出動作姿勢では、例えば、工作機械10に進入する前の作業開始姿勢、ハンド29及びカメラ31を工作機械10の加工領域内に進入させて、支持バー15に設けられた識別図形にカメラ31を正対させ、当該カメラ31によって識別図形を撮像する姿勢(撮像姿勢)(
図4参照)、工作機械10のチャック12に把持された加工済ワークW’に対してハンド29を対向させた姿勢(取出準備姿勢)、ハンド29をチャック12側に移動させて、当該チャック12に把持された加工済ワークW’をハンド29によって把持する姿勢(把持姿勢)、ハンド29をチャック12から離隔させて加工済ワークW’をチャック12から取り外した姿勢(取外姿勢)、ハンド29及びカメラ31を工作機械10から抜け出させた姿勢(作業完了姿勢)の各姿勢が目標作業姿勢として設定される。尚、カメラ31を水平な識別図形に対して正対させたときのカメラ31の姿勢は、そのレンズと識別図形とが略平行になる姿勢である。
【0045】
また、ワーク取付動作姿勢では、例えば、工作機械10に進入する前の作業開始姿勢、ハンド29及びカメラ31を工作機械10の加工領域内に進入させて、支持バー15に設けられた識別図形にカメラ31を正対させ、当該カメラ31によって識別図形を撮像する姿勢(撮像姿勢)(
図4参照)、工作機械10のチャック12に対してハンド29に把持された加工前ワークWを対向させた姿勢(取付準備姿勢)、ハンド29をチャック12側に移動させて、加工前ワークWを当該チャック12によって把持可能にした姿勢(取付姿勢)、ハンド29をチャック12から離隔させた姿勢(離隔姿勢)、ハンド29及びカメラ31を工作機械10から抜け出させた姿勢(作業完了姿勢)の各姿勢が目標作業姿勢として設定される。
【0046】
前記製品ストッカ21では、当該製品ストッカ21において作業を開始するときの作業開始姿勢(収納開始姿勢)、ハンド29に把持した加工済ワークW’を製品ストッカ21内に収納するための各作業姿勢(収納姿勢)及び収納を完了したときの姿勢(収納完了姿勢であり、本例では、収納開始姿勢と同じ姿勢)が収納動作姿勢(目標作業姿勢)として設定される。
【0047】
前記位置認識部49は、前記センサによって検出される距離データ、及び前記マップ情報記憶部44に格納された工場内のマップ情報を基に、工場内における無人搬送車35の位置を認識する処理、並びに、前記ロボット25の各関節に設けられるモータの回転角に基づいて、エンドエフェクタとしてのハンド29及びカメラ31の前記3次元空間内における位置を認識する処理を実行する機能部である。そして、この位置認識部49によって認識される無人搬送車35の位置に基づいて、当該無人搬送車35の動作が前記自動運転制御部47によって制御される。また、位置認識部49によって認識された無人搬送車35のX軸−Y軸平面における位置、並びにハンド29及びカメラ31の前記3次元空間内(X軸,Y軸及びZ軸で定義される3次元空間内)における位置は、前記操作盤37のディスプレイ上に表示される。尚、ハンド29及びカメラ31の3次元空間内の位置は、ロボット25の各アーム長さ及び各関節に設けられるモータの回転角に基づいて、所定の変換式から算出することができる。
【0048】
前記手動運転制御部46は、オペレータにより前記操作盤37から入力される操作信号に従って、前記無人搬送車35、ロボット25及びカメラ31を動作させる機能部である。即ち、オペレータは、この手動運転制御部46による制御の下で、前記操作盤37を用いて、前記位置認識部49により認識され、ディスプレイに表示される無人搬送車35の位置、並びにハンド29及びカメラ31の前記3次元空間内における位置を確認しながら、前記無人搬送車35を前記X軸及びY軸に沿って並進移動させることができるとともに、前記カメラ31により画像を撮像することができる。また、ロボット25のハンド29及びカメラ31を、X軸,Y軸及びZ軸の各軸に沿って並進移動させることができるとともに、X軸,Y軸及びZ軸の各軸回りにそれぞれ回転させることができる。尚、X軸,Y軸及びZ軸の各軸回りの回転はそれぞれrx,ry及びrzで表される。
【0049】
前記自動運転制御部47は、前記動作プログラム記憶部41に格納された自動運転用プログラム及びマップ生成用プログラムの何れかを用い、当該プログラムに従って無人搬送車35、ロボット25及びカメラ31を動作させる機能部である。その際、前記移動位置記憶部42及び動作姿勢記憶部43に格納されたデータが必要に応じて使用される。
【0050】
前記基準画像記憶部45は、ティーチング操作時に、無人搬送車35が工作機械10に対して設定された作業位置に在り、ロボット25が前記撮像姿勢にあるときに、前記ツールプリセッタ13の支持バー15に設けられた識別図形を前記カメラ31により撮像して得られた画像を、基準画像として記憶する機能部である。
【0051】
前記補正量算出部50は、前記自動運転制御部47による制御の下で、前記動作プログラム記憶部41に格納された自動運転用プログラムに従って前記ロボット25が自動運転される際に、当該ロボット25が撮像姿勢に在り、カメラ31によって前記識別図形が撮像されると、当該自動運転時に得られた現在の識別図形の画像と、前記基準画像記憶部45に格納された基準画像(ティーチング操作時に撮像された画像)とに基づいて、ロボット25の現在の姿勢(実動作姿勢)とティーチング操作時の姿勢(目標動作姿勢)との間におけるカメラ31の位置誤差量であって、識別図形と平行な平面内で設定される相互に直交する2軸方向(本例ではX軸及びY軸方向)におけるカメラ31の位置誤差量(Δx,Δy)、及び該平面と直交する垂直軸(本例ではZ軸)回りのカメラ31の回転誤差量(Δrz)を推定し、推定された各誤差量に基づいて、前記実動作姿勢における前記作用部(ハンド29又はカメラ31が対応)に対する補正量を算出する。
【0052】
そして、前記自動運転制御部47は、ロボット25が工作機械10で作業する際の作業姿勢、例えば、前記ワーク取出動作姿勢における前記取出準備姿勢、把持姿勢及び取外姿勢、並びに前記ワーク取付動作姿勢における取付準備姿勢、取付姿勢及び離隔姿勢について、前記補正量算出部50において算出された補正量に基づいて、ロボット25のハンド29の位置(目標位置)を補正する。尚、この補正量は、予め設定された変換式により、ロボット25の各関節の角度データに変換され、変換された角度データに従って、ロボット25が制御される。
【0053】
以上の構成を備えた本例のシステム1によれば、まず、前記ティーチング操作により、工作機械10、材料ストッカ20及び製品ストッカ21に対する無人搬送車35の各作業位置(目標作業位置)、並びに同じく工作機械10、材料ストッカ20及び製品ストッカ21に対するロボット25の各動作姿勢(目標作業姿勢)が設定され、それぞれ前記移動位置記憶部42及び動作姿勢記憶部43に記憶される。
【0054】
具体的な設定方法について、一例として、工作機械10の場合について説明する。まず、手動操作により、無人搬送車35を工作機械10に対する作業位置に移動させて、この位置を無人搬送車35の工作機械10に対する作業位置(目標作業位置)として前記移動位置記憶部42に記憶する。ついで、同じく手動操作によりロボット25を動作させて、ワーク取出動作及びワーク取付動作の共通姿勢としての作業開始姿勢(作業完了姿勢も同じ)及び撮像姿勢を取らせて、各動作姿勢(目標作業姿勢)に係るデータを前記動作姿勢記憶部43に記憶するとともに、ワーク取出動作における取出準備姿勢、把持姿勢及び取外姿勢、並びにワーク取付動作における取付準備姿勢、取付姿勢及び離隔姿勢を取らせて、各動作姿勢(目標作業姿勢)に係るデータを前記動作姿勢記憶部43に記憶する。
【0055】
その際、前記補正量算出部50において算出された補正量に基づいて、前記ハンド29の位置が補正される動作姿勢、即ち、取出動作における取出準備姿勢、把持姿勢及び取外姿勢、並びに取付動作姿勢における取付準備姿勢、取付姿勢及び離隔姿勢については、特に、
図6から
図8に示した手順に従って各動作姿勢(目標作業姿勢)を設定する。
【0056】
以下、
図6から
図8に示した設定手順について、前記取出準備姿勢を一例として説明する。尚、無人搬送車35は、予め、工作機械10に対する理想の作業位置に移動され(ステップS1)、この作業位置が暫定作業位置として前記移動位置記憶部42に記憶されているものとする(ステップS2)。まず、ロボット25に取付準備姿勢を取らせ(ステップS3)、この姿勢を暫定的な作業姿勢として、そのデータを前記動作姿勢記憶部43に記憶する(ステップS4)。
【0057】
次に、無人搬送車35の移動軸方向であるX軸及びY軸の各正負方向にそれぞれハンド29を移動させ(ステップS5)、各移動方向において、その移動可能量が無人搬送車35の位置決め誤差量よりも大きいか否かを確認する(ステップS6)。尚、この無人搬送車35の位置決め誤差量は、予め、経験的に取得されている。
【0058】
そして、各移動方向において、ハンド29の移動可能量が、いずれも無人搬送車35の位置決め誤差量よりも大きい場合には、前記移動位置記憶部42に記憶された暫定作業位置を正式な目標作業位置として当該移動位置記憶部42に記憶するとともに(ステップS7)、前記動作姿勢記憶部43に暫定作業姿勢として記憶された前記取付準備姿勢に係る姿勢データを正式な目標作業姿勢に係る姿勢データとして当該動作姿勢記憶部43に記憶して(ステップS8)、当該取出準備姿勢に係るティーチング操作を終了する。
【0059】
上記において、
図9及び
図10を用いて説明したように、無人搬送車35の位置決め誤差量ΔXe,ΔYeのいずれもが、実動作位置Paを基準としたハンド29の先端部のX軸及びY軸方向の各可動距離Xc,Ycより小さい場合、即ち、補正によってハンド29の先端部を移動させるべき位置である前記基準位置Ptが2点鎖線で示すハンド29の先端部の可動領域内にあれば、当該ハンド29の先端部の実動作位置Paを基準位置Ptに補正することができる。
【0060】
一方、
図10に示すように、無人搬送車35の位置決め誤差量ΔXe,ΔYeの少なくとも一方が、実動作位置Paを基準としたロボット先端部のX軸及びY軸方向の各可動距離Xc,Ycを超える場合(
図10に示した例では、ΔXe>Xc)、即ち、補正によってロボット先端部を移動させるべき位置である前記基準位置Ptが2点鎖線で示すロボット先端部の可動領域外にあれば、当該ロボット先端部の実動作位置Paを基準位置Ptに補正することができない。そして、この
図10に示した状態の場合には、ロボット25の作業姿勢を補正することができず、システム1はアラーム状態となって停止した状態となる。
【0061】
そこで、本例では、X軸及びY軸の各移動方向において、ハンド29の移動可能量が、いずれも無人搬送車35の位置決め誤差量よりも大きい場合には、後の自動運転時において、無人搬送車35の位置決め誤差によって生じるハンド29の位置誤差を補正することが可能であるので、このロボット25の姿勢を前記取付準備姿勢に係る正式な目標作業姿勢として、その姿勢データを前記動作姿勢記憶部43に記憶する。
【0062】
一方、前記ステップS6において、前記各移動方向におけるハンド29の移動可能量のいずれかが無人搬送車35の位置決め誤差量よりも小さいことが確認された場合には、後の自動運転時において、無人搬送車35の位置決め誤差によって生じるハンド29の位置誤差を補正することができない場合を生じる可能性があるので、暫定的に設定されたロボット25の姿勢を再設定する。
【0063】
具体的には、ロボット25を前記Z軸回りに所定量だけ全体的に回転させた後(ステップS9)、理想的な取付準備姿勢となるようにロボット25の姿勢を調整し(ステップS10)、この姿勢に係るデータでもって、暫定作業姿勢として前記動作姿勢記憶部43に記憶された姿勢データを更新する(ステップS11)。尚、ロボット25を回転させる回転量は、ハンド29の移動可能量が無人搬送車35の位置決め誤差量よりも小さいその移動軸、及びその差分値から推定される値であって、オペレータの経験的な知見に基づいて適宜設定される。
【0064】
次に、上記と同様にして、X軸及びY軸の各正負方向にそれぞれハンド29を移動させ(ステップS12)、各移動方向において、その移動可能量が無人搬送車35の位置決め誤差量よりも大きいか否かを確認する(ステップS13)。そして、各移動方向において、ハンド29の移動可能量が、いずれも無人搬送車35の位置決め誤差量よりも大きい場合には、前記移動位置記憶部42に記憶された暫定作業位置を正式な目標作業位置として当該移動位置記憶部42に記憶するとともに(ステップS14)、前記動作姿勢記憶部43に暫定作業姿勢として記憶された前記取付準備姿勢に係る姿勢データを正式な目標作業姿勢に係る姿勢データとして当該動作姿勢記憶部43に記憶して(ステップS15)、当該取出準備姿勢に係るティーチング操作を終了する。
【0065】
一方、前記ステップS13において、前記各移動方向におけるハンド29の移動可能量のいずれかが無人搬送車35の位置決め誤差量よりも小さいことが確認された場合には、上述のように、後の自動運転時において、無人搬送車35の位置決め誤差によって生じるハンド29の位置誤差を補正することができない場合を生じる可能性があるので、再度、暫定的に設定されたロボット25の姿勢を設定し直す。
【0066】
即ち、まず、ハンド29の移動可能量が無人搬送車35の位置決め誤差量よりも小さいことが確認された移動軸及びその方向に、足りない量を超える量だけ前記無人搬送車35を移動させた後(ステップS16)、この無人搬送車35の位置でもって、工作機械10に対する暫定的な作業位置として前記移動位置記憶部42に記憶された位置データを更新する(ステップS17)。
【0067】
次に、上記と同様にして、理想的な取付準備姿勢となるようにロボット25の姿勢を調整し(ステップS18)、この姿勢に係るデータでもって、暫定作業姿勢として前記動作姿勢記憶部43に記憶された姿勢データを更新する(ステップS19)。
【0068】
ついで、X軸及びY軸の各正負方向にそれぞれハンド29を移動させ(ステップS20)、各移動方向において、その移動可能量が無人搬送車35の位置決め誤差量よりも大きいか否かを確認する(ステップS21)。そして、各移動方向において、ハンド29の移動可能量が、いずれも無人搬送車35の位置決め誤差量よりも大きい場合には、暫定的な作業位置として前記移動位置記憶部42に記憶された作業位置を正式な目標作業位置として当該移動位置記憶部42に記憶するとともに(ステップS22)、前記動作姿勢記憶部43に暫定作業姿勢として記憶された前記取付準備姿勢に係る姿勢データを正式な目標作業姿勢に係る姿勢データとして当該動作姿勢記憶部43に記憶した後(ステップS23)、当該取出準備姿勢に係るティーチング操作を終了する。
【0069】
一方、前記ステップS21において、前記各移動方向におけるハンド29の移動可能量のいずれかが無人搬送車35の位置決め誤差量よりも小さいことが確認された場合には、ティーチング操作による設定が不可能であるので、この場合にも処理を終了する。そして、この場合には、その原因を究明し、対策を施した後、再び、一連のティーチング操作を実行する。
【0070】
尚、上記の処理のステップS16おいて、無人搬送車35を移動させると、それ以前に設定した作業位置に無人搬送車35が在るときのロボット25の動作姿勢が変更されるため、面倒ではあるが、当該動作姿勢は、これを再設定する必要がある。
【0071】
以上の処理により、ロボット25の取出動作における取出準備姿勢、把持姿勢及び取外姿勢、並びに取付動作姿勢における取付準備姿勢、取付姿勢及び離隔姿勢を、ティーチング操作によって設定する。
【0072】
そして、ティーチング操作によって、無人搬送車35の各作業位置、及びロボット25の各動作姿勢が設定され、それぞれ前記移動位置記憶部42及び動作姿勢記憶部43に記憶されると、以下のようにして、無人自動生産が実行される。
【0073】
即ち、前記制御装置40の自動運転制御部47による制御の下で、前記動作プログラム記憶部41に格納された自動運転用プログラムが実行され、この自動運転用プログラムに従って、例えば、無人搬送車35及びロボット25が以下のように動作する。
【0074】
まず、無人搬送車35は、工作機械10に対して設定された作業位置に移動するとともに、ロボット25は上述したワーク取出動作の作業開始姿勢を取る。尚、この時、工作機械10は所定の加工を完了して、ロボット25が加工領域内に侵入可能なようにドアカバーを開いており、また、自動運転制御部47からの指令を受信して、前記ツールプリセッタ13の支持バー15を加工領域内に進出させているものとする。
【0075】
ついで、ロボット25は前記撮像姿勢に移行し、前記支持バー15に設けられた識別図形をカメラ31によって撮像する。そして、このようにして、カメラ31によって識別図形が撮像されると、前記補正量算出部50において、当該識別図形の画像と、前記基準画像記憶部45に格納された基準画像とを基に、ロボット25のティーチング操作時における撮像姿勢と現在の撮像姿勢との間の位置誤差量Δx,Δy及び回転誤差量Δrzが推定され、推定された各誤差量に基づき、ロボット25の以降のワーク取出動作姿勢に対する補正量が算出される。
【0076】
そして、自動運転制御部47は、補正量算出部50により算出された補正量に基づいて、以降のワーク取出動作姿勢、即ち、上述した取出準備姿勢、把持姿勢、取外姿勢及び作業完了姿勢を補正して、工作作機械10のチャック12に把持された加工済ワークW’をハンド29に把持して当該工作機械10から取り出す。
【0077】
尚、前記ロボット25の取出準備姿勢、把持姿勢及び取外姿勢に係る各目標作業姿勢においては、前記ハンド29の位置を無人搬送車35のX軸及びY軸における各位置決め誤差量を越えて移動させることができる、言い換えれば、自動運転時に前記無人搬送車35を前記目標作業位置に移動させたときに、前記X軸及びY軸方向においてそれぞれ位置決め誤差が生じたとしても、ロボット25に各目標作業姿勢を取らせるときに、この位置決め誤差に応じて設定されるX軸及びY軸方向の補正量だけ前記ハンド29を移動させることができるので、ロボット25の実作業姿勢を、無人搬送車35の位置決め誤差に応じて、確実に、目標作業姿勢に補正することができる。
【0078】
次に、自動運転制御部47は、無人搬送車35を、製品ストッカ21に対して設定された作業位置に移動させるとともに、ロボット25に、当該製品ストッカ21において作業を開始するときの収納開始姿勢、ハンド29に把持した加工済ワークを製品ストッカ21内に収納するための各収納姿勢及び収納を完了したときの収納完了姿勢を順次取らせて、ハンド29に把持した加工済ワークを製品ストッカ21に収納する。
【0079】
ついで、自動運転制御部47は、無人搬送車35を、材料ストッカ20に対して設定された作業位置に移動させるとともに、ロボット25に、当該材料ストッカ20において作業を開始するときの取出開始姿勢、当該材料ストッカ20に収納された加工前ワークをハンド29によって把持して、当該材料ストッカ20から取り出すための各取出姿勢及び取出を完了したときの取出完了姿勢を順次取らせて、ハンド29に加工前ワークを把持させる。
【0080】
次に、自動運転制御部47は、再度、無人搬送車35を工作機械10に対して設定された作業位置に移動させるとともに、ロボット25に上述したワーク取付動作の作業開始姿勢を取らせる。ついで、ロボット25を前記撮像姿勢に移行させ、前記支持バー15に設けられた識別図形をカメラ31によって撮像させる。そして、このようにして、カメラ31によって識別図形が撮像されると、前記補正量算出部50において、当該識別図形の画像と、前記基準画像記憶部45に格納された基準画像とを基に、ロボット25のティーチング操作時における撮像姿勢と、現在の撮像姿勢との間の位置誤差量Δx,Δy及び回転誤差量Δrzが推定され、推定された各誤差量に基づき、ロボット25の以降のワーク取付動作姿勢に対する補正量が算出される。
【0081】
この後、自動運転制御部47は、補正量算出部50により算出された各補正量に基づいて、以降のロボット25のワーク取付動作姿勢、即ち、上述した取付準備姿勢、取付姿勢、離隔姿勢及び作業完了姿勢におけるハンド29の位置を補正するとともに、Z軸回りの回転位置を補正して、ロボット25に、ハンド29に把持された加工前ワークWを工作機械10のチャック12に取り付けた後、機外に退出する動作を行わせる。
【0082】
尚、上記と同様に、前記ロボット25の取付準備姿勢、取付姿勢及び離隔姿勢に係る各目標作業姿勢では、前記ハンド29の位置を、無人搬送車35のX軸及びY軸における各位置決め誤差量を越えて移動させることができる、言い換えれば、自動運転時に前記無人搬送車35を前記目標作業位置に移動させたときに、前記X軸及びY軸方向においてそれぞれ位置決め誤差が生じたとしても、ロボット25に各前記目標作業姿勢を取らせるときに、この位置決め誤差に応じて設定されるX軸及びY軸方向の補正量だけ前記ハンド29を移動させることができるので、ロボット25の実作業姿勢を、無人搬送車35の位置決め誤差に応じて、確実に、目標作業姿勢に補正することができる。
【0083】
この後、自動運転制御部47は、工作機械10に加工開始指令を送信して、工作機械10に加工動作を行わせる。また、ロボット25に前記取付姿勢を取らせた後に、自動運転制御部47から工作機械10にチャック閉指令を送信することで、当該チャック12が閉じられ、当該チャック12によって加工前ワークWが把持される。
【0084】
そして、以上を繰り返すことにより、本例のシステム1では、無人自動生産が連続して実行される。
【0085】
以上のように、本例では、ティーチング操作によってロボット25の姿勢を設定する際に、そのハンド29の位置が補正される動作姿勢、即ち、取出動作における取出準備姿勢、把持姿勢及び取外姿勢、並びに取付動作姿勢における取付準備姿勢、取付姿勢及び離隔姿勢に係る各目標作業姿勢について、ハンド29の位置を、無人搬送車35のX軸及びY軸における各位置決め誤差量を越えて移動させることができる姿勢に設定しているので、自動運転時に無人搬送車35を目標作業位置に移動させたときに、X軸及びY軸方向にそれぞれ位置決め誤差を生じたとしても、ロボット25に前記目標作業姿勢を取らせるときに、この位置決め誤差に応じて設定されるX軸及びY軸方向の補正量だけ前記ハンド29を移動させることができる。即ち、ロボット25の実作業姿勢を、無人搬送車35の位置決め誤差に応じて、確実に、目標作業姿勢に補正することができる。
【0086】
また、本例では、各目標作業姿勢について、前記ハンド29の位置を、無人搬送車35のX軸及びY軸における各位置決め誤差量を越えて移動させることができない場合には、まず、ロボット25をそのZ軸回りに回転させることによって、当該ハンド29の位置を、無人搬送車35のX軸及びY軸における各位置決め誤差量を越えて移動させることができるように、各目標作業姿勢を再設定するようにしている。各目標作業姿勢の再設定は、無人搬送車35のX軸及びY軸における位置を調整することによっても可能であるが(前記ステップS16)、無人搬送車35のX軸及びY軸における位置を調整すると、それ以前に設定した作業位置に無人搬送車35が在るときのロボット25の動作姿勢が変更されるため、当該動作姿勢を全て再設定する必要があり、この作業は少なからず面倒である。本例では、無人搬送車35の位置を調整する前に、Z軸回りにロボット25を回転させることによって、目標作業姿勢の再設定を行うようにしており、この処理は、それ以前に設定した目標作業姿勢に影響を与えない、即ち、それ以前に設定した目標作業姿勢を再設定する必要がないので、現在の目標作業姿勢の再設定を効率的に行うことができる。
【0087】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明が採り得る具体的な態様は、何らこれに限定されるものではない。
【0088】
例えば、上例では、ロボット25の各目標作業姿勢について、ハンド29の位置を、無人搬送車35のX軸及びY軸における各位置決め誤差量を越えて移動させることができない場合に、修正工程としてロボット25をZ軸回りに回転させた後、目標作業姿勢の再設定を行うステップS9〜S15の処理と、この処理後においても、なおハンド29の位置を、無人搬送車35のX軸及びY軸における各位置決め誤差量を越えて移動させることができない場合に、修正工程として無人搬送車35の位置を調整した後、目標作業姿勢の再設定を行うステップS16〜S23の処理との2段階の再設定を実行するようにしたが、これに限られるものではなく、ステップS9〜S15、又はステップS16〜S23のいずれか一方の再設定を実行するようにしても良い。或いは、修正工程を行うのではなく、ステップS1〜S8の処理を繰り返すようにしても良い。
【0089】
また、上例では、無人搬送車35及びロボット25が動作する3次元空間を、好ましい態様として、水平面内で直交するX軸及びY軸、並びにこれらに直交する鉛直方向のZ軸によって定義したが、これに限られるものでは無く、X軸及びY軸は所定の平面内で交差するように設定されていれば良い。また、Z軸についても、X軸及びY軸と交差していれば良く、鉛直方向に設定されていなくても良い。
【0090】
繰り返しになるが、上述した実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【解決手段】ロボット25、ロボット25を搭載して移動する搬送装置35、及び制御装置を備えるシステムにおいて、直交軸である第1軸、第2軸及び第3軸により形成される3次元空間内でのロボット25の作業姿勢及び搬送装置35の作業位置をティーチング操作により設定する。搬送装置35を所定作業位置に移動させて暫定作業位置として記憶し、ロボット25に所定作業姿勢を取らせて暫定作業姿勢として記憶する。次に、ロボット25の作用部29を第1軸及び第2軸に沿って移動させてその移動可能量が搬送装置35の同方向への位置決め誤差量を越えているか否かを確認する。各移動可能量のいずれもが、位置決め誤差量を越えている場合に、暫定作業位置を目標作業位置に設定し、暫定作業姿勢を目標作業姿勢に設定する。