特許第6851539号(P6851539)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6851539印刷用ブランケット及び印刷用ブランケットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851539
(24)【登録日】2021年3月11日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】印刷用ブランケット及び印刷用ブランケットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41F 17/34 20060101AFI20210322BHJP
   B41M 1/40 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   B41F17/34 C
   B41M1/40 C
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-504258(P2020-504258)
(86)(22)【出願日】2018年8月24日
(86)【国際出願番号】JP2018031375
(87)【国際公開番号】WO2020039578
(87)【国際公開日】20200227
【審査請求日】2020年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000145378
【氏名又は名称】株式会社秀峰
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】村岡 貢治
【審査官】 長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/104087(WO,A1)
【文献】 特開平10−119443(JP,A)
【文献】 特開2004−284267(JP,A)
【文献】 特開昭61−118284(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/108034(WO,A1)
【文献】 国際公開第02/045961(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 1/00−10/06
B41M 1/00− 3/18
B41F 17/00−17/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性体と、
該弾性体に接着されたシートと、を有し、
該シートを被印刷面に押し当てて印刷する印刷用ブランケットの製造方法であって、
前記シートの前記弾性体に接着される領域の周囲を固定するシート固定工程と、
固定された前記シートの接着面に前記弾性体の接着面が対向するように前記弾性体を設置する弾性体設置工程と、
前記弾性体の表面にワックス層を設けるワックス塗布工程と、
前記シート及び前記表面に前記ワックス層が設けられた前記弾性体のうち少なくとも一方に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記シートと前記弾性体とを押し付け、前記シートを前記表面に沿うように伸ばしながら前記接着剤を介して前記シートを前記ワックス層が設けられた前記弾性体に密着させる押し付け工程と、を有
前記ワックス塗布工程は、
前記弾性体の前記表面の全域にワックスを塗布する第1ワックス塗布工程と、
前記弾性体の頂部を含む前記表面の一部の領域のみにワックスを塗布する第2ワックス塗布工程と、を備える、印刷用ブランケットの製造方法。
【請求項2】
前記シート固定工程は、
前記シートの前記弾性体に接着される領域を包囲する枠に前記シートを固定する、請求項に記載の印刷用ブランケットの製造方法。
【請求項3】
前記弾性体設置工程は、
前記シートと前記弾性体の前記表面とを上下方向に対向させる、請求項1又は2に記載の印刷用ブランケットの製造方法。
【請求項4】
前記弾性体設置工程は、
前記弾性体の前記表面を上方向に向けて前記弾性体が設置され、
前記接着剤塗布工程は、
前記ワックス層を備える前記弾性体の上部に前記接着剤を載せ、前記ワックス層の上に前記接着剤を塗布する、請求項に記載の印刷用ブランケットの製造方法。
【請求項5】
前記押し付け工程は、
前記弾性体及び前記シートの少なくとも一方を上下方向に直動する移動手段により移動させる移動工程を有する、請求項又はに記載の印刷用ブランケットの製造方法。
【請求項6】
前記弾性体から前記シート及び前記接着剤を剥がす除去工程をさらに備える、請求項1〜の何れか1項に記載の印刷用ブランケットの製造方法。
【請求項7】
弾性体と、
該弾性体の表面を覆うワックス層と、
該ワックス層を覆う接着剤と、
該接着剤を覆うシートとを備え、
前記シートの表面にインクが転写される印刷面を備え
前記ワックス層は、
前記弾性体の前記表面のうち前記弾性体の頂部を含む一部の領域の厚みがその他の領域における厚みよりも厚い、印刷用ブランケット。
【請求項8】
前記ワックス層は、
カルナバ蝋が含まれる、請求項に記載の印刷用ブランケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷用ブランケット及び印刷用ブランケットの製造方法に関し、特に、インクを移し取る部分を含む構造を交換し、繰り返し使用できる印刷用ブランケット及び印刷用ブランケットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブランケット印刷は、印刷原版に印刷用ブランケットの印刷面を押し付けて、印刷原版に印刷パターンに応じたパターンに載せられたインクを印刷用ブランケットに転写する。引き続き、インクが転写された印刷用ブランケットの印刷面を被印刷面に押し付けて、転写されたインクを被印刷面に転写することによって、被印刷面に印刷パターンを印刷するものである。
【0003】
例えば、従来技術においては、印刷用ブランケットは、弾性(可撓性)を有するシリコンオイルが混合されたシリコンゴム等の弾性体で、略半球状又は略半円柱状に形成されている。そして、平面状の印刷原版や曲面状の被印刷面に押し当てることによって、被印刷面にインクを転写する。このため、特に、印刷用ブランケットの先端(最下点又は最下線)及びその周囲は、印刷原版への押し付け、印刷面への押し付け、被印刷面に押し付けた時の突起部分による損傷、又はその他の工程において、劣化、損傷が生じる。この印刷用ブランケットの限られた範囲の劣化や損傷によって、印刷用ブランケットの使用が不能になる。
【0004】
また、被印刷面に印刷用ブランケットを馴染ませるために、印刷用ブランケットは、軟らかく(弾性係数が小さく、容易に弾性変形するに同じ)形成する必要がある。そうすると、印刷用ブランケットの印刷面が印刷原版に押し付けられて変形した際、印刷用ブランケットに混合しているシリコンオイルが表面に滲み出る。この時、印刷原版に塗布されたインクは、印刷原版から印刷用ブランケットに転写され難く(移し取られ難く)なり、被印刷面に印刷された印刷パターンが、かすれたり、鮮明でなくなったりする。
【0005】
また、印刷を繰り返すことにより、印刷原版にインクやシリコンオイルが過剰に堆積し、印刷原版が汚れる。汚れた印刷原版に印刷用ブランケットを押し付けることにより、印刷ブランケットに汚れが転写される。汚れた印刷用ブランケットで印刷することで、被印刷面に印刷された印刷パターンが汚くなる。
【0006】
また、印刷用ブランケットにより印刷すると、印刷用ブランケットの弾性体から滲み出たシリコンオイル成分が被印刷面に付着する。シリコンオイル成分が付着した被印刷面の上にコーティングしようとすると、そのシリコンオイル成分によってコーティングが弾かれる。これにより、被印刷面は、所望のコーティング層が形成されない。
【0007】
その一方で、印刷用ブランケットを構成するシリコンゴムのシリコンオイルの含有量を減らし、シリコンゴムを硬くしたのでは、曲面を広い範囲で印刷することが困難になる。このため、印刷が小範囲に限定され、意匠性を欠く場合がある。また、広い範囲を印刷しようとすると、小範囲の印刷を複数回繰り返す必要が生じ、印刷コストが上昇する。
【0008】
そこで、従来技術においては、柔らかいシリコンゴムにより形成された弾性体の表面に、弾性を有し交換可能なシートを貼り付けて印刷面を構成した印刷用ブランケットが使用されている。このような構成の印刷用ブランケットは、印刷面が劣化、損傷等した場合にシート部分交換することができ、かつ軟らかいシリコンゴムからのシリコンオイルの滲み出しを抑制することができる。
【0009】
特許文献1に開示されている発明においては、ブランケットの印刷面を構成するシートの弾性体に接着される領域の周囲を固定し、固定されたシートの接着面に弾性体の接着面が対向するように弾性体を設置する。そして、シートの接着面及び弾性体の接着面のうち少なくとも一方に接着剤を塗布し、シートの接着面と弾性体の接着面とを押し付け、シートを弾性体の表面に沿うように伸ばしながら接着剤を介してシートを弾性体に密着させる。このように、弾性体の表面にシートを貼り付け、印刷用ブランケットを構成している。これにより、印刷用ブランケットに接着されたシートが劣化、損傷した場合は、シートを弾性体からはく離して同じ工程により新しいシートを貼り付けることができる。よって、印刷用ブランケットは、弾性体を繰り返し使用することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2017/104087号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1に開示されている印刷用ブランケットにおいては、弾性体の表面に接着剤を介してシートを貼り付けているため、シートと接着剤と弾性体とが強固に固定されている。よって、シートを交換する際にシートを弾性体表面から剥離させる際に、剥離したシートに接着剤及び弾性体の表面がくっついた状態で剥離し、弾性体の表面が欠損してしまうという課題があった。また、シートを弾性体表面から剥離することができない場合があり、印刷用ブランケット全体を廃棄せざるを得ないという課題があった。
【0012】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、印刷用ブランケットの改修時において、弾性体に貼り付けたシートの剥離を容易にし、シートの交換により長期間継続使用可能な印刷用ブランケット及び印刷用ブランケットの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る印刷用ブランケットの製造方法は、弾性体と、該弾性体に接着されたシートと、を有し、該シートを被印刷面に押し当てて印刷する印刷用ブランケットの製造方法であって、前記シートの前記弾性体に接着される領域の周囲を固定するシート固定工程と、固定された前記シートの接着面に前記弾性体の接着面が対向するように前記弾性体を設置する弾性体設置工程と、前記弾性体の表面にワックス層を設けるワックス塗布工程と、前記シート及び前記表面に前記ワックス層が設けられた前記弾性体のうち少なくとも一方に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、前記シートと前記弾性体とを押し付け、前記シートを前記表面に沿うように伸ばしながら前記接着剤を介して前記シートを前記ワックス層が設けられた前記弾性体に密着させる押し付け工程と、を有し、前記ワックス塗布工程は、前記弾性体の前記表面の全域にワックスを塗布する第1ワックス塗布工程と、前記弾性体の頂部を含む前記表面の一部の領域のみにワックスを塗布する第2ワックス塗布工程と、を備える
【0014】
本発明に係る印刷用ブランケットは、弾性体と、該弾性体の表面を覆うワックス層と、該ワックス層を覆う接着剤と、該接着剤を覆うシートとを備え、前記シートの表面にインクが転写される印刷面を備え、前記ワックス層は、前記弾性体の前記表面のうち前記弾性体の頂部を含む一部の領域の厚みがその他の領域における厚みよりも厚い
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、印刷用ブランケットの印刷面となるシートを貼り付ける際に、弾性体表面にワックス層を設けることにより、従来と同様にシートを貼り付けられるとともに、印刷用ブランケットの改修時においてシートの剥離が容易となる。これにより、薄いシートを印刷用ブランケットの表面に貼り付けており、シートを交換可能にすることにより、製造コストの高い弾性体の損傷が抑制されるため、弾性体は繰り返し使用が可能となる。安価なシートのみの交換作業により印刷用ブランケットの長期間の使用が可能となるため、ひいては印刷コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態1に係る印刷用ブランケットの一例を表した側面図である。
図2図1の印刷用ブランケットの断面図である。
図3】実施の形態1に係るシート貼り付け装置の模式図である。
図4図3のシート貼り付け装置のA−A断面を表した模式図である。
図5】実施の形態1の弾性体に接着剤を載せた状態の断面を表した図である。
図6図5の状態から接着剤が流動した状態の図である。
図7図4の状態から弾性体をシートに押し付けた状態の図である。
図8】本発明の実施の形態2に係る印刷用ブランケットの斜視図である。
図9図8の印刷用ブランケットの底面に垂直な断面図である。
図10図8の印刷用ブランケットの底面に垂直な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態1.
以下、本発明に係る印刷用ブランケット、及び印刷用ブランケットの製造方法について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、各図において同じ部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。また、各図は模式的に描かれたものであって、本発明は図示された形状に限定されるものではない(特に、シート、接着剤、及びワックス層については厚さを誇張している)。また、本明細書において、弾性体又は弾性とは、これに加わる荷重と該荷重によって生じる変形量とが直線的な関係にあるものに限定するものではない。加わる荷重と該荷重によって生じる変形量とが非直線的な関係であって、加わっていた荷重が除かれた場合に、即時又は所定の時間遅れの後に、元の形状に戻るものを含んでいる。
【0018】
<印刷用ブランケット10>
図1は、本発明の実施の形態1に係る印刷用ブランケット10の一例を表した側面図である。図1に示された印刷用ブランケット10は、例えば略半球形状である。略半球形状の平面部を下側にして底面12としたときに、底面12の中心から頂点11までの距離は、同じ大きさの底面12を持つ通常の半球よりも長くなっている。つまり、印刷用ブランケットは、砲弾の様な形状になっている。なお、ブランケットの形状はこれに限定されず、例えば、半球、放物線をその対称軸周りに回転させてできる曲面、楕円体を切断した一部等の形状、砲弾形状又は半円形状を一直線上に連続的に伸ばした形状など、被印刷体の仕様等に応じて適宜形状を変更できる。実施の形態1においては、印刷用ブランケット10の表面のうち、頂点11を中心とした所定の範囲が、印刷原版からインクを移し取り、被印刷体に転写する印刷面13となる。
【0019】
図2は、図1の印刷用ブランケット10の断面図である。印刷用ブランケット10の頂点を通り、底面12に垂直な断面を示している。図2に示されるように、印刷用ブランケット10は、弾性体1と弾性体1の曲面に沿って貼り付けられたシート2とからなる。そして、弾性体1とシート2との間には、弾性体1の表面に接しているワックス層3と、ワックス層3の上に配置された接着剤4とが設けられている。
【0020】
<弾性体1>
弾性体1は、例えばシリコンゴムを成形して構成される。弾性体1は、弾性(可撓性)を付与し、変形しやすくするためにシリコンオイルが混合されている。実施の形態1においては、弾性体1は、印刷用ブランケット10と同じように、砲弾形状になっているが、被印刷体の仕様等に応じて適宜形状を変更することができる。なお、弾性体1は、印刷用ブランケット10が印刷原版(図示しない)に押し付けられた際に変形し、印刷原版に塗布された印刷パターンに対応したインクをシート2に移し取ることができればよい。また、弾性体1は、印刷用ブランケット10が被印刷面(図示しない)に押し付けられた際、移し取ったインクを被印刷面に移し渡すことができるものであれば、その材料(物質)を限定するものではない。
【0021】
例えば、弾性体1は、2つの硬度の異なる材質から形成されていても良い。その場合、例えば、印刷面側の部分を構成する材質は、アスカーC硬度で50〜70ポイントの範囲に設定される。そして、印刷時に被印刷面に押し付ける力を加える側の部分を構成する材質は、アスカーC硬度が100ポイントに設定される。図1において説明すると、弾性体1の下側の部分は、アスカーC硬度が10ポイントに設定され、弾性体1の上側(頂点11側)の部分は、アスカーC硬度で5〜7ポイントの範囲に設定される。印刷用ブランケット10が変形して被印刷面へ追従するためには、弾性体1の硬度は低く設定されるのが望ましいため、被印刷面に押し付けられる面側の部分を硬度を低く設定する。ただし、弾性体1の各部の硬度は上記の硬度に限定されるものではない。
【0022】
<シート2>
シート2は、所定の厚さ(例えば、0.5mm)のシート状のシリコンゴムから構成される。実施の形態1においては、例えば弾性体1を構成するシリコンゴムよりも硬度が高く、シリコンオイルの含有量が少ないシリコンゴムを採用している。ただし、シート2の材質はこれに限定されない。シート2は、印刷用ブランケット10が印刷原版(図示しない)に押し付けられた際、印刷原版に塗布された印刷パターンに対応したインクを移し取ることができればよい。また、シート2は、印刷用ブランケット10が被印刷面(図示しない)に押し付けられた際、移し取ったインクを被印刷面に移し渡すことができるものであればよい。さらに、後述するシート2を弾性体1に貼り付ける工程において、シート2は、弾性体1の表面に沿って貼り付けられるように、十分な伸縮性を有していれば良い。
【0023】
<ワックス層3>
弾性体1の表面にはワックス層3が配置されている。ワックス層3は、室温においては軟らかい固体であり、粘性が比較的高いが弾性体1の表面に塗布することが可能なワックスにより構成される。ワックスは、例えばカルナバ蝋が含まれていても良く、撥水性を有する。ワックス層3は、接着剤4が上に塗布された際に一部又は全部が接着剤4に混合する場合がある。すなわち、接着剤4が形成する層の一部に接着剤4とワックス層3との混合層が形成される場合がある。
【0024】
<接着剤4>
接着剤4は、ワックス層3の上に配置される。接着剤4は、ワックス層3が表面に塗布された弾性体1の表面上に載せられた際に、重力に従いワックス層3の表面に沿って下方向に流動する程度の粘性を有するものである。接着剤4は、放置すると硬化し、接した材料を接着するが、弾性体1及びシート2の変形に従い変形する程度の弾性をもつ。
【0025】
<弾性体1及びシート2の機能>
実施の形態1において、印刷用ブランケット10は、頂点11から印刷原版に押し付けられ、変形し、頂点11を中心とする所定の領域が印刷原版上に押し付けられる。その所定の領域を印刷面13と称する。印刷原版上にある、例えばインクが印刷用ブランケット10の印刷面13に転写される。その後、被印刷体に印刷面13を押し付けると、印刷面13に転写されたインクは、被印刷体に転写される。弾性体1は、シリコンオイルを多く含有するシリコンゴムから構成されているため容易に変形する。一方、弾性体1の表面に貼り付けられたシート2は、例えば、弾性体1よりも硬度が高いシリコンゴムで構成されているが、薄いシート状であるため、弾性体1の変形に追従する。ただし、シート2の材質については弾性体1よりも硬度が高いシリコンゴムのみに限定するものでは無く、弾性体1の変形に追従するものであれば、硬度及び材質は適宜選択することができる。
【0026】
弾性体1とシート2との間に配置されたワックス層3及び接着剤4は、弾性体1及びシート2の変形に従って変形する。ワックス層3及び接着剤4は、シート2よりも薄く、硬度が高くても弾性体1の変形に追従する。
【0027】
上記の様に印刷用ブランケット10は、変形しやすく構成されているため、曲面状の被印刷面へ追従しやすく馴染が良好である。また、シート2の方が弾性体1よりも硬度が高いシリコンゴムで形成されている。シート2は、弾性体1よりもシリコンオイルの混合量が少なくなっている。そのため、印刷用ブランケット10が変形した際に、弾性体1に混合されているシリコンオイルは、これを包囲するシート2によって略封止される。また、シート2に混合されたシリコンオイルの量は少ないから、シート2により構成される印刷面13にシリコンオイルは滲み出し難くなっている。また、シート2は、弾性体1よりも比較的硬度が高く薄い材料で形成されているため、傷等に対する耐久性高い。そのため、シート2を表面に設けた弾性体1は、印刷用ブランケット10として耐久性が高く、長期間の使用に耐えられる。
【0028】
なお、印刷用ブランケット10は、1層のシート2により印刷面13が構成されているが、これに限定するものではない。シート2の上に、さらに別のシート2を1層又は2層以上設けてもよい。この場合、複数のシート2の間には、ワックス層3及び接着剤4が設けられる。又は、複数のシート2の間に接着剤4のみを設けても良い。このとき、印刷用ブランケットは三重構造又は四重以上の多重構造を呈する。また、図2において、シート2は、印刷用ブランケット10の表面全体を覆うように構成されているが、一部を覆うように構成されていても良い。
【0029】
<印刷用ブランケット10の製造方法>
図3は、実施の形態1に係るシート貼り付け装置20の模式図である。図4は、図3のシート貼り付け装置20のA−A断面を表した模式図である。以下、図面を基に印刷用ブランケット10の製造方法について説明する。
【0030】
<シート2固定工程>
シート2は、弾性体1に接着される領域の周囲を固定される。この工程をシート固定工程と呼ぶ。シート2は、所定の大きさ(厚さ、縦長さ及び横長さ)に形成されたものであり、所定の大きさのシート2を成形しても、広い面積の元シートから、所定の矩形(縦長さ及び横長さ)に切断してもよい。
【0031】
シート2が固定される架台21は、シート2の弾性体1に接着される領域(以下、接着領域2aと称する)の周囲を固定する枠22を、その上部に有している。シート2は、枠22に、弾性体1と接着領域2aの周囲を全周固定されていても良いし、複数箇所の固定部に固定されていても良い。例えば、ピンにより固定しても良いし、枠22にシート2を厚み方向に挟んで固定する構造を設けてシート2を挟んで固定しても良い。後述するように、シート2は、架台21の下方向から上に向かって弾性体1を押し付けられる。その際に、シート2の枠22に接着領域2aの周囲の固定されている部位は、その位置で動かないように固定される。シート2が伸ばされ、枠22のシート2を固定している部分は、シート2の弾性力により引っ張り荷重がかかるが、シート2が外れないようにされている。
【0032】
また、枠22は、図3においては正方形で接着領域2aを囲っているが、この形状に限定されない。例えば、円形状でもよい。シート2の固定方法や弾性体1の形状等に応じ、適宜変更することができる。
【0033】
<弾性体1設置工程>
実施の形態1において、弾性体1は砲弾形状に成形されている。その底面12を、リフター30の上面に載せる。この工程を弾性体設置工程と呼ぶ。弾性体1は、架台21のシート2が固定される下部に設置される。弾性体1のシート2を接着する接着面1aは、シート2の接着面2bに対向して設置される。また、弾性体1の砲弾形状の頂点は、シート2の接着領域2aの略中央に来るように設置される。
【0034】
リフター30は、筺形の架台21の底面23に載置されており、後述する押し付け工程においてシート2が上方に押し上げられても、底面23から枠22までの距離が変わらないようになっている。
【0035】
<ワックス層塗布工程>
図5は、実施の形態1の弾性体1に接着剤4を載せた状態の断面を表した図である。図6は、図5の状態から接着剤4が流動した状態の図である。図5の断面は、シート2の接着面2bに垂直であり、弾性体1の頂点1bを通る面である。ワックス層3は、弾性体1の表面に薄く塗布される。ワックス層3を構成するワックスは、略半球形状の弾性体1の表面において流動しない程度の粘性を有する。ワックス層3は、作業者によりワックスを弾性体1の表面に載せた後、弾性体1の表面全域にわたり略均一になるように広げられ塗布される。また、ワックス層3を設けるにあたり、複数回塗布作業を繰り返しても良い。さらに、弾性体1の頂点1bを含む弾性体1の表面の一部のみに複数回塗布作業を繰り返しても良い。複数回塗布作業を繰り返すことにより、ワックス層3が厚くなるため、弾性体1の頂点1bを含む表面の一部の領域のみワックス層3を厚くすることができる。以上の工程をワックス層塗布工程と呼ぶ。弾性体1の頂点1bは、後述の押し付け工程において、シート2と最初に接触する部位であるため、シート2の弾性によりシート2から最も大きな力が加わる。弾性体1の頂点1bを含む表面の一部のみワックス層3を厚くすることにより、後述する押し付け工程において、頂点1bのワックス層3のみが極端に薄くなってしまうのを抑制することができる。押し付け工程においては、シート2から弾性体1の頂点1bの周辺の領域に加わる力が大きいが、ワックス層3が周辺よりも厚くすることにより、ワックス層3が加わる力により極端に薄くなることを抑制できる。なお、弾性体1の頂点1bは、本発明の「頂部」に相当する。ワックスの塗布は、スポンジ等を用いて手作業で塗布することもできるし、スプレーにより吹き付けて塗布することも出来る。塗布方法、塗布に使用される道具については上記のみに限定されるものではない。
【0036】
<接着剤塗布工程>
接着剤4は、弾性体1の頂点1b付近に載せられる。載せられた接着剤4は、重力により、弾性体1の表面に沿って下方向、つまり図5中の矢印の方向に流動する。これにより、図6に示される様に、接着剤4は、弾性体1の接着面1aに薄く広がる。重力により接着剤4を広げることにより、弾性体1の表面にむら無く広げることができ、接着剤4に気泡が混入するなどの弊害が少ないという利点がある。この工程を接着剤塗布工程と呼ぶ。
【0037】
このように、接着剤4を塗布することにより、印刷用ブランケット10のシート2と弾性体1との間に気泡が混入した場合の、印刷原版からのインク転写不良や、被印刷体へのインク転写不良を抑えることができる。接着剤4に気泡が混入したままシート2を弾性体1に接着した場合、シート2と弾性体1との間に気泡が入りやすくなり、印刷用ブランケット10を印刷原版に押し付けた時に、気泡がある部分のシート2にインクが転写されにくくなる場合がある。また、印刷用ブランケット10を被印刷体に押し付けた時にインクが被印刷体に転写されにくくなる場合があるという課題が生じる。
【0038】
ただし、接着剤4は、必ずしも図5の状態の様に弾性体1の表面に薄く広がらなくても良く、接着剤4の粘度が高い(硬い)場合には図5の状態のまま広がらない状態であってもシート2の貼り付けは可能である。後述する、弾性体1をシート2に押し付ける工程において、弾性体1をシート2に押し付ける速度を遅く設定することにより、接着剤4を頂点1bから下の方向に徐々に広げることができ、重力により接着剤4を広げるのと同じ効果を得られるからである。
【0039】
また、接着剤4は、接着剤塗布工程の前に混入している気泡を取り除いているのが望ましい。この工程を脱泡工程と呼ぶ。この工程を経ることにより、シート2と弾性体1との間に入る気泡を、より抑えることができる。
【0040】
<押し付け工程>
図7は、図4の状態から弾性体1をシート2に押し付けた状態の図である。リフター30は、上下に伸縮できるように構成されており、弾性体1を上下方向に移動させることができる移動手段である。この工程を移動工程と呼ぶ。接着剤4が塗布された弾性体1の接着面1aは、リフター30により、シート2の接着面2bに押し付けられる。弾性体1が押し付けられたシート2は、伸縮性があるため、弾性体1が上に移動するに従い上方向に伸びながら、弾性体1の表面の形状に沿って密着する。弾性体1の形状に沿ってシート2が密着するとともに、接着面1aに塗布されている接着剤4は、弾性体1が押し上げられることにより、弾性体1とシート2とにより押しつぶされ、弾性体1の表面上をさらに薄く広がっていく。
【0041】
まず最初に、弾性体1の頂点1bがシート2に接触(点接触)し、続いて、押し付けが進むにつれて、シート2は変形して、接触位置が頂点1bから遠ざかる方向に徐々に移動しながら、接触面積が拡がる。このため、シート2と弾性体1との接触面に、空気が噛み込まれることが抑えられる。この工程により、弾性体1の接着面1aに、接着剤4を介して十分にシート2を密着させる。以上の工程を押し付け工程と呼ぶ。なお移動工程は押し付け工程に含まれる。
【0042】
また、移動工程において、弾性体1を上に移動させる速度は、シート2と接着剤4との間に気泡が入り込まない程度の速度である。この速度は、接着剤4の量、接着剤4の粘度、ワックス層3の粘度、シート2の材質の硬度、弾性体1の硬度などに応じて適宜設定すればよい。
【0043】
<シート2保持工程>
弾性体1の接着面1aに、接着剤4を介して十分にシート2が密着したら、その密着状態を保持するように処理される。例えば、シート貼り付け装置20をそのままの状態で保持する。なお、弾性体1の接着面1aに接着剤4を介してシート2を密着状態で保持するにあたっては、シート貼り付け装置20をそのままの状態で保持する方法に限るものではない。例えば、シート2を押しピン等で固定することによりシート2が弾性体1の接着面1aに密着した状態で保持できるようにしてから、シート貼り付け装置20からシート2を密着させた弾性体1を外し、接着剤4が固まるまで放置してもよい。また、シート2を固定する押しピンの代わりに例えば粘着テープ等の手段を用いても良い。以上の工程を、シート保持工程と呼ぶ。
【0044】
<シート2の交換>
印刷用ブランケット10は、印刷を繰り返すことにより、印刷面13(印刷原版からインクを転写し、さらに被印刷面に押し当ててインクを移す面)が劣化、損傷する。上記の一連の印刷用ブランケット10の製造方法により、劣化したシート2を剥がした後の弾性体1に、新しいシート2を貼り替えることができる。印刷用ブランケット10からシート2を剥がす工程を除去工程と呼ぶ。これにより、シート2を交換しながら弾性体1を繰り返し使用することができ、良好な印刷を安価に継続することが可能になる。実施の形態1においては、弾性体1の表面にワックス層3が設けられているため、接着剤4と弾性体1とが直接的に接着されていないため、シート2が剥がしやすくなっている。シート2を剥がす作業においては、接着剤4とシート2とをまとめて弾性体1の表面から剥がすようにする。弾性体1の表面と接着剤4との間にはワックス層3が設けられているため、接着剤4と弾性体1の表面とは直接接着されておらず、シート2及び接着剤4を剥がした際に弾性体1の表面を損傷させることがない。
【0045】
シート2に替えて、弾性体1の表面と同一形状の内面と、所定の厚さとを有する被覆体を、金型で成形しようとすると、弾性体1の形状毎に金型を製造する必要が生じる。そのため、印刷用ブランケットの製造コストが高騰するという課題とともに、被覆体を弾性体1に接着する際、被覆体の内面と弾性体1との間に空気が噛み込まれて、印刷品質が低下する場合がある。しかし、実施の形態1の印刷用ブランケット10の構造及び製造方法を採用することで、印刷用ブランケット10のコストも低減でき、品質も確保できるという利点がある。
【0046】
<弾性体1及びシート2の位置関係>
なお、上記の印刷用ブランケット10の製造方法において、弾性体1とシート2との位置関係は、実施の形態1の位置関係のみに限定されず、例えば、上下が反転していても良い。また、弾性体1の形状、シート2の貼り付け部位などに応じて、弾性体1とシート2の位置関係は適宜設定することができる。例えば、弾性体1を上から押し付ける場合は、シート2は、例えば架台21に固定され、接着剤4は、シート2上に載せられる。シート2と弾性体1の頂点1bとが接触する位置を含む領域に接着剤4を載置し、そこに上から表面にワックス層3が設けられた弾性体1を押し付ける。弾性体1は、架台21の上方に設置された、例えばハンドプレス等の上下直動する装置に取り付けられ、上下に移動できるようにする。弾性体1が下方向に移動しシート2に押し当てられることにより、シート2は周囲が固定されたまま下方向に伸びる。シート2が伸びるとともに接着剤4も押し広げられ、弾性体1の形状に沿って広がっていく。これにより、接着剤4はシート2と弾性体1との間に薄く拡がりながら、シート2が伸び弾性体1の形状に沿って密着されるため、弾性体1がシート2の下方から押し付けられる場合と同様の効果が得られる。
【0047】
<リフター30>
また、図7において、リフター30は、弾性体1を載置する台をリンクにより上下できるように構成されているが、この構成に限定されない。例えば、ジャッキ、ハンドプレスなどの直動して上下に案内する構成であれば良い。リフター30等を上下に駆動する動力は、電動又は手動でも良く、所定の速度で移動させることができれば特に限定されない。さらには、実施の形態1においては、リフター30により弾性体1を上に動かしているが、シート2が固定されている枠22を弾性体1の方向へ動かして、弾性体1の接着面1aをシート2の接着面2bに押し付けても良い。又は、枠22が備えられている架台21ごと上下に動かしてシート2を弾性体1の方向へ動かしても良い。なお、リフター30等の装置を使用せずに手作業によりシート2を弾性体1の表面に貼り付けることもできる。
【0048】
<実施の形態の効果>
実施の形態1に係る印刷用ブランケット10の製造方法は、弾性体1と、弾性体1の表面に接着されたシート2と、を有し、シート2の表面を被印刷面に押し当てて印刷する印刷用ブランケット10の製造方法である。シート2の弾性体1に接着される領域の周囲を固定するシート固定工程と、固定されたシート2の接着面2bに弾性体1の接着面1aが対向するように弾性体1を設置する弾性体設置工程と、弾性体1の表面にワックス層3を塗布するワック塗布工程と、シート2の接着面2b及び弾性体1の接着面1aのうち少なくとも一方に接着剤4を塗布する接着剤塗布工程と、シート2の接着面2bと弾性体1の接着面1aとを押し付け、シート2を弾性体1の表面に沿うように伸ばしながら接着剤4を介してシート2を弾性体1に密着させる押し付け工程と、を有する。このように構成することにより、弾性体1とシート2との間への気泡の入り込みを抑えつつ、シート2をワックス層3が設けられた弾性体1の表面に取り付けることができる。シート2及び接着剤4は、ワックス層3を介して弾性体1に取り付けられるため、シート2の損傷又は劣化などによりシート2を交換する必要がある場合に、シート2及び接着剤4を弾性体1の表面から容易に剥離させることができる。これにより、弾性体1の表面を損傷させることなくシート2のみを交換することができ、弾性体1の長期間の使用が可能となる。特に、弾性体1は硬度の低い材質で形成されるため、シート2の剥離の際に表面が損傷する可能性があるため、実施の形態1に係る構成を備えることにより、弾性体1の損傷が抑えられる。
【0049】
また、ワックス塗布工程は、弾性体1の表面の全域にワックスを塗布する第1ワックス塗布工程と、弾性体1の頂点1bを含む表面の一部の領域のみにワックスを塗布する第2ワックス塗布工程と、を備える。これにより、弾性体1の表面のうち頂点1bを含む一部の領域のワックス層3を厚くすることができる。よって、上記のシート2を弾性体1に押し付ける押し付け工程においても、弾性体1の頂点1b周辺のワックス層3が、シート2を押し付ける力により押しのけられ極端にワックス層3が薄くなるのを抑制することができる。従って、印刷用ブランケット10のシート2及び接着剤4を弾性体1から剥離する際に、弾性体1の頂点1bの周辺部のみシート2及び接着剤4が剥がしにくくなるのを抑制することができる。上記の押し付け工程においては、シート2が枠22により固定されており、弾性体1の頂点1b周辺は大きな力を受ける。さらに、シート2が弾性体1よりもアスカーC硬度が高い材質により構成される場合は、頂点1bはさらに大きな力を受けるため、頂点1b周辺の領域のワックス層3も大きな力を受け圧縮され押しのけられる場合がある。そのため、第2ワックス塗布工程を複数回繰り返しても良い。
【0050】
上記の接着剤塗布工程は、ワックス層3を備える弾性体1の上部に接着剤4を載せ、ワックス層3の上に接着剤4を塗布する。そのため、ワックス層3は、弾性体1の表面にワックス塗布工程時に塗布された状態を保持し易い。接着剤4は、重力が働く方向に接着剤4を流動させることにより広げることもできるし、重力により流動しない接着剤4については、シート2に弾性体1を押し付けることにより接着剤4を弾性体1の表面に押し広げることもできる。例えば、接着剤4をへらなどの工具により広げる作業をした場合は、工具によりワックス層3も同時に広げられてしまう場合があり、ワックス塗布工程時のワックス層3の厚さ分布が変わってしまう場合がある。しかし、上記の接着剤塗布工程によれば、ワックス層3の厚さ分布を極力変更することなく接着剤4を塗布することができる。ただし、接着剤4の塗布工程は、上記の方法のみに限定されるものでは無い。
【0051】
実施の形態2.
実施の形態2に係る印刷用ブランケット210は、実施の形態1に係る印刷用ブランケット10に対し、弾性体1の形状を変更したものである。従って、印刷用ブランケット210の形状は、印刷用ブランケット10の形状と異なり、シート2の貼り付け領域も異なる。実施の形態2においては、実施の形態1からの変更点を中心に説明する。
【0052】
図8は、本発明の実施の形態2に係る印刷用ブランケット210の斜視図である。図9及び図10は、図8の印刷用ブランケット210の底面12に垂直な断面図である。図8に示された印刷用ブランケット210は、中央部に凹部209を有する弾性体201から構成されている。凹部209の周囲を囲む稜線211は、印刷原版及び印刷対象となる被印刷体に押し付けられる際に最初に接触する部位である。印刷用ブランケット210は、インクが置かれた印刷原版に押し付けられ、インクを印刷用ブランケット210の表面の印刷面213に移し取る。そのまま印刷面213を被印刷体に押し付けることによりインクを被印刷体に転写し、印刷を行うものである。
【0053】
印刷用ブランケット210は、印刷装置上において印刷原版及び被印刷体が配置されている方向、すなわち図9又は図10の下方向から見ると、略矩形になっている。印刷用ブランケット210は、中央部に凹部209を有する。凹部209は、印刷用ブランケット210の先端側に形成された突出部218に囲まれて形成されている。突出部218は、底面12側から下方向に突出している。つまり、図9及び図10に示されている突出部218の断面形状を始点と終点とがつながった閉じた線に沿って連続的に配置すると、突出部218によって囲まれた部分が凹部209となる。突出部218の断面における頂点1bとなる稜線211は、丸みをもって形成されている。稜線211の曲率は、被印刷体が備える曲面等の形状に合わせ適宜変更されるものである。なお、稜線211は、所定の曲率を有する丸みを持った形状のみに限られず、平面同士を稜線211で合わせた形状や、平面と曲面とを稜線211で合わせた形状であっても良い。
【0054】
下方向から見て略矩形である印刷用ブランケット210の角部16は、丸みを持って形成されている。角部16の丸みも、被印刷体が備える形状に合わせ適宜変更されるものである。
【0055】
図9及び図10の断面図は、印刷用ブランケット210の断面形状の例を示している。印刷用ブランケット210a、210bは、印刷用ブランケット10に対し、弾性体201の形状が変更されている。弾性体201の形状は、印刷用ブランケット210の形状に合わせて形成されており、弾性体201がワックス層3、接着剤4、及びシート2により覆われることにより印刷用ブランケット210が形成される。なお、印刷用ブランケット210は、2枚以上のシート2を貼り付けることにより構成されていてもよい。
【0056】
図9及び図10に示される印刷用ブランケット210a、210bは、実施の形態1と異なり、突出部218が中央の凹部209を囲んでいるため、シート2は、その突出部218に沿って貼り付けられる。よって、ワックス層3は、シート2が貼り付けられる突出部218の表面に塗布される。なお、実施の形態1と同様に、印刷用ブランケット210a、210bは、弾性体201の頂部である稜線201bを含む表面の一部のみワックスを複数回塗布し、ワックス層3を厚くするとよい。なお、弾性体201の稜線201bは、本発明の「頂部」に相当する。
【0057】
実施の形態2に係る印刷用ブランケット210のような形状であっても、シート2及び接着剤4は、ワックス層3を介して弾性体1に取り付けられる。そのため、シート2の損傷又は劣化などによりシート2を交換する必要がある場合に、シート2及び接着剤4を弾性体201の表面から容易に剥離させることができる。これにより、弾性体201の表面を損傷させることなくシート2のみを交換することができ、弾性体1の長期間の使用が可能となる。また、シート2を貼り付ける工程において、シート2を凹部209に押しピン等で固定し、シート2を印刷用ブランケット210aに接着する場合がある。このとき、凹部209の部分に固定したシート2は、カットせずに凹部209に残しておいても良い。
【符号の説明】
【0058】
1 弾性体、1a 接着面、1b 頂点、2 シート、2a 接着領域、2b 接着面、3 ワックス層、4 接着剤、10 印刷用ブランケット、11 頂点、12 底面、13 印刷面、16 角部、20 シート貼り付け装置、21 架台、22 枠、23 底面、30 リフター、201 弾性体、201b 稜線、209 凹部、210 印刷用ブランケット、210a 印刷用ブランケット、210b 印刷用ブランケット、211 稜線、213 印刷面、218 突出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10