【実施例】
【0156】
[0189]実施例1:モノクローナル抗体の作出
タウの微小管結合領域(MTBR)を認識する抗タウ抗体を作出するために、ペプチド配列CNIKHVPGGGSVQIVYKPVD(配列番号186)(ペプチド抗原)を合成した。配列番号186の残基2〜20は、タウの第2(すなわち、3Rアイソフォームには存在しない)と第3の反復領域間の接合点にまたがるアミノ酸配列に相当する(
図2)。配列は、タウの凝集を始動する部位の1つである、PHF6(VQIVYK)(配列番号187)としても知られるヘキサペプチドモチーフも含む(von Bergenら、PNAS、2000、97(10):5129〜5134)。ペプチド抗原を、全長タウ−441ヒトタンパク質配列に天然には存在しないN末端システイン残基を介して、キーホールリンペットヘモシアニン(Hemocyannin)(KLH)担体タンパク質に共役した。ペプチド抗原コンジュゲートKLHとフロイント完全アジュバントとを混合することによって(1:2(v/v))、最終免疫原を調製した。タウノックアウトマウス(Jackson#007251)に、マウスあたり0.08mLの2.5mg/mL免疫原溶液で免疫付与した。初回注射のおよそ3週間後、マウスは、前回と同じタンパク質濃度のマウスあたり0.05mLの、アジュバントなしのペプチド抗原コンジュゲートKLHによるブースト免疫付与を受けた。
【0157】
[0190]ブースト免疫付与の1カ月後、抗血清をマウスから収集し、抗体力価をELISAによって評価して、元の免疫タウペプチド、並びに2N4R及び1N3R組み換えタウタンパク質の両方に対する免疫反応性を測定した。簡潔には、BSAにコンジュゲートした150ngのペプチド抗原、又は50ngの2N4R若しくは1N3R組み換えタウタンパク質(Enzo Life Sciences、それぞれカタログ番号BML−SE321及びBML−SE323)のいずれかを用いて、10mMリン酸バッファーpH7.0中、96ウェルプレート(Costarカタログ番号2797)の各ウェルを37℃で1時間コーティングした。プレートを、PBSに希釈された1%最終濃度のBSA中にて室温で30分間ブロッキングした。ブロッキング溶液を除去し、同じブロッキングバッファー中の様々な希釈の抗血清をプレートに室温で1時間添加した。HRP標識抗マウスIgG抗体の室温で30分間の添加の前に、プレートをPBSで数回洗浄した。さらなる洗浄ステップの後、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)基質の添加によって、抗体結合を検出した。酵素反応を等量の2M H
2SO
4で停止させ、ウェル光学密度を450nmの波長でプレートリーダーを用いて決定した。
【0158】
[0191]高い抗体力価を有するマウスが決定されると、細胞を内側腸骨リンパ節から単離し、ポリエチレングリコールを用いてマウス骨髄腫SP2細胞と融合させて、ハイブリドーマを作出した。融合細胞を96ウェルプレートに播種し、ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン(HAT)選択培地中で培養した。培養上清を、標準ペプチド及び前の段落に詳述される組み換えタウELISAアッセイを用いてタウ結合について最初にスクリーニングした。相対的結合の概算を与えるために、ペプチドELISAにおいて陽性であった培養上清、及び組み換えタンパク質2N4R若しくは1N3Rのいずれか又はその両方を、次いで競合ELISAシステムにおいて評価した。前回の通り、96ウェルプレートを2N4R組み換えタウでコーティングし、ブロッキングし、洗浄した。一次抗体ステップで、培養上清を10中1に希釈し、プレートへの添加前に、種々の希釈の遊離抗原(2N4Rタウ)とともに室温で1時間インキュベートした。抗体/抗原複合体をプレートに添加したら、アッセイの残りに対するプロトコールは標準的ELISA手順と同一であった。単一細胞クローンを、段階希釈及び顕微鏡法によって確認した。結果として生じた最終ハイブリドーマを、血清不含培地中で凍結保存した。
【0159】
[0192]ハイブリドーマからの抗体精製
1%FBS、1ng/mLのヒトIL−6(R&D Systems)、及びペニシリン/ストレプトマイシンを含有するHybridoma−SFM(Life Technologies)培地中でハイブリドーマを成長させた。培養物を100mLにスケールアップし、細胞が高密度に達し且つおよそ30%生存可能である時点で上清を収穫した。抗体をプロテインGカラムを用いて精製し、グリシン/HCl、pH2.5で溶出し、直ちに中和した。精製された抗体を、次いで、25mMリン酸ナトリウム(pH6.5)及び150mM NaCl中に透析し、等分し、−80℃で保管した。
【0160】
[0193]元の免疫付与ペプチド及び全長組み換え2N4Rタウタンパク質を認識する抗体を作出するハイブリドーマクローンを産生した(表2)。
【0161】
[0194]実施例2:大腸菌(E.coli)において発現した組み換え単量体タウタンパク質に対するマウス抗体の親和性
実施例1において作出された抗タウマウスモノクローナル抗体とヒト野生型タウ(2N4R)及び等価のP301S変異体タウタンパク質との相互作用についての動態分析を、ビアコア(BIAcore)(商標)T100機器を用いて行った。組み換えヒト全長タウタンパク質を大腸菌において発現させ、次いで、セルファイン(Cellufine)(商標)ホスフェート親和性クロマトグラフィー、それに続く硫酸アンモニウム沈殿及び逆相HPLCクロマトグラフィーによって精製した。
【0162】
[0195]ハイブリドーマ由来の精製された抗体を、CM5センサーチップ(GE Healthcare)に固定化されたプロテインA/Gによって捕捉した。次いで、野生型及びP301Sタウタンパク質を5つの異なる濃度でセンサーチップ上にインジェクトし、親和性(平衡解離定数、K
D)をメーカーの取扱説明書に従って算出した。結果は表2に示されている。
【0163】
【表2】
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【0164】
[0196]実施例3:ms7G6抗体の精細エピトープマッピング
全長野生型2N4Rヒトタウタンパク質配列(タウ441)に対するマウス7G6(「ms7G6」又は「7G6」)抗体の認識配列を、ペプチドチップマイクロアレイを用いて精細エピトープマッピングした。
【0165】
[0197]すべての手順は、PEPperPrint GmbH、Germanyによって実施された。全長2N4R野生型ヒトタウ配列を、C末端において中性GSGSGSGリンカー配列(配列番号188)で伸長させ、重複する15merペプチドに翻訳した。441種の異なるペプチドを含有する結果として生じたペプチドマイクロアレイを、追加のHAタグ対照ペプチド(YPYDVPDYAG)(配列番号189)の82個のスポットとともにガラスチップ上に二つ組でプリントした。
【0166】
[0198]ms7G6抗タウ抗体を、0.05%Tween20及び10%Rocklandブロッキングバッファー(MB−070)を含有するPBS(pH7.4)中1μg/mLの濃度に希釈した。希釈された抗体を、140rpmで振とうしながら、チップ上で4℃にて16時間インキュベートした。一次抗体を除去し、チップをPBS(pH7.4)/0.05%Tween20で洗浄した。洗浄バッファーを除去し、次いで、一次抗体と同じバッファー中のヤギ抗マウスIgG(H+L)DyLight(商標)680(1:5000)及び抗HAタグDyLight(商標)800(1:2000)をチップ上で室温にて45分間インキュベートした。検出抗体を除去し、チップを前の通りもう一度洗浄した。蛍光画像をLI−CORオデッセイ(商標)イメージングシステムで取得し、マイクロアレイデータをペプスライド(商標)アナライザーソフトウェアを用いて最終的に分析した。
【0167】
[0199]チップの蛍光画像(
図3A)及び結果として生じた強度プロット(
図3B)は、ms7G6が全長タウタンパク質の2つの主要な部位に結合することを示している。両部位におけるms7G6結合のための最小要求配列は、アミノ酸位置299〜303(第2の反復)及び362〜366(第4の反復)に見出されるHVPGG(配列番号79)であることも見出された。2つのさらなる部位:アミノ酸位置268〜272におけるHQPGG(配列番号183)及び位置330〜334におけるHKPGG(配列番号182)において微量の結合が観察された。平均シグナル強度の算出により、マウス7G6抗体は、HQPGG(配列番号183)(反復領域1)又はHKPGG(配列番号182)(反復領域3)配列と比較して、全長4Rタウの第2の反復領域内に通常含有されるHVPGG(配列番号79)部位への結合において、それぞれ41倍又は38倍の選好性を示すことが実証された。同様に、HQPGG(配列番号183)(反復領域1)又はHKPGG(配列番号182)(反復領域3)配列と比較して、全長4Rタウの第4の反復領域内に通常含有されるHVPGG(配列番号79)部位への結合において、それぞれ35倍又は33倍の選好性が観察された。
【0168】
[0200]実施例4:7G6エピトープ置換スキャニング
ms7G6抗体によって認識されるエピトープのアミノ酸ストリンジェンシーを決定するために、天然に存在するタウペプチド配列
1KDNIKHVPGGGSVQI
15(配列番号26)の置換スキャニングを実施した。すべての手順は、PEPperPrint GmbH、Germanyによって請け負われ、20種の天然に存在するアミノ酸のそれぞれを有する開始ペプチドにおける全箇所の交換に基づいた。
【0169】
[0201]考え得るあらゆる15merペプチドを合成し、ガラスチップ上に三つ組でプリントして、900個のペプチドスポットを含有するマイクロアレイを与えた。野生型ペプチド並びにHAタグ対照ペプチドの追加のコピーも、対照としてチップ上にスポットした。次いで、ペプチドチップを、実施例3(ms7G6抗体の精細エピトープマッピング)に記載されるのと同じ条件下でms7G6でプローブし、結果として生じたデータをペプスライド(商標)アナライザーソフトウェアを用いて分析した(配列番号38〜78に関する結果を図解した
図4)。置換スキャニングは、
1HVPGG
5(配列番号79)のペプチドエピトープ内で、ms7G6抗体が、いくつかの考え得る残基による第2の位置におけるいくらかの柔軟性を示すことを示した。5番目のアミノ酸(グリシン)がアラニン又はセリンのいずれかに置換される場合にも、いくらかの結合がある。中央のプロリン残基は抗体結合に必要とされ、他の任意の天然に存在するアミノ酸で置換することはできない。このアミノ酸は、P301残基(タウ441のアミノ酸299〜303内、Uniprot受託番号P10636−8)に相当し得、この残基を一般にセリン又はロイシン残基に変異させて、いくつかの前臨床インビトロ及びインビボモデルにおいてヒトタウオパチーを模倣する。置換スキャニングデータは、ms7G6抗体が、変異体P301Sタンパク質におけるアミノ酸362〜366でアミノ酸配列HVPGG(配列番号79)結合部位を選好的に認識することを示す。
【0170】
[0202]実施例5:インビトロでのタウ凝集
ms7G6抗体がインビトロでタウ凝集を機能的に阻害し得るかどうかを決定するために、組み換えタウタンパク質を用いて凝集アッセイを実施した。
【0171】
[0203]野生型又はP301S変異体タウタンパク質を、20μlの最終容量で、25mM HEPES(pH7.4)、100mM NaCl、及び0.5mM TCEPを含有するバッファー中60μMの濃度に希釈した。混合物をサーマルサイクラーにて98℃で30分間加熱し、次いで室温まで冷却させた。マウスIgG2b対照又はms7G6抗体を、25mM HEPES(pH7.4)、100mM NaCl、並びにHALTプロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤中8.3μMの最終濃度に希釈した。希釈された抗体又はバッファー対照をタウタンパク質と混合し、37℃で30分間インキュベートした。タウ凝集を誘導するために、ヘパリンを、100μlの最終容量で12μM最終濃度まで各反応液に添加した。最終反応条件は、25mM HEPES pH7.4/100mM NaClバッファー中、12μMタウ、8.3μM抗体、0.1mM TCEP、及び12μMヘパリンであった。最終反応混合物を、期間を通じてサンプリングしながら少なくとも6日間37℃でインキュベートして、タウ凝集を測定した。
【0172】
[0204]反応混合物のうちの10μLを取り出し、384ウェル黒色底プレート(Greiner)に入れることによって、タウの凝集を0、1、2、5、及び6日目に測定した。チオフラビンS色素を15μMの最終濃度まで各ウェルに添加し、プレートを暗所にて室温で30分間インキュベートした。蛍光を、それぞれ485nm及び520nmにおける励起及び発光波長を用いてフェラスター(Pherastar)(商標)プレートリーダーで測定した。
【0173】
[0205]
図5A及び5Bに示されるように、ヘパリン誘導性凝集の程度及び速度は、野生型と比較して、P301Sタウタンパク質に関して高かった。ms7G6抗体は、生み出された蛍光のより低い量によって示されるように、IgGと比較して、P301Sタウ及び野生型タウの両方のインビトロでの凝集を実質的に低下させた。このことは、P301Sタンパク質に関してさえ、残基362〜366へのms7G6結合単独で、これらの条件下での凝集を阻害し得るであろうことを示唆する。
【0174】
[0206]実施例6:インビトロ細胞シーディングモデル
ms7G6、又は7G6−zuHC25−zuLC18として知られるヒト化型(実施例10を参照されたい)が細胞に対して効果を有するかどうかを決定するために、タウのシーディング及び凝集のインビトロ細胞系モデルにおいて各抗体を試験した。
【0175】
[0207]ヒト野生型タウの2N4Rアイソフォームを大腸菌において発現させ、次いで、以前に記載されるように精製した(Soedaら、Nat Commun.2015、6:10216)。組み換えタウ(40μM)をヘパリン(240μg/mL)と混合し、2mM DTTを含有する100mM酢酸ナトリウム、pH7.0中にて37℃で48〜96時間インキュベートした。凝集したタウタンパク質を超遠心分離によって収集し、100mM酢酸ナトリウムpH7.0又はPBSに再懸濁した。次いで、溶液を超音波処理して、組み換えタウシードを産生した。
【0176】
[0208]Neuro−2a(ATCC)細胞に、リポフェクタミン(Lipofectamine)LTX(Thermo Fisher Scientific)を用いて、0N4R P301SタウをコードするcDNA発現プラスミドを浮遊状態でトランスフェクトし、10%ウシ胎仔血清を含有するDMEM培地中96ウェルプレートにウェルあたり1.5×10
4個細胞の密度で播いた。タウシードを添加する前に、細胞を放置して37℃で一晩付着させた。並行して、様々な濃度の抗タウ抗体を1μg/mLのタウシードと混合し、また37℃で一晩インキュベートした。翌日、培養培地を除去し、抗タウ抗体とシードとの混合物を含有する培地を添加した。プレートを再度37℃で一晩培養した。
【0177】
[0209]細胞を、4%最終濃度のパラホルムアルデヒドで固定し、H−150(Santa Cruz Technology、sc−5587)、チオフラビンS(Sigma−Aldrich、T−1892)、及びDAPI(Wako、340−07971)によって免疫染色した。インセルアナライザー(InCell Analyzer)2200及びツールボックス(Toolbox)を用いて、画像を撮り、分析した。
【0178】
[0210]
図6A、6B、6C、及び6Dに示されるように、ms7G6及び7G6−HCzu25−LCzu18処理の両方に応答して、チオフラビンS染色(凝集したタウ)の有意な減少が観察された。このことは、両抗体が、これらのアッセイ条件下でのこの細胞系モデルにおいてタウシーディング効果を遮断し得たことを示す。
【0179】
[0211]実施例7:組み換えP301Sタウシードと抗体とをプレインキュベートすることによる、タウオパチーの前臨床インビボモデルにおける効力
ms7G6を含めた3つの新たな抗体の効果を、関連抗体と組み換えP301Sタウシードとをプレインキュベートすることによって、タウ沈着の短期間インビボモデルにおいて試験した。次いで、抗体の有り又は無しでのシードを、P301Sトランスジェニックマウスの脳に注射した。
【0180】
[0212]タウシードの脳室内(ICV)注射
組み換え2N4R P301Sタウ(40μM)とヘパリン(240μg/mL)とを混合し、その後に、2mM DTTを含有する100mM酢酸ナトリウム、pH7.0中にて37℃で48〜96時間のインキュベーションステップが続くことによって、既形成原線維(Pre−formed fibrillar)(PFF)タウを作出した。凝集したタウを超遠心分離によって収集し、100mM酢酸ナトリウム、pH7.0に再懸濁した。結果として生じたフィブリルを超音波処理し、注射用のシードとして用いた。0.83mg/mLの濃度のタウシードを、1mg/mLのIgG
1又は2mg/mLの抗タウ抗体とともに37℃で1時間インキュベートした。タウシード/抗体混合物、対照(すなわち、タウ単独)、又はビヒクルを、2〜3.5カ月齢のP301Sトランスジェニックマウス(MRC Technology、United Kingdom)の脳室内(ICV)ゾーンに注射した。これらのマウスは、CBA×C57/bl6バックグラウンドにおけるマウスニューロン特異的Thy−1プロモーターの制御下でヒト0N4R P301Sタウを過剰発現する。
【0181】
[0213]これらの動物は、治療されない場合、5〜6カ月齢の時点で、重大な運動欠損を有して脳及び脊髄において広範囲のタウ病変を発症することが以前に報告されている(Allenら、J Neurosci.2002、22(21):9340〜51)。より若齢のP301Sマウスを用いた本実験では、動物をICV注射の2週間後に屠殺し、脳を取り出し、関心対象の組織領域を収集した。次いで、組織サンプルを、下で記載されるようにサルコシル可溶性及び不溶性タウに分画した(Saharaら、J Neurochem.2002 Dec;83(6):1498〜508)。
【0182】
[0214]シードを注射されたP301Sマウス脳からのサルコシル不溶性タウの抽出
50mM Tris−HCl(pH7.5)(Invitrogen)、5mM EDTA(Nippon Gene)、1mM EGTA(Nacalai Tesque)、1%NP−40(Fluka)、0.25%デオキシコール酸ナトリウム塩(Sigma Aldrich)、0.1M NaCl、0.5mM PMSF(Sigma Aldrich)、1×PhosSTOP(商標)(Roche、Basel、Schweiz)、及び1×Complete EDTA(−)(Roche)を含有する19容量(組織重量/容量)の抽出バッファー中で組織をホモジナイズした。ホモジネートを163,000gにて4℃で20分間遠心分離し、結果として生じた上清を収集し、Trisバッファー可溶性画分として保持した。ペレットを、超音波処理の前に、10mM Tris−HCl(pH7.5)、0.5M NaCl、1mM EGTA、10%スクロース(Wako Pure Chemical)、及び1%サルコシルを含有する約10容量(組織重量/容量)のバッファーに再懸濁した。サルコシル処理したサンプルを37℃で60分間インキュベートし、次いで163,000gにて4℃でさらに20分間遠心分離した。上清をサルコシル可溶性画分として収集した。最後に、約10容量のPBS(Gibco)をペレットに添加し、次いでそれを超音波処理した。この操作により、サルコシル不溶性画分が形成された。
【0183】
[0215]ウェスタンブロッティングによるサルコシル不溶性タウの検出
サルコシル不溶性画分を、NuPAGE(商標)LDSサンプルバッファー及びNuPAGE(商標)サンプル還元剤(Invitrogen)中で可溶化し、70℃で10分間加熱し、12.5%ポリアクリルアミドゲル(DRC)を用いて分離した。タンパク質を0.2μm PVDF膜(Bio−Rad、Hercules、CA、USA)に転写し、ブロットを、0.05%Tween(Nacalai tesque)を含有するTBS(Takara)中の2.5%スキムミルク(Yukikirushi)中で室温にて1時間ブロッキングした。ブロッキングの後、ブロットを、ブロッキングバッファー中ヒト特異的モノクローナル抗タウ抗体HT7(1:1000又は1:2000、Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)で室温にて1時間プローブした。ブロットをTBS−Tで30分間洗浄し、次いで、HRPコンジュゲート抗マウスIgG(1:2000、GE healthcare)とともに室温でさらに1時間インキュベートした。二次抗体を除去し、ブロットを上で記載されるように洗浄した。タウタンパク質を化学発光ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)基質(Merck Millipore)によって検出し、フュージョン(Fusion)FX(Vilber−Lourmat、France)アナライザーを用いて定量した。タウの量を決定するために、P301S脊髄の起源元サルコシル不溶性画分に由来する標準物質タウの段階希釈を各ゲルにロードした。
【0184】
[0216]
図7に示されるように、P301Sシードとms7G6とのプレインキュベーションは、ビヒクルと比較して、サルコシル不溶性タウレベルの有意な減少を示したが、対照IgG、8E5、又は1F1とはそうではなかった。このことは、ms7G6が、作出された他の抗タウ抗体と比較して、この枠組みにおいて優れた抗体であることを示唆した。
【0185】
[0217]実施例8:インビボモデルにおけるP301Sシーディング及び伝播の検証
齧歯類前臨床モデルにおいて、病的タウの一方の脳領域から別の領域への任意の伝播が生じ得るかどうかを決定するために、同じシーディング実験を、実施例7に記載されるように、しかし一部の改変を有して、P301Sトランスジェニックマウスにおいて実施した。この場合、0.9mg/mLの濃度の20μLの組み換えP301Sタウシードを、2.5〜3カ月齢のマウスの脳にICV注射した。初回シード注射の2、4、又は6週間後のいずれかにマウスを屠殺し、脳を取り出し、海馬及び皮質の両方を保持した。上で記載されるように、サルコシル不溶性タウを調製し及び検出した。
【0186】
[0218]
図8に示されるように、海馬では、シード注射後2〜4週間の間に不溶性タウレベルの急増が観察されたが、皮質では同じ時点でほんの低いレベルの不溶性タウしか観察されなかった。しかしながら、シード注射後4〜6週間の間に、シードなし対照群と比較して、不溶性タウのより大きな増加が皮質において観察された。このことは、このモデルにおいて、不溶性タウが皮質に先立って海馬において形成され得ることを示しており、二次的な伝播事象を示唆する。
【0187】
[0219]実施例9:P301Sシード注射インビボモデルにおける7G6の週1回末梢投薬の効果
a)実験1
P301SトランスジェニックマウスへのP301Sタウシード注射を、わずかな改変を有して実施例8に記載されるように実施した。タウシード注射の約7〜約4時間前に、マウスは、40mg/kgのIgG2b対照抗体(BioXCell)又はms7G6抗体のいずれかの投薬を腹腔内に受けた。各抗体は、150mM NaClを有する25mMリン酸バッファー(pH6.5)中に製剤化された。バッファーのみを受けた、ビヒクル処理対照群も含まれた。脳へのタウシード注射の後、マウスは、6週間の期間、抗体又はバッファーのさらなる投薬を週1回受けた。次いで、動物を屠殺し、脳組織を単離し、実施例7に記載されるように不溶性タウを調製し及び測定した。
b)実験2
実験1(実施例9a)の精確な反復を実施した。
【0188】
[0220]c)実験3
ms7G6の2つの投薬レベル20及び40mg/kgが投与されるということを除いて、実験1(実施例9a)の反復を再度実施し、先の2つの実験にあるような6週間ではなく、シード注射の8週間後に動物を屠殺した。
【0189】
[0221]
図9及び10に示されるように、これら3つの実験は、ms7G6が、P301SトランスジェニックマウスにおけるP301S組み換えタウシードを用いたこのシード注射モデルにおいて、不溶性タウレベルの低下を引き起こし得ることを実証している。皮質において観察された低下は、抗体が病的タウ伝播を遅らせることができることを示唆する。ms7G6抗体は、変異体タンパク質のP301S部位に存在するHVSGG配列(配列番号184)(aa299〜303)には結合し得ないことが実施例4において確かめられた。まとめると、このことは、このインビボモデルにおけるms7G6のインビボ効果が、第4の反復領域(aa362〜366)内の残りのHVPGG(配列番号79)エピトープにおけるタウへの結合によって推進されることを意味する。
【0190】
[0222]実施例10:抗体のヒト化
10A. 材料&方法
10A.a. インシリコモデリング
Discovery Studio 4.5を用いて、ms7G6 Fv領域の分子モデルを作出した。ms7G6可変重鎖(VH)及び可変カッパ(VK)ドメインに対して最も相同なタンパク質配列を有する上位1〜3の結晶構造を、「Create Homology Models」機能を用いて25個の相同モデルを作出するための鋳型として用いた。最も低いエネルギースコアを有するモデルを選択し、まず水素だけに対して、次いですべての原子に対してエネルギーを最小化した。マウス配列間で異なるフレームワーク残基(HCzu1及びLCzu1)を強調し、CDRに最も近いもの又はVH/VK界面におけるものを、CDRによるタウ結合を維持するために又は抗体安定性のために重要であることがある残基としてそれぞれ同定した。マウス配列間で異なるCDR残基(HCzu1及びLCzu1)を強調し、CDRによるタウ結合を維持するために重要でなくてもよい残基を同定した。
【0191】
[0223]10A.b. 遺伝子合成及びクローニング
10A.b.1. インフュージョン(InFusion)(商標)クローニング
ヒト化重鎖及び軽鎖可変ドメインを、CHO細胞における発現のためにコドン最適化し、GeneArtによって合成した。可変ドメインは、コザック翻訳開始配列及びIg分泌リーダー配列を有して合成され、サブクローニングベクター内のクローニング部位に相同な15塩基対を5’及び3’末端に含んだ。GeneArtによって合成されたPCRフラグメントを、インフュージョン(商標)HDクローニングキット(Clontech)を用いて、ヒトガンマ又はカッパ定常領域を含有する発現プラスミドにサブクローニングした。すべてのクローンをシーケンスして、インサートの存在及び忠実度を確認した。
【0192】
[0224]10A.b.2. クイックチェンジ(QuikChange)(商標)
Stratagene製のクイックチェンジ(商標)XLをメーカーのプロトコールに従って用いて、点変異を行った。すべてのクローンをシーケンスして、変異の存在を確認した。
【0193】
[0225]10A.c. 細胞培養
10A.c.1. HEK一過性mAb産生
ExpiFectamine(商標)(Thermo)を用いてトランスフェクトされる対象となる3×10
6個細胞の各ミリリットルに対して、333.3ngのHCプラスミド及び333.3ngのLCプラスミドを50μLのOpti−MEM(Thermo)中で5〜10分間インキュベートした。同じように、2.67μLのExpiFectamine(商標)を50μLのOpti−MEM中でインキュベートした。ExpiFectamine(商標)溶液をDNA混合物に添加し、室温で20〜30分間インキュベートした。DNA:ExpiFectamine(商標)混合物を旋回させながら細胞に添加し、125rpmで振とうしながら37℃、8%CO
2でインキュベートした。翌日、細胞のmLあたり5μLのエンハンサー1及び50μLのエンハンサー2をトランスフェクションに添加し、もう7〜10日間インキュベーションを続けた。48〜72時間後、細胞に10g/Lのイーストレート(Yeastolate)(BD Biosciences)、5mMの吉草酸(Sigma−Aldrich)、及び1:100のCD脂質濃縮物(Thermo)を最終濃度で供給した。
【0194】
[0226]10A.c.2. CHO一過性mAb産生
ExpiFectamine(商標)CHO(Thermo)を用いてトランスフェクトされる対象となる6×10
6個細胞の各ミリリットルに対して、500ngのHCプラスミド及び500ngのLCプラスミドを40μLの総容量でOpti−PRO(商標)(Thermo)中で混合した。同じように、3.2μLのExpiFectamine(商標)CHOを36.8μLのOpti−PRO中で混合した。ExpiFectamine(商標)CHO溶液をDNA混合物に添加し、室温で1〜5分間インキュベートした。DNA:ExpiFectamine(商標)CHO混合物を旋回させながら細胞に添加し、125rpmで振とうしながら37℃、8%CO
2でインキュベートした。翌日、細胞のmLあたり6μLのエンハンサー及び160μLのフィードをトランスフェクションに添加し、細胞を32℃、5%CO
2に移した。5日目に、細胞のmLあたりさらなる160μLのフィードを添加した。12〜14日目に、上清を収穫した。
【0195】
[0227]10A.d. MAb精製
10A.d.1. バッチ精製
プロセップ(Prosep)(商標)−vA High CapacityプロテインA樹脂(Millipore)又はキャプチャーセレクト(CaptureSelect)(商標)カッパセレクト(KappaSelect)LC−カッパ樹脂(Thermo)をDPBSで平衡化し、50μLを2mLのサンプルに添加した。室温で1時間のインキュベーション後、培地及び樹脂をフィルタープレートに添加し、1mLのDPBSで2回洗浄した。400μLの0.1Mグリシン、pH2.9の添加、それに続く15,000×gで30秒間の遠心分離によって、サンプルを樹脂から溶出した。サンプルを20μLの1M Tris、pH8.0で中和した。サンプルを、0.5mLのアミコン(Amicon)(商標)Ultra、10kカットオフフィルター(Millipore)を用いて15,000×gで5分間遠心分離することによって約100μLに濃縮し、メーカーのプロトコールに従って0.5mLのゼバ(Zeba)(商標)脱塩カラム7K MWCOを用いてDPBSにバッファー交換した。
【0196】
[0228]10A.d.2. カラム精製
AKTA Xpress精製プラットフォーム(GE Healthcare)を用いて精製を実施した。最高1Lの馴化培地を、20mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、pH7.0で平衡化された5mLのマブセレクト(MabSelect)(商標)SUREカラム(GE Healthcare)にロードした。ロードした後、安定したベースラインが観察されるまで、カラムを平衡化バッファーで大規模に洗浄した。結合した材料を、100mMグリシン、pH2.9を用いて溶出した。溶出された材料を、1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で平衡化された26/10 HiPrep脱塩カラム(GE Healthcare)に直ちにインジェクトし、同じバッファーに溶出した。ピーク画分をプールした。BCAアッセイ(Thermo)によってタンパク質含有量について、並びに還元及び非還元SDS−PAGEによって純度について、材料を分析した。
【0197】
[0229]10A.e. 2N4Rタウ結合ELISA
黒色Nunc MaxiSorp 96ウェルプレートを、DPBS中2μg/mL(別様に示されていない限り)の組み換え野生型2N4Rタウで4℃にて一晩コーティングした。翌日、プレートを吸引し、洗浄バッファー(PBS+0.05%Tween−20)で3回洗浄した。ウェルを、アッセイバッファー(1%w/v BSA[熱ショック画分、Sigma]、0.05%Tween−20[BioRad]、DPBS)とともに室温で1時間インキュベートした。アッセイバッファーを吸引し、上記のようにウェルを3回洗浄した。マイクロタイタープレートシェーカーで振とうしながら、DPBS中様々な濃度のmAbを各ウェルに室温で1時間添加した。サンプルを吸引し、上記のようにウェルを3回洗浄した。HRP−コンジュゲートヤギ抗マウスIgG(H+L)(JIRL 115−035−146)、gt抗−hu IgG(H+L)(JIRL 109−035−127)、又はストレプトアビジン−HRP(JIRL 016−030−084)を、アッセイバッファー中1:5000に希釈し、ウェルに添加した。室温で1時間のインキュベーション及び振とうの後、サンプルを吸引し、上記のようにウェルを3回洗浄した。クォンタブル(Thermo)を各ウェルに添加し、室温で15分間インキュベートした。スペクトラマックス(商標)M5プレートリーダー(Molecular Devices)を用いて、それぞれ320及び460nmに設定された励起及び発光波長で相対蛍光単位(RFU)を測定した。
【0198】
[0230]10A.f. 表面プラズモン共鳴(SPR)結合分析
10A.f.1. 抗ヒト/抗マウス捕捉単量体タウ結合アッセイ
10A.f.1.i. チップ調製
すべての実験を、ビアコア(商標)T−100機器(GE Healthcare)を用いて実施した。ヒト抗体捕捉キット(GE Healthcare)からの10μLの抗ヒトIgG(モノクローナルマウス抗ヒトFc)を、200μLの最終固定化バッファー(10mM酢酸ナトリウム、pH5.0)中25μL/mLに希釈した。流速を5μL/分、流路1に設定した。50μLのN−ヒドロキシスクシンアミド(NHS)及び50μLの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(carbidiimide)(EDC)を混合し、420秒間インジェクトしてCM5チップ表面を活性化した。希釈された抗体を360秒間、それに続いて1Mエタノールアミンを420秒間インジェクトした。次いで、流路を流路2に切り替えた。新たなEDC/NHS混合物を調製し、手順をフローセル2に対して反復した。3M MgCl
2の30μL/分での流路1、2を用いた30秒間の2回のインジェクションによって、表面を馴化した。抗マウス表面に関しては、マウス抗体捕捉キット(GE Healthcare)からの10μLの抗マウスIgG(ポリクローナルウサギ抗マウスIgG)を、324μLの最終固定化バッファー(10mM酢酸ナトリウム、pH5.0)中30μL/mLに希釈した。流速を5μL/分、流路3に設定した。50μLのNHS及び50μLのEDCを混合し、420秒間インジェクトしてチップ表面を活性化した。希釈された抗体を420秒間インジェクトした。1Mエタノールアミンを420秒間インジェクトした。流路を流路4に切り替えた。新たなEDC/NHS混合物を調製し、手順をフローセル4に対して反復した。10mMグリシン、pH1.7の30μL/分での流路3、4を用いた30秒間の2回のインジェクションによって、表面を馴化した。
最終固定化レベルは、
フローセル1−10,000RU(抗ヒト)
フローセル2−10,092RU(抗ヒト)
フローセル3−11,824RU(抗マウス)
フローセル4−11,216RU(抗マウス)
であった。
【0199】
[0231]10A.f.1.ii. 結合アッセイ
結合アッセイに用いられたランニングバッファーはPBS−P+/0.2%BSAであった。すべての抗体を、PBS−P+/0.2%BSA(ランニングバッファーに用いられたものと同じ調製)中1μg/mLに希釈し、14,000gにて室温で5分間遠心分離し、上清を新たなチューブに移した。分析物(タウ単量体2N4R wt、2.15mg/mL、47μM)をPBS−P+/0.2%BSA中100nMに希釈し、14,000gにて室温で5分間遠心分離し、上清を新たなチューブに移した。100nM溶液をPBS−P+/0.2%BSAに5倍段階希釈した。最終濃度は、100nM、20nM、4nM、0.8nM、0.16nM、0.032nM、及び0nMであった。ヒト化抗体を、60秒間の添加時間(contact time)の間、10μL/分の流速でフローセル2に捕捉した。マウス抗体を、60秒間の添加時間の間、10μL/分の流速でフローセル4に捕捉した。タウタンパク質の希釈液を、240秒間の添加時間の間、30μL/分の流速で4つすべてのフローセルにわたってインジェクトした。その後に解離が900秒間続いた。各サイクルの後、3M MgCl
2の30μL/分での30秒間のインジェクション(流路1、2)、10mMグリシン、pH1.7の30μL/分での30秒間のインジェクション(流路3、4)、3M MgCl
2の30μL/分での30秒間のインジェクション(流路1、2)、それに続く10mMグリシン、pH1.7の30μL/分での2回の30秒間のインジェクション(流路3、4)によって、表面を再生した。ランの後、収集されたデータを、BIAEvaluationを用いて、全濃度を用いた定常状態の結合モデルにフィットさせた。動態データフィッティングを、100nMトレースを除外した1:1ラングミュアモデルを用いて実施した(100nMトレースの包含は、許容できないほどに高いX
2値をもたらした)。2状態モデルを用いて、抗体結合データの部分集合も分析した。
【0200】
[0232]10A.f.2. 抗ヒト捕捉単量体タウ結合アッセイ
10A.f.2.i. チップ調製
チップ調製を、ビアコア(商標)T−100機器を用いて実施した。チップ調製を、固定化のための方法ウィザードを用いて実施した。ランニングバッファーはHBS−P+であった。ヒト抗体捕捉キット(GE Healthcare)からの15μLの抗ヒトIgG(モノクローナルマウス抗ヒトFc)を、300μLの最終固定化バッファー(10mM酢酸ナトリウム、pH5.0)中25μL/mLに希釈した。流速を5μL/分に設定した。360秒間のリガンド添加時間を用いて、4つすべてのフローセルに固定化を実施した。3M MgCl
2の30μL/分での流路1、2、3,4を用いた30秒間の2回のインジェクションによって、表面を馴化した。
最終固定化レベルは、
フローセル1−7341RU
フローセル2−7683RU
フローセル3−7530RU
フローセル4−6303RU
であった。
【0201】
[0233]10A.f.2.ii. 結合アッセイ
結合実験を、ビオコア(BIOcore)(商標)T−100機器又はT−200機器を用いて実施した。結合アッセイに用いられたランニングバッファーはPBS−P+/0.2%BSAであった。すべての抗体を、PBS−P+/0.2%BSA(ランニングバッファーに用いられたものと同じ調製)中2μg/mLに希釈し、14,000gにて室温で5分間遠心分離し、上清を新たなチューブに移した。分析物(タウ単量体2N4R wt、2.15mg/mL、47μM)をPBS−P+/0.2%BSA中100nMに希釈し、14,000gにて室温で5分間遠心分離し、上清を新たなチューブに移した。100nM溶液をPBS−P+/0.2%BSAに5倍段階希釈した。最終濃度は、100nM、20nM、4nM、0.8nM、0.16nM、0.032nM、及び0nMであった。ヒト化抗体を、60秒間の添加時間の間、10μL/分の流速でフローセル2、3、及び4に逐次的に捕捉した。タウタンパク質の希釈液を、240秒間の添加時間の間、30μL/分の流速で4つすべてのフローセルにわたってインジェクトした。その後に解離が900秒間続いた。各サイクルの後、4つすべてのフローセルにわたる3M MgCl
2の30μL/分で30秒間の2回の逐次的インジェクションによって、表面を再生した。ランの後、動態データフィッティングを、100nMトレースを除外した1:1ラングミュアモデルを用いて実施した(100nMトレースの包含は、許容できないほどに高いX2値をもたらした)。
【0202】
[0234]10A.f.3. ストレプトアビジン捕捉単量体タウ結合アッセイ
10A.f.3.i. 抗体調製
400μgの各抗体を2mg/mLに希釈し、0.5mLのゼバ(商標)40kDa MWCO脱塩カラム(Thermo)を用いて0.1M炭酸水素ナトリウム、pH8.3にバッファー交換した。20mM最終ストック濃度まで水に溶解することによって使用直前に調製されたNHS−PEG4−ビオチンを、5:1モル比(ビオチン:MAb)で抗体に添加し、室温で1時間コンジュゲートした。0.5mLのゼバ(商標)40kDa MWCO脱塩カラムを用いた、1×DPBSへの2回の逐次的バッファー交換によって、過剰なビオチンを除去した。ビアコア(商標)アッセイに関しては、抗体を、PBS−P+/0.2%BSA(ランニングバッファーに用いられたものと同じ調製)中2μg/mLに希釈し、14,000gにて室温で5分間遠心分離し、上清を新たなチューブに移した。その後、インジェクション時間を、約225RUの捕捉レベルを達成するように各抗体に対して決定した。
【0203】
[0235]野生型2N4Rタウタンパク質(2.15mg/mL、47μM)をPBS−P+/0.2%BSA中100nMに希釈し、14,000gにて室温で5分間遠心分離し、上清を新たなチューブに移した。20nM溶液をPBS−P+/0.2%BSAに5倍段階希釈した。最終濃度は、20nM、4nM、0.8nM、0.16nM、及び0nMであった。
【0204】
[0236]10A.f.3.ii. 結合アッセイ
用いられたバイオセンサーチップは、ビオチンキャプチャー(CAPture)(商標)キット(GE Healthcare、カタログ28−9202−34)からのCAPチップであった。すべての実験を、T−100機器を用いて実施した。CAP試薬を、2μL/分の流速で5分間4つすべてのフローセル(流路1、2、3、4)に固定化した(最終ストレプトアビジンレベルは約3500RUであった)。ビオチン化ヒト化抗体、ビオチン化キメラ7G6、又はビオチン化マウスms7G6を、80秒間〜146秒間の添加時間の間、10μL/分の流速でフローセル2、3、及び4に逐次的に捕捉した(ビオチン化キメラ抗体添加時間は240秒間であった)。タウタンパク質の希釈液を、0nMから20nMの順序で180秒間の添加時間の間、30μL/分の流速で4つすべてのフローセルにわたってインジェクトした。最後のインジェクション(20nMタウ)の後、解離が900秒間続いた。各サイクルの後、4つすべてのフローセルにわたる6MグアニジンHCl、0.25M NaOHの120秒間の10μL/分の1回のインジェクションによって、表面を再生した。2つの別個のフローセルにて二つ組で分析されたマウス7G6及び7G6−zuHC25−zuLC18(それぞれに対して合計4つの分析物)を除いて、サンプルを二つ組でアッセイした。ランの後、動態データフィッティングを、シングルサイクル動態を用いた1:1ラングミュアモデルを用いて実施した。
【0205】
[0237]10A.g. サイズ排除クロマトグラフィー−高速液体クロマトグラフィー(SEC−HPLC)
SEC−HPLCを、アドバンスバイオ(商標)SEC 300A、2.7μm、4.6mm ID×50mmガードカラム、及びアドバンスバイオ(商標)SEC 300A、2.7μm、4.6mm ID×300mmカラム(Agilent)を備えたAgilent 1260クォータナリポンプHPLCシステムで実施した。0.1Mリン酸ナトリウム(pH6.5)からなる移動相のアイソクラティックフローは0.35mL/分であった。分離を周囲温度で行った。カラム流出物を280nmでモニターした。各ランに対して、50μgのサンプル(10μLの5mg/mLサンプル)をインジェクトし;各サンプルを2回分析した。ピーク積分をAgilent OpenLABソフトウェアを用いて実施した。保持時間、ピーク高、ピーク面積、ピーク幅、及びピーク対称性が報告された。凝集体及び単量体のパーセンテージは、ピーク面積に基づいて算出された。
【0206】
[0238]10A.h. 示差走査熱量測定(DSC)分析
VPキャピラリー示差走査熱量測定器(VP−CapDSC;Origin−7グラフ及びMicroCal VP−Capillary DSCソフトウェアv.2.0を有する、MicroCal、VP−CapDSC、s/n 12−07−149)を用いて、様々なF(ab’)
2フラグメント及び対照の高次構造及び熱安定性を解読し及び比較した。サンプルを周囲温度に30分間順化させ、その後にボルテックスが続いた。サンプル全体(0.4〜0.5mL)を、アッセイプレート(Microliter Analytical Supply、96ウェル、500μL、丸いウェル及び底、カタログ#07−2100;Sun Suriプレートカバー、カタログ#300−005)の適当なウェルに添加した。0.5mLの20%コントラッド溶液及び0.5mLの水を、アッセイプレートの適当なウェルに添加した。密封されたプレートを10℃のオートサンプラーに入れた。
【0207】
[0239]ランはプログラム化され、以下のアッセイパラメーターを用いて始動された。
DSC対照:
開始温度=25℃
最終温度=100℃
走査速度=100℃/時間
再スキャンの数=0
再スキャン冷却速度=EXP
プレスキャンサーモスタット=10分間
ポストスキャンサーモスタット=5分間
ポストサイクルサーモスタット=25℃
濾過時間=10秒間
セル自動充填=30℃
フィードバックモード/ゲイン=なし
固有のスキャン
サンプルパラメーター:
濃度=mM
ファイルパラメーター=オート#
リンスステーション=ウォッシュ2を選択(従って、ウォッシュ2(1×PBS)、次いでウォッシュ1(水)を選択する)
サーモスタット対照設定点=25℃
パルス対照:
パルスサイズ=−3
継続時間=600
パルスオフ
Y軸目盛単位=mCal/分
25〜70℃、100℃/時間でコントラッド/コントラッドを用いたインラインクリーニング、それに続く2回のバッファー/バッファーインジェクション
【0208】
[0240]10B. 結果
10B.a. IGHV1/IGKV2ヒト化
10B.a.1 7G6インシリコモデリング
マウスms7G6 mAbに最も相同なヒト生殖系列可変ドメインタンパク質配列を、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/及びhttp://www.imgt.org/3Dstructure−DB/cgi/DomainGapAlign.cgiでBLASTを用いて検索した。IGHV1−46
*03及びIGKV2−30
*02可変ドメインファミリーが、ms7G6に最も相同な配列であった(
図11)。マウスフレームワーク配列を、最も近い相同なヒト生殖系列配列で置き換えて、CDR移植ヒト化バリアントを作出した。
【0209】
[0241]マウス配列及びCDR移植配列を用いて、可変ドメインのインシリコモデルを作出した。マウス及びヒト化モデルの理論構造を重ね合わせ、CDRに近接している残基を、CDRループの全体構造に対する潜在的な構造的影響について分析した。種々の残基のほとんどは、二量体界面に位置していない又はCDRの遠位にあるものの、いくつかの残基は、CDRに近接している(5Å以内)ことが見い出された。
【0210】
[0242]Vκドメインにおいて、マウスTyr36におけるヒドロキシル基は、CDRH3におけるTrp100と潜在的水素結合を形成した。ヒトPhe36はこの水素結合を喪失しており、この喪失はCDRH3の構造完全性に影響を及ぼすことがある。ヒトAgr46はマウスLeu46よりもはるかに大きく、Arg46はCDRの適正なフォールディングを立体的に妨げることがある。同様に、Vhドメインにおいて、位置71はCDRを背にして配置した。ヒトArg71は、マウスVal71と比較して、CDRの適正なフォールディングを立体的に妨げることがある。ヒトVal78は同様に配置し、マウスAla78よりも大きい。したがって、Val78はCDRの完全性に影響を及ぼすことがあるが、その可能性は低かった。
【0211】
[0243]マウスms7G6抗体は、凝集、酸化、システイニル化(cysteinylation)、又はグルタチオン化をもたらすことに寄与し得るであろう遊離チオールの存在に起因してmAbの開発において問題のあることがある2つの不対システインを含有した。1つのCysはCDRH2における位置57に、2つ目はFWRL2における位置49に位置した。
【0212】
[0244]CDRH2のKabat定義は、IMGT定義よりも8個長くC末端アミノ酸を伸ばす。終わりの8個のアミノ酸を、それらの近接性及び抗原結合への潜在的寄与について分析した。Asn58は、可変ドメインの上部にある潜在的CDR−抗原界面における潜在的抗原結合部位内にあった。マウス及びヒト生殖系列配列の間で異なる残基60、61、64、及び65は、潜在的抗原結合部位の外側にあり、抗原と直接接触する又は適正なCDRフォールディングのための構造的支持を提供する可能性が低かった。
【0213】
[0245]10B.a.2. ヒト化Vh1及びVκ2バリアント、並びにELISAによるタウ結合についての分析
生殖系列可変ドメインVh1及びVκ2ファミリーを用いて一連のヒト化変異体を作出して、CDR−抗原相互作用に重要であるとインシリコモデリングによって予測された位置におけるマウス残基の重要性を評価した(
図12)。ヒト化及びマウス7G6残基を、様々な組み合わせ(7G6−HCzu1〜4)並びにC57S変異(7G6−HCzu5)におけるVh位置60、61、64、65、71、及び78で分析した。ms7G6 Vκにおける位置36、46、及び49におけるヒト及びマウス残基の組み合わせ(7G6−LCzu1〜5)、並びにC49S変異(7G6−LCzu6)も分析した。mAbを行列形式で発現させ、それにより、7G6−HCzu5は7G6−LCzu2とのみ共発現させ及び7G6−LCzu6は7G6−HCzu3とのみ共発現させたことを除いて、ヒト化HC及びLCのあらゆる組み合わせを共トランスフェクトした。
【0214】
[0246]タウへの直接結合を試験するために、2N4Rタウを96ウェルプレートにコーティングし、様々な濃度のヒト化mAbをウェルに添加した。タウに結合したmAbを、HRPコンジュゲート抗マウス抗体(マウス[ms]7G6)又は抗ヒト抗体(残りのサンプル)のいずれかで検出した。サンプルを、2N4Rタウをコーティングした96ウェルプレート中で室温にて1時間インキュベートした。洗浄後、HRPコンジュゲート抗マウス又は抗ヒト検出抗体をウェルに添加した。抗マウス抗体を用いてms7G6を検出した。各ウェルにおけるHRP活性の量をクォンタブル蛍光基質によって測定し、RFUをスペクトラマックスM5プレートリーダーによって検出した。
【0215】
[0247]一番下のグラフにグループ分けされているシステイン変異体を除いて、LCバリアントに従ってグループ分けされたサンプルからのデータが、
図13A〜13Fに示されている。7G6 HC及びLCバリアントのすべての間で、タウ結合の差はほとんどなかった(
図13A〜F;表3)。ms7G6はヒト化バリアントよりも良好な結合を示したが、この結果は、マウス及びヒトサンプル間の異なる検出抗体に起因した誤解を与えるものである可能性があることに留意すべきである。mAb2は、タウに結合しない対照IgG抗体に相当する。
【0216】
【表3】
[この文献は図面を表示できません]
【0217】
[0248]任意の潜在的免疫原性を低下させるために、ヒト残基の数を増加させながらもう一連の変異体を作出した(7G6−HCzu6、7G6−HCzu7、及び7G6−HCzu8;
図12)。Vh Ser57はCys57への結合の差をほとんど示さなかったことから、変異体のほとんどはSer57を含有した。セリンが位置57におけるシステインに対する実行可能な置換であることをさらに確認するために、位置57のみで異なる2組の変異体ペアを作出した(7G6−HCzu7と7G6−HCzu9、及び7G6−HCzu8と7G6−HCzu10;
図12)。
【0218】
[0249]ヒト残基Tyr49がCys49に対する実行可能な置換であるかどうかを決定するために作製された7G6−LCzu10を除いて、すべてのVκバリアントをSer49を有して操作した。7G6−LCzu7は、Ser49を有することを除いて、7G6−LCzu1及び7G6−LCzu3に類似していた。またSer49を有して、7G6−LCzu21は7G6−LCzu5に類似しており、7G6−LCzu22は7G6−LCzu4に類似していた。7G6−LCzu8は、位置30におけるヒト残基がタウ結合を保持するかどうかを決定するために、位置30にバリンを有した。位置34は構造内にいくらか埋め込まれており、位置34は抗原結合に寄与しない可能性があり、したがって、CDRL1の末端におけるヒト残基Asn34を7G6−LCzu9内に操作した。すべてのHCバリアントを7G6−LCzu6と共発現させ、すべてのLCバリアントを7G6−HCzu5と共発現させた。
【0219】
[0250]タウ結合を、上記のように直接ELISAによって分析した。サンプルを、野生型2N4Rタウをコーティングした96ウェルプレート中で室温にて1時間インキュベートした。洗浄ステップの後、HRPコンジュゲート抗マウス又は抗ヒト検出抗体をウェルに添加した。抗マウス抗体を用いてms7G6を検出した。各ウェルにおけるHRP活性の量をクォンタブル蛍光基質によって測定し、RFUをスペクトラマックスM5プレートリーダーによって検出した。mAbの大多数は、直接ELISAアッセイにおいてタウ結合の差をほとんど示さなかった(
図14;表4)。注目すべき例外は、最も高い濃度でさえ結合を呈しなかったLCzu9であった。したがって、Vκ Glu34は抗原結合に重大であった。加えて、LCzu22は結合の低下を示し;Arg46と組み合わせたVκ Tyr36は、抗原結合部位の妨害をもたらした。
【0220】
【表4】
[この文献は図面を表示できません]
【0221】
[0251]ヒト化及びマウス抗体の結合を、表面プラズモン共鳴(ビアコア(商標))によって分析して、それら抗体の相対的会合速度(k
a)、解離速度(k
d)、及び平衡結合定数(K
D)を決定した。抗マウス又は抗ヒト抗体をCM5チップに固定化し、サンプルmAbをチップに捕捉した。2N4Rタウをチップにわたって流し、結合を観察した。1:1ラングミュアフィッティングモデルを用いて、結合定数k
a、k
d、及びK
Dを決定した。ハイブリドーマに由来するms7G6抗体、又はIgG2a若しくはIgG2b組み換え材料は、会合又は解離速度の差を示さなかった(表5)。7G6 HCバリアントの間で、ほんのわずかな差しかなく、システインからセリンへの変異はタウ結合に影響を及ぼさなかった。7G6−LCzu2、LCzu6、LCzu7、LCzu8、及びLCzu21はタウに同程度に結合し、これらmAbの間で異なるアミノ酸が結合にほとんど影響を与えないことを実証した。ヒト化サンプルは、マウスmAbよりもタウへの良好な結合を示したが、これは、このアッセイ形式において異なる捕捉抗体を用いる必要性に起因する可能性が最も高かった。
【0222】
【表5】
[この文献は図面を表示できません]
【0223】
[0252]これらのデータは、ELISAアッセイからのデータとともに、7G6 Vκ Glu34の要求、並びに7G6 Vκ Tyr36及びArg46の有害な組み合わせを実証した。LCzu6における7G6 Vκ残基Tyr36及びLeu46は、7G6−LCzu7及び7G6−LCzu8におけるヒトPhe36及びArg46残基よりもわずかに好まれたが、これらの位置においてヒト残基を保持することは、k
dのわずかな低下よりも価値があった。7G6−LCzu10におけるヒトVκ Tyr57は、k
dに対して有意な影響を有した。
【0224】
[0253]10B.a.3. Vh1及びVκ2バリアントに対するHC/LC安定性についてのSDS−PAGE分析
2マイクログラムの各mAbを4×NuPAGE(商標)LDSサンプルバッファーと混合し、MOPSバッファー中にて非還元4〜12%Bis−Tris SDS−PAGEゲルで分離した。ゲルをインスタントブルー(商標)で染色し、水で脱染した。LCにおいてCys49を有するすべてのmAb(7G6−LCzu2、7G6−LCzu3、7G6−LCzu4、及び7G6−LCzu5)は安定ではなく、非還元条件下で、HC−HC−LC三量体、HC−HC二量体、及び遊離LCがSDS−PAGEによって分離された(
図15)。7G6−LCzu2は、Vh−Vκ相互作用を安定化する2つの追加のマウス残基Tyr36及びLeu46を有するこのVκにおそらく起因して、より少ないより低分子量の種を有した。7G6−LCzu3、7G6−LCzu4、及び7G6−LCzu5は、ヒトPhe36及び/又はArg46に変化したこれらの残基の一方又は両方を有した。最も安定でないmAbは、両方のヒト残基を有するLCzu3バリアントであった。7G6−LCzu7、7G6−LCzu8、7G6−LCzu9、及び7G6−LCzu22は、少量の遊離軽鎖を有し、これらのサンプルにおけるHCとLCとの相互作用が最適ではないことがあり、HC−LC鎖間ジスルフィド結合を形成しない少量の抗体をもたらすことを示唆した。7G6−LCzu3と同様に、これらLCバリアントは、一方又は両方の位置36及び46にヒト残基を有する。7G6−LCzu10及び7G6−LCzu21も、これらの位置にヒト残基を有するが、おそらくインスタントブルー(商標)染色による不完全な染色の結果、遊離LCは見られなかった。
【0225】
[0254]10B.b IGHV3/IGKV1ヒト化
10B.b.1 ヒト化Vh3及びVκ1バリアント、並びにELISAによるタウ結合についての分析
上で述べられたヒト化7G6バリアントは、ms7G6へのそれらの類似性に基づいて選定されたヒト生殖系列可変ドメインファミリーIGHV1及びIGKV2を利用した。しかしながら、これらのファミリーはヒト集団において過小評価されており、それによって、ヒト化バリアントが患者において免疫原性であろう機会を増加させている(Brezinschek HP、Foster SJ、Dorner T、Brezinschek RI、Lipsky PE.Pairing of variable heavy and variable kappa chains in individual naive and memory B cells.J Immunol.1998年5月15日;160(10):4762〜7;Jayaram N、Bhowmick P、Martin AC.Germline Vh/VK pairing in antibodies.Protein Eng Des Sel.2012年10月;25(10):523〜9;Tiller T、Schuster I、Deppe D、Siegers K、Strohner R、Herrmann T、Berenguer M、Poujol D、Stehle J、Stark Y、Heβling M、Daubert D、Felderer K、Kaden S、Kolln J、Enzelberger M、Urlinger S.A fully synthetic human Fab antibody library based on fixed Vh/VK framework pairings with favorable biophysical properties.MAbs.2013年5月〜6月;5(3):445〜70)。したがって、ms7G6 CDRを、より共通したIGHV3及びIGKV1ファミリーに移植した(
図16)。
【0226】
[0255]前述のms7G6のインシリコモデルを、CDRに近接している(5Å)ヒト残基について、上記のように分析した。Vhにおける位置49、71、76、78、及び94での、並びにVκにおける位置2及び57でのヒト残基は、潜在的に重大なフレームワーク残基として同定された。Vh及びVκの2つのヒト化バリアントを作出し、一方はすべてのヒトフレームワーク残基を有し(7G6−HCzu11;7G6−LCzu11)、及び一方は復帰突然変異した潜在的に重大な残基を有した(7G6−HCzu12;7G6−HCzu12)(
図17)。両HCを両LCと共発現させた。
【0227】
[0256]上記のように、2N4Rタウを96ウェルプレートにコーティングし、様々な濃度のヒト化mAbをウェルに添加した。タウに結合したmAbを、HRPコンジュゲート抗マウス抗体(ms7G6)又は抗ヒト抗体(残りのサンプル)のいずれかで検出した。すべてのヒト化mAbはタウに同程度に結合したが、7G6−HCzu12−LCzu12 mAbは、最低のEC50を有した(
図18&表6)。両マウスmAbは、マウス及びヒトサンプル間で用いられた異なる検出抗体におそらく起因して、ヒト化バリアントよりも良好な結合を示した。これらのデータは、CDRに近接しているヒト残基の少なくとも一部が、抗原結合に負の影響を及ぼすことを示唆する。
【0228】
【表6】
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【0229】
[0257]潜在的免疫原性を低下させるために、ヒト残基の数を増加させながらもう一連の変異体を作出した。CDRH2のC末端半分における残基は、Vh1に基づくバリアント7G6−HCzu4においてタウ結合にほとんど影響を有しなかった。したがって、7G6−HCzu13、7G6−HCzu14、7G6−HCzu19、及び7G6−HCzu20において、これらの残基をVh3生殖系列残基に変化させた(
図17)。インシリコms7G6モデルに基づき、抗原結合に対する重要性が増加すると思われる順序で、マウス残基をヒトと置き換えるように、7G6−HCzu12のバリアントを作製した。例えば、Ser76の側鎖は、CDRから見て外側に向いているループにあり、CDR−抗原相互作用に影響を与える可能性が最も低い残基であった。したがって、Ser76は、7G6−HCzu15においてヒト残基Asn76に変化させる対象となる第1の残基であった。次に残基49(7G6−HCzu16)、次いで78(7G6−HCzu17)、71(7G6−HCzu18)、及び最後に94(7G6−HCzu20)を変異させた。
【0230】
[0258]7G6−LCzu11と7G6−LCzu12との間にほとんど差はなく、位置2及び57におけるヒト残基は抗原結合にほとんど影響を有しないであろうと予想された。したがって、これら残基のそれぞれを一度に1つずつ変異させた。位置57に関しては、チロシン及びセリン置換を分析した。位置30におけるバリンを、7G6−LCzu16及び7G6−LCzu17に導入した。CDRL1の末端におけるヒト残基Asn34を7G6−LCzu17内に操作した。すべてのHCバリアントを7G6−LCzu12と共発現させ、すべてのLCバリアントを7G6−HCzu12と共発現させた。
【0231】
[0259]mAbの大多数は、直接ELISAアッセイにおいてタウ結合の差をほとんど示さなかった(
図19&表7)。注目すべき例外は、最も高い濃度でさえ結合を呈しなかったLCzu17であった。したがって、Vκ Glu34は抗原結合に重大であった。
【0232】
【表7】
[この文献は図面を表示できません]
【0233】
[0260]10B.b.2 Vh3及びVκ1バリアントに対するタウ親和性についてのビアコア(商標)分析
ヒト化及びマウス抗体の結合を、ビアコア(商標)によって分析して、それら抗体の相対的会合速度(ka)、解離速度(kd)、及び平衡結合定数(K
D)を決定した。抗マウス又は抗ヒト抗体をCM5チップに固定化し、サンプルmAbをチップに捕捉した。2N4Rタウをチップにわたって流し、結合を観察した。1:1ラングミュアフィッティングモデルを用いて、結合定数k
a、k
d、及びK
Dを決定した。7G6−HCzu12に基づく両mAbは、同程度のk
a及びk
d値を有した(表8)。しかしながら、k
dは影響を受けなかったものの、7G6−HCzu11のk
aは減少した。したがって、Vh3フレームワークにおけるヒト残基は、タウへの結合に影響を与える。ELISAアッセイと同様に、7G6−LCzu17はタウに結合しなかった。7G6−HCzu12、7G6−HCzu13、及び7G6−HCzu14の間でのk
dの差は、CDRH2 C末端ヒト残基が、抗原結合に負の影響を有することを示唆する。k
dの減少は、また当該領域においてヒト残基を有する7G6−HCzu19及び7G6−HCzu20に対して観察されなかったが、しかしながらこれらのmAbはk
aの減少を有した。7G6−HCzu15はチップにあまりよく結合せず、このmAbからのデータは疑問の余地があった。単一のS76N変異に関する特異的なデータは入手不能であったものの、7G6−HCzu16、7G6−HCzu17、7G6−HCzu18に対するk
a及びk
d値は、7G6−HCzu12と同程度であり、S76N変異がタウ結合に影響を及ぼさないであろうことを示唆した。7G6−HCzu20に対するk
aは7G6−HCzu19よりも低く、K94R変異の結果であることもある。したがって、位置49、71、76、及び78におけるヒト残基は、タウ結合に影響を及ぼさないように見えた。ヒト化サンプルは、マウスmAbよりもタウへの良好な結合を示したが、これは、このアッセイ形式において異なる捕捉抗体を用いる必要性に起因する可能性が最も高かった。
【0234】
【表8】
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【0235】
[0261]Asn34に起因してタウに結合しなかった7G6−LCzu17を除いて、いずれの7G6 LCバリアントに対するk
a又はk
d値の間にもほとんど差はなかった。したがって、ヒトIle2は、抗原結合に対して効果を有しなかった。システイン、セリン、及びチロシンのすべては、位置57において許容されるように見えた。位置30におけるバリンは、タウ結合に影響を有しなかった。
【0236】
[0262]10B.b.3 Vh3及びVκ1バリアントに対するHC/LC安定性についてのSDS−PAGE分析
2マイクログラムの各mAbを4×NuPAGE(商標)LDSサンプルバッファーと混合し、MOPSバッファー中にて非還元4〜12%Bis−Tris SDS−PAGEゲルで分離した。ゲルをインスタントブルーで染色し、水で脱染した。より多くのヒト7G6−HCzu11が、とりわけより少ないヒト7G6−LCzu12と対合した場合に、HC−LC二量体及び遊離HCをもたらした(
図20A)。さらに、7G6−HCzu18及び7G6−HCzu19は、意味のあるフラグメントを示した(
図20B及び20C)。これら2つの抗体は、位置71において他と異なる。したがって、ヒト残基Arg41は、タウ結合には影響を与えないものの、HC−LC相互作用の不安定化に寄与した。すべてのLCバリアントは、抗体フラグメントを示さなかった。上で分析されたVh1−Vκ2とは対照的に、Cys49は、HC−HC−LC三量体、HC−HC二量体、又は遊離LCをもたらさなかった。
【0237】
[0263]10B.c. ヒト化抗体のスクリーニング
配列のヒト性、ビアコア(商標)親和性データ、及びIGHV1/IGKV2ヒト化からのSDS−PAGE安定性データに基づき、タウに対する最も高い親和性を有する最もヒト性の高い配列として、7G6−HCzu8を選定した。7G6−LCzu6及び7G6−LCzu21は、SDS−PAGEにおける同等の安定性及びタウに対する親和性を有したが、位置36において1つのアミノ酸だけ異なった。両軽鎖を7G6−HCzu8と共発現させる対象として選定して、IGHV1/IGKV2に基づく最良のmAbを決定した。
【0238】
[0264]最もヒト性の高い、最も高い親和性の、且つ最も安定なIGHV3及びIGKV1バリアントに対して別ラウンドの突然変異誘発を実施して、それぞれ位置57及び49における不対システインを除去した。最も高い親和性を有する最もヒト性の高いフレームワーク残基として、7G6−HCzu17及び7G6−HCzu18を選定した。CDRH2のC末端部分にヒト残基を導入することによって7G6−HCzu18を超ヒト化して7G6−HCzu21を作出したが、親和性は決して分析されなかった。7G6−HCzu18、7G6−HCzu21、及び7G6−HCzu17はすべて、位置57においてシステインを含有しており、3つすべてのバリアントにおける位置57にセリンを導入して、それぞれ7G6−HCzu2
4、7G6−HCzu2
3、及び7G6−HCzu25を作出した(
図17)。7G6−LCzu14及び7G6−LCzu15は、最も高い親和性を有する最もヒト性の高いVκ配列であった。7G6−LCzu14はCys49を保持し、したがって変異させて不対システインを除去し、7G6−LCzu18と命名した。各IGHV3 HCを、各IGKV1 LCと対合させた。
【0239】
[0265]10B.c.1 インタクト質量分析
各mAbの質量をESI−MSによって分析して、理論的質量が、観測された質量と合致することを確認した。mAbをIdeSで消化してF(ab’)
2フラグメントを作出し、その後に、2mM DTTを用いた還元、及び60℃で3分間の加熱が続いた。Fd(Vh−CH1)及びLCフラグメントの質量をESI−MSによって分析した。7G6−HCzu8は、N末端グルタミンの典型的な翻訳後修飾であるN末端ピログルタミン酸を含有した。すべての観測された質量は、予測された質量の3ダルトン以内であった(表9)。
【0240】
【表9】
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【0241】
[0266]10B.c.2 タウ結合ビアコア(商標)アッセイ
ヒト化mAbに対するタウ結合を、2つの異なる形式のビアコア(商標)によって分析した。第1の形式は上記のように実施され、すなわちmAbを、固定化された種特異的抗Fc抗体で捕捉した。この形式の限界は表5及び8に見られ、親マウス及びヒト化mAbの親和性は、捕捉抗体の違いに起因して直接比較され得ない。第2の形式では、ビオチン化mAbを、ストレプトアビジンがコーティングされたチップに捕捉した。この後者の形式は、捕捉方法が同一であることから、ヒト化及び親マウス抗体の間のタウ結合親和性の直接比較を可能にした。
【0242】
[0267]10B.c.2.i Fc特異的補足
最終的なヒト化mAbをビアコア(商標)によって分析して、上記のようにタウへの結合に関するk
a、k
d、及びK
Dを決定した(表10)。7G6−HCzu23から7G6−HCzu24にオフ速度(k
d)の有意な変化があったが、一方で7G6−HCzu24は7G6−HCzu25と同程度であり、このことは全体的親和性K
Dにおいても同様に見られた。このことは、上記の表7に見られるように、CDRH2においてマウス残基を保持することの重要性を裏付けた。
【0243】
【表10】
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【0244】
[0268]10B.c.2.ii ストレプトアビジン捕捉
ビオチン化されたヒト化及びマウスmAbを、ストレプトアビジンがコーティングされたチップに捕捉し、k
a、k
d、及びK
Dをタウへの結合について決定した(表11)。7G6−HCzu8−LCzu21は、7G6−HCzu8−LCzu6と比較して親和性のわずかな下降(<2倍)を示した。同様に、7G6−HCzu23バリアントは、表11に見られるように、7G6−HCzu24及び7G6−HCzu25 mAbと比較して親和性の約2倍の下降を有した。7G6−HCzu8−LCzu6、7G6−HCzu24−LCzu15、7G6−HCzu24−LCzu18、7G6−HCzu25−LCzu15、及び7G6−HCzu25−LCzu18の親和性は、すべて同程度であった。全体として、これらの抗体は、ms7G6と比較して親和性の約1.4倍の下降を示し、ヒト化形態に対するわずかにより速いオフ速度に主に反映した。
【0245】
【表11】
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【0246】
[0269]10B.c.3 SEC−HPLCによる均質性及び凝集についての分析
各mAbをSEC−HPLCによって分析して、溶液中でのmAbの均質性を決定した。7G6−HCzu8−LCzu6及び7G6−HCzu8−LCzu21 mAbのプロファイルは同一であり、14.5分の時点に主たるピーク、及び16分を超えて考え得る産物不均質性を示唆する幅広のショルダーを有した(
図21A)。7G6−HCzu23、7G6−HCzu24、及び7G6−HCzu25 mAbのプロファイルは同一であり、14.7分辺りにタイトなピークを有した(
図21B)。
【0247】
[0270]10B.c.4 DSC分析
F(ab’)2フラグメントの熱融解曲線を示差走査熱量測定(DSC)によって分析した。キメラ、7G6−HCzu8、及び7G6−HCzu25 F(ab’)2のプロファイルは、対照の非タウ結合ヒトIgG1抗体mAb1及びmAb2と類似していた。しかしながら、7G6−HCzu23及び7G6−HCzu24は、F(ab’)2フラグメントの不安定性、おそらくHC−LC相互作用の解離を示す、第2のピークを含有した(
図22A〜L)。7G6−HCzu8−LCzu21、7G6−HCzu25−LCzu15、及び7G6−HCzu25−LCzu18の転移中点は同程度であり、77.4〜77.6℃に及んだ。7G6−HCzu8−LCzu6の中点は、78.6℃で1度高かった(表12)。
【0248】
【表12】
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【0249】
[0271]10B.d T細胞エピトープ分析
ヒト化配列は、潜在的な免疫反応性T細胞エピトープについてStealth Biologicsによってインシリコで分析された。各可変領域生殖系列ファミリーに対する2つの配列を分析し、それぞれは種々の量のヒト及びマウス残基を含有した。mAb1−2a及びmAb1−2bはIGHV1−46a/IGKV2−30aを表し、mAb3−1a及びmAb3−1bはIGHV3−23b/IGKV1−39bを表した。各可変ドメインに対して4つの配列のみが分析されたが、試験されたヒト化mAbに存在するすべての潜在的T細胞エピトープが表された。ヒト生殖系列配列の5%を上回る割合との同一性を有するペプチドエピトープを、1つのみ又は2つのHLAアレルに結合するペプチドがそうであるように、より低いリスクと考えた。
【0250】
[0272]
図23及び24は、mAbに存在するエピトープについての分析を要約している。表におけるペプチドは、ヒト生殖系列配列と5%又はそれ未満の同一性を有するとして同定された。可変ドメイン生殖系列配列に対するペプチドの相同性パーセントも考慮に入れた。可変領域生殖系列配列と約5%若しくはそれ未満の相同性を有する、及び/又は3つ若しくはそれを上回る数のHLAアレルに結合すると予測されるペプチドを、より高いリスクとして同定した(灰色で強調されている)。
【0251】
[0273]7G6−HCzu8及び7G6−HCzu25は両方とも、3つのアレルに結合する生殖系列配列との相同性を有しない、位置32における共通の低リスクペプチドを含有した(
図23A及び23B)。ペプチド2は7G6−HCzu25において低リスクであると予測されたが、7G6−HCzu8ペプチド2はそうではなかった。ペプチド64は、3つのアレルに予測上結合する、両HCにおけるリスクとして存在した。7G6−HCzu8におけるペプチド配列は、その配列が生殖系列可変ドメインといくらかの相同性を有することから、それほどリスクではなく存在することができる。7G6−HCzu8においてペプチド70は、わずかなリスクをもたらすが、7G6−HCzu25ではそうではなかった。
【0252】
[0274]7G6−LCzu6と7G6−LCzu21との間には1つの差があり、7G6−LCzu21におけるペプチド38は、1つのHLAアレルに結合すると予測され、非常に低いリスクを提示した(
図24A〜24D)。7G6−LCzu15と7G6−LCzu18との間には、ペプチド2に関する1つのみの差があり、可変ドメイン生殖系列配列との相同性がほとんどから全くないことから、その差が7G6−LCzu18よりも7G6−LCzu15においてより高いリスクをもたらした。7G6−LCzu6/7G6−LCzu21と7G6−LCzu15/7G6−LCzu18とを比較すると、7G6−LCzu6/7G6−LCzu21配列は9個の潜在的な免疫原性ペプチドを含有し、一方で7G6−LCzu15/7G6−LCzu18は6個を含有した。ペプチド51及び52はすべてのLC間で同じであり、ペプチド88〜94は、7G6−LCzu15/7G6−LCzu18には存在しないペプチド90が7G6−LCzu6/7G6−LCzu21には存在するという例外を有して、同じ又は類似していた。ペプチド2及び3は、7G6−LCzu15/7G6−LCzu18においてよりも7G6−LCzu6/7G6−LCzu21においてリスクが高かった。
【0253】
[0275]10C. 要約
要約すると、ms7G6を、ms7G6と同程度の親和性を有する2つの異なるヒト生殖系列可変ドメインファミリーでヒト化した。
【0254】
[0276]マウス配列に最も近いヒト生殖系列は、IGHV1−46及びIGKV2−30であった。抗原結合を維持するためにはいくつかのマウスフレームワーク残基が要されると疑われたにもかかわらず、タウ結合はヒトフレームワーク残基によって影響を受けなかった(7G6−HCzu1/7G6−HCzu8)。さらに、タウ結合は、不対Cys57のセリンへの変異(7G6−HCzu5/7G6−HCzu8)、又は残基60、61、64、及び65におけるCDRH2の超ヒト化(7G6−HCzu4/7G6−HCzu8)によって影響を受けなかった。IGKV2にVκ CDRを移植することは、タウ結合の劇的な減少をもたらさなかったが、1つ又は2つのマウスフレームワーク残基の付加は、HC−LC相互作用を安定させた。Leu46は、Tyr36の有無にかかわらず、SDS−PAGEによって分析されるようにVh−Vκ相互作用の安定性を増加させ、Tyr36−Leu46(7G6−LCzu2/7G6−LCzu6)の組み合わせは、Leu46又はTyr36単独に関してよりも、タウへのわずかに高い親和性を有する抗体をもたらした(それぞれ7G6−LCzu/7G6−LCzu21及び7G6−LCzu4/7G6−LCzu22)。位置46におけるロイシンに関して免疫原性のわずかなリスクがあったものの、リスクは低かった。不対Cys49はセリンで置換され得たが、チロシン置換は解離速度の増加をもたらした。
【0255】
[0277]より共通して発現されるIGHV3及びIGKV1ファミリーを利用することによってヒト化mAbの免疫原性を潜在的に低下させることに、ヒト生殖系列可変ドメインファミリーIGHV3−23及びIGKV1−39を選定した。IGHV3生殖系列にCDRを移植することは、1つ又は複数のマウス残基を要した。Arg94はヒトリジン残基ではあり得なかった。位置60、61、62、63、及び65におけるマウス残基は、最適な抗原結合に要された。71におけるアルギニンは抗原結合に影響を及ぼさなかったが、Vh−Vκ相互作用の安定性に要された(7G6−HCzu12、7G6−HCzu13、7G6−HCzu14、7G6−HCzu15、7G6−HCzu16、7G6−HCzu17、7G6−HCzu25)。Val71は、Phe63及びSer65とペアにした場合に潜在的な免疫原性ペプチドをもたらしたものの、リスクは低かった。タウ結合は、不対Cys57のセリンへの変異によって影響を受けなかった(7G6−HCzu23、7G6−HCzu24、7G6−HCzu25)。IGKV1フレームワーク全体にわたるヒト残基は、抗原結合又は安定性に影響を及ぼさなかった(7G6−LCzu18)。
【0256】
[0278]試験されたすべての抗体に関して、pI及び熱安定性の差はほとんどなかった。
【0257】
[0279]実施例11:ヒト疾患脳に対する7G6−HCzu25/LCzu18を用いた免疫組織化学
パラフィン包埋された固定されたヒト脳切片(8μm)をキシレンの複数回の交換で脱パラフィン(dewax)し、次いで100%工業用変性アルコール(Industrial Methylated Spirit)(IMS)で徹底的に(throroughly)に洗浄した。切片を過酸化水素(H
2O
2)及びメタノール(100mLのメタノールあたり2mLの過酸化水素)中に室温で10分間置いて、内因性ペルオキシダーゼを遮断し、次いで流れている水道水の下でさらに10分間洗浄した。次いで、各切片を98%ギ酸で室温にて10分間処理し、その後に、流れている水道水でもう10分間の洗浄が続いた。次いで、切片をクエン酸バッファー(pH6.0)中で圧力をかけて10分間熱し、次いで流れている水道水で再度、その後にTBSで洗浄した。脱イオン水でリンスした後、各スライドを慎重に取り外し、組織端周辺を乾燥させた。乾燥させ次第、プロテイナーゼK溶液を室温で10分間適用する前に、ワックスペンを用いて切片周辺に印を付けた。
【0258】
[0280]組織切片が調製され次第、種々の濃度の7G6−HCzu25−LCzu18抗体を用いた染色を、メーカーの取扱説明書の通りにKlear Human HRP−Polymer DAB検出キット(GBI Labs、Bothwell、WA;カタログ番号D103−18)を用いて行った。
図25に示されるように、7G6−HCzu25−LCzu18抗体は、免疫組織化学により、アルツハイマー病(神経原線維変化及び神経絨毛糸(neuropil thread))、PSP(もつれ、房状アストロサイト、及びコイル小体)、及びピック病(ピック小体)由来の脳における病的タウを強く且つ特異的に認識する。抗体は、また、試験されたすべての組織において、非常に低いレベルのバックグラウンド染色しか示さなかった。
【0259】
[0281]実施例12:2N4R野生型タウに対する7G6−HCzu25−LCzu18の親和性
12A. 材料&方法
12A.c.2. CHO一過性mAb産生
メーカーの手順に従い、Lonzaバージョン7プラットフォームを用いて7G6−HCzu25−LCzu18抗体を産生した。7G6−HCzu25及び7G6−LCzu18をコードするDNAフラグメントを、Lonzaからのグルタミンシンターゼをコードする発現プラスミドにクローニングした。MSX耐性細胞株を選択するためのLonzaのプロトコールに従い、CHO−K1sv細胞に7G6−HCzu25−LCzu18発現プラスミドをエレクトロポレーションし、それに続いて、25又は50μMのMSXの存在下で、グルタミン不含培地中96ウェルプレートにウェルあたり2500個細胞を播種した。MSX耐性細胞を含有するウェルを、様々な細胞培養容量で、抗体発現についての数ラウンドのスクリーニングに供した。最も高い7G6−HCzu25−LCzu18抗体力価を産生する96E7細胞株をさらなる進展に選定し、−80℃で凍結し、液体窒素中気相に保管した。
【0260】
[0282]96E7細胞株のバイアルを融解し、36.5℃及び5%CO
2でディスポーザブル振とうフラスコ中にて培養し、その後に、36.5℃及び5%CO
2でより大きなサイズのディスポーザブル揺動バッグ中にて3〜4日ごとのさらなる増殖が続いた。1000Lのステンレス鋼フェッドバッチ産生バイオリアクターの接種前に、200Lのステンレス鋼シードバイオリアクターを、制御pH及び溶存酸素を有する36.5℃での最終増殖に採用した。フェッドバッチモードで且つ制御pH及び溶存酸素を有する36.5℃での15日後、上清をデプス濾過を通して収穫した。
【0261】
[0283]12A.d. MAb精製
AKTAprocess精製プラットフォーム(GE Healthcare)を用いて精製を実施した。精製工程は以下のステップからなった:プロテインA捕捉クロマトグラフィー、ウイルス不活性化、デプス濾過、アニオン交換フロースルークロマトグラフィー、ウイルス低減濾過、濃縮、及び最終バッファー交換。
【0262】
[0284]最初の捕捉ステップを、Amsphere A3プロテインA樹脂(JSR)を用いて実施した。50mMリン酸ナトリウム、1M NaCl、pH7.0を用いて14.1Lのカラムを平衡化し、次いで、サイクルあたり樹脂1リットルあたり最高で45gのタンパク質をロードした。ロードした後、UVがベースラインに戻るまで、カラムを平衡化バッファー、それに続く25mM Bis−Tris、pH7.0で洗浄した。結合した材料を、100mMグリシン、pH3.4を用いてカラムから溶出した。低pHウイルス不活性化のために、溶出液のpHを、2M酢酸を用いてpH3.6に調整した。最低30分間の静置の後、溶出液を、2M Tris Baseを用いてpH6.8に中和した。Millistak+ D0HC及びX0HCボッドフィルター(Millipore)を用いて、デプス濾過を直ちに実施した。25mM Bis−Tris、pH7.0で平衡化された6.7LのCapto Q(GE Healthcare)アニオン交換カラムを用いて、濾液をさらに処理した。カラムに、非結合モードで樹脂1リットルあたり最高で150gのタンパク質をロードした。フロースルー産物を、Viresolve Proウイルス低減フィルターを用いて濾過し、次いで25g/Lに濃縮した。材料をバッファーにバッファー交換した。2つの異なるモノクローナル抗体産生ランに対して精製手順を実施し、17−0190及び18−0146ロットと指定した。17−0190ロットからのいくつかのバイアルを、参照標準としての使用のために17−0190ARSと指定した。
【0263】
[0285]12A.f. 表面プラズモン共鳴(SPR)結合分析
12A.f.2. 抗ヒト捕捉単量体タウ結合アッセイ
12A.f.2.i. チップ調製
試薬調製。EDC[1−エチル−3(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド]及びNHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)を、10.0mlのミリ−Q(Milli−Q)水を各バイアルに添加することによって溶解した。バイアルにきつく蓋を締め、固体が完全に溶解するまでボルテックスした。EDC、NHS、及びエタノールアミン溶液を、7mmプラスチックバイアル中0.5mlアリコートに別個に等分し、蓋を締め、−20℃で凍結して保管した。キットからの抗ヒトIgG(Fc)を微量遠心機で短時間遠心分離して、チューブの底に抗体を収集した。15μLの抗ヒトIgG(Fc)を新たな1.5mL微量遠心機チューブに取り出し、285μLの固定化バッファーで300μLに希釈した。サンプルを短時間ボルテックスして混合し、次いで70μLを4本の別個の7mmチューブに等分し、蓋を締めた。EDC、NHS、及びエタノールアミンのそれぞれについての4本のアリコートを融解し、短時間ボルテックスして混合し、チューブ壁にトラップされたいかなる気泡をも除き、試薬ラック2に置いた。
【0264】
[0286]1Lパイレックス(Pyrex)ボトル中にて50mLの10×HBS−P+を450mLのミリ−Q(登録商標)水で0.5Lに希釈することによって、0.5Lの1×HBS−P+(アッセイランニングバッファー)を調製した。
【0265】
[0287]アッセイ用機器の準備。アッセイランニングバッファーの1Lボトルをビアコア(登録商標)T−100のバッファーAラインに、空の2Lパイレックスボトルをビアコア(登録商標)T−100廃液ラインに、及び新鮮な1Lのミリ−Q(登録商標)水で満たされた1Lパイレックスボトルを水ラインに取り付けた。新たなCM5チップを機器にドッキングした。
【0266】
[0288]捕捉抗体固定化。ビアコア(登録商標)T−100制御ソフトウェアにおいて、新たなウィザードテンプレートを開き、「固定化」を選択した。チップタイプを「CM5」に設定した。方法を「アミン」に設定した。リガンドブランクを「抗ヒト」と記入した。添加時間を各フローセルに対して360秒間に、流速を5μL/分に設定した。これらのステップの完了後、アッセイをランした。
【0267】
[0289]12A.f.2.ii. 結合アッセイ
結合実験を、ビアコア(商標)T−100機器又はT−200機器を用いて実施した。結合アッセイに用いられたランニングバッファーはHBS−P+/0.2%BSAであった。7G6−HCzu25LCzu18サンプルを、アッセイランニングバッファー中最終100μg/mL、100μLに希釈し、次いで微量遠心機において18,000×gにて周囲温度で10分間遠心分離した。40μLの上清を取り出し、ラベルされた5mLチューブ中アッセイランニングバッファーで4.0mLに希釈することによって、1μg/mLへの希釈を行った。1μg/mLの抗体溶液を、ラベルされた1.5mLの蓋なしプラスチックバイアルに移し、タイプ3のキャップで蓋を締めた。バイアルを短時間ボルテックスして、チューブの壁又は底に付着したいかなる気泡をも除去し、サンプル及び試薬ラック1に置いた。希釈された参照標準抗体の200μLの1μg/mL溶液を7mmプラスチックバイアルに移し、蓋を締め、短時間ボルテックスして、付着した気泡を取り除き、サンプル及び試薬ラック1に置いた(チップ馴化サイクルのため)。組み換えヒト野生型2N4Rタウタンパク質を、アッセイランニングバッファー中最終1μM、0.5mLに希釈した(1mg/mLストックは21.7μMである)。サンプルを、微量遠心機において18,000×gにて周囲温度で10分間遠心分離し、400μLの上清を取り出し、ラベルされた5mLチューブ中アッセイランニングバッファーで4.0mLに希釈することによって、100nMに希釈した。1333μLの100nM溶液を取り出し、2667μLのアッセイランニングバッファーで4.0mLの最終容量に希釈することによって、100nM溶液を3倍段階希釈した(33.3μL)。合計8つの希釈のために、段階希釈を6回反復した(100nM、33.3nM、11.1nM、3.70nM、1.23nM、0.41nM、0.14nM、及び0.046nMのタウ)。3mLのアッセイランニングバッファーを、ラベルされた5mLチューブに添加することによって、0nMタウタンパク質溶液を調製した。分析物希釈液を、ラベルされた4mLプラスチックバイアルに移し、タイプ5のキャップで蓋を締め、短時間ボルテックスして、チューブの壁又は底に付着したいかなる気泡をも除去し、サンプル及び試薬ラック1に置いた。チップを馴化する分析物サンプルに関しては、5μLの1μMタウタンパク質溶液上清を取り出し、7mmプラスチックバイアル中アッセイバッファーで500μLに希釈し、蓋を締め、短時間ボルテックスして、付着した気泡を取り除き、サンプル及び試薬ラック1に置いた。ヒト化抗体を、36秒間の添加時間の間、10μL/分の流速でフローセル2、3、及び4に逐次的に捕捉した。タウタンパク質の希釈液を、300秒間の添加時間の間、30μL/分の流速で4つすべてのフローセルにわたってインジェクトした。その後に解離が1800秒間続いた。各サイクルの後、4つすべてのフローセルにわたる3M MgCl
2の30μL/分で30秒間の2回の逐次的インジェクションによって、表面を再生した。ランの後、動態データフィッティングを、1:1ラングミュアモデルを用いて実施した。
【0268】
[0290]12B. 結果
7G6−HCzu25LCzu18抗体への組み換えヒト野生型2N4Rタウタンパク質の親和性を、抗体捕捉形式アッセイを用いて決定した。7G6−HCzu25LCzu18抗体の捕捉後、ヒトタウタンパク質をリガンド表面にわたって300秒間インジェクトし、その後に1800秒間の解離の観察及び測定が続いた。各抗体捕捉、タウタンパク質結合、及び解離サイクルの後、メーカーによって要求されているように、3M MgCl
2を用いて、チップ表面を抗ヒト抗体捕捉表面に再生した。タウタンパク質を、100nM〜0.046nM(3倍希釈された)の濃度域で分析した。解離が各タウタンパク質インジェクションに対して実施されるように、アッセイをマルチサイクルモードで実施した。各リガンドを3つすべてのフローセル(fc2、fc3、及びfc4)にて三つ組で分析して、いかなるフローセル特異的効果をも排除した。
【0269】
[0291]各フローセルへの各リガンドの捕捉レベル(fc1と比べた)を決定した。これらの結果は表13に列挙されている。
【0270】
【表13】
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【0271】
[0292]捕捉されたリガンド平均レベルはすべて、158RU〜196RUの間にあった。所与のリガンド内では、フローセル間でほんのわずかな差しか観察されなかった。
【0272】
[0293]結合データは二重参照され、リガンド結合なしのfc1及びバッファー分析物インジェクション(0nMタウタンパク質)の両方に参照されたことを意味する。結合データを、1:1ラングミュア結合モデルにフィットさせた。抗体の2価性及び結果として生じた結合力(avidity)効果は抗体捕捉形式において関連性がないことから、このモデルは当該アッセイ形式に適当である。個々のフローセル上の各リガンドに対する親和性データを平均化し、標準偏差を決定した。これらの結果は表14に列挙されている。
【0273】
【表14】
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【0274】
[0294]2つの7G6−HCzu25LCzu18原薬ロットと7G6−HCzu25LCzu18参照標準との間に、オン速度、オフ速度、又は親和性の有意な差は観察されなかった。
【0275】
[0295]実施例13:7G6−HCzu8−LCzu6及び7G6−HCzu25−LCzu18の精細エピトープマッピング
精細エピトープマッピングを、実施例3に記載されるように、7G6−HCzu8−LCzu6及び7G6−HCzu25−LCzu18抗体に対して実施した。
【0276】
[0296]チップの蛍光画像及び結果として生じた強度プロットは、7G6−HCzu8−LCzu6(
図26A)及び7G6−HCzu25/LCzu18(
図26B)抗体が両方とも、マウス7G6抗体と同様に(
図3を参照されたい)、全長タウタンパク質の2つの主要な部位に結合することを示している。概して7G6−HCzu25−LCzu18に対してチップ上のより強い蛍光強度が観察され、シグナル飽和の何らかの兆候、及びしたがって、ペプチドのすべてではないが一部に対する真の定量の欠如をもたらした。この実験において、データ分析ソフトウェア(ペプスライド(商標)アナライザー)は、7G6−HCzu8−LCzu6に対する最小結合配列を、2N4Rタンパク質の第2の反復(位置298〜304)内の部位に対してKHVPGGG(配列番号1135)、及び第4の反復(位置362〜366)内の部位に対してHVPGG(配列番号79)と同定した。7G6−HCzu25−LCzu18に関して、ソフトウェアは、最小要求配列を、両結合部位に対してHVPG(配列番号1133)と同定した。
【0277】
[0297]マウス7G6と同様に、7G6−HCzu8−LCzu6及び7G6−HCzu25−LCzu18抗体の両方に対して、2つのさらなる部位:アミノ酸位置268〜272におけるHQPGG(配列番号183)及び位置330〜334におけるHKPGG(配列番号182)において微量の結合が観察された。HXPGG配列(配列番号1136)を含有するペプチドに対する平均シグナル強度の算出により、7G6−HCzu8−LCzu6ヒト抗体が、HQPGG(配列番号183)(反復領域1)又はHKPGG(配列番号182)(反復領域3)配列と比較して、全長2N4Rタウの第2の反復領域内に通常含有されるHVPGG部位(配列番号79)への結合において、それぞれ108倍又は104倍の選好性を示すことが実証された。同様に、HQPGG(配列番号183)(反復領域1)又はHKPGG(配列番号182)(反復領域3)配列と比較して、全長2N4Rタウの第4の反復領域内に通常含有されるHVPGG(配列番号79)部位への7G6−HCzu8−LCzu6結合において、それぞれ99倍又は95倍の選好性が観察された。7G6−HCzu25−LCzu18に対する同一のデータ分析は、HQPGG(配列番号183)(反復領域1)又はHKPGG(配列番号182)(反復領域3)配列と比較して、全長4Rタウの第2の反復領域内に通常含有されるHVPGG(配列番号79)部位への結合において、それぞれ65倍又は100倍の選好性を実証した。同じように、HQPGG(配列番号183)(反復領域1)又はHKPGG(配列番号182)(反復領域3)配列と比較して、全長4Rタウの第4の反復領域内に通常含有されるHVPGG(配列番号79)部位への7G6−HCzu25−LCzu18結合において、それぞれ77倍又は119倍の選好性が観察された。
【0278】
[0298]実施例14:7G6−HCzu8−LCzu6及び7G6−HCzu25−LCzu18のエピトープ置換スキャニング
実施例4に記載されるように、エピトープ置換スキャニングを7G6−HCzu8−LCzu6及び7G6−HCzu25−LCzu18抗体に対して実施した。
【0279】
[0299]置換スキャニングは、7G6−HCzu8−LCzu6及び7G6−HCzu25−LCzu18抗体の両方とも、
1HVPGG
5(配列番号79)配列が、ペプチド結合のために、
1H、
3P、及び
4G残基を要し、
2Vではいくらかの置換忍容性を有することを示した。これらの知見は、マウス7G6抗体に対して観察されたもの(実施例4を参照されたい)と同様であった。置換に対するいくらかの忍容性は、この場合、
1HVPGG
5(配列番号79)配列の第2のグリシン残基(
5G)でも観察された。しかしながら、この残基は、より長い野生型ペプチド配列への7G6−HCzu25−LCzu18及び7G6−HCzu8−LCzu6抗体の結合に対して依然としてかなりの影響を及ぼし得た。実施例13と合わせると、これらの結果は、HVPGG(配列番号79)配列が、第2及び第4の反復内のそれぞれ位置299〜303及び362〜366での、2N4Rタウへの7G6、7G6−HCzu25−LCzu18、及び7G6−HCzu8−LCzu6抗体の効率的な結合を促すことを示す。
【0280】
[0300]実施例15:7G6−HCzu25−LCzu18を用いたインビトロタウ凝集
実験1
7G6−HCzu25−LCzu18抗体がインビトロでタウ凝集を阻害し得るかどうかを決定するために、野生型タウタンパク質を用いて、わずかな改変を有して実施例5に記載されるアッセイにおいて抗体を試験した。唯一の違いは、この場合に用いられた対照IgGはヒトIgG1抗体(BioXCell、カタログ番号BE0297)であることであった。
【0281】
[0301]このアッセイでは、7G6−HCzu25−LCzu18抗体を数日間の時間経過にわたって試験した。
図27は、7G6−HCzu25−LCzu18が、インビトロでタウ凝集を有効に阻害し得たことを示している。37℃でのインキュベーション後1、2、5、及び6日目に関して、IgG対照と7G6−HCzu25−LCzu18とを比較した場合、効果は統計的に有意であった(t検定)。ヘパリン添加後、反応を始動したすぐ後の0日目に、有意性は観察されなかった。
【0282】
[0302]実験2
ヒト化7G6−HCzu25−LCzu18抗体が、インビトロでタウ凝集を阻害することにおいてマウス7G6抗体に匹敵することを確認するために、両抗体を同じインビトロタウ凝集アッセイにおいて比較した。用いられた条件は、実施例5に記載されるのと同じマウスIgG2b対照抗体が用いられたということを除いて、本実施例の実験1におけるものと同一であった。
【0283】
[0303]マウス抗体7G6及びヒト化抗体7G6−HCzu25−LCzu18の両方を、実施例5に提供されるアッセイ条件に従って試験した場合、両抗体ともインビトロでタウ凝集を有効に阻害した。
図28に示されるように、マウス7G6と7G6−HCzu25−LCzu18抗体との間で同じ効果の大きさが見られた。
【0284】
[0304]実施例16:7G6−HCzu25−LCzu18による免疫枯渇後の、K18タウフィブリルを用いた、細胞に基づくシーディングアッセイ
細胞培養培地からのタウシードの免疫枯渇が、細胞内のさらなるタウ凝集を防止し得るかどうかを決定するために、実施例6に記載されるのと同じHEK293アッセイシステムを用いた。しかしながら、本例では、以前に記載される全長タンパク質ではなく、タウ(K18)フィブリルの強力な短縮型をタウシードとして用いた。K18フラグメントは広く研究されており、通常、全長2N4Rタウタンパク質の残基244〜372として組み換えで発現される。このフラグメントはタウの微小管結合領域をコードし、全長タンパク質よりも凝集傾向が高く(Shammasら、Nature Comms.、6、論文番号:7025(2015))、並びに細胞に基づくアッセイにおいて強力なシードを形成する能力を有すると報告されている(Kfouryら、2012、J.Biol.Chem.、287:19440〜19451)。
【0285】
[0305]材料及び方法:
K18フィブリルの調製。組み換えヒトタウ−441(244〜372;「K18」)(SignalChem)を超純水に溶解した。40μmol/L K18タンパク質、100mmol/L酢酸ナトリウム(pH7)、2mmol/L DTT、及び240μg/mLヘパリンの最終濃度を一緒に混合することによって、フィブリルを作出した。反応液を37℃で3日間撹拌した。インキュベーション後、溶液を135,000gにて室温で20分間遠心分離した。上清を捨て、ペレットを100mmol/L酢酸ナトリウム(pH7)に再懸濁した。凝集したタンパク質を短時間超音波処理し、次いでD−PBS(−)で50μg/mLの濃度に希釈し、−80℃で保管した。
【0286】
[0306]免疫枯渇及び免疫沈降サンプルの調製。調製されたK18フィブリルの免疫沈降を、メーカーの取扱説明書の通りに免疫沈降ダイナビーズ(Dynabeads)(登録商標)プロテインGキット(Thermofisher Scientific、カタログ番号10007D)を用いて実施した。簡潔には、各免疫沈降は、3又は0.3μgの7G6−HCzu25−LCzu18抗体のいずれかに結合した1.5mgのダイナビーズを用いた。ビヒクル(抗体なし)又は3μgの市販のヒトIgG1抗体(Bio−Rad Laboratories,Inc.;カタログ番号HCA192)が対照として含まれた。抗体に結合した(又は、ビヒクルで処理した)ビーズを、0.2%BSAを含有する170μLのバッファーに再懸濁した。次いで、K18フィブリル溶液を融解し、PBS中10μg/mLに希釈し、抗体に結合したビーズに添加して200μLの最終容量を与えた(合計で300ngのK18を含有する)。この操作は、各免疫沈降反応液中に15又は1.5μg/mLの抗体のいずれかの最終濃度を与えた。ビーズをK18フィブリルと室温で20分間撹拌しながらインキュベートし、結合していない材料を免疫枯渇(ID)サンプルとして保持した。抗体に結合した材料を、キットに提供された20μLのバッファー中に溶出し、また保持して免疫沈降(IP)サンプルを用意した。
【0287】
[0307]細胞に基づくアッセイ。ポリエチレンイミン(PEI)溶液を精製水中0.1%の最終濃度に希釈し、次いでそれを用いて96ウェル組織培養プレートを37℃で少なくとも一晩コーティングした。次いで、アッセイを行うのに先立って、10%胎仔ウシ血清及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(「DMEM(+FBS、P/S)」)培地を含有する150μlのダルベッコ改変イーグル培地(D−MEM)を各ウェルに添加する前に、プレートを水で2回洗浄した。
【0288】
[0308]タウシード添加前に、5%CO
2を有する37℃でD−MEM(+FBS、P/S)中にルーチン的に維持されたLenti−X 293T(Takar Bio Inc.)細胞に、抗生物質なしの同じ培地中にて浮遊状態でトランスフェクトした。トランスフェクションに関しては、メーカーの推奨どおりに、変異体P301S 0N4RタウアイソフォームをコードするcDNAを含有する7μgのpcDNA3.1(+)(Invitrogen)哺乳類発現ベクターと、LTX and Plus(商標)試薬(Life Technologies、カタログ番号15228−100)とを混合した。結果として生じた混合物を、1.0×10
5個細胞/mLの密度で6.0×10
6個のLenti−X 293T細胞の懸濁液に直接添加する前に、室温で少なくとも25分間インキュベートした。あらかじめコーティングされたプレートから培地を除去し、処理された細胞懸濁液をウェルあたり150μL(1.5×10
4個細胞/ウェル)で分配し、5%CO
2大気中37℃で19時間インキュベートした。
【0289】
[0309]氷上で融解し次第、30μLの各IDサンプルを420μLのOpti−MEM(登録商標)I Reduced−Serum培地(ThermoFisher Scientific、カタログ番号31985−062)に希釈した。IPサンプルに関しては、溶液をまた氷上で融解し、2μLのそれぞれを50μLのOpti−MEM(登録商標)I Reduced−Serum培地に希釈した。次いで、2.5μLのP3000(Thermofisher Scientific、カタログ番号L3000−008)を添加した。別個のチューブで、22μLのリポフェクタミン(登録商標)3000(Thermofisher Scientific、カタログ番号L3000−008)を550μLのOpti−MEM(登録商標)I Reduced−Serum培地に希釈した。次いで、52μLの希釈されたリポフェクタミン3000溶液を、P3000試薬を含有する各IPサンプルに添加した。
【0290】
[0310]播かれた細胞を2回洗浄し、75μLのOpti−MEM(登録商標)I Reduced−Serum培地(ThermoFisher Scientific)中に放置した。上で記載されるように、等量の希釈されたID又はIPサンプルを各ウェルに添加し、5%CO
2大気中37℃で44時間インキュベートした。実験を四つ組で実施した。
【0291】
[0311]免疫細胞化学。インキュベーションの2日後、細胞を4%パラホルムアルデヒド中で室温にて30分間固定した。各ウェルを100μLの精製水で3回洗浄し、次いで、70μLの透過/ブロッキング/DAPI染色バッファー(TBS中5%BSA中に希釈されたTriton X−100溶液(最終濃度:0.2%)及びセルステイン(Cellstain)(登録商標)DAPI溶液(最終濃度:0.1%;Dojindo))を各ウェルに添加した。プレートにカバーをし、光から保護しながら室温で30分間インキュベートした。インキュベーション後、透過/ブロッキング/DAPI染色バッファーを除去し、80μLのチオフラビンS(ThS)染色バッファー(0.0003%の最終濃度まで50%エタノールに溶解されたチオフラビンS)を各ウェルに添加し、室温で40分間インキュベートした。次いで、各ウェルを50%エタノールで2回洗浄し、250μLの精製水で置き換えた。
【0292】
[0312]イメージングアッセイ。各ウェルの蛍光画像をインセル(登録商標)アナライザー2200(GE Healthcare)(ThS:励起[Ex]/発光[Em]=475/511nm、DAPI:Ex/Em=390/435nm)によって獲得した。次いで、各ウェルにおけるThS及びDAPI陽性シグナルの数を、インセルディベロッパー(InCell Developer)ソフトウェア(GE Healthcare)を用いて分析した。
【0293】
[0313]データ分析。ThS陽性率を、以下の式:
ThS陽性率=ThS/DAPI
=ThS陽性シグナルの数/DAPI陽性シグナルの数
を用いて算出した。次いで、ID又はIPサンプルのシーディング効果を、以下の式(ソフトウェア:TIBCOスポットファイア(Spotfire)):
IDサンプルのシーディング効果(対照についての%)=T
1/C
1×100
式中、T
1:抗体で処理されたIDサンプルにおけるThS陽性率の平均、及び
C
1:バッファーで処理されたIDサンプルにおけるThS陽性率の平均
IPサンプルのシーディング効果(対照についての%)=T
2/C
2×100
式中、T
2:抗体で処理されたIPサンプルにおけるThS陽性率の平均、及び
C
2:7G6−HCzu25−LCzu18抗体(15μg/mL)で処理されたIPサンプルにおけるThS陽性率の平均
を用いて算出した。
【0294】
[0314]
図29は、IDサンプルの処理後の、細胞に基づくシーディングアッセイにおける、正規化されたThS陽性率を示している。1.5及び15μg/mlの7G6−HCzu25−LCzu18抗体は、K18フィブリルのシーディング効果を除去した(ヒトIgG1カッパ対照に対して、>70%の低下)。IPサンプルに関して、7G6−HCzu25−LCzu18抗体は、濃度依存的様式でシーディング効果を効率的に誘導した(データ示さず)。
【0295】
[0315]実施例17:7G6を用いた、海馬内P301Sタウシード注射モデル
材料及び方法:
組み換えヒト2N4R P301Sタウ(40μmol/L)とヘパリン(240μg/mL)とを混合し、その後に、2mmol/Lジチオトレイトール(DTT)を含有する100mmol/L酢酸ナトリウム、pH7.0中での37℃で48〜96時間のインキュベーションステップが続くことによって、タウシードを作出した。凝集したタウを超遠心分離によって収集し、100mmol/L酢酸ナトリウム、pH7.0に再懸濁した。結果として生じたフィブリルを超音波処理し、注射用のシードとして用いた。
【0296】
[0316]3μLのタウシード(1.5mg/mL)又はシードなし(100mmol/L酢酸ナトリウム、pH7.0)を、ウルトラマイクロポンプ(UltraMicroPump)III及びMicro4コントローラー(World Precision Instruments)を用いて、3〜4カ月齢のマウス/Thy−1hTau.P301S(CBA.C57BL/6)マウス[以前に作出されたホモ接合型ヒトP301Sタウトランスジェニックマウス(C57BL/6)(Allenら、J Neurosci.2002;22:9340〜51)]の左海馬に0.5μL/分で6分間定位注射した(A:+2.5、L:2.0、V:1.5)(Franklin及びPaxinos、The Mouse Brain in Stereotaxic Coordinates、第3編、2007、Elsevier USA)。マウスを、表15に示される群に無作為に分けた。製剤化バッファー(25mmol/Lリン酸ナトリウム、0.15mol/L NaCl、pH6.5)中の抗ヒトタウマウスIgG2bモノクローナル抗体、クローン7G6、又はマウスIgG2bアイソタイプ対照抗体(クローンMPC11、BioXCell)を、シードを受けていた群において40mg/kgの用量に達するように腹腔内(introperitoneally)投与した。同じ製剤化バッファーをシードなし群に投与した。タウシード注射の6〜16時間前、並びに1及び2週間後に投薬を実施した(合計3回)。投与前に、投与容量(10mL/kg)を体重から算出した。
【0297】
【表15】
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【0298】
[0317]すべてのマウスに混合麻酔薬(M/M/B:0.3/4/5;0.9mg/kgのメデトミジン、12.0mg/kgのミダゾラム、及び15mg/kgのブトルファノールで調製された)で深く麻酔をかけ、血漿及び脳脊髄液(CSF)を収集した。次いで、生理食塩水を用いた心腔内灌流の後に、両側(同側及び対側)からの皮質及び海馬を別個に解剖した。脳組織を液体窒素中で直ちに凍結し、−80℃で保管した。
【0299】
[0318]50mmol/L Tris−HCl(pH7.5)(Invitrogen)、5mmol/L EDTA(Nippon Gene)、1mmol/L EGTA(Nacalai Tesque)、1%NP−40 Alternative(EMD Millipore)、0.25%デオキシコール酸ナトリウム(Bio world)、0.1mol/L NaCl、0.5mmol/L PMSF(Sigma Aldrich)、1×PhosSTOP(商標)(Roche)、及び1×Complete EDTA(−)(Roche)を含有する19容量(組織重量/容量)の抽出バッファー(「RIPAバッファー」)中で、解剖した脳組織をホモジナイズした。ホモジネートを163,000gにて4℃で20分間遠心分離し、ペレットを、超音波処理の前に、10mmol/L Tris−HCl(pH7.5)、0.5mol/L NaCl、1mmol/L EGTA、10%スクロース(Wako Pure Chemical)、及び1%サルコシルを含有する10容量(組織重量/容量)のバッファーに再懸濁した。サルコシル処理したサンプルを37℃で60分間インキュベートし、次いで163,000gにて4℃でさらに20分間遠心分離した。最後に、10容量のPBS(Gibco)をペレットに添加し、その後それを超音波処理した。この操作により、サルコシル不溶性画分が形成された。
【0300】
[0319]サルコシル不溶性画分におけるタウタンパク質の量をウェスタンブロット分析によって定量した。サルコシル不溶性画分を、NuPAGE(商標)LDSサンプルバッファー(Novex)及びNuPAGE(商標)サンプル還元剤(Invitrogen)中で可溶化し、80℃で10分間加熱し、12.5%ポリアクリルアミドゲル(DRC)を用いて分離した。タンパク質を0.2μm PVDF膜(Bio−Rad)に転写し、ブロットを、0.05%Tween(Nacalai tesque)を含有するTBS(Takara)中の2.5%スキムミルク(Yukijirushi)中で室温にて1時間ブロッキングした。ブロッキングの後、ブロットを、ブロッキングバッファー中ヒト特異的モノクローナル抗タウ抗体HT7(1:1000、Thermo Fisher Scientific)で室温にて1時間プローブした。ブロットをTBS−Tで30分間洗浄し、次いで、HRPコンジュゲート抗マウスIgG(1:2000、GE healthcare)とともに室温でさらに1時間インキュベートした。二次抗体を除去し、ブロットを上で記載されるように洗浄した。タウタンパク質を化学発光ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)基質(Merck Millipore)によって検出し、フュージョンFX及びフュージョンキャプト(FusionCapt)バージョン16.15(Vilber−Lourmat、France)を用いて定量した。タウの量を決定するために、P301S脊髄の起源元サルコシル不溶性画分に由来するタウ標準物質の段階希釈(1、2、5、10、20任意単位[AU]、1AUは、7μgの脊髄由来のサルコシル不溶性画分においてHT7抗体によって検出されるヒトタウタンパク質のバンド密度と等価である)を各ゲルにロードした。1AU(検出限界)未満として算出されたデータを、0.5AUとして表現した。
【0301】
[0320]データは、平均±SEMとして表現されている。シードなし、対照IgG処理群、及び7G6処理群の間のサルコシル不溶性タウの差を、1元配置分散分析(ANOVA)、それに続くフィッシャーのLSD検定によって分析した。P<0.05の値(両側)を統計的に有意と考えた。統計分析は、GraphPad Prismバージョン7.02(GraphPad Software)を用いて実施された。
【0302】
[0321]結果
海馬内タウシード注射によって誘導されたサルコシル不溶性タウに対する7G6の効果を、同側(注射側)及び対側の両方の皮質及び海馬において別個に検討した。
図30A〜30Dに示されるように、7G6は、対照IgGと比較して、対側海馬においてサルコシル不溶性タウの増加を有意に抑制したが(
図30A)、他の領域において有意な効果は示さなかった(
図30B、30C、及び30D)。このことは、7G6が、このインビボモデルにおいてタウ伝播を防止し得たことを示唆する。
【0303】
[0322]実施例18:7G6−HCzu25−LCzu18トランスレーショナルバイオマーカーデータ
雄カニクイザルを、4週間週1回、腹腔内間欠投与によってビヒクル又は7G6−HCzu25−LCzu18抗体(10、30、及び100mg/kg:3匹の動物/用量)で処理した。各サルから収集された脳脊髄液(「CSF」)における、7G6−HCzu25−LCzu18抗体に結合したMTBR−タウ(MTBRを含有する全長又は短縮型タウの任意のアイソフォーム)(「結合したMTBR−タウ」)及び非結合形態(「遊離MTBR−タウ」)をプロテインAカラムによって分離し、質量分析と連動した液体クロマトグラフィー(LC/MS)によって分析した。ニードルカラム(3μm C18粒子、150mm長、100μm内径)を有する、オービトラップフュージョン(Orbitrap Fusion)(商標)Lumos(商標)トライブリッド(Tribrid)(商標)質量分析計と連動したアルティメット(UltiMate)(商標)3000 Nano LCシステム(Thermo Fisher Scientific、San Jose、CA)を用いて、LC/MS分析を実施した。2000Vのスプレー電圧を金属製T字コネクターを通して適用した。流速は500nL/分であった。移動相は、(A)4%アセトニトリル中0.5%酢酸、及び(B)80%アセトニトリル中0.5%酢酸からなり、1%〜1%Bを5分間、1%〜37%Bを15分間、37%〜68%Bを5分間、68%〜99%Bを1分間、及び99%〜99%Bを4分間という多段階線形勾配を採用して分析物を溶出し、次いで初回条件1%Bによって平衡化した。7G6−HCzu25−LCzu18抗体エピトープを含有する特異的ペプチドを、MTBR−タウの代理としてLC/MSによって測定した。MTBR−タウの量は、指定されたペプチド(軽)と、その内部標準(重)であるアイソトープ標識されたペプチドとのクロマトグラフピーク面積比として表現された。
【0304】
[0323]
図31Aに示されるように、CSFにおける結合したMTBR−タウの量は、7G6−HCzu25−LCzu18抗体の処理により用量依存的様式で増加したが、一方でサルCSFにおける遊離MTBR−タウの量は、また用量依存的に減少した(
図31B)。このことは、サルCSFにおける7G6−HCzu25−LCzu18抗体のインビボ標的関与を示唆する。
【0305】
[0324]7G6−HCzu25−LCzu18抗体を、10、100、500、1000、又は2000ng/mLでヒトCSFにもスパイクした。次いで、7G6−HCzu25−LCzu18によって結合されたMTBR−タウを、上で記載されるのと同じ手段で、質量分析と連動した液体クロマトグラフィー(LC/MS)によってアッセイした。
図32に示されるように、ヒトCSFにおける結合したMTBR−タウの量は、7G6−HCzu25−LCzu18抗体の処理によって用量依存的に増加した。このデータも、ヒトCSFにおけるMTBR−タウに対する7G6−HCzu25−LCzu18抗体の標的関与を示す。
【0306】
[0325]実施例19:CD32A過剰発現CHO細胞におけるタウ取り込みの測定
標識されたタウ単量体及びフィブリルの調製。野生型組み換え全長ヒト2N4Rタウ凝集体を、実施例17におけるP301Sタンパク質に関して記載される単量体から調製した。標識化の前に、凝集体を超音波処理して、アッセイに用いられるフィブリルを作出した。タウフィブリル及び単量体の両方を、2つの形態のタンパク質間でわずかな違いを有して、メーカーの取扱説明書に従ってDyLight(商標)488 NHS−エステルキット(ThermoFisherScientific、カタログ#46403)を用いて蛍光標識した:150μLのタウ単量体(100μM)を100μLのDyLight NHSエステル溶液と混合し、一方で300μLのタウー−441フィブリル(587μg/mL)を66μLのDyLight NHSエステル溶液と混合した。標識化を室温で1時間実施した。125μLの標識されたタウ単量体又は122μLの標識されたフィブリルを用いて、コンジュゲートしていない過剰な色素を、メーカーのプロトコールに従ってPierce(商標)色素除去カラム(ThermoFisherScientific、カタログ#22858、ロット#SL260099)で除去した。標識されたタウ単量体及びフィブリルの最終濃度を、ビシンコニン酸(BCA)アッセイによって測定し、−80℃で保管した。
【0307】
[0326]細胞に基づくアッセイ。CD32a(FcガンマRIIA)を安定に発現する凍結されたCHO細胞を37℃の水槽で迅速に融解し、CHO培地(10%胎仔ウシ血清、L−グルタミン、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、及びペニシリン/ストレプトマイシンを有するRPMI 1640培地)に入れた。細胞を96ウェルアッセイプレート(Costar、カタログ番号3603)に1×10
4個細胞/ウェル(100μL/ウェル)で播種し、5%CO
2大気中37℃で24時間インキュベートした。標識されたタウ単量体及びフィブリルを氷上で融解し、アッセイバッファー(RPMI 1640培地)(GIBCO、カタログ番号21875−034)中にそれぞれ1.5μg/mL又は0.5μg/mLの濃度に希釈した。次いで、60μLの総容量で、7G6−HCzu25−LCzu18抗体(最終濃度:0.3又は3μg/mL)、ヒトIgG1アイソタイプ対照(BioXcell、カタログ番号BE0297)(最終濃度:3μg/mL)、又はビヒクル(150mM NaClを含有する25mMリン酸ナトリウムバッファー、pH6.5)をタンパク質のいずれかの形態に添加し、光から保護して室温で1時間インキュベートした。CHO培地をプレートから除去し、90μlのアッセイバッファー、又はこれもまたアッセイバッファー中100μg/mLに希釈されたポリクローナル抗体Fc受容体結合阻害剤(ThermoFisher Scientific、カタログ番号16−9161−71)で細胞を前処理した。次いで、細胞を5%CO
2大気中37℃で30分間インキュベートした。次に、関連するウェルは、抗体の有り又は無しで、10μLの標識されたタウ単量体又はタウフィブリル混合物を受け、プレートを再度5%CO
2大気中37℃でさらに60分間インキュベートした。各処理を五つ組ウェルで実施した。6つの独立した実験をタウ単量体取り込みアッセイに関して実施し、5つの独立した実験を完了してタウフィブリル取り込みを測定した。
【0308】
[0327]細胞の固定及び染色。最後のインキュベーション期間の後、細胞を4%パラホルムアルデヒド中にて室温で30分間固定した。次いで、各ウェルを100μLの水で洗浄し、70μLのHoechst染色バッファー(Triton X−100溶液(最終濃度:0.2%)及びHoechst溶液(最終濃度:0.02%))によって置き換えた。プレートにカバーをし、光から保護しながら室温で30分間インキュベートした。次いで、染色バッファーを除去し、各ウェルを100μLの水で2回を上回る回数洗浄した。
【0309】
[0328]細胞イメージング。各ウェルの蛍光画像をセロミクス(Cellomics)ハイコンテントイメージングシステム(ThermoFisherScientific)を用いて獲得した。各ウェルにおける標識されたタウの総強度及びHoechst陽性細胞の数を記録し、Thermo Scientific HCS Studio(ThermoFisherScientific)ソフトウェアを用いて分析した。
【0310】
[0329]データ分析。細胞あたりのタウシグナルの総強度の平均を測定し、タウ取り込み効果を、TIBCOスポットファイアソフトウェアプログラムにおいて以下の式を用いて算出した。
タウ取り込み効果(対照についての%)=T
1/C
1×100
式中、T
1:抗体で処理されたサンプルにおける細胞あたりのDyLight488 NHSコンジュゲートタウシグナルの総強度、及び
C
1:7G6−HCzu25−LCzu18(30μg/mL)で処理されたサンプルにおける細胞あたりのDyLight488 NHSコンジュゲートタウシグナルの総強度。
【0311】
[0330]統計分析。データは、平均±SEMとして表現されている。統計分析は、GraphPad Prismバージョン7.02(GraphPad Software)において一元配置ANOVA検定を用いて実施された。
****p<0.0001、
**p<0.01、
*p<0.05。
【0312】
[0331]
図33A及び33Bは、CD32Aを過剰発現するCHO細胞における、それぞれタウ単量体又はフィブリルの取り込みの効力を示している。7G6−HCzu25−LCzu18抗体(3μg/mL)は、ヒトIgG1対照(3μg/mL)と比較して、タウ単量体取り込みを有意に増加させた(
図33A)。同じように、7G6−HCzu25−LCzu18抗体(0.3及び3μg/mL)は、ヒトIgG1対照(3μg/mL)と比較して、タウフィブリル取り込みも有意に増加させた(
図33B)。両方の場合において、FcR阻害剤処理は、この細胞アッセイシステムにおいて、7G6−HCzu25−LCzu18抗体により誘導されたタウ取り込みの効果を有意に遮断した。
【0313】
[関連出願の相互参照]
[0001]本出願は、2017年10月16日に出願された米国特許仮出願第62/572,910号;2017年10月25日に出願された米国特許仮出願第62/577,011号;及び2018年7月12日に出願された米国特許仮出願第62/697,034号の利益を主張するものである。これらの出願のそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0314】
[配列表]
[0002]本出願は、916,053バイトのサイズを有する、2018年9月17日に作成された、「104018_001025_SL.txt」と名付けられたテキストファイルとして電子的に提出された配列表を含む。配列表は、参照により本明細書に組み入れられる。