特許第6851572号(P6851572)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6851572JAKキナーゼ阻害剤の硫酸水素塩の結晶形およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851572
(24)【登録日】2021年3月12日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】JAKキナーゼ阻害剤の硫酸水素塩の結晶形およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20210322BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20210322BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20210322BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20210322BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20210322BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20210322BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20210322BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20210322BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20210322BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   C07D487/04 140
   C07D487/04CSP
   A61K31/519
   A61K47/12
   A61K47/26
   A61K47/32
   A61K47/36
   A61K47/38
   A61P19/02
   A61P29/00 101
   A61P43/00 111
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-518183(P2017-518183)
(86)(22)【出願日】2015年10月9日
(65)【公表番号】特表2017-532327(P2017-532327A)
(43)【公表日】2017年11月2日
(86)【国際出願番号】CN2015091527
(87)【国際公開番号】WO2016070697
(87)【国際公開日】20160512
【審査請求日】2018年10月5日
【審判番号】不服2019-15209(P2019-15209/J1)
【審判請求日】2019年11月13日
(31)【優先権主張番号】201410617808.4
(32)【優先日】2014年11月5日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510166892
【氏名又は名称】ジエンス ヘンルイ メデイシンカンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU HENGRUI MEDICINE CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100153394
【弁理士】
【氏名又は名称】謝 卓峰
(72)【発明者】
【氏名】スン、ピアオヤン
(72)【発明者】
【氏名】ウ、グアイリ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、チュエンリアン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ヨンジアン
(72)【発明者】
【氏名】シェン、リンジア
【合議体】
【審判長】 大熊 幸治
【審判官】 井上 千弥子
【審判官】 関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/091539(WO,A1)
【文献】 芦澤一英,塩・結晶形の最適化と結晶化技術,Pharm Tech Japan,2002年,Vol.18, No.10,pp.81−96
【文献】 プロセス化学 第2版 医薬品合成から製造まで,丸善出版株式会社,2014年 3月30日,p.405−413,420−429,446−451
【文献】 C.G.WERMUTH編,「最新 創薬化学 下巻」,株式会社 テクノミック,1999年,pp.347−365
【文献】 平山令明,有機化合物結晶作製ハンドブック−原理とノウハウ−,2008年7月25日,丸善株式会社,p.17−23,37−40,45−51,57−65
【文献】 杉本功、高橋嘉輝,溶媒和物、非晶質固体と医薬品製剤,紛体工学会誌,1985年、Vol.22,No.2,p.85−97
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAPlus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶が、Cu-Ka線を用いて得られ、2θ角と面間隔で表して、8.96 (9.87), 11.80 (7.50), 13.12 (6.74), 13.53 (6.54), 13.89 (6.37), 14.42 (6.14), 14.98 (5.91), 16.52 (5.36), 18.20 (4.87), 18.75 (4.73), 19.15 (4.63), 19.72 (4.50), 20.82 (4.26), 22.05 (4.03), 22.52 (3.95), 22.92 (3.88), 23.58 (3.77) および27.04 (3.30) に特徴的なピークがある、X線粉末回折スペクトルを有することを特徴とする、(3aR,5s,6aS)-N-(3-メトキシル-1,2,4-チアジアゾール-5-イル)-5-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロール-2(1H)-ホルムアミド硫酸水素塩のII型結晶。
【請求項2】
結晶のD S Cスペクトルは218℃に融解吸熱ピークを示すことを特徴とする、請求項1に記載の(3aR,5s,6aS)-N-(3-メトキシル-1,2,4-チアジアゾール-5-イル)-5-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロール-2(1H)-ホルムアミド硫酸水素塩のII型結晶。
【請求項3】
以下:
1)いずれかの結晶形またはアモルファス形の(3aR,5s,6aS)-N-(3-メトキシル-1,2,4-チアジアゾール-5-イル)-5-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロール-2(1H)-ホルムアミドを適量の有機溶媒に溶解し、次いで濃硫酸を滴下し、結晶を沈殿させ、または逆溶剤を添加し、結晶を沈殿させ;またはいずれかの結晶形またはアモルファス形の(3aR,5s,6aS)-N-(3-メトキシル-1,2,4-チアジアゾール-5-イル)-5-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロール-2(1H)-ホルムアミド硫酸水素塩の固体物を加熱下で適量の有機溶媒に溶解し、次いで溶液を冷却して結晶を沈殿させ、ここで有機溶媒は3つ以下の炭素原子を有するアルコール、ケトン、エステル、または前記1つ以上の溶媒の混合溶媒および3つ以下の炭素原子を有するハロゲン化炭化水素から選択され;
2)該結晶をろ過し、次いでそれを洗浄して乾燥する
のステップを含む、請求項1に記載の(3aR,5s,6aS)-N-(3-メトキシル-1,2,4-チアジアゾール-5-イル)-5-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロール-2(1H)-ホルムアミド硫酸水素塩のII型結晶の製造方法。
【請求項4】
以下:
1)いずれかの結晶形またはアモルファス形の(3aR,5s,6aS)-N-(3-メトキシル-1,2,4-チアジアゾール-5-イル)-5-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロール-2(1H)-ホルムアミドを適量の有機溶媒に溶解し、次いで濃硫酸を滴下し、結晶を沈殿させ、または逆溶剤を添加し、結晶を沈殿させ;またはいずれかの結晶形またはアモルファス形の(3aR,5s,6aS)-N-(3-メトキシル-1,2,4-チアジアゾール-5-イル)-5-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロール-2(1H)-ホルムアミド硫酸水素塩の固体物を加熱下で適量の有機溶媒に溶解し、次いで溶液を冷却して結晶を沈殿させ、ここで有機溶媒はメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチル、ジクロロメタン/メタノール、ジクロロメタン/メタノール/エタノール、ジクロロメタン/メタノール/イソプロパノール、ジクロロメタン/メタノール/酢酸エチル、またはジクロロメタン/メタノール/アセトンであり;
2)該結晶をろ過し、次いでそれを洗浄して乾燥する
のステップを含む、請求項1に記載の(3aR,5s,6aS)-N-(3-メトキシル-1,2,4-チアジアゾール-5-イル)-5-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロール-2(1H)-ホルムアミド硫酸水素塩のII型結晶の製造方法
【請求項5】
ステップ1)における有機溶媒がメタノール、またはジクロロメタン/メタノール/エタノールであることを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
ジクロロメタン/メタノール/エタノールの体積比が12:3:10であることを特徴とする、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の(3aR,5s,6aS)-N-(3-メトキシル-1,2,4-チアジアゾール-5-イル)-5-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロール-2(1H)-ホルムアミド硫酸水素塩のII型結晶および薬学的に許容される少なくとも1つの担体を含有する医薬組成物。
【請求項8】
(3aR,5s,6aS)-N-(3-メトキシル-1,2,4-チアジアゾール-5-イル)-5-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロール-2(1H)-ホルムアミド硫酸水素塩のII型結晶の含有量が0.5mg〜200mgであることを特徴とする、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
薬学的に許容される担体が乳糖、マンニトール、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、ナトリウムカルボキシメチルデンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドンおよびステアリン酸マグネシウムの少なくとも1つから選択されることを特徴とする、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
JAK関連疾患の治療のための薬剤の製造における請求項1に記載のII型結晶または請求項7〜9のいずれに記載の医薬組成物の使用。
【請求項11】
リウマチ性関節炎および関節リウマチの治療のための薬剤の製造における請求項1に記載のII型結晶または請求項7〜9のいずれに記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(3aR,5s,6aS)-N-(3-メトキシル-1,2,4-チアジアゾール-5-イル)-5-(メチル (7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロール-2(1H)-ホルムアミド硫酸水素塩のII型結晶およびその製造方法および用途に関する。本発明の方法に従って製造された式(I)の化合物は関節炎の治療に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
関節炎は世界中で最も一般的な慢性疾患であり、関節炎には多くの原因があり、関節損傷の原因も異なる。現在、トファシチニブ(CP-690550)がPfizer Inc.によって開発された新しい経口のJAK(ヤヌスキナーゼ)経路阻害剤であり、トファシチニブは関節リウマチ治療のために開発された画期的医薬品である。トファシチニブの構造に基づいて、in vitroとin vivoで活性で、高い吸収性のある一連のJAK阻害剤化合物が開発された(特許文献1参照)。特許文献1に開示された化合物がスクリーニングされ、塩に製造され、式(I)の(3aR,5s,6aS)-N-(3-メトキシル-1,2,4-チアジアゾール-5-イル)-5-(メチル (7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロール-2(1H)-ホルムアミド硫酸水素塩が得られた。その製造方法が特許文献2(出願人によって前もって出願された出願)に開示された。
【化1】
【0003】
周知のように、薬剤的に活性な成分の結晶構造は、しばしば薬剤の化学的安定性に影響を与える。異なる結晶化条件と貯蔵条件は化合物の結晶構造に変化をもたらして、時には結晶形の他の型の生成を伴う。式(I)の化合物はメタノールに溶解し、次いで溶媒の一部が蒸発し、I型結晶と呼ばれる結晶が沈殿した(特許文献3参照)。驚いたことに我々はその後の研究において、この化合物が別の結晶形も有することを発見した。当該塩が多溶媒系において還流し、結晶変換した際に、または様々な溶媒中で再結晶した際に、ここでII型結晶と定義された別の結晶が得られた。結晶形への影響要因の検討および特別な安定性試験から、II型結晶は結晶安定性が良好であり、最も容易に得られる安定な結晶形であることが分かった。その製造方法は制御でき、かつ再現できるため、工業的生産にはより適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2013091539
【特許文献2】PCT特許出願番号 PCT/CN2014/076794
【特許文献3】中国特許出願番号 201410529863.8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、JAK阻害剤としての式(I)の化合物の硫酸水素塩の安定な結晶形およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者はX線回折および示差走査熱量(DSC)測定により種々の結晶化条件下で得られた一連の式(I)の化合物の結晶生成物を試験した。式(I)の化合物の安定な結晶形(II型結晶と呼ぶ)は本発明の結晶化条件下で得られることが分かった。本願の式(I)の化合物のII型結晶のDSCスペクトルは約218℃に融解吸熱ピークを示す。Cu-Ka線を用いて得られ、2θ角と面間隔(d値)で表されるX線粉末回折スペクトルを図1に示すが、8.96 (9.87), 11.80 (7.50), 13.12 (6.74), 13.53 (6.54), 13.89 (6.37), 14.42 (6.14), 14.98 (5.91), 16.52 (5.36), 18.20 (4.87), 18.75 (4.73), 19.15 (4.63), 19.72 (4.50), 20.82 (4.26), 22.05 (4.03), 22.52 (3.95), 22.92 (3.88), 23.58 (3.77)および27.04 (3.30)に特徴的なピークがある。
【0007】
本発明のII型結晶の製造方法において、出発物質として用いる式(I)の化合物の存在形態は特に限定されず、いかなる結晶形またはアモルファス固形物も用いることができる。本発明の式(I)の化合物のII型結晶の製造方法は:再結晶溶媒として幾つかの低級有機溶媒、好ましくは再結晶溶媒として使用できる炭素原子の少ないかつ高い揮発性を有する極性有機溶媒、例えば、アルコール、ケトン、エステル、ハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物、より好ましくはメタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、アセトン、ジクロロメタンまたはこれらの混合物を用いることを含む。当該再結晶溶媒は単一の溶媒でもよく、前記の溶媒を含む混合溶媒でもよい。
【0008】
具体的には、本発明は、以下:
(1)(3aR,5s,6aS)-N-(3-メトキシル-1,2,4-チアジアゾール-5-イル)-5-(メチル (7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロール-2(1H)-ホルムアミドを有機溶媒に溶解し、次いで濃硫酸を滴下し、溶液をろ過して結晶を沈殿させる;または式(I)の化合物の固形物を加熱下に適量の有機溶媒に溶解し、次いで溶液を冷却して結晶を沈殿させる;
(2)当該結晶をろ過し、次いでそれを洗浄して乾燥させる
のステップを含む式(I)の化合物のII型結晶の製造方法を提供する。
【0009】
本発明の好ましい実施態様において、ステップ(1)の有機溶媒は3つ以下の炭素原子を有するアルコール、ケトン、エステル、または前記1つ以上の溶媒から成る混合溶媒および3つ以下の炭素原子を有するハロゲン化炭化水素から任意に選択される。さらに好ましくは、該有機溶媒はメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチルまたはジクロロメタン/メタノール、ジクロロメタン/メタノール/エタノール、ジクロロメタン/メタノール/イソプロパノール、ジクロロメタン/メタノール/酢酸エチル、ジクロロメタン/メタノール/アセトンのような混合溶媒系から選択される。
最も好ましくは、当該単一溶媒はメタノールである。
【0010】
本発明のもう1つの好ましい実施態様において、該混合溶媒はジクロロメタン/メタノール/エタノールであり、3者の比率は特に限定されない。本発明の好ましい実施態様において、該3者の比率は12:3:10である。
【0011】
再結晶の方法は特に限定されず、通常の再結晶の操作法を用いて行うことができる。例えば、如何なる形の式(I)の化合物を加熱下に有機溶媒に溶解し、次いで溶液をゆっくり冷却し、攪拌して結晶を沈殿させる。結晶化の完結後、得られた生成物をろ過し、乾燥して所望の結晶を得る。ろ過によって得られた結晶は通常加熱温度約30〜100℃、好ましくは40~60℃で減圧真空中で乾燥して再結晶溶媒を除去する。
【0012】
得られた式(I)の化合物の結晶形はDSCおよびX線回折スペクトルにより特定する。一方、得られた結晶の残留溶媒も測定する。
【0013】
本発明の方法によって製造した式(I)の化合物のII型結晶は残留溶媒を含まないか、または比較的低濃度の残留溶媒のみ含んでおり、これは薬剤製品の残留溶媒の限度に関する国の薬局方の規定に適合している。従って、本発明の結晶は薬剤的に活性な成分として適切に用いることができる。
【0014】
高温および高湿の条件における試験の結果、本発明の方法によって製造した式(I)の化合物のII型結晶の安定性はそのアモルファス試料より有意に良好であることが示された。また、II型結晶は粉砕、加圧および加熱の条件においても良好な安定性を有し、医薬品の生産、輸送および貯蔵の規定に適合している。II型結晶の製造方法は制御でき、かつ再現できるため、工業的生産に適している。
【0015】
本発明は、さらに式(I)の化合物のII型結晶および少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物を提供する。薬学的に許容される担体は、乳糖、マンニトール、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、ナトリウムカルボキシメチルデンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドンおよびステアリン酸マグネシウムの少なくとも1つから選択される。本発明の医薬組成物におけるII型結晶の含有量は0.5mg〜200mgである。
【0016】
本発明は、さらにJAK関連疾患、好ましくはリウマチ性関節炎や関節リウマチの治療のための薬剤の製造における本発明の式(I)の化合物のII型結晶または医薬組成物の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】式(I)の化合物のII型結晶のX線粉末回折スペクトルを示す(図において記号SHR0302で示した)。
図2】式(I)の化合物のII型結晶のDSCスペクトルを示す。
図3】式(I)の化合物のアモルファス固形物のX線粉末回折スペクトルを示す。
図4】式(I)の化合物のアモルファス固形物のDSCスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本発明を以下の実施例により詳細に説明するが、本発明の実施例は発明の技術的解決を記載することのみを意図するものであって、本発明の範囲を限定すると考えてはならない。
【0019】
実験で用いた試験装置
1.DSCスペクトル
装置タイプ:Mettler Toledo DSC 1 Staree System
パージガス:窒素
加熱速度:10.0℃/分
温度範囲:40-300℃
2.X線回折スペクトル
装置タイプ:D/Max-RA日本理学X線粉末回折計
光線:単色Cu- Ka線 (λ=1.5418Å)
スキャンモード:θ/2θ、角度範囲:2-40°
電圧:40KV 電流:40mA
【実施例1】
【0020】
50mlの三角フラスコに(3aR,5s,6aS)-N-(3-メトキシル-1,2,4-チアジアゾール-5-イル)-5-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロール-2(1H)-ホルムアミド1.0g(2.4mmol)を入れた後、ジクロロメタン12mlおよび無水メタノール3mlを添加した。この反応混合物を室温で撹拌し、次いで濃硫酸0.25g(2.5mmol)を滴下した。この懸濁液が透明になった後、不溶物をろ過で除去した。ろ液を6時間撹拌した後、沈殿する固形物はなかった。イソプロパノール10mlを加えてから白色の固形物が大量に沈殿した。この反応混合物をさらに18時間撹拌し、ろ過して乾燥し、白色固体1.138gを得た。収率:92.1%。この結晶試料のX線回折スペクトルを図1に示すが、8.96 (9.87), 11.80 (7.50), 13.12 (6.74), 13.53 (6.54), 13.89 (6.37), 14.42 (6.14), 14.98 (5.91), 16.52 (5.36), 18.20 (4.87), 18.75 (4.73), 19.15 (4.63), 19.72 (4.50), 20.82 (4.26), 22.05 (4.03), 22.52 (3.95), 22.92 (3.88), 23.58 (3.77) および27.04 (3.30) に特徴的なピークがある。そのDSCスペクトルを図2示すが、217.24°Cに融解吸熱ピークがある。該結晶形をII型結晶と定義した。
【実施例2】
【0021】
50mlの三角フラスコに(3aR,5s,6aS)-N-(3-メトキシル-1,2,4-チアジアゾール-5-イル)-5-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロール-2(1H)-ホルムアミド1.0g(2.4mmol)を入れた後、ジクロロメタン12mlおよび無水メタノール3mlを添加した。この反応混合物を室温で撹拌し、次いで濃硫酸0.25g(2.5mmol)を滴下した。この懸濁液が透明になった後、不溶物をろ過で除去した。ろ液を乾固まで濃縮し、式(I)の化合物のアモルファス型を得た。該固形試料のX線回折スペクトルを図3に示すが、それには結晶の特徴的な吸収ピークはない。該固形試料のDSCスペクトルを図4示す。
【実施例3】
【0022】
50mlの三角フラスコに(3aR,5s,6aS)-N-(3-メトキシル-1,2,4-チアジアゾール-5-イル)-5-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロール-2(1H)-ホルムアミド1.0g(2.4mmol)を入れた後、ジクロロメタン12mlおよび無水メタノール3mlを添加した。この反応混合物を室温で撹拌し、次いで濃硫酸0.25g(2.5mmol)を滴下した。この懸濁液が透明になった後、不溶物をろ過で除去した。ろ液を24時間撹拌し、結晶を沈殿させ、ろ過して乾燥し、白色固体1.15gを得た。収率:93.2%。そのX線回折スペクトルおよびDSCスペクトルを研究および比較した結果、該生成物をII型結晶と同定した。
【実施例4】
【0023】
50mlの三角フラスコに(3aR,5s,6aS)-N-(3-メトキシル-1,2,4-チアジアゾール-5-イル)-5-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロール-2(1H)-ホルムアミド1.0g(2.4mmol)を入れた後、ジクロロメタン12mlおよび無水メタノール3mlを添加した。この反応混合物を室温で撹拌し、次いで濃硫酸0.25g(2.5mmol)を滴下した。この懸濁液が透明になった後、不溶物をろ過で除去した。ろ液を6時間撹拌した後、沈殿する固形物はなかった。エタノール10mlを加えてから白色の固形物が大量に沈殿した。この反応混合物をさらに18時間撹拌し、ろ過して乾燥し、白色固体1.17gを得た。収率:94.9%。そのX線回折スペクトルおよびDSCスペクトルを研究および比較した結果、該生成物をII型結晶と同定した。
【実施例5】
【0024】
50mlの三角フラスコに(3aR,5s,6aS)-N-(3-メトキシル-1,2,4-チアジアゾール-5-イル)-5-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロール-2(1H)-ホルムアミド1.0g(2.4mmol)を入れた後、ジクロロメタン12mlおよび無水メタノール3mlを添加した。この反応混合物を室温で撹拌し、次いで濃硫酸0.25g(2.5mmol)を滴下した。この懸濁液が透明になった後、不溶物をろ過で除去した。ろ液を6時間撹拌した後、沈殿する固形物はなかった。酢酸エチル5mlを加えてから白色の固形物が大量に沈殿した。この反応混合物をさらに18時間撹拌し、ろ過して乾燥し、白色固体1.16gを得た。収率:94.2%。そのX線回折スペクトルおよびDSCスペクトルを研究および比較した結果、該生成物をII型結晶と同定した。
【実施例6】
【0025】
50mlの三角フラスコに(3aR,5s,6aS)-N-(3-メトキシル-1,2,4-チアジアゾール-5-イル)-5-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロール-2(1H)-ホルムアミド1.0g(2.4mmol)を入れた後、ジクロロメタン12mlおよび無水メタノール3mlを添加した。この反応混合物を室温で撹拌し、次いで濃硫酸0.25g(2.5mmol)を滴下した。この懸濁液が透明になった後、不溶物をろ過で除去した。ろ液を6時間撹拌した後、沈殿する固形物はなかった。アセトン5mlを加えてから白色の固形物が大量に沈殿した。この反応混合物をさらに18時間撹拌し、ろ過して乾燥し、白色固体1.14gを得た。収率:92.3%。そのX線回折スペクトルおよびDSCスペクトルを研究および比較した結果、該生成物をII型結晶と同定した。
【実施例7】
【0026】
50mlの三角フラスコに(3aR,5s,6aS)-N-(3-メトキシル-1,2,4-チアジアゾール-5-イル)-5-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロール-2(1H)-ホルムアミド1.0g(2.4mmol)を入れた後、ジクロロメタン12mlおよび無水メタノール3mlを添加した。この反応混合物を室温で撹拌し、次いで濃硫酸0.25g(2.5mmol)を滴下した。この懸濁液が透明になった後、不溶物をろ過で除去した。ろ液を乾固まで濃縮し、式(I)の化合物のアモルファス型を得た。得られた試料をメタノール5mlに添加し、この混合物を還流まで20分間加熱し、冷却し、2時間撹拌して結晶変換を行った。次いでそれをろ過して乾燥し、白色固体942mgを得た。収率:76.2%。そのX線回折スペクトルおよびDSCスペクトルを研究および比較した結果、該生成物をII型結晶と同定した。
【実施例8】
【0027】
実施例2の実験方法に従い、(3aR,5s,6aS)-N-(3-メトキシル-1,2,4-チアジアゾール-5-イル)-5-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロール-2(1H)-ホルムアミド1.0g(2.4mmol)から式(I)の化合物のアモルファス型を製造した。得られた試料をエタノール5mlに添加した後、溶液が透明になるようにこの混合物を還流まで加熱した。この溶液をさらに20分間還流した後、冷却し、2時間撹拌して結晶変換を行った。次いでそれをろ過して乾燥し、白色固体1.08gを得た。収率:82.3%。そのX線回折スペクトルおよびDSCスペクトルを研究および比較した結果、該生成物をII型結晶と同定した。
【実施例9】
【0028】
実施例2の実験方法に従い、(3aR,5s,6aS)-N-(3-メトキシル-1,2,4-チアジアゾール-5-イル)-5-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロール-2(1H)-ホルムアミド1.0g(2.4mmol)から式(I)の化合物のアモルファス型を製造した。得られた試料をイソプロパノール5mlに添加した後、溶液が透明になるようにこの混合物を還流まで加熱した。この溶液をさらに20分間還流した後、冷却し、2時間撹拌して結晶変換を行った。次いでそれをろ過して乾燥し、白色固体1.05gを得た。収率:85.0%。そのX線回折スペクトルおよびDSCスペクトルを研究および比較した結果、該生成物をII型結晶と同定した。
【実施例10】
【0029】
実施例2の実験方法に従い、(3aR,5s,6aS)-N-(3-メトキシル-1,2,4-チアジアゾール-5-イル)-5-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロール-2(1H)-ホルムアミド1.0g(2.4mmol)から式(I)の化合物のアモルファス型を製造した。得られた試料を酢酸エチル5mlに添加した後、溶液が透明になるようにこの混合物を還流まで加熱した。この溶液をさらに20分間還流した後、冷却し、2時間撹拌して結晶変換を行った。次いでそれをろ過して乾燥し、白色固体1.11gを得た。収率:90.1%。そのX線回折スペクトルおよびDSCスペクトルを研究および比較した結果、該生成物をII型結晶と同定した。
【実施例11】
【0030】
実施例2の実験方法に従い、(3aR,5s,6aS)-N-(3-メトキシル-1,2,4-チアジアゾール-5-イル)-5-(メチル(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロール-2(1H)-ホルムアミド1.0g(2.4mmol)から式(I)の化合物のアモルファス型を製造した。得られた試料をアセトン5mlに添加した後、溶液が透明になるようにこの混合物を還流まで加熱した。この溶液をさらに20分間還流した後、冷却し、2時間撹拌して結晶変換を行った。次いでそれをろ過して乾燥し、白色固体1.13gを得た。収率:91.5%。そのX線回折スペクトルおよびDSCスペクトルを研究および比較した結果、該生成物をII型結晶と同定した。
【実施例12】
【0031】
特許文献3の方法に従って製造した式(I)の化合物(II型結晶)1.0g(2.4mmol)およびメタノール100mlを250mlの1口フラスコに入れ、溶液が透明になるように還流まで加熱した。次いでこの溶液をさらに10分間還流し、冷却した。減圧下で蒸発し、メタノールを約90ml除去した後、室温で混合物を4時間撹拌し、ろ過して乾燥し、白色固体842mgを得た。収率:84.2%。そのX線回折スペクトルおよびDSCスペクトルを研究および比較した結果、該生成物をII型結晶と同定した。
【実施例13】
【0032】
実施例1で製造したII型結晶および実施例2で製造したアモルファス型の試料を空気中で平面に広げ、照明(4500 Lux)、加熱(40°C、60°C)および加湿(RH 75%、RH 90%)の条件における安定性を調べた。5日および10日の後に採取した試料を試験した。HPLCを用いて測定した純度を表1に示す。
【表1】
式(I)の化合物のII型結晶とアモルファス試料を空気中で平面に広げ、照明、加熱、および加湿の条件下で安定性を試験した結果、高湿度は2つの試料に大きく影響を与えないが、照明および高温の条件下ではII型結晶の安定性がアモルファス試料より有意に良好であることが示された。
【実施例14】
【0033】
実施例1の方法に従って製造した式(I)の化合物のII型結晶を粉砕し、加熱して圧搾した。当該結晶形は安定である結果が示された。その詳細な実験データは表2に示す。
【表2】
図1
図2
図3
図4