(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記樹脂モールド部は、前記巻回部の軸方向の端部を覆い、中間部を覆うことなく外部に露出させるように形成されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のリアクトル。
【発明を実施するための形態】
【0009】
・本願発明の実施形態の説明
最初に本願発明の実施態様を列記して説明する。
【0010】
<1>実施形態に係るリアクトルは、
巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内部に配置される内側コア部、及び前記巻回部の外部に配置される外側コア部を有する磁性コアと、を備えるリアクトルであって、
前記外側コア部の外周面の少なくとも一部を覆う樹脂モールド部を備え、
前記外側コア部は、
軟磁性粉末と樹脂とを含む複合材料で構成される樹脂コア部と、
前記樹脂コア部を貫通する第一貫通孔と、を備え、
前記第一貫通孔の一端と他端はそれぞれ、前記外側コア部における前記コイルに対向するコイル対向面以外の面に開口し、かつ前記樹脂モールド部は前記第一貫通孔の内部に入り込んでいる。
【0011】
外側コア部のコイル対向面以外の面に開口する第一貫通孔に樹脂モールド部を入り込ませて、第一貫通孔に入り込んだ樹脂モールド部と、外側コア部の外側で第一貫通孔の一方の開口から他方の開口に至る樹脂モールド部と、が環状に繋がることで、外側コア部と樹脂モールド部との接合を強固にできる。そのため、樹脂モールド部を必要以上に厚くすることなく、樹脂モールド部が外側コア部から剥離するといった不具合が生じることを抑制できる。そのため、リアクトルが大型化することなく、樹脂モールド部でリアクトルを強固に一体化できる。
【0012】
<2>実施形態に係るリアクトルの一形態として、
前記第一貫通孔は、その一端と他端がそれぞれ前記外側コア部の上面と下面に開口する直線状の孔である形態を挙げることができる。
【0013】
上記第一貫通孔はいわば、リアクトルの高さ方向に延びる直線状の第一貫通孔である。第一貫通孔をリアクトルの高さ方向に延びる形態とすることで、外側コア部の外周に樹脂をモールドして樹脂モールド部を形成する際、樹脂が第一貫通孔に入り込み易い。そのため、第一貫通孔の内部に余すところなく樹脂を充填できるので、樹脂モールド部によるリアクトルの一体化を強固にできる。また、直線状の第一貫通孔は、容易に形成することができ、しかもその内部への樹脂の充填性に優れる。
【0014】
<3>実施形態に係るリアクトルの一形態として、
前記内側コア部と前記外側コア部とが接合される接合面を備え、
前記内側コア部は、軟磁性粉末と樹脂とを含む複合材料で構成され、かつ前記接合面側の部分を前記巻回部の軸方向に直交する方向に貫通する第二貫通孔を備え、
前記磁性コアは、前記第一貫通孔の開口から前記第二貫通孔の開口に繋がる流路溝を備え、
前記樹脂モールド部が、前記流路溝を介して前記第二貫通孔にも入り込んでいる形態を挙げることができる。
【0015】
外側コア部を覆う樹脂モールド部が、流路溝を介して内側コア部の第二貫通孔に入り込んでいるため、接合面で接触する内側コア部と外側コア部とを強固に連結することができる。第二貫通孔は、内側コア部における磁束の方向に直交するので、ギャップとしての機能を果たす。
【0016】
<4>実施形態に係るリアクトルの一形態として、
前記樹脂モールド部は、前記巻回部の軸方向の端部を覆い、中間部を覆うことなく外部に露出させるように形成されている形態を挙げることができる。
【0017】
樹脂モールド部が巻回部に及ぶことで、外側コア部と巻回部とを樹脂モールド部を介して結合できるので、リアクトルをより強固に一体化できる。特に、本構成を<3>に示す構成と組み合わせることで、樹脂モールド部を介して、外側コア部と内側コア部と巻回部の三者を結合でき、リアクトルを更に強固に一体化できる。また、巻回部の中間部を樹脂モールド部で覆わないことで、樹脂モールド部の量を低減できる上、巻回部からの放熱性を向上させることができる。
【0018】
<5>実施形態に係るリアクトルの一形態として、
前記外側コア部は、軟磁性粉末を含む圧粉成形体と、その外周を覆う前記樹
脂コア部と、を備える形態を挙げることができる。
【0019】
比透磁率を高くし易い圧粉成形体を外側コア部に含ませることで、外側コア部の比透磁率を内側コア部の比透磁率よりも高くし易い。外側コア部の比透磁率を内側コア部の比透磁率よりも高くすることで、両コア部間における漏れ磁束を低減できる。特に、両コア部の比透磁率の差を大きくすることで、両コア部間での漏れ磁束をより確実に低減できる。上記差によっては、上記漏れ磁束をかなり低減できる。また、上記形態では、内側コア部の比透磁率が低いため、磁性コア全体の比透磁率が高くなり過ぎることを抑制できる。
【0020】
また、圧粉成形体の外周を樹脂コア部で覆うことで、外側コア部の外部への磁束の漏れを抑制できる。そのため、漏れ磁束がコイルを透過することによって生じるエネルギー損失を抑制できる。
【0021】
<6>実施形態に係るリアクトルの一形態として、
前記複合材料の比透磁率は、5以上50以下である形態を挙げることができる。
【0022】
複合材料の比透磁率を上記範囲とすることで、磁性コア全体の比透磁率が高くなり過ぎることを抑制できる。
【0023】
<7>上記<5>のリアクトルの一形態として、
前記複合材料の比透磁率は、5以上50以下、
前記圧粉成形体の比透磁率は、50以上500以下で、かつ前記複合材料の比透磁率よりも高い形態を挙げることができる。
【0024】
上記構成によれば、外側コア部の比透磁率を高めつつ、外側コア部の外部への磁束の漏れを抑制できる。
【0025】
・本願発明の実施形態の詳細
以下、本願発明のリアクトルの実施形態を図面に基づいて説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。なお、本願発明は実施形態に示される構成に限定されるわけではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内の全ての変更が含まれることを意図する。
【0026】
<実施形態1>
実施形態1では、
図1〜
図3に基づいてリアクトル1の構成を説明する。
図1に示すリアクトル1は、コイル2と磁性コア3とを組み合わせた組合体と、組合体の外周を覆う樹脂モールド部6と、を備える。このリアクトル1の特徴の一つとして、磁性コア3の一部を構成する外側コア部32に第一貫通孔32hが形成されていることを挙げることができる。以下、リアクトル1に備わる各構成を詳細に説明する。
【0027】
≪コイル≫
本実施形態のコイル2は、
図1に示すように、一対の巻回部2A,2Bと、両巻回部2A,2Bを連結する連結部2Rと、を備える。各巻回部2A,2Bは、互いに同一の巻数、同一の巻回方向で中空筒状に形成され、各軸方向が平行になるように並列されている。本例では、一本の巻線でコイル2を製造しているが、別々の巻線により作製した巻回部2A,2Bを連結することでコイル2を製造することもできる。
【0028】
ここで、コイル2を基準にしてリアクトル1における方向を規定する。まず、コイル2の巻回部2A,2Bの軸方向に沿った方向をX方向とする。そのX方向に直交し、巻回部2A,2Bの並列方向の沿った方向をY方向とする。そして、X方向とY方向の両方に直交する方向で、リアクトル1の高さ方向をZ方向とする。
【0029】
本実施形態の各巻回部2A,2Bは角筒状に形成されている。角筒状の巻回部2A,2Bとは、その端面形状が四角形状(正方形状を含む)の角を丸めた形状の巻回部のことである。もちろん、巻回部2A,2Bは円筒状に形成しても構わない。円筒状の巻回部とは、その端面形状が閉曲面形状(楕円形状や真円形状、レーストラック形状など)の巻回部のことである。
【0030】
巻回部2A,2Bを含むコイル2は、銅やアルミニウム、マグネシウム、あるいはその合金といった導電性材料からなる平角線や丸線などの導体の外周に、絶縁性材料からなる絶縁被覆を備える被覆線によって構成することができる。本実施形態では、導体が銅製の平角線(巻線)からなり、絶縁被覆がエナメル(代表的にはポリアミドイミド)からなる被覆平角線をエッジワイズ巻きにすることで、各巻回部2A,2Bを形成している。
【0031】
コイル2の両端部2a,2bは、巻回部2A,2Bから引き延ばされて、図示しない端子部材に接続される。両端部2a,2bではエナメルなどの絶縁被覆は剥がされている。この端子部材を介して、コイル2に電力供給を行なう電源などの外部装置が接続される。
【0032】
≪磁性コア≫
磁性コア3は、
図1,2に示すように、巻回部2A,2Bのそれぞれの内部に配置される内側コア部31,31と、内側コア部31,31と閉磁路を形成する外側コア部32,32と、を備える。磁性コア3は、複数の分割片を組み合わせて構成される。本例では、各内側コア部31に対応する一対の分割片と、各外側コア部32に対応する一対の分割片と、を組み合わせて磁性コア3を構成している。
【0033】
[内側コア部]
内側コア部31は、磁性コア3のうち、コイル2の巻回部2A,2Bの軸方向(X方向)に沿った部分である。本例では、
図2に示すように、磁性コア3のうち、巻回部2A,2Bの軸方向に沿った部分の両端部が巻回部2A,2Bの端面から突出している(内側コア部31の端面31eの位置を参照)。その突出する部分も内側コア部31の一部である。内側コア部31の端面31eは、外側コア部32との接合面となる。
【0034】
内側コア部31の形状は、巻回部2A(2B)の内部形状に沿った形状であれば特に限定されない。本例の内側コア部31は、略直方体状である。また、本例の内側コア部31は、非分割構造の一体物であるが、複数の分割片を組み合わせて構成することもできる。内側コア部31は、軟磁性粉末と未硬化の樹脂とを含む混合物を硬化させた複合材料の成形体で構成することもできるし、軟磁性粉末を含む
原料粉末を加圧成形してなる圧粉成形体で構成することもできる。本例の内側コア部31は、複合材料の成形体で構成されている。
【0035】
[外側コア部]
図1に示す外側コア部32は、磁性コア3のうち、巻回部2A,2Bの外部に配置される部分である。外側コア部32の形状は、一対の内側コア部31,31の端部を繋ぐ形状であれば特に限定されない。本例の外側コア部32は、略直方体状である。この外側コア部32は、コイル2の巻回部2A,2Bの端面に対向するコイル対向面32e(
図2,3)と、コイル対向面32eと反対側の外方面32oと、これらの面32e,32oを繋ぐ周面32sと、を有する。周面32sは、鉛直上方を向く上面32uと、鉛直下方を向く下面32d(
図3)と、左右の側面32wと、を備える。
図2,3に示すように、外側コア部32のコイル対向面32eと、内側コア部31の端面31eと、は接触しているか、または接着剤を介して実質的に接触している。
【0036】
外側コア部32は、軟磁性粉末と未硬化の樹脂とを含む混合物を硬化させた複合材料で構成される樹脂コア部を備える。本例では外側コア部32全体が樹脂コア部で構成されている。後述する実施形態5に示すように、外側コア部32は、樹脂コア部に加えて、圧粉成形体を含んでいても良い。複合材料の構成と圧粉成形体の構成については後述する。
【0037】
[[第一貫通孔]]
上記外側コア部32は、第一貫通孔32hを備える。第一貫通孔32hは、その一端と他端のいずれもがコイル対向面32e以外の面に開口する孔である。本例の第一貫通孔32hは、リアクトル1の高さ方向(Z方向)に延びており、その一端は外側コア部32の上面32uに開口し、他端は外側コア部32の下面32dに開口している。
【0038】
第一貫通孔32hは、
図2に示すように、二点鎖線で示す環状の主磁路の外側に配置されることが好ましい。本例のような直方体状の外側コア部32の場合、外側コア部32を上面視したときに、コイル2から離隔した角部の領域に第一貫通孔32hが配置されることが好ましい。主磁路から外れた位置に第一貫通孔32hを配置することで、外側コア部32の磁気特性に及ぼす第一貫通孔32hの影響を低減することができる。ここで、環状の主磁路とは、内側コア部31の中心軸と、外側コア部32の中心軸と、を結ぶ環状路のことである。
【0039】
第一貫通孔32hの内部には、後述する樹脂モールド部6が入り込んでいる。第一貫通孔32hの内部に樹脂モールド部6を形成するには、硬化後に樹脂モールド部6となる樹脂で外側コア部32をモールドすれば良い。外側コア部32を樹脂でモールドする際、樹脂が第一貫通孔32hに入り込み、第一貫通孔32hの内部に樹脂モールド部6が形成される。この第一貫通孔32hへの樹脂の充填性を向上させるために、第一貫通孔32hは、その軸方向に一様な内周面形状を備える直線状の孔とすることが好ましい。直線状の第一貫通孔32hは容易に形成できる点でも好ましい。
【0040】
第一貫通孔32hの軸方向に直交する内周面形状は特に限定されず、円形を含む楕円形や、多角形を含む異形とすることができる。第一貫通孔32hへの樹脂の充填性や、第一貫通孔32hの形成の容易性を考慮し、第一貫通孔32hの内周面形状は円形とすることが好ましい。上記樹脂の充填性・形成の容易性を考慮し、第一貫通孔32hの内径(円形孔の場合は直径、異形孔の場合は最大幅)は3mm以上10mm以下とすることが好ましく、更に4mm以上8mm以下とすることが好ましい。
【0041】
[[複合材料]]
内側コア部31や外側コア部32の樹脂コア部を構成する複合材料の軟磁性粉末は、鉄などの鉄族金属やその合金(Fe−Si合金、Fe−Ni合金など)などで構成される軟磁性粒子の集合体である。軟磁性粒子の表面には、リン酸塩などで構成される絶縁被覆が形成されていても良い。一方、複合材料に含まれる樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、常温硬化性樹脂、低温硬化性樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ナイロン6やナイロン66といったポリアミド(PA)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂等が挙げられる。その他、不飽和ポリエステルに炭酸カルシウムやガラス繊維が混合されたBMC(Bulk molding compound)、ミラブル型シリコーンゴム、ミラブル型ウレタンゴム等も利用できる。上述の複合材料は、軟磁性粉末及び樹脂に加えて、アルミナやシリカ等の非磁性かつ非金属粉末(フィラー)を含有すると、放熱性をより高められる。非磁性かつ非金属粉末の含有量は、0.2質量%以上20質量%以下、更に0.3質量%以上15質量%以下、0.5質量%以上10質量%以下が挙げられる。
【0042】
複合材料中の軟磁性粉末の含有量は、30体積%以上80体積%以下であることが挙げられる。飽和磁束密度や放熱性の向上の観点から、
軟磁性粉末の含有量は更に、50体積%以上、60体積%以上、70体積%以上とすることができる。製造過程での流動性の向上の観点から、
軟磁性粉末の含有量を75体積%以下とすることが好ましい。
【0043】
複合材料の成形体では、軟磁性粉末の充填率を低く調整すれば、その比透磁率を小さくし易い。例えば、複合材料の成形体の比透磁率を5以上50以下とすることが挙げられる。複合材料の比透磁率は、更に10以上45以下、15以上40以下、20以上35以下とすることができる。
【0044】
[[圧粉成形体]]
既に述べたように、磁性コア3の一部を圧粉成形体で構成することもできる。圧粉成形体を形成する原料粉末に含まれる軟磁性粉末には、複合材料で使用できるものと同じものを使用できる。原料粉末には潤滑材などが含まれていてもかまわない。圧粉成形体は、複合材料の成形体よりも軟磁性粉末の含有量を高め易く(例えば80体積%超、更に85体積%以上)、飽和磁束密度や比透磁率がより高いコア片を得易い。例えば、圧粉成形体の比透磁率を50以上500以下とすることが挙げられる。圧粉成形体の比透磁率は、更に80以上、100以上、150以上、180以上とすることができる。
【0045】
≪樹脂モールド部≫
本例の樹脂モールド部6は、コイル2と磁性コア3の組合体の外周面全体を覆うように配置され、組合体を一体化すると共に、組合体を外部環境から保護する。樹脂モールド部6は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂や、PPS樹脂、PA樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂などの熱可塑性樹脂、常温硬化性樹脂、あるいは低温硬化性樹脂を利用することができる。これらの樹脂にアルミナやシリカなどのセラミックスフィラーを含有させて、樹脂モールド部6の放熱性を向上させても良い。
【0046】
樹脂モールド部6は、組合体の外周を未硬化の樹脂でモールドすることで形成される。未硬化の樹脂は、外側コア部32の外部にモールドされる際、外側コア部32の第一貫通孔32hに入り込む。第一貫通孔32hはリアクトル1の高さ方向に延びているため、第一貫通孔32hの下端からも上端からも第一貫通孔32hの内部に樹脂が入り込み易い。この樹脂が硬化することで、第一貫通孔32hの内部に樹脂モールド部6が入り込んだ状態になる。
図3に示すように、第一貫通孔32hに入り込んだ樹脂モールド部6と、外側コア部32の外側で第一貫通孔32hの一方の開口から他方の開口に至る樹脂モールド部6と、が環状に繋がる。第一貫通孔32hに入り込んだ樹脂モールド部6がアンカーとなって外側コア部32と樹脂モールド部6とが強固に接合される。
【0047】
また、外側コア部32の外部を未硬化の樹脂でモールドする際、未硬化の樹脂の一部が、巻回部2A,2Bと内側コア部31との隙間にも入り込む。この隙間に入り込んで硬化した樹脂は、巻回部2A,2Bと内側コア部31とを接合する機能と、巻回部2A,2Bと内側コア部31との間の絶縁を確保する役割を持つ。
【0048】
樹脂モールド部6は、第一貫通孔32hへの機械的な係合によって、外側コア部32に強固に一体化されている。そのため、樹脂モールド部6の厚さを徒に厚くする必要はない。例えば、外側コア部32の外方面32oや上面32u、側面32wにおける樹脂モールド部6の厚さは、1mm以上5mm以下とすることができる。当該厚さを1mm以上とすることで、樹脂モールド部6の強度を確保し易い。より好ましい樹脂モールド部6の厚さは1.5mm以上4mm以下である。
【0049】
≪使用態様≫
本例のリアクトル1は、ハイブリッド自動車や電気自動車、燃料電池自動車といった電動車両に搭載される双方向DC−DCコンバータなどの電力変換装置の構成部材に利用することができる。本例のリアクトル1は、液体冷媒に浸漬された状態で使用することができる。液体冷媒は特に限定されないが、ハイブリッド自動車でリアクトル1を利用する場合、ATF(Automatic Transmission Fluid)などを液体冷媒として利用できる。その他、フロリナート(登録商標)などのフッ素系不活性液体、HCFC−123やHFC−134aなどのフロン系冷媒、メタノールやアルコールなどのアルコール系冷媒、アセトンなどのケトン系冷媒などを液体冷媒として利用することもできる。
【0050】
≪効果≫
本例のリアクトル1では、樹脂モールド部6が、外側コア部32の第一貫通孔32hに機械的に係合することで、外側コア部32に強固に一体化されている。そのため、樹脂モールド部6の厚さを必要以上に厚くすることなく、樹脂モールド部6の割れや剥離を抑制することができる。
【0051】
また、本例では、樹脂モールド部6が巻回部2A,2Bに及んでいるため、コイル2と磁性コア3とが樹脂モールド部6で強固に一体化される。そのため、巻回部2A,2Bと内側コア部31との隙間を小さくして、当該隙間に樹脂モールド部6の一部が入り込み難くしても、コイル2と磁性コア3とを強固に一体化できる。上記隙間を小さくできることで、リアクトル1の小型化を図ることができる。例えば、上記隙間は0.5mm以上2.0mm以下とすることができる。
【0052】
<実施形態2>
実施形態2では、外側コア部32の第一貫通孔32hに加えて、内側コア部31に第二貫通孔31hを形成したリアクトル1を
図4,5に基づいて説明する。
【0053】
図4のリアクトル1の概略上面図に示すように、本例では、内側コア部31における外側コア部32との接合面(端面31e)近傍の部分に第二貫通孔31hが形成されている。第二貫通孔31hは、巻回部2A,2Bの軸方向(X方向)に直交するリアクトル1の高さ方向(Z方向)に延びている。つまり、内側コア部31の第二貫通孔31hは、外側コア部32の第一貫通孔32hに平行に延びている。
【0054】
第二貫通孔31hは、第一貫通孔32hと同様に形成することができる。例えば、第二貫通孔31hは、その軸方向に一様な内周面形状を備える直線状の孔で、その内径が3mm以上10mm以下となった円形の内周面形状の孔とすることができる。
【0055】
第二貫通孔31hの位置は特に限定されないが、磁性コア3における主磁路の外側に配置することが好ましい。本例では、第二貫通孔31hは、X方向に平行で、第一貫通孔32hを通過する直線上に配置されている。この位置は、内側コア部31における磁束の通過を邪魔し難い場所である。本例とは異なり、内側コア部31の幅方向(Y方向)の中央に、第二貫通孔31hを形成しても良い。その場合、第二貫通孔31hをギャップとして機能させることもできる。
【0056】
本例のリアクトル1の磁性コア3には更に、第一貫通孔32hの開口から第二貫通孔31hの開口に繋がる流路溝3gが設けられている。この流路溝3gは、巻回部2A,2Bに重なる第二貫通孔31hに樹脂を導くためのものである。そのため、本例の樹脂モールド部6を形成する際、流路溝3gを介して第二貫通孔31hにも樹脂が流れ込む。その結果、第二貫通孔31hの内部にも樹脂モールド部6が入り込み、接合面で接触する内側コア部31と外側コア部32とを強固に連結することができる。ここで、本例では巻回部2A,2Bに第二貫通孔31hの約半分程度が重なるように第二貫通孔31hを設けているが、巻回部2A,2Bに第二貫通孔31hの開口の全てが覆われる位置に第二貫通孔31hを形成してもよい。
【0057】
本例の樹脂モールド部6は、巻回部2A,2Bの軸方向の端部(例えば、端部から2〜3ターン程度)を覆い、中間部を覆うことなく外部に露出させるように形成されている。
図5では巻回部2A,2Bと内側コア部31との隙間を誇張して示しているが、実際には当該隙間は非常に狭くなっており、当該隙間に樹脂が入り込み難くなっている。そのため、樹脂モールド部6は、当該隙間における第二貫通孔31hの近傍に留まり、中間部には及んでいない。外側コア部32の固定と保護を行なうという樹脂モールド部6の機能に鑑みれば、樹脂モールド部6の形成範囲は図示する程度で十分であり、樹脂の使用量を低減できる点で好ましいと言える。この構成であれば、リアクトル1を液体冷媒に浸漬して使用する場合、巻回部2A,2Bのターンの隙間から巻回部2A,2Bの内部に液体冷媒を行き渡らせることができるため、リアクトル1の放熱性を高められる。
【0058】
<実施形態3>
実施形態3では、一対の分割片3A,3Bを組み合わせてなる磁性コア3を備えるリアクトル1を
図6に基づいて説明する。
【0059】
分割片3A,3Bは同一形状を備える。そのため、磁性コア3を作製するための金型が一つで済むので、リアクトル1の生産性を向上させることができる。
【0060】
分割片3A,3Bは、一つの外側コア部32と一つの内側コア部31とが一体に繋がった概略L字型の部材である。分割片3A,3Bの内側コア部31の先端側には、実施形態2と同様の第二貫通孔31hが形成されている。また、分割片3A,3Bを組み合わせた磁性コア3において、一方の分割片3A(3B)の第一貫通孔32hと、他方の分割片3B(3A)の第二貫通孔31hと、を繋ぐ二つの流路溝3gが形成されている。
【0061】
本例の構成によれば、分割片3A,3Bを組み合わせて、外側コア部32を樹脂でモールドするだけで、両分割片3A,3Bを強固に連結することができる。
【0062】
<実施形態4>
実施形態4では、第一貫通孔32hの軸方向が実施形態1〜3とは異なるリアクトル1を
図7に基づいて説明する。
【0063】
図7に示すように、本例の第一貫通孔32hの一端と他端はそれぞれ、外側コア部32の外方面32oと側面32wとに開口している。本例の構成によっても、外側コア部32と樹脂モールド部6との密着性を向上させることができる。
【0064】
本例の第一貫通孔32hは、磁束が通り難い外側コア部32の角部の領域に形成されているため、外側コア部32の磁気特性に及ぼす第一貫通孔32hの悪影響は殆どない。
【0065】
<実施形態5>
実施形態5では、圧粉成形体を含む外側コア部32を備えたリアクトル1を
図8に基づいて説明する。
【0066】
図8の概略上面図に示すように、本例のリアクトル1の外側コア部32は、圧粉成形体321と、その外周を覆う樹脂コア部320と、を備える。第一貫通孔32hは、樹脂コア部320で構成される位置に設けられている。磁束の大半は圧粉成形体321を通るため、樹脂コア部320に第一貫通孔32hを設けたことによる外側コア部32の磁路断面積の減少は実質的な問題とならない。また、第一貫通孔32hを樹脂コア部320に設けることで、樹脂コア部320の成形と共に第一貫通孔32hの成形もできるので、リアクトル1の生産性に優れる。
【0067】
比透磁率を高くし易い圧粉成形体321を外側コア部32に含ませることで、外側コア部32の比透磁率を内側コア部31の比透磁率よりも高くし易い。外側コア部32の比透磁率を内側コア部31の比透磁率よりも高くすることで、両コア部31,32間における漏れ磁束を低減できる。特に、両コア部31,32の比透磁率の差を大きくすることで、両コア部31,32間での漏れ磁束をより確実に低減できる。上記差によっては、上記漏れ磁束をかなり低減できる。また、上記形態では、内側コア部31の比透磁率が低いため、磁性コア3全体の比透磁率が高くなり過ぎることを抑制できる。
【0068】
また、圧粉成形体321の外周を樹脂コア部320で覆うことで、外側コア部32の外部への磁束の漏れを抑制できる。そのため、漏れ磁束がコイル2を透過することによって生じるエネルギー損失を抑制できる。