特許第6851585号(P6851585)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851585
(24)【登録日】2021年3月12日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】多分岐スチレン系ポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 257/02 20060101AFI20210322BHJP
   C08F 8/42 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   C08F257/02
   C08F8/42
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-139481(P2016-139481)
(22)【出願日】2016年7月14日
(65)【公開番号】特開2018-9111(P2018-9111A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 準
(72)【発明者】
【氏名】山田 真也
(72)【発明者】
【氏名】塚原 安久
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−187804(JP,A)
【文献】 米国特許第6255424(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 257/02
C08F 297/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】
(式中、Rは、炭素数1〜5のアルキル基を、R’は、炭素数1〜5のアルキレン基を、
Pはポリスチレンからなる側鎖を、a、b、c、dは0以上の整数を示す。ただし、bとdが共に0になる場合を除く。)
で示され、側鎖以外の部分を主鎖とすることを特徴とする、シンジオタクチックポリスチレン系ポリマーを除く多分岐スチレン系ポリマー。
【請求項2】
前記Rが、メチル基であり、前記R’が、メチレン基である請求項1に記載の多分岐スチレン系ポリマー。
【請求項3】
主鎖の重量平均分子量が20,000〜500,000であり、側鎖の重量平均分子量が20,000〜500,000である請求項1または2に記載の多分岐スチレン系ポリマー。
【請求項4】
最大伸長粘度が1.0×10Pa・s以上、3.0×10Pa・s以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の多分岐スチレン系ポリマー。
【請求項5】
スチレン系ポリマーをルイス塩基の存在下、アルキルリチウムと反応させて、式(2)
【化2】
(式中、Rは、炭素数1〜5のアルキル基を、R’は、炭素数1〜5のアルキレン基を、a、b、c、dは0以上の整数を示す。ただし、bとdが共に0になる場合を除く。)
で示されるリチオ化スチレン系ポリマーを得、続いて、このリチオ化スチレン系ポリマーを開始剤として、スチレンをアニオン重合させることを特徴とする、シンジオタクチックポリスチレン系ポリマーを除く多分岐スチレン系ポリマーの製造方法。
【請求項6】
前記Rが、メチル基であり、前記R’が、メチレン基である請求項5に記載の多分岐スチレン系ポリマーの製造方法。
【請求項7】
前記ルイス塩基が、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジメトキシエタン、t−ブトキシカリウムからなる群から選ばれる1種以上のルイス塩基である請求項5または6に記載の多分岐スチレン系ポリマーの製造方法。
【請求項8】
リチオ化された部位が、リチオ化スチレン系ポリマー1分子鎖あたり3〜35個である請求項5から7のいずれか一項に記載の多分岐スチレン系ポリマーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸長粘度特性に優れた多分岐スチレン系ポリマーに関する。
【0002】
スチレン系ポリマー、及びその組成物は、透明性及び剛性等に優れ、射出成型用途や、シート等の押出成形用途等に幅広く使用されている。特に、スチレン系樹脂の優れた成型性を活かし、軽量性及び断熱性に優れる発泡成形用途や、ブロー成形用途にも使用され、スチレン系樹脂は容器材料として好適である。
【0003】
その中で特に発泡成形用途においては、発泡成形体の機械的強度を保ちつつ、発泡倍率を高めたり、気泡径を均一にする技術が求められており、そのために歪硬化性を高めたり、溶融張力を高めるなどの検討が種々試みられている。
【0004】
歪硬化性とは、高分子鎖の伸長や絡み合いにより伸長粘度が立ち上がる性質で、一般に歪硬化性が高いほどブロー成形性、発泡成形性が良いとされる。
【0005】
歪硬化性を高めるための方法としては、高分子鎖に分岐を設ける方法がある。特に分岐点が2つ以上の多分岐ポリマー(H型ポリマーやくし型ポリマー等)は、分岐点が1つの星型高分子に比べ、歪硬化性に優れるとされている。
【0006】
これまでに、多分岐スチレン系ポリマーを製造する検討が種々試みられているが、いずれの方法も多分岐構造を導入する際にゲル化を起こしやすく、工業化が困難であった。
【0007】
このほか、マクロモノマー法により、多分岐構造を有するポリマーが得られることが既に報告されている(例えば、非特許文献1)。しかしながら、この方法では、高分子量の分岐鎖が得られにくい、あるいは、反応に時間がかかる等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−292707号公報
【特許文献2】特開2005−179389号公報
【特許文献3】特開2007−31660号公報
【特許文献4】特開2005−281405号公報
【特許文献5】特開2011−225866号公報
【特許文献6】特開2013−100428号公報
【特許文献7】特開2014−227459号公報
【特許文献8】特開2015−4015号公報
【特許文献9】特開2015−193761号公報
【特許文献10】特開2015−203071号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】高分子、42(2)98−101(1993)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、優れた伸長粘度特性を有し、発泡成形用途、ブロー成形用途等に幅広く用いることができ、かつ製造時にゲル化しにくい多分岐スチレン系ポリマーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を達成するべく種々の研究を行った結果、スチレン系ポリマーをルイス塩基の存在下、アルキルリチウムと反応させてリチオ化スチレン系ポリマーを得、続いて、このリチオ化スチレン系ポリマーを開始剤(マイクロイニシエーター)として、スチレンをアニオン重合させることにより、上記の課題を達成し得ることを見出し、本発明に至った。
【0012】
かくして、本発明は、式(1)
【化1】

(式中、Rは、炭素数1〜5のアルキル基を、R’は、炭素数1〜5のアルキレン基を、Pはポリスチレンからなる側鎖を、a、b、c、dは0以上の整数を示す。ただし、bとdが共に0になる場合を除く。)で示され、側鎖以外の部分を主鎖とすることを特徴とする多分岐スチレン系ポリマーを提供する。
【0013】
また、本発明は、スチレン系ポリマーをルイス塩基の存在下、アルキルリチウムと反応させて、式(2)
【化2】

(式中、Rは、炭素数1〜5のアルキル基を、R’は、炭素数1〜5のアルキレン基を、a、b、c、dは0以上の整数を示す。ただし、bとdが共に0になる場合を除く。)で示されるリチオ化スチレン系ポリマーを得、続いて、このリチオ化スチレン系ポリマーを開始剤として、スチレンをアニオン重合させることを特徴とする多分岐スチレン系ポリマーの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の多分岐スチレン系ポリマーを用いることにより、その優れた伸長粘度特性から、軽量性、断熱性及び機械的強度に優れた発泡成形体等、種々の成形体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで使用されるスチレン系ポリマー、すなわち本発明の多分岐スチレン系ポリマーの主鎖としては、ポリスチレン、ポリo−メチルスチレン、ポリp−メチルスチレン、ポリm−メチルスチレン、ポリp−tert−ブチルスチレン、ポリ4−エチルスチレン等が挙げられる。なかでも、ポリスチレン、ポリp−メチルスチレンが好ましい。
【0016】
スチレン系ポリマーの製造方法としては、従来既知の任意の方法を用いることができる。例えば、有機溶媒中、有機リチウム化合物を重合開始剤として、必要に応じてランダム化剤を共存させてスチレン系モノマーをアニオン重合することにより製造することができる。或いは、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤を必要に応じて用いて、塊状重合を行うことで製造することもできる。
【0017】
本発明で用いるスチレン系ポリマー、すなわち本発明の多分岐スチレン系ポリマーの主鎖の重量平均分子量としては、20,000〜500,000が好ましい。20,000以上とすることで、伸長粘度特性を改善させることができ、500,000以下とすることで、流動性を向上させたり、安定して製造したりすることができる。中でも、スチレン系ポリマー、すなわち本発明の多分岐スチレン系ポリマーの主鎖の重量平均分子量は、より好ましくは50,000〜400,000であり、さらに好ましくは100,000〜300,000である。スチレン系ポリマー、すなわち本発明の多分岐スチレン系ポリマーの主鎖の重量平均分子量は、重合開始剤の添加量等によって制御できる。
【0018】
ルイス塩基は、非共有電子対を有し、金属イオンに配位結合することができる化合物である。ルイス塩基としては、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、トリエチルアミンのような窒素化合物、1,2−ジメトキシエタン、t−ブトキシカリウム、グライム、クラウンエーテルのような酸素化合物等が使用できる。好ましくはN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジメトキシエタン、t−ブトキシカリウムである。
【0019】
アルキルリチウムは、アルキル基とリチウム原子が結合した化合物である。アルキルリチウムとしては、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウムなどが使用できる。
【0020】
本発明の多分岐スチレン系ポリマーの製造は、有機溶媒中で反応を行うことが好ましい。有機溶媒としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、又はベンゼン、t−ブチルベンゼン等の芳香族炭化水素などが使用できる。好ましくはシクロヘキサン、ベンゼンである。
【0021】
本発明において、リチオ化スチレン系ポリマーのリチオ化された部位は、リチオ化スチレン系ポリマー1分子鎖あたり3〜35個が好ましい。3個以上とすることで、伸長粘度特性を改善させることができ、35個以下とすることで、流動性を損なわずに、線状スチレン系ポリマーと配合した時の相溶性を改善させることができる。中でも、リチオ化スチレン系ポリマーのリチオ化された部位は、リチオ化スチレン系ポリマー1分子鎖あたり5〜25個であることがより好ましく、さらに好ましくは7〜20個である。リチオ化された部位の数は、ルイス塩基やアルキルリチウムの添加量、及び反応時間等によって制御できる。
【0022】
リチオ化スチレン系ポリマーにおけるリチオ化された部位の数は、リチオ化スチレン系ポリマー溶液をアンプル等に小分けした後、トリメチルシリルクロライドを加えて反応を停止させ、H−NMR分析によりリチオ化率を算出した後、スチレン系ポリマーの重合度を掛けることで算出することができる。
【0023】
本発明の多分岐スチレン系ポリマーの分岐鎖、すなわち本発明の多分岐スチレン系ポリマーの側鎖の重量平均分子量としては、20,000〜500,000が好ましい。20,000以上とすることで、伸長粘度特性を改善させることができ、500,000以下とすることで、流動性を損なわずに、安定して製造することができる。中でも、多分岐スチレン系ポリマーの分岐鎖、すなわち本発明の多分岐スチレン系ポリマーの側鎖の重量平均分子量は、より好ましくは50,000〜400,000であり、さらに好ましくは50,000〜300,000である。多分岐スチレン系ポリマーの分岐鎖、すなわち本発明の多分岐スチレン系ポリマーの側鎖の重量平均分子量は、スチレンの添加量等によって制御できる。
【0024】
本発明の多分岐スチレン系ポリマーの重量平均分子量は、概ね100,000〜5,000,000である。
【0025】
また、後述する実施例に記載された方法により測定される、本発明の多分岐スチレン系ポリマーの最大伸長粘度は、1.0×10Pa・s以上、3.0×10Pa・s以下であることが好ましく、1.0×10Pa・s以上、2.0×10Pa・s以下であることがより好ましく、1.0×10Pa・s以上、1.0×10Pa・s以下であることがさらに好ましい。
【0026】
得られた多分岐スチレン系ポリマーは、水、アルコール、二酸化炭素などの重合停止剤をリビング活性末端が不活性化するのに充分な量添加することで不活性化できる。得られたポリマーの有機溶媒溶液よりポリマーを回収する方法としては、メタノール等の貧溶媒により析出させる方法、加熱ロール等により溶媒を蒸発させて析出させる方法(ドラムドライヤー法)、濃縮器により溶液を濃縮した後にベント式押出機で溶媒を除去する方法、溶液を水に分散させ、水蒸気を吹き込んで溶媒を加熱除去してポリマーを回収する方法(スチームストリッピング法)等、任意の方法が採用できる。
【0027】
本発明の多分岐スチレン系ポリマーは、側鎖が主鎖に沿ってランダムに配置した分岐構造を有しているが、主鎖の両末端に分岐構造が集中した構造としても良い。また、本発明の多分岐スチレン系ポリマーは、線状スチレン系ポリマーと配合した樹脂組成物の形態で使用することができる。
【0028】
その際の線状スチレン系ポリマー/多分岐スチレン系ポリマーの質量比は、好ましくは70/30〜99/1である。中でも、より好ましくは80/20〜98/2であり、さらに好ましくは90/10〜97/3である。
【0029】
その場合における各成分の混合方法は特に制限はないが、例えば、押出機で溶融してペレット化してもよい。あるいは、線状スチレン系ポリマーの製造時、重合開始前、重合反応途中、重合体の後処理等の段階で、多分岐スチレン系ポリマーを添加してもよい。
【0030】
本発明の多分岐スチレン系ポリマー、及び組成物は、従来既知の任意の成形加工方法、例えば、押出成形、射出成形、中空成形などによってシート、フィルムを含む各種形状の押出し成形品、射出成形品、中空成形品、圧空成形品、真空成形品、2軸延伸成形品等極めて多種多様にわたる実用上有用な製品に容易に成形加工できる。
【実施例】
【0031】
以下に実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の解釈が限定されるものではない。
【0032】
<実施例1>
以下の(1)〜(17)の操作により、多分岐スチレン系ポリマーを製造した。
(1)重合容器を真空ラインに取り付け、減圧脱気、脱水を行った。
(2)重合容器にシクロヘキサン120mLを真空蒸留で移した。
(3)減圧し焼き切りを行った。
(4)s−ブチルリチウム0.045mmolを5質量%シクロヘキサン溶液としてブレイクシール法により滴下した。
(5)撹拌しながら、p−メチルスチレン75.5mmolをブレイクシール法により滴下し、40℃で18h反応させた。
(6)塩酸酸性メタノールをブレイクシール法により滴下し反応を停止した。
(7)生成物をメタノール中に滴下し、ポリマーを析出させ、得られたポリマーをベンゼンに溶解させた。この操作を計3回行って、ポリp−メチルスチレン重合体を得た。
(8)重合容器を真空ラインに取り付け、減圧脱気、脱水を行った。
(9)重合容器に、(7)で得たポリp−メチルスチレン重合体を400mgはかり取り、ベンゼンに溶解し、真空ラインに取り付け、凍結乾燥を行った。
(10)重合容器にシクロヘキサン40mLを真空蒸留で移した。
(11)重合容器を窒素雰囲気に置換し、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン0.21mmolを加え、s−ブチルリチウム0.11mmolを5質量%シクロヘキサン溶液としてブレイクシール法により滴下した。
(12)減圧し焼き切りを行い、40℃で30min撹拌し、リチオ化反応を進行させ、リチオ化スチレン系ポリマーを得た。
(13)リチオ化スチレン系ポリマーが300mg残るように、小分けアンプルに所定量移した。
(14)ブレイクシール法により、ベンゼン100mLを滴下した。
(15)スチレン87.5mmolをブレイクシール法により滴下し、40℃で14h反応させた。
(16)塩酸酸性メタノールをブレイクシール法により滴下し反応を停止した。
(17)生成物をメタノール中に滴下し、ポリマーを析出させ、得られたポリマーをベンゼンに溶解させた。この操作を計3回行って、多分岐スチレン系ポリマーを得た。
【0033】
<実施例2>
以下の(1)〜(17)の操作により、多分岐スチレン系ポリマーを製造した。
(1)重合容器を真空ラインに取り付け、減圧脱気、脱水を行った。
(2)重合容器にシクロヘキサン120mLを真空蒸留で移した。
(3)減圧し焼き切りを行った。
(4)s−ブチルリチウム0.1mmolを5質量%シクロヘキサン溶液としてブレイクシール法により滴下した。
(5)撹拌しながら、スチレン87mmolをブレイクシール法により滴下し、40℃で14h反応させた。
(6)塩酸酸性メタノールをブレイクシール法により滴下し反応を停止した。
(7)生成物をメタノール中に滴下し、ポリマーを析出させ、得られたポリマーをベンゼンに溶解させた。この操作を計3回行って、ポリスチレン重合体を得た。
(8)重合容器を真空ラインに取り付け、減圧脱気、脱水を行った。
(9)重合容器に、(7)で得たポリスチレン重合体を189mgはかり取り、ベンゼンに溶解し、真空ラインに取り付け、凍結乾燥を行った。
(10)重合容器にシクロヘキサン120mLを真空蒸留で移した。
(11)重合容器を窒素雰囲気に置換し、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン0.3mmolを加え、s−ブチルリチウム0.3mmolを5質量%シクロヘキサン溶液としてブレイクシール法により滴下した。
(12)減圧し焼き切りを行い、40℃で30min撹拌し、リチオ化反応を進行させ、リチオ化スチレン系ポリマーを得た。
(13)リチオ化スチレン系ポリマーが155mg残るように、小分けアンプルに所定量移した。
(14)ブレイクシール法により、シクロヘキサン100mLを滴下した。
(15)スチレン87.0mmolをブレイクシール法により滴下し、40℃で14h反応させた。
(16)塩酸酸性メタノールをブレイクシール法により滴下し反応を停止した。
(17)生成物をメタノール中に滴下し、ポリマーを析出させ、得られたポリマーをベンゼンに溶解させた。この操作を計3回行って、多分岐スチレン系ポリマーを得た。
【0034】
<実施例3>
以下の(1)〜(17)の操作により、多分岐スチレン系ポリマーを製造した。
(1)重合容器を真空ラインに取り付け、減圧脱気、脱水を行った。
(2)重合容器にベンゼン30mL、テトラヒドロフラン70mLを真空蒸留で移した。
(3)減圧し焼き切りを行った。
(4)テトラヒドロフラン30mLで希釈したナトリウムナフタレニド2.2mmolをブレイクシール法により滴下した。
(5)撹拌しながら、スチレン87.5mmol、p−メチルスチレン3.8mmolの順にブレイクシール法により滴下し、−30℃で6h反応させた。
(6)塩酸酸性メタノールをブレイクシール法により滴下し反応を停止した。
(7)生成物をメタノール中に滴下し、ポリマーを析出させ、得られたポリマーをベンゼンに溶解させた。この操作を計3回行って、ポリp−メチルスチレン−b−ポリスチレン−b−ポリp−メチルスチレンブロック共重合体を得た。
(8)重合容器を真空ラインに取り付け、減圧脱気、脱水を行った。
(9)重合容器に、(7)で得たブロック共重合体を150mgはかり取り、ベンゼンに溶解し、真空ラインに取り付け、凍結乾燥を行った。
(10)重合容器にシクロヘキサン40mLを真空蒸留で移した。
(11)重合容器を窒素雰囲気に置換し、t−ブトキシカリウム0.12mmolを加え、n−ブチルリチウム0.12mmolを5質量%シクロヘキサン溶液としてブレイクシール法により滴下した。
(12)減圧し焼き切りを行い、40℃で1h撹拌し、リチオ化反応を進行させ、リチオ化スチレン系ポリマーを得た。
(13)リチオ化スチレン系ポリマーが100mg残るように、小分けアンプルに所定量移した。
(14)ブレイクシール法により、ベンゼン100mLを滴下した。
(15)スチレン1.05mmolをブレイクシール法により滴下し、40℃で1h反応させた。
(16)塩酸酸性メタノールをブレイクシール法により滴下し反応を停止した。
(17)生成物をメタノール中に滴下し、ポリマーを析出させ、得られたポリマーをベンゼンに溶解させた。この操作を計3回行って、多分岐スチレン系ポリマーを得た。
【0035】
<実施例4>
実施例3における、t−ブトキシカリウムの代わりに、ジメトキシエタンを用いた以外は、実施例3と同様にして、多分岐スチレン系ポリマーを得た。
【0036】
<比較例1>
以下の(1)〜(7)の操作により、線状スチレン系ポリマーを製造した。
(1)重合容器を真空ラインに取り付け、減圧脱気、脱水を行った。
(2)重合容器にシクロヘキサン120mLを真空蒸留で移した。
(3)減圧し焼き切りを行った。
(4)s−ブチルリチウム45μmolを5質量%シクロヘキサン溶液としてブレイクシール法により滴下した。
(5)撹拌しながら、p−メチルスチレン75.5mmolをブレイクシール法により滴下し、40℃で18h反応させた。
(6)塩酸酸性メタノールをブレイクシール法により滴下し反応を停止した。
(7)生成物をメタノール中に滴下し、ポリマーを析出させ、得られたポリマーをベンゼンに溶解させた。この操作を計3回行って、ポリp−メチルスチレン重合体を得た。
【0037】
<比較例2>
以下の(1)〜(7)の操作により、線状スチレン系ポリマーを製造した。
(1)重合容器を真空ラインに取り付け、減圧脱気、脱水を行った。
(2)重合容器にシクロヘキサン120mLを真空蒸留で移した。
(3)減圧し焼き切りを行った。
(4)s−ブチルリチウム100μmolを5質量%シクロヘキサン溶液としてブレイクシール法により滴下した。
(5)撹拌しながら、スチレン87mmolをブレイクシール法により滴下し、40℃で14h反応させた。
(6)塩酸酸性メタノールをブレイクシール法により滴下し反応を停止した。
(7)生成物をメタノール中に滴下し、ポリマーを析出させ、得られたポリマーをベンゼンに溶解させた。この操作を計3回行って、ポリスチレン重合体を得た。
【0038】
<比較例3>
以下の(1)〜(7)の操作により、線状スチレン系ポリマーを製造した。
(1)重合容器を真空ラインに取り付け、減圧脱気、脱水を行った。
(2)重合容器にベンゼン30mL、テトラヒドロフラン70mLを真空蒸留で移した。
(3)減圧し焼き切りを行った。
(4)テトラヒドロフラン30mLで希釈したナトリウムナフタレニド2.2mmolをブレイクシール法により滴下した。
(5)撹拌しながら、スチレン87.5mmol、p−メチルスチレン3.8mmolの順にブレイクシール法により滴下し、−30℃で6h反応させた。
(6)塩酸酸性メタノールをブレイクシール法により滴下し反応を停止した。
(7)生成物をメタノール中に滴下し、ポリマーを析出させ、得られたポリマーをベンゼンに溶解させた。この操作を計3回行って、ポリp−メチルスチレン−b−ポリスチレン−b−ポリp−メチルスチレンブロック共重合体を得た。
【0039】
<比較例4>
以下の(1)〜(8)の操作により、星型スチレン系ポリマーを製造した。
(1)重合容器を真空ラインに取り付け、減圧脱気、脱水を行った。
(2)重合容器にシクロヘキサン120mLを真空蒸留で移した。
(3)減圧し焼き切りを行った。
(4)s−ブチルリチウム100μmolを5質量%シクロヘキサン溶液としてブレイクシール法により滴下した。
(5)撹拌しながら、スチレン87mmolをブレイクシール法により滴下し、40℃で14h反応させた。
(6)エポキシ化大豆油の25質量%シクロヘキサン溶液6mgを加え、40℃で10h反応させた。
(7)塩酸酸性メタノールをブレイクシール法により滴下し反応を停止した。
(8)生成物をメタノール中に滴下し、ポリマーを析出させ、得られたポリマーをベンゼンに溶解させた。この操作を計3回行って、星型ポリスチレン重合体を得た。
上記実施例1〜4及び比較例1〜4について、その要点を表1にまとめて示し
た。
【0040】
<伸長粘度の測定>
伸長粘度は、下記の方法で測定した。
(1)各サンプルを2g取り、プレス成形機にて220℃で10分間予熱した後、5MPa、1minの条件でプレスシートを成形した。
(2)得られたプレスシート(厚み0.6mm)を18mm×10mmに切削し、測定用サンプルを得た。
(3)回転型レオメータ(TA Instruments製 AR2000ex)を用い、温度140℃、ひずみ速度0.1/sにて伸長粘度測定を行った。
(4)歪硬化性の指標として、得られた伸長粘度値の中で最大の値(最大伸長粘度)を比較に用いた。
【0041】
【表1】
【0042】
表1から明らかなように、実施例1〜4のポリマーは、歪硬化性に優れるため、成形加工性に優れ、発泡成形、ブロー成形等に広く用いられることが期待される。これに対して、比較例1〜4のポリマーは、歪硬化性が小さいため、成形加工性に劣ることが懸念される。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の多分岐スチレン系ポリマーは、伸長粘度特性に優れ、発泡成形、ブロー成形用途及びそれらの加工助剤の用途にも適用できる。そのため、本発明の多分岐スチレン系ポリマーは、産業上極めて有用である。